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Design Acceptability for Many-objective Optimization : Silent Supersonic Technology Demonstrator as a Task

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

Design Acceptability for Many-objective

Optimization : Silent Supersonic Technology Demonstrator as a Task

井上, 誠

秋田工業高等専門学校

裴, 岩

会津大学

髙木, 英行

九州大学大学院芸術工学研究院

http://hdl.handle.net/2324/1800889

出版情報:進化計算学会研究会プログラム. 第12回, 2017-03-13. The Japanese Society for Evolutionary Computation

バージョン:

権利関係:

(2)

1

はじめに

研究の背景は,進化的多目的最適化(EMO)アル ゴリズム研究が実用解をいかに見つけるかというよ りも,いかに多数の多様なパレート解を探すかという 傾向にある.この二つは,目的数が多くなると悪くな ることが指摘されており,多数目的問題と呼ばれてい る.工学や設計の現実問題においては,必要な解は最 終的に一つ,あるいは少数であるために,解を選ぶ必 要,つまり意思決定をする必要がある.また,エンジ ニアや設計者が望ましいと考える解の領域が存在す る場合もある.

研究の動機の一つは,現実世界では多目的問題は 様々存在していることである.それは,最適化問題だ けでなく,本論のタスクのように非劣解の個体群をど のように評価するのか,あるいは最終的に数個の解を 選択する意思決定も,実問題では多目的問題が一般的 だからである.

我々の研究の現状は,設計者の各目的の値に対する 受容できる度合い,あるいは望ましい度合いを受容度 とし,評価に用いることを提案している[22].

現実問題での課題は目的数が多数に及ぶ多数目的 問題である.また,設計者,エンジニア,ユーザ,選 択者によって考え方も様々に異なる.個体を評価,ラ ンキング,選択することは進化的計算(EC)におけ る最適化そのものとは異なるが,その過程の重要な一 部分である.最終的には1つ,あるいは数個の個体を

Design Acceptability for Many-objective Optimization -- Silent Supersonic Technology Demonstrator as a Task --

† Makoto Inoue (http://inoue.s201.xrea.com/)

†† Yan Pei (peiyan [at] u-aizu.ac.jp)

‡ Hideyuki Takagi (http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~takagi/)

Department of Civil and Environmental Engineering, National Institute of Technology, Akita College ()

School of Computer Science and Engineering, The University of Aizu (††)

Faculty of Design, Kyushu University ()

選択する際には,個体をランキングすることが必要と なる.

これらの現実での多数目的問題の課題を解決する ために提案している受容度に基づく手法の有効性を 示すことが,本研究の目的である.また,従来法とは どのように異なるのか等の受容度の性質を明らかに することも研究目的である.

研究のアプローチ(方法)は,次のとおりである.

1. 静粛超音速研究機(S3TD)[2]を実験のタスクと する.

2. 設計者の先行研究論文による選好解を元にした 受容度関数を作成する.

3. 比較対象を従来法の単調増加/減少関数とする.

4. 受容度の統合方法と重み付けの組合せによるラ ンキングを作成する.

5. それらのランキング結果に対する設計者の意見 を考察する.

これらによって,提案手法の有用性と性質を考察する.

2

関連研究

2.1 先行研究

目的数が多数に及ぶ多数目的最適化において特に 収束性が問題になることが指摘されている[12,14].こ の解決方針として,設計者やユーザの目的に対する評 価に基づいたECである対話型進化的計算(IEC)[21]

を用いる検討も行われている.

これまでのEMOはパレート・アプローチによるも の[8]が一般的であり,NSGA-II [6]などがその代表で ある.最近では,探索ベクトルを分配したMOEA/D [24],reference lineを用いたNSGA-III [4]などが提案さ れている.探索ベクトルやreference lineを用いること で解の探索方向を限定できるとされている.これらの 方法を利用し,ユーザの嗜好方向を探索するEMO手 法として,reference point based NSGA-II [7],interactive MOEA/D [9]等が,reference lineによるユーザ嗜好方向 の探索の研究[16]等が提案されている.

井上誠

,裴岩

††

,高木英行

秋田工業高等専門学校環境都市工学科

,会津大学コンピュータ理工学部

††

, 九州大学大学院芸術工学研究院

多数目的最適化を目指した設計受容度

――静粛超音速研究機をタスクとして――

(3)

更に,EMOとIECのハイブリッド手法の先行研究と して,reference direction手法による意思決定の対話型 EMO[5,17],ユーザのタスクに対する定性的目的を対 話型手法でEMOに導入する研究 [18],ユーザの意思に 基づくインタラクティブ探索[23],多目的意思決定手 法のレビュー[20]などがある.また,パレートフロン トのニーポイント[1]の検出及び可視化による意思決 定支援[10]は,本論と同じS3TDをタスクとして用いて いる.

提案の受容度は,Keeneyらの効用関数(utility function)[1,11,15,19]と類似点がある.効用関数は,

例えば「安い方が良い」,「広い方が良い」という目 的の評価が単調増加,あるいは減少であることを前提 に,線形,あるいは指数を用いた非線形の関数型にし ている.

2.2 これまでの我々の研究

我々はこれまで,受容度の提案をトイ・タスクに対 しての実験によって行った [22].受容度とは,問題の 各目的に対する設計者,ユーザの好み,経験や技能を 基にした受け入れられる度合い,望ましいと思われる 度合いと定義している.各目的の値に対して受容度曲 線,あるいは直線を描くことで関数化する.受容度は 単調の増加/減少の関数である必要はなく,受容度の 範囲を定めることも,ファジィ制御におけるメンバシ ップ関数のように山や谷のような形状も描ける点が 特徴である.さらにそれを加法,乗法,その他の演算 で統合することで,多数目的を一つの指標,評価値で 表すことができる.これを統合受容度と呼んでいる.

なお,受容度関数はメンバシップ関数のように[0,1]

に制約されるものではない.統合の際には各受容度は 重み付けをすることもできる.統合方法や重み付けは 効用関数と類似点[15,19]がある.

また,株式会社ネクストが国立情報学研究所の協力 により研究目的で提供しているHOME’S データセッ トを利用した賃貸住宅検索の研究を行い,限定的な実 験ではあったが,多数目的問題の目的数が増えても同 ランクの個体数が増加することなくランキングする ことを確認した[13].

2.3 S3TDについて

S3TDとは,Silent Supersonic Technology Demonstrator [2]であり,JAXAが2006年頃より研究し ている.本研究で用いたS3TDのデータセットはその第 一次多分野融合最適化の結果であり,58設計変数,5 目的について,16個体,12世代のEMOをJAXAのスーパ ーコンピュータで行い,75個体の非劣解を得たもので ある.

5目的は,次のとおりである.

 目的1は,マッハ1.6,高度16kmの超音速巡航時の 圧力抵抗S・C_Dp [m2] を最小化する.

 目的2は,超音速巡航時の摩擦抵抗S・C_Df [m2] を 最小化する.

 目的3は,着陸に相当するマッハ0.2,仰角10度の 亜音速時の揚力S・C_L [m2] を最大化する.

 目的4は,超音速巡航時のソニックブーム強度 Iboom [psf] を最小化する.

 目的5は,構造的要求を満たす範囲での翼構造重 量Wc [kg] を最小化する.

JAXA内設計者及び民間技術者は数ヶ月に渡る議論

の末にS3TDの形状候補を選定した.更に,Chibaら[2]

は目的関数値,設計変数及びそれらの関係を自己組織 化マップによって視覚化し,検討を重ね,選好解ID56 を選定した.また,解の絞込には次の条件も用いられ た.

 目的1のS・C_Dpと目的2のS・C_Dfが実用的な範 囲で大きすぎない.

 目的3のS・C_Lが低すぎない.

 目的5のWCは強度と振動の構造的要件を満たす 範囲として,概ね50~300[kg]とした.

3

実験

3.1 実験の目的

1. S3TDの非劣解群に対して受容度に基づく評価の

有効性を確かめる.

2. 受容度の統合方法と目的の重み付けを検討する.

3. 受容度関数の作成に選好解を利用できるか,そし てその受容度による結果が設計者の意図と合致 するかを確かめる.

4. 従来法の効用関数や単目的化とはどのような点 が異なるのかを調べる.

3.2 実験設定

受容度関数は設計者の設計意図,志向,知見等によ って決めるものとしている.例えば,方眼紙に主観で 関数曲線を描くなどもひとつの方法である.しかし,

我々はS3TDの設計者,専門家ではないため,本論で

は選好解を利用し,受容度関数の決定方法も提案する.

その方針は,選好解より少し良い所が受容度の最も良 い所,頂点となり,それ以降は単調減少する関数とす るものである.今回は線形関数としたが,設計者の受 容要求によって非線形関数にすることもできる.

受容度関数は目的毎に,目的値の範囲,受容度関数 の形状,受容度関数の値で構成される.まず,目的値

(4)

の範囲は,上記の絞込条件と解分布のバランスを見て 決定する.次に.受容度関数の形状は,今回の場合,

線形山型とした.選好解より少し良い所が受容度の最 も良い所,頂点となり,それ以降は単調減少する.選 好解が解分布のどこに位置するかで,その頂点の位置 は決定される.最後に受容度関数の値の範囲は,0以 上1以下の値とし,最も受容できない,望ましくない 場合は0,最も受容できる,望ましい場合は1とする.

本論では[0,1]だが,これに限定するものではない.後 に重み付けをすることもある.

今回の方法は,選好解と設計者の意図する解に対す る制限などによる,受容度関数の作成方法の一つの試 みである.この方法によって作成した各目的に対する 受容度関数をFig.1-5に示す.

Fig.1-5は選好解ID56を基に作成した各目的に対す る各受容度である.一般的なEMOでは,目的の値は 最小,あるいは最大となることが理想とされる.しか し,現実問題の最適化や設計においては,設計変数と の関係,他の目的とのバランス等を勘案し,妥協解を 選択することも通常行われる.設計者らは,良すぎる,

あるいは現実的でない目的の値の部分を避けること や,逆に従来法ではその目的とは切り離して考えるべ きとされている要素を反映させて,受容度関数を作成 することもできる.

Fig.1 圧力抵抗 S・C_Dp [m2] に対する受容度

Fig.2 摩擦抵抗 S・C_Df [m2] に対する受容度

Fig.3 揚力 S・C_L [m2] に対する受容度

Fig.4 ソニックブーム強度 Iboom [psf] に対する受容度

Fig.5 翼構造重量 Wc [kg] に対する受容度

Fig.1は目的1の圧力抵抗 S・C_Dp [m2] に対する受容 度関数である.S・C_Dpが0.08から0.2の範囲であり,

0.14で受容度1となる頂点を持つ関数とする.

Fig.2は目的2の摩擦抵抗 S・C_Df [m2] に対する受容 度関数である.S・C_Dfが0.05から0.07の範囲であり,

0.05で受容度1となる頂点を持つ関数とする.

Fig.3は目的3の揚力 S・C_L [m2] に対する受容度関 数である.S・C_Lが3から7の範囲であり,6で受容度 1となる頂点を持つ関数とする.

Fig.4は目的4のソニックブーム強度 Iboom [psf] に 対する受容度関数である.Iboomが0.6から1の範囲で あり,0.6で受容度1となる頂点を持つ関数とする.

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0.04 0.14 0.24

Acceptability-1

S・C_Dp

受容度 選好解

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0.03 0.08

Acceptability-2

S・C_Df

受容度 選好解

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

1 6

Acceptability-3

S・C_L

受容度 選好解

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0.5 1

Acceptability-4

Iboom

受容度 選好解

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0 200 400

Acceptability-5

Wc

受容度 選好解

(5)

Fig.5は目的5の翼構造重量 Wc [kg] に対する受容度 関数である.Wcが50から300の範囲であり,150で受 容度1となる頂点を持つ関数とする.

目的Oiの値と各属性の受容度関数fiによって受容度 Aiが求められる.この受容度Aiの値を統合したものを 個体の統合受容度I(integrated)とし,個体の指標,ある いは評価値とする.この統合方法は様々考えられるが,

例えば,総和(加算)によって統合した 式(1),総乗

(乗算)によって統合した式(2) 等がある.これらの 統合方法は,多属性効用関数(multi-attribute utility function)[15,19]における,乗法形効用関数と加法形 効用関数と類似する.

𝐼=∑ 𝑓𝑖(𝑂𝑖) 式(1) 𝐼=∏ 𝑓𝑖(𝑂𝑖) 式(2)

選好解ID56での受容度の計算例をTable 1 に示す.

統合方法は式(1)の総和による.重み付けは目的4の受 容度を2倍にしている,最終的な統合受容度景観は5 目的の5次元空間の景観となる.

Table 1 :選好解ID56での受容度の計算例 目的の値 受容度 重み 重み付後

受容度 目的1 0.17766707 0.3722155 1 0.3722155 目的2 0.0583763 0.5811851 1 0.5811851 目的3 4.7186479 0.57288263 1 0.57288263

目的4 0.676 0.81 2 1.62

目的5 214.58 0.5694667 1 0.5694667 統合

受容度

(総和)

2.90574993 3.71574993

Ranking1-5は受容度関数を用いる.

Ranking6-10は線形の単調増加,単調減少の関数で あり,従来の効用関数や単目的化に該当する.それぞ れの目的について,全個体の最大値と最小値を範囲と し,最大化すべき目的では,目的の値が最小値の場合 が0,最大値の場合が1なる線形関数とする.Fig.6に最 小化すべき目的1のS・C_Dpに対する線形関数を示す.

同様に目的2-5に対応する線形関数を最小化,最大化 に応じた線形関数を設定する.

Fig.6 S・C_Dpに対する単調関数

Ranking1-2,6-7は総和によって,Ranking3-5,8-10 は総乗によって,各目的の値を統合する.

Ranking2,7は重み付けする目的の受容度の値を2倍

にする.受容度の値を倍にするなどの乗算で重み付け を行うと,統合方法が総乗である場合は,特定の目的 の重み付けとはならない.また,本論の受容度の値は [0,1]であるため,累乗による重み付けをすると値が小 さくなる.よって,負の冪指数の冪乗による重み付け を試みる.具体的にはRanking4,9の重み付けする目 的の受容度の値の平方根を用いる.Ranking5,10は,

各目的の受容度にそれぞれ1を加えて[1,2]にした上で,

重み付けする目的の受容度を2乗する.

なお,本論では[10]を参考に目的4に対して重み付 けをする.以上のRanking毎の関数・統合方法・重み 付けの設定をTable 2に示す.

Table 2 : Ranking1-10の関数・統合方法・重み付け 関数 統合方法

重み 付け 受

容 度

線 形 単 調

総和 総乗 受容度 +1

Ranking

1 6 ✔

2 7 ✔ *2

3 8 ✔

4 9 ✔ √

5 10 ✔ ✔ ^2

受容度及び統合受容度の計算は,表計算アプリケー ションなどで容易に計算できる.統合受容度の値で並 び替え,大きい順にランク上位とする.

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0 0.2 0.4

単調関数値-1

S・C_Dp

単調関数

(6)

3.3 実験結果

データセットの全個体は非劣解の個体群であるが,

全てのRanking設定で同順位になることはなく,固有 の順位が付いたランクが得られた.

Fig.7は,受容度関数によるランキング方法の Ranking1から5の設定毎に個体ランキング結果の1位 からをプロットし,同じ個体を線で繋いだ折れ線グラ フである.太線は選好解ID56を示す.選好解ID56がラ ンク1位になったのはこの中ではRanking2と5である.

Fig.8は,線形単調関数によるランキング方法の Ranking6から10の設定毎に個体ランキング結果の1位 からをプロットしたものである.選好解ID56がこの中 のランク最上位の6位になったのはRanking7と10であ る.

Ranking3,4,8,9では,統合方法が総乗であるた め,受容度値に一つでも0があると統合受容度値も0 になる.統合受容度が0でない個体数は,Ranking3と4 では19個体,Ranking8と9では56個体になった.一方,

同じ総乗による統合方法を用いたRanking5,10は受容 度が[1,2]であるため,統合受容度は0にはなっていな い.なお,Ranking1と2の統合方法は総和だが,受容 度関数が2個体の総合受容度を0としたため,73個体の ランキングとなった.

Fig.7 受容度関数のRanking1-5の個体ランク.

太線は選好解ID56.

Fig.8 線形単調関数のRanking6-10毎の個体ランク.

太線は選好解ID56.

3.4 結果に対する設計者のコメント

S3TDの開発設計者である電気通信大学の千葉一永

准教授に,受容度関数,実験結果及び質問に対する回 答とコメントを頂戴した.5目的それぞれの受容度関 数グラフFig.1-5,Ranking1-10の10種類の全個体のラン キング結果とFig.7-9を提示した.ランキング結果は,

個体ID,目的1-5の値,Ranking1-10毎のランク順位が あり,Ranking方法毎に並べ替えができる表計算シー トファイルで提示した.Ranking1-10で用いた関数の 種類,統合方法,重み付けは提示していない.

質問項目の主な内容は以下の通りである.

 ランク結果の感覚に合うランキング方法の順番.

 各ランクについての印象.

 ランク上位解の印象.

 ID56以外の選好解の有無.

 各受容度関数の印象.

 その他.

これらに対する回答とコメントの要約は以下の通 りである.

 今回のランキング結果から,ID: 5,12,25,50,

53,56,63,辺りを選択する.次に,ECの目的 にしなかった経済状況や製造性等の要素と設計 変数の情報を含めて検討し,優先順位を決定する.

 受容度関数が線形性を持つ理由が不明だが,おお むね納得できる.

 I_boomと翼形状の関係からID56を選択した経緯

がある.S3TDの実証目的から目的4のI_boomを他

の目的より優先している.

0 10 20 30 40 50 60 70 80

0 10 20 30 40 50 60 70 80

(7)

 各受容度値の線形和によって,その解の妥協状態 を定量的に示すことができる.

4

考察

実験の結果,個体固有の順位が付いたランクが得ら れた.統合受容度が実数値であり,多数目的問題にお いても個体間の優劣区別が容易である特長を示して いる.この個体間の優劣関係を示す実数値は,様々な EMOや意思決定に利用できる.例えば,ECにおける ルーレット選択での確率にも利用できる.一方,パレ ート・ランクは整数値であり,そこに混雑度等の概念 を導入しなければ個体間の優劣判断が困難である.

各受容度値の統合方法に関して,総和による Ranking1,2,6,7は,ランクが与えられる個体数が 減ることは少ない.一方,総乗によるRanking3,4,8,

9は,その個体数が減る傾向にある.また,Ranking5,

10も総乗によるものだが,受容度値を[1,2]にしたため 個体数の減少はない.統合方法の使い分けによって,

個体数を絞り込むこともできるが,受容度では解に固 有の順位がランキングされるので,絞込の必要は必ず しも無い.

受容度の重み付けに関して,3種類の方法を実験し た.Ranking2,7は目的4の受容度値を2倍に,Ranking5,

10は目的4の受容度値+1を2乗することで重み付けを 行った.これらの方法によって,重み付けしない Ranking方法と比べて,選好解ID56のランクが上昇し,

Ranking2,5では1位となった.これは,S3TDの実証目 的やID56を選好した設計チームの意図と合致する.一 方,Ranking4,9は,[0,1]の受容度値の平方根とする ことで目的4に重み付けを行ったが,選好解ID56のラ ンクは,重み付けしないRanking1,6と比べて同等か,

低くなった.平方根は,[0,1]の範囲で値が大きいもの より,小さいものを比較的良くする演算であるためで あると考えられる.

設計者のコメントに対する考察等は,以下の通りで ある.

 ID: 5,12,25,50,53,56,63のランクをTable 3 に示す.これらの7個体がTop7になっているのは Ranking1,3であり,Top8にまでに入っているの はRanking2,4,5である.よって,線形単調関数 より受容度を用いたランキング結果のに設計者 は良い印象を持っている.

 今回は線形性を持った単純な受容度関数の設定 としたが,効用関数が指数関数を用いる等してユ ーザの感覚に合うように非線形にすることは,受 容度関数も可能である.

 今回の受容度関数の設定をおおむね納得して頂 いたことにより,本論で試みた選好解を基にした 受容度関数設定の可能性に手応えを得た.

 ECでの目的にしなかった翼形状,経済状況や製

造性なども,もし目的関数化できるのであれば,

目的として追加できる.従来のEMOでは目的数 が増えると最適化が困難になるため,目的を厳選 しているが,受容度を用いれば目的数が増えても ランキングできるからである.

 S3TDの実証目的から目的4のI_boomを他の目的

より優先しているとのことであったが,本論でも 目的4を重み付けしている.

 解の妥協状態を各受容度値とRanking1での統合 受容度(線形和)で示したのがTable 4である.

Table 3 :設計者によって選択された解のRanking方法 毎のランク.赤色ほどランク上位.

Table 4 :Ranking1での上位6個体の受容度値の状況.

赤色ほど受容度値が低い.

ID 目的1の 目的2の 目的3の 目的4の 目的5の 統合 受容度 受容度 受容度 受容度 受容度 受容度

12 0.8567 0.26 0.9975 0.2025 0.7239 3.0406

63 0.9094 0.4608 0.5597 0.3975 0.674 3.0013 5 0.9599 0.6779 0.4732 0.4975 0.367 2.9754 53 0.9783 0.6033 0.5764 0.3225 0.4619 2.9423

50 0.785 0.7123 0.18 0.4975 0.7458 2.9205

56 0.3722 0.5812 0.5729 0.81 0.5695 2.9057

今回は一つの選好解によって単峰性の景観を持っ た設計受容度関数の作成を試みた.もし,複数の選好 解があれば,多峰性景観の受容度関数とすることがで きると我々は考えている.多峰の統合受容度景観の例 を[22]のTable 1で示している.

Fig.9は,受容度関数によるランキング方法で選好解 ID56がランク1位であったRanking2,5,そして,線形 単調関数によるランキング方法で選好解ID56が最上 位の6位であったRanking7,10の4つのランキング方法 の設定毎に個体のランキング1位からをプロットし,

同じ個体を線で繋いだ折れ線グラフである.太線は選 好解ID56を示す.Ranking2とRanking5は,どちらも選

Ranking

方法→ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

ID5 3 3 3 3 3 11 9 7 8 8

ID12 1 8 7 4 8 19 20 17 15 20

ID25 7 2 5 7 2 4 4 1 2 4

ID50 5 4 6 8 5 13 11 15 18 10

ID53 4 7 4 2 7 17 17 10 9 16

ID56 6 1 2 5 1 20 6 18 25 6

ID63 2 5 1 1 4 23 19 20 22 19

(8)

好解ID56が1位であるだけでなく,他の解のランクも 類似している.また,Ranking7とRanking10は,どち らも選好解ID56が6位であるだけでなく,他の解のラ ンクも類似している.受容度関数であるRanking2,5 の方が,線形単調関数のRanking7,10に比べると,選 好解ID56がランク1位となり,高評価である.また,

この関数の違いによって,他の解のランクも大きく異 なることがFig.9の折れ線の交差状況から分かる.

Fig.9 Ranking2,5,7,10の個体ランク.

太線は選好解ID56.

受容度関数は,ある目的が良すぎる場合に生じ得る 他の目的等のリスク,あり得ない程の非現実的な目的 値等の意思決定者の先験的知見や他目的との関連を 積極的に取入れて作成,設計する.設計者,ユーザら の知見,嗜好と問題対象の現実性などによって関数景 観を形成する点が特徴であり,効用関数や従来のEC の目的関数とは異なる.これにより,実用的,有効的 に解の優劣を判断することができる.効用関数は目的 関数の一種であり,受容度関数は各目的関数の値に対 する次の関数であることも本質的に異なる点である.

今回のタスクであるS3TDの最適化実験では目的数 が5としているが,現実性を鑑みた設計変数の値も考 慮の上で選好解が設計グループによって決定されて いる.実問題では目的数が多数に及ぶケースが一般的 であるが,EMOを行う際は,アルゴリズムの性能上,

あまり目的数を増やすことはできない.よって,設計 者は最適化する目的を厳選している実情がある.本来 は加えるべき目的は,最適化後に,検討されている.

一方,提案手法である受容度は,目的数がいくつに増 えようとも,理論上は個体間の優劣がランキングされ る.

Debは過度に単純化された効用関数を用いること は危険であると述べている[3].しかし,現実問題で のEMOを用いた最適化や設計では,その結果に対し て意思決定者の検討や選択が行われる.それらが一度 で終わることもあれば,繰返し行われることもあるの が設計や意思決定過程の本質であると我々は捉えて いる.EMOの結果が即,意思決定の結果になるとは 考えていない.

EMO分野では,設計変数空間や目的関数景観を使 って研究が行われている.本研究はそこに受容度景観 を導入し,意思決定者であるユーザや設計者の受容度 が多数目的問題に対する新しい方向性を示すことを 試みた.

5

結論と今後

S3TDデータセットに対する設計受容度実験で得ら

れた結論を次にまとめる.

1. 受容度は多数目的問題に対しても個体固有の順位 を持つランキングができる.

2. Ranking2(総和による統合受容度演算と乗法によ

る重み付け)とRanking5(受容度値を1以上にした 上で総乗による統合受容度演算と累乗による重み 付け)が,選好解を1位にランキングする.

3. 選好解を利用した受容度関数に対し,設計者の理 解を得た.その選好解を最上位にランキングする 設定も確かめられた.ランキング結果と設計者の 意向との一致も,提示した範囲ではあるが,確認 することができた.

4. 受容度関数は,従来法の効用関数や単目的化と比 較して,選好解をより上位にランキングする,選 好解だけでなく,その他のランクも異なっている.

5. 受容度は多数目的問題を扱うことができ,目的数 が増加して,その性能は低下しないと思われる.

今後は,可能であればS3TDのEMOに受容度を用い た実験を行いたい.本論はランキングまでを行ったが,

EMOにおいても受容度が導入できると考えている.

ECアルゴリズムでの評価・選択の過程で,受容度は パレート・アプローチと比較して,計算コストが低く 済む.例えば,non-dominated sorting [6]と比べると,

スカラー値の単純なソートである受容度の計算オー ダーは低い.

S3TDの目的は5であったが,例えば構造に関する目

的を加えるなど,目的数を増やすことも受容度では可 能である.

今回は一つの選好解による受容度関数を作成した が,複数の選好解による多峰性受容度関数の研究も行 いたい.

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(9)

謝辞

本研究は,JSPS科学研究費(課題番号JP26350032)

の助成を受けたものである.

本研究は,電気通信大学大学院 情報理工学研究科 千葉一永准教授よりS3TDデータセットの提供を受け,

実験結果に対するコメント及び貴重な教示を頂いた.

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