第一可算公理と選択公理
alg-d
http://alg-d.com/math/ac/
2020 年 4 月 18 日
位相空間hX,OXiが第一可算公理を満たすとは,各点x∈X が可算な基本近傍系B(x) を持つこと(即ち下記(A))であった.しかしこれは素朴に考えるとB(x)の存在しか仮定 していないから,選択公理を仮定しない状況ではB(x)が「選択」できないかもしれない.
そこでB(x)の「選択」まで含めたバージョンの第一可算公理を考えることができる(下記 (B)).また,単に可算というとどのように並べるかが与えられていないことになるから,並 べ方まで与えるバージョンも考えることができる(下記(C).B(x) = {B(x, n) |n ∈N}
である).更に,基本開近傍系が与えらえたときに,その中から可算な基本近傍系が取れ るというバージョンも考えることができる(下記 (D)~(F)).また,基本開近傍系ではな く基本近傍系を考えることもできる(下記(G)~(I)).
定義. 位相空間hX,OXiに対して条件(A)~(I)を以下のように定める.
(A) 任意の x ∈ X に対してある B(x) が存在して「B(x) は x の基本近傍系かつ
|B(x)| ≤ ℵ0」となる.
(B) ある{B(x)}x∈X が存在して「任意のx ∈Xに対してB(x)はxの基本近傍系かつ
|B(x)| ≤ ℵ0」となる.
(C) ある{B(x, n)}x∈X,n∈Nが存在して「任意のx∈Xに対して{B(x, n)|n∈N}は xの基本近傍系」となる.
(D) 任意のx ∈X とxの基本開近傍系V(x)に対して,あるB(x)⊂ V(x)が存在して
「B(x)はxの基本開近傍系かつ|B(x)| ≤ ℵ0」となる.
(E) 各x∈Xに対してxの基本開近傍系V(x)が与えられたとき,ある{B(x)}x∈X が 存在して「任意のx∈X に対してB(x)⊂ V(x),かつB(x)はxの基本開近傍系,
かつ|B(x)| ≤ ℵ0」となる.
(F) 各 x ∈ X に 対 し て x の 基 本 開 近 傍 系 V(x) が 与 え ら れ た と き ,あ る
{B(x, n)}x∈X,n∈N が存在して「任意のx ∈X、n∈ Nに対してB(x, n) ∈ V(x), かつ{B(x, n)|n∈N}はxの基本開近傍系」となる.
(G) 任意のx ∈ X とx の基本近傍系V(x)に対して,あるB(x) ⊂ V(x)が存在して
「B(x)はxの基本近傍系かつ|B(x)| ≤ ℵ0」となる.
(H) 各x∈Xに対してxの基本近傍系V(x)が与えられたとき,ある{B(x)}x∈X が存 在して「任意のx∈ X に対してB(x)⊂ V(x),かつB(x)はxの基本近傍系,か つ|B(x)| ≤ ℵ0」となる.
(I) 各x∈Xに対してxの基本近傍系V(x)が与えられたとき,ある{B(x, n)}x∈X,n∈N
が存在して「任意のx ∈X、n∈Nに対してB(x, n)∈ V(x),かつ{B(x, n)|n∈ N}はxの基本近傍系」となる.
命題 1. 明らかに以下が成り立つ.
(A) (B) (C)
(D) (E) (F)
(G) (H) (I)
⇐= ⇐=
⇐= ⇐= ⇐=
⇐= ⇐=
⇐= ⇐= ⇐=
⇐= ⇐=
命題 2. ZFCにおいては(A)~(I)は全て同値である.
ZFにおいて(A)=⇒(B)が証明可能かどうかは未解決問題らしい.
定義. 基数 κに対して次の命題をAMC(≤ κ)で表す: 非空集合の族{Xλ}λ∈Λが「任意 のλ∈Λに対して|Xλ| ≤κ」を満たすならば,有限集合の族{Fλ}λ∈Λで「任意のλ ∈Λ に対して∅ 6=Fλ⊂Xλ」となるものが存在する.
定義. 次の命題を AMCω で表す: 非空集合の族 {Xλ}λ∈Λ に対して,可算集合の族 {Fλ}λ∈Λで「任意のλ ∈Λに対して∅ 6=Fλ⊂Xλ」となるものが存在する.
命題 3. AMC(≤2ℵ0)ならば「(B)=⇒(C)」が成り立つ.
証明. X が(B)を満たすとする.即ち{B(x)} ∈ が存在して「任意のx ∈ X に対して
B(x)はxの基本近傍系かつ|B(x)| ≤ ℵ0」となる.集合L(x)を L(x) :={f: N→ B(x)|f は全射}
と定めれば,L(x)6= ∅かつ|L(x)| ≤ |B(x)|ℵ0 ≤ ℵℵ00 = 2ℵ0 である.故にAMC(≤2ℵ0) より有限集合の族{Fx}x∈X で「任意のx∈Xに対して∅ 6=Fx ⊂L(x)」となるものが存 在する.このときB(x, n) := \
f∈Fx
f(n) と定義すれば{B(x, n)}x∈X,n∈N が条件(C) を 満たす.
命題 4. 「(B)=⇒(C)」ならばAMC(≤ ℵ0)が成り立つ.
証明. 非空集合の族{Xλ}λ∈Λ が「任意のλ ∈ Λに対して|Xλ| ≤ ℵ0」を満たすとする.
各Xλに離散位相を入れてYλ :=Xλ∪ {∞λ}を一点コンパクト化としてY := a
λ∈Λ
Yλを 直和とする.このY は(B)を満たす.
...
) y∈ Y に対してB(y)を次のように定めれば,これはy の可算な基本開近傍系に なる.
B(y) := {y} (y ∈Xλのとき)
U ∪ {∞λ}U ⊂Xλは補有限集合 (y =∞λのとき) (今Xλが可算なので補有限集合も可算個であることに注意する)
従って仮定より Y は (C) を満たす.即ちある {B(x, n)}y∈Y,n∈N が存在して「任意 の y ∈ Y に対して {B(y, n) | n ∈ N} はy の基本開近傍系」となる.そこで Fλ :=
Xλ\B(∞λ,0)とすればFλは有限集合で∅ 6=Fλ⊂Xλである.
従って(B)=⇒(C)はZF では証明できない.
定理 5. 次の命題は(ZF上)同値.
1. 選択公理 2. (A)=⇒(I) 3. (C)=⇒(I) 4. (C)=⇒(F) 5. (F)=⇒(I)
証明. 1=⇒2と2=⇒3と3=⇒4と3=⇒5は明らか.
(4 =⇒ 1) {Xλ}λ∈Λ を互いに素な非空集合の族とする.新しい元∞λを用意して X := [
λ∈Λ
(Xλ×N)∪ {∞λ}
Ym :={hx, ki |λ∈Λ, x ∈Xλ, k ≥m} ∪ {∞λ|λ ∈Λ} と定める.B:=
{hx, ki}λ ∈Λ, x∈Xλ, k ∈N ∪ {Ym|m∈N}とすれば,Bを開 基とするXの位相Oが定まる.このhX,Oiは(C)を満たす.
...
) x ∈X,n∈Nに対してB(x, n)を
B(x, n) :=
{x} (x=hxλ, ki, xλ∈Xλ, k∈Nのとき) Yn (x=∞λのとき)
とすればこれは開集合で(C)の条件を満たす.
従って仮定4より(F)を満たす.
x ∈Xに対してV(x)を
V(x) := {x} (x=hxλ, ki, xλ∈Xλ, k ∈N) Ym+1∪ {ha, mi} |λ ∈Λ, a ∈Xλ, m∈N (x=∞λのとき)
と定める.V(x)はxの基本開近傍系である.この{V(x)}x∈Xに対して条件(F)を適用す れば集合族{B(x, n)}x∈X,n∈Nであって「任意のx∈X,n∈Nに対してB(x, n)∈ V(x), かつ{B(x, n)|n∈N}はxの基本開近傍系」を満たすものを得る.このときλ∈Λに対 してmλが一意に存在してB(∞λ,0) =Ymλ+1∪ {hxλ, mλi}と書ける.これにより選択 関数λ 7→xλを得る.
(5 =⇒ 1) 4=⇒1の証明の記号を使う.O0 := {Ym | m∈ N}とすればこれもX の位 相であり,このhX,O0iは(F)を満たす.従って仮定5より(I)を満たす.
x ∈Xに対してV0(x)を
V0(x) := Ym (x=hxλ, mi, xλ∈Xλ, m∈N) Ym+1∪ {hx, mi} |x ∈Xλ, m∈N (x=∞λのとき)
と定める.V0(x)はhX,O0iにおいてxの基本近傍系である.そこで{V0(x)}x∈X に対し て条件(I)を適用すれば集合族{B(x, n)}x∈X,n∈Nであって「任意のx∈X,n∈Nに対 してB(x, n) ∈ V(x),かつ{B(x, n)|n∈ N}はxの基本近傍系」を満たすものを得る.
よって4=⇒1と同様にして選択関数を得る.
命題 6. 次の命題は(ZF上)同値.
1. 可算選択公理 2. (A)=⇒(G) 3. (A)=⇒(D) 4. (D)=⇒(G)
証明. 略
命題 7. 次の命題は(ZF上)同値.
1. 可算選択公理かつAMCω 2. (B)=⇒(H)
3. (B)=⇒(E) 4. (E)=⇒(H)
証明. 定理5と同じような構成でできる.(省略)
参考文献
[1] Gonçalo Gutierres, What is a first countable space?, Topology and its Ap- plications 153 (2006), 3420–3429, https://www.sciencedirect.com/science/
article/pii/S0166864106000721