九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
開発途上国の大都市における基盤的交通システムの 導入に関する研究 : モンゴル国・首都ウランバート ル市を例に
バタルゾリグ, マンダハイ
http://hdl.handle.net/2324/2236213
出版情報:九州大学, 2018, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
開発途上国の大都市における基盤的交通システムの 導入に関する研究
‐モンゴル国・首都ウランバートル市を例に‐
目 次
序論 ... 1
研究の背景 ... 3
研究の目的 ... 5
既存研究の整理 ... 7
研究の構成 ... 9
開発途上国の大都市における基盤的交通システムの整備状況 ... 13
はじめに... 15
本章の背景と目的 ... 15
都市における主な公共交通システムの概要... 16
開発途上国の大都市における基盤的交通システムの整備状況 ... 19
低所得・中低所得国の大都市における都市鉄道整備の状況 ... 21
低所得国の大都市における都市鉄道整備 ... 22
a) 平壌... 22
b) アディスアベバ ... 23
中低所得国の大都市における都市鉄道整備 ... 24
a) タシュケント及びキエフ ... 25
b) マニラ首都圏 ... 25
中高所得国の大都市における都市鉄道整備の状況 ... 27
中高所得国の大都市における都市鉄道整備 ... 30
a) パナマシティ ... 30
b) その他 ... 31
都市鉄道のない開発途上国の巨大都市 ... 32
開発途上国の大都市における都市鉄道整備についての課題 ... 34
モンゴル国・首都ウランバートル市における都市鉄道整備の状況 ... 37
モンゴル国・首都ウランバートル市について ... 37
ウランバートル市におけるゲル地区の拡大... 53
ウランバートル市のインフラ整備の現状 ... 56
廃棄物の収集 ... 56
水の使用 ... 56
下水道およびトイレ ... 57
公共施設へのアクセス ... 58
公共交通の利便性 ... 59
インフラ未整備に関する住民の意識 ... 60
住民の生活環境に関するアンケート調査 ... 60
生活環境に関するアンケート調査の結果 ... 62
廃棄物の収集 ... 62
水の使用 ... 63
下水道およびトイレ ... 64
公共施設へのアクセス ... 64
公共交通の利便性 ... 66
総合評価... 68
インフラ未整備および住環境に関する総合評価 ... 68
まとめ ... 71
ウランバートル市における交通計画についての住民の意識 ... 75
はじめに... 77
本章の背景と目的 ... 77
ウランバートル市における都市交通体系の現状及び計画 ... 78
ウランバートル市の道路交通の現状 ... 78
ウランバートル市の都市公共交通計画 ... 80
交通実態調査による交通手段選択モデルの構築... 82
交通行動に関する実態調査 ... 82
交通手段選択モデルの構築 ... 85
まとめ ... 88
選好意識調査による将来の基盤的交通システムについての住民意識 ... 93
はじめに... 95
本章の背景と目的 ... 95
地下鉄の開発における問題点 ... 96
SP調査による住民の交通手段選択の概要 ... 97
SP調査の概要 ... 97
SP調査による交通手段選択についての住民意識 ... 100
個人属性について ... 100
現状の通勤トリップについて ... 101
将来の基盤的交通システムについて... 102
a) 将来の基盤的交通システムの概要 ... 102
b) サービスレベルの設定 ... 103
c) 説明変数の設定 ... 104
多項選択ロジットモデルの構築 ... 106
将来の基盤的交通システムにおける交通手段選択について ... 106
多項選択ロジットモデルの導入 ... 107
まとめ ... 109
都市鉄道整備における行政の都市交通インフラの推進方法 ... 113
はじめに... 115
本章の背景と目的 ... 115
レールバスの運行実態 ... 117
計画中の地下鉄及び既存の鉄道線の建設費用の比較 ... 118
将来の基盤的交通システムについて行政の推進方法に関する考察 ... 120
まとめ ... 121
結論 ... 123
総括 ... 125
参考文献 ... 129
謝辞 ... 135
付表 ... 137
図表の目次
図の目次
図2-1 平壌の地下鉄路線図 ... 22
図2-2 アディスアベバライトレール路線図 ... 24
図2-3 マニラ首都圏の都市鉄道路線図 ... 26
図2-4 パナマシティの都市鉄道路線図(緑線は開通予定) ... 30
図2-5 人口と自家用車保有台数の推移 ... 37
図2-6 国の名目GDPの成長率(%) ... 38
図2-7 計画中のBogd Khaan鉄道線 ... 39
図2-8 レールバス線(下部の黒線) ... 40
図2-9 BRT路線計画 ... 41
図2-10 東西方向と南北方向の地下鉄路線計画 ... 42
図2-11 東西方向の地下鉄路線計画 ... 43
図3-1 ゲル地区と集合住宅地区の分布 ... 53
図3-2 近郊部に位置するゲル地区 ... 54
図3-3 敷地内の土地利用の事例 ... 55
図3-4 水の搬送 ... 57
図3-5 性別... 61
図3-6 年齢別 ... 62
図3-7 ゲル地区の最も解決して欲しい点 ... 69
図3-8 集合住宅地区の最も解決して欲しい点 ... 69
図4-1 ゲル地区の拡大、1998-2012年間 ... 78
図4-2 東西地下鉄の整備対象路線 ... 80
図4-3 レールバス線(下部の黒線) ... 81
図5-1 SP調査の対象地 ... 98
図5-2 年齢... 100
図5-3 性別... 100
図5-4 運転免許証の保有 ... 101
図5-5 自家用車の保有 ... 101
表の目次
表2-1 都市の公共交通システムの概要(要約) ... 16
表2-2 都市の公共交通システムの概要(鉄道公共交通手段) ... 17
表2-3 都市公共交通システムの特徴(道路公共交通手段) ... 18
表2-4 世界の人口100万人以上の都市と都市鉄道整備状況 ... 20
表2-5 都市鉄道を持つ開発途上国の大都市(人口 100 万人以上の低所得・中低所得国) ... 21
表2-6 都市鉄道をもつ開発途上国の都市(人口100万人以上の中高所得国) ... 28
表2-7 都市鉄道整備のない開発途上国の巨大都市(人口500万人以上) ... 33
表2-8 所得階層別及び各指標別の比較(平均値) ... 34
表2-9 開発途上国の大都市での都市鉄道整備における課題 ... 35
表3-1 土地法による国民に与えられる土地の広さ(ha) ... 51
表3-2 教育施設の実態 ... 58
表3-3 停留所へのアクセス時間および待ち時間(分) ... 59
表3-4 アンケート調査の概要 ... 61
表3-5 配布数の地域区分 ... 61
表3-6 廃棄物の収集状況に関する評価(%) ... 63
表3-7 水質に関する評価(%) ... 63
表3-8 汚水およびトイレの環境に関する評価(%) ... 64
表3-9 公共施設の状況と質に関する評価(%) ... 65
表3-10 教育施設の不満足の理由(%) ... 66
表3-11 医療施設の不満足の理由(%) ... 66
表3-12 公共交通の運行頻度に関する評価(%) ... 67
表3-13 インフラ未整備に関する総合評価(%) ... 68
表3-14 集合住宅に移住する意向の程度(%) ... 70
表5-1 対象地の中央広場からの距離及び住宅地区 ... 98
表5-2 SP調査の概要 ... 99
表5-3 有効回収数(人) ... 99
表5-4 住宅地区別の交通手段選択結果(人) ... 101
表5-5 地区別調査地点別の交通手段選択結果 ... 102
表5-6 年齢別交通手段選択結果 ... 102
表5-7 自動車とバスの所要時間 ... 103
表5-8 新鉄道と地下鉄の運賃(トグリック) ... 103
表5-9 新鉄道の乗車時間(分) ... 104
表5-10 地下鉄の乗車時間(分) ... 104
表5-11 説明変数の設定 ... 105
表5-12 田口のL27313直交表の結果(対象地Amgalanの例) ... 105
表5-13 最も望ましい交通手段(1位) ... 106
表5-14 住宅地区別調査地点別の交通手段選択結果(1位) ... 106
表5-15 共通変数の設定 ... 107
表5-16 固有変数の設定 ... 107
表5-17 パラメータの推定結果 ... 108
表5-18 効用関数 ... 108
表6-1 レールバスの費用と収益のギャップ(1ヵ月分) ... 117
表6-2 地下鉄と既存の鉄道の建設費用の比較 ... 119
写真の目次
写真2-1 平壌地下鉄 ... 22
写真2-2 平壌のトロリーバスと路面電車 ... 23
写真2-3 アディスアベバのLRT ... 24
写真2-4 環状線(MRT3)周辺の道路交通状況(マニラ首都圏) ... 26
写真2-5 パナマシティの都市鉄道 ... 31
写真2-6 ハノイの道路交通混雑の状況 ... 32
写真2-7 レールバス ... 40
付表の目次
付表の目次
付表2-1 援助受取国・地域リスト(OECD) ... 139 付表3-1 ウランバートル市の住民の生活環境及び交通行動に関するアンケート調査票 140 付表5-1 ウランバートル市の交通利用状況調査票(SP調査) ... 145
序論
1.1 研究の背景
1.2 研究の目的
1.3 既存研究の整理
1.4 研究の構成
参考文献
研究の背景
開発途上国では地方部から大都市部への急激な人口流入が続いており、市街地の人口密度の上 昇、無計画な市街地の拡大などを原因とした都市交通状況の悪化が進行しつつあるが、その対策 としての基盤的交通システム(いわゆる都市鉄道)の整備は遅れている。
所得レベルで見ると、開発途上国のうち低所得国では、ドナー国(資金提供国)の援助を受け、
都市鉄道を整備しているが、運賃のみの収入では借入金を返済することが難しくなっている。中 低所得国では、高密の市街地に都市鉄道が整備されることが多く、最も重要な駅への結節施設の 開発が遅れ、駅前・沿線開発が進んでいない状況である。一方中高所得国では、比較的建設費用 の高い都市鉄道を導入しているものの、最大輸送力が小さく交通需要を十分にカバーできない事 例も多い。
モンゴル国の首都であるウランバートル市は、人口約 141万人が居住するモンゴル国の最大の 都市であり、国全体のGDPの約60%と総人口の約45%がウランバートル市に集中している。近年、
地方部からの急激な人口流入や急激なモータリゼーションの進展に伴い、非定住住居による郊外 部のスプロールにより、中心市街地での道路交通混雑などが深刻な状況となっている。
ここで、韓国の企業グループ(Soosung Engineering)1及び日本の国際協力機構(JICA)2が実 施した都市鉄道整備調査により提案されているウランバートル市の最も交通需要の高い幹線道路
Peace Avenue3(以下`PA`と省略)の沿線に都市の基盤的交通システムとして地下鉄を整備する計
画があるが、建設費には約1,800~2,000億円をかかると予測されており、年間国家予算の3割程 度を占めている。特に、JICAが提案した地下鉄は2020年に開通する予定であり、最も望ましいと 判断されていたが、実施にあたっては政府が優先事業として承認する必要があり、2018 年現在、
承認されていない状況である。さらに、PAの沿道は、1950 年代から市街地中心として開発され、
住宅、商業施設、行政機関などが位置する高密の既成市街地となっている。
運営する際に影響を与えており、道路交通混雑の一因となっている。ここで、モンゴル国政府は このような影響を減少させるためにウランバートル市の西南側を通過する新しい鉄道線(Bogd
Khaan鉄道、路線長約170km)を建設し、既存鉄道線の輸送量の80%を新しい鉄道線に転換させる
計画を立てている。
また、ウランバートル市行政とウランバートル鉄道4の協議書により、市街地周辺を通過してい る既存の鉄道線を都市公共交通機関の一環として2014年6月から利用することにした。車両は最 大160人程度のレールバスが使用され、運行間隔はおよそ1時間であり、運賃は1,500トグリッ ク5(バス運賃の約3倍)で設定された。乗車駅は整備されておらず、これまで使用してきた全8 駅より構成している。しかし、国際及び国内の貨物輸送と乗客輸送がない時間帯を利用して運行 していたため、運行後1 ヵ月目に行った調査によると、赤字となり、現在はウランバートル市と ダルハン市6の間を運行している。
上記のことにより、ウランバートル市における基盤的交通システムを整備する際、代替交通手 段として既存鉄道線のインフラを用い、複線化・電化し、サービス水準を向上させた上で、将来、
都市の基盤的交通システムとして開発した場合に住民の意識を図ることが重要である。したがっ て、これらの課題を解決することが開発途上国の発展につながると考えられる。
4 ウランバートル鉄道とは、既存の鉄道線を保有するモンゴル国とロシアの持株会社である。ウランバートル鉄
道が持つ鉄道路線長はおよそ1,800㎞である。
5 トグリックはモンゴル国通貨である。1トグリックは約0.04円である。(2018年10月10日現在)
6 ダルハン市はモンゴル国の第2大都市であり、人口は7.6万人である。
研究の目的
本研究は、開発途上国の大都市を対象とし、都市鉄道整備の現状を確認し、モンゴル国・首都 ウランバートル市におけるインフラ未整備及び急激な人口増加によって悪化しつつある住民の住 環境及び生活環境、都市交通の現状を把握した上で、都市の基盤的交通システムについての住民 の意識を明らかにし、財政的観点も交えて今後の基盤的交通システムの適切な在り方について考 察することを目的とする。
具体的には、下記のとおり行う。
第1 に、開発途上国の大都市における都市鉄道整備の現状を把握し、都市鉄道を整備する際に 発生する課題を整理し、モンゴル国・首都ウランバートル市における都市鉄道整備状況を把握し た上で、将来、都市鉄道を整備する際に留意すべき点を明らかにすることを目的とする。
このため、既存の調査・報告書、統計データにより軌道によって走行している「鉄道公共交通 手段」及び道路上に走行している「道路公共交通手段」における都市公共交通システムの特徴、
容量、表定速度、建設費用、建設に向けての課題を整理し、開発途上国を地域別及び所得階層別 に都市鉄道の整備状況を確認する。これらのことを、モンゴル国・首都ウランバートル市におけ る都市鉄道整備状況と比較し、将来、開発途上国の大都市における都市鉄道整備に関して留意す べき点について考察する。
第2に、ウランバートル市におけるインフラ整備の現状を把握し、インフラ未整備及び急激な 人口増加によって悪化しつつある住環境、生活環境に関する住民の意識をアンケート調査により 客観的に把握した上で、住環境及び生活環境について将来の意向を明らかにすることを目的とす る。
このため、住民の住環境及び生活環境の悪化は都市の基盤的交通システムを効率的及び効果的 に計画することを複雑にしていることから、既存研究、統計データを用い、ウランバートル市の 郊外部に拡大しつつある非定住住居「ゲル地区」及び「集合住宅地区」を対象とし、住民の住環
共交通機関の需要を確認し、考察を行う。
第4に、計画中の地下鉄線及び既存鉄道線を将来のウランバートル市の基盤的交通システムと し、仮想の交通手段として設定し、既存の交通手段(自動車とバス)を含めて計4つの交通手段 とし、将来のウランバートル市の都市交通の適切な在り方について考察を行うことを目的とする。
このため、ゲル地区と集合住宅地区を対象に実施した選好意識調査の結果を用いて、交通手段 選択モデル(多項選択ロジットモデル)を構築し、収集したデータの妥当性を確認した上で、将 来の都市鉄道整備に関する政府の政策に対する推進方法について考察を行う。
既存研究の整理
モンゴル国・首都ウランバートル市におけるインフラ未整備による住環境の悪化及び都市鉄道 整備に関する既存研究は、ゲル地区の拡大を社会・経済的な視点から分析したもの、行政機関(国 際機関等を含む)による幹線道路を中心に地下鉄線を建設する提案、これに伴う地下鉄の実際の ニーズが発生する時期を明らかにしているものに分けられる。
(1) ゲル地区の拡大を社会・経済的な視点から分析した研究
小金澤ら(2006)は、ウランバートル市と地方都市のゲル地区を比較した上で、子供により高 い水準の教育を受けさせるなどの理由により、草原から移住する主な要因をヒアリング調査によ り明らかにしている。
櫛谷(2007)は、ウランバートル市のゲル地区における住民の意向と日常行動に関する研究を 行い、生活環境が悪化していることを明らかにし、ウランバートル市の住民にとって良好な住宅 地をつくることが出来るかを従来の日本の経験に基づいて考察を行った。
Khukhuu(2008)は、市場経済体制による国の住宅政策における問題点を明らかにし、ゲル地区 の拡大要因である新築住宅の不足、集合住宅のコストの高さ、土地私有法の負の側面などを把握 した上で、ウランバートル市の住民の意向を反映させた地域改善計画の必要性について述べ、ゲ ル地区の将来の改善すべき問題点について考察を行った。
Khukhuu(2009)は、ウランバートル市におけるゲル地区と集合住宅地区の居住に対する意向を 比較・分析し、ウランバートル市民の現住宅と街に対する評価及び居住意識の傾向を把握し、住 環境に関する意向が異なっている両地区の社会的・経済的格差について考察を行った。
(2) 行政機関(国際機関等を含む)による幹線道路を中心に地下鉄線を建設する提案に関する報 告書
国際協力機構は、2007~2009年間にモンゴル国・首都ウランバートル市の都市計画マスタープ ラン・都市開発プログラム策定調査(UBMPS)を実施した。パーソントリップ調査(PT調査)を含 む家庭訪問調査を行い、道路交通システムの現状を把握した。また、JICA-STRADAを用いて、現況
市交通建設事業準備調査を実施し、鉱物資源からの利益を有効に使うこともとに、幹線道路であ る「Peace Avenue」沿線に地下鉄の計画を提案している。
ウランバートル市(2014)は、既存鉄道線の基本インフラを使い、都市内の都市鉄道を開発し、
将来この都市鉄道をもとに地下鉄線を開発すると提案している。
(3) 地下鉄の実際のニーズが発生する時期を明らかにしている研究
Khurelbaatar(2015)は、ウランバートル市の都市交通体系に関する研究を行っている。この 研究によると、住民の将来の交通需要を基に、ウランバートル市では 2015-2016 年の間に BRT、
2020年にLight Rail Transit(LRT)、2027-2028年の間に地下鉄を開通することが望ましいとし ている。
Jargalsaikhan(2009)は、ウランバートル市における公共交通のネットワークを改善する方法
に関する研究を行い、将来の公共交通のニーズを把握し、幹線道路の沿線にモノレールを導入す ることは最も効率的としている。
以上の研究以外にも、既存の都市交通体系にマイクロバスを導入し、正式な都市交通手段とし て利用することの利点や不利に関する研究及び国内や国際貨物輸送、航空輸送などについての研 究が存在しているが、ウランバートル市が提案している既存鉄道線の効率的な利用について居住 地区別に公共交通機関の需要を確認し、既存鉄道線の効率的な利用についての住民の意識を把握 している研究は存在していない。
研究の構成
本論文は、序論、本論及び結論を含む7章で構成されている。
第1 章では、序論として、本研究の背景及び目的について述べ、既存の研究を整理し、本研究 の構成を示す。
第2 章では、開発途上国の大都市における都市鉄道の整備に関する課題を明らかにすることを 目的とし、既存の調査・報告書、統計データにより軌道によって走行している「鉄道公共交通手 段」及び道路上に走行している「道路公共交通手段」における都市交通システムの特徴、容量、
表定速度、建設費用、建設に向けての課題などを整理する。
また、開発途上国を地域別、所得階層別に都市鉄道整備の現状を確認し、都市鉄道を整備する 際に発生する課題を整理した上で、モンゴル国・首都ウランバートル市における都市鉄道整備状 況と比較し、将来、開発途上国の大都市における都市鉄道整備に関して留意すべき点について考 察する。
第3 章では、モンゴル国・首都ウランバートル市のインフラ整備の状況を統計データ及びアン ケート調査により客観的に明らかにすることを目的とし、ウランバートル市における非定住住居 によるインフラ未整備及び住環境や生活環境の悪化を把握する。
また、インフラ未整備及び住環境や生活環境に関する住民の意識をアンケート調査により客観 的に把握し、住環境及び生活環境の悪化は都市の基盤的交通システムの整備への影響について考 察する。
第4 章では、ウランバートル市の道路交通及び公共交通計画の現状に関する住民の意識を把握 することを目的とし、ゲル地区と集合住宅地区を対象に実施した交通行動に関する実態調査の結 果を用いて、交通手段選択モデル(非集計ロジットモデル)を構築した上で、シミュレーション により将来の公共交通機関の需要を確認する。
また、SP調査の結果により、計画中の地下鉄と新鉄道の公共交通の利用意向を確認し、新鉄道 の整備方針について考察する。
第6章では、第3章、第4章、第5章で得られた結果をもとに、行政の都市交通インフラの整 備の推進方法について提案する。
第7章では、各章で得られた成果についてまとめ、総括とする。
参考論文
1. 小金澤・孝昭、ジャンチブ・エルデネ・ブルガン、佐々木・達、モンゴル・ウランバートル市 のゲル集落の拡大、宮城教育大学環境教育研究紀要、第9巻、pp.87—93、2006(日本語)
2. 櫛谷・圭司、加藤・陽子、黒田・貴子、北村・雄二、石沢・幸、ウランバートルのゲル地域に おける住民の意向と日常行動-2005・2006 年の調査結果-、環日本海研究年報、第14号、新 潟大学現代社会文化研究科、pp.1-23、2007(日本語)
3. Khukhuu Chinbat、市場経済下の住宅政策と伝統的居住文化の相克-モンゴル・ウランバー
トル市におけるゲル地区を手がかりに-、都市住宅、日本都市住宅学会誌、第64号、pp.21- 26、2008(日本語)
4. Khukhuu Chinbat、ウランバートル市のゲル地区および集合住宅地区住民の居住意識の比較研
究-住民の居住意識と市の住宅政策の方向性に関する-考察-、都市科学研究、首都大学東京 機関リポジトリ、第3号、pp.27-39、2009(日本語)
5. Khurelbaatar Bulgaa、ウランバートル市の都市交通体系に関する研究、モンゴル科学技術大
学・博士論文、2015(モンゴル語)
6. Jargalsaikhan Yondonsuren(2009)、ウランバートル市における公共交通ネットワークを改 善する方法に関する研究、モンゴル科学技術大学・博士論文、2009(モンゴル語)
参考研究報告書
7. 韓国の企業グループ(Soosung Engineering)、ウランバートル市における地下鉄整備の実現 可能性調査(FS)、2009
8. 国際協力機構(JICA)、モンゴル国・ウランバートル市都市交通建設事業準備調査(PPPイン フラ事業)、ファイナルレポート、2013(日本語)
9. 国際協力機構・モンゴル国道路交通省・建設都市開発省・ウランバートル市、モンゴル国・
首都ウランバートル市の都市計画マスタープラン・都市開発プログラム策定調査(UBMPS)、
ファイナルレポート、2009(英語)
14. ウランバートル市(www.ulaanbaatar.mn)
15. ウランバートル市統計局(www.ubstat.mn)
開発途上国の大都市における基盤的交通システムの整備状況
2.1 はじめに
2.1.1 本章の背景と目的
2.1.2 都市における主な公共交通システムの概要
2.2 開発途上国の大都市における基盤的交通システムの整備状況 2.2.1 低所得・中低所得国の大都市における都市鉄道整備の状況
1)低所得国の大都市における都市鉄道整備 a) 平壌
b) アディスアベバ
2)中低所得国の大都市における都市鉄道整備 a) タシュケント及びキエフ
b) マニラ首都圏
2.2.2 中高所得国の大都市における都市鉄道整備の状況 1)中高所得国の大都市における都市鉄道整備
a) パナマシティ b) その他
2.2.3 都市鉄道のない開発途上国の巨大都市
2.2.4 開発途上国の大都市における都市鉄道整備についての課題
2.3 モンゴル国・首都ウランバートル市における都市鉄道整備の状況 2.3.1 モンゴル国・首都ウランバートル市について
2.3.2 ウランバートル市における都市鉄道整備の状況 1)BRTの計画
はじめに
本章の背景と目的
都市鉄道は、通勤・通学輸送のみならず、都市における道路交通混雑、住環境の悪化の緩和、
進展しつつあるモータリゼーションの低減による排出量の削減などの様々な側面で重要な役割を 果たしている。近年、都市への大幅な人口流入により都市人口が増加し、急激に都市化されてい る開発途上国の大都市においては、非定住住居による郊外市街地のスプロールなどにより住民の 生活環境及び住環境の水準が低下している。そして、このような現象に伴い、そもそも計画され ていた最大人口を上回り、居住しにくい状況にある都市が多い。この場合、都市の交通需要をカ バーできる基盤的交通システムの計画は非常に重要であるが、導入できる基盤的交通システム(都 市鉄道等)は国の財政状況、都市の空間構造などにより大きく異なる。
一方、急激な人口増加及び密集市街地の拡大に伴い、利用者から期待される交通のニーズを充 実できる都市鉄道の整備は困難であり、土地の買収などにより駅前広場、駅舎の開発、周辺市街 地の開発に高額の費用及び長時間がかかる。ここで、JICA7の報告書によると、対象とする開発途 上国においては、組織体制や土地利用に係る法整備が未成熟であり、その水準も各国においてこ となることにより、開発途上国の大都市等では、戦前、戦後の日本とはことなり、都市鉄道を含 むインフラ整備を行う前に既成市街地が存在していることから、先進国の成功事例をそのまま適 用することは難しいと明記している。また、Halcrow Group Limited8は都市における都市鉄道整 備について、不十分な合意形成、需要予測及び導入モードの選定の場合は、将来的に様々な側面 で都市機能が失うことが多いと警告している。
以上の背景をもとに、本章では、都市において用いられている主な公共交通システムについて、
その機能等を数値的に紹介した上で、開発途上国の大都市(地域別及び所得階層別)における都 市鉄道整備状況について述べ、都市鉄道整備において発生する課題を整理することを目的とする。
都市における主な公共交通システムの概要
都市における公共交通システムは、都市鉄道(郊外鉄道、通勤鉄道、エアポートエクスプレス 等)、地下鉄、モノレール、LRT(Light Rail Transit)、路面電車、新交通システム(AGT)など の軌道により走行する鉄道公共交通手段、バス高速輸送システム、機関バス、路線バス、トロリ ーバスなどの路面上に走行する道路公共交通手段に分類される。ガイドウェイバスについては、
機関バスと路線バスと同様な車両を用いて運行するため、道路公共交通手段として取り扱う。
都市における公共交通システムの概要を表2-1に示す。表2-1は公共交通システムの性能、
輸送力、車両費を含む1㎞当たりの建設費用を示している。
表2-1 都市の公共交通システムの概要(要約)
出典:地田・信也、市場・一好、「都市における交通システム再考」、土木学会誌、第88号、№8により加工
また、各公共交通システムの詳細を表2-2及び表2-3に示す。ここで、各公共交通システム の概要・特徴、性能・構造、輸送力、路線及び評価を示している。
鉄道公共交通手段は性能・構造における標準的な導入形態により平面、地下、高架の大きく3つ の形態に分けられる。ここで、導入形態が平面と地下の都市鉄道及び地下鉄は建設費用が最も高 く、最大対応輸送力(人/時・片道)も高くなっている。また、導入形態が高架であるモノレール、
新交通システムは、都市鉄道及び地下鉄と比べて建設費用及び最大対応輸送力が低い。
また、道路公共交通手段の場合は、ガイドウェイバスが高架形態となっており、建設費用が他 の道路公共交通手段と比べて高い。また、バス高速輸送システム、期間バス、路線バス、トロリ ーバスは平面形態であり、他の鉄道公共交通手段及び道路公共交通手段の建設費用に比べて低い。
性能 表定速度
(㎞/h) 車両定員 最大対応輸送力
(人/時・片道) 最短運転間隔
都市鉄道 約40~50km/h 150人/両 約64,000人/時 3~5分 約250~300億円 地下鉄 約30~35km/h 100人/両 約64,000人/時 2分30秒 約250~300億円 モノレール 約30km/h 100人/両 約21,000人/時 2分30秒 約120億円 LRT 約20km/h 50~150人/編成 約4,000~14,000人/時 1分30秒 約20~30億円 路面電車 約20~25km/h 50~150人/編成 約11,000人/時 1分30秒 約20~30億円 新交通システム 約30km/h 50人/両 約11,000~16,000人/時 2分30秒 約90億円 ガイドウェイバス 約25~30km/h 80人/両 約2,000~10,000人/時 1分30秒 約50億円 バス高速輸送システム 約30km/h 110人/両 約5,000~25,000人/時 1分30秒 約5~15億円
基幹バス 約20km/h 80人/両 約4,000人/時 1分30秒 約3億円
路線バス 約12km/h 80人/両 約2,500人/時 5~8分 -
トロリーバス 約12km/h 80人/両 約3,000~6,000人/時 5~8分 約0.1~0.3億円 交通手段
輸送力 車両費を含む建設費
(億円/km)
17
表2-2 都市の公共交通システムの概要(鉄道公共交通手段)
都市鉄道 地下鉄 モノレール LRT 路面電車 新交通システム
大量・高速輸送が可能 大量・高速輸送が可能 ・主として道路上空に架設される
(高架)一体の軌道の上部に車 両、あるいは下部にぶら下がった 車両で輸送するシステムである
・ゴムタイヤにより走行する
・占用空間が少ない
・急曲線,急勾配に対応可能
・LRTは従来の路面電車に対し て、加減速性能の向上、乗り心地 の改善、バリアフリー化等を図っ た高性能な車両(LRV)を用いた 中量軌道系輸送システムである。
既存の鉄道との直通運転も可能で ある
・新交通システム、モノレールと 比べ、建設費、運営費用が安い
・すでにある信号,運行システム が利用できる簡便
・簡易な完成されたシステムであ る
・主として道路上空に設置した専 用軌道上を案内軌条によってガイ ドされたゴムタイヤにて走行する 比較的小型の車体を持つシステム
・完全自動運行システムによる無 人運転も導入されている
表定速度(㎞/h) 約40~50km/h 約30~35km/h 約30km/h 約20km/h 約20~25km/h 約30km/h
標準的な導入形態 平面 地下 高架 平面 平面 高架
軌道の形態 専用軌道 専用軌道 専用軌道 軌道の専用化 併用軌道 専用軌道
導入必要空間
(標準的形態に要する幅員) 13~20m 13~20m 20m 6~7m 6~7m 20m
車両定員 150人/両 100人/両 100人/両 50~150人/編成 50~150人/編成 50人/両
最大対応輸送力
(人/時・片道) 約64,000人/時 約64,000人/時 約21,000人/時 約4,000~14,000人/時 約11,000人/時 約11,000~16,000人/時
最短運転間隔 3~5分 2分30秒 2分30秒 1分30秒 1分30秒 2分30秒
路
線 標準的な駅(停留場)間延長 約2~4㎞ 約1㎞ 500~1000m 300~700m 300~700m 300~700m
概要・特徴 交通手段 項目
輸 送 力 性 能
・ 構 造
18
表2-3 都市公共交通システムの特徴(道路公共交通手段)
出典:地田・信也、市場・一好、「都市における交通システム再考」、土木学会誌、第88号、№8により筆者が加工
※英名については、次節の開発途上国の大都市における基盤的交通システムの整備状況を把握するために使用する。
ガイドウェイバス
(高架専用軌道部) バス高速輸送システム 基幹バス
(専用レーン) 路線バス トロリーバス
・郊外部において一般道路を走行 することにより,柔軟な路線計画 が可能である
・AGT導入の段階的設備とするこ とが可能である
・バスを発展させ、輸送力、速達 性を向上させたシステムである
・走行方法としてバス専用レーン をもち、輸送力の大きい連節車両 が走行するシステムをイメージさ れることが多い
・一般の路線バスと比較して、輸 送力・定時性・速達性が改善され る
・柔軟な路線対応が可能(新規・
改廃が容易)
・小量から中量まで対応可能
ゴム製タイヤで走行するため、沿 線への振動や騒音が少ない
表定速度(㎞/h) 約25~30km/h 約30km/h 約20km/h 約12km/h 約12km/h
標準的な導入形態 高架 平面 平面 平面 平面
軌道の形態 専用軌道 専用走行路、一般道路 優先通行帯(専用通行帯) 一般道路 一般道路
導入必要空間
(標準的形態に要する幅員) 20m 6~6.5m 6~6.5m - -
車両定員 80人/両 110人/両 80人/両 80人/両 80人/両
最大対応輸送力
(人/時・片道) 約2,000-10,000人/時 約5,000-25,000人/時 約4,000人/時 約2,500人/時 約3,000~6,000人/時
最短運転間隔 1分30秒 1分30秒 1分30秒 5~8分 5~8分
路
線 標準的な駅(停留場)間延長 500~1000m 500~1000m 300~700m 300~700m 300~700m
車両費を含む建設費
(億円/km) 約50億円 約5~15億円 約3億円 - 約0.1~0.3億円
建設に向けての課題
高架構造が基本であり、建設費用 が比較的高い
・バス専用道路の整備は、法的制 約や整備手法(主体、財源)が課 題
優先通行帯が必要であるため、路 線バスに比較して建設費用がかか る
固定設備がほとんど不要 架空電車線構造であり、路線バス に比べて建設費用がかかる
既存交通への影響
基本的に高架であり、支柱の必要 空間として、4mの幅員が必要であ る
・既存鉄道に乗り入れ不可能であ る
・バス専用道路の整備は、法的制 約や整備手法(主体、財源)が課 題
導入空間として幅員が6~6.5m必 要であるとともに、交差点の交通 処理に影響するなど、自動車交通 に与える影響は大きい
交差点の交通処理に影響し、自動 車交通に与える影響は大きい
交差点の交通処理に影響し、自動 車交通に与える影響は大きい
英名 Guide Way Bus(GWB) Bus Rapid Transit(BRT) Key Route Bus (KRB) Regular Bus (RB) Trolley Bus (TB) 評
価 性 能
・ 構 造
輸 送 力
交通手段 項目
概要・特徴
開発途上国の大都市における基盤的交通システムの整備状況
いったい、ここでいう開発途上国とはどのような国であるか。
開発途上国の明確な定義はなく、国際連合(UN)、世界銀行(WB)、経済協力開発機構(OECD)な どの国際機関がそれぞれ異なった基準を使っている。
経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会9(DAC)では、1人当たりの国民総所得(GNI)を 基準とした「援助受取国・地域リスト(List of ODA Recipients)」を作成しており、このリスト の国は政府開発援助を受ける対象となるので、通常これらの国を開発途上国と呼んでいる。援助 受取国・地域リストによると、世界195か国(2016年1月1日現在)の内、開発途上国(ODAの 対象国)は143か国となっている。この内、後発開発途上国は47か国、低所得国は2か国、中低 所得国は37か国、中高所得国は57か国となっている。(援助受取国・地域リストは付表2—1を参 照)
本節では、開発途上国の人口 100万人以上の大都市を中心に、地域別、国の所得階層別に都市 鉄道 10の整備状況を整理し、都市鉄道整備において発生する問題点を把握する。また、対象とす る開発途上国は、低所得、中低所得、中高所得国に分けて分析する。
世界には人口100万人以上の大都市が503あり、都市鉄道を導入している大都市は151である。
この内訳を地域別にみると、アジアでは230都市(この内、都市鉄道を持つ都市は56)、アフリカ では57(7)、アメリカでは110(47)、欧州では62(27)、オセアニア・中東では44(14)である。
また、国の所得階層別11に大都市数をみると、低所得は26(2)、中低所得は141(11)、中高所得
は209(66)、高所得は127(72)となっている。特に、人口100万人以上の低所得・中低所得国
の大都市では、都市鉄道を導入している都市はわずか13であり、都市鉄道整備は遅れている状況 である。
ここで、対象とする都市鉄道は、専用軌道で平面上を走行する都市鉄道、地下鉄、モノレール、
LRT(Light Rail Transit)、路面電車、新交通システム(AGT)であり、開発途上国の大都市を中
地域別、国の所得階層別に人口100万人以上の都市と都市鉄道整備状況を表2-4に示す。
表2-4 世界の人口100万人以上の都市と都市鉄道整備状況
出典1:国際協力機構・株式会社アルメック VPI・東京地下鉄株式会社、鉄道整備と都市・地域開発を連携させ る開発のあり方に関する調査、2017年
出典2:Urban Rail.net
アジア地域の場合は、人口 100万人以上の大都市が最も多い。この内、低所得・中低所得国で は合計103都市がある内、9都市(約8%)が都市鉄道を導入している。また、中高所得国の場合 は、合計107都市の内、31都市(約29%)が都市鉄道を導入している。
アフリカ地域の場合は、低所得・中低所得国では、合計48都市がある内、3都市(約6%)が都 市鉄道を導入している。また、中高所得国の場合は、9都市の内、4都市(約44%)が都市鉄道を 導入している。
アメリカ、欧州、オセアニア・中東地域では、低所得・中低所得国が少なく、合計16都市があ
る内、1都市(約6%)が都市鉄道を導入している。
低所得 中低所得 中高所得 高所得
アジア 都市数(都市鉄道有) 2(1) 101(8) 107(31) 20(16) 230(56)
アフリカ 都市数(都市鉄道有) 22(1) 26(2) 9(4) 0(0) 57(7)
アメリカ 都市数(都市鉄道有) 1(0) 6(0) 52(18) 51(29) 110(47)
欧州 都市数(都市鉄道有) 0(0) 3(1) 19(5) 40(21) 62(27)
オセアニア・中東 都市数(都市鉄道有) 1(0) 5(0) 22(8) 16(6) 44(14)
合計 都市数(都市鉄道有) 26(2) 141(11) 209(66) 127(72) 503(151)
地域 所得階層別都市数
合計
低所得・中低所得国の大都市における都市鉄道整備の状況
OECDの援助受取国・地域リストによると、低所得国の1人当たり国民総所得(GNI)は1,005ド ル未満、中低所得国の1人当たり国民総所得(GNI)は1,006~3,955ドルとなっている。
都市鉄道を導入している開発途上国の大都市を低所得・中低所得国別にみると、都市鉄道整備 は遅れており、都市鉄道を持つ都市は13都市(低所得2都市+中低所得11都市)と少なく、この 内、6都市はインドの都市である。全体の路線長は1,279kmであり、人口規模(約1.4億人)に比 べて著しく低い状況である。
都市鉄道を導入している人口 100万人以上の開発途上国の大都市を低所得・中低所得国別に表 2-5に示す。
表2-5 都市鉄道を持つ開発途上国の大都市(人口100万人以上の低所得・中低所得国)
地域 サブリージョ
ン 国 都市 市街地面積
(㎢)
人口
(千人)
人口密度
(人/ha) 路線数 路線長
(㎞) 導入モード 最初の路線
(開業年)
アジア 東アジア 北朝鮮 平壌 176 2,860 162.5 2 23 RT 1973
アフリカ 東アフリカ エチオピア アディスアベバ 440 3,465 78.8 2 34 LR 2015
東南アジア フィリピン マニラ 1,580 22,930 145.1 3 50 RT,LR 1984 中央アジア ウズベキスタン タシュケント 531 2,785 52.4 3 39 S 1977 バンガロール 1,166 10,165 87.2 2 32 RT 2011 チェンナイ 971 9,985 102.8 6 240 RT,SR 1931 デリー(NCR) 2,072 24,998 120.6 7 195 S,RT,AE 2002 ジャイプル 414 3,485 84.2 1 10 RT 2015 カルカッタ 1,204 14,810 123.0 1 30 S 1984
ムンバイ 546 22,885 419.1 7 448 S,M,SR 1853
エジプト カイロ都市圏 1,761 15,910 90.3 3 78 S,CR,LR 1987 チュニジア チュニス 363 2,240 61.7 8 32 LR 1985 ウクライナ キエフ 544 2,800 51.5 3 68 RT 1960
11,768 139,318 - 48 1,279 - -
北アフリカ
合計 アジア
アフリカ 欧州
地域区分 都市指標 都市鉄道指標
南アジア インド
・中低所得国
・低所得国
低所得国の大都市における都市鉄道整備
都市鉄道を導入している低所得国の大都市については、平壌(北朝鮮)とアディスアベバ(エ チオピア)の2都市が挙げられる。
a)平壌
平壌(北朝鮮)の都市鉄道は、朝鮮半島初の地下鉄として1973年に開通した。現在、千里馬線
(チョルリマソン)と革新線(ヒョクシンソン、緑線)の2路線、駅数は16駅(1駅は廃止)、路 線長は 23km である。平壌の地下鉄はソ連及び中国の技術支援を受け、1968 年より建設工事が始 まった。ソ連の設計思想を色濃く反映しており、社会主義リアリズムの様式に沿った豪華な駅の 装飾している。
地下深くに位置するホーム(約20~110m)、地上から大深度地下まで一直線で結ぶ長いエスカ レーター、電化方式(直流 825V 電化)はロシアや旧ソ連圏(東側諸国)の地下鉄でもよく見られ る共通の特徴がある13。平壌地下鉄の路線図と地下鉄駅舎内の様子を図2-1と写真2-1に示す。
図2-1 平壌の地下鉄路線図
(千里馬線「赤線」、革新線「緑線」)
写真2-1 平壌地下鉄
13 UrbanRail.Net
また、地下鉄以外に路面電車(軌道電車)3路線、トロリーバス(無軌道電車)9路線の軌道交 通が運行されている。その他にも普通の路線バスも運行されているが、運行時間帯が朝夕の特定 の時間帯に限定されている。
運賃については、地下鉄、路面電車、トロリ―バス、路線バスともに全区間均一で5ウォン(2014 年 7月)であり、路面電車、トロリーバス、路線バスは共通運賃制で、乗り継ぎが可能となって いる。平壌のトロリーバスと路面電車の様子を写真2-2に示す。
写真2-2 平壌のトロリーバスと路面電車
b)アディスアベバ
アディスアベバ(エチオピア)の都市鉄道は、中国の援助を受け、2015 年に LRTを開通した。
南北線は16.9km、東西線は17.4kmであり、路線長は34.3kmである。
建設工事は2011年から始め、開通まで3年間かかり、建設費用は合計4.75憶ドルであった。
建設費用の85%は中国輸出輸入銀行(China`s Export-Import Bank「Exim Bank」)より借金として 借りられた。また、中国の借金にも関わらず、現在、運営及び維持は中国のShenzhen Metro Group
しく、国家予算が圧迫するとの見込みがある。アディスアベバライトレール路線図と LRTの様子 を図2-2と写真2-3に示す。
図2-2 アディスアベバライトレール路線図
写真2-3 アディスアベバのLRT
中低所得国の大都市における都市鉄道整備
中低所得国の大都市における都市鉄道整備については、アジア、アフリカ、欧州の合計11都市 が挙げられる。ここで、タシュケント(ウズベキスタン)、キエフ(ウクライナ)、マニラ(フィリ ピン)の都市鉄道を紹介する。
a)タシュケント及びキエフ
タシュケント(ウズベキスタン)とキエフ(ウクライナ)は、旧ソ連に含まれていたため、ソ連 時代に都市鉄道が整備されている。
タシュケントの場合は、1977年に地下鉄を開通した。タシュケント地下鉄の計画は、1966年に 発生した大地震から2年後の1968年に開始された。最初の路線は1972年に着工され、1977年に 9駅で開業した。この路線は1980年に延長され、さらに2番目の路線が1984 年に開業した。最 新の路線はユヌサバード線で、最初の区間は2001年に開通した。
また、キエフは、ソ連3番目の地下鉄を有する都市となり、1960年に最初の区間(1号線ヴォ グザーリナヤ駅~ドニェープル駅間 5.2km)が開通された。そのあとも延長を続け、1976年には 2号線、1989年には3号線を開通した。
b)マニラ首都圏
東南アジアの国であるフィリピンのマニラ首都圏の都市鉄道については、1984年にほかの東南 アジア都市に比べていち早くと都市鉄道が導入され、1999年には3号線(高架のライトレール)、 2003年には2号線(高架のマスラピッドトランジット)が開通された。マニラ首都圏の都市鉄道 は、南北線(LRT1)、東西線(LRT2、Megatren)、環状線(MRT3、Metrostar)の3路線から構成し ている。南北線(LRT1)の駅数は20駅、路線長は19.7km、東西線(LRT2)の駅数は11駅、路線 長は13.8km、環状線(MRT3)の駅数は13駅、路線長は16.9kmであり、総駅数は44駅であり、総 路線長は50kmである。
利用客数については、南北線は約50万人/日、東西線は約20万人/日、環状線は約50万人/日 といずれかもよく利用されているが、社内混雑、プラットフォームや改札口での混雑がひどく、
特に南北線と環状線の状況が深刻な状況である。
マニラ首都圏の都市鉄道の問題は下記が挙げられる。
・都市化の進展に追いつかない閉鎖的なネットワーク
・需給のミスマッチ
・ネットワークの結合性
・運賃設定、駅前広場・フィーダーサービスの低い運行効率と過度なロードや技術力の不足に
マニラ首都圏の都市鉄道路線図を図2-3に示す。また、環状線(MRT3)周辺の道路交通状況を 写真2-4に示す。
図2-3 マニラ首都圏の都市鉄道路線図
写真2-4 環状線(MRT3)周辺の道路交通状況(マニラ首都圏)
中高所得国の大都市における都市鉄道整備の状況
OECDの援助受取国・地域リストによると、中高所得国の1人当たり国民総所得(GNI)は3,956
~12,235ドルとなっている。
中高所得国の大投資では、都市鉄道の整備を行っている都市は66である。この内、100~200万 人の都市は9都市、200~300万人の都市は7都市、300~400万人の都市は15都市、400~500万 人の都市は7都市、500~600万人の都市は4都市、600~700万人の都市は3都市、700~800万 人の都市は5都市、800~900万人の都市は1都市、1,000万人以上の都市は15都市である。この 内、28都市は中国の都市である。
また、全体の路線長は7,609㎞であり、路線長も上海が617kmで、中国は4,036kmと全体の約 半数以上となっている。
一方、中国以外は、アジアではクアラルンプルとバンコク、南アフリカのケープタウン、ダー バン、プレトリア、北米ではメキシコシティ、南米ではサンパウロとリオデジャネイロ、欧州で はモスクワとサントペテルブルグ、中東ではテヘランとイスタンブルが、100km超える鉄道網を持 っている。
都市鉄道を持つ人口100万人以上の中高所得国の大都市を表2-6に示す。
表2-6 都市鉄道をもつ開発途上国の都市(人口100万人以上の中高所得国)
地 域
サブ
リージョン 国 都市
市街地 面積
(㎢)
人口
(千人)
人口密度
(人 /ha)
路線数 路線長
(㎞) 導入モード最初の路線
(開業年)
北京 3,820 20,390 53.4 19 602.0 S,RT,M 1969
長春 531 3,435 64.7 4 50.6 RT,LR 1941
長沙 622 3,775 60.7 3 69.0 RT,M 2014
成都 1,541 10,680 69.3 4 109.0 RT 2010
重慶 932 7,440 79.8 4 212.0 S,M 2005
大連 777 4,300 55.3 6 141.0 RT,LR 1909
東莞 1,619 8,260 51 1 38.0 RT 2016
福州 440 4,080 92.7 1 29.0 S 2016
広州 3,432 18,760 54.7 10 298.0 S,SR,MR 1997
杭州 1,217 7,605 62.5 3 82.0 S 2012
ハルビン 570 4,915 86.2 2 55.0 S 2013
ヘイホー 725 3,730 51.4 1 25.0 S 2016
香港 275 7,280 264.7 13 268.0 S,LR 1910
昆明-杏仁 712 3,730 52.4 3 64.0 RT 2012
南昌 544 2,790 51.3 1 29.0 S 2015
南京 1,269 6,380 50.3 7 219.0 S,SR 2005
南寧 306 2,690 87.9 1 32.0 RT 2016
寧波 738 3,895 52.8 2 75.0 RT 2014
青島-即墨 1,489 5,970 40.1 1 25.0 S 2015
上海 3,280 22,685 69.2 17 617.0 S,ML,SR 1995
瀋陽 1,010 6,200 61.4 2 54.8 S 2010
深圳 1,748 12,240 70 8 287.0 RT 2004
蘇州 1,127 5,380 47.7 2 65.0 S 2012
天津 2,007 11,260 56.1 6 175.0 S,LR 1980
武漢 1,166 7,620 65.4 5 181.0 S 2004
無錫 738 3,670 49.7 2 56.0 S 2014
西安-咸陽 932 6,150 66 3 91.0 S 2011 鄭州-瑩陽 829 5,755 69.4 3 104.0 S,SR 2013 マレーシア クアラルンプール 1,943 7,365 37.9 5 208.0 S,M,SR,AE 1996
タイ バンコク 2,590 15,325 59.1 5 106.0 RT,S,AE 1999
中央アジア アゼルバイジャン バク 1,101 1,101 24.8 3 37.0 S 1967 北アフリカ アルジェリア アルジェ 453 3,675 81.1 1 13.5 RT,T 2011 ケープタウン 816 3,865 47.4 4 460.0 SR 1882
ダーバン 1,062 3,450 32.5 7 138.0 CR 1860
プレトリア 1,230 3,030 24.6 4 145.0 SR 1910 グアダラハラ 751 4,675 62.3 2 24.0 LR 1989 メキシコシティ 2,072 20,230 97.6 13 262.0 S,LR,CR 1969 モンテレイ 894 4,155 46.5 2 32.0 RT 1991 ドミニカ共和国 サントドミンゴ 298 3,635 122 2 25.0 S 2009 パナマ パナマシティ 220 1,530 69.5 1 16.0 RT 2014
地域区分 都市指標 都市鉄道指標
ア フ リ カ
メキシコ 北アメリカ
中米、
カリブ海
中国 東南アジア
南アフリカ ア
ジ ア
南アフリカ
ア メ リ カ