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全文

(1)

東京地裁平成24年11月28日判決(日産事件)について

岡村 忠生

 

事実

実と

と判

判旨

旨  

事実

実の

の概

概要

要  

原告は、その製品の販売などを行う49の完全子会社と、ごく僅かの少数株主がいる

2社を有していた。平成18  年4月から7月にかけて、以下の段階を踏んで事業再

編を行い、販売子会社を持株会社の下に収めた。  

 

 

組織再編前  

 

 

納税者(原告)

少数株主

!

少数株主

!

系列会社

!

完全子会社49社

系列子会社

!

2社

① 分社型分割により、それまでの子会社

(「旧子会社」という。)

に土地建物等を残し、 販売子会社

(「新子会社」という。原告からは孫会社)

を新設する。旧子会社は、 ④の吸収合併により消滅が予定された一時的存在となる。 ② 債務超過のため吸収合併ができないとされた旧子会社30社に、原告が第三者割当増 資を行い、新株の発行を受ける。 ③ 一時的存在である旧子会社について、事業税の軽減等のためその資本金を1000万 円に減額する

(資本準備金と利益準備金も減額)

増資をしなかった旧子会社21社は、減資・減準備金により、合計約85億

円を原告に払い戻し、次の株数の株式を消却する

(旧商法213条1項)

。  

消却株数  =  払戻額  /  1株の時価  

増資をした旧子会社30社は、払戻しをせず、次の株数の株式を消却する。  

消却株数  =  減資の額  /  増資前の1株あたり資本金の額  

④ 旧子会社を、持株会社となる会社が吸収合併する。この結果、新子会社は、持株会社 の完全子会社となる。

(2)

新設分割型分割後  

 

 

出来上がり

 

 

 

当初申告  

株式譲渡損益  =  (払戻額  -  みなし配当)-  消却株式簿価  

 

課税処分  

株式譲渡損益  =  (払戻額  +  寄附金  -  みなし配当)-  消却株式簿価  

払戻額+寄附金  =  消却株式時価  

処分理由  

(1) 払戻額は、消却株式の譲渡に係る適正な対価の額に比して低いから,原告は譲渡損失額 を過大に計上した。 (2) この差額

(一部の金額を除く。)

は、原告から旧子会社に対して支出した寄附金に当た

納税者(原告)

少数株主! 少数株主! 系列会社! 販売子会社49社 系列子会社! 販売子会社 新設分社型分割

合併予定会社

納税者(原告)

少数株主

!

系列会社

!

販売子会社

持株会社

(3)

裁判での納税者の主張

(処分の一部を受け容れ)

 

払戻限度額

(旧商法 289  条 3  項、375  条 1  項)

を超える部分は,その払戻しを受けら

れる法的地位になかったから,寄附金には当たらない。  

 

 

判旨

旨  

課税庁勝訴  

(1)

寄附金の意義について  

「寄附金」  とは,・・・金銭その他の資産文は経済的な利益を対価なく他に移転す

る場合であって,その行為について通常の経済取引として是認することができる合理的

な理由が存在しないものを指す・・・。  

(2)

払戻限度超過額の寄附金該当性について  

旧商法213条1項が定める株式の消却がされた場合,当該消却された株式の株主は,

当該株式についての株主としての地位に相当する経済的な利益を失うこととなる。・・・

原告は,本件株式消却によって本件消却株式の株主としての地位を失い,本件消却株式

の時価に相当する経済的な利益を失うとともに,払戻しをした本件各子会社から,本件

消却株式の時価よりも低い額の本件払戻額の払戻しを受けたにとどまるから,このよう

な本件株式消却を伴う減資の手続を通じ,原告から払戻しをした本件各子会社に対して

は本件消却株式の時価と本件払戻額の差額に相当する経済的な利益が,原告から払戻し

当初申告

譲渡原価(消却株式簿価) 1,433億円 払戻額 85億円 譲渡収入 41億円 みなし配当  44億円

譲渡損失額 1,392億円

消却株式時価(時価純資産法) 715億円 各子会社ごとに、資本金等の額が 消却株式時価を超過するとき、 その超過額の合計 1億円

納税者主張

(争点限定) 譲渡収入 273億円 みなし配当  36億円

譲渡損失額 1,160億円

払戻限度額 308億円 譲渡収入(適正譲渡対価の額)         678億円 みなし配当  36億円

譲渡損失額 755億円

課税庁主張

第1審判決

寄附金 223億円 寄附金629億円

(4)

をしなかった本件各子会社に対しては本件消却株式の時価に相当する経済的な利益が,

それぞれ対価なく移転されたものということができる。  

そして,・・・原告が営利を目的とする法人であること,事業の再編の手続として本

件において採用されたもの以外のものを選択することが妨げられていたと見るべき格別

の証拠ないし事情は見当たらないこと,本件株式消却を伴う減資は直接には本件各子会

社の本件合併による消滅までの間のいわゆる税金対策を主たる目的とするものであるこ

と等からすれば,・・・上記のような経済的な利益の対価のない移転を内容とする手続

を執ることが原告にとっての通常の経済取引として是認することができる合理的な理由

に当たると直ちに解することは困難というべきである・・・。  

 

考察

察  

違法

法な

な収

収入

入の

の擬

擬制

制と

と法

法規

規範

範  

前提  

株式消却に係る実際の払戻額が株式時価よりも低いとき、その差額をみなし配

当+譲渡収入と認定

(擬制)

(貸方)

、その金額を寄附金とする

(借方)。  

 

争点  

寄附金の認定や譲渡収入の擬制は、法令で禁止されている対価にまで及ぶか。  

前提とされた寄附金課税が、旧商法上の払戻制限額を超える部分にまで

及ぶか。  

 

有償取引同視説

(二段階説)

 

適正な対価を受け取った者との公平  

受け取れば違法になる対価についてまで、それを受け取った者と同じように扱

うことは、「公平」の問題としては説明できない。  

 

「適正譲渡対価の額」

(課税庁、第一審判決)

 

受け取れば違法になる対価を「適正」と称することはおかしい。  

法が禁じるものを「適正」などと言うべきではない。  

 

「通常の経済取引として是認」

(判決理由)

 

「是認」とは、法的に肯定すること。  

納税者の行為に対する規範としての内容

(していいこと、してはいけない

ことを示す内容)

を持つ。  

法律に違反しなければ得られない対価を得ないことは、寄附金には該当しない。  

 

課税庁「消却する株式の数を減らす等して」

(判決23頁)  

消却株式数は減ずる資本金に対応して算出  

消却株数が過大であるなら、損金性を欠くので、過大部分について損金算入を

否認すればよかったはず。  

(5)

法の正義  

行われなかった違法な行為を行われたものと擬制し、課税の基礎とすることは、

許されない。  

 

 

株主

主法

法人

人間

間取

取引

引の

の観

観点

点か

から

ら  

1.株式消却に伴う払戻し  

2.相手方の受贈益課税  

 

 

1.二つのみなし配当課税(2001年(平成13年)改正が区別導入)  

みなし配当  =  交付金額  -  対応する部分の金額  

株式譲渡損益  =(交付金額  -  みなし配当)-  譲渡原価  

 =  対応する部分の金額  -  譲渡原価  

 

①  資本の払戻し(法法24条1項3号、法令23条1項3号)  

対応する部分の金額  =  払戻等対応資本金等額  ×  持分割合  

払戻等対応資本金等額  

=  直前の資本金等額×減少資本剰余金の額/前期末純資産簿価  

 

②  自己株式の取得等(法法24条1項4-6号、法令23条1項4号)  

対応する部分の金額  

=  直前の資本金等の額/発行済株式数×取得等に係る株式数  

 

本件は、株式が消却されているから、②に該当(法法24条1項5号)  

 

 

5号の規定は、旧商法213条に基づく株式消却に対応  

 

譲渡損益  

=対応する部分の金額  -  譲渡原価  

=直前の資本金等の額/発行済株式数×取得等に係る株式数  

-(払戻額  /  1株の時価)×1株の簿価  

=直前の資本金等の額/発行済株式数×消却株式数  

-消却株式数×1株の簿価  

=  消却株式数×(直前の資本金等の額/発行済株式数-  1株の簿価)  

 

1株だけが発行されていたとすると、  

譲渡損益=資本金等の額-株式取得価額  

 

 

(6)

もし①が適用されていれば(株式を消却していなければ)、  

 

払戻しのなかった(増資をした)子会社30社  

無償減資であるから、株式譲渡損失なし  

株式取得価額・資本金等の額は維持  

 

払戻しのあった(増資をしなかった)子会社21社  

譲渡損益  

=対応する部分の金額  -  譲渡原価  

=払戻等対応資本金等額×持分割合-消却株数×1株の簿価  

=(直前資本金等の額×減少資本剰余金の額/前期末純資産簿価)×  持分割合  

-(払戻額  /  1株の時価)×1株の簿価  

払戻額=減少資本剰余金の額、持分割合1とすると、  

譲渡損益  

=払戻額×(直前資本金等の額/前期末純資産簿価-1株の簿価/  1株の時価)  

=消却株式数×(直前資本金等の額×1株の時価/前期末純資産簿価-1株の簿価)  

 

1株だけが発行され、利益積立金額がなかったとすると、  

譲渡損益=株式時価-株式取得価額  

 

完全子会社について、①と②の区別に意味があるか。  

 

しかし、2010年改正は、譲渡損失を否定し、資本金等の額で調整  

 

原資の回収のあり方  

 

2.相手方課税の欠如  

整合性(consistency)を欠く課税  

株主法人間であっても、受贈益課税は行われていた。  

出資とすると、資本金等の額と株式取得価額を増加させなければならない。  

 

ある契約を、一方にとって出資、他方にとって贈与と解釈できるか。  

 

寄附金課税は無理ではないか。  

(7)

参照条文  

22000011年年改改正正前前 法人税法(配当等の額とみなす金額) 第二十四条 法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。以下この条において同じ。)の株主等である 内国法人が当該法人から次に掲げる金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び 金銭以外の資産の価額の合計額がその交付の基因となつた当該法人の株式(出資を含む。以下この項及 び次項において同じ。)帳簿価額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部分の 金額のうち、当該法人の資本等の金額から成る部分の金額以外の金額は、利益の配当又は剰余金の分配 の額とみなす。 一 当該法人の資本若しくは出資の減少又は株式の消却により交付される金銭その他の資産 二 当該法人からの退社又は脱退により持分の払戻しとして交付される金銭その他の資産 三 当該法人の解散により残余財産の分配として交付される金銭その他の資産 四 当該法人の合併により交付される金銭その他の資産 (有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入) 第六十一条の二 … 3 内国法人がその有する株式を発行した法人の資本(出資を含む。)の減少による払戻し又は解散による 残余財産の分配として金銭その他の資産を取得した場合における第一項の規定の適用については、同項 第二号に掲げる金額は、当該株式の帳簿価額のうち当該金銭の額及び金銭以外の当該資産の価額の合計 額に達するまでの金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額とする。 所得税法(配当等の額とみなす金額) 第二十五条 法人(法人税法第二条第六号(定義)に規定する公益法人等及び人格のない社団等を除く。 以下この条において同じ。)の同法第二条第十四号に規定する株主等(以下この条において「株主等」と いう。)が当該法人から次に掲げる金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金 銭以外の資産の価額の合計額が当該法人の同法第二条第十六号に規定する資本等の金額(以下この条に おいて「資本等の金額」という。)のうちその交付の基因となつた株式(出資を含む。以下この項及び次 項において同じ。)に係る部分の金額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部 分の金額は、利益の配当又は剰余金の分配の額とみなす。 一 当該法人の資本若しくは出資の減少又は株式の消却により交付される金銭その他の資産 二 当該法人からの退社又は脱退により持分の払戻しとして交付される金銭その他の資産 三 当該法人の解散により残余財産の分配として交付される金銭その他の資産 四 当該法人の合併により交付される金銭その他の資産 法人税法施行令 (みなし配当金額の計算方法) 第二十三条 法第二十四条第一項第一号から第三号まで(みなし配当)に掲げる金銭その他の資産の交付 が二回以上にわたつて行なわれた場合には、... 2 法第二十四条第一項第四号... 3 法第二十四条第一項第四号... 4 第百十九条の二第一項第二号(総平均法)... (減資等の場合の譲渡原価の額) 第百十九条の九 法第六十一条の二第三項(減資等の場合の株式の譲渡原価の額)に規定する政令で定め るところにより計算した金額は、同項に規定する株式の同項に規定する金銭その他の資産の取得の直前 の帳簿価額のうち同項に規定する金銭の額及び同項に規定するその他の資産のその取得の時における価 額の合計額(法第二十四条第一項第一号又は第三号(減資等の場合のみなし配当)の規定により利益の 配当又は剰余金の分配の額とみなされる金額がある場合には、その金額を控除した金額)に達するまで の金額とする。

(8)

22000011年年改改正正直直後後(2001 年商法改正による自己株取得解禁前) 法人税法 第二十四条 法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。以下この条において同じ。)の株主等である 内国法人が当該法人の次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭 の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が当該法人の資本等の金額のうちその交付の基因となつた当該 法人の株式(出資を含む。以下この条において同じ。)に対応する部分の金額を超えるときは、この法律 の規定の適用については、その超える部分の金額は、利益の配当又は剰余金の分配の額とみなす。 一 合併(適格合併を除く。) 二 分割型分割(適格分割型分割を除く。) 三 資本若しくは出資の減少(株式が消却されたものを除く。)又は解散による残余財産の分配 四 株式の消却 五 社員の退社又は脱退による持分の払戻し (有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入) 第六十一条の二 ... 7 内国法人が所有株式(当該内国法人が有する株式をいう。以下この項において同じ。)を発行した法人 の資本(出資を含む。)の減少(株式が消却されたものを除く。)による払戻し又は解散による残余財産 の一部の分配(以下この項において「払戻し等」という。)として金銭その他の資産の交付を受けた場合 における第一項の規定の適用については、同項第二号に掲げる金額は、当該所有株式の払戻し等の直前 の帳簿価額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額とする。 法人税法施行令 (所有株式に対応する資本等の金額の計算方法等) 第二十三条 ... 三 法第二十四条第一項第三号に掲げる資本若しくは出資の減少又は解散による残余財産の分配 当該資 本若しくは出資の減少による払戻し又は当該解散による残余財産の分配(以下この号において「払戻し 等」という。)を行つた法人(以下この号において「払戻法人」という。)の当該払戻し等の直前の払戻 等対応資本金額等(当該直前の資本等の金額にイに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合(当 該割合に小数点以下一位未満の端数があるときは、これを切り上げる。)を乗じて計算した金額をいう。) を当該払戻法人の当該直前の発行済株式等の総数で除し、これに同項に規定する内国法人が当該直前に 有していた当該払戻法人の当該払戻し等に係る株式の数を乗じて計算した金額 イ 当該払戻法人の前期期末時(当該払戻法人の当該払戻し等の日の属する事業年度の前事業年度(残余 財産の全部の分配を行う場合には、当該残余財産の確定の日の属する事業年度とし、当該払戻し等の日 以前六月以内に法第七十二条第一項に規定する期間について同項各号に掲げる事項を記載した中間申告 書を提出し、かつ、当該提出の日から当該払戻し等の日までの間に確定申告書を提出していなかつた場 合には、当該中間申告書に係る同項に規定する期間とする。)終了の時をいう。)の資産の帳簿価額から 負債の帳簿価額を控除した金額 ロ 当該払戻し等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(当該合計額がイに掲げる 金額を超える場合には、イに掲げる金額) 四 法第二十四条第一項第四号に掲げる株式の消却 当該消却を行つた法人(以下この号において「消却 法人」という。)の当該消却の直前の資本等の金額を当該消却法人の当該直前の発行済株式等の総数で除 し、これに同項に規定する内国法人が当該直前に有していた当該消却法人の当該消却に係る株式の数を 乗じて計算した金額 五 法第二十四条第一項第五号に掲げる社員の退社又は脱退による持分の払戻し 当該持分の払戻しを行 つた法人(以下この号において「払戻法人」という。)の当該持分の払戻しの直前の資本等の金額を当該 払戻法人の当該直前の発行済株式等の総数で除し、これに同項に規定する内国法人が当該直前に有して いた当該払戻法人の株式の数を乗じて計算した金額 第百十九条の九 法第六十一条の二第七項(減資等の場合の株式の譲渡原価の額)に規定する政令で定め るところにより計算した金額は、同項に規定する所有株式を発行した法人の行つた同項に規定する払戻 し等の直前の当該所有株式の帳簿価額に当該払戻し等に係る第二十三条第一項第三号(みなし配当金額

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