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「開発と障害」というテーマの奥にあるもの (巻頭 エッセイ)

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「開発と障害」というテーマの奥にあるもの (巻頭 エッセイ)

著者 戸田 隆夫

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 アジ研ワールド・トレンド

巻 135

ページ 1‑1

発行年 2006‑12

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00047264

(2)

巻頭エッセイ

バンコクの王宮近くに日本の無償資金協力でアジア太平洋障害者センター︵APCD︶が設立され︑JICAの技術協力が本格的に開始されてから︑すでに四年以上が経った︒今秋︑イスラマバードからカシミール︑そしてハノイ︑ダナンと巡り︑APCDと関わった障害当事者たちが活躍している現場を歩いた︒APCDのネットワークはすでにアジア太平洋地域内の三二カ国に及ぶ︒障害当事者を中心に据える哲学と︑さまざまなアクターが一体となってバリアフリー社会を目指すアプローチは着実に成果をあげつつある︒この動きは︑さざ波のようで︑多くの人々が注目するような派手さはないが︑波打ち際にいる人々の意識や社会のあり方を具体的に変えつつある︒バンコクの新国際空港やアジア最大のマニラのショッピングモールの設計にも︑ラオスの障害者関連法制の整備にも︑パキスタンの地震被災者支援や障害者の自立運動にも︑ベトナムのCBR︵コミュニティーをベースにしたリハビリテーション︶にも︑大洋州におけるICTを活用した障害者のエンパワーメントにも︑APCDの人的ネットワークは関わっている︒二つの世界大戦は︑﹁障害﹂と﹁開発﹂という二つのイシューそれぞれの重要性を国際社会が認知する契機となったとも言われるが︑我が国の政府開発援助における取り組みは︑一九七○年代からの青年海外協力隊の派遣︵作業療法士等︶︑ペルー の地域精神衛生センターへの協力などに始まった︒この分野における青年海外協力隊や専門家などの数は延べで一○○○名近くになり︑研修やセミナーに参加した途上国の人々は三○○○名を超える︒しかし︑それらを巨視的に総括し︑社会的なインパクトを﹁正当に﹂評価することは容易ではない︒我が国は﹁人間の安全保障﹂を国際協力の理念として掲げているが︑人々と社会に対する全体観に基づき人間存在の核心に迫るこの理念は︑﹁開発と障害﹂という領域においても今後重要となるであろう︒その際︑﹁開発と障害﹂というテーマが喚起する根本的な問題に立ち返ることになろう︒最大多数の最大幸福を目指して︑限られた開発資源に関する﹁選択と集中﹂を行うアプローチに落とし穴はないか︒効果効率の向上を標榜し裨益人口の多寡や一人当たりの社会的費用などに着目して資源配分を決定する方法に瑕疵はないか︑﹁障害﹂は果たして﹁問題﹂としてのみ規定されるべきものなのか︒人々が助け合い︑支え合うという行為は︑社会にとって﹁費用﹂なのか︑あるいは︑その行為自体が人々に喜びをもたらす﹁便益﹂とは言えないか︒日々困難と闘いながらも驚くほどの活力に溢れた障害当事者や彼らを支援する人々から薫陶を受け︑私の﹁開発﹂観は︑今激しく揺らいでいる︒︵とだ  たかお/国際協力機構人間開発部第二グループ長︶

﹁開発と障害﹂というテーマの奥にあるもの

戸田隆夫

1─アジ研ワールド・トレンド No.135(2006.12)

参照

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