研究論文
21世紀国際貿易港湾発展の研究(十)
田 Y u 育
cheng 誠
tian
アブストラクト
本稿では、21世紀において企業集積の好況・産業経済・貿易港湾の分野で高度成長し ている東南アジアの先進国シンガポールとベトナムの経済発展の概況と主要産業、企業(国 内企業、外資系企業、企業の海外進出)及び海事(海運の成長、港湾の整備、造船の振興)、
とりわけ国際貿易港湾の発展と展望について論述する。
キーワード 新興国、グローバル市場、次世代産業の成長戦略、構造改革、資源貿易、高 度技術産業立国、基幹産業、外資系企業、海外進出、国際工業団地、国際開発センター、
はじめに
「21世紀国際貿易港湾発展の研究」シリーズ論文は十九回に分け発表することとする。
第一回目 21世紀ヨーロッパ国際貿易港湾発展の研究 第二回目 21世紀アメリカ国際貿易港湾発展の研究 第三回目 21世紀カナダ国際貿易港湾発展の研究
第四回目 21世紀オーストラリア国際貿易港湾発展の研究 第五回目 21世紀ロシア国際貿易港湾発展の研究
第六回目 21世紀ブラジル国際貿易港湾発展の研究
第七回目 21世紀アフリカ・ 中東地域・インド国際貿易港湾発展の研究 第八回目 21世紀タイ・マレーシア・インドネシア国際貿易港湾発展の研究 第九回目 21世紀シンガポール国際貿易港湾発展の研究1
第十回目 21世紀シンガポール国際貿易港湾発展の研究2(今号)
21世紀ベトナム国際貿易港湾発展の研究(今号)
第十一回目 21世紀台湾・香港国際貿易港湾発展の研究 第十二回目 21世紀韓国国際貿易港湾発展の研究 第十三回目 21世紀日本国際貿易港湾発展の研究1 第十四回目 21世紀日本国際貿易港湾発展の研究2
第十五回目 21世紀中国上海・寧波国際貿易港湾発展の研究
第十六回目 21世紀中国広州・深圳・北部湾国際貿易港湾発展の研究 第十七回目 21世紀中国青島・連雲港・海西国際貿易港湾発展の研究 第十八回目 21世紀中国天津・唐山国際貿易港湾発展の研究
第十九回目 21世紀中国大連・営口国際貿易港湾発展の研究
Ⅰ. 21世紀シンガポール国際貿易港湾発 展の研究 2
4.シンガポール海事産業の発展
(1)シンガポールの貿易、海運の発展 ①貿易輸出入
a.貿易構造
シンガポールの近年の輸出構造を見ると、
1997年から2000年までは地場輸出が60%、再 輸出が40%という状況であるが、2004年以降 は再び輸出の伸びが大きくなっている。輸入 構造を見ると、鉱物性燃料(石油)は1980年 代には輸入額の30%に迫ったが1990年代には 16%台 に 縮 小 し、1997年 か ら1999年 は10%
以下に低下した。2000年以降は再び拡大し、
2007年には21%、2013年には31%まで増加し た。非石油製品では、2007年、機械・輸送機 器が輸入額の52%を占め、次いで原料別製品、
化学品となっているが、この傾向はその後も持 続している。
シンガポールの貿易相手国・地域を見ると、
従来からアジア諸国のシェアが大きく、1980 年代はおおむね輸出の55%、輸入の67%となっ て い る が、1997年 に は 輸 出 が52%、 輸 入 が 45%となっている。2000年以降は、アジア各 国が1997年の通貨金融危機から立ち直ったこ と、経済成長の著しい中国への輸出が拡大した ことを背景にアジア向け輸出が拡大傾向に転じ ている。対アジア諸国の輸出シェアは2007年 69%、2014年73%であり、アメリカはそれぞ れ7%、5%となっている。また2014年の対ア ジア諸国の輸入シェアは68%であり、アメリカ は10%で、再びアジア諸国のシェアが高まって きている。
2012年、シンガポールの輸出はマレーシア、
台湾、香港、中国、インドネシアの3カ国・2 地域で全体の42%を占め、シンガポール経済
における中国の存在感がますます増大している。
中国は経済発展に伴ってシェアを高め、2010 年に10%台だったものが2013年にはマレーシ アを抜き、2014年には12%に拡大しており、
日本は4%台のシェアである。
2014年、 地 域 別・ 主 要 国 別 輸 出 を 見 る と、①アジア地域は前年比2.0%増の3,824億 S㌦(うち主要国は、中国652億S㌦、マレー シア620億S㌦、香港571億S㌦、インドネシア 485億S㌦、日本212億S㌦、韓国211億S㌦、台 湾204億S㌦である。)、②北アメリカ地域は同 1.9%減の505億S㌦(うちアメリカは288億S㌦
である。)、③EUは同3.9%増の404億S㌦(う ち主要国は、オランダ92億S㌦、ドイツ68億S
㌦、イギリス45億S㌦、フランス40億S㌦であ る。)、④オセアニア地域は同2.1%増の295億S
㌦(うちオーストラリアは196億S㌦である。)、
⑤アフリカ地域は同0.4%減の115億S㌦である。
同年の地域別・主要国別輸入を見ると、①アジ ア地域は対前年比1.2%減の3,157億S㌦(うち 主要国は、中国562億S㌦、マレーシア494億S
㌦、台湾379億S㌦、韓国273億S㌦、日本254 億S㌦、インドネシア237億S㌦である。)、②北 アメリカ地域は同2.9%減の640億S㌦(うちア メリカは477億S㌦である。)、③EUは同3.9%減 の554億S㌦(うち主要国は、ドイツ134億S㌦、
フランス102億S㌦、イギリス78億S㌦、オラ ンダ59億S㌦である。)、④オセアニア地域は同 12.5%増の71億S㌦(うちオーストラリアは59 億S㌦である。)、⑤アフリカ地域は同54.2%増 の39億S㌦である。
b.貿易輸出入
シ ン ガ ポ ー ル の 近 年 の 輸 出 入 を 見 る と、
2011年:輸出4,097億㌦(対前年比16.4%増。
世界13位)、輸入3,659億㌦(同17.7%増。同 14位 )、2012年: 輸 出4,082億 ㌦( 同14位 )、
輸入3,799億㌦(同14位)、2013年:輸出4,102 億㌦、輸入3,730億㌦である。
多国籍企業、海事産業、国際物流センター、クルーズ振興、海上物流、港湾後背地、港 湾拡張、新型港湾、大型国際貿易港、国際港湾ターミナル
2014年、日本からシンガポールへの輸出額 は2兆2,252億円である。主な品目は、①機械 類・輸送用機器(対前年比11.4%増の1兆308 億円、構成比46.3%)、②鉱物性燃料(同6.6%
増の3,203億円、構成比14.4%)、③化学製品
( 同16.9%増 の1,647億 円、 同7.4%)、 ④ 鉄 鋼
(同14.2%減の754億円、同3.4%)、⑤非鉄金属
(同23.2%増の448億円、同2.0%)である。同 年、日本のシンガポールからの輸入額は8,339 億円である。主な品目は、①機械類・輸送用 機器(対前年比11.5%増の2,783億円、構成比 33.4%)、②化学製品(同2.9%増の1,962億円、
同23.5%)、③コーヒー・茶・ココア・香辛料 類(同27.9%増の248億円、同3.0%)、④石油・
石油製品(同90.4%増の198億円、同2.4%)⑤ 非鉄金属(同7.5%増の43億円、同0.5%)である。
2014年、シンガポールの主要な貿易相手国・
地域を見ると、①東南アジア地域26.2%(うち 主要国はマレーシア11.3%、インドネシア7.4%
である。)、②北東アジア地域34.3%(うち主 要国は中国12.4%、香港6.2%、日本4.8%であ る。)、③ヨーロッパ地域9.6%、④アメリカ地 域8.8%である㉔。
2016年シンガポールと日本の貿易(輸出入)
総額は29,656億円、日本の貿易相手国12位。
2015年シンガポールの貿易(輸出入)総額 は輸出3,466.38億㌦、輸入2,967.45億㌦世界 15位。1位中国輸出2.2845兆㌦、輸入1.6808 兆㌦。2位米国輸出1.5046兆㌦、輸入2.3080 兆㌦。3位ドイツ輸出1.3264兆㌦、輸入1.0518 兆㌦。4位日本輸出0.6248兆㌦、輸入0.6483 兆㌦。
②海運発展
マレー半島の先端に位置しマラッカ海峡の出入 口であり太平洋とインド洋に面するシンガポー ルはアジア、ヨーロッパ航路の要衝地で、発達 した製油工業と比較的廉価な価格という有利な 条件を活かしている。2006年、2万7,000隻が 給油し、一隻当たりの平均給油量は1,047㌧で ある。船舶燃料の対石油比重は1999年15.2%、
2002年16.7%、2004年18.2%、2006年18.6%
と増加している㉕。
便宜置籍船数はパナマ、リベリア、ギリシャ、
香港、マーシャル諸島、バハマに次ぐ世界7位 である。近年の船舶大型化によりシンガポール の便宜置籍船数は、1998年の3,412隻が2006 年には3,249隻と4.8%減少している。しかしな がら、船舶総㌧数は2,220万5,000㌧が63.8%
増の3,479万3,000㌧、1隻当たりの平均㌧数 は6,455㌧が65.9%増の1万709㌧となっている。
2006年、世界の商船総量9億3,636万DWT のうちシンガポールは2,227万DWT(世界10 位、世界シェア2.4%)、タンカー総量3億8,751 万DWTのうち同1,426万DWT(同7位、同シェ ア3.7%)、バルカー船総量3億4,126万DWTの うち同395万DWT(同14位、同シェア1.2%)、
一 般 貨 物 船 総 量9,300万DWTの う ち 同95万 DWT(同21位、同シェア1.0%)、コンテナー 船 総 量1億1,164万DWTの う ち 同329万DWT
(同9位、同シェア2.9%)である。シンガポー ルの保有商船数は、2010年4,487万㌧(世界6 位)、2012年6,032万㌧(同5位)である。
2007年、シンガポールには世界の主要海運 会 社 の う ち、APL、World-Wide―Shipping の2社がある。APLはコンテナ取扱量は400万 TEU、世界シェア3.4%で世界1位である。
シンガポールは物流のハブ、中継貿易の拠点 である。石油メジャー、資源大手、トレーダー など資源、エネルギー分野の主要企業が集結し、
情報と輸送ニーズを求めて海運企業も相次いで 現地法人を設立している。1990年代以降の東 南アジアの物流増大を追い風にロンドンに並ぶ 世界の海運センターとして存在感を高めている。
経済成長にドライブがかかったのは1990年代、
ASEANの自由貿易協定(FTA)締結が契機で ある。東南アジア域内の物流拡大を背景にコン テナ輸送のハブ拠点としてだけでなく、資源エ ネルギー分野でも石油企業やトレーダー、ドラ イバルク船社、タンカー船社の拠点開発が加速 している㉖。
シ ン ガ ポ ー ル は ド ラ イ バ ル ク に お け る 一 大 ハ ブ 拠 点 で あ り 多 く の パ ー ト ナ ー
が 存 在 す る。 海 運 企 業 に と っ て シ ン ガ ポ ー ル の 第 一 の 魅 力 は 助 成 策 で あ る。 シ ンガポールの法人税率は17%とアメリカ、同一、
日本と比べて相当に低率であり、さらに一定条 件を満たした海運、エネルギー企業に対しては 10%以下の優遇措置が与えられるという圧倒的 に有利な経営環境が存在する。
シンガポールはプロダクトタンカー市場にお いてロンドン市場に並ぶスポット用船の中心地 に成長している。近年は中東向けなどの貨物を めぐりロンドンとの競争が激化している。世界 の資源エネルギーの需要地は中国、インド、日 本を軸とするアジア地域である。シンガポール はこれまで世界の海運の中枢を占めてきたロン ドンを脅かす存在となってきている。インドの 資源、エネルギー企業の情報、需要の結節点し てのシンガポールへの進出が目覚ましい。
21世紀に入りグローバリゼーションの波に 乗ったアジア新興国では発展が続いている。製 造業の進出は雇用につながり現地の消費需要に 火をつけている。アジアでは機械部品から一般 消費財まで荷動きは旺盛である。拡大局面にあ るアジア域内の物流において、シンガポールと 香港は海運、物流のハブ拠点として牽引役とし ての役割を果たしている。
2010年、シンガポールのコンテナ貨物取扱 量は前年比9.9%増の2,843万TEU、香港は同 11.9%増の2,353万TEUで世界の2位、3位を占 めている。日系の海運、物流企業もアジアでの 活動を活発化させている㉗。
シンガポールは、勤勉な国民性、政府の機敏 で優れた政策実施そして東西航路の要衝地とい う地理的優位性によりシンガポールは世界の交 運先進国への道を歩んでいる㉘。
21世紀に入りシンガポールへ寄港する船舶 数は船の大型化に伴い減少傾向にあり、2001 年14 万6,300 隻、2005 年13 万300 隻、2006 年12万8,900隻である。しかしながら、船舶 総トン数を見ると上昇傾向にあり、1999年8 億7,700万 ㌧、2006年13億1,500万 ㌧ と 毎 年 6%の増加である。また1隻当たりの総トン数
も1999年6,199 ㌧、2006年1万200 ㌧ と 毎 年 7%の増加である。同年の船舶総トン数は、コ ンテナ船35.4%、タンカー 30.8%、バルカー 30.8%を占めている。1隻当たりの総トン数は、
バルカー 3万7,500㌧、旅客船2万7,100㌧、コ ンテナ船2万4,200㌧、タンカー 2万2,200㌧で ある。
ノルウェーのコンサルタント・Menonの恒 例のレポートによれば、シンガポールが世界1 位の海事都市に選ばれている。シンガポールは、
港湾・物流と魅力・競争力部門で1位、他の3 部門でも5位以内に入り非常に高い競争力を発 揮している㉙。この調査の一環として「2020年 に世界をリードする海事都市はどこか」とい う質問がされているが、、シンガポールが1位、
上海が2位に選ばれ、この2都市がアジアの最 重要センターと見られている。3位には、ドバ イ、ロッテルダム、オスロ、ハンブルク、ロン ドンが選ばれている。
シンガポールに海運が集積する要因を考察し てみると、海運事業にとってシンガポールは好 条件な人・モノ・金・情報が集まる場所である ことがあげられる。発展する東南アジア、南ア ジア、中国、オーストラリアやヨーロッパにも 近くハブポートとしての役割が大きくなってき ている。こうした地の利を持つシンガポールに 世界各国から荷主が拠点を設けている。意思決 定を有するキーパーソン、トレーダー、ブロー カーがビジネスチャンスを求めて集まる。荷主 が集まれば船会社が集まり、船会社が集まれば 船舶管理会社やブローカーが集まり、金融も追 随する。シンガポール政府の政策は税制優遇な どサポートも厚く海外企業は起業しやすい。こ うして長期にわたってシンガポールは拠点とし て海運ビジネスを推進してきており将来的にも この趨勢が予測される㉚。
シンガポールは国をあげて諸産業をきめ細 かくサポートしてきているが海運については、
1969年、シンガポール船籍が国際航航により 得た運航収益が非課税となった。この措置は 1970年代から1980年代にかけてシンガポー
ル船籍の船舶増加に大きく寄与している。所 謂AIS(認定国家海運制度)である。1991年、
AISE(認定国際海運企業制度)を施行し、シ ンガポール船籍以外の船舶を運航するシンガ ポール海運企業に対しても運航収益の非課税措 置がとられ、国際海運企業を呼び込む重要な政 策となっている。
AISから始まったシンガポールの海運関連助 成制度は船主や船舶運航業にも様々な利便性 を提供している。シンガポールには5,000社を 超える海運企業がありGDPの7%を占め、船主、
船舶運航者、船舶管理業者などがこうした制度 を十分に活用していることがうかがえる。シン ガポール政府の多様なサービスが適正に運用さ れてシンガポールを国際的な海運ハブへと成長 させたといえよう。
タンカー、定期船の一大拠点として知られて いるシンガポールは近年、ドライ市場において も存在感を高めておりアジアの海運国から世界 のシッピングセンターへ成長を続けている㉛。 シンガポールは1990年代、ASEANのFTA(自 由貿易協定)締結を契機に急成長を遂げ、コン テナ輸送の一大ハブ拠点化に加え、石油企業や トレーダー、タンカー船社の現地法人設立が加 速している。近年、世界各地のドライバルク主 力船社が相次いでシンガポールに進出してい る。日本企業も事業を拡大している。シンガ ポールの不定期船企業では川崎汽船現地法人 KLPLの成長が際立っている。2011年、日本郵 船グループではタンカー 30隻を運航するNYK バルクシップがドライバルク事業を開始してい る。商船三井グループでは、原油タンカー子会 社ニックスタンカーズの事業拡大が目覚ましい。
2011年、主力とするVLCC(大型原油タンカー)
のスポット事業に加えて、東京本社からVLGC
(超大型液化石油ガス船)事業を買い取っている。
資源に乏しいシンガポールは企業誘致を成長 の原動力としている。シンガポール海事港湾庁
(MPA)が海運業の奨励策を推進している。税 制面では、公認国際海運業者制度(AIS)の認 定を受ければ10年間にわたり特定の海運収益
に対する法人税などが免除される。さらに船舶 管理会社や金融機関への支援、環境対応に優れ た船舶へのトン数税制適用など支援策はきめ 細かい。MPAが極めて明確なビジョンを持ち、
海事クラスター構築に力をいれており政策当局 が海運会社と同じベクトルを向いているのが分 かる。日本船社の現地法人関係者のシンガポー ルの海運行政への評価は高い。
世界の有力船社、荷主、トレーダーが集まる シンガポールでは、2016年、シンガポール証 券取引所(SGX)によるイギリス・バルチック 海運取引所の買収交渉の動きも表面化している。
アジア新興国のエネルギーを貪欲に取り込みな がら世界のシッピングセンターとしてロンドン を追いさらなる高みを目指している㉜。 世界最大のタンカー船主団体であるインター タンコ(国際独立タンカー船主協会)は、2016 年5月、シンガポールで年次総会とイベントを 開催したが、アジア、欧州、中東、アメリカな どからタンカー関係者が多数参集している㉝。 シンガポールの港湾のコンテナ取扱量は上海 に次いで世界2位である。インド洋と太平洋の 結節点としての重要性は今後も変わらない。シ ンガポールは世界有数のハブ港湾を備えており、
各国の海運会社が事務所を構えている。日本郵 船も世界6か所に分散していたコンテナ船の運 用部門を数年前にシンガポールに集約している。
シンガポールのアジアの海事センターとして の存在感が高まっているのは、法人税優遇など 以前からの海外企業の誘致に加え、最近では資 源、金融、ブローカーなど情報の集積地として の有効性が評価されていることによるものであ る。日本の海運業界でも商船三井グループが本 格的に不定期船事業を移管しているほか、日本 郵船や川崎汽船も100%出資の現地法人や合弁 企業が扱いを拡大させている㉞。リオ・ティン トは資源メジャーのなかでもとりわけ海運会社 から船舶を定期用船(T/Cイン)し、自社で船 舶を活用することに積極的である。日本の海運 業界は日本船のオペレーターだけでなく、国内 船主からも直接、ケープサイズやパナマックス
をT/Cインしている。BHPビリトンは鉄鉱石価 格同様にインデックスリンクと称される運賃決 済方式(バルチック海運指数を指標に航海ごと に運賃を決定する方式)を導入している。商船 三井はシンガポールを不定期船ビジネスの中核 拠点に位置付けアジア及びグローバル市場へ向 けての事業展開を図っている。シンガポールに は同社の現地法人が13社あり、業績も急拡大 しグループ全体の運行船約900隻のうち2割強 に当たる200隻規模をシンガポール現地法人が 運行している㉟。
バルク部門のシンガポールにおける展開も 顕著である。1980年代を皮切りに現地法人化 が着々と進められてきている。2006年に原 油・LGP船が主力のフェニックスタンカース、
2009年に鉄鋼原料船事業が主力のMOLCIS(現 MOLケープ)、2012年にケミカル船専業の東 京マリン・アジアが主なものである。2013年、
商船三井もドライバルク船120隻を運航管理す るMOLバルクキャリアズの営業を開始し、近 年事業展開が一気に加速している。
シンガポール(中国広西南寧)総合物流産業 パークの建設が2017年9月1日、南寧で始まっ た。これは中国シンガポール(重慶)戦略的イ ンフラ相互接続モデル事業一部である。重慶―
広西―シンガポールを結ぶ「渝桂新」陸(鉄道)
海連絡輸送ルートの建設を加速する。同総合物 流産業パークはシンガポールの海運会社 パシ フィック・インターナショナル・ラインズ(PIL)
が出資建設するもので、敷地面積は約3平方キ ロである。
2015年11月、中国とシンガポールは中国シ ンガポール(重慶)戦略的インフラ相互接続モ デル事業をスタートさせた。このモデル事業は 1994年の蘇州工業団地、2007年の天津エコシ ティーに続いて、両国が共同推進3件目の政府 間協力プロジェクト。「渝桂新」陸海連絡輸送 ルートは重慶を始発駅とし、広西の北部湾から 海路でシンガポールに至る陸海一貫輸送ルート。
貨物を重慶からシンガポールに輸送する場合、
鉄道あるいは水路(長江)を利用して上海から
海路でケースが多く、シンガポールに到着する まで3週間前後かかるが、渝桂新陸海一貫輸送 ルートを利用すれば、輸送時間を2周間余り短 縮し、物流コストを大幅に減らすことができる。
2015年シンガポールの商船腹量は世界5位
(パナマ17.9%、リベリア10.8%、マーシャル 諸島10.0%、香港8.4%、シンガポール6.7%)。
(2)シンガポール港湾の発展 ①貨物取扱量
シンガポール港はセントーサ島の東西に広 がっておりシンガポール発展の象徴ともなって いる。同港の貨物取扱量とコンテナ取扱量はこ こ数十年間で世界トップクラスの成長を遂げ、
シンガポールの経済成長に大きく貢献している。
シンガポール港の総貨物取扱量は世界トップ クラスである。1995年~ 2004年は1位、2005 年と2006年は上海港に次いで2位である。シン ガポール港の貨物取扱量は1980年代から既に1 億㌧を突破し、1991年に2億㌧、1995年に3億
㌧、2005年に4億㌧を突破している。近年の世 界の貨物取扱量を見ると、2007年:1位上海港 4.9億㌧、2位シンガポール港4.8億㌧、2008年:
1位シンガポール港5.15億㌧、2位上海港5.11 億㌧、2009年:1位上海港5.0億㌧、2位シンガ ポール港4.7億㌧である。2010年:1位上海港5.3 億㌧、2位シンガポール港5.0億㌧、3位ロッテ ルダム港4.2億㌧、4位広州港4.2億㌧、5位 寧 波港4.08億㌧、6位天津港4.00億㌧である。
2006年、シンガポール港の貨物取扱量は4.4 億㌧で、うちコンテナ貨物2.6億㌧(57.7%)、
石油1.5億㌧(34.1%)、雑貨0.2億㌧(5.1%)、
バルク0.1億㌧(3.1%)である。2014年シン ガポール港の貨物取扱量は5.6090億㌧世界2位、
上海港6.9700億㌧世界1位。
近 年 の 世 界 の コ ン テ ナ 取 扱 量 を 見 る と、
2007年:1位シンガポール港2,794万TEU、2 位 上 海 港2,615万TEU、3位 香 港 港2,400万 TEU、2008年:1位 シ ン ガ ポ ー ル 港2,992万 TEU、2位上海港2,798万TEU、3位 香港港2,449 万TEU、2009年:1位シンガポール港2,586万 TEU、2位 上 海 港2,491万TEU、2010年:1位
上海港2,907万TEU、2位シンガポール港2,843 万TEU、2011年:1位 上 海 港3,150万TEU、2 位 シ ン ガ ポ ー ル 港 万2,993TEU、3位 香 港 港 2,040万TEU、4位深圳港2,256万TEU、5位釜 山 港1,618万TEU、6位 寧 波 港1,468万TEUで ある。2015年シンガポール港のコンテナ取扱 量は3092.2万TEU世界2位。上海港は3654万 TEU世界1位。
1978年、シンガポール港のコンテナ取扱量 は世界13位であったが、1988年には同2位に 急成長している。その後、1990年に同1位とな り、2005年~ 2009年は同1位を保持している。
2010年、上海港に抜かれたが同2位を保持して いる。1998年~ 2006年間の成長率は年平均 6.2%である。シンガポールは物流ハブの地位 を保つとともに営業拠点化も進んでいる㊲。最 近はシンガポール港は上海港に世界1位を譲っ ているが僅差で2位をキープして安定した地位 を確保している㊳。
シンガポールの寄港船舶量は年々増加してお り、2004年の10.4億㌧から2013年の23.2億㌧
(前年比3.2%増)に達している。
②建設と拡張
太平洋とインド洋を結ぶアジアの海上物流の 要衝であるシンガポール港は貨物積み替えの中 継拠点やハブ港として地位を固めている。
2009年、シンガポール政府観光局(STB)
はマリーナ・サウス地区で新たなクルーズター ミナルの建設工事を開始した。新しいターミナ ルはシンガポール・インターナショナル・クルー ズ・ターミナル(SICT)と称され、既存のシ ンガポール・クルーズ・センター(SCC)の東 側に建設される。カジノ総合リゾートなどの開 発が進められるマリーナベイ地区に建設され、
市街地との間を結ぶ高速道路の整備とあいまっ て、観光やショッピングなどに極めて利便性の 高い立地となっている。東南アジアのクルーズ ハブを目指すシンガポールの一大国家プロジェ クトである。施工者は五洋建設・東亜建設工業・
McConnel Dowell共同企業体である。ターミ ナル施設は、乗船客が使用する建物本体が2万
8,000㎡、バスや自家用車の駐車場が3万2,000
㎡で、一度に6,000人以上の乗船客に対応でき る。両岸に繋船できる岸壁はドルフィンを含め て、長さ360m、幅120m、水深11.5mで、世 界最大級の客船、オアシス・オブ・ザ・シーズ(22 万総トン、定員5,400人、全長361m、喫水8.8m)
が接岸できる能力を有する。2008年、シンガ ポールを訪れたクルーズ客は92万人で、新し いターミナルの完成後は160万人の年間利用者 数を見込んでいる。
シンガポール港は貨物取扱量、コンテナ貨物 取扱量ともに世界の超大港であるが拡張の手を 緩めることはない㊴。
シンガポール港のコンテナ取扱量は、2011 年、2,993.7万TEU(前年比5.3%増)、2013年、
3,257.8万TEU(前年比2.9%増)である。シン ガポール港は2010年に世界1位を香港に明け渡 した。こうしたことを背景にシンガポール海事 港湾庁(MPA)は、シンガポール港が主要ハ ブ港としての地位を維持していくためには競争 力の向上と信頼性の高い港湾サービスの充実を 図り将来の需要に対応できる条件を整えること が必要である判断している。
シンガポールのビジネス街に隣接する世界最 大級の貨物港、タンジョン・パガー地区のコン テナヤードは借地権が2027年に切れる。そこ で将来の需要増に備えて西部のトゥアス地区に 取扱を順次移転集約し、次世代コンテナ船に対 応できる最先端のシステムなどを導入して利便 性や効率性をさらに向上させていくこととして いる。
シンガポールは1次エネルギー需要のほぼ 10%を輸入に頼っている。2013年時点では、
シンガポールの発電における石油の比率は下 がっており、天然ガスの比率がほぼ90%に達し ている。2007年以降、石油、天然ガスなどの エネルギー供給の多様化がシンガポールのエネ ルギー戦略の骨子の一つとなっている㊵。その 戦略の一つとしてLNG(液化天然ガス)ター ミナルの建設がある。2013年に稼働したLNG 第1ターミナルは石油化学業種が集積する南西
沖のジュロン島にあり、LNG船の受け入れの ための桟橋、貯蔵タンク、気化設備からなり、
LNGの輸入と再輸出が可能なアジア初のター ミナルである。同年3月、カタールからLNGを 積んだ船が入港した。同年5月にはLNGタンク 2基による操業が開始された。2013年3月から 2014年2月までに入港したLNG船は18隻であ り、合計108万㌧のLNGを取り扱った。LNG の輸入はカタール、トリニダード・トバゴ、エ ジプト・西アフリカ諸国が見込まれる。
2014年1月、3基による操業が開始された。
2017年には4基による操業開始が予定され、年 間900万㌧までの受け入れが可能となる。この ターミナルは最大7基の貯蔵タンクの設置が可 能であり、2024年までに年間1,500万㌧の受け 入れを見込んでいる。
シンガポールはこうした整備の進展により価 格競争力のあるLNG購入が可能となる。
シンガポール政府はアジア地域内のLNG需要 の高まりを受けて地域のLNG供給、取引のハ ブとなることも目指しており、イギリス・BG、
ロシア・ガスプロムといったLNG大手のトレー ディングデスク開設の動きも活発化しており 2014年2月時点で20社となっている。
2014年2月、シンガポール政府は国内2番目と なるLNG受入れ・貯蔵基地(ターミナル)設 置を発表している。このターミナルは本島東部 に建設され、第一ターミナルと同規模である。
このターミナルの建設によりLNG輸入施設を 分散してエネルギーの安定的な供給を強化でき る。また東部に設置することで新しい工業拠点 と発電所を支援できる。将来的には、LNGの 再輸出拠点化を目指している。第一ターミナル は東南アジアで初の複数の企業に対応できる オープンアクセスのターミナルであり、再輸出 機能を併せ持つ施設である。第二ターミナルの 設置によりLNGの再輸出機能が強化されるこ とからLNG取引の一大拠点化を目指すもので ある。
2012年、MPAとシンガポール海事研究所
(SMI)は、「次世代コンテナ港(NGCP)チャ
レンジコンテスト」を企画している。これは、
港湾機能のパフォーマンス・生産性・持続可能 性の向上を実現する計画案を募集するものであ る。計画案は取扱能力2,000万TEU以上、24時 間稼働、接岸率90%など複数の運営条件を満た す必要があり、特定の地形で機能し、環境的に も持続可能な設計が求められる。
シンガポール港の主要コンテナターミナルは 市街地に隣接した旧ターミナルと新たに整備さ れたパシルパンジャンターミナルがある。この うちパシルパンジャンターミナルではフェーズ 3が一部供用を開始し、フェーズ4の供用開始 も予定されている。
シンガポール港では現在5つのコンテナター ミナルが使用されているが、これらのターミナ ル間のコンテナ横持ち輸送が発生しており、輸 送コストの増大と道路混雑状況の悪化をもたら している。そこでMPAは更なる発展のため西 部のトゥアス地区に次世代港湾と呼ばれる新た なターミナル整備に着手したものである。同地 区の計画貨物量は6,500万TEUであり、第一期 事業だけでも岸壁延長8.6㎞、埋立面積294ha、
計画貨物量2,000万TEUであり、2021年の一 部供用開始を目指している。コンテナターミナ ルを1 ヵ所に集約することによりトランシップ 港湾の効率性を発揮することができるようにな る。
世界のロジスティックネットワークと海上貿 易量の拡大に伴いグローバルな港湾間競争が極 めて激化している。このような状況下において 世界の港湾はマーケットシェアを維持拡大する ために革新的な技術の導入と新たな付加価値の あるサービスの提供をおこなう必要がある。港 湾のパアフォーマンスはその国の産業競争力に 大きく影響するといっても過言ではない。言い 換えれば、港湾における混雑はいわば国際貿易 活動に対する一種のバリアーとなっている。具 体的にコンテナターミナルの一つの生産性指標 としてのberth productivity、すなわち1時間 当たり、1隻当たりのコンテナ揚げ積みムーブ 数について世界のターミナルを比較してみる。
Journal of Commerceの調査によれば、世界 で最もberth productivityが高いのは横浜港南 本牧のマースクターミナルであり、1時間当た り180本であり、次いで天津港パシフィック ターミナルの144本である㊶。港湾のパフォー マンス評価指標としてはberth productivity以 外にも、港湾労働の質と安定性、ターミナルゲー トの混雑度、ランドサイドの道路・鉄道のアク セス利便性、通関の円滑さ等の様々なパフォー マンス指標があり、比較するためには統一的な ベンチマーク手法を開発する必要がある。
シンガポール港では船舶燃料のLNGへの転 換が進んでもなお世界第1位のバンカリング港 の地位を維持するためシンガポール港はバンカ リング(船舶への燃料供給)拠点の形成を目前 して具体的には政府主導で設立されたSLNG社 のLNGターミナル整備が進められており、合 計54万㎥となる3つのLNGタンクが既に整備さ れ、更に26万㎥の新しいタンクが整備中である。
③港湾事業の発展
1960年代、シンガポール港はその地域にお ける貨物の集積と仕分け(流通)の玄関港とし ての役割を果たしていた。当時の戦略的な財産 は、①東南アジアの中心地という地理的優位 性、②安価な労働力、③天然の深水港である。
1960年代の後半、西欧からコンテナ輸送化の 波が押し寄せてきた。1972年、他港に先駆け て初期のコンテナターミナルを完成させた。船 舶が大型化して船会社の経済規模がさらに重 要になり、シンガポールは極東とヨーロッパだ けでなく北アジアと南アジアを連結するトラン シップ・メガハブとしての重要な地位を占める ようになった。
数十年間にわたるシンガポール港の近代化は シンガポール港湾局によりおこなわれてきた が、規制、管理などの港湾運営をより効率化さ せ、絶えず変化する港湾業界に適応していくた めに段階的に港湾運営の民営化が導入された。
1996年、MPAが 設 立 さ れ た。MPAは シ ン ガ ポール港湾局の法令及び規制機能を引き継ぐ政 府機関である。1997年、MPAの運営は民営化
され、PSA Corporationに引き継がれた。PSA Corporationは最新のパシルパンジャンターミ ナルを含めシンガポールの4つのコンテナター ミナルを管理運営しており優れたシッピング ネットワークを有しており、124のコンテナ航 路により500のコンテナ港とつながっている。
1996年、 シ ン ガ ポ ー ル 港 の コ ン テ ナ 取 扱 量 は 1,295 万 TEU で、 う ち 36% が 東南アジア諸国、18%が東北アジア諸国である。
マレーシアの輸出入貨物の30%、インドネシア のコンテナ取扱量の60%(160万TEU)がシン ガポール港で中継される㊷。
a.概説
1970年 代 末 ~ 1980年 代 初 頭、 シ ン ガ ポ ー ル 港 の コ ン テ ナ 取 扱 量 は 年 平 均30 ~ 40%の高成長を遂げている。その要因としては、
①港湾を経済戦略の要衝に据えていること、② 自由港政策により大量の外国船舶が入港してい ること、③港湾整備への積極的な投資が実施さ れていること、④IT技術+人材により優良サー ビスを創出していること、⑤総合物流サービ スを提供していることなどがあげられる。PSA Corporationは、シンガポール港のほか、ベル ギー、ミャンマー、中国、インド、イタリア、
ポルトガル、イエメン及び韓国の8国・13港を 経営している㊸。
b.スーパー中継港
シンガポール港のコンテナ取扱量は、1972 年 は10万TEU、1984年 に は100万TEUを 超 え、1994年には1,000万TEUを超え、2000年 は1,704万TEUである。1985年~ 2000年の取 扱量は10倍増、年平均増加率は16.6%である。
その要因としては、貨物中継時間の短縮、在庫 コストの低減、市場参入機会の拡大などがあげ られる。
C.PSACorporationの管理と経営
PSA Corporation創設と先進技術の導入はシ ンガポール港湾発展の要であり、2000年には 人材育成に取り組むほか、1,700万㌦を超える 投資をおこなっている。PSA Corporationは積 極的に海外事業を展開している㊹。
④シンガポール港湾管理運営
シンガポール港はコンテナ貨物取扱量は香 港と並んで世界トップの座を競うアジア最大 級のハブ港である。1980年代後半から世界に 先駆けて港湾業務のITインフラ化を進め利便 性の高い港湾づくりに向け努力している。世 界123 ヵ国・600 ヵ所の港と結ばれ、1日平均 90隻の船舶が寄港している。膨大な貨物を取 り扱うことができる背景には、着岸から離岸ま で1日当たりコンテナ船60隻、60,000個のコ ンテナの積み下ろしが可能という作業能率の 高さにある。同港を運営するPSA Corporation は1988年にCITOSというコンピュターシステ ムを開発し世界でもいち早く港湾業務のIT化 に着手している。さらに1989年には海運業者、
PSA Corporation、税関など海事関係者全体を ネットワークで結ぶPORTNETを導入している。
これにより利用者は港湾関係手続きの申請、入 港スケジュールなど荷役関連や船舶航行安全管 理情報の確認ができるほか、税関申告、許可証 発行、関税の支払いもオンラインで決済するこ とが可能である。2005年にはPortnet.Comを 設立し、顧客の生産性向上とコスト削減につな がるようサポートサービスを充実している。
PSA Corporationとシンガポール政府観光局は 連携して1992年にシンガポールの外航クルー ズや国際・国内フェリーの基地であるシンガ ポールクルーズセンター(SCC)を設立してい る。国際客船ターミナルには、バース延長245 m(水深12m、最大船長300m)、160m(水 深11m、最大船長250m)、150m(水深10m、
最大船長180m)の3つのバースがある。
シンガポールの特徴は、シンガポール政府観 光局内のクルーズ担当部署とPSA Corporation のクルーズ部門・シンガポールクルーズセン ターとが連携協力してクルーズ船の誘致、ター ミナル整備などをおこなっていることである。
極東と欧州を結ぶ基幹航路の要衝に位置し発 展を遂げてきたシンガポール港の2009年のコ ンテナ取扱量は2,589万TEUを記録し、5年連 続で世界1位を保持している。欧米関連貨物の
輸送や近隣アジア諸国向けのフィーダー貨物輸 送の積み替えをおこなうハブ港として発展して いる㊺。
世界の主要貿易航路の要衝に位置しているシ ンガポール港は19世紀以降、世界の中継貿易 拠点として発展してきている。現在、その卓越 した港湾システム、最新鋭のオペレーション、
国を挙げての様々なバックアップなどにより世 界最大級のコンテナ取扱港の地位を保持してい る。その発展成長の要因は港湾運営の効率化で ある㊻。
a.経緯
シンガポール港は1964年に設立された運輸 通信省管轄のシンガポール消費庁(旧PSA Port of Singgapore Authority)により管理運 営されてきた。その後、1996年に政府内にシ ンガポール海事港湾庁(MPA Maritime and Port Authority of Singapore)が設立されると 旧PSAからMPAに港湾の規制監督機能が移管 された。翌年の1997年に港湾サービス部門は 民営化され、新設されたPSA Corporationに移 管 さ れ た。 以 降、MPAとPSA Corporationが 適切に役割分担をおこない港湾の効率的な管理 運営に努めている。
b.港湾管理運営システムの概要
MPAは国の組織であるが独立した意思決定 機関であり会計権を有している。MPAの意思 決定機関である理事会の構成は国・海運団体・
企業である。PSA CorporationはMPAから埠 頭の整備、事業運営の免許を受け主要なコンテ ナターミナルのオペレーションをおこなうとと もに港湾施設の整備、コンピューターシステム を用いた出入港手続きなどの簡略化、船舶修理、
燃料・食料等の補給などの港湾サポート機能の 充実に努め顧客サービスの向上を図っている。
シンガポール港においては、貨物需要予測、
貨物取扱要領、土地造成計画等の港湾整備の方 針はMPAが策定し、個々のコンテナターミナ ル施設の整備計画はPSA Corporationが独自に 策定している。しかしながら実務的にはMPA とPSA Corporationが綿密に調整しながら進め
ており事実上国家としての政策目的が反映され るシステムになっている。シンガポール港では MPAが土地や航路等の基盤整備を国費を投じ ておこない、PSA Corporation が岸壁とその 前面海域、上物等の埠頭施設整備を自己資金で おこなっている。基盤施設と埠頭施設の整備を 港湾管理者とターミナルオペレーターとで分担 する制度といえる。この措置によりシンガポー ル港の競争力が維持されている。
c.将来
PSA Corporationが運営する4地域のコンテ ナターミナルは全体の99%を取り扱っている。
4地域の状況は、①パシルパンジャン:バー ス 数23、 面 積335ha、 最 大 喫 水16.0m、 ク レーン数87、②ケッペル:バース数14、面積 100ha、最大喫水15.5m、クレーン数42、③ デラニ:バース数9、面積80ha、最大喫水15.0 m、クレーン数32、④タンジョンパガー:バー ス数8、面積85ha、最大喫水14.8m、クレーン 数29である。
PSA Corporationは積極的に海外展開を図っ ており、アジア、欧州、中東、南米を含む17 ヵ国、
29港でターミナルを運営している。またシン ガポール港と海外諸港とのネットワークを最大 限に活用して、2012年のコンテナ取扱量は内 外合わせて6,006万TEUに達している。
1972年にコンテナ貨物の取り扱いを開始し たシンガポール港は、その地政学的な優位性を 活かして取扱量を急増させ、1990年には500 万TEUを記録して世界1位となった。1996年 にはPSAの行政機能を分離してMPAを設立し、
1997年にはPSA Corporationを設立して運営 体制の強化を図っている。
シンガポール港では2015年、過去最高の 4,500万㌧のバンカリング(船舶燃料補給)が おこわれており世界1位である。ハブ港として の地位確立を目指す同港にとってバンカリング 機能の向上は最重要課題であり積極的な取組み がおこなわれている。MPAはLNG燃料船に対 応するため2020年に向けてLNGバンカリング を開始することとしており、まず2017年を目
途にLNG燃料タグボートの導入プロジェクト を推進している㊼。
(3)シンガポールの造船・船舶修繕産業 ①造船と船舶修繕
シンガポールの造船竣工量は、1980年3.1 万総㌧、1990年4.7万総㌧、2010年11.9万総
㌧(世界20位)、2012年9.2万総㌧(世界19位)、
2014年9.7万総㌧(世界17位)である。シンガ ポールは造船だけでなく船舶修繕産業も盛んで ある。1859年から150年を超える歴史を有す る船舶修繕産業の発展によりシンガポールは世 界の船舶修繕センターになっている。とりわけ、
大型船舶、海洋石油構造物、海底油田の掘削船、
海底ボーリング用プラットフォーム、超大型タ ンカー、大型運輸船、大型作業船、豪華旅客船 などの修繕と改装が可能である。2002年、シ ンガポールの船舶修繕隻数は796隻であり、船 舶修繕産業総額は23.1億㌦で世界市場の9.5%
を占めている。
②造船・船舶修繕会社
シンガポールの造船所は50社余り、主要な 建造船は1,500 ~ 4,000㌧の中型船である。船 舶修繕会社は30社余りである。
主要な造船・船舶修繕会社は次の通りである。
a.三巴旺造船所
シンガポールの北海岸に位置する。主たる業 務は船舶修理、改装である。敷地面積は60ha、
ドック数5個、総㌧数77万5,000㌧、埠頭数6個、
埠頭総延長3,344mである。最大ドックは長さ 384m、幅64m、深さ9mである。
b.裕廊造船所
シンガポールの西部に位置する。主たる業務 は船舶修繕、建造、改装、海底ボーリング用プ ラットホーム、海洋構造物である。敷地面積は 65ha、ドック数4個、総㌧数110万㌧、埠頭数 6個、埠頭総延長2,728mである。最大ドック は長さ380m、幅80m、深さ14mである。海 底ボーリング用プラットホームの建造能力は世 界トップクラスである。
c.吉宝造船所
シンガポールの西部に位置する。1981年以
来、世界のFISOPSO船の改装市場のリーダー 的存在である。敷地面積は43ha、ドック数3個、
埠頭数6個、埠頭総延長2,437mである。最大 ドックは長さ350m、幅66m、深さ14mであ る㊽。この造船所は潜水自昇式プラットホーム、
深水半潜水式採油プラットホームの分野では世 界トップクラスである。
2006年、シンガポールは世界の採油プラッ トホームの半分以上を製造している。吉宝造船 所は世界最大の海上プラットホーム製造メー カーである㊾。
むすび
シンガポールは数十年間にわたり経済、産業、
企業、海事産業などの分野において持続的に高 度成長を遂げている。シンガポールの成長戦略 は全方位に及び、同時に常に世界に学ぶことで 多くの分野において世界を牽引している。シン ガポールはいわゆる経済大国ではないが独自の 挑戦を続けて世界の注目を集めている。シンガ ポールは東南アジアの牽引役を務めており、他 の国に対して多くの成功例と示唆を与えている。
新しい産業や新分野開拓へ向けてさらに挑戦す るシンガポールはこれからも期待できる。
Ⅱ. ベトナムの産業経済、国内外企業、貿 易、海運、船舶建造、国際貿貿港湾の 発展
1.ベトナム産業経済発展の概説 ①ベトナムの概況
ベトナムは長い太平洋沿岸部を有する自然環 境に恵まれた国である。東南アジアで最も安定 した経済成長率を遂げ経済市場が伸びている国 である。
ベ ト ナ ム の 面 積 は33.967万 ㎢、 人 口 は 9,444.4万人(2016年)、首都ハノイの人口は 710万人(2014年)である。主要な資源は石炭、
鉄鉱石、石油、リン鉱石、銅、亜鉛、錫である。
主要都市の人口はホーチミン市768万人、ハイ
フォン市190万人、ダナン市97万人である。住 民はベトナム人(キン民族)が86%を占める。
2015年のGDPは1,936億㌦、外貨準備高は 2014年342億㌦である。
主要工業製品は鉄鋼、自動車、IT製品、船 舶などである。経済成長率は2001 ~ 2011年 間が平均7.2%である。2005年8.4%、2007年 8.5%、2010 年6.8%、2012 年5.3%、2013 年 5.4%、2014年6.0%、2015年6.7%、2016年6.3%
である㊿。
2013年、外国からの直接投資額は89億㌦
である。2014年の輸出額は前年比13.7%増の 1,501億㌦、輸入額は同12.1%増の1,481億㌦
である。
1986年、ベトナムは「革新開放」政策を開 始した。そして工業化計画に基づき経済成長を 加速させ、国際社会に向けても全方位外交で臨 んだことにより中国に次いで2位という高い経 済成長率を実現している。ベトナムの経済発展 は過去20年間、アジア諸国の中でも中国に並 ぶ高い経済成長率を保持している。
ベトナムは大都市、港湾都市も多く、特にハ ノイ市、ホーチミン市は世界から注目されてい る。首都ハノイ市は近年、「大ハノイ」「超巨大 首都圏」に向けて開発を進めている。2050年 に1,800万人規模への人口膨張が予測されるハ ノイ市は急激な人口増加と都市機能の集中化を 避けるため近郊への首都圏拡大が進められてい るが、工業団地と都市開発を手掛けるベトナム・
シンガポール工業団地(VSIP)が注目されて いる。最大の人口を有し、最大の産業都市であ るホーチミン市は、人口が毎年20万人増加し、
2020年に831万人、2030年には1,020万人に 達するものと予測されている。ホーチミン市は かつてサイゴンと呼ばれた商都であり、高層ビ ルやマンションの建設が進み活気に溢れている。
②成長戦略
技術産業を中心とし、海運・港湾・造船など の海事産業をも重視し、すべての国との協力体 制の下に外資系企業を積極的に導入して経済の 高成長を図る経済戦略を基軸に据えている。
2. ベトナムの産業発展 ①産業構造
ベトナムの2011年の主要産業のGDP構成比 は、製造業25.8%、商業17.3%、農林業13.1%、
建設業8.9%、運輸・倉庫・通信業4.6%である。
GDPに占める主要産業の比率を見ると、サー ビス業43.9%、鉱業38.6%、農林水産業17.6%
である。2013年の主要産業のGDPは、農林水 産業658.8兆ドン、製造業627.0兆ドン、小売 業・自動車修理業481.4兆ドン、鉱業411.7兆 ドン、運輸・倉庫業107.1兆ドンである。2014 年ベトナムの事業別国内総生産の割合は一次産 業18%二次産業39%三次産業43%である。
2015年ベトナムの実質GDPの事業別内訳は、
①農林水産業16%②鉱業8%③製造業16%、建 設業6%④小売・自動車修理9%⑤輸送・倉庫3%
⑥金融・保険5%⑦不動産5%⑧教育・研修3%
などである。
ベトナムは1986年に市場経済へと転換して いる。2020年までに工業国入りを目指す「工 業化と近代化」を2大戦略とする。
ベトナムは伝統的に農業や漁業が盛んであり、
2000年の労働人口3,850万人の64%が農林漁 業に従事していたが近年は第2次、第3次産業 が伸びており、2012年の農林漁業の就業者数 は47%となっている。GDPの産業別割合を見 ると、2000年農林水産業が23.3%を占めてい たが2013年には18.4%に縮小し、サービス業 は47.3%、鉱工業・建設業が34.3%に拡大して いる。製造業では軽工業が中心であり、産業用 地、用水、発電、道路、港湾施設など産業基盤 の整備が遅れている。
②主要産業 a.農林水産業
ベトナムの穀物生産量は、2010年4,702万
㌧、2013年4,923万㌧(世界12位)2014年5,018 万トン(世界12位)で、コーヒー、胡椒、甲 穀類などがある。2014年、天然ゴムの生産量 は世界3位の8.4%を占める。
2009年 の 漁 獲 量 は 前 年 比2.5%増 の224万
㌧(同12位)で、2012年の漁業生産量は594 万㌧(同4位)でうち養殖業は332万㌧である。
2014年の水産物水揚げ量は前年比5.2%増の 633万㌧(同4位)で内訳は、捕獲魚が同4.1%
増の292万㌧、養殖魚が同6.1増の341万㌧であ る。
b.観光産業
2013年、ベトナムのホテル売上高は35兆 2,270万 ド ン で、 内 訳 は 非 国 有 企 業 が23兆 8,277万ドン、外国資本企業が8兆5,569万ド ン、国有企業が2兆8,424万ドンである。2014 年、外国人訪問数は前年比4.0%増の787万人 で、内訳は中国が同2.1%増の194万人、韓国 が同13.3%増の84万人、日本が同7.3%増の64 万人、アメリカが同2.7%増の44万人、カンボ ジアが同18.1%増の40万人、台湾が同2.5%減 の38万人、マレーシアが同1.9%減の33万人、
オーストラリアが同0.5%増の32万人、タイが 同8.2%減の24万人、フランスが同1.8%増の21 万人である。
c.鉱業
ベトナムの2014年末における確認石油埋蔵 量は、アジア太平洋地域では中国(185億バレ ル)、インド(57億バレル)に次いで3位の44 億バレルである。2011年の鉄鉱石生産量は53 万㌧、石炭生産量は4,450万㌧(世界15位)で ある。
d.発電業
ベトナム政府は2010 ~ 2030年に原子力発 電所を14基(1,500万~ 1,600万Kw)建設し 稼働させる「原発開発方針」を推めている。
e.製造業
ベトナムの工業部門は1990年中頃から平均 10%前後の高い成長率を達成して経済成長を支 える屋台骨となっている。さらにベトナム投資 ブームに乗って進出した外資系企業の生産活動 が本格化したこともあり鉱工業生産に占める外 資の比率は徐々に増加してきている。一方、国 有部門は整理統合するとの政府の方針もありそ の占める割合は低下傾向にあり、国有企業の シェアを外資企業と民間企業がカバーする格好
になっている。
産業用ロボットの稼働台数は2010年が728 台、2013年が1,597台である。2011年、粗鋼 生産量は490万㌧、二輪自動車保有台数は2,541 万台である。2013年、主要工業品生産高を見 ると、銅鉱石5,335万㌧、石炭4,104万㌧、原 油1,671万㌧、天然ガス975万㌧、鉄鋼885万㌧、
鉄鉱石244万㌧、電話機489万台、携帯電話1 億500万台、冷蔵庫169万台などである。
2013年、製造業生産額を見ると、織物174 兆3,120万ドン、衣服205兆2,040万ドン、石炭・
石油製品186兆1,890万ドン、化学品・同製品 230兆1,690万ドン、コンピュータ・電子製品 690兆9,870万ドン、電気機器188兆4,190万ド ン、自動車・セミトレーラー 107兆1,020万ド ン、機械機器59兆659万ドン、その他の輸送機 器159兆1,830万ドンである。
f.交通業
ベトナムはその地勢から多種多様な交通網が 発達している。舗装道路は13万5,400
㎞、鉄道は2,600㎞、水路は1万7,700㎞を有す る。2008年より鉄道の高速近代化工事を実施
しており、現行の旅客90㎞ /時、貨物60㎞ /時 をそれぞれ120㎞ /時、80㎞ /時とする計画で ある。2016年、中国・広西チワン族自治区南 寧市とベトナム・ザーラム市を結ぶ国際列車「劉 三姐」号の運行が開始されている。ベトナムに は3つの国際空港がある。
3.ベトナムの企業発展 ①ベトナムの企業概要
ベトナムは国有企業が多いが、GDPに占め る国有企業の割合を徐々に低下させる政策がお こなわれている。ベトナムの2013年のGDPは 3,584兆2,620億ドンで、内訳は国有企業1,154 兆1,320億 ド ン(32.2%)、 国 内 企 業1,729兆 4,350億ドン(48.3%)、外資系企業700兆6,950 億ドン(19.5%)である。ベトナムの2015年 のGDPは前年比6.7%増と久しぶりの高水準を 達成している。しかしながら最大の課題は国営 企業の民営化である。市場の経済化を進めるド イモイ(刷新)は政策開始から30年を経過し ている。
企業名 業種 売上高
ビンコム (VIC) 不動産開発 5,484億ドン
ホーチミン市インフラ投資会社(CII) 都市開発 1,666億ドン 資材・石油会社(COM) 石油販売 1兆7,053億ドン ペトロベトナム化学肥料(DPM) 石油化学肥料 3兆508億ドン
ホアアン(DHA) 石材・鉱山開発 840億ドン
ハウザン製薬(DHG) 製薬 8,731億ドン
ベトナム乳業(VNM) 食品 6兆6,629億ドン
ビエンホア製菓(BBC) 食品 3,431億ドン
サイゴン証券(SSI) 証券・金融 3,399億ドン カビコベトナム建設採鉱(MCV) 鉱山開発 495億ドン
FPT(FPT) IT・通信 21兆3,998億ドン
バオミン保険(BMI) 保険・金融 9,485億ドン ティエンフォン・プラスチック(NYP) プラスチック 7,170億ドン サイゴン総合サービス(SVC) 不動産開発 1兆1,713億ドン
太平洋横断(PAN) ビル清掃等 423億ドン
☆2016年のベトナムの主要企業の業種と売上高は次の通りである
②外資系企業 a.外資系企業
ベトナムは工業団地の整備などの海外企業を 誘致する体制が整っていることまた低廉で豊富 な労働力があるということから海外からの直接 投資が活発化している。日系、中国系、韓国系、
香港系、シンガポール系、タイ系、マレーシア系、
アメリカ系、カナダ系、イギリス系、ドイツ系、
イタリア系企業が主たるものである。2006年、
海外直接投資が100億㌦を突破している。日系 企業も北部を中心に進出が続いている。ベトナ ム経済の中心はホーチミンシティを中心とした 南部であるが北部地域への外資系企業誘致の動 きも活発化しておりハイテク、家電などの業種 が多く見受けられる。
近年進出が目立つハイテク、家電などの業種 は大半が加工貿易型である。ベトナム北部は中 国・華南からの生産移転も多い。華南のベンダー からの輸入も増加傾向にある。
☆中国の主要な国別海外加工貿易(2000 ~ 2005年)の状況は次の通りである。
国 件 シェア(%)
ベトナム 69 12.3
ロシア 44 7.9
南アフリカ 33 5.9
タイ 25 4.5
モンゴル 21 3.8
ナイジェリア 19 3.4
アメリカ 15 2.7
オーストラリア 12 2.1
2006年、韓国、アメリカ、中国のベトナム への進出状況を見ると、韓国が前年比4.7倍の 28億700万㌦(1位)、アメリカが同4.9倍の7 億7,200万㌦(4位)、中国が同4.8倍の3億,400 万㌦(8位)である。大型プロジェクトが増加 したためであるが、主要なものを見ると、輸入 代替生産、新都市開発・不動産建設、小売り分 野への参入、ホテル・リゾート観光開発、イン フラ建設、資源開発など将来を見据えた分野が
特徴として浮かび上がってくる。それぞれがベ トナム経済の発展に伴う国内需要の拡大が見込 まれる分野であり、市場開拓を志向したものと いえる。2008年、ベトナム政府は台湾の石油 化学最大手である台湾プラスチックが中部地域 に建設する単独の外国投資案件としては過去 最大規模の大型製油所の計画を承認している。
2007年のベトナムへの直接投資額は中国204 億㌦、アメリカ32億㌦、韓国13億㌦である。
☆2007年1-10月、主要な新規認可の対ベト ナム投資額は次の通りである。
国・地域 件数 投資額
韓 国 328 24.4億㌦
イギリス領バージン諸島 43 17.4億㌦
シンガポール 71 13.8億㌦
台 湾 169 9.8億㌦
日 本 131 6.6億㌦
イ ン ド 4 5.8億㌦
中 国 85 3.0億㌦
タ イ 17 2.7億㌦
アメリカ 50 2.6億㌦
香 港 48 1.6億㌦
☆2008年1-9月、主要事業の対ベトナム投資 額は次の通りである。
事業内容 投資額 主要出資企業の本社所在国・地域 一貫製鉄所 98億㌦ マレーシア 一貫製鉄所 78億㌦ 台 湾
製 油 所 62億㌦ 日本・クエート リゾート開発 43億㌦ ブルネイ リゾート開発 42億㌦ カナダ
石油化学プラント 37億㌦ タイ 学園都市開発 35億㌦ マレーシア リゾート開発 16億㌦ イギリス リゾート開発 13億㌦ アメリカ
工業団地開発 12億㌦ シンガポール 2009年1‐4月、ベトナムへの外国投資総額25
億㌦の構成比は、ホテル・観光28.4%、オフィス・
アパート建設26.6%、新興住宅地建設24.2%、
建設9.2%、重工業3.5%、軽工業1.6%、その他 6.5%である。
☆2010年9月、主要国・地域の対ベトナム直 接投資累積額は次の通りである。
国・地域 件数 投資額
韓 国 2,616 232.1億㌦
台 湾 2,141 227.7億㌦
日 本 1,260 205.5億㌦
マレーシア 366 184.4億㌦
シンガポール 851 178.8億㌦
台湾のIT製造業がベトナムの北部地域に進 出している。2005年の神達電脳に続いて、最 大手の鴻海精密工業グループ、仁宝電脳、群創 光電などである。部品供給など中国・華南地区 との連携を図る狙いである。世界のIT製品の生 産を大きく占める台湾企業の進出でベトナムか らの輸出急増が見込まれる。
☆2011年4月、主要国・地域の対ベトナム直 接投資累積額は次の通りである。
国・地域 投資額
台 湾 230.3億㌦
シンガポール 229.1億㌦
韓 国 226.0億㌦
日 本 212.0億㌦
マレーシア 187.6億㌦
イギリス領バージン諸島 147.9億㌦
アメリカ 132.4億㌦
香 港 83.4億㌦
近年のベトナムの外国直接投資額を見る と、2010年 が197.6億 ㌦、2011年 が147.0億
㌦、2012年が130.1億㌦である。2016年ベト ナムの対内直接投資上位主力国・地域は、1位 韓国68.96億㌦、2位日本25.10億㌦ 3位シンガ
ポール21.23億㌦、4位中国17.06億㌦、5位香 港16.26億㌦。
2017年1月から2月の対ベトナム海外直接投 資の割合:1位シンガポール8.81億㌦(25.91%)
2位中国7.22億㌦(21.24%)3位韓国6.37億㌦
(18.74%)、その他11.6億㌦(34.11%)全投 資額は34.00億㌦である。
中国を除く新興国・地域で生産拠点として有 望なのは、タイ、ベトナム、インドネシア、イ ンド、ミャンマー、中南米である。
近年、東南アジアで製油所の建設計画が相次 いでいる。タイ石油公社(PTT)が東南アジア 最大級の大型製油所を建設することとしている。
出光興産などの日系企業、中国系企業も計画を 進めている。
1992年、ベトナム・韓国・日本の合弁会社「メ コン自動車」がベトナム初の国民車の組立てを おこない、その数年間で自動車企業が設立され フォード、トヨタなど世界的なメーカーを含む 14社が投資認可を受け、2014年には23社が営 業している。
b.日系企業
近年、日本の大企業や中小企業がベトナムへ 進出している。業種を見ると輸出加工型製造業 が多く、機械部品、自動車、IT製品、樹脂金型、
機械金型、プレス加工、プラスチック加工、農 産物魚介類加工、繊維縫製など多様な分野にわ たっている。また製造業だけでなく火力・原子 力発電、物流産業、高速道路造成、空港港湾造 成やイオン・ファミマ・高島屋などのサービス 業の進出なども顕著である。
日系企業の直接投資状況を見ると、1988年 から1992年までは、石油探査・開発プロジェ クト、コンサルタント業、縫製業、菓子製造な どの分野で30件が認可されている。1995年に は自動車、家電、コンピュータ部品など47件
(11.3億 ㌦) が、2006年 は253件(15.0億 ㌦)
が認可されている。
2008年における投資認可額は196件(63.8 億㌦)で、うち新規が147件(59.0億㌦)と急 増しているが、これは出光興産・三井化学・ク
エート国際石油グループの合弁によるタインホ ア省・ギメン製油所の建設案件が寄与している。
新規・拡張投資額は、2010年が198件(24.0 億㌦)、2011年が313件(26.2億㌦)である。
日系企業が進出を予定する事業としては、ロ ンソン製油所の新設(60億㌦)、ズンクワット 製油所の拡張(20億㌦)などの石油精製業18 件、三井物産・三菱商事・伊藤忠商事・出光 興産・日揮の合弁によるフォックアン港の整 備(11億㌦)などの港湾開発14件、関西電力・
中部電力の合弁によるソンハウ石炭火力発電所
(16億㌦)の建設などの電力15件、三菱地所の 西ハロン都市区の開発(22億㌦ )などの不動産 開発、野村ホールディングス・大和証券グルー プの合弁によるペトロベトナム・ファイナンス への投資(3億㌦)などがある。2011年、サッ ポロビールHDはホーチミン市郊外に工場を建 設し東南アジア向けの輸出拠点とする。ホーチ ミン市に立地する企業は、運輸部門では日本 郵船、大阪商船三井、川崎汽船、日本空港など、
メーカー部門では三菱重工、ヤンマーディーゼ ル、新菱冷熱工業、ヤマハなど、金融部門では 三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、東京海上火 災、三井海上火災、安田海上火災など、商社部 門では三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、丸紅、
住友商事、日商岩井、豊田通商、明和産業、日 鉄商事、川鉄商事、野村貿易、三洋貿易、住金 物産など、建設部門では大成建設、清水建設、
大林組、ハザマ、三菱建設などがある。
2013年、日本からの直接投資は前年比5.0%
増の58.8億㌦である。2014年、日本の対ベト ナム直接投資残高は前年比6.6%増の1兆4,388 億円で、製造業が63.6%、非製造業が36.4%で ある。進出している企業は、メーカー部門で は富士通、NEC、トヨタ自動車、コマツなど、
金融部門では東京海上火災、住友海上火災、安 田海上火災など、商社部門では三井物産、三菱 商事、住友商事、丸紅、日商岩井、伊藤忠商事、
豊田通商、明和産業、野村貿易、日鉄商事、三 洋商事など、建設部門では大成建設、清水建設、
飛島建設、大林組、熊谷組、三菱建設、三井建
設、日本工営など、その他出光石油開発、日本 経済新聞社などがある。
2013年の在留邦人数は1万2,000人、2014年 1万3,547人。2014年の日系企業数は1,300社 である。
日本からベトナム北部地域への進出件数は、
製造業が50.4%、非製造業が49.6%とほぼ均衡 している。投資先は首都ハノイ市が66件、ハ イフォン港を有するハイフォン市が8件のほか、
ハノイ市からの交通インフラが整備されている 省への投資が多い。中部地域における投資先は、
ダナン市が11件と多いが、中部地域に位置す る経済区への投資も見受けられる。南部地域 における投資分野は製造業が41.7%、非製造業 が58.3%となっている。投資先はホーチミン市 が130件、ビンズオン省が27件、ドンナイ省が 36件でホーチミン市に集中している。
ベトナム第3の都市ダナン市への日系企業の 進出が加速している。2017年3月まで約120社 に達している。
日系物流企業のベトナム進出が続いている。 大成建設は国際空港のターミナルビル建設を受 注している。東急電鉄はビンズオン省で交通網 と宅地開発を受注している。住友商事などが ホーチミン都市鉄道1号線建設を受注している
。
ベトナムのITサービスの最大手EPTYソフト ウェアが日本向けにソフト開発技術者を1万人 規模で養成するプロジェクトを計画している。 ③ベトナムの海外投資
ベトナムの海外直接投資額は1988 ~ 2013 年で166億2,400万㌦に達している。2013年末 の産業別累計額を見ると、鉱物資源開発が73億 4,200万㌦で全体の44.2%を占め、その他は農 林漁業が16.3%、情報・通信が7.8%である。国・
地域別では、ラオスが46億200万㌦(27.7%)、
カンボジアが30億4,600万㌦(18.3%)、ベネ ズエラが18億2,500万㌦(11.0%)、ロシアが 15億9,000万㌦(9.6%)、ペルーが13億3,700 万㌦(8.0%)、アルジェリアが12億6,200万㌦
(7.6%)である。