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無形文化財、有形のデータベース、目に見える議論一サワウ・プロジェクトー

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無 形 文化 財、 有形 の デー タベ ース、 目に見 え る議 論 43

無 形 文化 財 、有 形 の デ ー タベ ー ス 、 目に見 え る議 論

サ ワ ウ ・ プ ロ ジ ェ ク ト ー

グ イ ド ・C・ ピ グ リ ア ス コ 小 林 誠 ・四條 真 也(訳)

1は じ め に

1990年 代 初 頭 、 太 平 洋 諸 島 の 人 々 は ロ ー カ ル な 問 題 に 取 り組 む た め に 、 西 洋 的 な 法 概 念 を ロ ー カ ル な 諸 現 実 に 合 わ せ て 翻 訳 し 始 め た 。 そ れ と 同 時 に 、 か れ ら は 自 ら の 文 化 的 、 政 治 的 な 利 害 関 心 に 合 わ せ て 新 た な か た ち の 視 覚 メ デ ィ ア を 取 り入 れ 始 め た[GINSBURG2011を 見 よ]。 ギ ン ズ バ ー グ と ア ブ=ル ゴ ッ ド と ラ ー キ ン は 近 年 、 先 住 民 メ デ ィ ア に つ い て の 議 論 が 「「文 化 」 の 占 め る 地 位 の 変 化 「文 化 が 国 内 や 世 界 を 舞 台 に し た 政 治 的 権 利 や 人 権 の 主 張 の た め の 拠 り所 と な る こ と で 、 そ れ が 次 第 に 客 体 化 さ れ 、 媒 介 さ れ た も の に な っ て き た 」 を 反 映 し て い る こ と を 見 出 し た [GINSBURG,ABU‑LUGHODandLARKIN2002:9]。

も と も と 法 律 家 と し て 無 形 文 化 財 の 保 護 に 関 す る ス イ ・ジ ェ ネ リ ス(suigeneris) な 体 制 に 関 心 を も っ て い た 私 は 、2004年10月 に フ ィ ジ ー に 赴 い た(1)。 私 は そ の 時 、 ユ ネ ス コ(UNESCO)や 世 界 知 的 財 産 権 機 構(WIPO:WorldIntellectualProperty

Organization)な ど の 国 際 機 関 が 太 平 洋 諸 島 の コ ミ ュ ニ テ ィ で 推 進 し て い た 「迷 路 の よ う に 複 雑 な 一 連 の 規 定(Byzantinseriesofregulations)」 に対 す る ブ ラ ウ ン の 論 評 [BROWN1998:203;BROWN2005も 見 よ]を 読 み 、 困 惑 し て い た 。 同 時 期 に 、 ブ ラ ウ ンが 書 い た も の を 読 み 、太 平 洋 諸 島 の 諸 社 会 で 調 査 を 実 施 し て い た 私 の 同 僚 ら は 、 国 際 的 な 法 の 枠 組 み か ら先 住 民 を 除 外 す る こ と は 、 実 際 的 に 、 新 た な 知 的 財 産 権 も し く は そ れ に 類 似 す る 権 利 を 作 り 出 す よ う な 知 的 財 産 権 に基 づ くス イ ・ジ ェ ネ リ ス な シ ス テ ム を め ぐ る 交 渉 の 場 に 先 住 民 が 参 画 す る た め の 土 台 を掘 り崩 す こ と に な る と 指 摘 し て い た[GEISMAR2005;RECHT2009]。 フ ィ ジ ー ・ベ ン ガ 島 の サ ワ ウ の 人 々 お よ

     

び パ リ の ユ ネ ス コ で 実 施 し た 調 査 か ら 、私 は 、相 互 に 連 結 し た 三 つ の 層 一 ロ ー カ ル 、 ナ シ ョ ナ ル 、 トラ ン ス ナ シ ョ ナ ル ー が オ セ ア ニ ア の 文 化 財 に 関 す る 権 利 の 確 立 に お い て 弁 証 法 的 に 作 用 し て い る,eと を 明 ら か に し た[PIGLIASCO2007a]。

ベ ン ガ で 調 査 を し て い る 間 、 私 は ア ・イ ト ゥ ヴ ァ ト ゥ ヴ ァ ・二 ・ヴ ァ カ ン デ ィ ン デ ィ ケ ・エ ・サ ワ ウ(AltuvatuvaNiVakadidikeESawau:サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク ト)に 携 わ る よ う に な っ た 。 そ の プ ロ ジ ェ ク トは2004年11月 に 、 ベ ン ガ に あ る ダ ク イ ベ ン

ガ ・サ ワ ウ 地 区 学 校 の5人 の 教 師 に よ っ て 出 題 さ れ た 宿 題 に 端 を 発 し て い る 。 サ ワ ウ ・

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44 無 形文 化財 、有 形 のデ ー タベー ス、 目に見 える議 論

プ ロ ジ ェ ク トの 当初 の 目的 は 、 生徒 た ち が 自 らの 文化 遺 産 を定 義 す るの に何 を重 要 な 要 素 と して い る か を 同定 す る こ とに あ っ た 。 文化 遺 産 プ ロ ジ ェ ク トを学 校 カ リキ ュ ラ ム に取 り入 れ る こ とで、 若 い世 代 の者 が フ ィジ ー の 文化 と言 語 に よ り興 味 を持 つ 契 機 とな る こ とが 期 待 さ れ た。 そ の 時 以 来 、 サ ワ ウ ・プ ロジ ェ ク トは 、 現 行 の 知 的 財 産 権 法 で は共 同 的 に所 有 さ れ る先 住 民 の 文化 的 表現 の さ ま ざ まな か た ち を保 護 す る こ とが で きず 、先 住 民 とか れ らの 支 持 者 が オ ル タ ナ テ ィ ブ な保 護 の あ り方 につ い て取 り決 め 、 そ れ を推 進 して い く必 要 性 が あ る と呼 び か け る まで に 成 長 して きた 。 ヘ ネ シー の 格 調 高 い表 現 で は、「同 プ ロ ジ ェ ク トは 、文 化 遺 産 のマ ス メ デ ィア化 につ き ま と う複 雑 性 と、

ポ ス トコ ロ ニ ア ル で ナ シ ョナ ル な 文脈 で の 自己 表象 に 関 す る先 住 民 の 権 利 の 再 活 性 化 と主 張 を描 い て い る」[HENNESSY2009:91]。

ス ヴ ァ に あ る タ ンバ ナ ・二 ・ヴ ォサ ・ケ イ ・イ トヴ ォ ・ヴ ァカ ヴ ィ テ ィ(Tabana NiVosakeiiTovoVakaviti:フ ィジ ー 言 語 文化 研 究 所)に 訪 問 中 、 伝 統 の 守 護 者 らが 自分 た ち の村 で撮 影 さ れ た フ ィル ム を 編 集 し、 ま とめ る こ と を依 頼 して い るの を私 は た び た び耳 に した 。 フ ィー ル ドワ ー ク を通 して 、私 は多 くの 写 真 、音 声 記 録 動 画 フ ィ ル ム を 収 集 した。 私 は、 サ ワ ウ ・ヤ ブ サ(yavusa:部 族)の 人 々 の コ メ ン トを 引 き出 した い と思 い、調 査 で 集 め た こ う した資 料 をか れ ら と共 有 した。ダ ク イベ ン ガで カ ヴ ァ を 囲 み、 私 の ビデ オ カ メ ラの ス ク リー ンに 映 っ た そ う した 映 像 資 料 を見 なが ら、 私 の 調 査 資料 を共 同 的 に分 か ち合 い 、協 同作 業 を通 じて独 自の 表 象 ジ ャ ンル へ と変 形 で き な い か と提 案 す る者 もい た 。

DVDと い う フ ォー マ ッ トは、膨 大 な デ ー タ を保 存 す る能 力 と視 聴 者 が 一 連 の イ メ ー ジ か ら選 ぶ こ とを 可 能 す る メ ニ ュ ー 選 択 式 の 語 り そ れ は、 文 字 テ クス トとベ ンガ 島 の 地形 図 に つ な げ られ た ス トー リー ・マ ッ プの さ ま ざ な ま なセ ク シ ョ ンへ と迅

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速 に ア ク セ ス す る こ と を 可 能 に す る に よ っ て 、 多 媒 体 的 で 、 多 声 的 で 、 多 線 的 な ツ ー ル の 開 発 を 可 能 に し た(2)。 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク ト を つ く りあ げ る こ と は 、 コ ミ ュ ニ テ ィ か ら か れ ら の 中 で の 適 切 さ に 関 す る フ ィ ー ドバ ッ ク に 従 っ て 、 イ メ ー ジ の モ ン タ ー ジ ュ を 披 露 し 、 議 論 し 、 創 りあ げ る こ と か ら 成 り立 っ て い た 。 サ ワ ウ の 最 高 位 首 長 の 従 兄 弟 で あ る フ ェ リ ッ ク ス ・ゾ ラ タ ナ ヴ ァ ヌ ア(FelixColatanavanua)は こ の モ ン タ ー ジ ュ の 作 成 の す べ て の 側 面 に 関 わ っ て い た 。 そ れ は つ ま り、 フ ィ ル ム の 選 択 と編 集 、 言 語 的 と 言 語 外 的 な 暗 示 を 加 え る た め に 自 身 の 写 真 の 追 加 とそ れ を 基 に し た 動 画 の 作 成 、 音 楽 の ア レ ン ジ 編 集 一 寛 大 に も オ セ ア ニ ア 芸 術 文 化 セ ン タ ー に よ る 支

      りこ 

援 を受 けて い た そ し て、DVDを 使 っ た多 線 的 な イ ン ター フ ェ イ ス の構 築 で あ る [図1参 照](3)。

同 プ ロ ジ ェ ク トは 、 文化 遺 産一 特 に ヴ ィ ラ ヴ ィ ラ イ レヴ ォ(火 渡 り)儀 礼 対 す る サ ワ ウ部 族 の 責 任 か ら生 じた 。 この 責 任 とは、 人 々 とヴ ァヌ ァ(侃 朋 σ:土地) と他 の伝 統 的 ・文化 的 資 源 との 間 の 永 続 的 な関 係 に埋 め 込 まれ て い る。 こ の 関係 の 中 で 、 土 地 は ヴ ィ ラヴ ィ ライ レ ヴ ォの よ う に究 極 的 に は神 に属 す が 、 後 世 の た め に委 託

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無 形 文化 財 、 有 形 の デ ー タベ ー ス 、 目 に 見 え る 議 論 45

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図1サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トの メ イ ン メ ニ ュ ー

さ れ た 贈 物 で あ る[PIGLIASCO2007a,2011]。 守 護 者 と し て の 資 格(custodianship) は 永 続 的 な 場 所 の 感 覚 と村 落 と の 関 係 性 に 関 連 し て い る 。 ち ょ う ど か れ ら の ア イ デ

ン テ ィ テ ィ が 共 同 体 主 義 に 哲 学 的 に 帰 着 し 、 神 話 的 ・親 族 的 な 関 係 性 と 絡 み 合 っ て い る よ う に 、 サ ワ ウ の 人 々 は 自 ら の 伝 統 的 知 識 と 文 化 的 表 現(TKEC:traditional knowledgeandexpressionsofculture)に 対 す る 集 団 的 責 任 を 共 有 し て い る の で あ る 。

ベ ン ガ で は 、文 化 的 、宗 教 的 、社 会 的 、経 済 的 関 係 は 、市 場 へ の 統 合 や テ ク ノ ロ ジ ー の 急 速 な 普 及 一 そ れ ら は 国 際 的 な レ ベ ル で の 権 力 の ヒ エ ラ ル キ ー や グ ロ ー バ ル 化 し た 法 シ ス テ ム そ れ 自 体 へ の 伝 統 的 な 文 化 的 表 現 に 関 す る 法 的 規 制 の 効 果 を 反 映 し な が

ら 、 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 概 念 、 商 標 化 、 公 的 領 域 、 国 際 機 関 の 正 統 性 を 再 定 義 し て い を 通 じ て 時 と と も に 、次 第 に よ り グ ロ ー バ ル な も の に な っ て き た[PIGLIASCO 2011](4)。 法 の 実 践 と 概 念 を 伝 統 的 な 文 化 的 表 現 に あ て は め る こ と は 、 近 代 的 な 法 に 新 た な 財 産 の か た ち を 認 識 す る よ う に 挑 む もの で あ る 。

ヴ ィ ラ ヴ ィ ラ イ レ ヴ ォ の パ フ ォ ー マ ン ス を す る ベ ン ガ 島 の サ ワ ウ 部 族 の よ う に 、 ペ ン テ コ ス ト島 南 部 の サ 話 者 は 、観 光 用 の ナ ゴ ル(nagol:バ ン ジ ー ジ ャ ン プ の 原 型 と な っ た も の)の パ フ ォ ー マ ン ス に よ っ て 、 西 洋 化 を 受 け 入 れ な が ら も、 自 ら の カ ス トム ・

ア イ デ ン テ ィテ ィ を 維 持 し て い る 。 ナ ゴ ル は 、 伝 統 の パ フ ォ ー マ ン ス で あ り 、 潜 在 的 な エ ス ニ シ テ ィの マ ー カ ー で も あ る[DeBURLO1996]。 ナ ゴ ル ・ジ ャ ン プ の ケ ー ス に お い て 、 ペ ン テ コ ス ト島 出 身 者 か ら の 申 立 人 の 集 団 は 、 サ ン ト島 の パ フ ォ ー マ ン ス は ペ ン テ コ ス ト島 で の パ フ ォ ー マ ン ス の 流 川 だ と主 張 し、 被 告 が ナ ゴ ル ・ジ ャ ン プ を サ ン ト島 で 行 う こ と を 禁 止 し よ う と し た 。1992年7月 、ヴ ァ ヌ ア ツ の 首 席 裁 判 官(chief

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46 無 形 文 化 財 、 有 形 の デ ー タ ベ ー ス 、 目 に 見 え る議 論

justice)は 、 「実 質 的 正 義 」 と 「慣 習 と の 一 致 」 に 基 づ き、 ナ ゴ ル の パ フ ォ ー マ ン ス は 発 祥 の 地 で あ る ペ ン テ コ ス ト に 返 還 さ れ る べ き と 命 じ た[LINDSTROMl994:

69‑70](5)。

フ ィ ジ ー の サ ワ ウ の 状 況 と 並 べ て 考 え た 時 、 ヴ ァ ヌ ア ツ の ナ ゴ ル ・ジ ャ ン プ の ケ ー ス で は 、 ど の 程 度 伝 統 的 な 文 化 的 表 現 に つ い て 認 め る べ き か が 一 慣 習 に よ っ て ク ラ ン や 部 族 の 特 定 の メ ンバ ー に 与 え ら れ て い る よ う に 一 国 家 法 に よ っ て 認 識 さ れ て お り 、 そ れ は 簡 単 に 実 行 へ と移 し う る た め 、 か な り大 き な 利 権 を 保 持 し て い る [LUCAS‑SCHLOETTER2004を 見 よ]。 現 在 進 行 中 の ナ ・イ ト ゥ ヴ ァ ト ゥ ヴ ァ ・二 ・ キ ラ カ ・イ タ ウ ケ イ ・ケ イ ・ナ ・ケ ナ ・マ タ ナ タ キ(Naituvatuvanikilakaitaukei

keinakenamatanataki:文 字 通 り に は 、 伝 統 的 知 識 と 文 化 的 表 現 プ ロ ジ ェ ク トに つ い て の フ ィ ジ ー の 国 家 目録 。 現 在 で は カ ル チ ャ ー ・マ ッ ピ ン グ事 業 と 呼 ば れ る)、 太 平 洋 モ デ ル 法(2002年)の フ ィ ジ ー へ の 適 用 で あ る 現 在 審 議 中 の 伝 統 的 知 識 と 文 化 的 表 現 に 関 す る 先 住 民 の 知 的 財 産 権 の 保 護 の た め の 法 案 、2003年 に ユ ネ ス コ に よ っ て 採 択 さ れ た 無 形 文 化 遺 産 の 保 護 に 関 す る 条 約 な ど に よ っ て 、 フ ィ ジ ー で は 近 年 、 無

り    む  

形 文 化 財 、 無 形 文 化 遺 産 、 商 品 化 と い っ た 問 題 が 、 ロ ー カ ル 、 ナ シ ョ ナ ル 、 地 域 的 、 ト ラ ン ス ナ シ ョ ナ ル な レ ベ ル で 再 浮 上 し て き た 。 言 い 換 え る と 、 先 住 民 た ち は 自 ら

を 伝 統 的 な コ ミ ュ ニ テ ィ と し て 再 編 成 し 、 自 ら の 創 造 性 と ダ イ ナ ミ ズ ム を 保 ち 続 け る た め に 、 グ ロ ー バ ル な 市 民 社 会 の 資 源 を 引 き 出 し て い る[GEISMAR2005;KURIN

2004;ROBINS2003:SAHLINS1999;SILVERMAN2004]。

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図2DVDの ジ ャ ケ ッ トカ バ ー(7)

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無 形 文化財 、有 形 の デー タベ ース、 目に見 え る議 論 47

フ ィ ジー に 到 着 した 時 、 私 が 関 心 を持 っ て い た の は、 文 化 的 表 現 を記 録 し、 そ れ

り        

ら を デ ー タベ ー ス 上 に 保 存 す る こ とに 関 して、 ロ ー カ ル 、 地 域 的 、 トラ ンス ナ シ ョ ナ ル な レベ ル で 関 心 が 高 ま っ て い る の に もか か わ らず 、 先 住 民 の コ ミ ュ ニ テ ィ 自 ら そ う した デ ー タベ ース を編 纂 した り、 ま た そ れ らへ の権 利 を持 っ た りす る こ とが ほ と ん ど なか っ た点 で あ る。 現 在 進 行 中 の サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク ト 本 論 に お い て そ れ は DVDの 作 成 を め ぐ る協 同 の事 例 と して 議 論 す る は、 ヴ ァヌ ア ツの ペ ンテ コス ト 島 の サ 人 の よ う に、 ベ ンガ の サ ワ ウ ・コ ミュ ニ テ ィが い か に 「表 象 の コ ン トロー ル」

[HENNESSY2009:91]を 達 成 し よ う と して い る の か を示 す もの で あ る(6)。

同 プ ロ ジ ェ ク トは、 カ ル チ ャ ー ・マ ッ ピ ング事 業 、 太 平 洋 モ デ ル 法 の 改 正 を受 け て 審 議 中 の法 案 、 無 形 文 化 遺 産 の保 護 に 関 す る協 定 な どに よっ て提 起 され 、 現在 直 面 す る懸 案 につ い て取 り組 む こ とで、 コ ミュ ニ テ ィが 自 らの伝 統 的 知 識 と文化 的 表 現 を再 文 脈 化 す る こ とを可 能 にす る。

ロ ー カ ル な 知 識 と グ ロ ー バ ル な コ モ ン ズ

知 的財 産 権 を め ぐる 問題 の 中心 は 、 非物 質 的 な存 在 の 財 産権 の 境 界 をい か に定 め る か に あ る 。 イ ン タ ー ネ ッ トの よ う な 革新 的 な コモ ンズ が創 りだ さ れ た こ と に よ っ て、

知 的財 産 の範 疇 の外 側 に位 置 す る 「フ リー ・カル チ ャー 」 につ い て の 言 説 が 急 増 して い る。 研 究 開発 と創 造 力 を 活性 化 し、 経 済 的 な 成 長 に貢 献 す るた め 、 情 報 の 自 由 な流 れ に対 す る 障 害 を取 り除 くこ とが 公 共 の 利益 に 資 す る とい う よ う な議 論 が よ くな され る[LESSIG2004]。 こ う した視 点 は、 伝 統 的 な文 化 的 表 現 を管 理 し続 け、 そ の 使 用 を制 限 し よ う と苦 心 して い る サ ワウ 人 の よ うな 先 住 民 に と って 、 財 産 権 をめ ぐる権 力 の不 均 衡 を悪 化 させ る もの で あ る 。 サ ワ ウの 文 化 的 表 現 はそ の 守 護 者 らの 問で は 自 由 に流 通 す る譲 渡不 可 能 な 財 産 で あ るが 、 自 らの 社 会 の 外 側 に は開 放 して い ない 。

ま さに 、伝 統 的 知 識 と文化 財 の 保 有 者 は 、 統 制 の ない 公 的 領 域 に よ って 、 知 的 財 産 権 で保 護 され な い 文化 的 な 素材 へ の 自由 な ア クセ ス が 奨 励 され る状 況 が 作 り出 され て い る こ とに 懸念 を抱 い て い る。 そ れ に よ って 、 無 形 の 文 化 的 表 現 の 所 有 者 で ない 者 で も、 そ れ を誤 用 し、 コ ピー し、 あ るい はパ フ ォー マ ンス しう る こ とに な る。 自 己決 定 を 目指 す 先住 民 の 人 々 は 、 この グ ロー バ ル ・コモ ンズ へ の 参 加 を と りわ け望 ん で い な い 可 能性 が あ る。 「伝 統 的知 識 を 自由 に利 用 可 能 な 資 源 と して 定 義 づ け て し ま うた め 」

[BROWN2003:237]、 公 的領 域 はサ ワ ウの 文 化 財 概 念 の 活 力 を奪 い、 無 価 値 な もの に して し ま うか も しれ ない 。 公 的 領 域 は、 今 日の サ ワ ウ人 の よ うな先 住 民 の生 活 に悪 影響 を及 ぼ す 無 所 有(nonproperty)の 一 形 態 で あ る。

限 定 的 な 保 護 、 あ るい は ま った く保 護 され て い な い状 態 で は、 創 造 者 が 先 住 民 の文 化 的 表 現 や作 品 の ほ ぼ す べ て が か な り昔 か らあ る もの だ と明 らか に した と して も、 最 終 的 に は そ れ ら は公 的 領 域 に属 す とみ な され て しま う。 ほ とん どの伝 統 的 な コ ミュ ニ

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48 無 形 文化 財 、 有 形 の デ ー タベ ー ス 、 目 に 見 え る 議 論

テ ィ で は 、 長 い 時 間 を か け て 知 識 が 獲 得 さ れ 、 そ れ は 次 の 世 代 に 脈 々 と継 承 さ れ る 。 そ れ は 常 に 発 展 し、 変 化 す る 性 質 を 持 つ 。 よ っ て 、 そ う し た 知 識 が 実 際 い つ 発 見 さ れ た の か 、 も し く は い つ 創 り だ さ れ た の か 、 ま た い つ 公 的 領 域 に 入 り 込 ん で い っ た の か を 確 定 す る こ と は 難 し い 。 しか し、 一 度 、 公 的 領 域 に 入 り こ む と 、 誰 も が そ れ を 自 由 に 再 生 産 す る こ と が で き る よ う に な っ て し ま う。

『フ リ ー ・カ ル チ ャ ー 』 の 中 で レ ッ シ グ は 、 イ ン タ ー ネ ッ トは 「多 くの 人 々 が ロ ー カ ル な 境 界 を 超 え て 文 化 を つ く り、 育 む 過 程 に 参 加 す る こ と を 可 能 に し た 」[LESSIG 2004:9]と 主 張 す る 。 ボ イ ル[BOYLE2003]は 、 人 々 は 自 ら の 遺 産 を 物 理 的 に コ ン

ト ロ ー ル して い た の で 、 数 世 紀 前 に は 先 住 民 の 歌 、 踊 り 、 パ フ ォ ー マ ン ス 、 儀 礼 、 思 想 は 知 的 財 産 の 保 護 を 必 要 と し て い な か っ た と 論 じ る 。 しか し 、 イ ン タ ー ネ ッ トの 発 明 以 降 、 先 住 民 は 自 ら の 文 化 財 を 守 る た め に 、 デ ジ タ ル ミ レ ニ ア ム 著 作 権 法(the DigitalMillenniumCopyrightAct)、 電 子 窃 盗 排 除 法(NoElectronicTheftAct)、

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3篇 側 面 仙9■rttqwe'‑A't‑一'

図3サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トが ま だ 完 成 し て い な か っ た 時 に 、 フ ィ ジ ー ・サ ン(F〃1 Sun'July23,2005,ρ2)に 掲 載 さ れ た 記 事 。 ナ ヴ ィ テ ィ ・ リ ゾ ー トで 観 光

客 向 け に 行 わ れ た ダ ウ ヴ ィ ラ((iauv〃 ∂=火 渡 り)に お け る サ ワ ウ 部 族 出 身 の パ フ ォ ー マ ー 。 左 下 、 フ ェ リ ッ ク ス ・ゾ ラ タ ナ ヴ ァ ヌ ア 。 中 央 、 著 者 。 右 、 ダ ク イ ベ ン ガ の 首 長 村 の 写 真 。

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無 形 文 化 財 、 有 形 の デ ー タベ ー ス 、 目に 見 え る 議 論 49

ソ ニ ー ・ボ ノ 著作 権 延 長 法(SonnyBonoCopyrightTermExtensionAct)、 さ らに は収 集情 報不 正 利 用 禁 止 法(CollectionsofInformationAntipiracyAct)を 適 用 す る 必 要 が 出 て きた[BOYLE2003:42]。

イ ン ター ネ ッ トに よっ て 、 許 可 を得 ず に再 生 産 され た 伝 統 的 知 識 と文 化 的表 現 を入 手 す る こ と、 ライ ブ ・パ フ ォー マ ンス を不 当 に見 せ 物 にす る こ と、 文 化 の守 護 者 た ち と経 済 的 な利 益 を共 有 す る こ と な し に伝 統 的 知 識 と文 化 的 表 現 を商 業 的 に利 用 す る こ とが簡 単 に な っ た 。 また そ れ に よ って 、 伝 統 的 な言 葉 、 物 語 、 象 徴 、 示 差 的 な記 号 を 誤用 し、 しば しば この よ う な創 造 や 革 新 の 基 と な った 伝 統 につ い て明 示 す る こ とな し に 、 文 化 的、 霊 的 に侮 辱 し品位 を失 わ せ る や り方 で、TKECを 利 用 す る こ とが 簡 単 に で きる よ うに な っ て し ま った 。 イ ン ター ネ ッ トは人 類 が これ まで 発 明 した もの の な か で 最 も よ く民 主 主 義 を現 す もの で あ る と喧 伝 され てい るか も しれ な い。しか し、レ ッ シグ[LESSIG2004]が 言 及 して い る よ う に、 そ れ は他 者 の 文 化 財 の 剰 窃 を罰 す る こ とが で きな い 。

クー ム は 、 文 化 に関 す る公 的 領 域 は 「著 作 権 法 が 著 作 活 動 と伝 統 的 に認 識 す る もの や 、 西 洋 的 な 創 造 者 に最 も特 徴 的 な もの の み な らず 、 幅 広 い範 囲 の活 動 と実 践 を考 慮 に入 れ る」[COOMBE2003:1181]こ と を求 め る もの で あ る と示 唆 す る。 最 近 彼 女 は、

文 化 的 創 造 力 の 多 様 な あ り方 を酒 養 す る の に 必 要 な条 件 を確 保 す る た め に 、 「文 化 遺 産 」 の 利 用 を管 理 す る新 た な原 則 を公 式 化 す る こ とが 、 人 々 の文 化 的生 き残 りの た め に望 まれ る と述 べ て い る[COOMBE2003:35]。 西 洋 の法 律 は、 永 続 的 な創 造 の シス テ ム を意 味 して お り、 そ こ で は あ る一 定 期 間 な にが しか の創 造 物 を人 々 が所 有 す る。

他 方 、 慣 習 的 実 践 は永 続 的 な所 有 権 の シ ス テ ム を示 唆 して お り、 そ こで は 人 々 は 自 ら の 所 有 物 を創 造 す る[MOUTU2009も 見 よ]。 創 造 力 はTKECの 所 有 権 の 譲 渡 を永 続 化 させ る よ う に機 能 す る[STRATHERN2001]。

サ ワ ウ人 を と りま く経 済 状 況 、 あ る い は そ れ に類 す る経 済 状 況 で は 、 人 々 が 自 らの 文 化 財 に価 値 を付 与 しよ う と してお り、 物 理 的 で抽 象 的 な労 働(創 造 性)を 定期 的 に 投 資 す る必 要 性 が あ る[LEACH2004:154,162]。 よ っ て 、 商 品 化 は必 ず し も正 統 性

と文 化 遺 産 に害 を もた らす とい うわ け で は な い。 サ ワウ のパ フ ォー マ ー た ち は 、 文化 的 な意 味 の 連 続 を認 識 しなが ら も、伝 統 的 な観 点 か ら新 奇 な状 況 を弁 証 法 的 に交 渉 し、

解 釈 す る。 別 の論 文[PIGLIASCO2007a,2011]で 私 は、 観 光 用 の 印 刷 物 の 中 に は 、 伝 統 的 な観 点 か ら新 奇 な状 況 を解 釈 し、 旅 行 者=観 察 者 で は気 づ か ない よ う な文化 的

な意 味 の 連 続 性 を認 識 す る ロ ー カ ル な 人 々 の例 に満 ち て い る こ と を指摘 した 。

ス イ ・ジ ェ ネ リ ス の 提 案

西 洋 の 著 作 権 の 原 則 は、 先 住 民 の 文 化 的 表 現 の 十 全 な 保 護 に と っ て大 き な障 害 と な っ て い る。 地 理 的 表 示 、 商 標 、 マ オ リ の トイ ・イ ホ(Toi‑lho)の よ う な認 証 と正

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50 無 形 文 化 財 、 有 形 の デ ー タ ベ ー ス 、 目 に 見 え る 議 論

統 性 の マ ー ク、 正 統 性 に 関 す る先 住 民 の ラベ ル の 存 在 は 問 題 が 進 展 して い る こ と を 示 して お り、 ロ ー カ ル な コ ミ ュ ニ テ ィの 誇 り をつ く りだ して い る が、 そ れ らは 単 な る付 け焼 刃 に 留 ま っ て い る(8)。そ う した も の は 、 先 住 民 の 美術 と文化 に 関 して 一 般 の 人 々 の理 解 を得 る た め に 利 用 さ れ う るが 、 模 倣 物 が つ く られ る の を 防 ぐこ とは で き な い。 逆 に、 他 の 太 平 洋 諸 島 民 と 同 様 に 、 フ ィ ジ ー 人 た ち は ア イ デ ン テ ィ テ ィ、

ブ ラ ン ド化 、 知 的 財 産 に 関 す る独 自の 概 念 を 数 世 紀 に も わ た っ て保 持 して きた 。 土 地 と慣 習 へ の 尊 敬 とい う汎 フ ィ ジ ー 的 な概 念 で あ る ヴ ァ カ ヴ ァヌ ア(御 肋 襯 朋 θ:字 義 的 に は、 土 地 の や り方 の 意)は 、 あ る 種 の ブ ラ ン ド化 を伴 う西 洋 的 な 地 理 的 表 示

り     

に 類 似 し て い る[PIGLIASCO2011]。 太 平 洋 地 域 に お け る い く つ か の 画 期 的 な ケ ー ス で は 、 先 住 民 の 人 々 の 間 に ア イ デ ン テ ィ テ ィ 概 念 と 不 可 分 な 法 シ ス テ ム が 存 在 し て い た と 認 識 さ れ て い る(9)。

こ う し た ケ ー ス は 、 そ れ ま で 等 閑 視 さ れ て き た 非 西 洋 的 な 認 識 論 が 、TKECを 成 し 、 保 護 す る 新 た な 概 念 と 様 式 を 提 供 す る 可 能 性 を 持 つ こ と を も示 唆 す る 。 フ ィ ジ ー で 制 定 が 見 込 ま れ る 伝 統 的 知 識 と 文 化 的 表 現 に お け る 先 住 民 の 知 的 財 産 権 保 護 案(ActtoProtectthelndigenouslntellectualPropertyRightsinTraditional

KnowledgeandExpressionsofCultureBill)現 在19度 目 の 改 正 中 で あ る は 、 文 化 遺 産 に 関 し て 新 た な 知 的 財 産 の よ う な 権 利 を つ く り だ す 知 的 財 産 に 基 づ く ス イ ・ ジ ェ ネ リ ス な 制 度 で あ る 。 こ の 法 案 に よ っ て 、 通 常 、 著 作 権 法 で 禁 止 さ れ る 不 正 使 用 か らTKECを 保 護 す る こ と が で き る 。 そ れ は 、 伝 統 の 所 有 者 と守 護 者 に 対 し て 排 他 的 な 権 利 を 付 与 す る こ と で 、 か れ ら が 自 ら の 伝 統 的 知 識 と 文 化 的 表 現 に 関 し て あ る 特 定 の 活 動 を 他 者 に 認 可 し 、 も し く は 禁 止 す る こ と を 可 能 に す る 。 ま た そ れ はTKEC

の 使 用 に 関 す る 倫 理 規 定 を 整 備 す る 。 つ ま り 、 サ ワ ウ 人 の よ う な伝 統 の 所 有 者 と 守 護 者 は 、 自 ら のTKECに 対 し て 道 徳 的 な 権 利 を 保 持 す る こ と に な る 。

伝 統 的 知 識 と 文 化 的 表 現 法 案 は 、 太 平 洋 共 同 体(theSecretariatofthePacific

Community)に よ っ て 首 唱 さ れ 、ユ ネ ス コ とWIPOの 主 導 の も と で 発 展 し て き た 「 統 的 知 識 と文 化 的 表 現 に 関 す る モ デ ル 法(theModelLawonTraditionalKnowledge

andExpressionsofCulture。 以 下 、 太 平 洋 モ デ ル 法PacificModelLaw)」 の 改 正

り      

を 反 映 した もの で あ る。 同 法 は、1999年2月 に ヌ メ ア で 開 催 され 、 南 太 平 洋 地 域 の21の 国 と地 域 の代 表 が 集 ま っ た 「太 平 洋 諸 島 に お け る伝 統 的 知 識 及 び文 化 的 表 現 の 保 護 につ い て の シ ンポ ジ ウ ム」 に て提 議 され た 「伝 統 的 知 識 及 び 文化 的 表 現 の 保 護

   

の た め の 地 域 的 枠 組 み(theRegionalFrameworkfortheProtectionofTraditional

KnowledgeandExpressionsofCulture)」 に 由 来 す る 。 そ の シ ン ポ ジ ウ ム で 、 マ オ

り      

リ人 研 究 者 の ア ロ ハ ・テ ・パ レ ア ケ ・ミ ー ドは 、 太 平 洋 地 域 の た め に 、 具 体 的 で 、 ス

り       

イ ・ジ ェ ネ リス で、 地 域 的 な法 的枠 組 み を構 築 す る 必 要性 を訴 えた 。 西 洋 の 知 的 財 産 権 法 とは異 な り、 そ れ は伝 統 的知 識 と文 化 に 関す る あ らゆ る側 面 を保 護 す るた め に祖 先 の 慣 習 とル ー ル を組 み 込 む こ とが 企 図 され るべ きで あ る[MEAD2005]。 この 法律

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無 形 文 化 財 、 有 形 の デ ー タ ベ ー ス 、 目 に 見 え る 議 論 51

り      

は 、太 平 洋 地 域 で初 め て、新 た な伝 統 的 で道 徳 的 な文 化 的 権 利 を確 立 し うる もの で あ っ た(10)。そ れ は 、 共 同 体 的 で、 永 続 的 で、 譲 渡 不 可 能 で、 排 他 的 な もの で あ り、 知 的 財 産権 とは 関 連 して い るが 、 そ れ と は区 別 され る もの で あ る。

太 平 洋 モ デ ル 法 の ア プ ロー チ は、 そ れ まで 公 的 領 域 の 一 部 と思 わ れが ち で あ っ た伝 統 的知 識 と文化 的 表 現 に 関 す る伝 統 的 で 道 徳 的 な権 利 を法 制 度 化 す る も ので あ る。 一 旦 国 がTKECを 自 ら の公 的 領 域 の一 部 で あ る と分 類 す る と、 国 は そ の 利 用 を コ ン ト ロ ー ル し始 め る(ll)。TKECの 保 護 に 関心 の あ る太 平 洋 諸 島 民 は、 西 洋 的 な 法 モ デ ル に 倣 う の か 、 も し くは 伝 統 的 な文 化 の 守 護 者 に よ る所 有 と保 護 の と ら え方 に 基 づ い た新 た な シ ス テ ム を制 定 す る の か に つ い て 当 初 よ り議 論 して き た。 ニ ュー ジ ー ラ ン ドに お け る マ タ ア トゥ ア宣 言 、 オ ー ス トラ リア にお け る 先 住 民 の 知 的財 産 に 関 す る Julayinbul声 明 、 ハ ワ イ に お け るパ オ ア カ ラニ 宣 言 な ど の例 の よ う に、 関係 者 らは、

自 らのTKECの 保 護 にお い て先 住 民 モ デ ル を要 求 し始 め て い る。 知 的 財 産 権 に 関 す る条 約 の よ う に、 そ う した 文化 的権 利 に 関 す る 先住 民 の 宣 言 は 、 しば しば 拘 束 力 や 強 制 力 の な い 「ソ フ トロ ー」 で あ る(12)。

現 在 、 フ ィ ジ ー、 ヴ ァヌ ア ッ、 パ ラ オ 、パ プ ア ニ ュ ー ギ ニ ア に お い て 改 正 中 で あ る 太 平 洋 モ デ ル法 は、 文 化 的多 様 性 を脅 かす 手 続 き上 の画 一 性 を招 く こ とな しに 、権 利 に 関す る 国 際 的 な 議 論 の 発 展 に 大 き く貢 献 す る もの で あ る[PIGLIASCO2009]。

り       

平 洋 モ デ ル 法 は、ナ シ ョナ ル か つ 地域 的 とい うハ イ ブ リ ッ ドな ア プ ロー チ を提 供 す る。

り       

ま た 、 そ れ は 地 域 的 な 法 的 枠 組 み を 確 立 す る が 、 そ の 実 施 に つ い て は 政 策 立 案 者 に 任 せ る こ と で 各 国 の 法 と シ ス テ ム に 合 わ せ る こ とが で き る 。 太 平 洋 モ デ ル 法 は 、 文 化 財 の 権 利 に 関 す る 国 家 法 の 中 に 、 慣 習 法 と伝 統 的 な ガ バ ナ ン ス の シ ス テ ム を 組 み 込 む こ と を 奨 励 し て い る 。 そ れ は 、 自 ら の 慣 習 的 な 保 護 の あ り方 に 従 う 伝 統 的 なTKEC の 守 護 者 が 、TKECの 使 用 に 関 す る 主 要 な 意 思 決 定 者 で あ り続 け る べ き と認 識 す る 。 よ っ て 、 伝 統 的 な 文 化 に み ら れ る 創 造 性 や 革 新 性 が ロ ー カ ル な コ ミ ュ ニ テ ィ の 利 益 と な り続 け る こ と を 保 証 す る も の で あ る 。 フ ィ ジ ー に お け る 伝 統 的 知 識 と 文 化 的 表 現 法 案 の19度 目 の 改 正 の 内 実 は い ま だ 明 ら か に さ れ て は い な い が 、 立 法 者 は 伝 統 的 知 識 ・文 化 的 表 現 機 構(TraditionalKnowledgeandCulturalExpressionsAuthority)

の 設 立 を検 討 し て い る と み られ る 。 そ れ は 、 議 長 と4、5人 の 有 力 なTKEC保 持 者 に よ?て 構 成 さ れ 、 年 に4回 以 上 会 議 を 開 く伝 統 的 知 識 と 文 化 的 表 現 に 関 す る 委 員 会 (Traditiona1KnowledgeandCultura1ExpressionsCounse1)とTKECに 関 す る 資 源 ・認 可 セ ン タ ー(ResourceandClearanceCenterforTKEC)か ら な る と思 わ れ る 。 そ の メ ンバ ー は 、 ボ セ ・レ ヴ ・ヴ ァ カ トゥ ラ ガ(BoseLevuVakaturaga:木 首 長 会 議)

と相 談 し た 上 で 大 臣 に よ っ て 任 命 さ れ 、3年 間 の 任 期 で 、 再 選 は 一 度 の み 可 能 で あ る 。

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52 無 形 文 化 財 、 有 形 の デ ー タベ ー ス 、 目 に 見 え る 議 論

フ ィ ジ ー の 有 形 の テ ン プ レ ー ト

2005年5月 に、 フ ィジ ー 言 語 文 化 研 究 所 は 、 「伝 統 的知 識 と文 化 的 表 現 法 案 の根 本 的 な趣 旨 は伝 統 的 知 識 と文 化 的 表 現 の保 護 と維 持 で あ り、 伝 統 的知 識 と文化 的 表 現 の 非慣 習 的 な 目的 で の 使 用 に対 して、 伝 統 の所 有 者 の合 意 が 必 要 と定 め て い る一 一 を効 果 的 に実 施 す る た め に」[NEMANI2005] 、 カ ル チ ャー ・マ ッ ピ ン グ事 業 を 開 始 した 。 カル チ ャー ・マ ッ ピ ン グ事 業 は デ ー タベ ー ス のか た ち を と り、 地 元 の ソ フ ト ウ ェ ア会社 に よ って 特 別 に開 発 され た フ ィ ジ ー語 の ア プ リケ ー シ ョ ン ・ソ フ トを使 用 す る。そ れ は テ キ ス ト、画 像 、動 画 、音 声 を含 み 、「こ の 国初 の先 住 民 の知 識 に 関す る デ ー タベ ー ス 」 で あ る[NEMANI2005]。 カ ル チ ャー ・マ ッ ピ ン グ の過 程 と 出 来 上 が っ た デ ー タベ ー ス は と も に非 公 開 で あ る こ とか ら、 こ の 目録 は ネ ッ ト上 で公 開 さ れ て お らず 、 また 先 住 フ ィ ジー 人 コ ミ ュニ テ ィ以 外 の 者 は ア ク セス で きな い。 デ ー タベ ー ス の 閲 覧 は、 研 究 所 の 高 官 の み に 制 限 され る。 しか し、 守 護 者 らか らイ ンフ ォー ム ド ・ コ ンセ ン トが 得 られ れ ば、 そ の 情 報 を一 般 に公 開 した り、 公 的 に利 用 した りす る こ と もで き る。 デ ー タベ ー ス 上 の 情 報 は、 イ ン フ ォー マ ン ト(伝 統 の所 有 者)の 許 可 が 得 られ れ ば 、伝 統 的 知 識 と文化 的 表 現 の 守 護 者 で あ る、 部 族 、 ク ラ ン、 家 族 の メ ンバ ー の み に限 って 入 手 す る こ とが で き る[NEMANI2005]。

フ ィ ジ ー の デ ー タ ベ ー ス で は 、 人 々 は 依 然 と し て 伝 統 の 所 有 者 で あ り、 創 造 者 、

     り     

作 成 者 で あ る。研 究所[フ ィ ジ ー言 語 文 化 研 究 所]は 、単 な る仲 介 者 に過 ぎな い 。フ ィ ジー の カル チ ャー ・マ ッ ピ ン グ事 業 は、 西 洋 の 知 的 財 産 法 に代 わ るス イ ・ジ ェ ネ リ ス な保 護 の 手段 を提 供 し、TKECを 共 同体 の財 産 と して扱 う[NEMANI2005]。

さ ら に、 伝 統 的知 識 と文 化 的表 現 法 案 が 法 律 と して 制 定 さ れ れ ば 、 「伝 統 的 な文 化 的 表現 に 関 す る コ レ ク シ ョ ン とデ ー タベ ー ス は、 文 化 的 表 現 の 表 現 方 法 の み な らず 、 そ う した 表 現 が 表 象 す る内 容 と思 想 に関 し て もス イ ・ジ ェ ネ リ ス な保 護 の 対 象 とな る 」 [NEMANI2005]。

フ ィジ ー の 文化 の調 査 に 関 す る方針 につ い て研 究 所 が 推 奨 す る ガ イ ドラ イ ン は、 カ ル チ ャー ・マ ッ ピ ング に参 加 す るす べ て の 太 平 洋 諸 島 国 に よ って 「テ ン プ レ ー ト」 と して 近 年 採 用 され る に い た った が[REGENVANU2009]、 ミシ ワ イニ ・ゲ レ ンゲ レ タ ンブ ア所 長 は 、 フ ィジ ー と ロ トゥマ 島 を構 成 す る15の 地 域 に散 らば る1179の 村 一 一 そ れ ぞ れ独 自の ロ ー カ ル な知 識 ・文化 シス テ ム が あ る をマ ッ ピ ン グす る こ と は 大 きな挑 戦 で あ る と指 摘 す る 。 政府 の 資 金 に は 限 りが あ る こ と に加 えて 、カ ル チ ャー ・

マ ッ ピ ング事 業 は そ の他 に も多 くの 困 難 に直 面 して い る。

ロ ー カ ル な コ ミ ュ ニ テ ィ の メ ン バ ー 間 で の 所 有 を め ぐ る 争 い … フ ィ ジ ー の ほ

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無 形 文 化 財 、 有 形 の デ ー タ ベ ー ス 、 目 に 見 え る 議 論 53

とん どの 村 人 た ち の メ ン タ リテ ィは、 文 化 を守 っ た り、再 活 性 化 させ た りす る こ と で は な く、 貨 幣 の獲 得 へ 向 か っ て い る。 ロ ー カ ル な コ ミュ ニ テ ィに お け る 若 者 た ち の 無 関心 を考 え る と、 か れ らに 自 ら率 先 して活 動 す る よ う説 得 す る の は 非 常 に 難 し い … しば しば 、村 人 た ち は どち らか とい う とあ ま り活 動 に乗 り気 で は ない … 経 済 的 な利 益 を見 出す こ とが で きな い た め、 伝 統 の保 有 者 の コ ミュ ニ テ ィか らは 無 関 心 さが 伝 わ っ て くる こ との方 が 多 い[QEREQERETABUA2008:6]。

Vサ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク ト

サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トは カ ル チ ャー ・マ ッ ピ ング事 業 が 直面 す る諸 問題 「フ ィ ジー 政 府 内部 で の ミス コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン、 請 求 した予 算 に対 す る財 務 省 の承 認 の 遅 れ 、 四 半 期 ご と に 出 る助 成 金 の 遅 延 」[NEMANI2005]・ を 負 う必 要 な しに、 サ ワ ウの 文 化 遺 産 の重 要 な要 素 を 自 らが決 め た や り方 に沿 っ て記 録 し、保 護 す る こ と を 目的 と して活 動 を続 け て きた。

サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トは 、 ベ ン ガ の地 図 上 に ク リ ック で き る ア イ コ ンが 配 置 さ れ、

視 聴 者 が 自 ら 画 面 を ス ク ロ ー ル し、 文 化 的 デ ー タ を た ど る こ とが で き る ス トー リ ー ・

マ ッ プ で あ る 。 先 住 民 の 知 識 や 文 化 は コ ミ ュ ニ テ ィ の メ ンバ ー の 意 識 の 中 に 散 在 し て い る が 、 地 図 と い う か た ち で ま と め ら れ た こ と が な か っ た め 、 そ う し た も の を 目 に 見 え る か た ち で 表 す こ と は と て も難 し い 。 こ の ス トー リ ー ・マ ッ プ は 、 サ ワ ウ の 村 々 、 文 化 的 な 遺 跡 、 そ し て 記 憶 が 呼 び 戻 さ れ 、 保 護 さ れ る 起 点 と な る 。

ト ゥ イ ・サ ワ ウ(TuiSawau:サ ワ ウ 部 族 の 最 高 位 首 長)と サ ワ ウ ・ク ラ ン の メ ン バ ー の 同 意 の も と、 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トの 目 的 は 、 サ ワ ウ の 伝 統 遺 産(お も に 火 渡 り儀 礼 ヴ ィ ラ ヴ ィ ラ イ レ ヴ ォ)の 誤 用 、 誤 釈 、 誤 解 を 防 ぐ こ と に な っ た(13)。 映 像 資 料 は 、 す べ て フ ィ ジ ー 語 の ま ま で 保 存 さ れ て お り 、 サ ワ ウ ・コ ミ ュ ニ テ ィ の メ ン バ ー お よ び 司 祭 ク ラ ン で あ る ナ イ ヴ ィ ラ ン ガ タ(Naivilaqata)の 長 と タ ン バ ナ ・二 ・ヴ ォ サ ・ケ イ ・

イ トヴ ォ ・ヴ ァ カ ヴ ィ チ(フ ィ ジ ー 言 語 文 化 研 究 所)の 双 方 か ら 許 可 を 得 た 研 究 者 に 限 定 さ れ て 公 開 さ れ る 。 デ ジ タ ル ・メ デ ィ ア を 使 っ た こ の 革 新 的 な プ ロ ジ ェ ク トは 、 最 小 限 の 流 通 量 に な る よ う企 図 さ れ て お り、 学 術 的 な 文 脈 で 限 定 的 に 公 開 さ れ る 。

近 代 化 の 波 に 立 ち 尽 く す 「失 わ れ た 部 族 」の よ う な 古 い ス テ レ オ タ イ プ を 打 ち 破 り 、 文 書 や 映 像 記 録 を 保 管 す る た め に 、 イ ン タ ー ネ ッ ト を 利 用 す る 先 住 民 集 団 が 増 加 して

い る[WILSONandSTEWART2008:21,30;C且RISTEN2005も 見 よ]。 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トは 、 そ の ス タ ー ト時 か ら イ ン タ ー ネ ッ ト上 に て 広 く公 開 す る こ と も 可 能 で あ っ た 。 し か し 、 サ ワ ウ の メ ン バ ー ら は 、 他 者 が 自 分 た ち の イ メ ー ジ を ど の よ う に 利 用 す る の か ま で コ ン トー ル す る こ と が で き ず 、 結 果 的 に コ ミ ュ ニ テ ィ に 悪 影 響 を 及 ぼ す こ と を 懸 念 し た 。 資 金 面 、 通 信 環 境 、 情 報 技 術 へ の ア ク セ ス な ど も 問 題 で あ る が 、

プ ロ ジ ェ ク トに イ ン タ ー ネ ッ ト を使 用 す る か 否 か を 判 断 す る に は 、 フ ィ ジ ー の 伝 統 的

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54 無 形 文 化 財 、 有 形 の デ ー タベ ー ス 、 目 に 見 え る 議 論

知 識 と文 化 的 表 現 法 案 が 強制 力 を持 つ 法 に な る ま で 、待 た な け れ ば な らな い だ ろ う。

図42005年1月 、ダ ク イ ベ ン ガ に て 。マ リ カ ・テ ィ ヴ ィ テ ィ ヴ ィ(MarikaTivitivi)が ヴ ィ ラ ヴ ィ ラ イ レ ヴ ォ 儀 礼 の 伝 統 的 な 守 護 者 で あ る ナ イ ヴ ィ ラ ン ガ タ ・ク ラ

ン の 系 譜 図 の 再 構 成 に 協 力 し て い る 。 こ の 系 譜 図 は8世 代 遡 り 、275人 を リ ス トア ッ プ す る 。

VIサ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トが 示 唆 す る も の

先 住 性 を め ぐ る グ ロ ー バ ル な 政 治 の 出 現 、 文 化 観 光 ブ ー ム 、 何 が 知 的 財 産 や 文 化 的 知 識 を 構 成 し、 誰 が そ れ ら を 所 有 す る の か を め ぐ る 議 論 の 興 隆 の 中 で 、 こ こ20年 の 問 に 、 よ り多 く の 先 住 民 た ち が 新 た な テ ク ノ ロ ジ ー の 利 用 し始 め た[CHRISTEN 2005;GREGORY2006]。 か つ て 先 住 民 た ち は 、 理 想 、 道 徳 、 物 語 を 伝 え 、 保 存 す る 際 に 、 口 頭 で の 伝 承 に 頼 っ て い た 。 先 住 民 メ デ ィ ア の プ ロ デ ュ ー サ ー で あ る ジ ェ レ ミ ー ・ ト リ ー は 「知 識 を 保 有 す る コ ミ ュ ニ テ ィ が な く な ら な い 限 り、 血 縁 関 係 に あ る 人 々 の 中 に と ど め て お け ば 、伝 統 的 知 識 を 維 持 す る そ う し た メ カ ニ ズ ム は 、独 創 的 で 、 移 動 可 能 で 、 壊 れ る こ と は な い 」[TORRIE2005:16]と 主 張 し て い る 。 民 俗 学 者 と パ フ ォ ー マ ン ス 研 究 者 は 、 非 西 洋 の 文 化 的 実 践 を 保 全 ・保 護 し 、 維 持 す る こ と を 狙 っ た 新 た な や り方 は 、 実 際 に は 伝 統 文 化 を 客 体 化 し 、 孤 立 化 し て し ま う と 主 張 し た 。 そ れ ら は 、 変 化 し続 け て き た 実 践 を 固 定 化 して し ま う危 険 性 を 孕 む の で あ る[BROWN 2003,2005a;KIRSHENBLATT‑GIMBLETT2004]。 し か し 、 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク ト が 利 用 す る 新 し い メ デ ィ ア は 一 近 年 、 オ ー ス トラ リ ア や 南 北 ア メ リ カ で 行 わ れ て い

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無 形 文 化 財 、 有 形 の デ ー タ ベ ー ス 、 目 に 見 え る 議 論 55

る デ ジ タ ル ア ー カ イ ブ ・プ ロ ジ ェ ク ト と 同 様 に 、 人 々 が 自 ら の 選 択 に 基 づ い て 自 身 の 過 去 へ と到 達 し、 ダ イ ナ ミ ッ ク な 未 来 へ の 道 を 切 り 開 く こ と が で き る こ と を示 す [CHRISTEN2005:318;CLIFFORD2004:23;GRAHAM2005:625]。

サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トは 、 常 に 発 展 し続 け る 、 終 わ り の な い プ ロ ジ ェ ク トで あ る 。 ギ ン ズ バ ー グ の 言 葉 を 借 り る な ら、 こ う し た メ デ ィ ア の 美 し さ と価 値 は 、 テ キ ス ト外 (extratextual)に あ り、 「そ れ らが 媒 介 し 、 具 現 化 し 、 創 造 し、 拡 張 す る 文 化 的 ・社 会 的 過 程 に よ っ て 創 造 さ れ る 」[GINSBURGl994:370;quotedinHENNESSY2009:

91]。 そ れ は さ ら な る 調 査 を 促 し、 ま た 、 自 分 た ち の 遺 産 に 関 す る 写 真 や 情 報 の 追 加 を 通 し て 、 サ ワ ウ ・コ ミ ュ ニ テ ィ全 体 が 参 加 す る 機 会 を 提 供 す る 。 そ れ ゆ え 、 本 や 映 画 の よ う な 固 定 化 さ れ た メ デ ィ ア と は 異 な り、 そ れ は 歴 史 的 な 時 間 の な か に 文 化 を 冷 凍 保 存 す る こ と は な い 。 カ ル チ ャ ー ・マ ッ ピ ン グ は 、 人 々 の 空 間 認 識 を 表 現 す る た め の 方 法 と な り、 先 住 民 の 資 源 管 理 に 関 す る 問 題 意 識 を 共 有 し 、 有 形 ・無 形 の 先 住 民 の 文 化 遺 産 を 保 護 す る た め の な く て は な ら な い 道 具 で あ る 。 こ の よ う な 文 化 遺 産 プ ロ ジ ェ ク トは 、TKECの 創 造 の 過 程 と そ の 分 配 を コ ン ト ロ ー ル す る こ と を 可 能 に す る 。 三 脚 を 使 っ て い れ ば 「DVDの 映 像 の 質 が 向 上 し て い た 」に 違 い な い と い う ヘ ネ シ ー の 意 見[HENNESSY2009:91]に も 一 理 あ る が 、 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク ト は 、 伝 統 的 な 形 態 や 象 徴 を 保 護 す る 社 会 的 介 入 を そ の 場 所 で 行 い た い と い う 要 求 に 応 え る た め に 、 新 た な 方 法 論 が 創 造 さ れ う る と い う こ と を 示 し て い る 。 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク ト は 、 人 類 学 者 が テ レ ビ ク ル ー の 相 談 役 と な り、 外 国 人 に エ キ ゾ チ ッ ク な 文 化 を 伝 え た

り、 魅 惑 的 な 民 族 誌 的 映 像 で 共 感 を 呼 ぶ た ぐ い の 社 会 的 介 入 を 意 図 し た 『デ ィ ス ア ピ ア リ ン グ ・ワ ー ル ド』 の よ う な ド キ ュ メ ン タ リ ー で は な い[BANKSandMORP且Y

l997コ 。 こ の プ ロ ジ ェ ク ト は 、 ス イ ・ジ ェ ネ リ ス な 方 法 で の 保 護 を 進 め な が ら、 サ ワ ウ の 文 化 的 遺 産 を 凝 集 さ せ る こ と を 目 的 と し て い る 。 ドキ ュ メ ン タ リ ー で は な く 、 単

         

な る断 片 的 な記 録 の集 合 体 で あ るサ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トは、サ ワ ウ の 人 々 の遺 跡 、物 語 、 共 有 され た記 憶 に 関す る 目録 をつ く りだす 。 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トは 、土 着 の ア ジ ェ ン ダ に耳 を傾 け、 ロ ー カ ル に主 導 権 を ゆ だ ね、 記 録 さ れ た無 形 文 化 遺 産 が ダ イ ナ ミ ッ クで メ タ文 化 的 な性 質 を持 つ こ とを可 能 にす る。 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トは応 用 的 な 映 像 人 類 学 と法 人 類 学 のか け橋 で あ り、そ の 場 所 で の 社 会 的 介 入 の 一 つ の か た ちで あ り、

無 形 文 化 財 の 前 向 き な保 護 を 目指 した ス イ ・ジ ェ ネ リス な ア プ ロ ー チ で あ り、調 査 研 究 の 能 力 、 教 育 的 な映 像 の方 法 論 、 フ ィ ジ ー の コ ミュ ニ テ ィ 間 の紐 帯 な らび に組 織 的 な協 同 を支 援 す る再 帰 的 な道 具 で あ る[PIGLIASCO2007を 見 よ]。

カル チ ャー ・マ ッ ピ ング事 業 に 関 わ る現 地 の研 究 者 チ ー ム を支 援 し、 観 察 した私 自 身 の 経 験 に よれ ば、 か れ らは 自 らと 自 らの文 化 との適 切 な知 的 ・感 情 的距 離 を保 つ の に苦 労 す る よ うだ[CLIFFORD1997;OHNUKI‑TIERNEY1984を 見 よ]。 「内部 」 の 研 究 者 は、 「外 部 」 の研 究 者 と同 じ く らい 倫 理 的 で 、礼 儀 を わ き まえ 、 自省 的 で、 批 判 的 で な けれ ば な ら ない 。 内部 の 者 の失 敗 は、 外 部 の者 の そ れ よ り も言 い訳 が 通 りに

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56 無 形 文 化 財 、 有 形 の デ ー タ ベ ー ス 、 目 に 見 え る 議 論

くい か も し れ な い[TUHIWAI‑SMITH1999を 見 よ]。 「い まや 様 々 な か た ち で の 協 同 が不 可 欠 で あ る 」[LASSITER2005:74]。 西 洋 的 な生 活 をす る首 長 家 族 の 二 人 が 私 と一緒 に プ ロ ジ ェ ク トを支 え 、 サ ワ ウの 最 高 位 首 長 か ら支 持 され 、 フ ィ ジー 言 語 文 化 研 究所 か ら支援 を受 け て は い た が 、 サ ワ ウの メ ンバ ー の 熱 狂 的 な反 応 を 目の 当 た りに す る と、 サ ワウ ・プ ロ ジ ェク トは ヘ ゲ モ ニ ー を握 る支 配 的 エ リー トだ け に よ る もの で は な い こ とが わ か る 。 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トは 首 長 を神 格 化 す る もの で は な く、 デ ジ

タル技 術 を利 用 して伝 統 文化 を称揚 す るプ ロ ジ ェ ク トで あ る。

サ ワウ の 人 々 に とっ て 、 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トに収 録 され て い る写 真 は、 法 的 な道 具 以 上 の 意 味 を示 す 。 そ れ らは、 時 間 の 経 過 に対 す る意 識 や 、 祖 先 か ら う け る影 響 、 新 た な 自己 意 識 に命 を吹 き込 む 。 参 加 者 た ち は、 自 らの 社 会 の 語 りと美 的 な ドラマ の 観 客 とな っ た 。 か れ らの ほ とん どは 、 「ナバ ホ ・ス タ.イル」の ように撮影す る側 になっ た り、 カ ル チ ャー ・マ ッ ピ ング の 過 程 に加 わ った りす る こ と は ない 。 しか し、 出来 上 が っ たDVDを 見 て い る 問、 社 会 的 ア ク ター だ った 人 々 は、 自 らの 文化 の根 本 的 な思 想 や コー ドに つ い て 関 心 を高 め る こ とで 、エ ー ジ ェ ン トとな る[GEERTZl973]。 フ ィ

ジ ー の 人 々 は社 会 的 な抑 圧 に 苛 まれ て い な い た め 、 この プ ロ ジ ェ ク トは社 会 革 命 で も な い 。 そ の代 わ り、 サ ワウ ・プ ロ ジ ェ ク トは 、 外 的 な圧 力 メ ソ ジス ト派 や ペ ンテ コス テ 派教 会 、観 光 産 業 な どの 主 な る ヘ ゲ モ ニ ッ ク な力 で 、 変 化 と歪 曲の エ ー ジ ェ ン トー へ の応 答 で あ る 。 サ ワ ウ ・プ ロ ジ ェ ク トは 継 続 的 な プ ロ ジ ェ ク トと して 企 図 さ れ て い る た め 、 時 間 だ け が そ の 結 果 に関 す る最 終 的 な結 論 を教 えて くれ る だ ろ う。

しか し、 私 が 考 え る もっ と必 要 で 大 切 な こ とは 、 トラ ブル 続 きの フ ィ ジー の 過 去 と 現 在 とい う観 点 か ら、 エ ー ジ ェ ン シー 、 ア ー キ テ クチ ャー 、 伝 統 知 識 や 文 化 的 表 現 と

     

関 連 す る法 概 念 に つ い て の 三 つ 層 の フ ロ ー の 影 響 を注 視 す る こ と で あ る 。2006年12 月5日 の 出 来事 は 、 フ ィ ジー で は慣 習 法 や 首 長 の 権 威 の 求 心 力 な ど と と も に法 の 支 配 が危 機 に 瀕 して い る か 、 も し くは 崩壊 して し ま った こ と を示 して い る。 デ ジ タ ル な時 代 で あ る現 代 の フ ィジ ー で は 首 長 や そ の 関 係 者 へ の 負 担 はか つ て ない ほ ど重 くの しか か っ て い る。2006年12月 に起 きた フ ィジ ー で4度 目の ク ー デ タ ー は 、 単 に政 治 的 権 力 や 経 済 的 な 力 をめ ぐる 出 来 事 で は な い 。 む し ろそ れ は、 太 平 洋 や 世 界 中の 他 の 紛 争 と同様 に 、 過去 に 関 す る 見解 の 相 違 に起 源 を持 つ 変 革 の 過 程 で あ り、 そ こで は、 新 た な民 主 主 義 的 、憲 法 的 な必 要 性 と照 ら し合 わせ て 、ロ ー カ ル な ア ク ター が 自 らの伝 統 、 ア イ デ ンテ ィテ ィ、 遺 産 をめ ぐる 考 え 方 に 関 して 妥 協 と交 渉 を迫 られ て い る。

フ ィ ジ ー の初 代 総 督 で あ る ア ー サ ー ・ゴ ー ドン卿 に と っ て の 喫 緊 の 課 題 は、 「原 住 民 の 法 と慣 習 を どの程 度 、 そ して どの よ うに 有 効 な ま ま残 し、 イギ リス の 法 を どの 程 度 導 入 した ら よい の か 」[GORDONquotedinRILES2003:193]と い う もの だ った と ライ ル ズ は述 べ て い る 。 ゴー ドンの 言 葉 に よれ ば 、 コモ ン ロー が 「首 長 の 地 位 をお と しめ 、 無 能 に して しま う」[GORDONquotedinRILES2003:194]危 険 が あ る と い う こ とだ 。 著作 権 法 とス イ ・ジ ェネ リス な 法 律 と に よ って 構 成 され る フ ィ ジー で 提

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