現代フランス語における前置詞 à の統辞機能と用法
敦賀 陽一郎
序論 1. 基本分析 2. Trésor の分類 3. 幾つかの問題点 結論
序論
前置詞deはフランス語では圧倒的に最高頻度の意味単位である。àは前置詞としては二番目 に高頻度であり,フランス語の語彙全体の中でも上位一桁に入るほどの重要語である。この事 実とも関連して,その統辞機能と働きは極めて多岐にわたり複雑である。統辞構成のあらゆる 段階に介入し意味はゼロに近く「無色 (incolore)」または「空の (vide)」,等と呼ばれる前置詞 の一つである。
前置詞は統辞機能指示子であり,àが統辞機能を指示する構文ですぐ思いつくのはtravailler à Parisのようないわゆる場所の状況補語 (complément circonstanciel) ,On va à Parisのように 場所でも到達点を表すもの,On donne un livre à Lucのように与格 (datif) 機能を示すもの,等 であろう。機能統辞論 (cf. MARTINET. 1960, 5e éd. 2008) では前置詞がついた名詞・名詞句は 自律化連辞 (syntagme autonomisé) と呼ばれ他要素を積極的に限定する能力を持つことにな る。このような能力を持たない名詞・名詞句がそのままで担いうる統辞機能は主辞 (sujet) と 直接目的 (objet direct) である。直接目的とは正に「前置詞の介入なしに」の意である。とこ ろが前置詞がついていても主辞や直接目的の機能を担っているように見える連辞がある。典型 的な例は de つきの不定詞(以下では deVinf のように記す)である (On décide de partir, D’écrire un roman m’a fait grand bien)。この形は前置詞つきの連辞の中で主辞と直接目的との 両方を担いうる唯一のものである。àVinf も直接目的を担いうるように見える (On apprend à chanter)。à とde はLuc va à Paris とLuc vient de Parisのように反対の意味を表す場合がむし ろ多いように思えるが,時に類似の統辞機能を担う(意味も非常に近くなる)ようなこともあ る。これはやはり両前置詞の意味がかなり無色に近いからであろう。
しかし,やはりà とdeは根本的に異なっている。àNは勿論àVinf もどのような述辞(prdicat)
の主辞をも担うことは出来ない(deNのdeは部分冠詞にもなることに注意)。àN/Vinfは必ず 他要素を限定する形であるのに対してdeVinfは必ずしもそうではないのである。これは言い方 を変えるとàN/Vinfは他に必然的に依存する形,つまり,「他に依存する」という意味が常に明 白な形なのである。de は他への依存を必ずしも明確に表すとは限らない。これは,de つきの 連辞が他要素を限定する時はかなり相対的位置に依る場合があるということである。
à つきの連辞は他を必然的に限定するのであるが,その際のàの意味合いが,deの場合より もかなり明瞭に「位置づけ (localisation)」のニュアンスを帯びているように思える。àVinf に は deVinf のような「無色」なところがないだけではなくて,NàNのàNにはNdeNのdeNに 見られるような「中性的属格(=単なる形容詞句)」以上の意味合いがある。àの統辞機能と働 きは de のそれらとの対比でより明確になるように思える。à の「必然的に他に依存する」と いう意味合いとは具体的には何かを以下で探って行く。
1. 基本分析
1.1. 一次機能 1.1.1. 一次特有機能
à や de のように高頻度で多彩な用法を持ち意味も無色に近い意味単位の分析・分類では体 系的・網羅的に調査して行くためには統辞構成の基本を尊重して調べていく以外に方法はない。
つまり,文は述辞を中心としてその周りに拡張 (expansion) が構成されているという事実から 出発する。
先ず,述辞を直接的に限定する一次機能 (fonction primaire) を担っているà つき連辞の用法 を調査すべきである。その中でもある種の述辞としか結びつかない機能を先ず見るべきである。
これらの述辞は構文上一つの下位クラスを構成することになる。問題の機能はこの下位クラス に特有な機能 (fonction spécifique) である。述辞(大半が動詞)の構文はこの特有機能が特徴 付けている。次に,特有機能の数が問題になる。一項(主辞を除いて):obéir à Luc,二項:donner un livre à Luc,三項:faire chanter la Marseillaise à Luc,等となる。この段階ではV-àN, V-N-àN,
V-Vinf-N-àN,のように分類は構文構成要素のクラス,下位クラスに統一すべきである。クラス,
下位クラスとしては動詞はV, 名詞句相当のものはN, Vinf, deVinf, queV (qu’il danse), ce queV (ce que la région est humide), DD(直接話法の節 : « Il danse. »),DI(間接話法の節 : s’il danse)が ある。例えば,V-N-àN 類似のものとしては,直接目的にのみ注目するとしても,V-Vinf-àN,
V-deVinf-àN,V-queV-àN,V-ce queV-àN,V-DD-àN,V-DI-àN がありうる。V-N-àN にしても,
V-N-àNのみ可能なもの,V-N-àN/Vinf,V-N/deVinf-àN,等,等,と多種類の構文の可能性があ
りうる。前置詞àが介入する主な構文は上に見るように三項のもの(それ以上は?)もあるし,
共起する項も直接目的項だけではない(demander à Luc à partir, laisser au service commercial à faire le nécessaire)。
上のように構成項のクラスによる分類を可能な限り詳細に行うことにより意味特徴を介入せ ずに構文が表す文の意味の型をある程度限定して行くことが可能になる。
そして,この次の段階で名詞構成項に限定詞(冠詞,等)がついているかどうか,凝結(figé)
化する傾向があるかどうか,を考慮した下位分類を導入すべきである。構文の名詞構成要素の 限定詞のあるなしはàの機能に決定的な影響を与える訳ではないし,凝結化は統辞構成のあら ゆる段階で起こりうるものであることを喚起すべきである(限定詞の有無が凝結化と直結して いるわけではないことにも注意)。
その後,最後の段階で初めて名詞構成項Nの意味特徴(「生物」,「無生物」,「抽象」,「具体」,
「行動名詞」,等)の導入をすべきである。個別の名詞の意味特徴が構文全体の構成をまとめて いるのではない以上,意味特徴は構文の中でのおおよその傾向の指示程度と考えるのがよい。
例えば,分類の始めの段階で,donner-N1-àN2構文の中の第二項をN2.animé とするのはこの構 文下位クラスの可能性を幾つかの具体例からの連想により狭める危険がある(つまり,この構
文はdonnerのある種の狭い意味のみに限られているものではないということである)。個別の
動詞が各具体的文脈で担う意味,この動詞が所属する下位クラスで担いうる文脈を離れた意味,
そして下位クラスの構文が個別動詞からは独立に持つ意味との間には相互の(一方的ではない)
関係があることを見るべきである (donner-N1-àN2.animé ↔ donner-N1-àN2 ↔ V-N1-àN2)。
1.1.2. 一次非特有機能
次は述辞の下位クラスに特有ではない一次非特有機能の分類である。これは伝統文法ではお およそ「状況補語」されるものである。非特有とはある限定された下位クラスの述辞に特有で はないということで,全ての下位クラスと共存しうる,つまり,全述辞の周りに出現可能なと いうことになる。個別の意味的制限は出てくるが,ある事行 (procès) の出現はある場所で,
ある時に,ある種の様態を伴って起こることが基本にある (On travaille à Paris, On part à midi, On parle à cœur ouvert)。
ここで特に注意すべき点は当該連辞が「方向性」,「到達点」のニュアンスを持っている場合で ある。伝統文法を始め多くの統辞理論ではこの特徴の有無にかかわらず状況補語とする場合が多 い。我々はこの特徴をもつものは特有機能と認める。その理由はこの特徴により一つの述辞の下 位クラスが限定され,問題の連辞の範列にも具体的意味合いの補語を越えたものが含まれる場合 が多いからである。例えば,On arrive à Parisでは,すぐにOn arrive à danserなどが考えられる。
à danserを単なる場所補語とする分析はさすがにない。On met la voiture au garageでもmettre の実例で第二項の範列にどのようなものが来るかを調べればその重要性は理解できる。(機能統
辞論のMARTINET. 1979 はこの au garage を特有機能とは認めないことに注意。)
「方向性」,「到達点」がはっきりと問題になるのは具体的な場所の表現の場合が多いこと,
そしてこの表現との関連で具体性の弱い場所表現 これらは述辞との関係は具体性が弱まった その分だけ強まる が数多く存在することに注目すべきである。また,「方向性」は場所補語に 限らない。
1.2. 非一次機能
一次機能の要素の分類の後に,述辞に間接的に係っていく非一次機能の要素の分類となる。
この場合,à つきの連辞が係っていく核は主に形容詞,名詞となる。この場合もある種の下位 クラスの形容詞や名詞に係って行く非一次特有機能のものと,下位クラスとの関係が認められ ない非一次非特有機能のものとに分かれる。主に動詞述辞に係って行く一次機能の拡張の場合,
拡張が文の構成要素として十全な形で現れている。これに対して非一次機能の拡張の場合,à つきの連辞は文の構成要素である形容詞句や名詞句の一部で,核である形容詞や名詞の下位ク ラスとの結びつきの特有性がはっきりしない場合が多いことが予想される。形容詞に係る副詞 句や名詞に係る形容詞句はたいてい一つだけで当該連辞と対比しうる句が複数両立する場合が 少ないこととも関係している(動詞の周りに両立する特有,非特有の拡張数と比較)。しかし,
動詞構文が形容詞構文や名詞構文に移行し,核が同じ形態を維持している場合は特有,非特有 の違いがはっきりしてくる。
1.2.1. 非一次特有機能
形容詞に係る特有機能としては un étudiant prêt à partir のàVinf のような連辞が係る形容詞 ははっきりと限定されているので特有の認定は容易である。son hésitation à partir は Il hésite
à partirからの移行と考えられるので動詞構文での特有機能を保っていると考えられる。la vie
bonne à ces apprentis の場合はどうであろうか。名詞核と形容詞がêtre によりつながれている
La vie est bonne à ces apprentis との関係では与格的な特有性が認められる。前置詞がpourな らば特有性は明らかに弱まる(与格性がなくなる)といえる(la vie bonne pour ces apprentis – La vie est bonne pour ces apprentis)。しかし,êtreなしの名詞句の場合,名詞句の一体性(=
内心性)は弱いと感じられるのではなかろうか。これはbonneがprêtほどは前置詞àを要求し ないところから来ている。
1.2.2. 非一次非特有機能
形容詞や名詞に対して多少とも「方向性」を表す連辞(与格連辞も含む)は特有性を認める べきであろう。Luc est bête à manger du foin は Luc est si bête qu’il mange du foinの意味であ る(この中でbêteとsi ... qu’il mange du foinとの間に特有な関係はない:なお,siはbête に 係る副詞でqu’il mange du foinはsiに係る副詞節である)が,このàVinf は形容詞の一つの下 位クラスを限定すると言えようか (cf. Luc a faim à manger de la terre)。
形容詞核や名詞核との関係が弱い非特有機能の場合,文中では動詞述辞の方へ牽引される可 能性が強い(Le travail à Paris est fatigantやJe travaille à la Bibliothèque Nationale à Parisの場合 はどうであろうか)。 une fille aux yeux d’or のように動詞に係る可能性の弱いものではその危 険はない。une maison à vendre の場合àVinf は単なる形容詞句で,ある種の名詞の下位クラス との繋がりはない。N-qu’on-Vtr (Vtr : 他動詞) で形容詞節qu’on-Vtrと先行詞のNの一つの下位 クラスとの間の特有関係はないのと同じである。
以上見てきたように,述辞-拡張,一次機能,非一次機能,特有機能,非特有機能という機 能統辞論の枠組みに沿って連辞àXの統辞機能と働きを体系的にかつ網羅的に分析・分類が出 来る。難しい問題は特に非一次機能における特有と非特有の区別であろう。一次機能において も間接目的と状況項との区別には微妙な問題があるのは伝統的にも話題となってきていること である。境界画定は時に難しいとしても特有機能により統辞構文の主なものが形作られている のは間違いないので,特有-非特有の区別とこの枠組みに沿った分類は不可避であると考えら れる。
動詞構文でも名詞構文でも,特有機能でも非特有機能でも,àの表す統辞機能は「位置づけ」,
「方向的位置づけ」とつながっているように思われる。それは特にde の場合よりもずっと明 瞭ではなかろうか。このような予想を基に以下のTrésor の分類を検討して行く。
2. Trésor. 1971 の分類
以下にはTrésorにおける分類の原則・基準を上の1. に提示した機能統辞論的基準と対比し つつ見て行く。
分類は大きく分けて,I. 動詞連辞中のà,II. 形容詞連辞中のà,III. 名詞連辞中のàになっ ている。これは,先ず,文の中心である「述辞に直接係って行く一次機能の連辞」の中のàと
「述辞に間接的に係って行く非一次機能の連辞」の中のàとに分ける統辞機能区分に対応して いると言える。
I. 動詞連辞中のà
I. の中では,I.A. 単一項導入のà,I.B. 二項構文の間接項導入のà,I.C. 動詞成句 (locution)
のà,I.D. 「場所」補語導入のà,I.E. 「時」の状況補語導入のà,I.F. 「仕方」,「材料」,「手
段」,「兆候」,「原因」... の状況補語導入のà,となっている。ここでも動詞述辞の結合上の下 位クラスに特有の機能,つまり,間接目的項(I.A.~I.C.)と全ての下位クラスと結合しうる(つ まり,全ての動詞述辞と結合可能な)非特有な機能,つまり,状況項(I.D.~I.F.;I.D. につい ては注意)とに大きく分けているのは機能統辞論的分類におおよそ対応しているといえる。間 接目的項だけのものと間接目的項と直接目的項の両方を持つ構文を区別して I.A.,I.B. を設け ている点は重要である。しかし,apprendre à Luc à chanter のように間接項二つのものはどう するか。また,三項以上の構文はないのだろうか(以下を参照)。
I.A. 単一項導入のà
先ず単一項を導入する場合である。ここでの単一項とは主辞の項は除いてであり,当然,動 詞と密接に繋がった目的項,つまり,間接目的項のことである。それが以下ではI.A.1. 能動動 詞,I.A.2. 代名動詞,の二種に分かれている。能動と代名動詞が出てくると受動を考えること になるが,単一間接目的項を取る動詞は受動にならないのが原則(obéir à...のような少数の例 外はある)なので,受動を設けないのはよい。すると受動と対立する可能性のない「能動」を 設ける理由がない。伝統文法においては「自動詞の能動」と言われることがあるが,これは選 択の可能性を無視した形態偏重の観方を反映している。ここではI.A.2. 代名動詞との対比を考 えているのであろうか。詳細な代名動詞の分類(以下参照)は全てI.B. 二項構文の方に入れる のがよい。というのも,「二重目的動詞から出て来る代名動詞」とされているものもある以上,
構文の形式的関係を先ず重視すべきだからである。つまり,先ずは,seも一項とみなすのがい い。すると,ここでは「à-被制辞」の分類のみが残ることになろう。(以下の分類で挙げる用例
はTrésorからの引用そのものだけではない。簡略化したものもある。)
I.A.1. 能動動詞
上で提案したよ うに,I.A.1. 能動動詞の 見出しは除 くとしても ,次の段階で I.A.1.a.
àNanimé/inanimé,I.A.1.b. àNinanimé/Vinf の二種に分けるのは意味特徴とクラスとの混同を示し
ていると言える。生物か無生物かは名詞の意味特徴であり,その前に名詞か不定詞かの区別が あるべきであろう。名詞か不定詞かを区別すると,他の名詞句相当連辞のことも考慮しない理 由はなくなる(我々の分析では名詞句相当連辞の下位クラスは1.1.1. に記したように次の七種 である。N, Vinf, deVinf(主辞項にも直目的項にもなる形), queV, ce queV,DD(直接話法), DI
(間接話法))。à につづく被制辞の分類についてはクラス分類が終わった後に意味分類が来る べきである。
I.A.1.a. àNanimé/inanimé
Luc ressemble à son père.
I.A.1.b. àNinanimé/Vinf
I.A.1.b.1. àNinanimé ~ I.A.1.b.5. être àVinf : «être en train de » の分類 はかなり錯綜している。
先ず,本来最初に来るべき動詞の種類であるêtreが被制辞の不定詞との関係で,この段階で出 てくる(être-àNはどうするのか)のは何故だろうか。êtreを特別視して分類基準に入れるなら ば,他に特殊な動詞はないであろうか。次に,各下位クラスには数十の動詞が挙げられている 場合もあるが,I.A.1.b.1. àNinanimé ~ I.A.1.b.3. àVinf,の相互の包含関係が不明瞭である。本来 は相互に排除関係にあるべきである。I.A.1.b.3. àVinf が不定詞のみとするなら,I.A.1.b.1.
àNinaniméは無生物名詞のみであるべきであるが,そうはなっていない(I.A.1.b.1.のréfléchir à...,
等)。下位クラスの包含関係について言えば,そもそも,当初のI.A.1.a. àNanimé/inaniméとI.A.1.b.
àNinanimé/Vinf との関係がはっきりしない。I.A.1.a. に不定詞は来ないのか(penser à...,等)。
I.A.1.b.に生物は来ないのか(toucher à...,等)。
I.A.1.b.1. àNinanimé
Luc procède à une redistribution des rôles.
I.A.1.b.2. àNinaniméまたはàVinf
Luc aspire au pouvoir.
Luc aspire à faire une carrière de chercheur.
I.A.1.b.3. àVinf
Luc commenceà chanter.
I.A.1.b.4. être àVinf : 「義務」,「目標」
Cette maison est à vendre.
I.A.1.b.5. être àVinf : «être en train de » Marie est à préparer le dîner.
名詞の意味特徴を導入する前に考慮すべきは代名詞lui,y(方向性のy),leによる置換の可 能性についてであろう。それも可能性を柔軟に考えて,luiだけ,yだけ,leだけ,luiまたはy,
luiまたはle,yまたはle,lui またはyまたは le, luiもyもleも不可,を考慮すべきであろ
う(luiもyもleも可はありうるか)。ある可能性の排除を断言するのは困難ではあろうが。
I.A.2. 代名動詞
代名動詞はseを一項とみなして全て以下のI.B. へ入れるというのが我々の提案であるが,
細部の問題点は順にここで検討する。先ず,I.A.2.a. àNanimé/inanimé,I.A.2.b. àNinanimé,I.A.2.c.
àVinfの三下位クラスは意味特徴とクラスの混雑があるし,さらに,相互の包含関係が曖昧であ
る。I.A.2.c. のところには「場合によっては行動名詞」と付記しているくらいである。こうする
ならば,「VinfまたはNaction」とすべきであろう。「生物」,「無生物」,「不定詞」が頻繁にくる
場合を想定し全体のおおよその印象を指示するだけなのかもしれないが,この種の三区分は「生 物または無生物名詞」,「無生物名詞のみ」,「不定詞のみ」を示す危険がある。
à の後の名詞句相当連辞のクラスは,I.A.1.で指示したように名詞と不定詞以外に五種あり,
少なくとも,ce que-V,DD,DIの三種も検討すべきであろう。
上記の三種の下位クラスの次の段階に出てくる「典型的代名動詞」か「二重目的動詞からの もの」かは微妙である。これはいわゆる本質的代名動詞か通常の動詞に分解可能なものかとい うことである。現代フランス語において殆ど代名動詞としての用法しかないもの(例えば,se fier à...)については問題がない。しかし,挙げられている例の大半はそうではない。この後者 については,動詞の意味が代名動詞の用法では大きく変わっていると見なさざるをえないもの,
または,動詞のみの意味の認定が難しいもの,ということになろうが,これは相当曖昧になら ざるをえない。例えば,I.A.2.c.1.3. のse mettre àVinf は確かに起動相的助動詞として働くと言 えようが,これを各構成要素に分解し,動詞 mettre の基本的意味を認定するのはそれほど困 難には思えない。分解可能とされているI.A.2.c.2. のse décide àVinfと比較してどうであろうか。
更に下の下位クラスのI.A.2.c.1.1.「好み・愛着」,I.A.2.c.1.2.「努力」,I.A.2.c.1.3.「行動の開始・
参加」は大よその印象を与えるにすぎない。
また,上のI.A.1.と同様に,代名詞lui(これは全て不可か:*se lui-V),y への置換可能性の 指示はあると有益である。
I.A.2.a. àNanimé/inanimé
I.A.2.a.1. 典型的代名動詞 Luc se fie au hasard.
I.A.2.a.2. 二重目的動詞からの代名動詞
Luc s’intéresse à cela. ( ← Luc intéresse quelqu’un à cela) I.A.2.b. àNinanimé
I.A.2.b.1. 典型的代名動詞 Luc s’arrête aux apparences.
I.A.2.b.2. 二重目的動詞からの代名動詞
Luc s’abonne au journal Le Monde. ( ← Luc abonne quelqu’un au journal) I.A.2.c. àVinf
I.A.2.c.1. 典型的代名動詞 I.A.2.c.1.1. 「好み・愛着」
Luc se plaît à chanter.
I.A.2.c.1.2. 「努力」
Luc s’acharne à la convaincre.
I.A.2.c.1.3. 「行動の開始・参加」
Luc se met à chanter.
I.A.2.c.2. 二重目的動詞からの代名動詞
Luc se décide à partir. ( ← Luc décide quelqu’un à partir)
I.B. 二項構文の間接項導入のà
先ず,I.B.1. àNanimé 「付与」項,I.B.2. 使役構文中のàNanimé「動作主」項,I.B.3. àNinanimé,
I.B.4.「目標」項àVinf,の四種に分けられる。ここでも上のI.A. でと同様に意味特徴(Nanimé)
とクラス(N,Vinf)との混雑が見られる。先ずクラス,次に意味特徴へという段階は尊重すべ きである。クラスはNとVinfだけではないことを喚起しよう。
次に I.B.1.で Naniméなら常に「付与」と言える保証はない。I.B.1.a.~c.では「または(付与
の)反意語」と付け加えてさえいる。反意語となれば,前置詞deへの置換えが考えられるがà はそのままというのが一般的ということであろうか(prêter-N-àN ↔ emprunter-N- à/deN : deは 古い)。
I.B.1.a.は「付与」動詞,I.B.1.b.は「伝達」動詞,I.B.1.c.は「作成」動詞のように意味特徴な し に 個 別 動 詞 で 例 示 さ れ て い る の み で あ る 。 こ の 段 階 で I.B.1.d. V-àNhum-deVinf
(V-Ninanimé-àNhumと平行) が与えられているのは,意味特徴(以下の個別例参考)の分類と構
文構成要素のクラスによる分類(しかも,その中にはNhumのように意味特徴も混在-これは
実際にはquelqu’un「だれか」として与えられている)とが混雑していることになる。これは,
やはり先ず,V-N-àNのみ,V-àN-deVinf のみ,V-N/deVinf-àNの三種のクラス分類から始めべき であろう(これに,名詞句相当はN,Vinf, deVinf 以外にqueV, ce queV, DD, DIがあることを考慮 すると更にクラス数は増加する)。そして,ここでも Nanimé「生物」とかNinanimé「無生物」
という意味特徴の導入の前にàNのlui, yによる置換の可能性を提示するのがよいと思われる。
「生物」とか「人間」とかの特徴が常に容易に認定しうるとは限らないし,多様な文脈による 擬人化的要因を考慮すると,意味特徴による分類は最後の段階で目安程度のものとして提示す るのがよいだろう。
I.B.1. àNanimé 「付与」項
I.B.1.a. 「与える」,「買う」,「約束する」,「送る」の意味の動詞またはその反意語の後
Luc donne un livre à Marie.
I.B.1.b. 「言う」,「教える」,「命令する」の意味の動詞またはその反意語の後
Luc dit cela à Marie.
I.B.1.c. 「作成する」またはその反意語の後
Fais-moi un café.
「作成する」の反意語も「付与」とするのは,「正・負の利益の付与」で説明しうる。なお、
「付与」は「付与対象」とでもすべきであろう。
I.B.1.d. V-àNhum-deVinf (V-Ninanimé-àNhumと平行):I.B.1.a.~b.の多くの動詞 Luc demande à Léa de chanter. (Luc demande cela à Léa.)
上でV-àNhum-deVinf とV-Ninanimé-àNhumが平行しているというのは,直接目的Nの範列に deVinfが含まれるということである。この場合deVinfは,主辞機能を担いうる形であることも あり,名詞句相当のものとみなしうる。
I.B.1.a.~d. の分類では I.B. で指摘の点以外にàVinfの可能性も加える必要がある。つまり,
demander-àN-àVinfのような場合がある。分類の下位クラスの数は更に増える。しかし,その前
に指摘すべきはTrésorの分類が,二項構文は一つの項が直接目的ということを前提としている 点である。今問題としているのは二項構文でも二項とも間接目的の場合である。また,前置詞 àの後に来るのはNとVinfだけではないことも考慮すべきで,二項構文の下位分類は,先ず第 一 段 階 で は ク ラ ス の み に 注 目 し て 全 て や り 直 す べ き で あ ろ う 。 例 え ば , 先 ず , V-(N/Vinf/deVinf/queV/ce queV/DD/DI)-à(N/Vinf/ce queV/DD/DI), V-à(N/Vinf/ce queV/DD/DI)-à(N/Vinf
/ce queV/DD/DI) の組み合わせを分類すべきであろう。結局このような分類を徹底すると M.
GROSS. 1975 のLADL研究所での分類のようなものにならざるをえない。
I.B.2. 使役構文中のàNanimé「動作主」項
I.B.2. の使役構文も二項構文として扱われている。例えば,Luc fait chanter la Marseillaise à
Marie の中心核の述辞は faire であるが,この構文は二項というよりも三項とすべきではなか
ろうか(代名詞に置き換えるとIl la lui fait chanterとなりIl, la, luiは述部fait chanter の周りに 組織されていると言えるが,chanterとfaireとの関係-これが正に使役-を分析しない訳には 行かない)。一般的に動詞連辞中の前置詞àは一項構文または二項構文中にのみあるという想定 のようである。しかし,使役構文を始めとして,頻度は低くても,三項以上を考えた方が筋が 通る例がある。
I.B.2.において,laisser だけ代名動詞の例を挙げ,しかも,àNinanimé,àNaniméにより区分し ているがその説明はない。I.B.2.b.1. àNinaniméは「原因」,I.B.2.b.2. àNaniméは「動作主」のニ ュアンスが強く出て来る。
I.B.2.a. faireの後
Luc fait chanter la Marseillaise à Léa.
I.B.2.b. laisser の後 I.B.2.b.1. àNinanimé
Luc se laisse fléchir aux larmes de Léa.
I.B.2.b.2. àNanimé
Luc se laisse séduire à des filles de joie.
I.B.2.c. 知覚動詞の後 Luc entend dire à Léa que...
I.B.3. àNinanimé
I.B.3. àNinaniméの下位分類は動詞の意味特徴と個別例によるのみである。I.B.3.c. のobjecter, rétorquer, répliquerは「伝達動詞(dire,等)」に近いが,borner, limiterとどのような共通点が あろうか。I.B.3. は lui, y との置換可能性により分けると,まとまった区分が出来るのではな かろうか。
I.B.3.a. 「付与」動詞のあと
Ils donne à leur toilette les derniers soins.
I.B.3.b. 「置く」,「設置する」,「結合する」,「比較する」の意味の動詞の後
Luc lie son sort à celui de sa patrie.
I.B.3.c. borner, objecter, rétorquer, limiter, répliquerの後 Luc limite sa curiosité à des tentatives prudentes.
I.B.4. 「目標」項àVinf
先ず,V-N-àVinfの間接項を「目標(destination)」と規定している。次の段階のI.B.4.a.(Luc encourage Léa à chanterでLéaはencourageの直接目的でありchanterの意味上の主辞),I.B.4.b.
(Luc a une revanche à prendreでune revancheはaの直接目的でありprendreの意味上の目的), I.B.4.c.(Luc met une heure à finir ce travailでune heureはmet の直接目的であるが,finirの意 味上の主辞でも目的でもない)の区分は統辞関係的である。例えば,Luc encourage Léa à chanter
でLéa とà chanter はencourageの後で両立している。両者の間に直接的な統辞上の従属関係
はなく,Léa がchanterの主辞であるというのは意味の上でのことである。しかし,この文は
Luc encourage...とLéa chanteとが合わさって出来た文であると考えられる。つまり,Léaは
chanterの意味上の主辞ではあるが,この関係は統辞上の根拠を持っていると言える。
I.B.4.d. avoir àVinf,等の熟語,は二項構文との関連はないではないが,明らかに一項構文なの
で,上のI.A. に入れるべきである。
以下のNanimé,Ninanimé,等の意味特徴は一応の目安程度と考えるべきである。
I.B.4.a. 直接目的はNaniméでVinf(時にNaction)の主辞
I.B.4.a.1. 「行動への呼びかけ」動詞の後
Luc encourage Léa à chanter.
I.B.4.a.2. 「制約」動詞の後 Luc contraint Léa à chanter.
I.B.4.a.3. 「行動への準備」動詞の後
Luc aide Léa à chanter.
I.B.4.a.4. laisserの後(àなしのVinfがつづくが「理解」動詞ではàつきも可)
Je vous laisse à imaginer l’étrange nouvelle. (Cf. Luc laisse Léa travailler.)
上のI.B.4.a.4. は興味深い構文であるが,この下位クラスに入れるのは問題がある。つまり,
I.B. は「直接目的-間接目的」の二項構文であり,この間接の方にàがついているのである。Je
vous laisse à imaginer l’étrange nouvelleでvous は間接目的でà imaginer...も間接目的である(し かし,「I.B.4.a. 直接目的:NaniméでVinfの主辞」とあり,「I.B.4.a.4. laisserの後(àなしの Vinfがつづくが「理解」動詞ではàありも可)」とあることから,上記分類はvousを直接目的
と誤解しているのか,あるいは,このvousを直接目的とするフランス語母語話者もいるのか;
vous が直接でも間接でもこの構文を使わない(認めない)母語話者はいる)。二項構文の多少 とも厳密な分類としては,「I.B. 二項,I.B.1. V-X-àY,I.B.2. V-àX-àY,...」のようにすべきであ る。なお,この文とJe vous laisse l’étrange nouvelle à imaginer との関連も考えられるが,この 後者の文はむしろN-V-N-àNでありI.B.1.a. に入れるべきである(??Je vous la laisse à imaginer が可能ならばN-V-N-àN-àVinfの三項構文と解釈することが可能になる)。
I.B.4.a.1.~3. は意味の大よその区分であり,関係上は一つにまとめてもいいものである。こ
れら(40ほどの動詞が挙げられている)のàVinfが全てyによる置換を許すかどうか(àVinfは luiによる置換は不可)は確認すべきである。
I.B.4.b. 直接目的は主動詞かつVinfの目的
N-àVinfでàVinfはNの形容詞句とも解釈しうるが,I.B.4.b. では両者は各々主動詞の右に両 立する直接目的,間接目的とみなされている。これは上のI.B.4.a.4.の問題と類似している。以 下のI.B.4.b.1.~4.の全てで,ニュアンスは変わるが,NとàVinfの順が入れ替わりうる(Luc a une revanche à prendre → Luc a à prendre une revanche)。
I.B.4.b.1. avoir-N-àfaireの型 Luc a une revanche à prendre.
I.B.4.b.2. trouver-N-àfaireの型 Luc trouve la phrase à dire.
I.B.4.b.3. laisser-N-àfaireの型 Luc laisse cette propriété à louer.
(Luc laisse à louer cette propriété.)
(Luc te laisse à développer la leçon. 三項構文) I.B.4.b.4. donner-N-àfaireの型
Luc la donne à traduire.
(Luc te la donne à traduire. 三項構文)
I.B.4.c. 直接目的はNinaniméでVinfの主辞でも目的でもない Luc met une heure à finir ce travail.
I.B.4.d. 成句avoir à..., trouver à..., donner à..., laisser à... の後
先ず,分類上指摘しなければならないことは,これらの成句は,二項構文との関連はないで はないが,やはり形式的には一項であり,その àVinfが主動詞と共に成句化したものとすべき
であろう。(それに,以下のI.C.で「成句」を独立のクラスとして分けているがこれとの関連も 問題である。)
I.B.4.d.1. avoir àVinf :「義務」
Luc n’a plus qu’à revenir.
上例のLuc n’a plus qu’à revenir は二項目的構文とは関連しえない。つまり,この例をI.B. 二
項構文の下位クラスに入れるのはどのような意味でも間違いである。Luc a à chanter une
chansonのように不定詞が直接目的を持つ他動詞の時のみLuc a une chanson à chanter(二項と
みなして)と関連付けうる。
I.B.4.d.2. trouver àVinf(Vinfの項はtrouverの項ではない)
Luc trouve à les marier.
上の例はLuc trouve quelque chose qui les fait marier, Luc peut les marierのような意味なので
(つまり,Luc le trouve à les marier -これが可能として),les はtrouver とは関連しえない。
しかし,他のI.B.4.d.1., I.B.4.d.3., I.B.4.d.4. においても不定詞が項をもたない限りは,この種の 区別も意味がないことに注意。
I.B.4.d.3. donner àVinf Ces écrits donnent à rire.
(On lui donne à manger. 二項:間接目的が二つ)
上のOn lui donne à manger はOn lui donne quelque chose à mangerのような意味で,この後 者は,直訳すると,「彼に何か食べ物を与える(二項)」であり「彼に何かを食べるように与え る(三項)」とするのは困難であろう。つまり,On lui donne à mangerにおいて à manger は形は間接であるが,意味的には殆ど直接目的として働いていると言わざるをえない。
I.B.4.d.4. laisser àVinf La solution laisse à désirer.
上の議論はすべてlaisser àVinf の構文にも関係している。La solution laisse à désirerはLa
solution laisse quelque chose à désirerの意味である。
これまで複数箇所に分類されてきたlaisser àVinf をまとめてみよう。
I.B.2.b. Luc se laisse séduire à des filles de joie. (三項) I.B.4.a.4. Je vous laisse à imaginer l’étrange nouvelle. (三項) I.B.4.b.3. Luc laisse cette propriété à louer. (二項)
→ Luc te laisse cette propriété à louer. (三項) I.B.4.d.4. La solution laisse à désirer. (一項)
→ La solution te laisse quelque chose à désirer. (三項)
先ず,上記の四つの下位クラスは項数の違いがある(項数を最多に解釈して)。しかし,上に 見るように全て三項に統一可能である。最初 (V-Vinf-N-àN) と他三つ (V-N-àN-àVinf) との違い は大きい。2直接項-1間接項と1直接項-2間接項との違いである。laisserの基本的な意味は同 じと見なしうるがこの構文上の違いは大きい。前者は使役構文的なもので直接項として不定詞 が介入してくるところが重要である。後者の三つは一つにまとめられる。(しかし,上のI.B.4.a.4.
の解釈のところでも触れたが,Trésorの分類はI.B.4.a.4. のvousを直接目的としているようで ある。vousが直接目的なら,これは「直接目的-方向性位格(àVinf)」と解釈しうる平凡な構文 である。)後者の三つにおいて興味深い点は直接目的のNが与格のàNと方向性位格のàVinfと の両方へと「向かって行く」と解釈しうる点である。与格と方向性位格は形式的な関係は殆ど 同じと言ってよい。しかし,統辞機能上はかなり異なっていて主動詞に対して両立している(並 列や等位ではないことに注意)。これは正に「何々を誰々に~するように残す(残させる)」で ある。
I.C. 動詞成句との関連でのà
先ず,成句化ともいうべき現象は文構成のあらゆる段階に多少とも生じうるということに注 意すべきである。そもそもこの分類で重視している「一次特有機能(述辞と直接に密接に結び ついている統辞機能)」や「動詞構文」,等の概念は「成句化」と無関係ではない。例えば,penser
à...,等 は一つの成句とも考えられる(MARTINET. 1979)。
成句化という場合,一般的に多少とも固まっている(figé)表現を指す場合が多いといって いいだろう。「固まっている」といっても構成要素のある程度の分離や要素各々を限定する自由 がある場合が多いので成句の取り扱いは単純ではない。
I.C.1. 動詞成句の一部を構成するà
上記の成句の概念を踏まえるならば,ここであえて一つの大きな下位クラス(一項動詞構文 クラスと二項動詞構文クラスと同レベルのもの)として「成句」を設ける意味があるであろう か。そもそも一項動詞や二項動詞の構文には成句化したものはなかったのであろうか。これら の疑問に対する答えは以下でも明らかになるが,やはり,頻度も高く重要で目立つ構文の多く が成句と見なされているだけにすぎないように思われる。
先ず,I.C.1. à を含む動詞成句の一部の à(mettre à bail-N,等)とI.C.2. 動詞成句の項を導
入するà(avoir accès à-N,等)とに分かれる。これらの実例に即して言うとI.C.1. は主動詞と
個別の間接項が一体化したもの,I.C.2. は主動詞と個別の直接項が一体化したものということ になる。
I.C.1.a. àNnon actualisé
Luc est à poil.
上例に限って言うとestは通常のêtreにすぎない。à poilで名詞に冠詞による限定がなく全 体で形容詞的(nuに近い)になっていて成句的であるというにすぎない。また,次で分かるよ うに冠詞の有無が決め手という訳でもないのである。
I.C.1.b. àNactualisé
I.C.1.b.1. êtreの後 C’est à la mode.
I.C.1.b.2. mettreと置き換わる êtreの後 Luc est à l’abri. → On met Luc à l’abri.
I.C.1.b.3. mettre, prendre, tirer,等の後 Luc met son texte au clair.
上の分類で下位クラスの見出しにêtre,mettre,等を選んでいるが,これは全く恣意的で,
目立った(誰にとって?)動詞を選んだにすぎない。I.C.1.b.2. などはむしろmettreとêtreの構 文間の関係として分析すべきで成句に限ったことではないだろう(そもそもà l’abriはどの程度 まで成句と言えるだろうか:勿論êtreを成句の一部とする理由はない)。「mettreと置き換わる」
という意味もはっきりしない。
I.C.1. には70を越す動詞が挙げられているが,せめて一定コーパス中での頻度数の指示があ
ると興味深いであろう。
やはり,これらは全て,成句構成項とされているものを通常の項と見なし,I.A.と I.B. の中 に繰り込み,その中で成句化の傾向のあるものとして挙げた方が成句化していないものとの関 係がより明瞭になって分類上も利点があることになろう。そうすれば,成句と非成句の曖昧さ もより明瞭になろう。
I.C.2. 動詞成句の間接項を導入するà
I.C.2.a. àN
I.C.2.a.1. V-Nnon actualisé-àN Luc fait appel à Léa.
I.C.2.a.2. V-Nactualisé-àN Luc fait ses amitiés à Léa.
I.C.2.b. àVinf
I.C.2.b.1. V-Nnon actualisé-àVinf Luc a peine à croire cela.
I.C.2.b.2. V-Nactualisé-àVinf Luc a de la facilité à apprendre.
上の分類の要点の一つは言働化(actualisation)の有無であろうが,限定詞(冠詞,等)が付 いていないものも付け加えられないとは限らないし,限定されているものも限定詞の種類が一 つとは限らない。そういう意味で「成句化」の意味はかなり曖昧である。例えば,I.C.2.b.2. の
Luc a de la facilité à apprendre には部分冠詞がついている。この部分冠詞は他の限定詞
(beaucoup de facilité,等)に置き換えられようし,形容詞の追加(une grande facilité)も不可 能 で は な い 。「 成 句 」 の 概 念 が よ り 厳 密 化 さ れ る 必 要 が あ る (cf. MARTINET. 1979 の « synthème (連辞素) »)。
既に述べたが,成句化したものをどこに分類すべきかという問題とは別に,àN,àVinf のlui, y による置換の可能性の指示があれば有益であろう。
I.D. 「場所(点的)」項導入のà
述辞に係る要素として,一項,二項構文,成句的なものが終り,ここからは「状況補語」と 伝統的によばれるものの筈である。つまり,述部の下位クラスと密接に繋がっていなくて,ど のような述部(大半は動詞)にも繋がりやすい要素,つまり非特有機能の拡張である。ところ
が,I.D.,I.E.,I.F. の間には興味深い区別がなされていることに注目すべきである。I.D.は「場 所」項(補語 complément),I.E.は「時」状況項(状況補語 complément circonstanciel),I.F.
は「仕方,等」状況項となっている。つまり,I.D. は「状況補語」的なもの(I.D.2.)だけでは なくて述辞動詞と密接に結びついた間接目的のようなもの(I.D.1.)も含んでいるのである。
この分類はいわゆる「場所,時,様態の状況補語」とする伝統文法と違っているという意味 で興味深いが,動詞構文分類の基準が確立していないのではないかと思わせる恐れがある。我々 の観方は1. の基本分析で示したように,間接項については原則として「方向性」を持ったもの は特有機能(つまり,間接目的)とみなす(多少の例外的なものもあり,以下を参照)。方向性 のないものは非特有機能とする。「場所,時,様態」という個別の意味は基準にはなりにくい。
Trésorの分類では「時間」がらみのものは全て状況項となってしまうが,例えば,remettre la
sortie au lendemainでau lendemainは時の状況項となってしまう。しかし,remettreの多くの
実例で au lendemain の範列(paradigme)を調べるまでもなく,これは明らかに不可欠で
remettre を始めとする幾つかの動詞からなる下位クラスに特有のものである(「不可欠性」は
重要な助けになるが,これも絶対的基準とはなりにくい)。
一般的に,事行(procès)の出現には通常,場所と時,そして,その有り様が考えられる(こ れは伝統文法の概念の言い換え)。中でも場所の状況は視覚とも直結しその重要性は単純で明白 に思える。その中でも特に方向性を持った場所は意味合いが限定されてきて特殊になる(この ようなものと結びつく動詞も限られて来る)。それを通して方向性を示す動詞の事行・意味と密 接に繋がってくる。それで,正に具体的場所移動を起源と考えることは出来るが,より比喩的 な場所移動も同じ構文によって表現されるようになると考えられる。つまり,具体的移動から 出発して様々な分野に関連をもち,範列が必然的に広がっていく。それが正に目的項(直接,
間接)に接近していく所以である。場所移動は分かりやすいが,これは時,様態についても全 く同様である。時,様態は,むしろ,場所表現の比喩化したものとも言えそうである。場所,
時,様態を比較すると圧倒的に場所の知覚が具体的に突出している。
I.D.1. 動詞の意味に不可欠な「場所」項
I.D.1.a. 「移動(現実・比喩)」動詞の後
I.D.1.a.1. àまたは等価の前置詞と共に(しかし,deは排除)
Luc va à Paris.
上でallerはdeを排除している訳ではない。Luc va de Paris à Marseilleは問題ない。allerは deNよりもàNとの結びつきの方がより強いだけである。(venirは逆である。)
I.D.1.a.2. 時にà(または等価の前置詞)時にdeと共に:「接近」と「隔たり」の意味 Luc arrive à/de Paris.
arriverもàNとの結びつきの方が圧倒的に強い。
I.D.1.b. 「位置付け」動詞の後:deは排除,「方向付け」はない
Luc reste à Paris.
上例では確かに方向性や移動はないと言える。このような例が「方向性=特有」の例外にな るように見えるが,「ゼロ方向性」,「ゼロ移動」を認め,「方向性」,「移動」の究極の例とし,à
Parisを特有機能・間接目的項としうるのではなかろうか。これはLuc travaille à Parisとは全く
異質である。つまり,rester のような動詞は場所との関係で一つの下位クラスを構成するが,
travaillerのようなものは場所との関連で一つのまとまりをなすことは出来ないのである。これ
はLuc reste à Parisでà Parisの範列を調べると明らかになる。Luc est à Paris も同じであるが,
この場合結びつきは更に強く,à Parisは不可欠である。(なお,「de は排除」と断定している が,Luc reste de ce côté-ciは可であろう。)
I.D.1.c. 「移動」または「付随」の意味の二項動詞の後
On conduit Luc à la gare.
I.D.1.a.~b. はI.A. に,I.D.1.c. はI.B. に分類すべきである。上の例でà la gareを状況項と するなら,同じ範列に含まれるà chanter,等はどうするのだろう。場所の状況項とは出来ない であろう。
I.D.2. 文字通りの状況項
以下でも,方向性がなくて述辞と密接に繋がっていない場合に限って状況項と認めうる。
I.D.2.1. à/enの競合 Il travaille (à l’/en) usine.
I.D.2.2. à/dansの競合
Luc passe ses jours (aux/dans les) églises.
I.D.2.3. à/sousの競合
Luc passe l’hiver (à/sous) notre beau soleil.
I.D.2.4. à/surの競合
Les siècles s’agenouillent (à/sur) sa tombe.
上のI.D.2.4. では方向性が認められるのではなかろうか。se mettre (à/sur) sa tombeに近い。
I.D.2.5. à/versの競合
La façade est dirigée (à/vers) l’orient.
この例も特有機能(間接目的)とすべきである。下の I.D.2.8.についても同様。これは名詞
(orient,homme)が「人間」かどうかとは無関係である。
I.D.2.6. à/chezNhumの競合
Luc étudie (aux/chez les) Jésuites.
I.D.2.7. à/auprès deNhumの競合
Luc s’informe (à/auprès de) son prédécesseur.
I.D.2.8. à/versNhumの競合 Luc court (à/vers) cet homme.
I.D.2.9. àNpays masculin et à initiale cosonantique
Luc travailleau Japon.
I.D.2.9.~I.D.2.16. で状況項と認められるのは無方向で述辞との繋がりの弱いもののみであ
る。一般的に場所の意味合いの前置詞句のみを挙げて「状況項」とするのは根拠がない。
以下の例では動詞がallerやmener, 等になれば全て間接目的項となる。
I.D.2.10. àNrégion masculin et à initiale cosonantique
Luc travaille au Texas.
I.D.2.11. àNpays et île au pluriel
Luc travaille aux Etas-Unis.
I.D.2.12. à-la-Ngrande île
Luc travaille à la Martinique.
I.D.2.13. à-ø-Nîle
Luc travaille à Cuba.
I.D.2.14. à-ø-Nville
Luc travaille à Paris.
I.D.2.15. 「場所」の副詞成句中のà
Luc est à table.
このI.D.2.15. の例は当然特有機能である。
I.D.2.16. 「空間」前置詞成句を導入するà
Luc travaille au centre de Paris.
I.E. 「時」状況項導入のà
上のI.D. でと同様に,一般的にàNtempsのみを挙げて状況項とするのは意味がない。上のI.D.
のところのremettre la sortie au lendemainの議論を参考のこと。
I.E.1. 事行を「時間」の中に位置付ける項 I.E.1.a. àNtemps
Luc part à midi.
I.E.1.b. àNaction-signal-repère :「時間」,「原因」
Le soleil m’aveugle à mon entrée.
I.E.1.c. àVinf:「時間」,「原因」
Luc s’ennuie à ne rien faire.
I.E.2. àNretour-intervalle :「繰り返し」,「配分」
Le coq chante à deux reprises.
I.E.3. 「継続」(その「期限」に向かう)
A la fin, ils se mettent d’accord.
上のI.E.3. の例では,ある期間の継続があってその「終りになって(à la fin)」ということを
分類で表示したいのであろうが,この文の述辞(mettre)は「終り」への方向ではなくて「一 致している(d’accord)」という「状態」への方向を表している。「終り」を「継続」や「期限」
との関係で考察することは可能(例えば,se mettre à la fin)だが,この文はそれとは無関係で
ある。A la finは単なる「点的時間状況(「終わりで」)」を表しているにすぎない。この分類は 動詞の特有機能項である間接目的項(I.A.,I.B.)と状況項との区別を意味解釈により混同した 典型例であると言える。
I.F. 「仕方」,「材料」,「手段」,「兆候」,「原因」... の状況項導入のà
「場所」,「時」を除くと,一般的に「様態」,「仕方」,「手段」,等とまとめられる状況補語 の意味は,事態を観察する観点により同一表現が表しうる様々な可能性を反映している。(これ はやはり典型的な状況表現であるジェロンディフが基本的に「同時性」を表す「時」の表現で ありながら「手段」,「原因」,等を表すこととも通じている。また,enVant という形が抽象空 間を表しうるものであることも喚起しておこう。)
I.F.1. àNnon actualisé(大半は「仕方」)
I.F.1.a. 動詞と共に凝結的表現になる(àN項は動詞成句におけるほど必須ではない:100を越
す例が提示)
Luc mène à bien l’affaire.
上例ではmener-à...-Nの部分に凝結性は認められない。àのあとのNに限定がないために(bien が副詞でもありうるという点も関係しているか)凝結性が感じられるということである。明白 な方向性はà bienを(凝結的)間接目的とするに十分である(cf. à dans trois jours)。
I.F.1.b. 文の副詞成句(動詞から独立)
Luc reviendra à coup sûr.
動詞から独立した副詞(いわゆる文副詞)― これは当然非特有機能 ―と動詞に係る非特有機 能としての副詞との区別も明瞭ではない。
I.F.1.c. 前置詞成句を構成しがちなàN-de...
Luc fait des histoires à propos de tout.
I.F.2. àNactualisé
無冠詞は名詞に限定を与えないので意味は一般的になる。これに対して定冠詞単数は限定を 与えるが,個別名詞の限定でない場合はやはり一般的にならざるをえない。そこで,関係指示
の前置詞が同一の à である場合,両者の区別は傾向的にもはっきりしない(I.D.2.1. の à-le-N とen-Ø-Nの場合も参照)。
I.F.2.a. 「仕方」(凝結傾向)
Luc avance à l’aveuglette.
I.F.2.b. 「手段」,「仕方」,「素材」
Luc va au galop.
上でI.F.2.a. とI.F.2.b. を「凝結傾向」で区別する根拠はない。
I.F.2.c. 「兆候」,「原因」
I.F.2.c.1. 基盤動詞:「知覚」,「理解」(àN項:「兆候」) Luc reconnaît Léa au pas.
I.F.2.c.2. 「原因」(文語)
L’herbe tombe au tranchant des faucilles.
I.F.2.d. 副詞成句
Luc consulte au besoin le dictionnaire.
I.F.2.e. 前置詞成句
Luc fait la cuisine à l’aide d’un livre de recettes.
I.F.3. àAdj
Le train est parti à vide.
I.F.1.a. à bienのbienを名詞,I.F.3.à videのvideを形容詞として区別する共時的根拠もない。
両方とも前置詞àの後では記号内容の中の他要素を限定する品詞特性(それぞれ「動詞を限定 する」,「名詞を限定する」特性)を失っていることになる。
I.F.4. àVinf
I.F.4.a. 「原因」
I.F.4.a.1. 主動詞:能動
Luc ne risque rien à le consulter.
I.F.4.a.2. 主動詞:代名動詞または受動
L’esprit s’aère à voyager.
I.F.4.b. 「結果」,「目標」
Luc a faim à manger de la terre.
I.F.4. のàVinf はジェロンディフenVant に近い。I.F.4.a.1.とI.F.4.a.2.の能動,等の区別の意味 はない。
II. 形容詞連辞中のà(形容詞の項)
以下のàNの大半は形容詞の下位クラスに特有の機能を持つ(II.B.2.のàVinfは非特有か)。上
のI.D. ~ F. の非特有項は形容詞にも原則として係りうる。形容詞は原則として名詞に直接に
係るかêtre,等と共に文の中核(述部)を構成する。
II.A. Adj-àN
II.A.1. Adj.lieu/temps :「比較」,「近接」,「連続」と関係 Ceci est pareil à cela.
上のII.A.1.では「lieu/temps (場所/時間)」に限定する理由はない。
II.A.2. Adj:「可能性」,「習慣」,「容易さ」
Ce roman est accessible à Luc.
II.A.3. Adj:「主観的評価」,「共感」,「敵意」
II.A.3.a. Adj-àNinanimé
Luc est précieux au pays.
II.A.3.b. Adj-àNanimé
Luc est impitoyable à ses rivaux.
II.A.3.a. Ninanimé とII.A.3.b. Nanimé の区別の意味はない。
II.B. Adj-àVinf/Naction
II.B.1. Adj:「配置」,「能力」,「不可能性」;àは「目標」を表し形容詞が係っていくNはVinf
の主辞
C’est une intelligence apte à tout comprendre.
II.B.2. Adjの「結果」としてVinfの事行がある;àが「結果」(si... que..., tellement... que...)
を表しNはVinfの主辞 Luc est bête à manger du foin.
上のII.B.2.のàVinf はI.F.4.b.「結果」,「目標」Luc a faim à manger de la terre のàVinf と比 較のこと。同じ非特有機能である。
II.B.3. à:「想定」,「偶発性」;形容詞が係っていくNはVinfの直接目的
II.B.3.a. Vinfの表す「偶発性」の中でAdjの主観的特性が名詞に与えられる
C’est une toux fausse à entendre.
この例は興味深いが分析的書き換えは難しい(cf. A l’entendre, cette toux semble fausse)。
II.B.3.b. Adjの特性がà によりVinfに帰される;Nは統辞的支持体
Ce sont des idées difficiles à exprimer.
上のII.B. では,意味解釈的下位区分に先立って先ずAdjが係っていく名詞がVinfの主辞か,
目的か,どちらでもないか,により分類するのがいいだろう。II.B.3.b. はExprimer ces idées est difficile ( ↔ Il est difficile d’exprimer ces idées) との関連を言うべきであろう。
III. 名詞連辞中のà
以下の III.A., III.B., III.C. では名詞連辞の核になっている基盤名詞が動詞や形容詞に対応し àN,àVinfも元の構文の特有機能に対応しているものが多く,それらは特有機能とみなすべき である。
III.A. 基盤名詞:「行動」名詞
III.A.1. 「行動」名詞:à導入の単一項を持つ動詞に対応
名詞が動詞と形態的に対応する,つまり,動詞が名詞化し動詞構文が名詞構文に移ったもの とみなしうる。基本的に動詞の特有項はそのまま移行し非特有項の移行もありうる。
III.A.1.a. 能動態動詞に対応 III.A.1.a.1. àN
Son aspiration à un monde meilleur est forte. ( ← Il aspire fortement à un monde meilleur.) III.A.1.a.2. àVinf
On voit son hésitation à répondre. ( ← On voit qu’il hésite à répondre.) III.A.1.b. 代名動詞に対応
III.A.1.b.1. àN
Sa résignation à l’injustice est forte. ( ← Il se résigne fortement à l’injustice.) III.A.1.b.2. àVinf
On voit son obstination à refuser. ( ← On voit qu’il s’obstine à refuser.)
III.A.2.「行動」名詞:二項動詞に対応 III.A.2.a. àNanimé :「付与」項
l’annonce de la novuelle aux invités ( ← On annonce la nouvelle aux invités.) III.A.2.b. àNinanimé
l’annexion de la Savoie à la France ( ← On annexe la Savoie à la France.)
III.A.3. 「行動」名詞に状況項àNがづづく
I. の動詞構文と同様に「場所」,「時」,「手段」の意味であっても状況項とは限らない。方向 性を持ち名詞と密接につながっているàNは特有機能と認める。
III.A.3.a. àN:「場所」または「目標」
son arrivée à l’hôtel ( ← Il arrive à l’hôtel.)
sa mort à Tombouctou ( ← Il meurt à Tombouctou.)
上の二つのàNの違いは明らかであるのに,I.D.1. とI.D.2. でなされた区別はここではなさ れていない。
III.A.3.b. àN:「時」
son départ à la nuit ( ← Il part la nuit.)
状況項の副詞la nuitは動詞partに直接係るが,動詞が名詞化すると前置詞 àが必要になる。
à la nuitのla nuitは名詞句とみなすべきである。
III.A.3.c. àN:「仕方」,「手段」
III.A.3.c.1. àNnon actualisé
le bavardage à cœur ouvert ( ← On bavarde à cœur ouvert.) III.A.3.c.2. àNactualisé
l’observation à l’ œil nu ( ← On observe à l’ œil nu.)
III.B. 基盤名詞:àのつづく動詞成句に含まれる名詞
以下の分類では元が二項のもののみが提示されているが,当然,一項のもの(l’obéissance à Luc ← On obéit à Luc,等)も分類すべきである。
III.B.1. N-àN
III.B.1.a. N-àN:Vtr-Nの動詞句に対応(Vtr : 他動詞)
l’aide aux pays sous-développés ( ← On apporte l’aide aux pays sous-développés ← On aide les pays sous-développés.)
上例では,基盤名詞aideはàのつづく動詞成句(apporter l’aide à...)の一部を構成している とされる。このaideは元々 aider-Nと関係している。しかし,apporter l’aide à... を成句とする 十分な根拠はない(通常の動詞連辞(syntagme),動詞構文,動詞成句は連続したものである ことを喚起しよう)。apporterのような動詞は動詞構文を名詞化するに当たって使われるもので 個別的具体的意味は比較的弱くGROSS. 1981 などでは支持動詞(verbe support)と呼ばれる。
III.B.1.b. N-àN:動詞句に対応せず
un clin d’œil à Luc ( ← On lance/fait un clin d’ œil à Luc.)
上例ではclin d’œilに形態的に対応する適切な動詞の構文がないが,lancer,等の二項動詞が 想定されていると考えられる(cf. cligner de l’ œil)。
III.B.2. N-àVinf/Naction
III.B.2.a. N-àVinf : mettre/éprouver/sentir-(indéfini/partitif/possessif)-N-àVinf (/avoir-le-N-deVinf) に対応