財産法コース「総括」
その他のタイトル Challenges facing Vietnam for the
Establishment and Effective Fuctioning of its Intellectual Property System
著者 辰巳 直彦
雑誌名 關西大學法學論集
巻 62
号 1
ページ 62‑91
発行年 2012‑05‑31
URL http://hdl.handle.net/10112/7594
‑JICA ベトナム知的財産法コース「総括」
→ 言— 目 次
1. はじめに一ーベトナムの現在の経済的課題 2. 知的財産法制度の意義,その整備と運用
2.1. 主たる知的財産法の意義と位置づけ (1) 特許法・実用新案法
(2) 商標法 (3) 著作権法 (4) 不正競争防止法
2.2. 知的財産法の整備と機能的運用 (1) 一般
(2) 三権 分立確立の必要性
(3) 三権の機関の運用を担う専門家の必要性 (4) 教育の必要性
2.3. 知的財産法制度と格差社会 3. 知的財産法制度と技術移転
3 .1. 各国の経済発展及びそれを超えた視点 3.2. 技術移転と知的財産法制度
4. ベトナムヘの提言—コースの「総括」―
4.1. 総 論
4.2. ベトナムに対する個別示唆・ 提言
辰 巳 直 彦
(1) 経済のグローバライゼーションにおける「多元論的アプローチ」の必要性 (2) ベトナムヘのハイテクの技術移転の期待とその社会的諸条件とのミスマッチ (3) ベトナムにおける市場の透明性確保の必要性
(4) 知的財産専門家の人材育成の必要性 (5) 紛争解決のための司法制度の確立の必要性 (6) 教育の必要性
(7) 伝統的知識及び自給自足的小共同体の保護 5. 最 後 に
‑ 62 ‑ (62)
緒 言
筆者は, 2 0 1 1 年 9 月 1 4 日から始まり, 1 0 月 1 4 日に終了した JICA ベトナ ム知的財産法コースに, 2 0 1 0 年に続き関与することができた 。筆者は, 1 9 9 1 年以来, JICA の発展途上国に対する知的財産法支援として一般財団法人比 較法研究センターが実施する春から夏にかけて 3 ヵ月の 「 国際知的財産権 コース」に 2 0 年間講師等として関与してきたが,その間,それと並行して特 定 国 対 象 の コ ー ス に も 多 々 関 与 す る 機 会 を 得 る こ と が で き た。 今 回 の
「 JICA ベトナム知的財産法コース」は,秋に実施される特定国対象のコー スであり,昨年以来 2 度目である 。 2 0 1 1 年は,ベトナム特許庁の関係者 3 人 , ベトナム最高人民裁判所の関係者]名及びベトナム知的財産研究院関係者 1 名,合計 5名(男性 2名,女性 3名)を日本に迎えて,講義,チュートリア
ルに講師として,また, 1 0 月 1 3 日に大阪大学中之島センターで開催された
コースの仕上げとしてのフォーラムにコメンテーターとして参加し,この
フォーラムでは,昨年に続きコースの「総括」をも担当する 費重な機会を得
た。本稿は,ベトナムにのみならず,発展途上 国に対する知的財産法支援に
筆者が関与する場合における一般的・基本的な姿勢を開陳することを目的と
し,かつ,「 JICA ベトナム知的財産法コース」の 「 まとめ」としてベトナ
ムに対する示唆・提言 を学術研究報告書という形で執筆したものである 。本
稿はベトナム語に翻訳されてベトナム関係者に交付されたものであるが,日
本語で 一般にも公表することが有益であると考えて,一部,手を加えて発表
する次第である 。なお, 筆者の所属する関西大学法科大学院においても,別
途 , JICA ベトナム法支援の 一貰として法科大学院生を毎年エクスターン
シップの 一貰として派遣しており,その意味で 筆者共々,大学の組織を挙げ
ての法支援を通じて,我が国とベトナムとの友好関係を維持•発展に 貢献す
ることができることを光栄に思う次第である 。 なお,筆者の関与する JICA
知的財産法コースに当たっては,その理念につき,多大なご指導を頂いた大
阪大学名誉教授である 江 口順一先生に感謝の意を表したい。
1 . は じ め に ベトナムの現在の経済的課題
ベトナムは, 1 9 8 6 年 1 2 月のベトナム共産党第 6 回大会で,社会主義に市場経 済システムを取り入れるという「刷新政策」,いわゆる「ドイモイ政策」が採 択され,中国における改革開放政策と同様に市場経済路線へと転換し, 2 0 1 1 年 には,それから丁度四半世紀が経つ 。その間, ODA (政府開発援助)と外国 投資,さらには現在の新輿国の経済発展がベトナムの経済を牽引してきたとも いわれ, ここ 1 0 年の国内総生産 (GDP) の成長率も, 5 %~8.5% と比較的安 定した成長が続いており, 2 0 0 7 年 1 月には WTO に加盟している 。ただ,そ の経済規模は IMF によると, 2 0 0 9 年の GDP は 9 3 1 億米ドル ( 2 0 1 0 年は 1 0 3 5 億米ドル
1)外務省によれば約 1 0 1 5 億米ドル
2))であり,日本では長野県と
ほぼ同じ程度であるとされている
3)。また,現在,労働力の安価さからいえば 先進国企業にとっては中国に代わりベトナムは注目すべき進出国とされている
ものの,その経済発展には行き詰まりも見え始めているともいわれ,持続的な 経済発展のための政策決定が必要とされているように見受けられる 。
この点,ベトナムは,かつての日本と同様に「加工貿易基地」として「ドイ モイ政策」以来, 一定の経済発展を遂げてきたものの,
(1)原材料や食料はも とより,ベトナムは裾野産業の集積が遅れているために工業製品の部品,資機 材や梱包材をも輸入に頼っているところがあり,加工貿易により収支を償うた めには輸入にも増して輸出によって,より多く外貨を獲得する必要があるとこ ろ,それが追いつかず慢性的に輸入超過により貿易赤字にあること,
(2)その ためにベトナムの通貨ドンが国際的に安<'さらには,
(3)新典国における原 材料の需要増大により,それらの値が高くなりつつあることが原因でベトナム
1) IMF World Economic and Financial Surveys, World Economic Outlook Data‑ base September 2011 (http:/ /www.imf.org/extemal/pubs/ft/weo/2011/02/weodata/
weoselgr.aspx)
参照。
2)
外務省 ベ トナム社会主義 共和国 某礎データ
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/ area/ vietnam/ data.html)参照 。
3)
内閣府国民経済計算
(http://www.esri.cao.go.jp/jp/ sna/menu.html)参照 。
‑ 64 ‑ (64)
にとっての輸入物価が上昇し,原材料獲得のための対外支出が益々増えるとい う現状にある 。その中でベトナム経済は「貿易赤字」→ 「通貨安」→ 「輸入物 価上昇」の悪循環に陥りつつあるようであり,加えて,対内的には 11% という 高いインフレ率により内需も萎縮しているとも言われる 叫 したがって,これ
らのマイナス要因を克服することが,ベトナムにとっての今後の持続的な経済 成長にとって重要なことであるように思われるが,その中で国として知的財産 政策をどのように位置づけ,それを実施していくかは,それが全てではないに しても,今後のベトナムの将来を占う 一面もあるように思われる 。特に筆者が 把握する限りでは,ベトナムにおける「裾野産業」の確立と集積が不十分であ ることがベトナムにとって大きな足かせとなっているように思われ見そこに 焦点を当てた知的財産政策が考えられるべきかと思われる 。そこで,以下,前 半 2.~3. では,総論として,ベトナムのみならず発展途上国 一般にとって,
市場経済化を進める上においての知的財産法の意義と位置づけとを確認し,そ れを一国の社会的システムとして有効に機能させるためにはどのように考える ペきか等を,先進国からの技術移転との関係をも含めて検討した上で,後半 4 . では総括として,筆者のベトナムに対する示唆・提言 という形で個別 7 点 にわたる事項について述べ,最後 5 . では発展途上国法支援を通じて筆者が日 本の将来について抱く社会ビジョンについての視座を締めくくりとして提示し たいと考える。
2 . 知的財産法制度の意義,その整備と運用
2 . 1 . 主たる知的財産法の意義と位置づけ
( 1 ) 特許法・実用新案法 特許法は,自由競争の支配する市場経済におい て,客観的に確定できる従来技術に比して差異がある故に競争的価値を有する
4)
日本経済新聞
2011年(平成
23年 )
9月
19日
6面 記 事
『ベ トナム,インフレ重荷 高度成長持続へ正念場」参照 。
5)
前掲・注
(4)記事及び朝日新聞2
011年(平成
23年 )
12月
27日1
0面記事
『ベトナム
多難な成長』参照。
新規な技術に係る発明を保護する法律であるが,今,新たな発明についての特 許権保護の意義について '‑‑'‑‑ではペニシリンの例を挙げたいと思う 。このペ ニシリンは 1 9 2 9 年にイギリスのアレクサンダー・フレミングによって発明され た世界初の抗牛物質であるが,フレミングは,これを広く普及させようとの思 いから特許を取得しなかった。 しかし,フレミングの思いに反して,予測外に その普及には遅々たるものがあった 。その原因は,人々の多大な需要があり,
また,その発明は万人の自由実施が可能であったが,新たな発明について特許 権という独占権の裏付けがないために,市場において競争関係にある医薬品会
社は,いずれも投資に見合う売り上げによる利益獲得の見通しを立てることが できず,ペニシリンの工業化と大量生産を躊躇したことにあると 言われている 。
このように社会にとって有用な新たな発明に係る製品を広く工業化して大量生 産により普及させ,それとともにそのために投資した企業に利潤の獲得可能性 を保障し,かつ,その発明を起点とした市場競争の中で,より上位の技術レベ ルの新たな発明を目指した知的創造を絶えず促しつつ,それに伴って社会にお ける下位から上位のレベルに至る技術の累積と,それによる経済発展を図るた めには,その時々の新たな発明に対して特許権という独占権による保護とその 適切な執行が必要とされるといえる
6)。そして,技術レベルの低い発展途上国 のような社会においては,この下位から上位のレベルに至る小刻みな技術の累 積を図るために,小発明を保護するための特許法の下位法として,実用新案法 を整備執行することもひとつの有効な手段といえよう (もっとも,医薬品に関 していえばエイズ薬の問題に見るように,グローバル化した国際的市場におい て,一社の独占権を認めただけで,その企業があまねく世界の需要,特に貧し い発展途上国の患者にも安価で大量に最新のエイズ薬を提供できない現実が,
その先の問題として存在することは確かであるが,これは別途,考えなければ ならない問題である) 。
(2)
廂標法 次に商標法は,商品等の出所源たる商標を権利保護する制度
6)
拙稿『冒認特許権と移転登録請求』甲南法学
51巻
3号
93頁以下 (95頁 )
,角田政芳
=辰巳直彦
『知的財産法〔第
5版 〕
」有斐閣アルマ
(2010年 )
29頁。‑ 66 ‑ (66)
と 言われるが,これも逆からみれば,市場における自由競争から由来する商品 等の販売による利潤の帰属を保障するという不可欠な要請から制度化されてい ると理解でき,商標保護がそもそも有効に機能しないときには特許権による新 たな発明による利潤獲得可能性さえもが保障されないともいえ,そのために商 標法は,特許法以上に市場形成と整備にとっては基礎的であるといえる 。特に 発展途上国で,市場化とその整備を固る場合においては,商標保護は,特許法 による発明保護に比して執行の容易な制度であるが故に優先的な力点が置かれ るべきものと考えられる 。
(
3
)著作権法 さらに著作権法のもとでの著作権による著作物保護につい
ては,これも産業と無関係に形成• 発展してきたものではなく,歴史的に,特 に書籍出版を支えるものとして出現してきたことは,既に多くの研究者におい て論証済みである 。そして著作物についても,やはり個性を媒介とした多様性 の中における差異が,需用者の嗜好に応えるものとして経済的な競争的価値を 有するが故に,市場での競争手段として機能し得るよう権利保護が図られてい ると考えられる 。意匠法による意匠の保護も,そういう一面があるといえよう が,意匠法による意匠の保護は客観的に確定できる従来の意匠に比して差異が ある故に競争的価値を有する新規な意匠について権利保護を図る点で,むしろ 特許法と共通するといえる 。他方,著作権法は,著作者の人たる個性に着目し た差異に経済的な競争的価値を認めるものであるだけに,個性に関わる人格的 利益についても無視できない所があり,そこで TRIPs 協定では除外されてい るが,一般に著作権法において著作者人格権という人格権が認められ,著作物 についての著作者の人格的利益の保護が図られているのが国際的な趨勢であり,
ベルヌ条約上の義務ともなっていると考えられる 。
(
4
)不正競争防止法 これらに対して不正競争防止法であるが,市場にお
ける競争は公正であることが,市場との結びつきにおける創造力の基盤を確保
し,かつ,事業者からの商品やサービスを受ける消費者の利益にも不可欠であ
る。 このとき事業者が自ら独自の努力による成果により競争すること,すなわ
ち成果主義に基づく成果競争であるべきであるというのが公正な競争の理念で
あり,これを歪曲する市場での行為が不正な競争といえる 叫 そして,こうし た不正な競争を市場の関与者のイニシャティブにおいて禁圧し,公正な競争を 最低限確保するための法律が不正競争防止法であ るといえる 。ただ,こうした
視点から見ると,特許法等の個別の知的財産法制度も,個別の客体である知的 成果を保護することにより成果競争を実現し,これを妨げる競争行為を成果競 争を歪曲するものとして権利者に禁止することを認めるものであることから,
個別の知的財産法による知的財産の保護は,より一般的な不正競争の禁圧によ る公正な競争秩序の実現とは共通の基盤がある 。むしろ,より 一般的に「不正 な競争を許さない」とする社会の規範的意識の確立があってこそ,その社会に おいて個々の知的財産法による知的財産の保護は意味があり,より実効性を有 するものといえる 。知的財産法に関する古くからの国際条約である工業所有権 の保護に関するパリ条約 1 0 条の 2 で同盟国は不正な競争を禁圧し国民を保護す ることを要請している点は,こうした視点において捉えなければならないと考 えられる 見
2 . 2 . 知的財産法の整備と機能的運用
( 1 ) 一般 知的財産法は,近代国家として主権を有する独立した 一国の法 律制度として整備される必要がある。知的財産法の国際的保護を目的とするパ リ条約やベルヌ条約においても,「属地主義の原則」や各国毎の「権利の独立 性の原則」を前提にしているが,それはこうした近代国家を前提にしているか
7)不正競争行為の類型としては,① 他の 事 業者の成果を冒用し,または成果発揮 を阻害する行為,② 各事業者が自らの成果につき需要者が的確に判断できるよう に真実で的確な情報を提供すべきなのに,それに違反して虚偽または誤認を招くよ うな情報を提供する真実主義違反行為,③ 需 要者が事業者から提供されだ情報に 基づき成果の提供を受けるかを自由意思により決定することを阻害する行為,さら には,④ 事業者間に成果発揮において対等な競争条件が法令等により定められて いるところ,それに違反する行為等が,広く「不正競争」に該当し得るといえる 。
角田=辰巳•前掲注 (6)262頁 , 拙 稿 ・ 前 掲 注
(6)98頁。 もちろん,単 一 の法律に よって全ての不正競争行為の禁圧を図る必要性はないが,それでも不正競争防止法 が中核的役割を果たすべきものと言えよう 。
8)
角田=辰巳・前掲注
(6)262頁,拙稿・前掲注
(6)98頁。
‑ 68 ‑ (68)
らである 。特に無体物で,そのものとしては誰でもが自由に利用でき,有体物 とは違って 一人の利用が他人の利用を排除するものではない知的財産に対し,
人為的に独占権を設定して保護するに当たっては,このことはより一層妥当す る。 しかも知的財産の権利保護を図り,自由競争の支配する市場での即物的 な商品交換に関わる競争的財産として有効に機能させるためには,恣意の入る 余地のある「人治」は不適切であり,客観的な法の支配する「法治主義」のも
とでの法律制度として確立・整備される必要がある。
そのためには, 一般に 一国の法に基づく「統治」(ガバナンス)の確立と,
それに基づく社会システム作りが不可欠である 。そして,この 一国の統治は,
遍く社会の隅々に至 るまでをカバーできるものでなければならず, しかも,多 くの国民の声を反映した「開かれた」(オープン)ものとして,社会や市場の 実態と,統治やそのための社会システムとの間の乖離はできるだけ避けられな
ければならない 。
(2)
三権分立確立の必要性 こうした統治の確立を前提として,知的財産 法を客観的な法の支配する「法治主義」のもとでの法律制度として確立・整備 するに当たっては,当然のことながら,① 法律を制定する立法機関がなけれ ばならないとともに,② 権利付与を法律に従い行う特許庁のような行政機関,
さ ら に は ③ 知的財産権は基本的には「私権」であるので権利侵害が生じた場 合には,権利者と侵害者との当 事者間の問題として,その間の紛争解決につい ては,究極的には法律に従い独立 ・公平な裁判所の裁判官の判決によって図る 司法制度という「三権分立」を確立し,それらの間において関係事項について の適切で機能的な権限配分と相互牽制を図る必要がある 。それが法律制度, と
りわけ知的財産法制度につき国民の{言 頼とともに,国際的な信頼を得るために は必要不可欠である 。
特に発展途上国において,知的財産権侵害 に対して行政的な処置に依存する
割合が多く,また,当該国に進出している先進国企業も行政に頼り,行政に期
待する声も多々聞かれるところである 。 しかし長期的には,知的財産権侵害に
対しては権利が「私権」であることに鑑みれば,そうした紛争は究極的には独
立・公平な司法裁判所での解決が望ましいし,発展途上国に進出している先進 国企業の行政頼みという現象も,司法が機能しない実情において短期的には致 し方ないとしても,それは現状においては権利者が先進国企業であり,侵害者 は当該国の現地企業や事業者という明確なシナリオのもとでのことに過ぎない 。
しかし,長期的には当該国の経済発展とともに現地企業が権利者という立場で,
先進国企業が侵害者とされる場合も生じ得ることであろう 。そのときには,や はり先進国企業としても同じく侵害が否かを判断してもらう必要があり,か つ,機能する独立・公平な裁判所制度=司法が確立されていれば,行政よりは 司法での解決を望むであろう。その意味で,こうした中長期的で効率的な国家
機関の権限の配分と運用という観点から,機能する司法制度の確立と,そのた めの努力が発展途上国においては必要であるし,また,そこに進出する先進国 企業としても,目先の侵害対策というだけではなく,このような観点から,発 展途上国に対して提言をしていくという発想と姿勢を持つことが望まれる 。た だ , もちろん知的財産権は基本的には「私権」であるので権利侵害が生じた場 合には,権利者と侵害者との当事者間の問題として,その間の紛争解決につい
ては当事者の意思に沿って,裁判所外での仲裁や調停等の「代替的紛争解決手 段 」 (ADR) の確立も促進されてよいであろう 。
( 3 ) 三権の機関の運用を担う専門家の必要性 以上のように 三権分立を確 立 し,そのための国の機関やシステムを整備する場合において, 当然,そうし た機関やシステムが適切に機能するためには,それを運用する人材が同時に必 要とされることは言うまでもない。とりわけ知的財産法の分野においては,立
法機関による適切な法律が制定されたとしても行政機関としての特許庁等に おいて出願を受理し,その審査をして権利付与をなす専門の審査官等の「行政 官」が必要であるし,司法機関としての裁判所においては法律に従い独立・公 平に判決を下すことにより紛争解決を図ることのできるそれ相応の「裁判官」
が存在しなければならない 。発展途上国においては,これらの公的な機関の運 用を担う公務員については汚職・腐敗を耳にすることが多いが,こうした現象 は,これらの機関やシステムの運用を歪め,透明性を損なうことにもつながり,
‑ 70 ‑ (70)
究極的に国民はもとより,国際的な信頼性を失うことにもなり,徹底的に排除 されるべきである 。そして法律に従った独立・公平な司法はもちろんであるが,
同時にやはり法律に従った公平な行政が一国において貫徹される必要があり,
このことは,まさに適切な統治のためには不可欠といえよう 。
また,知的財産法の分野においては,公的機関そのものの運用を担う公務員 以外にも,知的財産の民間における専門家として,国民や産業のニーズを遍<
カバーでき,主として国民の創造する知的財産について助言し,また,特許庁 に対して出願等し,権利化を図るそれ相応の数の「弁理士」も必要となるであ ろう 。我が国の近代化の過程においては,知的財産の権利保護に関しては 1 8 9 9 年に,最初の特許法等制定と同年におけるパリ条約への加盟とともに弁理士制 度がスタートし
9)'それ以来,民間のニーズを汲み取る上において果たした役 割には大きいものがある。また権利侵害が生じた場合には,ときには弁理士と
ともに,裁判所による法律に従った紛争解決に関与すべく司法の場で当事者を 代理して訴訟活動をするそれ相応の数の「弁護士」の存在も社会的に不可欠と
いえよう 。
(4)
教育の必要性 ところで,知的財産法の分野において教育も無視する ことはできない 。特に知的財産法は,技術に係る側面があるとともに,そもそ もが法律分野であることから,その双方を見据えた教育制度の確立が必要であ るし,教育そのものが国民の知識とその活用を目的としており,国民の知的創 造にも大いに関わる側面を有している点において知的財産法制度が有効に機能 するための重要な前提といえる。しかも,こうした教育も, 一方では
(a)上記
(3)
での「専門家育成教育」とともに,他方では
(b)「国民一般に対する教育」
9) 当初は,「弁理士」ではなく 「
特 許 申 請 代 理 業 者」 と呼ばれ,
1899年の特許法制
定 と と も に 「 特 許 代 理 業 者 登 録 規 則 」 が 制 定 公 布 さ れ , こ れ に よ り , 年 末 ま で に
138名 が 代 理 業 者 と し て 登 録 さ れ た と 言 わ れ て い る 。
1909年(明治4
2年)制定の
旧々特許法
16条
1項によって,特許局への手続等は「特許弁理 士 」 でなければ行え
ない旨が規定されて,「特許代理業者」の名称が「特許弁理士」に改称された。 ま
た ,
1921(大正10年)制定の旧特許法とともに「弁理士法」が制定公布され,これまでの「特許弁理士」が「弁理士 」 と改められて現在にまで至っている 。
という 2 面において重要視されなければならない 。
まず, ( a ) の「専門家育成教育」については,技術という側面では理工系教育 があるが,日本では明治期の近代化以来,「物作り」の技術を学ぶ「工学教育」
が重視され,現在でも大学での「工学部」(その上の大学院)や「工業高等学 校」が,重要な役割を担っている 。特に行政官庁 としての特許庁における審査 官はもとより,民間での事務所や企業の知的財産部で活躍する弁理士の大多数 は,大学の「工学部」や,その上の「大学院」の出身者で占め,これらの専門 家育成の基盤がこうした教育制度にあるといえる 。また,我が国の「工学部」
や「工業高等学校」は,そこを卒業修了した者は審査官や弁理士のような専門 家とならなくても,民間の企業に就職することが前提とされているために,そ の課程を終えた者は企業に入って技術研究開発に従事することになり,こうし て我が国は,「大学での専門技術の民間企業への移転」が図られるような社会 システムを伝統的に構築してきたと言える 。 この点は,発展途上国が教育制度 を構築する上においては,大いに参考になるもののように思われる 。また,弁 護士や裁判官などを育成する「法学教育」について我が国においては,明治期 の近代法制定の過程で,主要な国立及び私立の大学が「法学教育」を担うため に設立された経緯がある 。
他方, ( b
)の「国民一般に対する教育」であるが,これは一国の知的財産法制 度を,その国民のために機能させるためには最も重視されなければならないこ とであると考える。日本の場合, 日本国憲法2 6 条 2 項において,国民は法律の 定めるところにより子女に普通教育を受けさせる義務があると定めて,「義務 教育」を憲法上規定し,これを無償としている 。そもそも我が国では,明治の 近代化の過程で義務教育の重要性が早くから意識され, 1 8 7 2 年公布の学制によ り,義務教育推進運動が始まり,当初は授業料徴収があったためになかなか効 果を上げなかったものの, 1 9 0 0 年には尋常小学校の授業料を無料とした結果,
1 9 1 5 年には通学率が 90% を超えるなど,学齢期の国民の就学が普遍化し,これ が現在にまで至っている 。 また,明治時代から昭和時代前期における義務教育 の範囲は実質的に初等教育 ( 尋常小学校から後,戦時期には国民学校に改組)
‑ 72 ‑ (72)
のみであり,その当初の修学年限も 4 年だったものの, 1 9 0 7 年には 6 年となり,
戦後の学校教育法のもとでは,小学校 6 年と中学校 3 年の合計 9 年が義務教育 の修学年限となっている 。
この中で,我が国においては,現在では下は小学校から,上は大学や大学院 に至るまで「知的財産教育」が導入され,国民の知的財産に対する啓発と意識 強化が各方面の協力のもと 例えば小学校では,弁理士会の協力のもとに弁 理士による人形劇が上演される等~ 相当の数の国 立・私立の学部や大学院,さらには裁判官,検察官及び弁護士等の専門法曹育 成を図るために 2004 年に始まった法科大学院においても「知的財産法」の講義 科目があり,専門法曹となるための国家試験である司法試験においても,「知 的財産法」が選択科目とされている。加えて最近では知的財産専門職大学院が,
我が国のいくつかの大学で創設されている 。
このように我が国では,「国民一般に対する教育」については,歴史的にそ
の制度整備が図られてきたとともに,現在では,特に「知的財産教育」が初等
教育の段階から導入されているのを見る。ただ,「知的財産教育」の理念的前
提として重要なことは,こうした「国民一般に対する教育」において,国民一
般の知的創造を促し,自分の作り上げたものについて創造の喜びと誇りを持つ
ことができ,そして 一国の社会においてその積み上げを図り,より高度なもの
につなげて行く国民の意識と姿勢を促す教育が重要ではないかと考える 。それ
は「知的創造教育」ともいえ,考え方によっては,まだ言葉のしゃべれない赤
ん坊が真剣な顔つきで一生懸命に積木をし,できあがったものが大人の目から
は大したものとは見えないものであっても,「よくやったね」と,父親,母親
その他保育士が手を叩き褒めるのに対して,赤ん坊が微笑みを返すようなとこ
ろから早くも始まるとも考えられる。そうだとすると,そうした環境整備等も
忘れてはならないし,こうした「知的創造教育」を前提とした「知的財産教
育」の結果として,たとえ主婦の発明のような小さな発明であっても,それが
社会的に多く生み出されて権利保護され,そしてそれが国民の需要を広く満た
すようなものであれば,大きな経済的な力となり得ることが想起されるべきで
あるし,それを通じて社会における技術や知的財産の裾野を広げ,その上に末 長く技術や知的財産を積み重ねを図っていくという意識や姿勢を社会や国民一
般が持つことが,一国の持続的な経済発展にとって大変重要でないかと考える 。 この最後の点は,我が国のみならず,発展途上国においてはより 一層 妥当する と思われる 。
2 . 3 . 知的財産法制度と格差社会
一定以上の経済水準にある発展途上国においては,国民の間にかなりの程度
の経済的格差が存在するという現象はよく見られるところである 。最近では,
先進国においても国民の間に経済的格差が無視できない程に生じており問題
となっている。我が国においても,次第に,それが現実に懸念される状況にな りつつある 。 ところで, 一国の国民の富裕層と貧困層との間において一定以上 の経済的格差が生じている場合,これは知的財産法制度が適切に機能する上に おいても問題となる 。何故ならば知的財産法制度は,一国の国民の知的創造を 前提とする制度であるが,国民の間において一定以上の経済的格差が生じてい る場合においては,
(1)貧困層に属する人々は,潜在的創造性においては劣る ことはないにしても,経済的余力がないために十分な教育を受けることができ ず,その潜在的創造力を現実の能力とすることができず,また,
(2)貧困層に 属する人々は経済的余力がないために,教育を受け創造力を発揮できる能力が 現実にはあるにしても, 日々の生活に精一杯で,その創造力を発揮する余裕が ないこと等により,知的財産法制度の恩恵を受けることが出来ず,知的財産に 対する法意識が国民の間に育まれている場合であってもそれを保護する知的 財産法制度に対してはシニカルに対応する心情を抱きがちであるといえる 。 さ
らには,
(3)そのような人々は経済的余力がないために,知的財産に関わる製 品について,ともすれば高価な正規品を購入するよりは,むしろ安価な侵害品 を購入するということになりかねず,結局は,知的財産法制度は,そういう状 況においては,適切に機能する根幹を欠いてしまうことになりかねない。知的 財産及びそれを保護する知的財産権というのは,それほど壊れ易く,損なわれ
‑ 74 ‑ (74)
易いもの v u l n e r a b l eなもの なのである 。知的財産というものが,そも そも無体物であり, 一人による利用が,他の利用を排除するものでないという,
その性質自体の故に先進国においても完全に知的財産権侵害を排除することは 難しい中で,一国内の貧富の差や経済格差は侵害を助長するさらなる要因とな りうる 。そのために発展途上国はもとより先進国であっても,知的財産法制度 が適切に機能するためには, 一国の国民の間に 一定以上の経済格差が生じない よう,また,そうした経済的格差が生じている場合には,それが完全に解消さ れなくとも, 一定程度に達しないまでに抑えられるような社会公共的政策が必 要とされる 。 このことは余り議論されることはないが,こと知的財産に関わる 国際的な南北問題は, 一国内においては正に経済的格差の問題となって,その
まま同じことが妥当すると言える 。
3 . 知的財産法制度と技術移転
3 . 1 . 各国の経済発展及びそれを超えた視点
知的財産法制度は,独立した主権のある 一国の経済発展のための 一つの重要 な要因である 。そのためには,これまで述べたような知的財産法制度の意義を 踏まえて, 一国がその法制度を確立・整備し,それを有効に機能させつつ,そ の前提となる他の制度や政策とともに,一国の国民の経済的豊かさ,ひいては 国民の幸福につなげて行くことは重要である 。ただ,他方,現在の経済のグ ローバル化によって,各国又はその企業は相互に競争し,かつ,依存しつつ,
その経済活動を推進していかねばならない 。そのためには,各国又はその企業
は,その地域で特徴を踏まえた経済的独立性を保持しつつ,他方,相手方とな
る関係国の社会やその伝統をも尊重し,「公正」な経済活動や, ときには経済
支援をしていくことが国際社会全体の安定にとっては重要であるし,また,一
国の視点を超えて,ひいては世界の人々が「公平」な富の分配と幸福を獲得で
きるように知恵を出し合う必要性があるという視点も忘れてはならない。 こう
した総体的な視点において知的財産法制度の確立・整備だけでなく,各国の賢
明な社会公共的政策,それをさらに超えた多国間での賢明な国際的公共政策が
必要とされると考えられる 。
3 . 2 . 技術移転と知的財産法制度
こうした中においても,発展途上国としては自国の経済発展のために先進国 からの技術移転に期待するところが大きいことであろう 。そこで,その取り得 る法的形態はともあれ,発展途上国にとっての技術移転の類型とあり方につい て,若干の個人的視点をここで述ぺておくことにする。
(1)
まず,先進国から発展途上国への技術移転の〈第 1 類型〉としては,
「政府開発援助型の技術移転」がある 。 これは先進国政府の ODAに伴う技 術移転であり,例えば新聞報道によると日本政府はベトナムヘの原子力発電所 建設の支援を表明しているとのことであるが,こうしたものがこの類型に該当 しよう
10)。ただ,こうした技術移転で利益を受けるのは,それを請け負う先進 国企業であり,また,それが終われば単発的なものとなって継続性がなく,発 展途上国では,そうした技術を使いこなせない場合には, ともすれば宝の持ち 腐れとなることも考えられる 。 こうした「政府開発援助型」の技術移転で,最 近,問題として指摘されているのは,中国のアフリカ諸国に対する ODA と
して,余剰労働者が派遣されて 工場を建設し,それらの労働者が工場での労働 にまで従事して資源や利益を吸い上げる「入植植民地型」とも 言える技術移転 である 。 こうした技術移転では,現地での雇用創出さえも図られないし,利益 を得るのは支援国とその労働者ばかりであり,アフリカ関係各国での非難が高 まっていると聞く
11)。 しかし,これはアフリカ関係国の為政者による政策なき 技術移転の受け入れ方であって注意する必要がある。
(2)
次に技術移転の〈第
2類型〉としては,「労働カ・資源確保型の技術移 転」というものがある 。 これは先進国企業の発展途上国への進出としては,一
10)
朝日新聞
2011年(平成
23年 )
10月
28日
4面記事『原発輸出
首 相 表 明 ヘ 一31日ベトナムと首脳会談 l 参照。
11)
日本経済新聞
2011年(平成
23年 )
10月
18日
6面記事『アフリカ,中国へ反感拡大
「ひも付き」投資現地潤わず』参照 。
‑ 76 ‑ (76)
番多い例であり,知的財産法制度確立・整備とその執行が不十分でも,それに 勝る安価な労働力や資源があれば,外国からの技術移転と,それによる雇用創 出,労働者による所得の獲得,また,それらを通じて,ある程度の経済発展は 期待できる 。ただ,その反面,市場に魅力がなくなれば外資は撤退するであろ
うし,自国に誇りうる技術等がなければ何も残らないという危険性がある 。そ のために,こうした技術移転を進めるとともに,他方では,政府の政策として 上述した 2 .( 1 ) ‑ ( 4 ) のような自助努力のもとに,自国の地域的特徴を生かした 自らの誇りうる技術分野における蓄積と,それを基礎とした自立した産業育成 を図ることが必要とされるであろう 。
(3)
さらに技術移転の〈第 3類型〉としては,「相互補完型の技術移転」と いうものがある 。先進国間での企業の技術移転が典型であろう 。 しかし,この 類型の技術移転は,ある程度の国民の知識と技術の蓄積が図られた発展途上国,
中でも新興国と先進国との間においても生じているといえる 。 この類型の技術 移転においては,相互の技術を補完しつつ,完成度の高い,また,高度の技術 レベルでの製品生産等が行われうると言える 。ただ,この場合は, もちろん相 当程度に知的財産法制度が確立・整備され,有効に執行させていることのほか,
会社法,労働法等々の周辺領域の適切な法整備と運用がなされていることが前 提条件となろう
12)。
12)
この点,先進国企業の進出が多い中国では労働法の未整備のために我が国のかつ ての「女エ哀史」 のような労働者の悲惨な 労働条件が報告 されるのを聞く
。近時では , イ ン タ ー ネ ッ ト で
CNN.co.jp 2012年
2月
7日 ( 火 )
12時
33分配信, 「 中国 フォ ックスコ ン 従業員 に聞<'ア ップ ル下請 け工場の実態」 という記事 に接した
。これは米ア ップ ルなどハイテク大手の製造を 請 け負う台湾企業 『 フォ ックスコン
( 富 士康 ) 』 の労働環境が米国のメディアで問題にされる中,中国四川省の同社工場 で働く従業員 が
CNNの取材に応じ,日々 の仕事 と 生 活の実態について語 った内容 の記事である
。この記事 のために
CNNの記者は,取材相手の女性に町で出会い,取材に応じたことが分かれば仕 事 を失 うだけでなく刑 事訴 追 されるという不安に配 慮して,身元が分からないようにするという条件て匿名取材に応じてもら ったと の こと 。 そして,当 の女性によれば,「 フォッ クスコンでは女性は男性のように働き,
男性は機械のように働くと言われている
。もっ とは っきり 言 うと,女性は男性のよ
うに働き,男性は動物のように働いている 。 」こう話す女性は毎日が仕事 一色だ /
多くの発展途上国においては,
(1)及び
(2)で述べた技術移転の状況が見られ,
まだまだ
(3)の状況は見られないといえよう 。 しかし,
(2)で述べたような自助努 カのもとに,自国の誇りうる技術の蓄積と,それを基礎とした自立した産業育 成を図りつつ,
(3)のような状況に移行できることが理想的と考えられる。
4 . ベトナムヘの提言—ー コースの「総括」 —---
4 . 1 . 総 論
ここ 20 年程,経済の「グローバルリズム」という考えが大きな流れとなり,
WTOの発足以来,否定のできない潮流を形成してきたと思われる。ただ,そ の中においても「反グローバリズム」という考えも根強くあることも否定でき ないところであり,また,グロバーリズムの考えを受け入れつつ,地域の特性 をも重視する「グローカリズム」という考え方も見受けられるところである。
そして,特に 2008 年末からのリーマンショック以来の但界的経済危機と不況,
さらには最近のヨーロッパにおける通貨危機の中で,これまで支配的であった 経済的なグローバリズムという思想がどのように捉えられ又は捉え直されるの
\と肩を落とし,週の労働時間は6 0時間,貴重な残業代を稼ぐためにさらに何時間も 超過勤務を重ね,ただ,手にする賃金は月に
1300人民元 ( 約
1万
5000円)程度だと いう 。「 あまりに退屈で,もう我慢できない 。仕事から帰るとすぐに寝て,朝起き ると仕事 に行く 。毎日がその繰り返し」
。こうした実態を告発する報道を受けてア ップルは
5日に声明を発表し,「 われわ れは世界のサプライチェーン(部品供給網)におけるすべての労働者に配慮してい る。サプライヤーに対しては安全な労働条件を提供し,労働者には尊厳を持って接 するよう求めている」と弁明したとのこと
。これに対して取材相手の女性は,「そ のような配慮はどこにも見られない 」 と一蹴する 。 フォックスコンの従業 員は厳格 に管理され,工場周辺では武装した警備 員が見張りに立つ 。 シフト勤務で出入りす る労働者は,取材班が近づくと逃げて行った
。取材中に不審な車に後を付けられたこともあった。後になって,チベット自治州の衝突とフォックスコン問題を取材し ていた取材班が国家治安当局に監視されていたことが判明し,メディア統制を強め る中国では,こうしたことが日常茶飯事にな っているとのこと 。取材相手の当の女 性は,「巨額の利益を上げる会社のために何時間も何時間も働き続け,自分には決 して買えない製品を作り続けることは,あまりに代償が大きすぎる」と訴えたよう である 。 こうした労働の実態に進出先進国企業は,その国際的信頼を保つ上におい ても真摯に向き合うべきであろう 。
‑ 78 ‑ (78)
かは注視する必要がある 。
もっとも,経済的なグローバリズムという考え方は,その底流において ,当 座は,基本的には変化はないものと予測される。しかし,これまでの経済のグ ローバル化による地球全体の「平坦な市場化」が, ( a ) かえって南北の経済格 差を拡大させている点や, ( b ) 発展途上国でも,新典国とそうでない国々との 格差が生じつつある点,さらには ( c
)個々の発展途上国のみならず,先進国に おいても国民の貧富や経済格差を拡大させている点も見られ, 2 0 1 1 年末には
「反格差デモ」が各地で展開されたのを見る 。そのため,今後の国際社会経済 のあり方は,各国が共に考えてみなければならない事項であるが,その中で,
発展途上国も先進国との経済格差について南北問題としてその是正を主張する のと同時に国内の貧富の格差,すなわち 富める者はますます富み,貧しい者は ますます困窮するという状況を是正するための公共政策的な検討を忘れてはな らないであろう。
さらに憔界に数多く散在する自給自足的な小部族共同体の中で生活している 人々を市場化の中に引きずり込むことが良いかどうかも検討の余地がある 。そ のような人々は,「貧困」であるかもしれないが,だからといって「不幸」だ
とは必ずしも言えないからである
13)。また,最近においては,国家の尺度とし
13)
世界に散在する自給 自足的小部族共同体のことを考えつつ,私が
20年間
JICA知的財産法支援コースに関 与 し,毎年世界各地からの研修 員 と 一同に接していて
「 富の分配」について思うことがある 。例えば講義等の最中何か食べ物の差し入れ があったとする 。その場合,当然であるが,そのような状況において人間に共通し たひとつの 「 本能的な富の分配法則」があるのに気づく 。 これは古代から存在して いた人々の 自 給 自 足的小部族共同体でも同じではないかと考えている 。その人間の
「 本能的な富の分配法則」というのは,次の
2つのルールからなっているように思 われる 。第ー ルール:「各自誰もが全て,人によ って多少大小があ っ ても,その 一 片に与るべきこと 」
("Everybodyshould have and take his or her own piece")。 第
2ルール:「 各 自が 必 要 と し て い る 以 上 に 取 り 過 ぎ な い こ と 」
("Everybody should not take too much")。 こうして ,そこにある 富が,人々全てに満足のいく
ように配分される 。 しかし,他方,人々が市場に投げ込まれると,そこで支配して
いる分配法則は全く異な っている 。それは「早い者勝ち,早い者が全てを手にす
る 」
("Firstcome, first served, and the first takes all !" )ということである 。 こ/
ての「 GNP 」や「 GDP 」という経済的指標に代わる指標の模索として,アジ アの小国ブータンの前国王が唱えた人々の「幸福」を尺度とする考え方,すな わち「 GNH 」(国民総幸福)もかなりの国際的な支持を受けつつあるように思 われる
14)。 こうした国際状況を踏まえつつ,本稿の最後にベトナムに対して次 の 7 点にわたる示唆と提言 をしたいと考える。ただ,これらの示唆や提言のあ るものにおいては,我が国についても,そのまま妥当するものと考えられる 。
4 . 2 . ベトナム対する個別示唆・ 提言
(1)
経済のグローバライゼーションにおける「多元論的アプローチ」の必要性 経済のグローバライゼーションについては,上述のように,筆者は,その底 流において当座は基本的に変わることはないと予測しているが, しかし,その 中にあっても「多元的アプローチ」が必要ではないかと考えている。筆者は JICA 知財セミナーが始まって以来, 2 0 年間,これに関 与 しているが, この
「多元的アプローチ」が大きな支柱となる理念であり,視点であったと捉えて いる 。すなわち,グロバライゼーションとはいえ,何処も彼処も皆同じで均一
\のギャ ップを私は感じざるを得ない 。本当にどちらが人間らしいのかは深く考えさ せられることをここで敢えて記載しておく 。
14)
大橋照枝『幸福立国ブータン 小さな国際国家の大きな挑戦』参照 。我が国の内 閣府においても国内総 生産 ( GDP) などの経済統計では表せない国民の 「 幸福度」
を測る指標が「幸福度に関する研究会」において模索され,
2011年12月
5日にはそ の試案が,同日から東京都内で始まった「幸福度に関するアジア太平洋コンフ ァレ
ンス」(内閣府,経済協力開発機構など 主 催)で公表された
(http://www5.cao.go.jp/keizai2/koufukudo/pdf/koufukudosian̲sonol.pdf)
。 試 案 は 「 心 の 幸 福 感」 を 基本として 「 経済社会状況」「心身の健康」 「 (家族や社会との) 関係性」の 三つを 指標の大枠として設定。貧困率や育児休暇の取得率のほか,政府への信頼感,放射 線量などへの不安といった主観的な項 目 も採用した。 また家計や企業などが排出す る温室効果ガスなど環境への取り組みも指標としている 。指標数は
132に上るが,内閣府は「幸 福度を 一つの数値で表すことは各分野の特徴を隠してしまう 」 として 統合した単一指標は作らないとされている 。 また, 「 幸福度 」 は,本文で述べたよ うに2
011年11月に現国王夫妻が来日したブータンが国民の豊かさを表す独自の指標
「 国民総幸福 最
(GNH)」を掲げているほかには,フランスも指標の開発を検討し ているとされており,今後の動向が注 目される 。
‑ 80 ‑ (80)
なものとなるのではなく,世界の各地域が,その地域的特性を持ち,独自性と 自立性を有しており,また,そうであってこそ,グローバライゼーションは意 義があるものと 言 える。そうして,こうした前提があって初めて,各国が他の 国々と相互に依存しつつも,対等にやり合っていけるものであると考える 。す なわち,理念的には,世界は経済的側面一つを取ったとしても,一極,二極と いうのではなく,それぞれの国々・地域が「多極」をなして共存をすることこ そが,真の意味でのグロバライゼーションであると考える 。
そして,このような視点から,ベトナムのみならず,その他世界の各国に とっても重要なことは,まず〈第 1 〉として,各国が,その地域的特性,伝統,
文化,国民性等々を考慮に入れて,長期的にどのような社会を目指すのかとい うビジョンを持つ必要があり,そして,その上で〈第 2 〉として,知的財産法 制度をその中でどのように位置づけ,整備するのかを考えるべきであり,さら には,〈第 3 〉としては,その知的財産法制度を,その目指すぺき社会に向け てどのように運用し,活用していくのかを検討していくことが,それぞれの各 国社会において重要であると考える 。特に,これらの点を検討する上において は,各国が,社会,経済,文化,法,そして教育等に関わる諸政策,すなわち 社会公共的政策を併せて検討する必要があろう 。 また,そのためには発展途上 国の国々にあっては,杜会の「統治」,すなわち「ガバナンス」の確立が必要 であるし,そのガバナンスも,筆者の 言葉で 言 えば,広く国民の声や意見を吸 収しながら各国が政策を 立案していくという「オープン・ガバナンス」が重要 ではないかと考える 。
( 2
)ベトナムヘのハイテクの技術移転の期待とその社会的諸条件とのミスマッチ
ベトナムは, 1 9 8 6 年の「ドイモイ政策」の採択以来, 一定の経済成長を遂げ
て来たが,ここに来て行き詰まり感が見られる結果, 2 0 0 7 年 1 月には WTO
に加盟し,国内の知的財産法制度を確立 ・整備することによって,外資とそれ
に伴う先進国のハイテク技術の技術移転を図ることにより,さらなる経済発展
の契機にしようとしているように思われる 。 しかしベトナムの期待と,そこで
の社会的諸条件との間においては, ミスマッチがある 。すなわち,知的財産法 制度の整備とその執行はもとより,知的財産を扱う知識のある労働力の欠如,
その他の周辺法領域としての会社法,労働法等々の整備の課題があるように思 われる 。 また,そもそもベトナムでは裾野産業の集積さえもがあまり見られな いというのでは,先進国からの技術移転に余りにも過大な期待を抱くことは間 違いであるように考える 。
もちろん,ベトナムは,これまでも政府開発援助や外資による技術移転に よって経済発展を遂げてきたことは確かではあるが,それは上記 3 .2 ( 1 ) 及び ( 2 ) の類型の技術移転であるといえよう 。特にベトナムでの労働力の安さと国民の 勤勉性は,先進国企業の評価するところである 。ただ,その中でも,先進国か らの技術移転に依存するだけではなく,また,現状では先進国からのハイテク 技術導入が無理であるとすると,むしろ自国の地域性,伝統文化等を踏まえて,
腰を据えて,自国の誇りある技術を創造していくことが重要ではないかと思わ れる 。 これは,多かれ少なかれ発展途上国のどの国についても同じことが言え ると考えるが,特に長期的視野においてベトナムの国としての経済的自立性を 確保し,ベトナムの企業や事業者が日本やその他の先進諸国の当事者と対等に 技術交渉することができるように図るように努力することが重要である 。実際,
研修コースにおいて,ベトナムには先進国からの技術移転によるイノベーショ ンを図るために,それと「接ぎ木」をなすことのできる「基礎的な自国の誇り うる技術基盤の蓄積」があるのかと問うたところ,何もないという返答があっ た。 もしそうだとすれば,ベトナムは知的財産法整備とその執行を図って外国 技術のみの保護を図り,それだけに依存して経済発展を図ろうとしているとも いえ,それは下手をすると外国による経済支配というベトナムがかつて祇めた 苦境を招くことにもなりかねず,また,そうでなくとも外資にとってベトナム
の市場の魅力がなくなれば撤退するであろうし,その後には何も残らなくなる であろう 。その意味でも ,ベトナムにとっては腰を据えた基礎からの技術的積 み重ねが重要である 。
また,実際,多数の国民がレベルが低いものであろうとも技術を創造し,そ
‑ 8 2
‑ (8 2)
れを積み重ねていくことの重要性は先に説いたところである 。知的創造は 一部 の天才や高度の教育を受けた者だけのものでないのである 。 したがって,ベト ナム社会やその地域特性,伝統文化,さらには国民性にマッチした底辺からの ニーズに即した技術開発を促して技術的裾野を広げ,そしてその上に技術の積 み重ねを図ることによって,それをより高いレベルの技術につなげていくとい う考え方を持つことが大事であると考える 。 このような考え方なくしては,高 いレベルの技術を支える基盤は生まれないし,また,そのためにこそ,知的創 造等のための教育制度が社会的に重要であると考える 。 また,教育によっても 先進国のフリーになった相対的に高度な技術を学ぶことで 一国の社会に導入す
ることができるのであり,そうして学び取った技術を民間に普及させることに よって自国の技術基盤の形成と,その上に立 っての技術的発展に役立てること が出来るという視点も忘れてはならない。
(3)
ベトナムにおける市場の透明性確保の必要性
ベトナム市場においては,あらゆる種類の侵害品が横行しているというのが 現状であると聞く 。 しかし,こうした事態は市場の透明性を掻き乱すもので あって,消費者が価格の安い侵害品を購入できるからといって,これが蔓延す ると,長期的には消費者にとっても,また, 一国の社会における知的創造の点 からいっても決して望ましいことではない。筆者は,こういう市場において侵 害品が横行・蔓延している事態につき,市場を「濁った水の川」に例えること にしている 。 こうした例えからすると,ベトナム市場での侵害品の横行と蔓延 を放置すると,そうした「濁った水の川」の中に消費者を放り込むことになり,
本物を購入しようとする消費者であっても見分けがつかずに侵害品を購入せざ
るを得ないことにもなる 。それとともに,そうした社会においては人々の「知
的創造」さえもが,「濁った水の川」の中にの「魚」のように死に絶えて消滅
することになるであろう 。それは知的財産法が存在していても実効性をもって
執行されていないからであるが,それは取りも直さず,知的財産保護制度が存
在しないのと同じと言え,社会にとって有用な技術に係る新たな発明ひとつを
取っても,それを広く 工業化して大量生産により普及させ,それとともにその ために投資した企業に利潤の獲得可能性を保障し,かつ,その発明を起点とし た市場競争の中で,より上位の技術レベルの新たな発明を目指した知的創造を 絶えず促すという要因が欠落してしまうからである 5 1 ¥
ASEAN では,侵害品取締りは,それを取り締まるからこそ,余計に侵害 が蔓延するというので,売春のように特定地域に限って侵害品の製造販売を認 める特区のようなものを設けてはどうかというような考えも相当に支持がある とも聞く 。 しかし,これは危険な発想であって,それが認められれば特区にお いて侵害品の製造販売が許されるとしても,侵害品は商品として,その境界を 越えて広く 一国の市場に流通して行くことであろうし,ただでさえ,国境での 侵害品対策にも十分対処できない発展途上国においては,折角,整備しつつあ る知的財産法制度とその機能を崩壊させてしまいかねないので,注意が必要で ある 。
こうした市場における侵害品の横行・蔓延の事態に対して,発展途上国にお いては,行政当局による取締りや行政罰等によって対処されるのが現状であろ う 。そして,こうした対処は,現状においてはやむを得ないし,取りあえずは 望ましい方策であるが,それにしても,全ての分野において満遍なく知的財産
権の執行を図って行くことには,国家予算や人材に限度があることもよく耳に するところである 。そうであるにしても,侵害であることが相対的に見極めや すい商標権や著作権分野を優先することによって,最低限の市場の透明性を確 保していく努力は必要であろう 。
また,その他に,長期的視点に立った次のような方策が提案できるのではな いかと考える 。すなわち,〈第 1 〉にベトナムとして,その国民を「賢明な消 費者」として育て上げることが社会政策として考えられる 。知的財産権保護と の関係において「消費者」の役割を説く学説は余り見かけないが,「消費者」
も正規の知的財産製品を購入することによって社会の知的創造に寄与するもの と捉えることができ,そうした観点から,「賢明な消費者」を社会に創出する
1 5 ) 本稿 2 . 1 . ( 1 )「 特許法・実用新案法 」を参照 。
‑ 84 ‑ (84)
ことの重要性を強調しておきたい 。そして〈第 2 〉としては,安価な侵害品で はなく,それと同等のレベルが低くとも消費者のニーズに合った自国企業によ る自国製品の開発と製造販売を促し インドのタタ財閥による安価な自動車 生産が良い例であろう ,それと共に「賢明な消費者」が,そうした自国企 業製品を進んで選択して購入するような状況を作り上げることが,自国企業に よる製品開発と産業育成,さらには内需の拡大,ひいては,それを原因とする 経済発展という観点からも望ましいし ,また,そういう状況があってこそ,市 場の透明性も確保できかつ,知的財産法制度が健全に機能する上で非常に重 要だと思われる 。また,そうなれば侵害品取締りの必要性というものも,自ず と少なくなるであろうし,また,先進国企業にとっても,ベトナムに進出し易 く,ベトナムで足りない技術を補完する技術移転をなす動機づけになるように 思われる。
( 4 ) 知的財産専門家の人材育成の必要性
ベトナムでは,知的財産に対する国民からの相談や知的財産権の侵害か否か の鑑定=アセスメントは行政機関である知的財産研究院が行っている 。そして 鑑定士の国家資格が制定されたが,その資格を有する者は未だ 4 人しかいない ということであった 。 また,民間で弁理士も存在するものの,その数は必ずし も多くはなく,組織だった弁理士会というような団体も存在していない 。いず れにしても,ベトナムとしては,数少ない知的財産専門家に頼るのではなく,
日本のように,民間において国民や企業活動に密接したところで,それらの
ニーズを広範にカバーし,汲み取ることのできるだけの数の弁理士を広く普及
させ,その組織化を図ることの必要性が大きいように思われる 。 日本では,歴
史的に弁理士を国家資格を有する者とするとともに,弁理士が民間企業や弁理
士事務所において活躍することで社会において幅広く知的財産法制度を支えて
きたところがある 。 これは現在においても妥 当する 。 また,そのための人材育
成という点では,技術知識の習得が必要であるために,高等教育制度としての
大学の 工学部や,その上の大学院が ,大きな役割を果たしてきた 。そして,こ
うした高等教育機関における 工学教育は,特許庁での審査官を育成する上にお いても重要な役割を果たしてきたといえる 。
ベトナムにおいても,民間において広く知的財産専門家としての弁理士とい うものを教育制度とタイアップさせて輩出する社会システムを構築することが 望まれるであろう 。
(5)
紛争解決のための司法制度の確立の必要性
ベトナムにおいて知的財産法制度の確立・整備は必要であり,また,それを 運用する知的財産庁等の行政機関がある 。ただ,行政一般については,汚職・
腐敗も多々あるように聞くが,それを徹底的に排除するための方策を検討する ことにより,その手続や執行の透明性を確保することが大事と 言える 。特に贈 賄は,あそこがやっているからこちらもというようになってしまい,社会の統 治という観点からも,それをどこかで断ち切ることが,その崩壊を防ぐために も重要だと思われる 。 この点,知的財産権の侵害品対策として行政機関の果た す役割が現状において大きい発展途上国においては,その信頼性を確保するた めには,取り分け,そうした公務員の地位とモラルの確立の必要性が大きいよ
うに思われる 。
また,紛争解決のための司法制度,すなわち裁判制度がベトナムのみならず 発展途上国一般においては未熟であるように思われる 。それを確立するととも
に,法律に従い,独立・公平な判決を下すことのできる裁判官を育成していく ことが不可欠と思われる 。ただ,これに対して司法が機能しない現状において は,ベトナムヘの進出先進国企業としても,裁判所には頼らずに行政に期待す る点が大きいことは確かであろう 。 しかし先進国企業が進出先の発展途上国と
10年 ,
20年と長い間の付き合いをする中で,進出先国の司法制度に対して長期 的な観点からの積極的な提言ができないことは不幸なことである 。特に日本企 業は進出先に調査団を派遣して,その調査結果は内輪でまとめて対策マニュア
ルを作り,公表することが精々なところがある 。ベ トナムでは知的財産権侵害 に対して行政罰による救済が主流となっており,進出先進国企業としても即効
‑ 86 ‑ (86)