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デジタル時代のイノベーションを 実現する顧客協創

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Academic year: 2022

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Vol.99 No.03 284-285 37

1. デジタル時代のイノベーション

センサーやIoT(Internet of Things)の普及・拡大に より,収集したさまざまなデータからデジタルモデルが 生成され,安価・高性能なネットワークでつながること で,地理的・時間的制約を越えたモデルの参照,複製,

加工が可能となり,新しいサービスや事業モデルを生み 出せるようになってきた。このようなデジタル時代にイ ノベーションを起こすアプローチを,ここでは「Pure digital」と「Plus digital」という視点で考える。

Pure digitalなイノベーションは,人々の生活や企業 の業務,社会や自然に関するデータから生成したデジタ ルモデルにより,人の行動や業務プロセス,意思決定を 飛躍的に刷新し,新しい商品・サービスによって大きな 価値を生み出す。一方,Plus digitalは,家庭や会社,街 などで使う設備や機器(アセット)にデジタル技術を付 加することで,当該アセットの性能や効率を圧倒的に引 き上げ,新しい機能やサービスで価値を創出するもので ある。

社会イノベーション協創センタ(Global Center for Social Innovation: 以 下,「CSI」 と 記 す。) は,Pure digitalとPlus digitalの両面で日立の事業部門と連携し,

顧客やパートナーとの協創を通じて,デジタル時代のイ ノベーションの実現に貢献していく。以下に,それぞれ のアプローチで進めている取り組みを紹介する。

2. 協創によるイノベーションの取り組み

2.1

保険弱者の解消(Pure digital)

少子高齢化が進む一方で,社会保障費が膨らみ続ける 日本では,いかに効率的・効果的なセーフティネットを 用意するかが重要である。中でも,持病や病歴などを理 由に生命保険に加入できない保険弱者の問題が大きくな りつつある。

この問題に対し,CSIは日立の金融ビジネスユニット とともに,生命保険会社との協創活動に取り組んでいる。

その第一歩として,日立が持つ病態遷移研究の知見に基 づくデジタルモデルと,保険会社が持つ医療保険のリス ク評価モデルを融合し,今まで保険に加入できなかった 持病や病歴を持つ加入希望者に対し,加入者負担と保証 レベルを見て適切な保険商品の提示ができるようにした

(図1参照)1)

また,将来の保険は,保証に加えて予防に貢献するこ とをめざすというビジョンを見定め,食品産業やフィッ トネス産業などとデジタルに連携することで,疾病の早 期発見や健康増進をサポートするプロアクティブ型サー ビスへの拡張を検討していく2)

2.2

アセットの価値向上(Plus digital)

工場設備のほか,鉱山や油井で使用される装置,鉄道 車両,トラックなどの輸送機器は,企業の生産性を決め る要である。これらのアセットにデジタル技術を加える ことで,その状態や使われ方を監視・診断し,稼働率向 グローバルな顧客協創による社会イノベーションの創生

F E A T U R E D A R T I C L E S

Overview

デジタル時代のイノベーションを 実現する顧客協創

船木 謙一|

Funaki Kenichi

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上につなげる取り組みが広がりつつある。しかし,実際 には使い方によって見るべきデータや判断方法が異なる ため,実効果を上げるには,顧客との対話により,使用 環境や周辺業務を理解する必要がある。

例えば,CSIでは鉱山会社の協力を得て,鉱山機械や フィールドのデータを用いた,故障予兆の検知や保守手 順の最適化による稼働率向上の取り組みを進めている。

さらなる価値創出に向けては,鉱山機械の周辺業務の理 解も深め,顧客の業務全体としてのROA(Return on Asset)向上や事業拡大に貢献するソリューションを検 討するというステップで進めている。

CSI北米を中心に,アナリティクス技術やデジタルモ デルを蓄積し,鉱山機械のほか,油井などで用いられる フィールド機器,物流分野の輸送機器などさまざまな業 界に適用するとともに,日立のIoTプラットフォーム

「Lumada」でサービスを提供していく3)

3. デジタル時代の顧客協創の方向性

3.1

「NEXPERIENCE」によるデジタルベースの イノベーションデザイン

デジタル時代のイノベーション創出には,顧客との協 創活動もデジタルにする必要がある。CSIでは,これま での経験や蓄積したノウハウに基づき,イノベーション のアイデアやシナリオ,事業構想をデジタルモデル化し,

シミュレーションによって効果や価値を検証し,マネー フローや投資回収などの事業性も評価可能な方法論

「NEXPERIENCE」を構築してきた4)。前章で述べた事 例も含め,製造,エネルギー,金融など多くの分野に活 用中である(図2参照)。

3.2

システムの進化による価値の拡大

現在は,Pure digitalとPlus digitalのイノベーション が並行して起きているが,やがて相互につながるシステ ムとなり,大きな価値を生むサービスや事業モデル,社 会システムとして進化していくものであると考えられ る。これは,一つのシステムが他の複数のシステムとつ ながり共生することで,より大きな価値を生む,社会イ ノベーションがめざす姿である。

4. 地域を越えたイノベーションを促進する グローバルネットワーク体制

デジタル化により,新しいサービスや事業モデルが地 理的制約を越えて瞬く間に広がる時代になると,技術 シーズが生まれる場所と,技術を使ってイノベーション を起こす場所が必ずしも一致しないことがある。CSIは 日本のほか,北米,欧州,中国,APAC(Asia-Pacific)

に拠点を配し,世界各地域で技術動向とイノベーション のニーズの両面にアンテナを張り,相互に連携しながら 適地での社会イノベーションを促進する体制を整えてい る。例えば,北米の「Financial Innovation Laboratory」

で培った技術を,各地域のアプリケーションへ展開する ことや,先進国で培ったコネクテッドカーの技術を,人 口増に伴う移動手段高度化のニーズがある新興国で先に

心房細動 4%

8%

25%

65% 50%

35%

15% 20%

心不全 高血圧

高血圧値 年齢

問診デー

喫煙率な

病態遷移予測モデル日立

持病・病歴に応じた保険商品の提供

リスク評価モデル保険会社

図1| 日立と顧客(保険会社)のデジタルモ デルの融合による保険商品のイノベー ション

ヘルスケア分野で培った日立の病態遷移研究の知 見を保険分野に活用し,保険加入者の持病・病歴 に応じた保険商品の提供を実現する。

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グローバルな顧客協創による社会イノベーションの創生 F E A T U R E D A R T I C L E S

Vol.99 No.03 286-287

実証することが考えられる。

また,デジタルソリューション事業のグローバル展開 をIoTプラットフォームと顧客協創サービスで支える Hitachi Insight Groupと連携し,各地域のCSIが連携し たネットワーク体制(Insights Laboratory)により,地 域を越えたイノベーションを促進していく。

5. おわりに

本稿では,デジタル時代のイノベーションの実現に向 けた取り組みを紹介した。デジタル化は地理的制約を越 えたサービス拡大を加速する。

CSIは,今後も顧客やパートナーと一緒に,新しいサー ビスや事業モデルの創生に貢献していく。

執筆者紹介

船木 謙一

日立製作所 研究開発グループ

社会イノベーション協創統括本部 統括本部長 博士(工学)

INFORMS(The Institute for Operations Research and the Management Sciences)会員,日本経営工学会会員,

日本オペレーションズ・リサーチ学会会員 参考文献など

1)日立ニュースリリース,第一生命と日立が「医療ビッグデータ」活用 の共同研究を開始(2016.9)

http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2016/09/0906.html 2)新家隆秀,外:IoTを活用した新たな保険サービス創出への取り

組み,日立評論,98,9,571〜574(2016.9)

3) C. Gupta,外:IoTプラットフォームを基盤とした顧客協創による予 知保全ソリューション,日立評論,98,7-8,472〜477(2016.8)

4) 石川奉矛,外:顧客協創方法論「NEXPERIENCE」の体系化,

日立評論,97,11,659〜664(2015.11)

顧客協創によるイノベーション創生

顧客とのビジョン共有 新コンセプト創出 プロト開発およびデモ

NEXPERIENCE 顧客協創デジタルツール

事業機会/顧客課題発見 マーケティング/

効果シミュレーション ビジネスモデル設計 実証

図2|NEXPERIENCEのデジタルツール 顧客の事業機会/顧客課題発見から,マーケティ ング/ソリューションの効果シミュレーション,ビジネ スモデル設計まで,デジタルにつながる方法論を 構築する。

参照

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