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大学図書館の役割と今後について

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Academic year: 2021

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大学図書館の役割と今後について

著者 真銅 正宏

雑誌名 同志社大学図書館学年報

号 34

ページ 1‑4

発行年 2008‑07‑31

権利 同志社大学図書館司書課程

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011795

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大学図書館の役割と今後について

真 銅 正 宏

 同志社大学には、今出川校地に、学生の学習用図書館としては、いわば中 央図書館的な意味合いをもつ、いわゆる今出川図書館があり、京田辺校地に は、正門から見て、ゆったりとした広場の向こうにこのキャンパスのシンボ ル的な風貌を誇る、ラーネッド記念図書館がそびえています。しかしながら、

正式な事務組織としての「図書館」なるものは実は存在しません。当然なが ら、図書館長という職名もありません。私は、実質上は、図書館長なる職に あるのですが、肩書は総合情報センター所長というもので、名刺を交換する 場などでは、いちいちこの組織について口頭で説明しております。

 もちろんかつての図書館が総合情報センターという組織に改編された経緯 については、さまざまな背景があります。この歴史の変転には、同志社大学 に限らず、全国の大学図書館の役割が、ここ十数年の間に、めまぐるしく変 化した事実は確かに認められます。要するに、組織の改編は、この変化を、

同志社大学なりに受け止めてきたことの証しなのです。

 そして、現在もなお、同志社大学をはじめ、大学図書館の役割は変化しつ つあります。

 まず、大学自体が、教育環境および教育方法の変化を強く模索している大 状況があります。大学図書館は、あくまで大学の図書館として、大学におけ る教育と一体化したものです。このような知のインフラとしての図書館です が、書物を超えた学術情報の進展が、図書館の役割を変化させているわけで す。図書館の「図書」なる語は、もはや書物を指す者と理解するだけでは不 十分なのです。

 例えば、同志社大学の図書館の利用統計に関わる、以下のようなさまざま

〈巻頭言〉

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なデータは、図書館利用をめぐる興味深い事実を、我々に知らせてくれます。

まず同志社大学図書館の2007年度の入館者数は、両校地図書館合計で累計で すが135万人(今出川図書館60万人、 ラーネッド記念図書館75万人) という 規模でした。これは、前年度と比すると、約5万人の減少です。特に今出川 図書館では2005年度ごろより、入館者数減が続いています。しかしこの数字 は、学生の図書館離れを示すものではありません。むしろ事実は逆で、図書 館システムの導入やインターネット環境の整備により、わざわざ図書館に来 館せずとも、例えば貸出更新や複写依頼、借用依頼などが可能になったこと から、図書館自体を、来館という形ではなく、別の形で利用する学生が増え ていることが、別の資料から明らかになっています。

 また、特に洋雑誌については、電子ジャーナル導入の拡充が進み、自宅な どのパソコンの画面で、雑誌本文が読めるようになったことから、雑誌本体 を手にする必要はかなり減少しました。もちろんこの傾向はますます進むも のと考えられます。しかし、この電子ジャーナルの導入に際しての手続きな どは、図書館の業務として、新たに加わりました。

 司書や職員の立場から見れば、図書館内の資料を動かす仕事から、このよ うな電子媒体の資料に関わる仕事が格段に増えています。

 次に、年間貸出冊数の変化をみましょう。これは、両校地図書館合計で、

約39万冊で、今出川図書館が約21万冊、京田辺ラーネッド記念図書館が約18 万冊という内訳です。前年度と比較してみると、これについては、約2万冊 増えています。この数字は、貸し出し更新も含むものですが、例えばこの更 新手続きが、WEB からできるようになり、貸出数増分の4分の3が来館せ ずに行われています。

 さらに、ここ数年、今出川図書館のレファレンス・カウンターによる、所 蔵調査件数が大きく減少しています。この理由については、他大学の蔵書が インターネット経由で容易に検索可能になったことや、図書館主催の利用講 習会などの浸透により、利用者が自ら調べる力をつけてきた結果と、図書館 サイドとしては、そのように捉えております。

 一方、逆に、1,2年生が中心のラーネッド記念図書館では、利用案内の 受付数が昨年の4倍と飛躍的に伸びました。これも図書館ガイダンスやその

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他の利用講習会での広報活動により、レファレンス・カウンターの存在を知っ てもらえたことが相談件数の増加に繋がったといえると、これもまた図書館 サイドでは分析しております。

 本学が所蔵しない資料の閲覧や複写、借用などの相互利用の依頼件数は、

今出川図書館ではこれもまた、2005年度以降は減少しております。全文をパ ソコンの画面で閲覧することが可能なデータベースの増加や、電子ジャーナ ルの導入が進んだこと、また、その他にも、例えば国立国会図書館の電子図 書館の近代デジタルライブラリーなど、インターネット上で公開される資料 が増加したことなどが、大きな要因の一つと考えられます。

 しかしながら、ラーネッド記念図書館では逆に依頼件数が増えています。1、

2年生には、まずこれらの存在を知ることから始めなければならないので、

利用講習を行った結果、このような数字が出ているものと考えられます。

 そこで図書館では、これから、初年次教育の一環や、その他の利用教育の ために、利用説明会や講習会に力を入れることを、2008年度もまた、方針と して掲げました。大学図書館の役割は、今後、この教育の側面がさらに強く なっていくものと、肌で実感しています。

 司書や職員もまた、大学図書館においては、教育という大目標のもとに、

その役割を再編成されることと考えられます。特に私学の大学図書館は、今 後、さまざまな形で、個性化を図るものと考えられます。

 先にも述べましたが、大学図書館は、今もなお、動き続けています。むし ろ今後、 画期的な大変動が起こるかもしれません。「図書館」 の語が意味す る内包は、爆発的に増え続けています。

 もはや、図書などの資料の「容れ物」としてだけの図書館のイメージは消 えました。そこに何を付加価値として加えるのか。

 その答えの第一のものが教育です。

 図書館発信の教育方法の提案が、各大学図書館で始まっています。黙って 本を読むだけであった図書館に、会話ができるスペースができ、パソコンを 囲んで、ゼミの共同発表の準備をする学生たちが議論をしている。その横で は、これもパソコンで、データベースを検索している学生がいる。また、そ ばにはレファレンス・カウンターがあり、資料について相談している学生が

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いる。さらには、学生がゼミ後の余韻に浸るラウンジもあり、飲食スペース もある。一方で、静かに読書できるスペースも確保されている。このような、

新たなハイブリッドな知の空間が、形成されていく、その基本設計に、図書 館の閲覧室とレファレンス・カウンターと参考図書室とが組み入れられてい ることを希望したいのです。その空間からの新たな教育の一つの形を、図書 館から広く提案したいと思っています。

 ここでのキーワードは、「連携」 です。 これだけインターネットが進展し た今、あらゆる連携が可能になってきました。限られた資料は、それが限ら れたものであるがゆえに、利用の効率を上げなくてはなりません。

 また、連携は学内の学習方法にとどまりません。資料についてだけいって も、各所蔵機関は、より効率的な連携をすべきであることはいうまでもあり ません。それは、大きな意味での、つまり他大学の学生をも巻き込んだ教育 です。単なる相互利用の連携だけでなく、知のいい意味での流動を補助する 機関として、図書館の役割が想定されます。

 夢はどこまでも膨らむばかりですが、図書館が大学の一つの顔でありつづ けることを私はいつも祈っています。その意味で、知の蓄積については、保 存庫としての側面もまた、復活してくるかもしれません。

  このような場を支えるのは、最終的にはやはりそこに所属する人、という ことになるでしょう。大学は、一方で、各地の図書館の恩恵を得るだけでな く、この図書館を支える人材を教育する場でもあります。司書課程はその代 表的システムです。

 本誌が、より広く、図書館を支える人々のために読まれることを祈ります。

最後になりましたが、このような雑文をもって巻頭言に代える失礼を、どう ぞご海容ください。

   2008年6月

(しんどう まさひろ。同志社大学総合情報センター所長。文学部教授)

参照

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