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チタン板と軟鋼板との重ねシーム溶接
徳永辰也*1 中村憲和*1 廣瀬政憲*1 西尾一政*2
Lap Seam Welding of Titanium Plate and Mild Steel Plate
Tatsuya Tokunaga, Norikazu Nakamura, Masanori Hirose and Kazumasa Nishio
著者らは,インサート材としてニッケルおよびニッケル系アモルファスろう材
MBF15
を用いて,チタン板と軟 鋼板との重ねシーム溶接を行うと,良好な接合ができることを報告した。本研究ではニッケルおよびMBF15
に加 え,MBF30およびMBF60
を用いて,今回新たに開発したシリーズ銅電極を有するシーム溶接機でチタン板と軟鋼 板との重ねシーム溶接を行い,接合部の強度特性をピール試験により, また界面の化合物生成の様子などをEPMA
により評価した。その結果Ni-Si-B
系ろう材を用いることでチタン母材で破断する程度の接合強度が得られること が分かった。1 はじめに
チタンは, 比強度や耐食性に優れており, 近年, 特 にチタンの海水への耐食性が優れていることを利用 してチタンクラッド鋼が海洋構造物に利用されてい る。しかしながら,チタンクラッド鋼はその製造法 上コスト高となっているため,最近簡便な接合法と してアモルファスろう材をインサート材とした重ね シーム溶接法について報告されている1) 。また, 著 者らはインサート材としてニッケル箔およびニッケ ル系アモルファスろう材を用いてシーム溶接を行う ことで良好な接合ができることを報告した2), 3)。 本研究では前回用いたニッケル箔およびニッケル 系アモルファスろう材
MBF15
に加え, 組成の異な るニッケル系アモルファスろう材を用いて, 今回新 たに開発したシリーズ電極を有するシーム溶接機で チタン板と軟鋼板とのシーム溶接を行い, ピール試 験による接合部の強度評価およびそれぞれの接合界 面を組織学的観点から考察した4)。
2 実験方法
接合実験に使用した材料は, 板厚
0.5mm
の純チ タン板と板厚3.2mm
の軟鋼板で, インサート材には 厚さ0.05mm
のニッケル箔, 厚さ約0.04mm
のニッ ケ ル 系 ア モ ル フ ァ ス ろ う 材MBF-15(Cr:13, Fe:4, Si:4.5, B:3mass%, Ni:Bal) , MBF30
(Si:4.5, B:3mass%,Ni:Bal)および MBF60(P:11mass% , Ni:Bal)を用い
*1 機械電子研究所
*2 九州工業大学
た。それぞれのニッケル系ろう材の固相線および液 相線を表-1に示す。また比較のためにインサート材 を用いずにチタン板と軟鋼板との直接溶接も行った。
チタン板と軟鋼の溶接には, 今回開発したφ90mm, 先端幅
5mm
のシリーズ銅電極を有する自走式シー ム溶接機を用いた。その際の溶接条件は, 溶接速度 を1.0m/min, 加圧力を 294N
で一定とし, 溶接電流を
3.0〜4.0kA
の範囲で数水準変化させた。図-1にシーム溶接の概念を示す。
接合部の強さを評価するために, 溶接方向に垂直 に幅
20mm
の短冊型の試験片を作製し(図-2), ピ ール試験を行ってその最大剥離荷重を求め, ピール 強さとした。溶接後の接合界面をEPMA
により元素 分析を行い, また軟鋼板側の破断面のX
線回折を行 って接合部に生成した化合物を同定した。Electrode
Welding current
Insert metal Ti plate
Mild steel plate
図-1 シーム溶接の概念図
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表-1 ニッケル系ろう材の固相線および液相線固相線(℃) 液相線(℃)
MBF15 960 1125
MBF30 980 1040
MBF60 880 880
3 結果と考察
図-3にそれぞれのインサート材を用いた場合の溶 接 電 流 に 対 す る ピ ー ル 強 さ を 示 す 。 直 接 接 合 の
3.5kA, 4kA
およびニッケルの4kA
の場合は, 接合 部での破断であったが, 他はほとんどチタン溶接熱 影響部でのチタン母材破断であった。今回用いたイ ンサート材の中ではMBF30
の場合が最も高いピー ル強さが得られ, 3kAで約1.93kN
であった。イン サート材としてニッケル, MBF15, MBF30およびMBF60
を用いた場合は, 溶接電流が増加するにつれてピール強さはわずかに低下していた。それに対 して直接接合したものは, インサート材を用いた場 合よりも溶接電流が増加するにつれてピール強さは 急激に低下していた。
インサート材を用いずに直接接合した場合, いず れの溶接電流の場合も鉄とチタンとの界面に化合物 の生成が見られ,
3kA
で2μm
程度で, 溶接電流が 増加するにつれて化合物層の厚さが大きくなり4kA
では35μm
程度の厚みとなっていた。図-3で示した ように, 直接接合でも界面の化合物生成を小さくす れば比較的高いピール強さが得られるが, 化合物厚 さが大きくなるとピール強さが急に低下することが 分かった。界面に生成した化合物は,X
線回折によ ると, FeTi, Fe2Ti
およびTiC
であった。
インサート材としてニッケルを用いた場合, いず れの溶接電流の場合もチタンとニッケルとの界面に 化合物の生成が見られ
3kA
で12μm
程度で, 溶接 電流が増加するにつれて化合物層の厚さが大きくな り,4kA
で80μm
程度の厚みとなっていた。界面に 生成した化合物は, ニッケル側がNiTi, チタン側
がNiTi
2であった。溶接電流が4kA
になるとNi
3Ti
の生成も一部に見られた。インサート材として
MBF15
を用いた場合, いず れの溶接電流の場合もチタンとMBF15
との界面に 化合物の生成が見られ3kA
で2μm
程度,4kA
では45μm
程度の厚みとなっていた。界面に生成した化 合物は, ニッケルの場合と同様で主にNiTi
とNiTi
2で あ っ た が, 化 合 物 生 成 の 様 子 が 異 な っ て お り
, NiTi
2の中に粒状のNiTi
が均一に分散しているよう になっていた。今回は新たに開発したシリーズ電極を有するシー ム溶接機を用いて接合を行ったが, 以上の直接接合, ニッケルおよび
MBF15
をインサート材とした接合 においては, 前回の結果2), 3)とほぼ同じであった。図-4にインサート材として
MBF30
を用いた場合 の組成像とEPMA
線分析の結果を示す。この場合も ニッケルおよびMBF15
の場合と同様で,MBF30の チタン側の一部が溶融しており, いずれの溶接電流 でもチタンとMBF30
との界面に化合物の生成が見 られ,3kA
で2μm
程度,4kA
では70μm
程度の厚 みとなっていた。90mm 25mm
20mm
図-2 ピール試験片形状
Ti
Mild steel
Welded zone
3.0 3.5 4.0
1.0 1.5 2.0
Ni MBF15 MBF30 MBF60 Direct Ma xi mu m p ee l l oa d, F
p/ k N
Welding current, I / kA
図-3 各種インサート材を用いて溶接した試験片の ピール強さに及ぼす溶接電流の影響
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図-5に軟鋼板側の破断面のX線回折パターンを示す。
Fe
(c) Welding current 4kA
20μm
Ti
Fe Ti
Fe Ti
20μm
20μm 20μm
Fe
Si
Ni
Ti
Fe
Si
Ni T i
Fe
Ni Si
T i MBF30
MBF30
20μm 20μm
(a) Welding current 3kA
(b) Welding current 3。5kA
図-4 インサート材として
MBF30
を用いた場合の接 合部の組成像と線分析結果NiTi
2NiTi
Fe
P
Ni T i
Fe
P Ni
T i
Fe
Ni P Ti Fe
20μm 20μm
20μm 20μm
(a) Welding current 3kA
図-6 インサート材として
MBF60
を用いた場合の接合部 の組成像と線分析結果(c) Welding current 4kA (b) Welding current 3。5kA Ti
Ti Fe
MBF60 Ti
Fe
MBF60
20μm 20μm
図-5 MBF30 を用いた場合の破断面の
X
線回折 結果図-7 MBF60 を用いた場合の破断面の
X
線回折 結果40 50 60 70 80
Mild steel side
3.5 kA 4 kA
▲
■ NiTi
2NiTi
Ni Ni
Ni Ni
Ni Ni
■
■
■
■
■
▲
▲
▲ ▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲ ▲
▲
In te ns ity / ar bi tr ar y un it
2 θ / degree 40 50 60 70 80
Mild steel side
3.5 kA 4 kA
Ni
3P NiTi
2NiTi
■
Fe Ni
, Fe
Fe
Fe
Ni Ni Ni
○
▲
▲
▲
▲
▲
■
○
▲
▲
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○ ○
○
▲
■
In te ns ity / a rb itr ar y u ni t
2 θ / degree
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主にNiTi
とNiTi
2のピークが見られ, ニッケルおよび
MBF15
を用いた場合と同様であった。図-6にインサート材として
MBF60
を用いた場合 の組成像とEPMA線分析の結果を示す。ここでは,
ニ ッケル,MBF15
およびMBF30
の場合と異なり, 溶接電流
3.5kA
まではMBF60
とチタンとの界面には化合物の生成は見られなかったが, MBF60 はすべ て溶融しておりチタンの拡散が見られた。溶接電流 が
4kA
になると, 溶融したMBF60
が排出され, 鉄 とチタンとの界面に化合物の生成が見られた。図-7 に軟 鋼 板 側の 破 断 面の X 線 回折 パ タ ーン を 示 す。3.5kA
ではNi
3P
が見られた。ニッケル, MBF15および
MBF30
を用いた場合と異なりニッケルとチタンとの金属間化合物が生成しないのは,
Ni
3P
の方が これらの化合物よりも安定な化合物であるためと考 えられる。溶接電流が4kA
になると, Ni3P
も生成 してはいるものの, NiTiやNiTi
2が生成していた。5 まとめ
チタン板と鋼板との接合に各種インサート材を用 いて重ねシーム溶接を行い,ピール試験による強度 評価およびそれぞれの接合界面を組織学的観点から 考察した。得られた結果は次の通りである。
1)ニッケル, MBF15, MBF30
およびMBF60
を用い てシーム溶接した結果,ピール強さはMBF30
の場 合が最も高く溶接電流3kA
で約1.93kN
(板幅20mm)
であった。
2)ニッケル, MBF15
およびMBF30
をインサート材とした場合はインサート材とチタンとの界面に主に
NiTi
2およびNiTi
が生成し,溶接電流の増加ととも に化合物層は大きくなりピール強さが低下した。3)MBF60
をインサート材とした場合は,ろう材中に
Ni
3P
が生成し,ピール試験ではろう層中で破断し ていた。4)チタン板と軟鋼板とを直接接合した場合,界面の
化合物生成を小さくすればピール強さは比較的高い が,化合物層厚みが増加するとインサート材を用い た場合よりピール強さは急激に低下した。6 参考文献
1)松本ら:溶接学会全国大会講演概要 ,
第61
集,p.248-249(1997-9)
2)徳永ら:材料とプロセス, 12(1999), 311
3)中村,
徳永:平成10
年度福岡県工業技術センター研究報告, Vol. 9, p. 29-33(1999)