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中国における企業広報の歴史的展開と新たな方向性

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Academic year: 2021

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(1)

■ 研究論文

中国における企業広報の歴史的展開と新たな方向性

TheHi s t o r ya n dt heFut u r eo ft heCo r po r a t ePu bl i cRe l a t i o n si nChi na :

神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士後期課程

I l 日 * 京 哲

Ⅹu a nJ i n g z he

■キーワー ド

企業広報、広報革新期、利害 関係者、和階社会、経営 システム

1 は じめに

1978年 に 「改革 開放 政策」 が導入 され る以前 の中国企業 は、国家が無限責任 を負 う工場制企業 であり、経営権 は行政 に占有 され、非効率な経営 状況 に陥っていた。 そのため、国営企業の活性化 を図 ることを目的に改革開放政策が実施 されたの を契機 に、企業の 自主権が拡大 され、利潤 も企業 に残す ことがで きる 「政権譲利」改革 が実施 され た。 さらに、1992年末の鄭小平による 「南巡講話」

を契機 に、公有制企業の株式会社化が加速度的に 進め られ、本格的な 「近代的企業制度」がスター

トしたO

その一方、近代 的企業制度 の推進 にともない、

会社資産の不正流用や粉飾決算、虚偽情報の開示 やインサイダー取引などの様 々な企業不祥事が多 発 し、一時証券市場の崩壊 を招 くおそれ さえ憂慮 され た。 その ため、2000年代 に入 って以降、 中 国企業 に対 して監督 ・管理機 能 を有 す る公的 な 諸機 関 は、企業統 治 の強化や企業 の社会 的責任

を求める一方、企業 と企業 を取 り巻 くさまざまな 利害関係者 との間に、良 きコ ミュニケーシ ョンに 基づいて企業経営の健全 な発展 を図 る意味での企 業広報の重要性 を強調す ることとなった1。 しか し、 その後 も企業不祥事 は止 ま らず、2003年 か ら2007年 の間、上場会社 にお け る証券 をめ ぐる 不祥事 だけで736件 に ものぼ り2、2009年度上半 期(1月〜 6月)だけで、すでに148件 に ものぼ って い る3。 これは、企業広 報 が本来の機 能 を発揮で きていなかったことに一因があると考 えられ る。

そのため、中国における企業広報の問題点 を解 明す るとともに、企業広報の新たな方向性 を探求 す る必要性が あると考 える。 それゆ え本稿では、

中国における企業広報の歴史的展 開および今 日の 動向を考察 し、残 された問題点 を明 らかにす ると ともに、「和階社会 (調和の とれた社会)」 を目指 す中国社会 における企業広報の新たな方向性 を探 り、それが如何 に企業経営の健全 な発展 を導 き、

和階社会の実現に貢献で きるかを明 らかにす るこ とを目的 とす る。

(2)

152 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14 2010年3月

本 稿 で は、 まず、1978年 以 降、 中国 にお いて 導入 され た様 々な経済改革 の推進 に ともなって変 遷 して きた企業広 報 の歴 史的展 開 を考察す る。つ ぎに、先進 的 な中国企業3社 の企 業広 報へ の取 り 組 み に焦 点 を当て て、3社 の企 業広 報 の特徴 を明 らかに し、 それが企業経営 の健全 な発展 に多大 な 影響 を与 えることを論証す る。加 えて、和階社会 の内容 と特徴 を分析 し、広 報協会 をは じめ とす る 様 々な広 報機 関の取 り組み を考察 す る。最終 的 に、

和階社会 の実現 に向 けての企業広 報 の重要性 を強 調 しなが ら、残 され た問題点 を指摘 し、改善策 と して中国における企業広報 の新 たな方 向性 を提案 す る。

2 中国における企業広報の歴史的展開

企 業 広 報 の考 え方 が 中 国 に導 入 され た の は、

1978年 に導 入 され た 「改革 開放 政 策 」 の実 施 以 降で あるとみ ることがで きる。 それ は、改革 開放 政策 が導入 され る前 の 中国企業 は、 国家 が無限責

広報導入期 (1978一1982)

広報啓蒙期 (1983、一1992)

広 報 成 長

( 1 9 9 3 ・ 一 2 0

00)

広報革新期 (2001・一)

(出所)著者作成。

任 を負 う工場制企業 で あ り、経営権 は行政 に占有 され、 非効 率 な経 営状 況 に陥 って い た か らで あ る。つ ま り、生産計画 は国家 のマ クロ計画 に依存 し、業績指標 は企業 目標 よ りも国家計画 の達成 度 によって判 断 され、経営者 は行政 の主管部門 よ り 任命 され、経営 の 自主権 がな く経営成 果 も享受 で

きない、 といった多 くの問題 を抱 えてお り、企業 広報 の考 え方 が まず存在 しなか った ことと考 え ら れ る4。

そ して、1978年 以 降 の様 々 な経 済 改 革 の実施 に ともなって、企業 の経営 自主権 が拡大 され は じ め、 それ に よって導 入 され た企 業広報 は、 図表1 に示 され るよ うに、広 報導入期、広報啓蒙期、広 報成 長 期、広 報革 新期 の、4つ の段 階 をた どって 変遷 して きた とみ ることがで きる。

2.1 1978年 「改 革 開放 政策 」の導 入 と広 報 導 入期 (1978‑ 1982)

第1段 階 は、 改 革 開放 政 策 が導 入 され 始 め た 1978年 か ら1982年 までを 指 す。 この段 階 で は、

図表1 中国にお ける企業広報 の歴史的展 開

●1978年 「改革 開放政策 」の導入 政府 中心 の経 済体制

経済特 区条例 を発表 国営企業 の経 営権 を

●1983年 「利 改税制度」 の実施 利益 の代 わ りに税金 を納 め 財政支 出の代 わ りに銀行借 企業経 営者 に経営権 を付与

●1993年 「会社法」の制 定 社会主義 市場経済が始 ま 財産権 と所有権 が明確化

「近代 的企業制度」が確 立

●2001年 「中国WTO加 盟厳 しい 国 際 競 争 社 会突 入 企 業 競 争 力 を 高 め る 企 業 不 祥 事 を抑 制

海外企業 か らの経営方式 の導入 ホテル業界が 中心 となって、広報

部 門 を設 置

一部 の国営企業 が広報部 門 を設置 外資系PR会社 の中国進 出

広報協会 の設 立

メデ ィア産業 の急成長 マーケテ イング型広報 の展 開

PR業界 、広報 協会 の成長

経 営活動 の重要 な要素 健全 な経 営 を導 く重要 なツール

和階社会 の実現

(3)

改革 開放政策の推進に ともない、経済持区に指定 された沿海都市の外資系企業や中外合弁企業など が海外企業 の経営方式 を取 り入れ る一環 として、

企業広報の重要性 を意識 し、広報部門 を設置す る などしたことか ら、広報導入期 と名付 けることが で きる

1978年12月に 「中国共産党第十一届三中全会」

が開催 されたが、 ここで初めて中国経済の改革開 放政策が打 ち出 された。主 な内容 は、① 中央政府 に集中 されていた経済管理体制 と経営管理方法を 見直す、⑦世界の先端技術 と設備 を導入す る、③ 近代的経済制度 に相応 しい科学発展 と教育事業を 推進す る、④国民の思想 を解放 して実事求是 (辛 実 に基づいて物事の真相 ・真理 を求め尋ね ること) の考 え方 を求める、(9中国共産党の歴史的功罪を 振 り返 って錯誤の訂正 を徹底す る、⑥民主主義の 考 え方 を提唱す るなどであった5。

改革 開放政策は、中国企業に対 して、国家のマ クロ計画 に依存 して きた閉鎖的な経営管理 を見直 す機会 を与 え、先進国企業の経営方式に学ぶきっ かけを与 えた ともいえる。 これによって、中国企 業 は,̲国家のマクロ計画 を達成す るよ りも市場の 需要 を満 たす ことを重要視 し、上級機 関の指示に 従 うよ りも自ら自社の経営環境 に適合す る経営判 断を行 うとい う意識 を持 ち始めたのである。この 段階に至 って、企業の生産力を高めるためには従 業員の協力 を得 る必要があり、商品販売量 を増や すためには消費者 の信頼 を得 る必要があるなど、

中国企業 は、 自社 を取 り巻 く様 々な利害関係者の 信頼 と支持 を得て、社会か ら歓迎 され る企業 とし て健全 な発展 を図 る必要性 を認識 した。 これが中 国で企業広報の重要性 を意識 し始めた大 きな背景 である

1980年8月に開催 された 「第五届全国人大常委 会第十五 回会議」 において 「広東 省経済特 区条 例」が発表 され、深 セ ン、珠海、油頭、屡門の4 つの沿海都市が経済特区 として指定 された。経済 特区は、改革開放政策の窓 口と称 され、企業広報 の考 え方が最初 に導入 された地域で ある。たとえ ば、1982年 に深 セ ン竹 園 ホテル が海 外 ホテルの

経営方式 を導入す る一環 として最初 に広報部門 を 設置 した。 その後、1983年 に中米合 併 ホテル の 北京長城 ホテル、1984年 に広州 中国 ホテル や東 方ホテルなどのホテル業界が次々と広報部門 を設 置す るなど、中国企業 が広報導入期 に入 った と考 えられ る6。

広報導入期の主 な特徴 として、1つ は、改革 開 放政策の推進にともなって経済特区 として指定 さ れた沿海都市 を中心に企業広報が導入 された こと と、 もう1つ は、沿海都市 のホテル業界 が中心 と なって海外企業の経営方式 を導入す る一環 として 企業広報の重要性 を意識 し始 めたことで ある7。

2.2 1983年 「利改税制度」の導入 と広報啓蒙 期 (1983‑ 1992)

第2段階は、1983年 に導入 された 「利改税制度」

と、 それ に ともな う 「擁 改貸制度 」 の実施 か ら 1991年 まで を指す。 この段 階で は、企 業広報 の 考 え方が国営企業 に浸透 し始め、外資系広報 コン サル テ ィング会社

( P R

会社) が進 出 し、広報協 会 も設立 され るなど、広報啓蒙期 と名付 けること がで きる。

1983年4月に 「国営企業 に関す る利改税制度」

が採用 された。 この制度 により、国営企業 は利益 を国に上納す る代わ りに一定の税金 を納 めること になったので ある。 この税金 を納 めた後 に残 され た利潤 は個 々の企業 が自由に使 うことが可能 とな り、経営活動 もより自主的になった とい える。 ま た、利改税制度 にともなって実施 された塵改貸制 度 は、国営企業の新規投資が財政支出によるので はな く銀行か らの借 り入れに改 め られたため、国 営企業 は借 りた資金 に利息 を付 けて返済す ること とな り、従来の ような効率 を無視 した投資の拡大 に歯止 めをかけることになったのである8。

一方、国民の生活水準 も次第に改善 され、商品 の品質やサービスに対す る人々の要求 も高 まって きた。 こうした流れの中で、中国の国営企業 は、

消費者 をは じめ とす る様 々な利害関係者の信頼 や 支持 を得 ないでは、優 良な商品やサービスを提供 す る外資系企業 に太刀打 ちで きない事態 に直面 し

(4)

154 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14 20103月

たといえる。 これが国営企業において も広報の重 要性が意識 され始めた大 きな背景である。

1984年9月に広州 白雲山製薬工場が国営企業 と して最初の広報部門を設置 した。当時の広州白雲 山といえば、「穿心蓮」 という1種類の薬品 しか生 産 してお らず、毎年生産額 が20万元 も満 たない よ うな小 さな郷鎮工場 であった9。 しか し、広報 部門を設置 して以来、良好な企業 イメージが構築 可能な広報活動 を積極的に展開 したのである。た とえば、工場 ビデオを作成 して工場来訪者に放映 す る、サ ンプル品を無料で配布す る、工場見学プ ログラムを実施す る、薬品の製造方法 をメデ ィア で紹介す る、医薬専門媒体や医薬学術界などと定 期的に情報交換 を行 う、通信販売 を利用する顧客 に手紙 を送 る、全 中国の800店舗以上の販売店 に おいて顧客の需要や意見に対 して適時なフィー ド バ ックを行 う、 といった様 々な広報活動 を展 開

し、その結果、中国社会に歓迎 され るような大成 功 を収 めた とい える。 それ は、1990年代 に入 っ て、広州 白雲山が生産する医薬品種類は数百種に 達 し、毎年生産額 は1億元 を超 え、上納す る税金 額 も1千万 を超 えるような大型国有企業 に成長で きたことか らも明 らかにされ る。広州白雲山の効 果的な広報活動は、中国の重点媒体か らも注 目さ れ、有力 ビジネス誌 『経済 日報』 (1984年12月26

日付) には、「如虎添巽 (鬼 に金棒)一広州 白雲 山 製薬工場の広報活動」 をテーマに した社説が掲載 された10。 これは、 まだ広報の考 え方 が導入 され ていない多 くの中国国有企業に対 して企業広報の 重要性 を示唆 したといえる。

企業広報の必要性 に対す る認識が高 まるなか、

外資系PR会社 も中国市場 に目を向 け始 め、子会 社や合弁企業 を相次いで設立す るようになった。

た とえば、1984年10月に米系PR会社 ヒル&ノウ ル トン社 が外資系 として初 めて北京 にPR事務所 を設立 した。 また、1985年8月には同 じく米系PR 会社パーソン ・マーステラ社が中国新聞発展有限 会社 と業務提携 し、翌年に合弁企業の中国環球公 共関係公司 を設立す るなど、中国における企業広 報の重要性がますます高 まってきた。 このように、

中国産業界において企業広報の重要度が高 まるな か、1986年6月に上海市政府が中国最初の広報協 会 となる上海市広報協会 を設立 した。主な会員に は、政府機関と中国国内一般企業のほかに、中国 経済の成長に不可欠な存在であったいわゆる三資 企業 (合弁、合作、独資)も含 まれていた。協会の 活動方針は、政府機関、個 々の企業、その他諸組 織体間の相互理解 と協力を促進 し、地域社会の健 全 な発展 を推進す ることであった11。上海市広報 協会の発足 を契機 に、北京や天津 をはじめとす る 地域 に根 ざした協会 が相次いで設立 され、1987 年6月には全国を網羅 した中国広報協会、1991年 4月には国際性 を目指 した中国国際広報協会が設 立 され、中国における企業広報の発展 に大 きな影 響 を与 えたのである。

広報啓蒙期の主 な特徴 として、1つ は、国営企 業が広報の重要性 を意識 し始め、広報部門 を設置 し広報活動 を展開す るようになったことと、 もう 1つは、外資系PR会社が中国に進入 して産業界 と メデ ィアの間の架 け橋 として活躍 を広 げ始め、そ れにともなって地域 に根 ざした広報協会が相次い で設立 されていったことである12。

2.3 1993年 「近代的企業制度」の確立 と広報 成長期 (1993‑ 2000)

第3段階は、1992年1月か ら2月にかけての郡小 平 による 「南巡講話」 を背景に、それにともなう 1993年の 「近代 的企業制度」の導入か ら1999年 までを指す。 この段階では、中国が本格的な市場 経済への移行にともなって、マーケテ イング型広 報、 コーポ レー ト・アイデ ンテ ィテ ィ

( C

I)、 カ ス タマー ・サテ ィス フ アクシ ョン (CS)の取 り 組みが始 まり、広報 コンサルテ ィング業界が急速 に発展 し、広報協会がます ます活躍の場 を広 げる など、広報成長期 として位置づ けることがで きる。

1992年 の鄭小平 「南巡講話」 とは、郡小平 が武 漢、深 セン、珠海、上海 など沿海都市 を次々と視 察 し、10年以上実施 して きた改革 開放政策 に関 す る教訓や新たな改革方針などを熱 く語 って回っ たことである。南巡講話で邸小平 は、 「計画経済

(5)

が必ず社会主義であることではな く、資本主義 に も計画があり、市場経済が必ず資本主義であるこ とではな く、社会主義 にも市場がある」 といった

「社会主義市場経済」 の考 え方 を提 唱 した13。 そ の翌年11月には 「中国共産党第十 四届三中全会」

が開催 され、本格的な 「近代的企業制度」が打 ち 出 された。主 な内容 は、所有権の帰属、財産権 と 所有責任の明確化、政企分離、科学的管理制度の 形成、7tいった4つの改革 目標 を軸 に構成 された。

この よ うななか、1993年12月に会社法 が制定 さ れ、中国企業 に初 めて 「新三会」 といわれ る株主 総会、取締役会、監査役会が設置 され るようになっ た。そ して 「老三会」 といわれ る党委員会、従業 員代表大会、労働組合 が保有 していた経営管理機 能が新三会 に移行 され るなど、本格的な自主経営 の段階に入 ったとみ ることがで きる14。

その一方 で、1990年代前半 か ら新 聞やテ レビ などのメデ ィア産業 も成長期 を迎 え、それに とも なって企業広報の展 開 も新たな発展段階に入 った。

た とえば、経営活動におけるマーケテ ィング戦略 の必要性が高 まり、広報販促部、広報企画部、広 報発展 部 を設置す る企業 が増 えるな ど、マ ーケ テ イング型広報の展 開が顕著 になった15。 さらに、

1990年代後半 か らイ ンターネ ッ トが普及 し始 め、

メデ ィアの種類 や数 が急増す るなか、CIやCSの 考 え方が浸透 し始 めた。CIは、 自社の経営理念や 企業活動 を社会 に伝 えることにより、社会に信頼

され、良い企業 イメージが創 出可能な活動 を指 し、

それ に対 してCSは、顧客 を重視 す る経営理念 に 基づいて経営活動 を展開す ることである。

中国においてCIやCSの考 え方 が普及す るに と もなって、広報 コンサルテ ィング業界 も急成長期 を迎 えた。 た とえば、1999年 時点 で は、外 資系 PR会社 がすでに50社 にのぼ り、業界全体の売上 高 は1997年の2億元か ら2001年の20億元 にまで増 加 したので ある16。 また、広報協会の数 も1999年 時点で、全 国 レベル が2、省 レベル が28、地方市 レベル が70にのぼ るな ど、企業広報 は成長 期 を 迎 えた とい える17。

広報成長期の主 な特徴 として、1つ は、中国企

業 においてマーケテ イング型広報、CI、CSな ど の広報活動が展 開 され るなど、企業広報 が多様性

を持つ よ うになった ことと、 もう1つ は、中国市 場 における企業広報の重要度 が高 まるなか、広報

コンサルテ ィング業界や広報協会 が成長期 を迎 え、

その役割 をます ます広 げるよ うになったことであ る18。

2.4 2001年 「中国WTO加 盟」 の始 ま りと広 報革新期の到来 (2001年〜)

第4段 階 は、2001年12月 の 「中 国WTO加 盟 」 以降を指す。 この段階では、中国経済のグローバ ル化が加速化 し、外資系企業 が次々 と進出 して く

るなか、中国企業が厳 しい国際競争社会で勝 ち残 るためには、企業広報の考 え方 および役割 を一層 進化 させ、経営活動 における重要 な要素 として認 識 され るなど、広報革新期 と名付 けることがで き

る。

2001年12月のWTO加盟 によって、 中国企業 は 一段 と厳 しい経営環境 に直面 した といえる。 それ は、 「社会主義市場経済」 と呼ばれ る中国独特 の 経済体制が中国市場 だけではな く、国際市場 と直 接 リンクす ることを迫 られたか らである。 そこで、

中国企業 が直面 した主 な課題 として、第 1に企業 競争力の強化 が挙 げ られ る。

WT

O加盟以降の中

国は、 きわめて旺盛 な投資 と貿易黒字の急増、堅 調 な消 費 が相 まって8%以上 の高 い成 長 を続 けて きた。 しか しなが ら、1人 当た り国内総生産値 は 依然 として低 く、多 くの地域では、「温飽型生活 (衣 食 が足 りる生活)」 か ら 「小康型生活 (少 々豊 か な生活)」へ移行す る段階 に置 かれ るな ど、未 だ に低収入国家 に止 まってい る。 こうしたなか、数 多 くの外資産業 が中国市場 に進出す ることによっ て、企業競争力の弱い中国企業 はもはや政府 に依 拠す ることもで きず、倒産 を余儀 な くされ大量の 失業者 を生み出すなど、中国企業 は厳 しい国際競 争社会 に突入 した といえる。

も う1つ は、企 業 不 祥 事 へ の対処 が挙 げ られ る。連 日の企業不祥事 は、従業員のモ ラール低下 や顧客の企業不信、株価の下落や証券市場 に対す

(6)

156 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第14 2010年3月

る投資家の不信感 を招 くばか りでな く、 ときとし て社会全体 に大 きな影響 を及ぼす。 こうした事態 を受 けて、中国企業 に対 して監督 ・管理機能 を有 す る公的機関 を中心に、企業統治の強化に力 を注 いで きたが、実態があまり変わっていないことも 事実 で あ る。 それ は、 中国公安 省の発表 に よる と、2007年度の経済犯罪事件 は8万4千件 に達 し、

2005年度 の約6万件 を大 きく上 回 った ことか ら も明 らかである19。

そこで重要性 を増 して きたのは、企業が良 きコ ミュニケーシ ョンに基づいて様 々な利害関係者 と 誠実 な対話 を行 うことである。つ まり、企業 は社 会の声 に謙虚 に耳 を傾 けると同時に、 自らの意思 を明確 に表明す ることこそ、企業の透明性 につ な が り、社会か ら信頼 され る企業 として健全 な発展 を成 し遂 げることが可能になるといえる。

広報革新期の主 な特徴 として、1つ は、企業広 報 は、企業が厳 しい国際競争社会で勝 ち残 るため の重要 な経営活動 として、その役割 を広 げなけれ ばな らな くなった こと、 もう

1

つ は、相次 ぐ企業 不祥事 に歯止めをかけ、様 々な利害関係者 に尊敬 され る企業 と して健 全 な企業経営 を導 く重要 な ツール にな らなければな らない ことである。

3.

中国企業における広報活動の実態 中国企業の広報活動 を研究す るにあたって、(∋ 中国最大の鉄鋼企業 一宝山鋼鉄、(∋中国最大の建 設企業 一万科企業、③ 中国最大の電器企業一昔鳥 海爾の3社 を考察対象 とす る。 その理由は、大 き

く以下の2点にまとめ ることがで きる。

第1に、3社 それ ぞれ が異 な る企業形 態 を代表 し てお り、企業成長 は共 に顕著で ある。 た とえば、

3社の2004年度 か ら2008年度 までの経営指標 によ れ ば、宝 山鋼鉄 は

1

株 当た り純利益

( EP S )

と棟主 資本利益率(ROE)のみ、万科 は1株 当た り純資産

田P S )

EP S

のみ、青 島海 爾 は

BP S

のみ が、 自己 資本 の拡大 や大量 な非流 通株 の放 出 よ り、2007 年度 に若干下がっているものの、それ以外のすべ ての指標 は右肩上 が りの趨勢 を示 し、3社 とも近

年 において、中国で最 も尊敬 され る企業 と評価 さ れ健全 な発展 を遂 げてい る。

第2に、宝 山鋼鉄 と万科企業 は、独 自の企業行 動規範 を明確 に策定 しているが、その中では広報 の重要性 と活動方針が強調 され、青島海爾の場合 も、企業理念 に広報の考 え方 が強調 され、効果的 な広報活動 を積極 的に展 開 してい る。つ ま り、3 社 とも利害関係者 と意思疎通 を図 り、利害関係者 の期待 に応 えるよ うな広報活動 を展 開 してお り、

それがどのように企業経営 に反映 してい るのかを 解明す ることが、3社 を取 り上 げた主 な理由で あ る。

3.1 宝 山鋼鉄(株 式有 限公 司)と 「宝 山鋼鉄 投 資家関係管理規則」

宝 山鋼鉄 につ いて は、2005年12月に策定 され た 「宝山鋼鉄投資家関係管理規則」 を考察対象 と す る。その理由は、多 くの研究者が指摘 して きた ように、国家所有の株式が多 くを占めてい る企業 においては、少数株主の権利 が侵害 されやすい恐 れがあり、非効率的経営に陥 ることが憂慮 され る か らである。確 かに、国家所有の株式が多 くを占 める企業では、先進国における多数の株主 による 企業経営への監督 に比べ、監督機能が十分果た さ れない とい う問題が存在す る。 しか し、宝山鋼鉄 のよ うに投資家 との利害関係 を大事 にす る行動規 範が定め られ、それ を実行 してい く条件 さえ整 え ば、非効率的経営に陥 ることを避 けることもで き るのである。そ して何 よりも、投資家 と健全 な利 害関係 を構築す るために、広報の重要性 が鮮明に 強調 されたことに注 目したい。 この規則 は7項 よ り構成 され20、 これ を重要 な内容 に焦点 を絞 ると 図表2のような3点にまとめることがで きる。

宝 山鋼鉄 が2007年 に中国上場会社投資家関係 管理研究 センターの

「 I

R最優秀賞」 を受賞 したの も、2009年 に米 フォーチ ュ ン誌 の 「世 界 で最 も 尊敬 され る企業」 に中国企業 として初 めて選ばれ たの も、投資家関係管理規則 を土台 とし、効果的 な広報活動 を展 開 して きた ことが要因の1つで あ るといえる。

(7)

図表2 「宝山鋼鉄投資家関係管理規則」 の要点

① 目的と基本原則 :投資家 と意思疎通を図 り、投資家利益 を重視 し、投資家尊重の文化 を構築する。投資 家の理解、協力、賛同を得て、企業価値の向上を目指す。誠実原則 を徹底 し、双方向型広報活動の強化によ

り投資家 と健全な利害関係 を図る。

② 対話の内容 と方式 :対話内容には、経営方針や企業戦略も含む。対話方式は、株主総会以外に投資家大 会 を定期的に開催 し、電話やファックスなど、 さらに「一対一」会談 も設ける。メデ ィアと常に友好関係 を構 築 し、定期的にメディア参加の対話会 を開き、公正な企業広報活動を展開す る

① 管理組織 と広報意識 :取締役会長は、本規則を管理する第1責任者であり、企業広報部 と企業文化部が主 体 となり、双方向型広報活動を展開 し、他部門との連携 を図 り、従業員1人ひとりが投資家に対する尊重意 識を高める必要があり、企業は関連知識 を教えなければならない。

(出所)宝LU鋼鉄(2005)「宝山鋼鉄投資家関係管理規則」 を基に、筆者作成。

3.2

万科 企 業(株 式有 限公 司)と 「万科 企 業総 裁(最高経営責任者)業務条例

万科 企業 につ いて は2007年10月 に策 定 され た

「万科 企業総裁 (最高経営責任者)業務条例 」 を考 察対象 とする o その理 由は、中国で相次 ぐ企業不 祥事 をみ ると、最高経営責任者 が自己利益 を満足 させ るため、倫理性 を失 った行為 に走 るケースが あま りに も多いか らで ある。つ ま り、企業不祥事 の背後 には、最高経営責任者 による違法経営があ るともい える。 そのため、車高経営責任者 の正 当 な行動規範 が基盤 とな り、 その実効性 を発揮す る ことが重要で ある点 を見逃 してはな らない。 この 総裁 業 務条例 は、2004年12月 に策 定 され た 「総 経理 (社長)業務条例」の改訂版 で あるが、企業経 営者 と従 業 員 との 関係 を一層 強化 した こ とに注 目したい。 この条例 は、8章44条 よ り構成 され21、 これ を重要 な内容 に焦点 を絞 ると図表3の よ うな

3点 にまとめ ることがで きる。

万科企業 は、2002年 か ら2008年ま で7年連続 し て北京大学管理実例研究 セ ンターの 「中国で最 も 尊敬 され る企 業」 に選 ばれ、2004年 か ら2008年 まで

5

年連続 して中国最大 の商業紙 で ある 『21世 紀経済報道』 の 「中国最優秀企業市民」 に選ばれ てい る。 これ も、総裁業務条例 を土台 と し、諸利 害関係者 と健全 な利害 関係 を構築す る広報活動 を 重視 して きた ことが要因の1つで あると考 える。

3.3

青島海爾(株式有限公司)の

「 OE

C管理法」 冷蔵庫 や洗濯機 、空調機器 などの製造 を手 がけ る青島海爾 につ いては、企業理念 の

「 OEC

管理法」

を考察対象 とす る。"

0"

、Ov e r a

ll(各方面)、"

E"

、Ev e r y o n e( 1

人 ひ と り) と

Ev e r 沖 i n g ( 1

つひ とつ) と

Ev e r yt i me(

いつで も)、"

C"

は、

Co n t r o l

(コ ン トロール) と

Cl e a r

(ク リア) を表 してい る。 この

OEC

管理法 を青島海 爾 は、 「単 に 図表3 「万科企業総裁業務条例」 の要点

①企業経営者の資格 :豊富な経済理論、実践経験、経営能力を有 し、本業界に精通 し、国家政策、法律法規 を掌握1L,rIa。従業員の積極性を動員 し、合理的な組織機構 を構築 し、企業 と企業 を取 り巻 くさまざまな利害 関係者 との間に健全な関係 を構築できる能力を有する。

②業務手順;Ll:重大な投資プロジェク トは、投資と戦略委員会の承認を必要 とし、執行担当者や監督者 を明確 化 し、定期的に実行状況 をその委員会に報告する。従業員の給与や福利、労働保険や解雇 などの利害に関わ るすべての問題 を決める際に、必ず事前に労働組合の意見を聴取する0

③職責 :企業 と投資家、および従業員の間の利害関係 を正確に把握 し処理 し、企業 より発信 される情報の真 実性 を保証する。従業員の育成や教育 を強化 し、従業員に十分な成長機会 を与 え、積極性 と創造性 を十分に 生かせ るような企業文化 を創造するために努める。

(出所)万科企業(2007)「万科企業総裁業務条例」 を基に、筆者作成。

(8)

1 5 8

神奈川大学大学院経営学研究科 r研究年報』第

1 4

2 0 1 0

3

月 や るべ きことを確実に成 し遂 げるだけではな く、

日々、少 しずつの進歩 を意味 し、1人ひ とりの従 業員に対 して 日々少 しずつの積み重ねが重要であ ることを教 え、利害関係者の

1

人ひ とりを大事 に す る企業文化 を養成す ること」 と解釈 してい る。

つ まり、利害関係者の1つひ とつ を大事にし、個 々 の利害関係者の要望や期待、不満に応 えるような、

先端的な企業広報の考 え方が企業理念のなかで強 調 されたといえる22。

近年、中国経済の急速な発展 にともなって農村 部市場における消費成長率 も高 まりつつ ある。な かで も、家電製品の販売量が急増 し、その うち農 村市場 におけ る洗濯機 の 占有率 は、青島海爾 が

5 0 %

以上 を占めている。また、中国農村部では 「品 質が良 く、サービスの提供が良 く、名声が高いの は海爾電器 で ある」 といったス ローガ ンまで広 がってい る23。 この よ うに、中国人 口の7割 を占 める農村部に大変歓迎 される企業 として健全な発 展 を成 し遂 げ る青島海爾 に とっては、OEC管理 法の企業経営への実践が重要 な要因の1つである と考 える。

それに関す る1例 を挙 げると、洗濯機 が農村部 市場に広が り始めた頃、一部の農民消費者か ら青 島海爾製洗濯機 の品質 に問題 があると訴 えられ、

一時期メデ ィアや消費者の批判にさらされる危機 にまで陥った。青島海爾は素早 く苦情処理委貞会 を立ち上げ、事情 を調べたところ、原因は洗濯機 の排水管がよく詰 まることであった。 さらに原因 を追及 したところ、農民消費者 は洗濯機 の用途 と して洗濯以外 に野菜 も洗 っていた ことがわか り、

野菜に付いていた泥 が排水管 を詰 まらせた原因で あることが判明 した。なお、青島海爾は、農民消 費者が洗濯機 を不当に使用 していたことを知 って も、被害者 に対 して無念 さを表明 し、農村部消費 者向けに驚 くほどの対処 を行 ったのである。それ は、海爾 グル ープcEOで ある張瑞敏氏 は、事件 発生の直後、「この地域 に販売す る洗濯機 のすべ ては、排水管の直径 を大 きくしよう」 といった意 思決定 を直 ちに下 したことか らも明 らかにされる。

つ ま り、OEC管理法で強調 され たよ うに、個 々

の利害関係者の要望や期待、不満に応 えるような 経営活動を展開 していることである24。

ここで取 り上 げた先進的な中国企業3社の企業 広報を振 り返 ると、 まず、宝山鋼鉄の投資家関係 管理規則は、株主尊重主義 を構築す ることを目的 に、双方 向型広報活動の強化 によって投資家 と 健全 な利害関係 を図 ることと、従業員1人ひ とり が投資家 に対す る尊敬 の念 を高め る内容 で あっ た。つ ぎに、万科企業の総裁業務条例 は、企業不 祥事の防止 と企業競争力の強化 を目的に、企業総 裁に経営の正当性 と厳格な説明責任 を要求す ると 同時に、従業員 と良き労使関係 を創造 し、投資家 をは じめとす る様 々な利害関係者 との利害関係 を 正確 に把握 し処理 し、企業 より発信 される情報の 真実性 を保証す る内容であった。そして、青島海 爾の 「OEC管理法」 は、利害関係者の1人ひ とり を大事にす る企業文化 を醸成す ることを目的とし、

個 々の利害関係者の要望や期待、不満に応 えるよ うな経営活動 を展 開す ることであったOつ まり、

3社 における企業広報 は、いずれ も経営活動の重 要な要素 として確立 されてお り、様々な利害関係 者に尊敬 され る企業 として健全な企業経営を導 く ためのツールになっているといえるo

4

「和 階社会

」 の実現 と企業広報の役割

4.1 和階社会の内容 と特徴

2 0 0 4

9

月に開催 された 「中国共産党第十六届 四中全会」において 「中国共産党政策執行能力の 強化に関す る行動指針」が発表 され、中心指針の 1つ として 「和階社会」が掲げ られた25。翌年2月に、

中国共産党中央委員会 は、「省 レベル主要幹部 に よる和階社会 に関す る研究会」 を開催 し

、2 0 2 0

年 までの実現 目標 を立て ると同時に、図表4に表

され るよ うに、6つ の構成 内容 と6つ の行動原則 を明確化 した。

和階社会の構成内容 は、①民主法治 :民主主義 の思想 を浸透 し、法律 に依拠す る統治制度 を確立 す る、②公平正義 :社会 において発生す る様 々な 利害関係が調和性 と適切性 を保 ち、国民内部の矛

(9)

図表4「和階社会」 の内容 と行動則

(出所)著者作成。

盾 と社会の矛盾 を正確 に処理 し、公平 と正義 を確 実 に保護す る、①誠実友愛 :社会 を構成 す る様 々 な組織体の間に協力 し合 い、誠実性 と真実性 を追 求 し、全 国民 が平等、友愛、融和の溢れ る生活 を 送 る、(彰充満活力 :組織体 および国民の創造活動 が十分 な支持 を得 られ、才能 を十分 に発揮で き、

相応す る成果 を得 られ る環境 で ある、①安心秩序 : 社会 を構成 す る組織体 が健全 な発展 を持続 し、社 会管理 システムが充実 し、社会秩序 が良好であ り、

国民が安心 した生活 を送 る、(参調和交流 :人 と人、

人 と自然 が調和の取れ た付 き合 いを し、国民生活 が豊かで あ り、社会バ ランス も取れた良好 な環境 で ある、 とい った6つ の基本 内容 で ある。 そ して、

和階社会 を実現す るために も、人本主義 (以人為 本)、科学発展 、改革 開放、民主主義、共 同建設、

安定 した発展 (穏 定 発展)とい った6つ の行動原則 を堅持すべ きだ と強調 してい る26。

つ ま り、社会 を構成 す る組織体 および個人がそ れぞれ能力 を十分 に発揮で き、相応す る成果 も享 受でき るよ うな社会環境 を作 り上 げ、互 いに協力 も合 い、かつ誠実性 と真実性 の溢れ る社会 を築 き 上 げることが、和階社会で あるとい える。換言す れば、組織体、個人、社会 の間に発生す るあ らゆ る矛盾点 を解決す ることによって、和階社会 を実 現す ることが可能 とな り、 それには、組織体や人 間の間に充実 した意思疎通 を図 り、積極 的な協力 関係 を保 ち、 ときには矛盾 を解決す るための危機 管理 な どの効 果 的 な広 報活 動 を展 開す る こ とに

よって、和階社会 を構築で きると言 って も過言 で はない。

4.2 広報機 関の新 たな動 きと期待 され る広報 協会の活躍

2005年2月に 「省 レベル主要幹部 によ る和 階社 会 に関す る研究会」 が発足 し以来、全 国の様 々な 広報関係機 関では、広報 の社会 的使命 と役割 を一 層意識 し、図表5に示 され るよ うに率先 して和階 社会の実現 を目指す研究会 や座談会 を開催す るよ うになった。 なかで も広 報協会 の活躍 が著 しく、

2008年11月13日か ら15日の3日間、国際PR協会

( I PRA)

と中国国 際広 報協 会 が共催 した第 18屈 世 界PR大会 で も、大会のテーマ を 「広報 :グロー バル時代 における和階社会」 と設定 したので ある。

こ うした中国 におけ る広報協会 を分類 す ると、

下記の3種類 に分 けることがで きる。第1種 は、活 動範囲 を全 中国に広 げ るとともに、外国の広報協 会 との連携 を図 るよ うな全国性 かつ国際性 を持つ 全 国 レベル協会で ある。 それ には、 中国広報協会 や中国国際広報協会 な どが含 まれ、主 た る目的は、

広報の理論的研究 と実践 的探究 を推 し進 め、企業 の広報活動 と広報 コ ンサル テ ィング業界の制度化 を図 り、発展戦略 を研究 し、外国の広報協会 との 連携 および協 同 を図 ることで ある。第2種 は、活 動範 囲 を省 ・直轄市 内 とす る地域性 を持つ省 ・直 轄市 レベル協会で ある。 それ には、省 レベルの遼 寧省広報協会や広東省広報協会、直轄市 レベルの

(10)

160 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14 2010年3月

図表5 「和階社会」の実現 をめ ぐる広報機関の動向

年月 主催機関 概要

2005/4 漸江省広報協会 研究会 「広報と和階社会」を開催

2005/4 国際広報研究中心 座談会 「和階社会と、広報の責任 と使命」 を開催 2005/5 広報教育専門委員会 学術年会 「社会主義における和階社会の実現」を開催 2005/8 中国広報協会学術委員会 学術委員年会 「広報 と和階社会の理論研究」を開催 2006/8 遼寧省広報協会 研究会 「広報 と社会主義栄辱観(光栄 と恥)」を開催 2006/10 全国広報組織連席会 「和階社会、政府機関の信用度、企業競争力」を提出 2006/12 寧波市広報協会 研究会 「広報と和階社会」を由催

2007/12 垂波市広報協会 研究会 「和階社会と広報の社会的責任」を開催

(出所)筆者作成。

上海市広報協会や北京市広報協会 などが含 まれ、

主たる目的は、地域内組織体の広報活動 をサポー トし、全国 レベル協会 に参加 し他省協会 との連携 を図 ることによって、地域内組織体の広報活動 を 活性化 させ ることで ある。第3種 は、活動範囲 を 市内 とす る地方性の濃い市 レベル協会である。 そ れには、遼寧省の藩陽市広報協会や大連市国際広 報協会、広東省の広州市国際広報協会や仏山市広 報協会 などが含 まれ、主たる目的は、省 レベル協 会に参加 して経験 を吸収 し、市内組織体の広報活 動 をサポー トし、市内組織体間の相互理解 を促進 す ることである。

この よ うな中国 におけ る広 報協会 の共通の特 徴 は、 いずれ も政府機 関が主導 的 な役 割 を果 た し、政府機 関、個 々の企業、 メデ ィア事業の3着 の広報活動 を同時にサポー トす ることである。つ まり、中国の広報協会には、政府、企業、 メデ ィ アの関係者がそれぞれ参加 し、共通の 目的 として、

組織体間の意思疎通 を図 りなが ら、組織体間また は組織体 と公衆 との相互理解 を深 めることによっ て社会全体の健全 な発展 を目指す ことを掲 げてい る。 したがって、中国では和階社会 を目指す うえ で、広報協会の活躍 に大 きな期待 を寄せていると いえる。

4.3 企業広報の重要性 と残 された問題点

しか しなが ら、和階社会 を目指す うえで、政府 機 関または政府主導の広報協会 に任せ るだけでは 理論段階に止 まり、 目標の実現が難 しくなって く ることも考 えられ る。 なぜ な らば、和階社会 を構 築す るには、個 々の組織体 とそれに所属す る個人 が主役的な役割 を果たす ことが不可欠であ り、政 府 レベルが理論 を強調す るばか りでは実践 につな が らないことが考 えられ る。それは、近年 におい て相次いで発生す る中国少数民族 の抗議運動や分 離独立運動、 さらには民族 間の紛争か らも明 らか であり、国民の政府 に対す る不満や民族 間の不信 が改善 に向かっていないばか りか、強 まる一方で あることに裏付 け られてい る。

こうした現実 を踏 まえて考 えれば、中国社会の 経済発展 を推進 し、社会 を構成す る重要 甲 体 と なる中国企業の活躍 にこそ大 きな期待 を寄せ るべ きである。個 々の企業が健全な広報活動 を展 開す ることによって、企業 を取 り巻 く様 々な利害関係 者の間に調和 した利害関係 を保つ ことがで き、健 全 な企業や社会の発展 を導 くこともで き、最終的 に和階社会 を実現す るうえで重要 な役割 を果たす ことが可能だ と考 える

とはいえ、今 日の中国企業では、企業不祥事が 止 まるところを知 らず、 中国公安省 の発表 によ れば、2007年度の企業不祥事 は8万4千件 に達 し、

2005年度の約6万件 を大 きく上回っている。2003

(11)

年 か ら2007年 の間、証券監督管理委員会 が処 理 した上場会社不祥事件数だけで736件 に ものぼ っ てい る27。 こうした相次 ぐ企業不祥事 は、株価 の 下落や証券市場 に対す る投資家の不信感 を招 くば か りでな く、 ときとして社会全体 に大 きな影響 を 及ぼ し、和階社会 を実現で きないばか りか、経済 発展 の足 を引っ張 る主要な原因 ともなるだろう。

そこで筆者は、中国における企業広報問題 を下 記の3点 に ま とめ ることに した。第1に、上級機 関の指示 を受 けるだけでは、受動的立場 に立つ よ うな性格 が強いため、企業広報の考 え方 を企業内 に浸透 させ ることは望 めず、経営活動の重要 な要 素 として も確立 されていかないことである。 そこ で大切 なのは、企業が自ら積極的に広報意識 を高 めなが ら広 報活動 を展 開す ることで ある。第2に、

広報対象 となるパ ブ リックを 「一般大衆」 とい う 広 い意味で捉 えていては、 どの利害 関係者に対 し て どのような広報活動 を展 開すべ きか、 といった 効果的な広報活動が展 開 されていかないことであ る。 そこで大切 なのは、企業 は利害 関係者の1つ ひ とつ を、特性 を持 った広報対象 として捉 え、個 々 の利害関係者 (グループ)の要望や期待、不満 に 応 えるような、的を蔽 ったいわゆる 「狭報」活動 を展 開す ることが重要 とな る28。 第3に、企業 内 に企業広報 に関す る明確 な行動規範が策定 されて

L73ミクロ視点マクロ視点

いないため、経営活動における企業広報の役割や、

広報担当者の権利 および責任 などが明確化 されて いない ことで ある。そこで重要 なのは、企業が自 らの企業広報規範 を自発的に策定 し、実効力 を発 揮 してい くことであると考 える29。

5

企業広報の新たな方向性

こうした状況 を考 えれば、企業広報が企業経営 の健全 な発展 を導 き、和階社会 を実現す るうえで 主役 的な役割 を果 たすには、図表6に示 され るよ

うな新たな方向性 が必要だ と考 える。

第1に、 ミクロ視点か らみ ると、 まず、企業広 報 を独立 した経営活動 として扱 うのではな く、他 の経営 システムと密接 な連携 を図 ることによ り、

効果的な広報活動が展 開 され る。つ ぎに、企業広 報 は、他 の経営 システムの支持 を得 なが ら自発的 に企業広報規範 を策定す る必要がある。企業広報 規範 には、広報活動に関わ る各担当者の行動指針、

広報の役割や責任 などの内容 が含 まれ、健全 な企 業広報規範 に基づいた広報活動が展 開 され ること を期待す る。加 えて、企業広報規範が実効性 を発 揮す ることによって、企業競争力が向上 され、企 業不祥事 も抑制で き、最終 的に利害関係者 に歓迎 され る企業 として成長で き、それが和階社会 を実

図表6 和階社会 を目指す企業広報の新 たな方向性

(出所)著者作成。

(12)

162 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14 20103

現す ることが可能 な重要 な土台になると考 える。

2に、 マ ク ロ視 点か らみ ると、 まず、 中国の 広報協会 は、海外で は国際性 を持つ広報協会や外 国の広報協会、国内では行政機 関 と連携 しなが ら 広 報 の成 熟 化 を図 る。つ ぎに、企業広 報 は、広 報協会 に積極 的参加 し指導 を受 けつつ切瑳琢磨 し、

行政機 関の適切 な指導 を受 けることによって広報 意識 を高 め、効果的な広報活動 を展 開す ることが 可能 とな る。加 えて、企業 をは じめ とす る様 々な 組織体の間に誠実 かつ真実 な広報活動 を展 開す る ことによって中国社会 に存在す る様 々な矛盾点の 解決 に貢献 し、調和 の ある利害 関係 が構築 で き、

最終 的に和階社会 を実現す ることが可能だ と考 え る。

おわりに

本稿 では、中国における近代 的企業制度の推進 に ともなって変遷 して きた企業広報の歴史的展 開 を、広報導入期、広報啓蒙期、広報成長期、広報 革 新期 の4段 階 に分 けて考察 し、 それ ぞれの特徴 をまとめた。つ ぎに、先進 的 な中国企業3社 に焦 点 を当てて、企業広報が企業経営の健全 な発展 に 多大 な影響 を与 えることを論証 した。加 えて、中 国が 目指す和 階社会 の内容 と行動原則 を考察 し、

和階社会 を実現す るうえでの広報の役割 を確認 し、

広報協会 をは じめ とす る様 々な広報機 関の活躍 を 論 じた。 さらに、和階社会 を実現す るうえでの企 業広報の重要性 も強調 しなが ら、残 された問題点 を明 らかに し、改善策 としてマクロ視点 と ミクロ 視点の両方面か らの企業広報の新 たな方 向性 を提 案 した。

最終 的に、企業 が効果的な企業広報 を展 開す る ことによって、様 々な利害 関係者 に歓迎 され る企 業 として成長で き、和階社会 を実現す ることが可 能 な重要 な役割 を果 たす ところに大 きな期待 を寄 せ た。

今後 の課題 と して、以下 の3点 を挙 げなけれ ば な らない。1つ 目は、 ミクロ視 点 におけ る企業広 報規範 の策定 と、 その実効性 を発揮す るところに

大 きな期待 を寄せてい るが、企業広報規範 を構成 す る要素 として何 が挙 げ られ、それぞれの内容 と 構成要素 の相互依存 関係 はどうなるのか をよ り突 き詰 めて研究 す る必要 が ある。2つ 目は、 マ クロ 視点における企業広報、広報協会、行政機 関の相 互 関係 を論 じ、互 いの連携作用 に期待 を寄せてい るが、広報協会 と行政機 関の連携作用 と企業広報 への影響 などは具体的に どの ように展 開 されてい

るのか をよ り深 く研究 す る必要 が ある。3つ 目は、

本論の大筋 として、企業 が効果的な広報活動 を展 開す ることによって、企業競争力 を向上 し、企業 不祥事 も抑制で き、利害 関係者 に尊敬 され る企業 として発展す ることが可能 とな り、最終 的に中国 政府 が 目指 してい る和階社会 を実現す る\ことが可 能で あると主張 した。 しか しなが ら、企業広報 は、

経営成績 および和階社会 の実現 に どの よ うに貢献 し、 その貢献度の大小 は どれ くらいなのかにつ い て研究 がな されていない。 そのために も、中国現 地 に足 を運び、関係者や研究者へ の ヒア リング調 査や事例研究 な どの実証研究 を重ねてい くことが 肝要 な課題で ある。

【注

1 広報 は、パ ブ リック ・リレーシ ョンズ(Public Relations)の和訳 で あ る。広 報 の定義 は、論 者 に よ り様 々 で あ るが、 米 国 ・パ ブ リ ッ

∴ ∴ ∴ ∴ :二::‑Ii:二‑==‑:‑:三 ̲‑:̲:; され る。つ ま り、 「広 報 は、組織体 とその組 織 体 を取 り巻 くさま ざまな利 害 関係 者 との 間 に、互 い に利 益 を もた らす健 全 な関係 を 構 築 し、維持 す るマ ネ ジ メ ン ト機 能 で あ る

」と さ れ る.http://www.prsa.org/aboutUS/ Of丘cialstatement.htmlを参照。

2 証券監督管理委員会(2008)p.220 3 中国証券報2009年8月14日付。

4 金 山(2008)p.98。

5 中 国 共 産 党 大 事 記(1978):h仕p://news. xinhuanet.com/ziliao/2004‑10/15/

⊆≡!!

(13)

c o n t e n L2 0 9 4 0 7 9

̲

1 . ht m

を参 照。

6

余 明陽

( 2 0 0 7 )p. 5

7 その一方、 中国共産党 中央規律検査委員会 が

1 9 8 3

7

月に発表 した 「経済犯 罪 の取締 りに 関す る報告」 に よる と

、1 9 8 2

1

月か ら

1 9 8 3

年4月 まで の間、摘 発 され た企 業不祥 事件 数 は

1 9

2

千件 に達 し、事件 に関わ った共産 党 貝 は7万1千 人 にの ぼ っ た と され る。 この こ とは、企業広報 が まだ一般企業 には浸透 され ていない ことと考 え られ る。詳 しくは、 中国 共産党大事 記

( 1 9 8 3 ): h

ttp://news.

x i nhua ne

t. com/ziliao/2004‑10/15

/ c o n t e n L2 0 93 9 9 7 ̲2 . ht m

を参照。

8

中 国 共 産 党 大 事 記

( 1 9 8 3 ): ht t p: / / ne ws . xi nbuane

t.com

/zi l i ao/2004‑ 10

/15/

c o n t e n t ̲ 2 0 9 3 9 9 7 . h t m

を参 照。

9 「郷 鎮 」 は、 中国 の行 政 区画 の1単位 で あ り、

日本 での 「町」 に相 当す る。

1 0

熊源偉

( 1 9 9 3 )p. 2 8 。

1 1

上 海 市 広 報 協 会 :

ht t p : / / www. c hs p r a . c o m/

we bi nf o. a s p

r

r y pe I D‑ 1 &

L

x‑

1を参照.

1 2

その一方、 多 くの企業 において経営 自主権 が 試 み られ たが、いわゆ る 「4つ の分離」 (政企 分離、両権分離、覚企分離、社企分離) が明 確 化 されていないため、国営企業 は依然 とし て行政 関与 を避 け ることがで きず、中国企業 の効率化 を低 迷 させ、赤字企業 の増加 を もた らした といわれてい る。 た とえば、 中国 にお け る税 収入 率 は

、1 9 8 4

年 の

2 4. 2 %

か ら

、1 9 8 9

年 の

1 7 . 2 %

に まで下落 し、さらに

1 9 9 2

年 に

9. 7 %

に まで下落 した とされ る。 また、全 国の国営 鉱工業 企業総 数 に 占め る赤 字 企業 の比率 は、

1 9 8 5

年 の

9 . 7 %

か ら

1 9 9 2

年 の

2 3

.4%に まで増 加 したので ある。李維安

( 1 9 9 8 )p. 5 1

を参照。

1 3 1 9 7 8

年 改 革 ・開放 政 策 以 降 の急 な経 済 シス テ ムの変化 は、所有権 と財産権 の分離 な どを め ぐる改革 の不徹底化 によ り国営企業 の活性 化や効率化 を低 迷 させ、赤字企業 の増加 を も た ら した。 また

、1 9 8 9

年 の天 安 門 事件 は 中 国 を国際社会 か ら孤立 させ、旧 ソ連の崩壊 は

社会主義 に対 す る不信感 さを もた らした。 そ こで 中 国政府 は

、1 9 7 8

年 か ら実 施 して きた 改革 ・開放 政策 を一層 「放 」 (綬 め る) の方 向へ と揺 り返 す必要 が あ り、 これ をきっか け に、鄭小平氏 の 「南巡講話」 が始 まった。朝 日新 聞

1 9 92

3

1 3

日付 を参 照。

1 4

宣京哲

( 2 0 0 9 )p p. 1 1 4‑1 1 5 0 1 5

余 明陽

( 2 0 0 7 )p. 1 1 1

1 6

余 明陽

( 2 0 0 7 )p. 1 6 2

0

1 7

呉友富

( 2 0 0 7 )p p. 2 2‑2 3

0

1 8

その一方 、近代 的企業制度 の実施 に ともない、

会社資産 の不正流 用や粉飾決算、虚偽情報 の 開示 や相場操縦 、 イ ンサ イダー取 引 な どの企 業不祥事 も相 次 いで発生 し、今 も止 まるとこ ろを知 らない。 これ は、企業広報 が本来 の機 能 を発揮で きて いなか った ことに一 因が あ る と考 え られ る。

1 9

詳 し く は

、ht t p: / / ne ws . x i n hua n e t . c o m/

l e ga l /2 0 0 8

‑01/30/contenL7525225.htmを 参 照 。

2 0

宝 山鋼鉄

( 2 0 0 5 ) 2 1

万科企業

( 2 0 0 7 )

2 2

海 爾 グ ル ー プ :

h仕p: / / www. ha i e r . c n / a bo u t / c u l t u r e ̲ i n d e x ̲ d e t a i l 1 7. s ht ml

を参照。

2 3

詳 し く は

、ht t pノ/ i n f o. ho me a . hc 360.

com/2009/06/10104

7 4 3 7 4 7 7 . s ht ml

を参照。

2 4

張漢斌

( 2 0 0 5 )p p. 3 8‑3 9

0

2 5

詳 し く は

、h

仕pノ/news.sina.com.cn/C/2004

09‑26/18113

7 7 4 6 9 3 S . s h

t

ml

を参照。

2 6

詳 し く は

、ht t p: / / n e ws . x i n hu a n e t . c o m/

ne ws c e n t e r /20 05

‑02/19

/ c o nt e nt ̲25 95 49 7.

ht m

を参 照

2 7

証券監督管理委員会

( 2 0 0 8 )p. 2 2

0

2 8 Fr e e ma n( 1 9 8 4 )p. 2 5

に お い て、 利 害 関係 者 とは、 あ る組織体 の 目標 や政策、決 断や行動 な どを起 こす ことに一定 の影響 を与 える 「一 群 の人 々」 また は1個 人 で あ る と され る。 ま た

、Gr un i g&Hun t( 1 9 8 4 )

は、パ ブ リックは、

ある一定 の議題 や問題 に対 して共通の意識 を 持つ ことによって結合 され た一群 の人 々で あ

(14)

164 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14 2010年3月

ると指摘 し、その間題 が改善 され ることを望 み

且つ行動が起 きることを期待 す る群体で あ ると主張 してい る。 なお、 「狭報」 の考 え 方 は、松 岡(1990)p.2において指摘 され、パ ブ リックを 「一般大衆」 とい う広 い意味では な く、利害 を同 じくす る 「一群 の人 々」、1つ ひ とつ を指 し、 その意味で広 い とい うことは 重要で はない とい う主張で ある。

29パ ーカー & リー社 の創業者 で あ り、 「広 報 の 父」 と も呼 ばれ るア イ ビー ・リー (IvyLee、 1877‑ 1934)は、1906年 にアメ リカで起 こっ た炭 鉱 ス トライキ をめ ぐる広 報活動 に関 り、

炭 鉱会社 の代弁者 で あ りなが ら、 「原則 の宣 言」 を発表 し、広報の事実性 を主張 したので ある。つ ま り、企業広報 は利害関係者 に対 し て事実 をその まま伝 えるべ きで ある、 といっ た革新的な広報規範 を提唱 した とみ ることが で きる。詳 しくは、Hiebert(1966)p.11を参 照。 また、1927年 にAT&T社の広報担当者 か つ副社長 に就任 したアーサー ・ペイジ(Arthur Page、1883‑1960)は、 自社 の広 報 活 動 を会 社 の行動規 範 に照 らし合 わせ て5つ の広 報原 則 を策定 したので ある。 その第1条 では、社 会 に信頼 され る企業 と して存続 す るには、1 つひ とつ のパ ブ リックを分析す ることが重要 で あるとい った内容 が盛 り込 まれていた。詳

しくは、Seitel(1992)pp.36‑38を参照。

【参考文献】

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図表 4 「 和階社会」 の内容 と行動則 ( 出所)著者作成。 盾 と社会の矛盾 を正確 に処理 し、公平 と正義 を確 実 に保護す る、①誠実友愛 :社会 を構成 す る様 々 な組織体の間に協力 し合 い、誠実性 と真実性 を追 求 し、全 国民 が平等、友愛、融和の溢れ る生活 を 送 る、( 彰充満活力 :組織体 および国民の創造活動 が十分 な支持 を得 られ、才能 を十分 に発揮で き、 相応す る成果 を得 られ る環境 で ある、 ①安心秩序 : 社会 を構成 す る組織体 が健全 な発

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