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チタン板と軟鋼板との重ねシーム溶接

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Academic year: 2021

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71

チタン板と軟鋼板との重ねシーム溶接

徳永辰也*1 中村憲和*1 廣瀬政憲*1 西尾一政*2

Lap Seam Welding of Titanium Plate and Mild Steel Plate

Tatsuya Tokunaga, Norikazu Nakamura, Masanori Hirose and Kazumasa Nishio

 著者らは,インサート材としてニッケルおよびニッケル系アモルファスろう材

MBF15

を用いて,チタン板と軟 鋼板との重ねシーム溶接を行うと,良好な接合ができることを報告した。本研究ではニッケルおよび

MBF15

に加 え,MBF30および

MBF60

を用いて,今回新たに開発したシリーズ銅電極を有するシーム溶接機でチタン板と軟鋼 板との重ねシーム溶接を行い,接合部の強度特性をピール試験により, また界面の化合物生成の様子などを

EPMA

により評価した。その結果

Ni-Si-B

系ろう材を用いることでチタン母材で破断する程度の接合強度が得られること が分かった。

1 はじめに

 チタンは, 比強度や耐食性に優れており, 近年, 特 にチタンの海水への耐食性が優れていることを利用 してチタンクラッド鋼が海洋構造物に利用されてい る。しかしながら,チタンクラッド鋼はその製造法 上コスト高となっているため,最近簡便な接合法と してアモルファスろう材をインサート材とした重ね シーム溶接法について報告されている1) 。また, 著 者らはインサート材としてニッケル箔およびニッケ ル系アモルファスろう材を用いてシーム溶接を行う ことで良好な接合ができることを報告した2), 3)。  本研究では前回用いたニッケル箔およびニッケル 系アモルファスろう材

MBF15

に加え, 組成の異な るニッケル系アモルファスろう材を用いて, 今回新 たに開発したシリーズ電極を有するシーム溶接機で チタン板と軟鋼板とのシーム溶接を行い, ピール試 験による接合部の強度評価およびそれぞれの接合界 面を組織学的観点から考察した4)

2 実験方法

 接合実験に使用した材料は, 板厚

0.5mm

の純チ タン板と板厚

3.2mm

の軟鋼板で, インサート材には 厚さ

0.05mm

のニッケル箔, 厚さ約

0.04mm

のニッ ケ ル 系 ア モ ル フ ァ ス ろ う 材

MBF-15(Cr:13, Fe:4, Si:4.5, B:3mass%, Ni:Bal) ,  MBF30

(Si:4.5, B:3mass%,

Ni:Bal)および MBF60(P:11mass% , Ni:Bal)を用い

*1 機械電子研究所

*2 九州工業大学

た。それぞれのニッケル系ろう材の固相線および液 相線を表-1に示す。また比較のためにインサート材 を用いずにチタン板と軟鋼板との直接溶接も行った。

チタン板と軟鋼の溶接には, 今回開発したφ90mm, 先端幅

5mm

のシリーズ銅電極を有する自走式シー ム溶接機を用いた。その際の溶接条件は, 溶接速度 を

1.0m/min, 加圧力を 294N

で一定とし, 溶接電流

3.0〜4.0kA

の範囲で数水準変化させた。図-1にシ

ーム溶接の概念を示す。

 接合部の強さを評価するために, 溶接方向に垂直 に幅

20mm

の短冊型の試験片を作製し(図-2), ピ ール試験を行ってその最大剥離荷重を求め, ピール 強さとした。溶接後の接合界面を

EPMA

により元素 分析を行い, また軟鋼板側の破断面の

X

線回折を行 って接合部に生成した化合物を同定した。

Electrode

Welding current

Insert metal Ti plate

Mild steel plate

図-1 シーム溶接の概念図

(2)

72

表-1 ニッケル系ろう材の固相線および液相線

固相線(℃) 液相線(℃)

MBF15 960 1125

MBF30 980 1040

MBF60 880 880

3 結果と考察

 図-3にそれぞれのインサート材を用いた場合の溶 接 電 流 に 対 す る ピ ー ル 強 さ を 示 す 。 直 接 接 合 の

3.5kA, 4kA

およびニッケルの

4kA

の場合は, 接合 部での破断であったが, 他はほとんどチタン溶接熱 影響部でのチタン母材破断であった。今回用いたイ ンサート材の中では

MBF30

の場合が最も高いピー ル強さが得られ, 3kAで約

1.93kN

であった。イン サート材としてニッケル, MBF15, MBF30および

MBF60

を用いた場合は, 溶接電流が増加するにつ

れてピール強さはわずかに低下していた。それに対 して直接接合したものは, インサート材を用いた場 合よりも溶接電流が増加するにつれてピール強さは 急激に低下していた。

インサート材を用いずに直接接合した場合, いず れの溶接電流の場合も鉄とチタンとの界面に化合物 の生成が見られ, 

3kA

2μm

程度で, 溶接電流が 増加するにつれて化合物層の厚さが大きくなり

4kA

では

35μm

程度の厚みとなっていた。図-3で示した ように, 直接接合でも界面の化合物生成を小さくす れば比較的高いピール強さが得られるが, 化合物厚 さが大きくなるとピール強さが急に低下することが 分かった。界面に生成した化合物は, 

X

線回折によ ると, FeTi, Fe2

Ti

および

TiC

であった。

 インサート材としてニッケルを用いた場合, いず れの溶接電流の場合もチタンとニッケルとの界面に 化合物の生成が見られ

3kA

12μm

程度で, 溶接 電流が増加するにつれて化合物層の厚さが大きくな り, 

4kA

80μm

程度の厚みとなっていた。界面に 生成した化合物は, ニッケル側が

NiTi, チタン側

NiTi

2であった。溶接電流が

4kA

になると

Ni

3

Ti

の生成も一部に見られた。

 インサート材として

MBF15

を用いた場合, いず れの溶接電流の場合もチタンと

MBF15

との界面に 化合物の生成が見られ

3kA

2μm

程度, 

4kA

では

45μm

程度の厚みとなっていた。界面に生成した化 合物は, ニッケルの場合と同様で主に

NiTi

NiTi

2

で あ っ た が,  化 合 物 生 成 の 様 子 が 異 な っ て お り

, NiTi

2の中に粒状の

NiTi

が均一に分散しているよう になっていた。

 今回は新たに開発したシリーズ電極を有するシー ム溶接機を用いて接合を行ったが, 以上の直接接合, ニッケルおよび

MBF15

をインサート材とした接合 においては, 前回の結果2), 3)とほぼ同じであった。

 図-4にインサート材として

MBF30

を用いた場合 の組成像と

EPMA

線分析の結果を示す。この場合も ニッケルおよび

MBF15

の場合と同様で,MBF30の チタン側の一部が溶融しており, いずれの溶接電流 でもチタンと

MBF30

との界面に化合物の生成が見 られ, 

3kA

2μm

程度, 

4kA

では

70μm

程度の厚 みとなっていた。

90mm 25mm

20mm

図-2 ピール試験片形状

Ti

Mild steel

Welded zone

3.0 3.5 4.0

1.0 1.5 2.0

Ni MBF15 MBF30 MBF60 Direct Ma xi mu m p ee l l oa d, F

p

/ k N

Welding current, I / kA

図-3 各種インサート材を用いて溶接した試験片の ピール強さに及ぼす溶接電流の影響

(3)

73

  図-5に軟鋼板側の破断面のX線回折パターンを示す。

Fe

(c) Welding current 4kA

20μm

Ti

Fe Ti

Fe Ti

20μm

20μm 20μm

Fe

Si

Ni

Ti

Fe

Si

Ni T i

Fe

Ni Si

T i MBF30

MBF30

20μm 20μm

(a) Welding current 3kA

(b) Welding current 3。5kA

図-4 インサート材として

MBF30

を用いた場合の接 合部の組成像と線分析結果

NiTi

2

NiTi

Fe

P

Ni T i

Fe

P Ni

T i

Fe

Ni P Ti Fe

20μm 20μm

20μm 20μm

(a) Welding current 3kA

図-6 インサート材として

MBF60

を用いた場合の接合部 の組成像と線分析結果

(c) Welding current 4kA (b) Welding current 3。5kA Ti

Ti Fe

MBF60 Ti

Fe

MBF60

20μm 20μm

図-5 MBF30 を用いた場合の破断面の

X

線回折 結果

図-7 MBF60 を用いた場合の破断面の

X

線回折 結果

40 50 60 70 80

Mild steel side

3.5 kA 4 kA

■ NiTi

2

NiTi

Ni Ni

Ni Ni

Ni Ni

▲ ▲

▲ ▲

In te ns ity / ar bi tr ar y un it

2 θ / degree 40 50 60 70 80

Mild steel side

3.5 kA 4 kA

Ni

3

P NiTi

2

NiTi

Fe Ni

, Fe

Fe

Fe

Ni Ni Ni

○ ○

In te ns ity / a rb itr ar y u ni t

2 θ / degree

(4)

74

主に

NiTi

NiTi

2のピークが見られ, ニッケルおよ

MBF15

を用いた場合と同様であった。

 図-6にインサート材として

MBF60

を用いた場合 の組成像と

EPMA線分析の結果を示す。ここでは, 

ニ ッケル, 

MBF15

および

MBF30

の場合と異なり, 溶

接電流

3.5kA

までは

MBF60

とチタンとの界面には

化合物の生成は見られなかったが, MBF60 はすべ て溶融しておりチタンの拡散が見られた。溶接電流 が

4kA

になると, 溶融した

MBF60

が排出され, 鉄 とチタンとの界面に化合物の生成が見られた。図-7 に軟 鋼 板 側の 破 断 面の X 線 回折 パ タ ーン を 示 す。

3.5kA

では

Ni

3

P

が見られた。ニッケル, MBF15お

よび

MBF30

を用いた場合と異なりニッケルとチタ

ンとの金属間化合物が生成しないのは, 

Ni

3

P

の方が これらの化合物よりも安定な化合物であるためと考 えられる。溶接電流が

4kA

になると, Ni3

P

も生成 してはいるものの, NiTiや

NiTi

2が生成していた。

5 まとめ

 チタン板と鋼板との接合に各種インサート材を用 いて重ねシーム溶接を行い,ピール試験による強度 評価およびそれぞれの接合界面を組織学的観点から 考察した。得られた結果は次の通りである。

1)ニッケル, MBF15, MBF30

および

MBF60

を用い てシーム溶接した結果,ピール強さは

MBF30

の場 合が最も高く溶接電流

3kA

で約

1.93kN

(板幅

20mm)

であった。

2)ニッケル, MBF15

および

MBF30

をインサート材

とした場合はインサート材とチタンとの界面に主に

NiTi

2および

NiTi

が生成し,溶接電流の増加ととも に化合物層は大きくなりピール強さが低下した。

3)MBF60

をインサート材とした場合は,ろう材中

Ni

3

P

が生成し,ピール試験ではろう層中で破断し ていた。

4)チタン板と軟鋼板とを直接接合した場合,界面の

化合物生成を小さくすればピール強さは比較的高い が,化合物層厚みが増加するとインサート材を用い た場合よりピール強さは急激に低下した。

6 参考文献

1)松本ら:溶接学会全国大会講演概要 ,

61

集,

p.248-249(1997-9)

2)徳永ら:材料とプロセス, 12(1999), 311

3)中村,

徳永:平成

10

年度福岡県工業技術センタ

ー研究報告, Vol. 9, p. 29-33(1999)

4)徳永ら:材料とプロセス, 13(2000), 344

参照

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