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伊達 悠貴 論文内容の要旨 主

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Academic year: 2022

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伊達 悠貴 論文内容の要旨

主 論 文

Oncogenic Runx1–Myc axis in p53-deficient thymic lymphoma

(p53 欠損性胸腺リンパ腫において Runx1-Myc は発がん機軸である)

伊達悠貴、谷内一郎、伊藤公成

(Gene 819:146234 (2022))

長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 医療科学専攻

(主任指導教員:伊藤公成教授)

緒 言

がん抑制遺伝子 p53 の遺伝子異常と、がん遺伝子 Myc の活性化は、大半のヒトがんの発 症・悪性化過程に関わる、ゲノム・エピゲノム異常の典型例である。p53 欠損マウスが発症す る 2 大腫瘍は胸腺リンパ腫と骨肉腫である。先に私たちは、p53 欠損性の骨肉腫モデルマウ スを用いて、その発症機序が、がん関連転写因子 Runx による Myc の過剰な発現誘導であ ることを示し、その過程に必須な Runx 結合サイト「mR1」を Myc プロモーター内に同定した[1]。 この Runx-Myc 発がん機軸が広く p53 欠損性腫瘍の発症機序に通底するのかを調べる端緒 として、本研究では、胸腺リンパ腫を検討した。

対象と方法

胸腺リンパ腫のモデルとして、胸腺特異的に p53 を欠損する「LP マウス(Lck-Cre;

p53fl/fl)」を導入した。同マウスの 6 割は、約 6 か月齢で胸腺リンパ腫を発症して死亡した。

LP マウスにおいて、Runx ファミリー遺伝子あるいは Myc を欠損させて寿命を比較することで、

その抗がん効果を検証するとともに、同マウスに Runx 阻害剤を投与することで、その延命効 果を検証した。また、Runx-Myc 発がん機軸の一般性を細胞レベルで検証するために、LP マウスが発症した胸腺腫瘍から細胞株(LP 細胞)を樹立し、shRNA による遺伝子ノックダウン 解析、免疫抑制マウス(ヌードマウス)皮下での担癌実験、クロマチン免疫沈降実験、薬剤に よる Runx 阻害実験を行った。

結 果

LP マウスが発症した胸腺リンパ腫組織では、Myc、Runx1、Runx3 の発現上昇が、mRNA およびタンパクレベルで顕著であった。これらの遺伝子を LP マウスから片アリル性に削除す ると、LP;Mycfl/+および LP;Runx1fl/+マウスにおいて、リンパ腫の発症抑制と顕著な延命が 観察された。LP 細胞において、Myc あるいは Runx1 をノックダウンすると、ヌードマウス皮下 における造腫瘍能は一様に低下した。以上より、骨肉腫と同様に[1]、胸腺リンパ腫発症にお

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いても Runx–Myc 発がん機軸が働いていることが示唆された。

LP 細胞において、Runx1 と Myc の発現には強い相関が見られた。同細胞において Runx1 をノックダウンすると、Myc の発現量が減少した。しかし Myc をノックダウンしても、Runx1 の発 現量に明確な変化は見られなかった。よって、Runx1 により Myc の発現が誘導されると考え られた。

LP 細胞において、Runx1 および H3K27ac(活性化クロマチンの指標)のクロマチン集積頻 度はよく相関し、モチーフ解析においても H3K27ac 修飾領域に Runx 結合配列がよく見られ たことから、Runx1 がゲノムワイドにクロマチンを活性化することが示された。骨肉腫の解析で 同定された「mR1」[1]において、同様に LP 細胞においても、Runx1 の結合およびクロマチン の活性化が検出された。LP マウスにおいて mR1 を両アリル性に破壊すると、リンパ腫の発症 率は減少し、延命効果が観察された。この mR1 の破壊による延命は、全身性 p53∆/∆マウス においても再現された。以上から、mR1 は Runx-Myc 発がん機軸の作用点として働くことが 判明した。

2 種類の Runx 阻害剤(AI-10-104, Ro5-3335)によって LP 細胞を処理すると、いずれの 薬剤においても濃度依存的な Myc 発現抑制効果が見られた。より低い濃度で Myc 発現抑 制効果を見せた AI-10-104 を LP マウスに投与すると、延命効果が見られた。以上より、

Runx は胸腺リンパ腫の抗がん標的に値することがわかった。

考 察

本研究により、先天性 p53 欠損が引き起こす 2 大腫瘍として、骨肉腫[1]と同様に、胸腺リン パ腫の発症も Runx-Myc 発がん機軸に依存していることが判明した。また、Runx 阻害が広く p53 欠損性腫瘍に有効な抗がん戦略となることが示唆された。Runx-Myc 機軸の責任因子 は、骨肉腫では Runx3 であったが[1]、胸腺リンパ腫では Runx1 であった。

ヒト T 細胞性腫瘍においても、Runx1 による Myc の発現誘導が報告されており、その作用 点として、Myc エンハンサー「N-Me」が指摘されている。p53 欠損性胸腺リンパ腫においても N-Me における Runx1 の結合とクロマチン活性が確認されたことから、N-Me(エンハンサー)

と mR1(プロモーター)間におけるループ形成が Myc の過剰な発現誘導に重要であることが 示唆される。

参考文献

[1] Runx3 is required for oncogenic Myc upregulation in p53-deficient osteosarcoma.

Oncogene 41:683–691 (2022)

参照

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