マンガを素材とする異文化理解教育の方法開発

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

マンガを素材とする異文化理解教育の方法開発

因, 京子

九州大学留学生センター助教授

日下, みどり

九州大学比較社会文化研究院教授

松村, 瑞子

九州大学言語文化研究院教授

http://hdl.handle.net/2324/16817

出版情報:日下翠教授中国文学・漫画学著作集成, 2005-03 バージョン:

権利関係:

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はしがき

日本において他に類を見ない発展を遂げたストーリー・マンガには数多くの優れた作 品がある。それらの作品には日本社会の様々な現象とその裏にある風土・伝統・価値観が 反映されており、適切に利用すれば、外国人が日本語や日本社会について学ぶための優れ た教材となり得る。もちろん、娯楽作品として提供されている以上マンガには誇張や飛躍 が含まれているが、見方を変えれば、そのような点こそ普段の生活ではなかなか表に表わ れない日本人の心の底にある価値観や憧れや抑圧を知るてがかりとなる。また、外国人に とって有用であるだけではなく、作品についての適切な課題を提供すれば、日本人が自分 の社会や文化を意識的に把握しそれをどう他者に伝えるかを考えるきっかけともなる。

本報告書「マンガを素材とする異文化理解教育の方法開発」は、平成11年度から13 年度に科学研究費の補助を受けて行った「女性・少女漫画を素材とする異文化理解教育の 方法開発」(萌芽的研究、課題番号11878039)に続いて、ストーリー・マンガの作品を日 本語と日本文化の理解のために利用する具体的な方法開発を目指した研究を報告するもの である。前の研究においては、マンガの教材化の方法・日本マンガ研究の方法論・日本語 の話し言葉、特に女性語についての基礎的研究を行い、具体的な成果として大学の異文化 理解コースや日本語上級コースなどで使用することのできる教材を作成した。そして、教 材開発を行う上での課題として、①適切な作品の選択、②日本語と日本人の言語行動につ いての基礎的分析、③表現分野としてのマンガの位置づけの三つがあることを明らかにし た。今回の研究では、この3つの課題について、研究参加者3名がそれぞれの立場から努 力を行って、その成果を論文・口頭発表・教材の形にまとめてきた。本報告書の第1部に

は②と③への努力として行った研究の成果である論文のうち8本を、第2部には①につい ての努力の具体的表れである教材を収めた。

今回の研究を行いながら開発した教材を実際にコースの中で使用したのであるが、そ の結果、日本にかなり長く滞在し意思疎通を日本語で行うことに大きな問題を抱えていな いように見える外国人でも日本人の発話の意図や行動の背後にある心情を大きく誤解して いる場合が少なくないことが明らかになった。また、マンガという素材を通して他の方法 によってはなかなか示しにくい日本語の表現や発話のニュアンス、文化的価値観などにつ いて活発な議論を行うことができることも確認された。「マンガ」という未だ社会的認知度 が高いとは言えない素材を教材とすることには、学習者の側からも日本語教育の関係者か

らもはじめのうちは十分な支持が得られなかったが、徐々に理解が進み、多くの学習者が 熱心に取り組んでくれるようになっただけでなく、日本語教育の関係者の中にも我々の努 力に関心を寄せてくれる人々が増えてきた。外国人に対する直接的な教育の大部分を占め る語学教育の中では、学習者の差し迫った必要を満たすことと、学習者の発話の巧拙に目 が向き勝ちになるが、「理解」の面にもっと注意を払い、具体的な素材を通して文化や価値 観について意見を交える機会を持つことが必要であるといえる。この研究の成果がそうし た活動への具体的な一助となれば幸いである。

2005年3月

研究代表者  因 京子

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