V ol.33 2008 May-June
社 団 法 人 不 動 産 証 券 化 協 会
不動産証券化を共に推進する情報誌
エイリス
THE ASSOCIATION FOR REAL ESTATE SECURITIZATION
33 20
08 ・ May-Jun e
スペイン広場は往年の名画
『ローマの休日』でオードリー・
ヘップバーンがジェラートを食 べながら歩いたことから、女性 の憧れのスポットになった。と ころがその数のあまりの多さに、
ローマ市警は食べ歩きを禁止す るようになったという。それは ともあれ、スペイン広場はトレ ヴィの泉とともにローマ観光に とって欠くべからざる場所であ り、ローマを訪れてこの広場に 立たない人はまずいないだろう。
その円形広場の中心にはピエト
ロ・ベルニーニ作のバルカッチャ(小舟)の噴水がある。この噴水がつくられたのは 十七世紀であり、多くの旅人がこの噴水で渇きを癒したことだろう。その意味で広場 の主役はあくまでもベルニーニ作の噴水だったはずである。ところが十八世紀に遠近 法とだまし絵を好むバロック趣味の建築家が広場と教会(トリニタ・デイ・モンティ 教会)のあいだに百三十七段の階段を設けたことによって事情が一変した。その階段 とモンティ教会は西面しているから、午後から夕方までの西日を受けてさんぜんと輝 き、かつ一体化する。階段をのぼればそのまま教会の中へ、というように見えるので ある。つまり、百三十七段の階段が人をして天国に通じていると錯覚せしめるように なったということだ。かくして広場の主役が噴水から階段にかわり、スペイン広場と いうよりも「スペイン階段」と呼称していいようになった。その証拠というべきか、
ほとんどすべての観光客が階段と教会を背景にして記念写真をとっている。さながら 天国への階梯に立つがごとくの思いをいだいて……。このだまし絵的階段を設計した 人の名を記せば、ディ・サンクティスとスペッキである。ちなみにいえば、だまし絵 的錯覚をたんのうしたい人は午後三時すぎに広場に立って教会を見上げるとよい。そ して帰路はコンドッティ通りを西に向かえば「カフェ・グレコ」がある。ゲーテ、ワ ーグナー、スタンダール等々がローマ滞在中に通いつめたカフェである。
(井尻 千男:拓殖大学教授)
スペイン広場
(イタリア・ローマ)
提供●アマナイメージズ
ARESマスターのための
不動産証券化ジャーナル
とじこみ
ARESマスターのための
不動産証券化ジャーナル
今年の4月より、メタボ検診(メタボリック症候群検診)が義務付けられ、
さっそく健康診断で受診されている方もいらっしゃるかと思います。まだ私 自身は受診義務の対象ではありませんが、4月に受診した健康診断では、腹 囲が測られました。突然の測定だったので、なんだか気恥ずかしくなりまし た。来年の同じ頃にまた腹囲が測られ、前年比を見て愕然としないようにし
なくてはと心に誓いました。 (松崎)
会報「ARES」第33号 平成20年5月31日発行 編集発行 社団法人不動産証券化協会
〒107-0052
東京都港区赤坂 1-9-20 第16興和ビル北館1階 TEL:03-3505-8001
FAX:03-3505-8007 URL:http://www.ares.or.jp
編 集 後 記
会員一覧
(社名50音順)正会員(102社)
株式会社 アーバンコーポレイション 株式会社 あおぞら銀行
アセット・マネジャーズ・ホールディングス株式会社 安藤建設株式会社
伊藤忠商事株式会社
エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社 株式会社 エムケーキャピタルマネージメント 株式会社 大林組
オリックス株式会社 鹿島建設株式会社
キャップマークジャパン株式会社 近鉄不動産株式会社
株式会社 クリード
グローバル・アライアンス・リアルティ株式会社 ケネディクス株式会社
株式会社 ケン・コーポレーション 興和不動産株式会社
株式会社 ゴールドクレスト 株式会社 コスモスイニシア 株式会社 ザイマックス 株式会社 サンケイビル サンフロンティア不動産株式会社 JPモルガン証券株式会社
株式会社 三友システムアプレイザル 清水建設株式会社
ジャパンエクセレントアセットマネジメント株式会社 ジャパン リアルエステイト アセット マネジメント株式会社 株式会社 ジョイント・コーポレーション
株式会社 新生銀行 株式会社 新日鉄都市開発 住信不動産投資顧問株式会社 住友商事株式会社
住友信託銀行株式会社 住友不動産株式会社 住友不動産販売株式会社 西武不動産株式会社
セキュアード・キャピタル・ジャパン株式会社 積水ハウス株式会社
株式会社 大京 大成建設株式会社 ダイビル株式会社 大和証券SMBC株式会社 株式会社 ダヴィンチ・セレクト 株式会社 竹中工務店
中央三井信託銀行株式会社 ドイツ銀行 東京支店 東海東京証券株式会社
東急アセットマネジメント株式会社 東急不動産株式会社
東急不動産キャピタル・マネジメント株式会社
東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント株式会社 東急リバブル株式会社
東京建物株式会社 東京美装興業株式会社
株式会社 東京リアルティ・インベストメント・マネジメント 東洋プロパティ株式会社
藤和不動産株式会社
トップリート・アセットマネジメント株式会社 日興シティグループ証券株式会社
日本土地建物株式会社
日本ビルファンドマネジメント株式会社 農中信託銀行株式会社
野村證券株式会社 野村不動産株式会社
野村不動産アーバンネット株式会社
野村不動産インベストメント・マネジメント株式会社 野村不動産投信株式会社
パシフィックマネジメント株式会社 株式会社 長谷工コーポレーション 株式会社 原弘産
阪急電鉄株式会社 阪急不動産株式会社 ヒューリック株式会社 株式会社 フジタ 平和不動産株式会社 丸紅株式会社
株式会社 みずほコーポレート銀行 みずほ証券株式会社
みずほ信託銀行株式会社 株式会社 三井住友銀行
三井物産リアルティ・マネジメント株式会社 三井不動産株式会社
株式会社 三井不動産アコモデーションファンドマネジメント 三井不動産投資顧問株式会社
三井不動産販売株式会社 三菱地所株式会社 三菱地所投資顧問株式会社 三菱商事株式会社
三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社 株式会社 三菱東京UFJ銀行
三菱UFJ証券株式会社 三菱UFJ信託銀行株式会社
ミレア・リアルエステイトリスク・マネジメント株式会社 森トラスト株式会社
森ビル株式会社
森ビル・インベストメントマネジメント株式会社 株式会社 モリモト
モルガン・スタンレー・ホールディングス株式会社 安田不動産株式会社
山田建設株式会社 山万株式会社 有楽土地株式会社
(2008年5月1日現在)
表紙文 井尻 千男●いじり・かずお
拓殖大学教授/日本文化研究所所長/元日本経済新聞編集局文化部編集委員
1938年山梨県生まれ。立教大学卒業後、日本経済新聞社入社。編集委員として文化論を中心に広く社会論評を手 がける。97年 4 月より拓殖大学教授。『消費文化の幻想』『劇的なる精神 福田恆存』『言葉を玩んで国を喪う』
『自画像としての都市』『保守を忘れた自民政治』など著書多数。
REPORT
●
不動産証券化市場の投資家の選択と動機………15
沓澤 隆司氏(大阪大学社会経済研究所 准教授)
●
「第3回会員対象私募ファンド実態調査」集計結果 ………21
大坪 嘉章(調査部 主任研究員)
●
2007年のアメリカの商業・投資不動産市況………29
三澤 剛史氏(全米リアルター協会 日本担当、前アジア/太平洋地区統括責任者)
●
不動産デリバティブ仮想市場アンケート結果報告………37
INFORMATION
………48
社団法人不動産証券化協会は、平成20年5月15日に東京會舘「シルバールーム」に おいて第6回通常総会を開催し、平成20年度の事業計画の審議・承認、役員の選任な どを行いました。
総会後は懇親会を同「ローズルーム」で開催しました。国会議員、官庁、友好団体、
協会会員などから約600名に参加いただきました。
ARES SPECIAL
通常総会・懇親会を開催
第6回
第6回通常総会
日時:平成20年5月15日(木)午前11時〜正午 会場:東京會舘「シルバールーム」
わが国の不動産証券化市場は引き続き拡 大傾向にあるが、米国サブプライムローン 問題に端を発した金融・資本市場の混乱や 信用収縮の余波を受け、調整局面を迎えて いる。また、金融商品取引法の施行に伴う 内部管理態勢整備の強化、わが国の企業会 計基準委員会と国際会計基準審議会との東 京合意に基づく会計基準のコンバージェン スの加速、環境問題への関心の高まり等、
業界を取り巻く環境は大きく変化してい る。
しかしながら、わが国の賃貸不動産市場 に目を向けると、景気の下振れリスクはあ るが、依然堅調なファンダメンタルズを維 持しており、J-REITをはじめとする不動産 証券化商品のパフォーマンスに関する正確 な情報発信がますます重要となっている。
また、金融商品取引法への対応の徹底と それを支える人材の育成を図り、不動産関 連特定投資運用業の市場における信認を向
上させる必要がある。そのためにも、金融 商品取引法の運用段階における実態との齟 齬の改善を行うことが喫緊の課題である。
さらに、J-REITの海外不動産投資解禁に 象徴されるように、金融・資本市場のグロ ーバル化の進展はますますその勢いを増し ている。そのため、会計基準のコンバージ ェンスに代表されるさまざまな国際標準化 に対する投資家ニーズに適切に対応すると ともに、海外各国と比較し、わが国の法税 制の優位性を確保する活動が重要となりつ つある。
このような環境変化に対応するために、
第二期中期事業計画の最終年度である本年 度は、従来の活動に加え、わが国の不動産 投資市場を世界に向けてアピールする国際 会議を開催するとともに、以下の項目に重 点を置き、「公正で透明性の高い、厚みの ある市場の構築」を目指し、都市再生と地 域再生に貢献する。
(1) 第1号議案:平成19年度事業報告及び収支決算の承認に関する件
(2) 第2号議案:事業安定化基金の取崩に関する件
(3) 第3号議案:平成20年度事業計画及び収支予算の決定に関する件
(4) 第4号議案:入会規則の一部変更に関する件
(5) 第5号議案:役員の選任に関する件
(6) 第6号議案:会計処理規則の一部変更に関する件
総会議案
平成20年度事業計画
(1)J-REITの商品特性に対する個人投資家 等の理解を促進するデータ整備と情報 発信
(2)金融商品取引法等、不動産証券化関連 法制の運用の周知徹底と適切な対応
(3)REESA東京大会の開催と海外諸団体 との連携による国際標準化への対応
(4)ARES J-REIT プロパティ・インデック スのベンチマークとしての評価の確立
(5)マスター資格制度の普及と定着
(6)会員に対する法令遵守や内部管理態勢 強化の支援と徹底
(7)不動産証券化の地方への普及
●調査研究事業
(1) 研究会活動
①年金の不動産投資に関する研究会(継 続)
年金等機関投資家の不動産投資におけ る、投資パフォーマンスの開示方法等に 検討課題を絞り込んで研究を行う。
②J-REITによる海外不動産投資に関す るワーキング(継続)
情報開示レベルなど実務上の課題につ いてさらに検討を行う。
③導管性研究会(継続)
REITやTMK(特定目的会社)におい て、税と会計の不一致に起因する導管性 破綻の危険性が高まっている。国際会計 基準への収れんに伴う時価会計の流れに 対応するため、日本と諸外国の導管性要 件の比較(宥恕規定、支払配当損金算入
要件算定式、同族会社要件等)について 調査・研究を行い、わが国における導管 性要件のあり方について検討を行う。
④J-REIT商品特性研究会(継続)
J-REITを対象に、ファイナンス手法 を用いて金融商品としての特性を継続的 に分析する研究会である。本年度も引き 続き研究を続行する。
⑤CREマネジメント懇談会(継続)
引き続き、19年度の懇談会参加企業を 中心としたネットワーキングのための活 動として勉強会等を行う。
(2) 提言活動
①制度改善要望活動
・金融商品取引法への対応(制度改善要 望、解釈の明確化、自主規制機関との 連携、投資一任業小委員会の新設等)
・プロ向け実物不動産投資スキームの検 討(不動産特定共同事業法ワーキング)
②税制改正要望活動
・不動産取得税の軽減措置延長要望(期 限切れ措置への対応)
・導管性要件等の改善要望
③会計基準に関する要望活動
・SPEの連結、投資不動産等に関する企 業会計基準委員会(ASBJ)の動きへ の対応
・コンバージェンスに関する対応(コン バージェンスワーキング)
(3) 調査活動
不動産投資市場の発展に資する基礎デー タ・情報の整備と発信のために、下記の活 動を行う。
ARES SPECIAL ARES SPECIAL
事業内容 重点課題
①アンケート調査
・個人投資家のJ-REITに関する意識調 査の実施
・第4回私募ファンド実態調査の実施
・第8回機関投資家アンケートの実施
・第3回一般事業会社の不動産保有意識 調査の実施
・各種機関投資家のニーズに関するヒア リング調査の実施
②事例調査
・証券化商品事例の情報収集
・先端的な取り組みやユニークな事例の ヒアリング調査の実施
・「世界のREIT市場」等、海外の不動産 投資市場に関する情報収集
③データ整備
・海外投資家に向けた不動産投資市場情 報(Japanese Real Estate Market Overview(仮称))の発信
・J-REIT Viewの安定稼動と充実
・J-REIT Property Databaseの安定稼動 と充実
・ARES J-REIT Property Indexが市場 関係者からベンチマークとして一層の 認知を受けるための活動並びに品質の 向上
④その他の課題
・不動産デリバティブに関する調査
・欧米のプライベートファンドの情報開 示に関する調査
・REITのM&Aに関する研究
・新たな信託制度を活用した集団投資ス キームの研究
・豪州におけるグローバル不動産投資に 関する動向調査
(4)研究助成金制度の運営
不動産証券化に有用な研究を行っている 内外の研究者を助成するため、規定等を整 備し公募を行う。
●広報啓発事業
(1)広報活動
本年度は、J-REITの商品特性に対する 個人投資家の理解の促進と、REESA東京 大会の開催成功を重点にして活動する。J- REITの個人投資家普及のためには、ワー キンググループを組織し、東京証券取引所 などとの連携によるセミナーの支援、マス コミやファイナンシャルプランナーへの積 極的な情報発信などの活動を行う。
①ホームページの充実
・個人投資家に向けた、J-REITに関す るより見やすく、利用しやすいコンテ ンツの開発
・不動産証券化市場の長期トレンドに関 するコンテンツ(データベース等)の 追加
・英文サイトの充実
②会報ARESの発行
会員に対する協会の活動報告の充実を 図るとともに、制度改正や市場の動向に 関するタイムリーな内容の掲載に努め る。
③各種イベントの開催・運営
a)個人投資家向けイベントへの協力 日経不動産ファイナンスフェア、東証 アカデミー等、個人投資家向けイベント への共催や協賛を通じて、個人投資家へ の啓発活動を行う。
b)REESA東京大会の開催
国際的なシンポジウムとして、REESA 東京大会を9月に開催し、日本の不動産 投資市場並びに日本の都市そのものを国 内外の投資家に強くアピールする。
c)CREマネジメントフォーラム
昨年度に引き続き、CREマネジメント フォーラム(第3回)を開催する。
d)不動産投資インデックスセミナー ARES J-REIT Property Indexを不動 産投資インデックスとして普及させるた め、日本不動産金融工学会と共同でセミ ナー(第3回)を開催する。
④法令の対照表・手引書の改訂発行 一連の法改正に伴い、各法令の対照表 と手引書を改訂発行する。
(2)研修活動
①実務研修会
初級実務者を受講対象とした基礎知識 の解説と、中級実務者を受講対象とした 税務・会計等の変更や法令遵守並びに内部 管理態勢についての解説など、対象者レ ベルごとに実務に則した研修会を行う。
②外部研修
地方への不動産証券化の普及に資する 活動として、当協会より講師を派遣し、
研修活動を行う。
(3)国際連携活動
①REESA東京大会の開催
②REESA関連活動への参加
③PCA(オーストラリア不動産投資協会) など海外諸団体との相互交流
●教育事業
不動産証券化実務の教育・資格制度(不 動産証券化協会認定マスター)の普及・充 実に努める。また、資格認定者に対する継 続教育・倫理行動モニタリングについても さらに内容を充実させて行う。
(1)マスター養成講座
①カリキュラムの見直し
法改正や市場環境の変化に対応して、
タイムリーに教材等カリキュラムを見直す。
(2)継続教育
①カリキュラム等の充実
昨年度に引き続き、「不動産証券化ジ ャーナル」充実に努めるとともに、継続 教育カリキュラムの充実を図る。
②コンベンションの開催
マスターを対象として、第3回ARESマ スターコンベンションを7月3日に開催する。
③ユニット活動の支援
マスター認定者による職域・地域毎の 支部活動(ユニット活動)を支援し、マ スターの自主的な勉強会およびネットワ ーキング活動が促進される仕組みを整備 する。
●受託業務事業
不動産証券化に関する調査・研究を、国 や関係機関からの受託業務として行う。
●会員およびマスターの規律保持
会員の「自主行動基準」並びに不動産証 券化協会認定マスターの「職業倫理規程」
遵守の徹底を行う。
ARES SPECIAL
また、反社会的勢力に対する当協会とし ての対応を強化するとともに、犯罪による 収益移転防止に関する法律の趣旨に則り、
マネーローンダリング対応を行う。
●苦情相談対応
東京都消費生活センター、金融庁相談窓 口、法テラスなどとの連携を強化する。リ ーフレット「投資商品としての不動産証券 化商品チェックポイント」の見直し、ホー ムページの個人投資家用コンテンツによる 不動産証券化商品への理解を促す活動な ど、広報活動と一体的に行う投資家への啓 発活動を通じ、トラブルを事前に防止する ための活動に努める。
また、苦情の受付と解決支援に関する規則 および細則、勧誘規則の見直しを行う。
昨年度に引き続き、金融商品取引法にお いて制度化された認定投資者保護団体の申 請に関して検討を行う。
●その他
(1)組織の新設
①投資一任業小委員会
投資一任業に係る業務運営上の課題等 について情報交換と検討を行うために制 度委員会の下に「投資一任業小委員会」
を新設する。
②個人投資家へのJ-REIT普及に関する ワーキンググループ
個人投資家に対するJ-REIT普及策を 検討するため、企画委員会の下に「個人 投資家へのJ-REIT普及に関するワーキ ンググループ」を新設する。
(2)総務・会計
平成20年12月に新公益法人制度への移行 が開始となるため、「公益社団法人」移行 のための具体の準備(移行スケジュール・
チェックリストの作成、総会での議決、定 款・規則等の変更など)を行う。
以上
ARES SPECIAL
理 事 長
副理事長
副理事長
副理事長
副理事長
副理事長
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
専務理事
監 事
監 事
監 事
三井不動産株式会社 代表取締役社長 岩沙弘道
住友信託銀行株式会社 取締役会長 高橋 温
東急不動産株式会社 代表取締役会長 植木正威
野村證券株式会社 執行役会長 古賀信行
三菱地所株式会社 取締役社長 木村惠司
株式会社 三菱東京UFJ銀行 頭取 永易克典
オリックス株式会社 梁瀬行雄
代表取締役社長 荒畑和彦
住友不動産株式会社 代表取締役会長 高島準司
中央三井信託銀行株式会社 取締役社長 田辺和夫
東京建物株式会社 取締役会長 南 敬介
日興シティグループ証券株式会社 代表執行役社長 安倍秀雄
日本ビルファンドマネジメント株式会社 代表取締役社長 西山晃一
野村不動産株式会社 取締役社長 鈴木弘久
みずほ証券株式会社 取締役社長 横尾敬介
株式会社 三井住友銀行 頭取 奥 正之
巻島一郎
鹿島建設株式会社 代表取締役社長 中村満義
大和証券SMBC株式会社 代表取締役社長 吉留 真
三菱商事株式会社 代表取締役社長 小島順彦
役員(順不同、敬称略)
ジャパン リアルエステイト アセット マネジメント株式会社
取締役兼代表執行役社長 グループCOO
先ほど第6回通常総会において、平成20年 度事業計画の決定が滞りなく行われたこと をご報告します。本年度は平成18年度から の中期3ヵ年計画の最終年度であり、さらな る市場の発展に向け全力を尽くす所存です ので、引き続きご支援賜りますようお願い いたします。
さて、昨今の経済情勢は、サブプライム 問題による金融資本市場の混乱が収束の兆 しを見せないなか、エネルギー・原材料価 格高騰の影響によるインフレ圧力も強まり、
世界経済の減速懸念が日々現実味を帯びつ つある状況です。
わが国の不動産証券化市場も当面はその 影響を免れ得ないところですが、一方で当 協会の最近の調査によれば、市場規模はこ
の1年で着実な成長を遂げていることが分か りました。
当協会の会員が運用するプライベートフ ァンドの運用資産総額は、昨年12月末時点 で約11兆8,000億円と、1年前の約8兆2,000億 円から大きく成長しており、J-REITと合わ せ約18兆4,000億円の市場規模となります。
海外の政府系資金からのJ-REIT投資が具 体化するなど、日本の不動産証券化市場は、
中長期的スタンスを持つグローバルな投資 家から魅力的なスプレッドが享受できる安 定的なマーケットとして高い評価を受けて います。
しかしながら世界的に金融市場の信用収 縮が継続し、景気の減速リスクが高まるな か、マーケットや投資家の選好に変化が生 じる懸念も否定できず、今後の動向には引
主催者あいさつ
社団法人不動産証券化協会 理事長
懇親会
日時:平成20年5月15日(木) 正午〜午後1時30分 会場:東京會舘「ローズルーム」
岩沙 弘道
ARES SPECIAL
き続き注視が必要です。
このような状況に対応していくため、今 一度初心に戻り、J-REITをはじめとする不 動産証券化商品の特性を内外の多様な投資 家に正確にご理解いただくための活動を強 化することが大事だと考えています。
そこで本年は、J-REITの商品特性に対す る個人投資家の理解の促進に向けた取り組 みに注力するほか、海外投資家に向けた日 本の不動産投資市場情報「Japanese Real Estate Market Overview」の創設、「J- REIT Property Index」のベンチマークとし ての評価確立に向けた活動、9月「REESA 東京大会」開催など、内外の投資家に対す る情報発信を強化していく所存です。
また不動産投資のクロスボーダー化が進 展するなか、当協会が精力的に働きかけて きたJ-REITの海外投資解禁がいよいよ現実 のものとなり、J-REITの更なる国際化に向 けた大きな一歩を踏み出したことは誠に喜 ばしい限りです。これにより国内外の優良 な不動産を投資対象とし、より高度な分散
投資が可能となり、J-REITの成長可能性は 高まったと考えています。
一方、グローバル化に対応した会計基準 のコンバージェンスや環境問題への関心の 高まりなど、様々な国際標準化への投資家 ニーズに対して、海外諸団体とも連携し適 切に応えていく必要があります。法税制に おいても、わが国が海外と比較して国際競 争力を低下させないよう、研究活動を強化 し、必要に応じ関係各方面への的確な提言 を行うなど、積極的な取り組みを行ってい かなければなりません。
本格的な運用が始まった金融商品取引法 への対応も喫緊の課題です。業務上の実態 との齟齬の改善や解釈の明確化など、会員 への支援を図るとともに、その遵守の徹底 を図り、グローバルな市場からの信認を確 固たるものにしなければなりません。
ご来賓を含め、関係各方面の皆様方には、
引き続きご指導、ご支援を賜りますようお 願い申しあげ、ご挨拶とさせていただきま す。
金融担当大臣の渡辺でございます。
先ほどの岩沙理事長の話を聞いておりま して、10年前を思い出しました。その頃日 本は、大変な危機の中にありました。私も 10年前は、新人類と呼ばれ、何とかこの日 本を金融・資本市場を、ピンチをチャンス に変えていくことが出来ないかどうか、考 えておりました。そこで作ったのがSPC法 でございます。それを皮切りに不動産の証 券化を大いに進めていこうとした訳であり ますが、最初はなかなかうまく行きません でした。しかし、なんと今や13兆円です。
一つ桁を間違えたのかと思うほどの規模の マーケットに育ってきた訳でございます。
これから先はもう1つ桁が大きくなっても、
よろしいのではないでしょうか。
今、世界でも巨大複合金融機関と言われ るところは小康状態には入っておりますけ れども、ちょうど10年前に我が国が経験を したことと非常によく似た困難に直面して いるわけであります。考えてみれば、ベル リンの壁が崩壊して、真っ先に困難に直面 したのが、我が日本であります。90年代半 ばから、世界の金融資産は何と4倍に膨れ上 がっています。この膨れ上がった金融資産 を背景に資源と食料の争奪合戦の様相を呈 しておりますが、我が国金融資産は残念な
がら、この間、意外にも膨らんでいないと いう状況なのでございます。しかし、真っ 先に日本が経験したことと同じようなこと が、今アメリカ、ヨーロッパで起こり始め ています。というのは、もしかしたら、ベ ルリンの壁の崩壊で近代が終わって、近代 の次の時代が今始まっているのかもしれな いのです。そうすると、その最先頭を走っ ているのが、何と我が日本ではないのかと いうことが言えるのでございます。
山本前金融大臣が一生懸命、日本のソブ リン・ウェルス・ファンドを作ろうと運動 を起こされています。世界中のソブリンを 掻き集めてきても、たかだか300兆円。我が 国には、その5倍の家計の富があるではござ いませんか。その内半分の750兆円は塩漬け 資産になっています。まさに、今日本が、
開かれた市場として国際競争力を強化する ことによって、お金が日本で運用され、そ して日本が最先頭を走っていく時代になる のではないでしょうか。
最後になりましたが、不動産証券化協会 の今後の更なる発展と、本日ご出席の皆様 のご健勝を心からお祈り致しまして、私の あいさつとさせて頂きます。
来賓あいさつ
金融担当大臣
渡辺 喜美
氏ARES SPECIAL
本日は、第6回不動産証券化協会通常総会 を滞りなく終えられ、多くの会員並びに御 来賓の皆様のご出席の下、懇親会がこのよ うに盛大に開催されますこと、心からお慶 び申し上げます。
ご来場の皆様には、平素から、国土交通 行政全般にわたり、格別のご支援、ご協力 をいただき、誠にありがとうございます。
この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
皆様ご承知のとおり、国土交通省は、我 が国の社会資本整備を促進する観点から道 路整備費財源特例法改正案を国会に提出し ていたところですが、地方財政や国民生活 の混乱を最小限にとどめるべく、一昨日、
衆議院で再議決され成立いたしました。こ の間、皆様にご心配をおかけしましたが、
今後とも良質な社会資本整備や都市環境の 形成に努めて参りますので、引き続きご支 援をお願いいたします。
さて、改めて申すまでもなく、不動産業 は、我が国の都市開発と不動産取引の円滑 化に貢献し、国民生活・経済に大きな影響 を与える我が国の基幹産業であります。ま た、失われた10年の時代を経て着実に成長 を遂げてきた我が国の不動産投資市場は、
不動産の流動化、有効利用を通じた都市再 生、地域活性化の切り札として今後ともそ の成長が期待されるところであります。
こうしたことから、国土交通省といたしまし ては、不動産投資市場の健全な発達と不動 産流通市場の活性化のため、その環境整備 に引き続き取り組んで参る所存でございま す。特に、本格的な人口減少社会の下、スト ック重視の住宅政策への転換や地球環境問 題への関心の高まりなどを背景として、我が 国の既存住宅市場の活性化は、これからの大 きな課題であると認識いたしております。
このため、特に住宅土地税制につきまし ては、住宅が消費財ではなく、国民資産で あるという認識に立って、諸制度について 関係者の皆様のご支援の下、その延長・拡 充を図るべく全力で取り組んで参ります。
また、今月12日よりJリートの海外不動産 投資が可能となったところでありますが、
今後とも不動産投資市場の健全な発展に向 けた環境整備と我が国の不動産市場に関す る適確な情報発信に、官民挙げて取り組ん で参ります。
申すまでもなく、こうした取組に当たり ましては、何より皆様のご理解とご支援が 大切でありますので、引き続きのご協力を 賜りますようお願いいたします。
結びに、不動産証券化協会のさらなるご 発展と、皆様のますますの御活躍を心から 祈念いたしまして、私のあいさつとさせて いただきます。
来賓あいさつ
国土交通副大臣
平井 たくや
氏本日はご多用中のところ、衆参両院の諸 先生方、関係官庁の皆様をはじめ、多数の 方々にご参集いただき誠にありがとうござ います。
さてJ-REITが誕生して6年半。2001年に初 めて上場した日の翌日が9.11と、記憶は大 変鮮烈です。振り返ればこの上場以降、日 本経済は回復の気流に乗りました。先ほど 渡辺大臣がおっしゃったように、SPC法や 不動産特定共同事業法の施行により不動産 を共同の投資対象にしていくことで成し得 た回復でした。
しかしサブプライムローン問題の影響で、
現在、J-REIT市場の価格が低迷し、この結 果、時価総額も相当程度減少しました。世 界の金融市場が混乱し、投資家も投資対象
に対する不信が強くある状況です。
しかしJ-REITは本来サブプライム問題の 影響を受ける仕組みになっていません。米 国REITの場合は、住宅ローンおよび商業用 不動産ローン等の不動産融資に投資するモ ーゲージREITがあるため、サブプライムロ ーンの影響を受けて資産内容が劣化すると いう可能性もあると言えますが、J-REITは そのような恐れの一切ない商品構造になっ ています。J-REITは不動産を運用して獲得 した運用益の100%を投資家に分配するとい う非常に単純明快な仕組みで、透明性が高 く、安定的な配当が魅力の商品です。ご列 席の皆様には今後とも、J-REITの商品特性 と魅力を投資家にご理解いただくようご尽 力をお願いします。
乾杯の発声
社団法人不動産証券化協会 理事
南 敬介
日本の不動産証券化市場は、近年急速に 成長し、国土交通省の不動産証券化実態調 査によれば2006年度に証券化された不動産 資産は約7.8兆円に及ぶ。投資の対象となる 不動産証券化商品は、REITや特別目的会社 の発行する特定社債のほか多様な形態のも のも流通しつつあり、個人投資家や機関投 資家にとっての投資先の一つとして認識さ れつつある。
不動産証券化商品は、投資先の不動産が 生み出すインカムゲインやキャピタルゲイ ンがその収益の元になっており、通常の金 融資産などとは収益の内容やリスクの内容 が異なると考えられるが、投資家がどのよ うな動機でどのような投資を行うのか、ま たその投資行動がどのようになるのかとい う点については、まだ制度が発足してあま り年数を経過していないためか、実証的な 解明は十分進められていない。
不動産証券化商品をはじめとして、多様 な収益率とリスクを有する金融・不動産資 産に対して個人がどのような投資行動を行 うかは、伝統的なポートフォリオ理論(平
均−分散アプローチ)に従うならば、期 待収益率とリスクの組み合わせに関する 家計の効用の無差別曲線と危険資産と安 全資産との可能な組み合わせによる市場 機会曲線との接点により定まるとされて おり、特に個人の場合、危険からの回避度
(危険回避度)などの個人的な属性や傾向 が投資行動に影響を与えていることが指摘 されている。
ところが、危険回避度などは直接個人に 対してこうした属性を確認することは極め て困難であったため、本人の年齢や職業な どの代理変数で把握することが多かった。
しかし、近年の行動経済学の成果により、
個人に対して仮想的な質問をすることによ り危険回避度や時間選好率について把握す ることが可能となりつつある。
そこで、筆者は、こうした不動産証券化 商品への投資行動を金融・不動産資産と対 比して明らかにするため、2006年から07年 にかけてインターネットを活用したアンケ ート調査を行い、そこで得た情報を元に、
個人や法人の属性や傾向が不動産証券化商
ARES REPORT
ARES REPORT
大阪大学 社会経済研究所 准教授
沓澤 隆司
不動産証券化市場の投資家の
選択と動機
品への投資行動に与える影響に関する分析 を行った。本稿はその概要である。
個人投資家の投資行動の分析
個人の不動産証券化商品をはじめとした 投資行動を明らかにするため、アンケート 調査を行い、定期預貯金、保険・年金、公社 債、不動産証券化商品、REIT、投資用不動 産、株式の保有状況とそうした資産を保有 する者の年齢、住宅ローン額、年収、資産 総額などの個人の属性に関する質問のほか、
危険回避度や時間選好率を推計するための 仮想的な質問を試みている。危険回避度に ついては、個々人に対して、①50%の確率 で報酬が2倍に上昇するか、10%、30%、
50%減少するという選択肢と、②5%必ず 報酬が上昇するという選択肢とどちらを選 択するかという質問を行い、そこで得られ た情報を元に計測し、時間選好率について は、それぞれの個人に対して、−5%、0%、
0.1%、0.5%、1%、2%、6%、10%という 金利の下で、100万円の報酬を受け取る時期 を1ヶ月後にするか、13ヶ月後にするかとい う質問を行い、そこで得られた情報を元に 計測した。
アンケート調査は、あらかじめ調査会社 に登録されたモニターの中から抽出された サンプルに対してインターネットを通じて 調査票を発送する方法で2007年3月に実施 し、2,690件(回収率62.5%)の回答を得た。
集計の結果によれば個人が保有する資産 総額の中に占める割合は、預貯金が全体の 半 分 近 く ( 4 3 . 5 % ) を 占 め 、 保 険 ・ 年 金
(20.3%)、株式(18.7%)、投資用不動産
(10.5%)が続く。また、各資産の投資規模 の分布は図1のとおりであり、株式、不動産 の投資規模が大きいのに対し、REITや不動 産証券化商品は小さく、個人にとって手頃 な投資対象となっている。
これまでも、個人の投資行動については、
いくつかの研究例があり、中でも牧・古
0% 20% 40% 60% 80% 100%
株式 投資用不動産 REIT 不動産証券化商品
公社債 定期預金
100万円未満 〜200万円 〜300万円 〜500万円
〜1000万円 〜2000万円 〜5000万円 5000万円以上
図1 各資産の投資規模の分布(件数による割合)ARES REPORT
川・渡辺・河・伊藤(1991)は、逐次決定 トービットモデルやプロビット分析を用い て、個人の属性や傾向がそれぞれの資産の 選択や保有量に与える影響を分析している。
本稿においても同様の手法を用いるが、個 人の投資傾向を表す主要な指標である危険 回避度は、外生的に定まるものではなく、
個人の性別、職業、資産の保有状況などに も左右されることから、分析の際にはその 内生性を考慮する必要がある。そこで、本 分析においては、アンケート調査によって 得られた個人の属性データと資産への投資 状況をもとに、まず、危険回避度に影響を 与える要因を分析し、従来の分析では利用 しなかった操作変数として用いることで、
危険回避度、時間選好率やその他の個人の 有する属性がそれぞれの金融資産の保有額 や選択にどのような影響を与えるかについ て逐次トービットモデルとプロビットモデ ルに従って検証した。説明変数には、危険 回避度と時間選好率とともに、年齢、住宅
ローン、年収、資産総額、他の資産の保有 額、危険回避度の操作変数には性別、住宅 の部屋数、職業を使用して、資産選択や資 産の保有額に与える影響を検証した。
推計の結果のうち、まず危険回避度がそ れぞれのカテゴリーの資産の選択や保有額 に与える影響に関しては、図2に示すとおり であり、定期預金、保険・年金と公社債に 関して正の係数を示したが、REIT、不動産 証券化商品、不動産、株式に関しては負の 係数を示している。このことは危険回避度 が高い者は、定期預金等を選好し、危険を 冒してもリターンの期待できる資産を選好 する者は不動産や株式を資産として選択し ており、REITや不動産証券化商品について は、不動産や株式と同様に、危険選好者に 選択される資産となっている。この結果は、
資産の保有動機に安全性を掲げる者が預貯 金の保有に強い選好を示し、収益性を掲げ る者が株式に強い選好を示す牧ほか(1991)
の分析とも整合する。
0.086 0.006 0.053 0.291
0.120
0.375
-1.331 -1.367 -1.220
-1.053 -0.117 -0.105
-0.091 -0.082
-1.6 -1.4 -1.2 -1.0 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6
定期預貯金 保険・年金 公社債 不動産
証券化商品
REIT 不動産 株式
資産選択 資産保有量
図2 個人投資家の危険回避度の資産保有量、資産選択への影響注:縦軸の数値はプロビット分析とトービット分析によって示された資産選択(選択することを1、選択しないことを0とする変数)、
資産保有量(対数値)に与える影響の度合いを示す係数である。
時間選好率は、現在の効用をどの程度選 好するかの指標であるが、定期預金等をは じめとして原則として負の係数を示し、こ れらは将来の効用を重視していると考えら れるが、不動産、株式は正の係数を示し、
現在の効用を重視していると考えられる。
このほか、資産総額の保有量に対しては 正の係数、住宅ローンの残高に対しては負 の係数を示し、定期預金等の保有額は、多 くの場合、よりリスクの大きな資産の保有 額に負の影響を与えていることが認められ る。資産総額が投資の保有額に与える影響 の程度は、不動産証券化商品やREITの方が、
不動産、株式より小さく、小口化された投 資に適していると考えられる。
機関投資家の投資行動の分析
機関投資家の投資行動についても、イン ターネットを通じたアンケート調査を別途 行った。本調査は、2006年12月に機関投資 家の投資活動を担当していると回答した者 に対して行い、REIT、不動産証券化商品に
関してはスポンサーとなることが多い建 設・不動産会社、証券会社を除いた377名の 結果について分析した。投資先としては個 人投資家に対して尋ねた資産のカテゴリー のほか、MBSも対象としている。
本調査の対象となる機関投資家の運用資 金総額による割合では、銀行等の金融機関
(51.5%)、保険会社(10.4%)、年金・退職基 金・投資顧問会社(29.4%)で9割前後を占め る。運用先の投資額の割合を見ると、表1の とおり、公社債(48.3%)と株式(23.3%)
で全体の約4分の3を占め、REIT(1.29%)
と不動産証券化商品(0.68%)は合計で 2%弱程度である。望ましい投資先の割合 とそれぞれの予想収益率は、REIT、不動産 証券化商品への希望が現状を上回り、潜在 的な需要が大きい。
機関投資家の属性が投資行動にどのよう な影響を与えるかをプロビット、トービッ ト分析を用いて検証した。説明変数には、
資産総額、有利子負債、それぞれの投資家 が投資先を判断する際に最も重視する事項
(収益性、リスクの小ささ、リスク分散)、
公社債 48.30 49.65 2.28
株式 23.30 22.64 4.43
投資用不動産 0.73 1.83 3.79
REIT 1.29 3.35 3.26
不動産証券化商品 0.68 2.38 3.06
MBS 2.92 4.24 2.77
表1 投資先の現在割合、希望割合、予想利益(単位:%)
現在割合 希望割合 予想利益
運用主体(金融機関、保検会社、年金・退 職基金を運用する団体・投資顧問会社)を 用いた。
投資担当者が投資先を判断する際に重視 する事項との関係では、REITや不動産証券 化商品を選択することは「収益性」に関し て公社債と株式の中間的数値で有意となり、
「リスクの小ささ」では株式より大きな負の 係数を有意に示し、「リスク分散」では有意 に正の係数を示した。
投資保有量決定に関する推定においては、
図3の示すとおり、「収益性」は有意に株式 や不動産よりも大きな数値となり、「リスク の小ささ」に関しては有意に株式よりも大 きな負の係数を示し、REITや不動産証券化 商品は、収益性やリスクを選好する投資家 に強く選好されていることが推察される。
資産総額や有利子負債との関係では、投
資選択、保有量いずれについても、REITや 不動産証券化商品への投資は資産総額では 正の係数を、有利子負債では負の係数を示 し、資産総額が多くなり、負債の制約が小 さいほど多様な資産への投資の可能性が拡 大することが示されている。
MBSに関しては、有意な結果にはなって いないが、「収益性」で公社債より大きい正 の係数、「リスクの小ささ」で公社債より小 さな正の係数、「リスク分散」で正の係数を 示している。市場規模はまだ小さいものの、
公社債よりややリスク選好的投資家が投資 し、より多くの収益が見込める投資対象と して認められている。
推定結果が示す不動産証券化商品 とリスクとの関係
ARES REPORT
0.067
0.354
0.307
0.374
0.283
0.184 0.184
0.133
-0.335 -0.288
-0.105 -0.114 0.25 0.301
0.378
0.265
0.115 0.555
-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
公社債 MBS 不動産
証券化商品
REIT 不動産 株式
収益性 リスクの小ささ リスク分散
図3 機関投資家が投資先を判断する際に最も重視する事項が投資保有量に与える影響 (トービット分析によって示された係数)
注:縦軸の数値はトービット分析によって示された投資保有量(対数値)に与える影響の度合いを示す係数である。
以上の分析からは、投資家が資産選択を 行う場合にリスクに対する態度が大きな役 割を果たしているのがわかる。個人投資家 の場合は、危険回避度がそれぞれの資産へ の投資行動に大きな影響を与えており、機 関投資家の場合は、リスクの大きさのほか、
収益性やリスク分散への評価も投資行動に 影響を与えている。今後、地価や株価の変 動がそれぞれの資産の保有状況にも影響し ていくことが考えられ、その動学的な影響 も分析していくことが必要である。
投資単位が通常の株式並みに小口化され ることが多く、リターンが実際の投資不動 産の生み出す収益の影響を受けるREITや 不動産証券化商品は、リスクが小さい商品 を購入するには物足りない個人投資家など にとっては、新たな投資の選択肢となると も考えられる。逆に、リスク回避的な投資 家にとっては、まだなじみのない投資対象 となっている可能性がある。また、こうし た投資対象に資金が投入されることは、不 動産証券化を通じて資金調達を行い、良質 な都市整備を行おうとする不動産事業者に 新しい資金調達手法を与えることとなるた め、リスク選好的な投資家だけでなく、リ スク回避的な投資家も含めて広く資金調達 を募る必要性は大きい。そこで、公的な観 点から行政機関が関与して都市再生を図っ ていくべき事業については、出資や不動産 証券化商品の取得について公的主体が支援 を行い、信用力の補完を行えば、リスクに 対する懸念もある程度払拭され、良質な都 市整備事業に対する円滑な資金調達が可能 になると考える。その点からは、たとえば 2003年度から創設され、優良な民間都市開
発事業に出資や社債等の取得を行う都市再 生ファンド支援事業は一つの解決策となる であろう。
参考文献
沓澤隆司(2008)「住宅・不動産金融市場の 経済分析」(日本評論社)
牧厚志・古川彰・渡辺信一・河信行・伊藤 潔(1991)「家計における金融資産選択行 動−Tobit Modelによる金融資産選択モデ ル」『郵政研究レビュー』No.1、pp.55-118
1963年生まれ。東京大学法学部卒。ロンドン大学
(LSE)修士課程修了。国土交通省住宅資金管理官付 企画専門官等を経て、現在大阪大学社会経済研究所 准教授。大阪大学博士(経済学)。著書に「住宅・不 動産金融市場の経済分析」(日本評論社)。主要論文 に「不動産証券化市場における個人の危険回避度と 投資行動」『住宅土地経済』No.67、「REIT市場の収 益性と投資家の行動に関する分析」『都市住宅学』
No.59など。
くつざわ・りゅうじ
今回の調査結果の要点は以下のとおりで ある。
・平成19年12月末時点において、会員社が 運用する不動産私募ファンドの運用資産 総額は、11.8兆円(昨年度8.2兆円)と昨 年度より市場規模が拡大していることが わかった。一方、J-REITの運用資産総額 は平成19年12月末時点で6.6兆円であり、
我が国の不動産私募ファンド市場はJ- REIT市場を大きく上回る規模になってい る。
・J-REITと不動産私募ファンドを合わせた 運用資産総額は、平成18年12月末時点で 13.6兆円であったものが、平成19年12月末 時点では18.4兆円と1年間で1.4倍の規模に なり、不動産証券化市場が順調に成長し
ていることがうかがえる。
・不動産私募ファンドの保有不動産の上位3 用途は、「オフィス」(46.5%)、「賃貸住宅」
(14.6%)、「商業施設」(12.0%)で、全体 の3/4を占めている(運用資産額ベース)。 前回調査との比較では、「オフィス」「賃 貸住宅」「商業施設」が前回並あるいは前 回よりシェアを落としている一方で、「物 流施設」「ホテル」「複合施設」のシェア が増加しており、用途の分散化の進展が みられる。
・保有不動産の所在地(投資対象地域)に ついては、「東京23区」が物件数で約4割 と多数を占めるが、「北海道・東北地区」
「北陸・中部地区」「近畿地区」「中国・四 国地区」「九州・沖縄地区」の物件数のシ ェアが増加しており、投資対象地域がい っそう全国に拡大している。
ARES REPORT
ARES REPORT
「第3回会員対象私募ファンド 実態調査」集計結果
調 査 対 象:不動産証券化協会正会員及び賛助会員(2007年12月31日現在)のうち、
法律事務所、会計事務所、鑑定事務所、税理士法人等を除く245社 調 査 時 点:2007年12月末日時点
調 査 時 期:2008年2月〜3月
有効回答数:245社(有効回答率:100%)
不動産証券化協会では、昨年に引き続き会員社の協力を得て、私募ファ ンドの実態調査を行った。この調査は今回が3回目であり、主な調査内容 は運用ファンド数、運用資産額、保有物件数、物件のタイプ(用途)、物 件の所在地、法的形態、使用ビークル、出口戦略などである。
本稿では、調査結果の概要を紹介する。
(調査部 主任研究員 大坪 嘉章)
1. 調査結果の要点
本調査は当協会会員(正会員・賛助会員)
またはそのグループ会社が「運用している 私募ファンド(資産運用型)」を調査対象と した。本調査において、対象外としたもの は以下のとおりである。
【本調査の対象に該当しないもの】
・公募型商品〔不特定かつ多数(50人以上)
に対して新たに発行される有価証券の取 得の申込みを勧誘するもの〕
・上場J-REIT
・資産流動化法商品のうち、資産の流動化 を目的とするもの(資産の運用を目的と してTMK等のビークルを使用する場合は 本調査の対象)
・不動産特定共同事業法商品
・CMBS(商業用不動産担保ローンの証券 化)、RMBS(住宅ローンの証券化)
・自社所有不動産等を、証券または不動産 の持分などに仕立て、オフバランスおよ び資金調達を目的としたもの
(例)本社ビル等コアアセットの処分を形式 的に行い、資金調達を行うもの
(例)一時的な資金調達を目的として便宜的 にSPC等を活用したもの
本調査における定義は以下のとおりであ る。
(1)「私募ファンド」
本調査の対象となる「私募ファンド」は、
私募型商品のうち、資産運用を目的とした ものとし、以下の条件に該当するものとす る。
①不動産証券化商品のうち、ビークルによ る投資家からの資金調達が私募で行われ る商品。
②「不動産証券化」の定義は、ビークルに よる資金調達が、証券取引法上の有価証 券発行による仕組みに加え、GK-TKスキ ーム(旧YK-TKスキームを含む)のよう にノンリコースローン等有価証券発行以 外の形態で行われる仕組みも含む。
③証券取引法上の「私募」(少人数私募、プ ロ私募)に加え、借入等、相対または特 定、少数の投資家から資金調達を受ける ものを含む。
④ファンド(ビークル)の保有資産は原則 として実物不動産または不動産信託受益 権とする。CMBS(商業用不動産担保ロ ーンの証券化)、RMBS(住宅ローンの証 券化)は、本アンケート調査では対象外 とする。
⑤ファンド(ビークル)は、国内籍のもの とする。
(2)「運用」
本調査における「運用」とは、ファンド
(ビークル)の運用・管理(アセットマネジ メント)を行うことを示す。たとえば、以 下のようなプレイヤーをファンドの運用者 と位置付ける。
①GK-TKスキーム(旧YK-TKスキームを含 む)による匿名組合営業者〔いわゆるダ 2. 本調査が対象とする私募ファンド
3. 本調査における定義
ARES REPORT
ブルSPC方式においては、投資家から匿 名組合出資を受け入れるためのビークル〕
のファンドマネジャー
②投信法上の投資法人スキームにおける投 資信託委託業者(未上場不動産投資信託)
等
(3)「私募ファンドの形態」
「一任勘定型」:ファンドの運用者に運用の 裁量があるもの
「物件追加取得型」:ファンドの組成段階、
投資家募集段階に物件の一部が特定され、
さらに投資家からの追加拠出により物件を 追加取得するもの
「物件特定型」:ファンドの保有不動産がフ ァンドの期間を通じ特定されているもの
(4)「私募ファンドの運用戦略」
「コア型」:比較的優良な物件を取得し、イ ンカム収益を重視して安定的な運用をめざ すタイプのファンド。目標リターン3〜8%
程度のファンドを目安とする。
「オポチュニティ型」:取得対象を不良債権 がらみなどの劣化不動産に絞り、権利関係 の調整や大規模な修繕などによって問題点 を改善して価値を高めた後、売却するとい ったキャピタルゲイン狙いのファンド。目 標リターン12%以上のファンドを目安とす る。
「バリューアッド型」:「コア型」と「オポ チュニティ型」の中間的なタイプのファン ド。目標リターン8〜12%程度のファンドを 目安とする。
(1)私募ファンドの運用状況
当協会会員社(グループ会社含む、以下 同じ)の約36%が私募ファンドの運用を行 っており、昨年より微増している。運用を 検討している会員社を含めると会員社の約 38%が私募ファンドの運用あるいは検討を 行っていることになる。また、調査時点で 上場J-REITを運用する会員社が39社含まれ ていることから、公募・私募の不動産ファ ンドを運用する会員社は合計で127社とな り、会員社の半数以上が実際に不動産ファ ンドの運用を行っていることがわかる。
(1). 会員社等における運用状況(企業数ベース) (%)
運用している J-REITの運用会社 運用を検討中 運用していない
35.9%
15.9%
2.9%
45.3%
■運用している 88社
(35.9%:有効回答数に 占める割合、以下同じ)
■J-REITの運用会社 39社(15.9%)
■運用を検討中
7社(2.9%)
■運用していない 111社(45.3%)
4. 主な集計結果
(2)私募ファンドの運用実態(運用資産 額、総ファンド数、保有物件総数)
運用88社における私募ファンドの運用資 産総額は11.8兆円にのぼっており、同時点 のJ-REITの運用資産額との差は約5.1兆円 と、昨年の2.8兆円より拡大している。私募 ファンド市場はJ-REIT市場を凌ぐ大きな成 長を遂げているといえる。
ま た 、 各 社 の 運 用 資 産 額 に つ い て は 、
「500億円未満」の運用会社が半数を占める 状況は昨年と変わらないものの、運用資産 規模の大きい運用会社は着実に増加してお り、1社あたりの運用資産額平均も一昨年の 1,092億円、昨年の1,180億円から今回1,337億 円と規模を拡大している。
(3)私募ファンドの保有不動産のタイプ 保有不動産タイプを物件数で見ると、「賃 貸住宅」の物件数が昨年の1,254から1,559へ と全体の半数近くに増加し、昨年の832から 775に物件数が減少した「オフィス」との差 が拡大した。また昨年との比較では、「商業 施設」「物流施設」の用途が増加し、物件用 途の分散が進展している。
運用資産額でみると、「オフィス」は3.9 兆円と昨年(3.4兆円)より資産額で増加す るもののシェアは56%から47%へ縮小した 一方、「物流施設」「ホテル」「複合用途」の シェアが増加しており、運用資産額ベース でも用途の分散の進展がみられる。
■運用資産額 117,666.9億円注1
(有効回答数:88社)
■総ファンド数 704ファンド
(有効回答数:82社)
■保有物件総数 3,592物件
(有効回答数:82社)
(2)-2. 運用資産額の分布(過去調査との比較) (%)
58.2
9.1 14.7
2.3 10.9 3.6 1.8
10.9 5.510.3 51.5
13.2 2.95.7 2.9
8.0 10.2
8.0 15.9 50.0
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0
4.4
500億円未満 500〜
1,000億円未満 1,000〜
1,500億円未満 1,500〜
2,000億円未満 2,000〜
2,500億円未満 2,500〜
3,000億円未満 3,000億円以上 H17.12 H18.12 H19.12
(2)-1. 運用資産額の比較(億円)
61,140
82,573.9
117,666.9
66,550.4
0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000
H17.12 H18.12 H19.12
億 円
J-REIT 私募ファンド 54,057.6
34,064.3
注1 今回調査では前回調査より会員企業の増加に より、調査対象企業が36社増加した。前回調 査と同じ対象企業における運用資産総額は 107,819億円である。