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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 駒 野    捍

     学 位 論 文 題 名

  Epstein‑Barr virus contributes to the malignant phenotype and to apoptosis resistanceinBurkitt , Slymphoma cellline Akata

(バーキットリンパ腫細胞株Akata の悪性形質およびアポトーシス 抵抗性におけるエプスタイン―バーウイルスの役割に関する研究)

学位論文内容の要旨

  エプ スタ イン ― パー ウイルス(EBV)はヒ卜ヘ ルペスウイルス科に属し、1964年EpsteinとBarrら に より 赤道 アフ リ カの 小児 に多 発す る バー キッ トリンバ腫(BL)の培養細胞 から発見された。EBV はヒ卜の癌ウ イルスとして記載された初 のウイルスである。EBVはBLのほか、良性の疾患である伝 染性単核球症 や、その他いくっかの悪性腫瘍、たとえば上咽頭癌、日和見リンバ腫、胃癌などとの関 連 が 示 唆 さ れ て い る 。 し か し 発 癌 の メ カ ニ ズ ム は い ま だ 十 分 に は 解 明 さ れ て い な い 。 我々が使用し たAkata細胞は、日本人BLに 由来する。この細胞は他のBL細胞株には無いユニークな 性質を持って いる、Akata細胞は長期の培養を続けても、latencyIを維持することができる。latency Iは 、EBNA1、EBERs、BARFOのみ が発 現 し、in vivo BL細胞 や樹 立後 間も ないBL:f胞株はこの感 染様式をとる 。しかし、培養を続けると 、ほとんど全てのBL細胞株はlatency IIIへと変化してしま う 。latency IHで は、 上記に加えて5種類のEBNAと3種類のLMPが発現する。latency IIIへと変化 した細胞は、 もはや生体内での腫瘍細胞 の性質を再現しておらず、真の意味でEBVの発癌活性を調査 する対象には ならない。Akata細胞は、継 代を重ねるうちに徐々にEBVが脱落し、EBV陽性細胞から 陰 性細 胞を 分離 す るこ とができる。EBV陽性BL細胞株からEBV陰性細胞が分 離されたのは世界初で ある。単一の 遺伝的背景をもつEBV陽性と 陰性のAkata細胞を比較する ことにより、EBVが細胞にど のような影響 を与えるのかを解析するこ とが可能となった。その結果、EBVの脱落に伴い細胞が悪性 形質を失うこ とが明らかになった。これ はEBVが細胞の癌形質に寄与 していることを示している。

本 研究 にて 、我 々 は(1)EBV再 感染 系 を構 築し 、EBVが細胞の悪性形質に 貢献していることをよ り直接的に証 明した。次に、(2)EBVはbcl‑2遺伝子の発現を増強さ せることにより、細胞にアポ トーシス抵抗 性を付与していることを示 した。さらに、(3)これまで発癌活性が指摘されてきたウ イ ルス 遺伝 子EBNA1は、 悪 性形 質や アポ トー シ ス抵抗性の責任遺伝子では ないことを明らかにし た。

(1)こ れ までEBV陰性Akata細 胞に ウイ ルス を 感染させて、再感染細胞を 分離することは困難で あった。我々 は、EBV陰性Akata細胞に薬 剤耐性遺伝子を組み込んだウ イルスを感染させ、薬剤で選 択 する こと によ り 、再 感染 細胞 を容 易 に分 離す るこ と に成 功し た。 再感 染細胞は親株同様に、

1atencyIを再 現することをウエスタン法 およびR卜PCR法により証明し た。我々は、ウイルス再感染 によりEBV陰 性Akata細胞が悪性形質を再 獲得するかを確かめるため、 軟寒天におけるコロニー形成     一287ー

(2)

能、およびSCIDマウスにおける造腫瘍性について検索した。コント口ールとして薬剤耐性遺伝子のみ を導入した細胞を用いた。その結果、再感染細胞は軟寒天でコロニーを形成し、SCIDマウスにて造腫 瘍性を示したが、コント口ールの細胞は、軟寒天でのコ口二ー形成能およびSCIDマウスにおける造腫 瘍 性を欠 いていた。以上よりEBV陰'itAkata細胞がウイルス再感染により悪性形質を再獲得すること が 明らか になっ た。Akata細胞に おいて、EBVは細胞の悪性形質に必須であることがより直接的に証 明された。

  (2)次 に、EBV陽 性と陰 性のAkata細胞を比較することにより、EBVがアポ卜一シス抵抗性に寄与 す ること を証明 した。EBV陽性と 陰性のAkata細胞を紫外線、サイクロヘキシミド、グルココルチコ イドで処理してアポトーシスを誘導後、アポトーシスに陥らなかった生細胞をM'IT法にて検出し、生 存 率を算 定した。その結果、EBV陽性細胞は陰性細胞と比較して、有意に生存率が高いことが明らか と なった 。以上 より、EBVがアポ トーシ ス抵抗 性に寄 与する ことが 示唆さ れた。さらに、EBV陰性 Akata細胞がウイルス再感染により再びアポトーシス抵抗性を獲得するかを確かめるために、再感染 系を用いてアポトーシス抵抗性を検索した。その結果、再感染細胞の生存率はコン卜ロールに比較し て 有意に 増加し ていた 。以上 より、EBV陰性Akata細胞はウイルス再感染によルアポトーシス抵抗性 を 再獲得 するこ とが明 らかと なった。これらの結果より、Akata細胞において、EBVは細胞の悪性形 質 だけで なくア ポトー シス抵 抗性に も必要 である ことが証明された。latencyIにおいてEBVがアポ ト ーシス 抵抗性に貢献していることを示したのは、我々が世界で初めてである。EBVがどのようなメ カニズムで細胞にアポトーシス抵抗性を付与しているのかを解明するため、いくっかのアポトーシス 関連遺伝子の発現について検索を行った。その結果、抗アポトーシス活性を有するbcl―2がウイルス感 染細胞にて特異的に発現が増強していることが示された。一方、bcl‑2発現を誘導することが知られて い るウイ ルス遺 伝子LMP1や、bcl‑2と 高い相 同性を 有する ウイル ス遺伝子BHRF1は、ウイルスが溶 解 感染に 移行してはじめて発現が誘導される。従って、潜伏感染にあるAkata細胞において、これら が アポト ーシス 抵抗性 に関与 しているのは否定的であった。以上より、EBVはbcl‑2遺伝子の発現を 増 強 さ せ るこ と に よ り、 細 胞 に アポ卜 ーシス 抵抗性 をも付 与してい ること が明ら かとな った。

(3)それ では、 いずれ のEBV遺伝 子がAkata細胞に 悪性形質やアポトーシス抵抗性を賦与している の で あ ろ うか 。Akata細 胞 に は4つ の ウイ ル ス 遺 伝子 が 発 現して いる。EBNA1、EBERs、BARF0、 そ して少 量のIMP2Aである 。中で も、EBNA1は ウイル スゲノ ム維持 に必須 であるだけでなく、トラ ンスジェニックマウスにおいてりンパ腫を発生させたり、上咽頭癌細胞株において癌形質を増強する 活 性が知 られて いる。 我々はEBNAlがAkata細胞に悪性形質やアポ卜ーシス抵抗性を賦与している可 能 性 を 考え 、EBV陰 性Akata細胞 にEBNA1を 導入する ことに より細 胞が再 び悪性 形質や アポト ーシ ス 抵抗性 を獲得 するか を検討 した。 その結 果、予 想に反し てEBV陰 性細胞 にEBNA1を導入しても、

悪 性形質 やアポ トーシ ス抵抗 性は回復しなかった。EBNA1発現細胞におけるはbd‐2の発現は増強し て いなか った。 以上よ り、Akata細胞において、EBNA1が悪性形質やアポトーシス抵抗性の責任遺伝 子 ではな いこと が明ら かとな った。 これら の結果 は、従来考えられてきたEBNAlの活性に一石を投 じるものである。悪性形質やアポトーシス抵抗性の責任遺伝子を同定するのは、今後の研究課題であ る。

  本 研 究に より、EBVはBL細胞 に悪性 形質と アポト ーシス抵 抗性を 付与す ること により 、mWvoに おける造腫瘍性に貢献していることが示唆された。

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学位論文審査の要旨

     学位 論 文題 名

  Epstein‑Barr virus contributes to the malignant phenotype and to apoptosis resistancelnBurkitt SlymphomaCeulineAkata    ( バー キ ット リ ンパ 腫 細 胞株 Akata の 悪 性 形質 お よび ア ポト ー シス    抵 抗 性に お ける エ プス タ イン ― バ ーウ イルスの役 割に関する 研究)

   エプスタイン‐バーウイルス(EBV) は、 Epstein とBarr らにより赤道アフリカの小児に 多発するバーキットリンパ腫(BL) の培養細胞から発見されたへルベスウイルス科に属 する癌ウイルスである。EBV はBL のほか、上咽頭癌、日和見リンパ腫、胃癌などとの関 連が示唆されている。しかし発癌のメカニズムはいまだ十分には解明されていなぃ。本研 究では、生体のBL 細胞での潜伏感染様式を長期にわたって保持し、EBV の発癌活性を調 査する対象として最適なAkata 細胞株の継代を重ねてEBV 陰性細胞を初めて分離し、さら にこの細胞に薬剤耐性遺伝子を組み込んだウイルスを感染させ薬剤で選択することにより EBV 再感染系を構築した。そして、これらのEBV 陽性および陰性Akata 両細胞株を比較す ることにより、EBV が細胞の癌化やアポトーシスにどのような影響を与えるかを解析し て以下の成績を得た。(1 ) EBV が細胞の悪性形質に必須であることを直接的に証明し た。(2) EBV がBcl‑2 遺伝子の発現を増強させることにより、紫外線、サイクロヘキシミ ド、グルココルチコイドで処理して誘導されるアポトーシスに対する抵抗性を付与してい ることを示した。この結果より、 Akata 細胞においてはEBV の潜伏感染が細胞の悪性形質 だけでなくアポトーシス抵抗性にも必要であることが初めて証明された。(3) ウイルス ゲノム維持に必須であるだけでなく、トランスジェニックマウスにおいてりンパ腫を発生 させたり、上咽頭癌細胞株において癌形質を増強する活性が知られているウイルス遺伝子 EBNA1 は、単独では悪性形質やBcl‑2 遺伝子の発現増強およびアポトーシス抵抗性を誘導 しないことを明らかにした。

   審査に当たっては、副査吉木教授より、1 . EBV 陽性および陰性両細胞とくに核での 形態の差異について、2. Bcl‑2 ファミリ一蛋白質のうちアポ卜一シスの誘導に働くBax

   

   

(4)

の発現について、3 .アポ卜一シスをおこす癌抑制蛋白質p53 の発現に変化がなかったか

:こついて、 4. EBV が関与している胃癌でも同様の機構があてはまるかについて、5.

細胞のアポトーシスを回避する他のウイルスの遺伝子について質問があった。申請者はこ れらの質問に対して的確な回答をおこなった。さらに副査高田教授より、1 .今回観察さ れたAkata 細胞の所見が一般のバーキットリンパ腫の癌化機構に普遍化できるかについ て、2 . myc 癌遺伝子の転位および発現との関係について、3. EBV 陰性のバーキットリ ンパ腫の原因をどのように考えるかについて質問があった。発表者はこれらいずれの質問 に対しても適切な回答をおこなった。また主査葛巻より、 1 . EBNA1 が癌化に関与して いないことに関して、他の因子と共同して作用している可能性について、2. EBERs 、 BARFO 、 LMP2A の癌化に おける役割 の可能性に ついて。 3 . EBV がBcl‑2 発現を高める 機構につ いて、 4. EBV 関連蛋白質 LMP1 が発現を高めると報告のある転写調節因子A20 や逆に発現を抑えるという myc 癌遺伝子の発現について質問をおこなった。また、細川教 授から EBV 感染細胞の免疫原性や免疫感受性の変化について質問がなされた。申請者は これらいずれの質問に対しても適切な回答をおこなった。

   この論文は、 EBV がりンパ球に悪性形質とアポトーシス抵抗性を付与することによル パーキットリンパ腫細胞へと転換させ、かっその造腫瘍性にも貢献していることを初めて 明確に証明した。今後悪性形質やアポトーシス抵抗性の責任遺伝子が同定され、EBV に よる癌化機構が一層明らかになることが期待される。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども

併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

参照

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