弘
法
大
師
と
﹃
文
選
﹄
-﹃ 遍 照 発 揮 性 霊 集 ﹄ に み ら れ る ﹃ 文 選 ﹄ の 影 響-静
慈
圓
一 弘 法 大 師 の 文 章 は、 ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 影 響 を 強 く う け て い る、 と 言 わ れ る。 だ が 具 体 的 な 論 究 に な る と、 こ の 研 究 分 野 で は さ ほ ど 進 ん だ も の は 見 ら れ な い。 筆 者 は 大 師 の 文 章 を 理 解 す る に は、 大 師 の 文 章 の 中 に ﹃ 文 選 ﹄ 収 録 の 文 章 が ど の よ う に 関 連 し て い る か を 明 ら か に せ ね ば な ら な い、 と 考 え る。 ( 1 ) 本 論 文 は こ の よ う な 研 究 方 法 の 一 環 と し て 作 成 し た。 大 師 の 文 章 と し て は ﹃ 遍 照 議 揮 性 需 巫 集 ﹄ ( 以 下 性 霊 集 ﹄ と 略 す ) を と り あ げ る。 つ ま り ﹃ 性 霊 集 ﹄ 収 録 の 文 章 を と お し て、 大 師 が ﹃ 文 選 ﹄ を い か に 理 解 し ま た 摂 取 し て い る か を 明 ら か に し よ う と す る も の で あ る。 し よ う え ん し よ う ﹃ 文 選 ﹄ と は、 い う ま で も な く 梁 の 武 帝 ( 薫 術 ) の 長 男 薫 と う 統 ( 昭 明 太 子 五 〇 一 -五 三 一 ) の 撰 に な る。 周 か ら 梁 に 至 る 文 章 ・ 詩 賦 な ど を 文 体 別 ( 三 十 七 体 ) に 分 け て 撰 し て い る。 三 十 七 体 と は、 賦、 詩、 騒、 七、 詔、 冊、 令、 教、 策 文、 表、 上 書、 啓、 弾 事、 騰、 奏 記、 書、 激、 対 問、 設 論、 辞、 序、 頸、 賛、 符 命、 史 論、 史 述 賛、 論、 連 珠、 箴、 銘、 諌、 哀、 碑 文、 墓 誌、 行 状、 弔 文、 祭 文 で あ る。 こ の 中、 本 論 文 で 取 ( 2 ) り 扱 う 文 体 は、 騒 以 下 の 三 十 五 体 で あ る。 本 論 文 の 研 究 方 法 は、 ﹃ 性 霊 集 ﹄ ・ ﹃ 文 選 ﹄ か ら 相 互 の 語 彙 を 取 り 出 す こ と よ り 初 め た。 検 索 の 手 順 と し て は、 ま ず 初 め に ﹃ 性 霊 集 ﹄ の 一 字 索 引 を 作 り、 両 方 か ら 同 漢 字 を 集 め た の ち、 そ の 中 で 同 じ 単 語 を 選 び 出 し た。 そ の 結 果、 単 語 に よ る 関 連 箇 所 と し て 一 九 七 箇 所 を 指 摘 す る こ と が で き た。 こ れ ら 一 九 七 の 用 例 は 大 き く 次 の 二 つ の 方 向 で 分 類 す る こ と が 可 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄密 教 文 化 能 で あ る。 そ の 一 つ は、 単 語 の 意 味 の み が 一 致 し て い る と い う 関 係。 他 の 一 つ は、 文 章 の 意 味 す る と こ ろ の 内 容 で 関 連 し て い く 関 係 で あ る。 関 連 箇 所 一 九 七 の 両 者 へ の 選 択 は、 お お む ね 前 者 は 一 二 五 例、 後 者 は 七 二 例 と な る。 大 師 の 文 章 に お い て、 ﹃ 文 選 ﹄ 収 録 の 文 章 か ら の 関 連 は、 前 者 よ り も 後 者 の ( 3 ) 立 場 を 吟 味 検 討 す る こ と を 重 視 せ ね ば な ら な い。 以 下、 本 論 文 は 後 者 の 立 場 に よ る も の で あ る。 こ の 七 二 例 を ﹃ 文 選 ﹄ の 文 体 別 の 上 で 表 示 す る と 次 の 如 く で あ る。 騒 ( 二 例 ) 七 ( 二 例 ) 策 文 ( 三 例 ) 表 ( 八 例 ) 騰 ( 二 例 ) 書 (十 九 例 ) 激 ( 三 例 ) 設 論 ( 四 例 ) 序 ( 六 例 ) 碩 ( 一 例 ) 論 (九 例 ) 連 珠 ( 一 例 ) 箴 ( 二 例 ) 銘 ( 一 例 ) 諌 ( 二 例 ) 哀 ( 二 例 ) 碑 文 ( 五 例 ) で あ る ( 囲 表 参 照 )。 図 表 の 上 で 一 見 し て 明 ら か な の は、 各 関 連 語 句 は と り わ け て か た よ っ て 一 部 分 に 集 中 し て い る 訳 で は な く 全 般 的 に 散 ら ば っ て い る。 そ の 中 で も 引 用 度 数 が 多 い ﹃ 性 霊 集 ﹄ 側 の 文 章 と し て 次 の 二 文 を 見 出 す こ と が で き る。 ( 表 一 七 ) 爲 大 使 與 福 州 観 察 使 書 一 首 ( 表 一 八 ) 請 越 州 節 度 使 内 外 文 書 啓 一 首 し た が っ て 筆 者 は、 ﹃ 性 霊 集 ﹄ の 文 中 に ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 影 響 を み る に は、 ま ず 初 め に こ の 二 文 を 検 索 す る こ と が 妥 当 で あ ろ う、 と 考 え る。 以 下 そ れ ら を 検 討 す る。 二 ( 表 一 七 ) 爲 三 大 使 與 三 嘱 州 観 察 使 一書 賀 能 啓。 高 山 澹 黙 禽 獣 不 レ 告 レ 勢 而 投 蹄。 深 水 不 レ 言 魚 龍 不 レ 暉 < 例 1 > レ 倦 而 逐 赴。 故 能 西 莞 梯 レ 陰 貢 二 垂 衣 君 幻 南 窩 航 レ 深 献 二 刑 暦 帝 幻 誠 < 例 2 > 是 明 知 二 銀 難 之 亡 ワ 身。 然 猶 忘 二 命 徳 化 之 遠 及 一者 也。 伏 惟 大 唐 聖 朝 霜 露 仮 レ均 皇 王 宜 レ 宅。 明 王 纏 レ 武 聖 帝 重 興。 掩 二 頓 九 野 扁牢 二 籠 <例 3 > 八 紘 殉 是 以 我 日 本 國。 常 見 二 風 雨 和 順 刃定 知 中 國 有 レ 聖。 刹 二 巨 倫 於 蒼 嶺 殉 摘 二 皇 華 於 丹 塚一。執 二 蓬 莱 環 一献 二 毘 岳 玉 幻 起 レ 昔 迄 レ 今 相 績 不 レ 絶。 故 今 我 國 主 顧 二 先 租 之 胎 謀 殉 慕 二 今 帝 之 徳 化一。 謹 差 二 大 政 官 右 大 緋 正 三 品 兼 行 越 前 國 太 守 藤 原 朝 臣 賀 能 等 一充 レ 使。 奉 二 <例 4 > 鰍 國 信 別 貢 等 物 幻賀 能 等 忘 レ 身 街 レ 命 冒 レ 死 入 レ 海。 既 僻 二 本 涯 一比 レ 及 二 中 途 幻暴 雨 穿 レ 帆 栽 風 折 レ 柁。 高 波 沃 レ 漢 短 舟 喬 商。 凱 風 朝 扇 < 例 5 > 擢 二 肝 耽 羅 之 狼 心一。 北 氣 夕 嚢 失 二 謄 留 求 之 虎 性 幻 瀕 二 歴 猛 風 嚇待 二 葬 臨 口 幻 撚 二 眉 驚 汰 一占 二 宅 鯨 腹 殉 随 レ 浪 昇 況 任 レ 風 南 北。 但 見 二 天 水 之 碧 色 宣 豆 硯 二 山 谷 之 白 霧 一っ 攣 二 型 ・波 上 一 二 月 有 飴。 水 盤 人 疲 海 長 陸 遠。 飛 レ 虐 脱 レ 翼 泳 レ 水 殺 レ 鰭。 何 足 レ 爲 レ 喩 哉。 僅 八 月 初 日。 乍
見 二 雲 峯 一 欣 悦 岡 レ 極。 過 二 赤 子 之 得 ワ 母。 越 二 旱 苗 之 遇 ワ 森。 賀 能 等。 萬 冒 二 死 波 一再 見 二 生 日 一つ 是 則 聖 徳 之 所 レ 致 也。 非 二 我 力 之 所 ワ 能 也。 又 大 唐 之 遇 二 日 本 一也。 錐 レ 云 下 八 秋 雲 會 膝 二 歩 高 墓 栂 七 戎 霧 合 稽 申 穎 魏 閾 加 而 於 二 我 國 使 一 也。 殊 私 曲 成 待 以 二 上 客一。 面 封 二 龍 < 例 6 > 顔 一自 承 二 鷺 論 薗つ佳 問 榮 寵 巳 過 二望 外 一つ 與 二 夫 預 填 諸 蕃 一つ 堂 同 日 可 レ 論 乎。 又 竹 符 銅 契 本 備 二 粁 詐 一っ世 淳 人 質 文 契 何 用。 是 故 我 國 淳 撲 巳 降 常 事 二 好 隣 幻 所 レ 献 信 物 不 レ 用 二 印 書 刃 所 レ 遣 使 人 無 レ 有 二 鉦 傷 幻 相 二 襲 其 風 一干 レ 今 無 レ 蓋。 加 以 使 乎 之 人 必 揮 二 腹 心 一っ任 以 二 腹 < 例 7 > 心 一何 更 用 レ 契。 載 籍 所 レ 傳。 東 方 有 レ 國 其 人 懇 直。 禮 義 之 郷 君 子 之 國。 蓋 爲 レ 此 欺。 然 今 州 使 責 以 二 文 書 一疑 二 彼 腹 心 剛っ 検 二 括 船 上 一 計 二 数 公 私 殉斯 乃 理 合 二 法 令 一事 得 二道 理 一っ官 吏 之 道 實 是 可 レ 然。 難 レ 然 遠 人 乍 到 鯛 レ 途 多 レ 憂。 海 中 之 愁 猶 委 二 胸 臆 幻 徳 酒 之 味 未 レ 飽 二 心 腹 幻率 然 禁 制 手 足 無 レ 暦。 又 建 中 以 往 入 朝 使 船。 直 着 二 楊 蘇 一 無 二 漂 蕩 之 苦 圏っ 州 縣 諸 司 慰 勢 懇 勲。 左 右 任 レ 使 不 レ 捻 二 船 物 幻 今 則 事 與 レ 昔 異 遇 將 レ 望 錬。 底 下 愚 人 矯 懐 二 驚 恨 幻伏 願 垂 二 柔 レ 遠 之 恵 幻 < 例 8 > 顧 二 好 レ 隣 之 義一。 縦 二 其 習 俗 一不 レ 怪 二 常 風 幻然 則 泪 泪 百 蟹 與 二 流 水 一 而 朝 二宗 舜 海 脚っ 隅 隅 萬 服 將 二 葵 葎 一以 引 二 領 尭 日 一っ 順 レ 風 之 人 甘 心 逼 湊。 逐 レ 腺 之 蟻 悦 レ 意 駐 羅。 今 不 レ 任 二 常 習 之 小 願 幻 奉 啓 不 宣 謹 言 ( 表 一 七 ) は、 入 唐 の 時 ( 延 暦 二 一二 年、 大 師 三 一 才 ) 大 師 は 遣 唐 大 師 藤 原 賀 能 と 同 船 す る が、 そ の 舟 は 暴 風 雨 に 遇 っ て 福 州 に 流 れ つ く。 そ の 時 大 使 に 変 わ っ て 福 州 の 観 察 使 に 上 陸 を 乞 わ ん と 書 い た 文 で あ る。 以 下、 例 示 し て 関 連 の 各 箇 所 を 検 討 し て い き た い。 ( 4 ) <例 1 > (選) 淺 レ 山 航 レ 海。 鍮 レ 沙 軟 レ 漠 之 貢。 府 無 二 虚 月 綿 ( 四 六 巻、 曲 水 詩 序 ) 右 文、 ﹃ 性 霊 集 ﹄ は 大 唐 の 聖 天 子 の 徳 化 が 四 隣 に い き わ た っ て い る こ と を 示 し て い る 箇 所 で あ る。 通 釈。 (姓)。 だ か ら 西 方 の 辺 鄙 な 国 の 蛮 族 ら も、 天 子 の 徳 化 を 慕 っ て 山 路 に 梯 し て、 垂 衣 の 君 で あ る 唐 の 天 子 に 貢 を 奉 り、 南 方 の 辺 鄙 な 国 で あ る 交 趾 国 か ら も、 大 海 を 渡 っ て 聖 天 子 に 貢 を 献 上 す る の で あ る。 (選)。 山 に 桟 道 を 作 り、 大 海 を 渡 り、 沙 漠 を 越 え て の 貢 ぎ 物 に よ っ て、 府 庫 は 満 ち て お り 空 に な る 時 は な い。(株) ・ 鱈 共 に 天 子 の 高 徳 が 天 下 の す み ず み ま で い き わ た り、 蛮 族 ら も 服 従 し て い る こ と を 示 し て い る。 ( 5 ) <例 2 > (選)(1) 霜 露 所 レ 均。 不 レ 育 二 異 類一。 ( 四 三 巻、 與 陳 伯 之 書 ) (2) 天 鑑 三 塔 曜一。 踵 二 武 前 王 田 ( 五 八 巻、 楮 淵 碑 文 ) (3) 吾 王 於 レ 是。 設 二 天 網 一 以 該 レ 之。 頓 二 入 紘 一以 掩 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
-3-密 教 文 化 レ 之。 ( 四 二 巻、 與 楊 徳 祖 書 ) (4) 牢 二 籠 天 地 一 弾 二 墜 山 川 幻 ( 四 六 巻、 三 月 三 日 曲 水 詩 序 ) 右 文、 ﹃ 性 霊 集 ﹄ は 唐 の 天 子 の 威 徳 が 隆 盛 で あ る こ と を 賛 嘆 し て い る 箇 所 で あ る。 通 釈。(株)。 伏 し て 惟 う に、 大 唐 の 天 子 が い ま す 都 は、 霜 露 が 季 節 に 従 っ て 順 序 正 し く 平 均 し て 降 り る 良 き 土 地 で あ る。 そ の 土 地 に 天 子 は 宮 殿 を 御 造 営 し て お ら れ る。 そ し て 更 に 賢 明 で あ る 君 主 が 迩 を 受 け 継 ぎ、 代 々 聖 天 子 が 重 ね 出 て、 も っ て 九 天 を お お う 程 で あ る。 ま た 全 世 界 を 籠 に お し こ め 捕 え て あ る 程 に、 天 子 は そ の 御 威 徳 を 遍 ね く 及 ぼ し て い ら れ る の で あ る。(選)(1) ﹁ 霜 露 所 均 ﹂ の 句 は、 そ の ま ま(株) の 文 中 に 使 用 さ れ て い る。(選)(2) ﹁ 踵 武 前 王 ﹂ の 句 は、 先 王 の 跡 を 継 ぎ 即 位 し、 の 意 で(株) の ﹁ 明 王 縫 武 聖 帝 重 興 ﹂ と 一 致 す る。(選)(3) ﹁ 設 天 網 以 該 之 頓 入 紘 以 掩 之 ﹂ は、 天 網 を 設 け て 八 紘 に 下 し て 彼 ら を こ と ご と く こ の 魏 国 に 集 め て い る、 の 意。 ﹁ 八 紘 ﹂ は 世 界 の 意。(株)・ 魍 共 に 天 下 を 掌 握 し て い る 意 味 で 一 致 す る。(選)(4) ﹁ 牢 籠 天 地 弾 墜 山 川 ﹂ は、 ( 皇 帝 は ) 天 地 を そ の 中 に 包 含 し、 山 川 を 制 圧 し た、 の 意。 共 に 八 方 の 遠 き 土 地 を 制 圧 し た 意 味 で 一 致 す る。 以 上 に よ っ て(株) は、(選) の 文 意 を そ の ま ま 自 ら の 文 中 に 使 用 し て い る と い え る。 <例 3 >(株) 布 レ 徳 脩 レ 禮。 歌 二 皇 華 一而 遣 レ 使。 ( 三 六 巻、 永 明 十 一 年 秀 才 文 ) 通 釈。(株)。 ( 中 国 に 聖 天 子 が い ま す こ と を 知 っ た の で ) 高 山 の 大 木 を 伐 り 船 と し、 我 が 天 子 の 御 使 い を 承 り、 唐 の 天 子 の い る 朝 廷 に 参 っ て 御 機 嫌 を お 伺 い す る。 (選)。 仁 徳 を 敷 き 広 め、 教 化 に 努 め た り、 ﹁ 皇 華 ﹂ を 歌 っ て 使 節 を 派 遣 し た、 の 意。(株)・ (選) 共 に、 ﹁ 皇 華 ﹂ つ ま り 天 子 の 使 臣 の 行 動 を と お し て、 天 子 の 御 徳 が ゆ き わ た っ て い る こ と を 明 し て い る。 <例 4 >(選) 求 レ 遂 二 其 志 殉 而 冒 二 風 波 於 険 塗 幻 ( 五 三 巻、 運 命 論 ) 通 釈。(株)。 賀 能 等 は 君 命 を 拝 し て 命 を 惜 し み も せ ず 死 の 危 険 を 冒 し て 出 帆 し た。 そ し て 本 国 を 離 れ て 航 程 の 中 途 頃 に 至 り 暴 風 雨 に 襲 わ れ た。 雨 は 帆 に 穴 を あ け、 大 風 は 船 の 柁 を へ し 折 り、 怒 涛 天 に 沃 ぐ か と 思 わ れ、 小 舟 は 木 の 葉 の 如 く に 舞 う の み で あ っ た。(選)。 そ の 志 を 遂 げ よ う と し て、 険 し い 道 中 を 風 や 波 を 冒 し て 進 み、 の 意。(株)・(選) 共 に、 志 を 遂 げ る た め の 難 難 苦 難 に つ い て 述 べ て い る。 <例 5 >(選) 寧 赴 二 湘 流一。 葬 二 於 江 魚 腹 中 幻 ( 三 三 巻、 漁 父 )
通 釈。(株)。 猛 風 に 舟 が 転 覆 せ ぬ か と 面 を し か め、 た だ 竃 口 の 餌 食 と な る こ と を 待 つ の み で あ り、 高 波 に 難 船 し は せ ぬ か と 眉 を し か め て、 鯨 腹 の 餌 と な る の か と 心 痛 す る。(株)。 い っ そ 湘 水 の 流 れ に 身 を 投 げ て、 川 魚 の 腹 の 中 に う せ よ う と も、 の 意。(株) ・(選) 共 に、 文 章 の 意 味 内 容 が 同 じ で あ る。 例 6 >(選) 當 時 受 レ 恩。 多 有 レ 過 レ 望。 ( 三 八 巻、 爲 呉 令 謝 詞 求 爲 諸 孫 置 守 レ 家 人 表 ) 通 釈。(株)。 特 別 の 御 寵 愛 を う け る こ と は、 望 外 の 光 栄 で あ る。(選)。 当 時 ( 晋 よ り ) 受 け た 恩 沢 は、 望 み 以 上 の も の が あ る、 の 意。(株) ・(株) 共 に、 天 子 か ら の 御 寵 愛 の 恩 沢 の 喜 び を 言 っ て い る。 例 7 >(選) 身 出 二 禮 義 之 郷一。 而 入 二 無 知 之 俗 幻 ( 四 一 巻、 答 蘇 武 書 ) 通 釈。(株)。 古 書 の 記 載 に よ れ ば 東 方 に 国 あ り、 其 の 人 懇 直 で 礼 儀 正 し く、 全 く こ れ 君 子 の 国 で あ る、 と。(選)。 我 身 は 礼 儀 あ る 漢 の 国 に 生 ま れ な が ら、 無 知 な 種 族 の 勾 奴 に 入 っ て い る、 の 意。(株)・(株) 共 に、 ﹁ 禮 義 の 郷 ﹂ の 意 味 す る と こ ろ が 同 ( 5 ) じ で あ る の で こ こ に 出 し た。 例 8 >(株) 南 夷 之 君。 西 葵 之 長。 常 敷 二 貢 職 刃 不 二 敢 堕 怠 幻 延 レ 頸 墨 レ 踵。 隅 隅 然 皆 饗 レ 風。 慕 レ 義 欲 レ 爲 二 臣 妾一。 ( 四 四 巻、 喩 巴 蜀 激 ) 通 釈。(株)。 か く す れ ば 小 さ き 諸 蛮 国 は、 流 れ が 大 海 に そ そ ぐ そ の 如 く に 唐 の 朝 廷 に 帰 伏 す る で あ ろ う。 ま た 四 方 の 国 の 人 々 は、 唐 の 天 子 を 仰 ぎ 服 事 す る こ と、 あ た か も 葵 が 太 陽 に 向 か う そ の 如 く に 諸 蟹 を 引 卒 し て 集 ま る で あ ろ う。(選)。 南 夷 の せ い ほ く 諸 侯、 西 養 の 酋 長 ら は、 い つ も 貢 ぎ 物 を 献 上 し て 怠 る こ と が な く、 首 を 伸 ば し く び す を 上 げ、 魚 が 口 を 開 き あ ぎ と を 動 か す よ う に、 み な 天 子 の 御 威 光 を 慕 っ て、 家 来 に な ろ う と 思 っ て い る、 の 意。(株) ・(選) 共 に 天 子 の 威 徳 が 天 下 に い き わ た っ て い て き い る こ と を 示 し て い る。 す な わ ち 全 国 の 夷 秋 が、 あ る 者 は 中 国 に 和 を 請 い、 あ る 者 は 貢 ぎ 物 を 献 上 し て 服 従 を 誓 っ て い る こ と を 述 べ て い る。 以 上、 ( 表 一 七 ) を 検 討 し た。 次 に、 ( 表 一 八 ) 與 二 越 州 節 度 使 一求 二 内 外 経 書 一 啓 を 検 討 す る が、 紙 幅 の 関 係 で 原 文 全 体 を 記 載 す る の は 控 え、 ﹃ 性 霊 集 ﹄ ・ ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 必 要 と す る 関 連 箇 所 の み を 提 示 し た い。 ( 6 ) <例 9 >(株) 空 海 聞。 法 之 爲 レ 物 也 妙。 教 之 爲 レ 趣 也 遠。 遇 レ 之 者 抜 レ 泥 翔 レ 漢。 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
-5-密 教 文 化 {選) 故 夫 泥 蠕 而 天 飛 者 鷹 龍 之 碑 也。 通 釈。(株)。 私 ( 空 海 ) は か く 聞 い て い る。 法 の 本 体 と い う も の は 言 語 に よ っ て 説 き 尽 す こ と は で き な い。 ま た 教 の 本 趣 と い う も の は 甚 深 で あ る が 故 に 遠 い と い わ ね ば な ら な い。 こ の 教 法 に 遇 う 者 は、 ( 生 死 の ) 濃 泥 を 抜 け 出 て、 天 上 ( の 浬 盤 ) に 翔 け 入 る こ と が 出 来 る。 晒。 だ か ら 泥 中 に と ぐ ろ を ま い て い な が ら も、 天 に 飛 ん で 行 く の は、 応 龍 の 神 秘 な と こ ろ で あ る。(株) の ﹁ 遇 之 者 抜 泥 翔 漢 ﹂ は、 (選) の 意 を 取 っ て い る。 ( 7 ) <例 10 >(株) 孔 宣 不 レ 邊 レ 嬬 レ 席。 悉 達 脱 二 鷹 輪 實 一。 蓋 爲 レ 之 歎。 (選) 孔 席 不 レ 硬。 墨 突 不 レ 黙。 通 釈。(株)。 孔 子 の 席 は 媛 ま る こ と が な か っ た し、 ま た 悉 達 太 子 が 転 輪 王 と な る べ き 位 を 捨 て て 出 家 し た の も、 畢 覧 は 衆 生 を 救 う た め で は な か っ た か。(選)。 孔 子 の 席 は 暖 ま る こ と が な い し、 墨 子 の 家 の 煙 突 は 黒 く な ら な か っ た。(株) は、 孔 子 が 道 を 説 く た め に 忙 し く 活 動 し た こ と を 示 す。(株) は、(株) と 全 く 同 意 で あ る が、 彼 ら が 忙 し く 奔 走 す る 目 的 は、 結 局 は 一 切 衆 生 の 苦 を 除 か ん が た め で あ る と 結 ん で い る。 ( 8) <例 11 >(株) 大 雅 大 人。 亭 二 毒 萬 生 一之 用 心。 (選) 生 レ 之 無 二 亭 毒 之 心 幻 通 釈。(株)。 大 雅 の 才 あ り 学 徳 高 き 人 た ち は、 万 民 を 化 育 す る こ と に 心 を 用 い て い る の で あ る。(選)。 万 物 を 生 じ て も 化 育 す る つ も り が あ っ て 作 っ た わ け で は な い。(選) は、 自 然 の 力 は 広 く 大 き く、 万 物 は こ れ に よ っ て 生 育 し て い く、 の 意。 つ ま ( 9 ) り(選) で い う 自 然 の あ り 方 が(株) の 大 雅 大 人 の 立 場 に あ た る。 ( 10 ) <例 12 >(株) 錐 レ 然 或 行 或 藏 時 之 攣 也。 乍 興 乍 屡 實 由 レ 人 也。 時 至 人 叶 道 被 二 無 窮 % 人 時 柞 楯 教 則 墜 レ 地。 (選) 其 得 レ 意 如 レ 此。 則 胡 禁 不 レ 止。 掲 令 不 レ 行。 化 溢 二 四 表 一っ横 二 被 無 窮 幻 通 釈。(株)。 し か し な が ら ( 教 法 が ) 進 展 す る と き が あ り 退 廃 す る こ と の あ る の は、 時 勢 の 変 化 に ょ る も の で あ る。 だ か ら 時 と 法 を う ま く 調 和 さ せ 法 を 盛 ん に す る も、 ま た 反 対 に 廃 る も、 そ れ は 人 に よ る の で あ る。 も し 時 期 が 到 来 し、 人 が よ く そ の 時 の 変 化 を 見 極 め た な ら、 道 は 天 下 に 窮 り な く 満 ち 栄 え る の で あ る。 そ の 反 対 に 人 と 時 が 矛 盾 す る と、 教 は 地 に 落 ち て し ま う の で あ る。 (選)。 ( 聖 主 は 賢 臣 が 必 要、 賢 士 も 明 徳 の 君 が 必 要 で あ る ) こ の よ う に 君 臣 が 互 い の 心 を 理 解 し て 行 動 す れ ば、 禁 止 し て 出 き な い こ と な ど は な い、 命 令 し て 行 な わ れ な い こ と は な い。 そ の 感 化 は 四 海 の 外 ま で あ ふ れ、 窮 り
な く 満 ち 渡 る の で あ る。(選) は、 君 と 臣 が 意 を 得 て う ま く 調 和 す る、 と の 意。(株) は、 時 と 人 が 調 和 す る こ と の 必 要 性 を 説 い て い る。 つ ま り 両 者 が 相 応 調 和 す る こ と に よ っ て こ そ、 そ の 感 化 が 窮 り な く お よ ぶ、 と な り 意 味 の 上 で は(株) ・(選) 共 に 大 差 は な い。 ( 11 ) <例 13 >(株) 入 レ 海 則 唯 見 二 魚 籠 之 游 樂 一日 月 云 際。 登 レ 山 則 空 聴 二 猿 猴 之 哀 響 一寒 暑 推 移。 所 レ 謂 萬 死 之 難。 斯 行 當 レ 之 也。 鱈 夫 人 臣 出 二 萬 死 一。 不 レ 顧 二 一 生 之 計 律っ 赴 二 公 家 之 難 つ 斯 以 奇 矣。 通 釈。(株)。 海 上 の 航 海 で は 魚 籠 の 游 泳 す る の を 見 て 長 日 月 を 費 や し、 ま た 陸 上 奥 地 の 旅 で は 猿 猴 の 哀 響 を 聞 い て 空 し く 長 日 月 を 費 や さ ね ば な ら な い。 古 訓 に ﹁ 必 死 を 期 し て 己 の 生 命 を か え り み な い 難 ﹂ と い う の は こ の 行 動 に こ そ 当 た る の で あ る。(選)。 い っ た い 臣 下 が 万 が 万 ま で 死 ぬ 覚 悟 を し て 己 の 生 命 を か え り み な い で、 皇 室 の 難 に 赴 く の は、 こ れ は 特 殊 な こ と で あ る。(株) は、 大 唐 長 安 の 都 へ 日 本 か ら 行 く の は、 万 難 を 制 し 命 を 賭 し て 長 年 月 を 要 す る 旅 で あ る こ と を 明 し て い る。 そ の 文 意 は 圏 の 今 の 文 に よ っ て い る。 ( 12 ) <例 14 >(株) 器 則 斗 答 學 則 戴 盆。 (選) 僕 以 爲 戴 レ 盆。 何 以 望 レ 天。 通 釈。(株)。 ( 私< 空 海 > は ) そ の 器 量 と い え ば 斗 管 に も 等 し い ほ ど に 小 器 で あ り、 ま た そ の 学 問 と い え ば 戴 盆 に も 等 し い ほ ど に 識 見 狭 い 者 で あ り ま す。 魍。 私 が 考 え ま す に は、 ﹁ 盆 を 頭 上 に い た だ け ば、 天 を 望 む こ と が 出 来 な い ﹂ と。(株) ・(選) 共 に ﹁ 戴 盆 ﹂ を 一 事 に 専 心 し て 他 を 省 み な い 喩 と し て 用 い て い る。 (13 ) <例 15 >(株) 中 丞 大 都 督 節 下。 天 縦 二 粋 氣 一 岳 漬 挺 生。 魍 徴 士 陳 君。 稟 二 嶽 濱 之 精 剛っ 苞 二 需 巫 曜 之 純 幻 通 釈。(株)。 中 丞 大 都 督 で あ る あ な た さ ま は、 聖 の 如 き 純 徳 を う け て、 山 河 の 精 気 を そ の 身 に う け て 他 よ り 秀 で て い ら れ ち よ う し る。(選)。 徴 士 で あ る 陳 君 は、 山 川 の 精 を そ の 身 に 受 け、 純 粋 な る こ と 天 の 如 く で あ っ た。(株) ・(選) 共 に、 ﹁ 嶽 濱 之 精 ﹂ に よ っ て 他 の 者 よ り ぬ き ん で て い る と し て い る。 ( 14 ) <例 16 >(株)(1) 弾 二 厘 班 馬 一金 聲 玉 振。 (2) 牢 二 籠 三 界 一っ (選) 牢 二 籠 天 地 一っ 弾 二 膣 山 川 幻 通 釈。(株)。(1) ( 中 丞 閣 下 の 文 章 は ) か の 班 固 ・ 司 馬 遷 を お 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
-7-密 教 文 化 さ え て そ れ 以 上 に 勝 れ て い る。 あ た か も 金 の 鳴 り 玉 の 振 う が 如 く で あ る。(2) 三 界 の 獄 中 に い る 衆 生 を 包 含 し 引 導 し て ( 覚 道 に 遊 楽 さ せ る )。(選)。 (皇 帝 は ) 天 地 を そ の 中 に 包 含 し、 山 川 を 制 圧 し た。(選) の ﹁ 牢 籠 ﹂ ﹁ 揮 堅 ﹂ の 語 と 合 う の で 出 し た。(株)(1) の 意 味 は あ ま り あ わ な い。(2) は 意 味 が あ う。 以 上、 ( 表 一 七 ) ( 表 一 八 ) を 検 討 し た。 ( 表 一 七 ) は、 大 師 が 福 州 観 察 使 に 与 え た 文、 (表 一 八 ) は、 越 州 節 度 使 に 与 え た 文。 共 に 大 師 入 唐 中 の 作 で あ る。 中 国 の 文 官 に 対 し て 自 ら の 心 情 を 吐 露 し た 文 で あ る。 し か し 細 心 に こ の 文 意 を 見 る と、 両 文 に お け る ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 引 用 は、 そ の 意 味 内 容 に 異 な っ た 傾 向 が み ら れ る。 す な わ ち ( 表 一 七 ) で は、 次 の 二 つ の 文 意 の 表 現 に 対 し て ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 引 用 を み る。 第 一 は、 天 子 の 権 威 が 国 中 に ゆ き わ た っ て い る 意 味 の 箇 所 で、 ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 引 用 が あ る。 す な わ ち< 例 1 > は、 天 子 の 高 徳 が 天 下 の す み ず み ま で ゆ き わ た っ て い る、 の 意。< 例 2 > は、 天 子 が い ま す 都 は 安 穏 で、 君 主 は を つ ぎ 絶 え な い、 の 意。< 例 3 > も 天 子 の 御 徳 が ゆ き わ た っ て い る、 の 意。< 例 6 > は、 御 寵 愛 ( 恩 沢 ) を う け る こ と は、 望 外 の 光 栄 で あ る、 の 意。< 例 7 > は、 日 本 ・ 中 国 共 に 君 子 の 国 で あ る、 の 意。 <例 8 > は、 天 子 の 御 威 光 を 慕 っ て 唐 の 朝 廷 に 帰 伏 す る、 の 意。 以 上 天 子 を 讃 歎 す る 文 意 の と こ ろ で ﹃ 文 選 ﹄ を 使 用 し て い る。 第 二 は、 海 上 の 苦 難 を 表 現 す る 箇 所 に 引 用 し て い る。 す な わ ち < 例 4 > は、 志 を 遂 げ る た め の 海 上 の 銀 難 に つ い て 述 べ て い る。< 例 5 > は、 海 中 に い る 鯨 の え じ き と な る、 の 意 で あ る。 以 上 の よ う に 天 子 の 讃 難 ・ 海 上 の 苦 難 の 文 意 に ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 引 用 が あ る。 こ れ は ( 表 一 七 ) の 文 章 の 性 格 上 当 然 か も 知 れ な い が、 ﹃ 文 選 ﹄ 所 収 の 文 章 の 文 意 を、 全 く 違 う こ と な く 自 ら の 文 中 に 用 い て い る こ と は、 や は り こ れ は 一 つ の 特 色 と し て 指 摘 す る こ と が 許 さ れ よ う。 こ れ に 対 し、 ( 表 一 八 ) の 文 例 を み る と ( 表 一 七 ) の よ う に は 両 文 の 文 意 が ぴ っ た り と 収 ま っ て い な い。 概 ね 次 の よ う な 意 味 で 合 っ て い る。< 例 9 > は、 濃 泥 を 抜 け 出 て 天 上 に 翔 け 入 る、 と い う 意 味 で 合 っ て い る。< 例 10 > は、 孔 子 の 席 は 媛 ま る こ と が な か っ た、 の 意。< 例 11 > は、 ﹁ 亭 毒 ﹂ ( 万 民 を 化 育 す る ) の 意。< 例 12 > は、 ﹃ 性 霊 集 ﹄ は 君 と 臣、 ﹃ 文 選 ﹄ は 時 と 人 つ ま り 二 者 が 調 和 す る と 大 き な 力 と な る、 の 意。< 例 13 > は、 共 に ﹁ 戴 盆 ﹂ を 識 見 が 狭 い 意 味 に 使 用。< 例 14 >< 例 15 > は、 中 丞 閣 下 を 讃 歎 す る 文 意 に お い て 合 っ て い る。 以 上 の よ
う に 両 文 は 共 に ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 引 用 語 句 が 多 い が、 文 意 の 傾 向 は 少 し 違 う と い わ ね ば な ら な い。 い う ま で も な く ﹃ 文 選 ﹄ は、 詩 と 散 文 に わ た る 文 集 と し て は 中 国 最 古 の も の で、 唐 代 の 文 人 に と っ て は、 文 官 登 用 試 験 に 課 せ ら れ た 必 読 の 書 で あ っ た。 ﹃ 文 選 ﹄ が 持 つ こ う い っ た 性 格 か ら 鑑 み て も、 他 の 文 章 と 比 し て、 特 に 大 師 が 中 国 で 作 ら れ た こ の 両 文 に ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 典 故 が と り わ け 多 い 理 由 が 理 解 で き る の で あ る。 三 ﹃ 性 霊 集 ﹄ 所 収 の 文 中 に 見 ら れ る ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 引 用 例 を 示 せ ば 次 の 如 く で あ る。 以 下 ﹃ 文 選 ﹄ の 文 体 別 の 順 次 で 整 理 し 検 討 を 進 め て い き た い。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 騒 ﹂ の 文 体 に お い て は 二 例 見 え る。 ( 15 ) <例 17 >(性) 薫 葺 必 秋 葉 満。 (選) 悲 哉 秋 之 爲 レ 氣 也。 薫 狂 必 分 草 木 揺 落 而 攣 衰。 通 釈。(性)。 秋 風 寒 々 と し て 秋 葉 に 吹 き わ た り、 淋 し い 光 景 で あ る。(選)。 悲 し い こ と で あ る。 秋 の 気 と い う も の は。 寒 々 と 風 は 吹 き わ た り、 草 木 は ゆ れ お ち て 形 変 え つ つ 枯 れ て い る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 七 ﹂ の 文 体 に お い て は 二 例 見 え る。 ( 16 ) <例 18 >(性) 今 上 乾 坤 爲 レ 徳。 仁 義 具 レ 心。 晒 同 二 量 乾 坤 一っ等 二 曜 日 月 殉 通 釈。 (性)。 今 上 陛 下 (淳 和 帝 ) は、 天 地 を も っ て 徳 と し、 五 常 を も っ て 心 と せ ら れ て い る。(選)。 器 量 は 天 地 と 等 し く。 輝 き は 日 月 と 同 じ で あ る。(性) ・(選) 共 に ﹁ 乾 坤 ﹂ は 天 地 の 意 味 で 用 い て お り、 人 間 の 器 量 の 大 き さ を 示 し て い る。 ( 17 ) <例 19 >(性) 伏 惟 皇 帝 陛 下。 仁 過 二 爾 儀 つ 道 隆 二 貫 三 幻 (選) 功 與 二 造 化 一孚 レ 流。 徳 與 二 二 儀 一 比 レ 大。 通 釈。(性)。 伏 し て 惟 る に、 今 上 陛 下 は、 仁 徳 は 天 地 よ り も 広 大 で あ り、 そ の 王 道 の 仁 政 は ま す ま す 隆 盛 で あ る。(選)。 ( 高 官 の ) 功 績 は 造 化 と と も が ら を 競 い 合 い、 そ の 道 徳 は 天 地 の 大 と 並 べ ら れ る。(性)・ (選) 共 に 御 徳 を 讃 嘆 し て い る 文 章 で あ る。 御 徳 が 天 地 の 如 く 広 大 で あ る の 意。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 策 文 ﹂ の 文 体 に お い て は 三 例 見 え る。 ( 18 ) <例 20 >(性) 萬 方 宅 レ 心 四 海 撃 レ 腹。 蕩 蕩 之 構 千 古 仰 レ 之。 (選) 敷 二 化 一 時 一っ鯨 二 烈 千 古 一。 通 釈。(性)。 ( 徳 政 に よ っ て ) 万 民 安 楽 で あ り、 四 海 泰 平 に し て 万 民 は 腹 鼓 を 撃 っ て 喜 び 遊 ん で い る。 こ の 名 声 は 遠 く 千 古 に ま で も 仰 ぎ た た え ら れ る の で あ る。(選)。 教 化 を 一 世 に 敷 き 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
-9-密 教 文 化 広 め、 そ の 功 を 千 年 の の ち に 残 し 得 た の で あ る。(性) ・(選) 共 に、 名 声 を 千 古 の の ち に 残 す こ と が 出 来 た 意 で 同 じ 文 意 で あ る。 (19) <例 21 >(性) 若 夫 九 流 六 藝 濟 レ 代 之 舟 梁。 (選) 九 流 七 略 頗 常 観 覧。 六 藝 百 家 庶 レ 非 二 矯 面 一っ 通 釈。(性)。 す な わ ち 夫 れ 九 流 六 芸 は 人 々 を 救 済 す る こ と、 あ た か も 舟 ・ 橋 に 等 し き も の で あ る。(選)。 九 流 や 七 略 の 書 物 は い さ さ か 見 て き た し、 六 芸 や 諸 子 百 家 に つ い て も 少 し は 読 ん で き た と い え る。(性) ・(選) 共 に、 ﹁ 九 流 ・ 六 芸 ﹂ が 文 中 に 見 え る の で こ こ に 出 し た。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 表 ﹂ の 文 体 に お い て は 七 例 見 え る。 ( 20 ) <例 22 >(性) 汝 日 西 山 半 死 士。 汝 年 過 レ 半 若 二 尸 起 一っ (選) 但 以 劉 日 薄 二 西 山 刃 氣 息 奄 奄。 通 釈。(性)。 汝 が 人 生 は、 年 老 い す で に 生 涯 の 暮 れ に か か ら ん と し て い る。 ま た 汝 が 年 は、 す で に 半 分 ほ ど 過 ぎ 去 り、 屍 の 立 っ て い る 如 く で あ る。(選)。 た だ 思 う に、 祖 母 の 寿 命 が 殆 ど 死 期 に 近 づ い て お り、 息 も 絶 え 絶 え で あ る。(性) ・(選) 共 に 死 期 の 近 付 け る 意 で 一 致 し て い る。 ( 21 ) <例 23 >(性) 錐 二 蜷 娠 心 膿 羊 犬 耐 識 殉 此 思 此 願 常 策 二 心 馬 ↓ (選) 臣 不 レ 勝 二 犬 馬 怖 催 之 情 田 通 釈。(性)。 ( 我 が 身 心 は ) 喧 蛎 の 如 く に 卑 し く ま た 羊 や 犬 の 如 く に 劣 り 卑 し い の で あ る。 し か し 国 を 思 い 君 を 思 う 気 持 で 常 に 心 馬 を 策 励 し て い る の で あ る。(選)。 臣 は、 犬 馬 が 主 人 の た め に 働 く 如 く 御 恩 に 報 い た い と 存 じ ま す。 恐 れ 多 い 気 持 で い っ ぱ い で す。 ﹁ 犬 馬 ﹂ の 語 を 同 じ く す る の で 出 し た。 ( 22 ) <例 24 >(選)(1) 空 費 二 筆 ・墨 一添 汗 二 珍 屏一。 一 棟 一 催 心 魂 飛 越。 (2) 伏 承 二 聖 罷 乖 豫 一心 神 無 レ 主。 (選) 承 レ 問 震 憧。 精 爽 飛 越。 且 悲 且 椀。 五 情 無 レ 主。 通 釈。(性)。(1) た だ 空 し く 筆 墨 を も て あ そ び、 尊 い 屏 風 を 汗 す の み で 恥 し い 限 り で あ る。 魂 は 恐 れ お の の き 飛 び 散 ら ん ば か り で あ る。(2) 玉 体 の 御 不 予 を 承 っ て 心 痛 の 余 り 心 は 我 が 身 よ り 離 れ て し ま っ て い る が 如 く で あ る。(選)。 知 ら せ を 聞 い て ふ る い お そ れ て、 魂 も 飛 び 散 ら ん ば か り で あ る。 悲 し ん だ り 憂 え た り、 五 情 は 抑 え よ う も な い の で あ る。(性) ・(選) 共 に、 魂 が 飛 越 し て お そ れ お の の く 情 態 を 示 し て い る。 ( 23 ) <例 25 >(選) 沙 門 永 忠 謹 言。 去 弘 仁 元 年 九 月 十 七 日 詔 書。 以 二 永 忠 一爲 二 少 僧 都 一 寵 命 自 レ 天 載 懐 二 感 蜴 一誠 憧 誠 恐。 永 忠 托 費 二 程 根 一實 惹 二 非 才 幻 (性) 臣 雲 言。 被 二 尚 書 召 幻 以 レ 臣 爲 二 散 騎 常 侍。 吏 部 尚
書 一。封 二 雷 城 縣 開 國 侯 一っ食 邑 千 戸。 奉 レ 命 震 驚。 心 顔 無 レ 措。 臣 雲 頓 首 頓 首。 死 罪 死 罪 -( 略 ) -特 廻 二 寵 命 殉 則 郵 章 載 穆。 微 物 知 レ 免。 文 意。(性) ・(選) 共 に 長 文 を 引 用 し た。 文 意 は 共 に、 天 子 か ら お ぼ し め し を う け て 感 悦 し て 恐 儂 す る 表 現 で あ り、 語 順 ・ 文 意 が に か よ っ て い る。(性) は、 沙 門 永 忠 が 嵯 峨 帝 か ら 御 寵 愛 を 賜 わ り 少 僧 都 と な っ た。 そ れ に 対 し て 自 ら の 非 才 を 漸 じ 恐 儂 す る 文 意 で あ る。(選) は、 萢 雲 が 梁 の 武 帝 か ら 尚 書 省 の お 召 し を 受 け、 そ の 勅 命 を 奉 じ て 驚 き、 恐 縮 す る 文 で あ る。 ( 24 ) <例 26 >(性) 不 レ 任 二 下 情 殉 謹 詣 レ 閾 進 表 以 聞。 誠 憧 誠 恐 謹 言。 (選) 臨 レ 表 棟 職。 猶 催 レ 未 レ 允。 不 レ 任 二 下 情一。 通 釈。(性)。 心 情 を 抑 え か ね て 申 し 上 げ ま す。 謹 ん で 官 闘 に 詣 で て 表 を 上 り 奉 聞 し 奉 る。 誠 憧 誠 恐 謹 ん で 言 す。(性)。 上 表 に あ た り お そ れ お の の い て い ま す が、 な お 聖 旨 に か な わ な い の で は な い か と 恐 儂 し て い ま す。 心 情 を 抑 え か ね て 申 し 上 げ ま す。(性) ・(性) 共 に 上 表 文 で あ り、 そ の 書 止 め の 部 分 で あ る。 共 に ﹁ 不 任 下 情 ﹂ の 句 を 用 い て 文 意 同 じ で あ る。 ( 25 ) <例 27 >(性) 金 聲 玉 振 縛 二 於 鉛 素 一っ (選)(1) 六 府 臣 僚。 三 藩 士 女。 人, 蓄 二 油 素一。 家、 懐 二 鉛 筆 一。 (2) 金 聲 玉 振 蓼 二 亮 於 匠 宇 幻 通 釈。(性)。 立 派 な 文 章 を 粉 筆 で 白 絹 の 上 に 次 か ら 次 へ と 書 か れ て い く。 鰯 ( 役 所 の 部 下 や 男 女 ら が、 人 ご と に 白 絹 を た く わ え、 家 ご と に 筆 を 用 意 し て ( 彼 の 行 跡 を 残 そ う と す る。 ) (2) そ の す ば ら し い 文 章 は、 天 下 に 鳴 り 響 い て い る。 ﹁ 金 声 玉 振 ﹂ の 句 を 同 じ く し、 文 意 も 同 じ で あ る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 朧 ﹂ の 文 体 に お い て は 二 例 見 え る。 ( 26 ) <例 28 >(性) 途 古 之 民 撃 二 耕 干 今 辰 一臭。 (選) 明 公 道 冠 二 二 儀 一 勲 超 二 途 古 一っ 通 釈。(性)。 往 古 の 尭 の 民 が 無 事 泰 平 の 世 の 民 で あ っ た 如 く に、 嵯 峨 帝 も 政 道 豊 か で あ り 民 は 泰 平 で あ る。(選)。 明 公 の 道 尽 天 地 よ り も 高 く、 勲 功 は 往 古 の か の 尭 よ り も 偉 大 で あ る。 (性) ・(性) 共 に ﹁ 途 古 ﹂ の 語 を 用 い て 天 下 泰 平 の 様 子 を 述 べ て い る。 (27 ) <例 29 >(性) 宣 圖 燕 石 魚 目 謬 當 二 天 簡 幻 (選) 惟 此 魚 目。 唐 二 突 瑛 瑠 一つ顧 レ 己 循 レ 涯。 實 知 二 塵 恭 幻 通 釈。(性)。 燕 石 魚 目 に も 等 し き つ ま ら ぬ 私 で あ る が 故 に、 問 違 っ て も 陛 下 の 御 簡 び に 預 か ろ う と は 思 い 設 け よ う や、 思 い も か け ぬ こ と で あ っ た。(選)。 私 は 魚 目 に も 等 し き 身 で あ り 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
-11-密 教 文 化 な が ら、 宝 玉 に も に た 陛 下 に 触 れ る こ と に な り、 我 身 を か え り み て 身 の ほ ど を 知 り 誠 に も っ た い な い こ と で あ り ま す。(性) (選) 共 に、 文 中 に ﹁ 魚 目 ﹂ の 語 を 用 い て、 自 己 の 分 際 を 知 る が 故 に、 君 命 を 蒙 り た る こ と を 恐 櫻 し て い る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 書 ﹂ の 文 体 に お い て は 一 九 例 見 え る。 (28) <例 30 >(性) 戎 秋 難 レ 馴。 邊 茄 易 レ 感。 (選) 夜 不 レ 能 レ 探。 側 レ 耳 遠 聴。 故 茄 互 動。 牧 馬 悲 鳴。 通 釈。(性)。 夷 は 思 う 様 に 感 化 し 難 い。 そ の 夷 の 国 に あ っ て 胡 茄 の 哀 怨 の 音 を 聞 け ば、 自 ら 故 郷 を 偲 ぶ に 至 る の で あ る。 (選)。 夜 寝 る こ と が で き ぬ ま ま 耳 を 傾 け て 遠 く を 聞 く と、 胡 人 の 笛 の 音 が 所 々 で 聞 か れ、 放 牧 さ れ た 馬 が 悲 し く 鳴 い て い る。 (性)・(選) 共 に、 物 悲 し い 故 茄 の 笛 音 と そ の 情 況 を 示 し て い る。 ( 29 ) <例 31 >(性) 人 之 相 知 不 三 必 在 二 封 面 久 話 刃 意 通 則 傾 蓋 之 遇 也。 (選) 嵯 乎 子 卿。 人 之 相 知。 貴 レ 相 二 知 心 幻 通 釈。(性)。 人 を 知 る に は、 必 ず し も そ の 人 と 対 面 し 久 し く 話 し 合 わ ね ば な ら ぬ と は 限 っ た わ け で は な く、 た だ 互 に 心 さ え 通 じ 合 え ば 傾 蓋 の 如 き 相 親 し み を 持 つ こ と が で き る。(選)。 あ あ 子 卿 よ、 人 を 知 る に は、 互 い の 心 を 知 り 合 う こ と が 尊 い の で あ る。(性) ・ 鱒 共 ハ に、 同 意 で あ る。 ( 30 ) <例 32 >(性) 努 力 自 愛。 因 レ 還 此 示 二 一 二 ↓ 繹 遍 照。 (選) 努 力 自 愛。 時 因 二 北 風 殉 復 恵 二 徳 音 幻 李 陵 頓 首。 通 釈。(性)。 よ く よ く 御 自 愛 下 さ い。 使 者 の 帰 る に 際 し て 此 に 一 二 の 微 志 を 記 し て 以 て 托 し ま す。 釈 の 遍 照。 鱈。 よ く よ く 御 自 愛 下 さ い。 時 に は 北 風 に 思 い を よ せ て、 よ い 便 り を 下 さ い。 李 陵 頓 首。(性)・(選) 共 に、 結 言 の 言 葉 で あ る。 (21) <例 33 >(性) 柔 和 接 レ 物 繕 素 毎 慕 二 其 風 幻 (選) 教 以 下 順 二 於 接 7 物。 推 レ 賢 進 レ 士 爲 吾 務。 通 釈。 (冬 嗣 は ) 人 に 接 す る に は 柔 和 で あ り、 然 も 人 物 を よ く 見 抜 き 賢 才 を 進 用 し た の で、 僧 俗 か ら そ の 徳 風 を し た わ れ た。(性)。 ( か つ て 私 は あ な た く 任 安 > よ り ) 人 に 接 す る に 尽 順 に 従 っ て 賢 人 や 官 吏 を 推 薦 す る こ と を 務 め と さ れ る と よ い、 と 教 え ら れ ま し た。(性) ・(選) 共 に、 ﹁ 接 物 ﹂ と は、 物 に 接 す る に 順 あ り と い う 意 で、 賢 才 を 進 用 す る 義 で あ る。 ( 32 ) <例 34 >(性) 非 三 只 轄 二 嬢 命 於 堅 幻 誠 則 國 家 之 一 蝦 也。 (選) 假 令 僕 伏 レ 法 受 レ 謙。 若 二 九 牛 亡 二 一 毛 州つ與 二 嬢 蟻 一何 以 異。 通 釈。(性)。 た だ ( 私 の よ う に 知 識 も 才 能 も な い ) 恰 も 蠣 の 如 き 者 が 死 ね ば、 深 谷 に 捨 て 去 ら れ る の み で あ る が、 そ れ だ
け で は す ま な い。 他 国 で 死 体 を 曝 す こ と は 誠 に こ れ 国 家 の 恥 辱 で あ る と 言 わ ね ば な ら な い。(選)。 だ か ら た と え 私 が 法 の 裁 き に よ っ て 死 刑 に さ れ て も、 九 牛 が 一 毛 を 失 っ た よ う な も の で、 虫 け ら が 死 ん だ の と 異 な る と こ ろ は な い の で あ る。(株)・ (選) 共 共 に、 自 分 の 死 を 虫 け ら の 死 と 異 な る も の で は な い と し て い る。 (33 ) < 例 35 >(株) 庶 令 三 属 文 士 知 二 見 之 一矣。 還 恐 招 二 恥 遼 琢 一 幡 往 時 遼 東 有 レ 琢。 生 レ 子 白 頭。 異 而 鰍 レ 之。 行 至 二 河 東 一見 二 群 琢 一皆 白。 懐 レ 暫 而 還。 若 以 二 子 之 功 高 一 論 二朝 廷 一則 爲 二 遼 東 家 一也。 通 釈。(株)。 ど う か ( 私 の 文 を ) 文 章 家 に 見 せ な い で 下 さ い。 恐 ら く は か の ﹁ 遼 東 の 琢 ﹂ の 故 事 の そ れ の 如 く、 か え っ て 恥 を 懐 か ね ば な ら な い と 思 い ま す の で。(選)。 ﹁ 遼 東 琢 ﹂ の 故 事。 遼 東 の 人 が、 白 頭 の 琢 が 生 ま れ た の で こ れ を 珍 奇 と し て 献 じ よ う と 思 い、 河 東 に 行 っ た と こ ろ が、 河 東 の 琢 は 皆 白 頭 で あ っ た。 そ こ で 暫 じ て 帰 っ た、 と。 こ の 故 事 は、 世 間 を 知 ら な い で 唯 自 分 だ け を え ら く 思 う こ と の 喩。(選) は こ れ を 文 章 を 書 く た と え に 用 い て い る。 ( 34 ) < 例 36 >(株) 葉 雍 大 笑 鍾 孫 深 歎。 良 有 レ 以 也。 (選) 古 人 思 二 柄 燭 夜 遊 一良 有 レ 以 也。 通 釈。(株)。 後 漢 の 察 昌 が 大 笑 し て 書 の 道 の 至 妙 に 到 達 し、 魏 の 鍾 翻 が 血 を 嘔 き 深 歎 し て 至 妙 の 域 に 達 し た と い う の は、 い か に も も っ と も な こ と で あ る。(選)。 古 人 が 灯 火 を 照 ら し て ま で 夜 も 遊 ぼ う と 思 っ た の は、 い か に も も っ と も な こ と で あ る。 ﹁ 良 有 以 也 ﹂ が 同 句 な の で こ こ に 出 し た。 ( 35 ) < 例 37 >(株) 若 使 繋 二麟 足 於 釜 竈 一 籠 二 鵬 翼 於 埜 籠 一 責 二 其 滅 没 一 課 二 之 垂 天 一 量 不 レ 難 哉。 (選) 今 庭 レ 此 而 求 二 大 功 一 猶 下 絆 二 良 駿 之 足 一 而 責 以 二 千 里 之 任 一 櫨 三 援 猴 之 勢 一 而 望 申 其 巧 捷 之 能 上 者 也。 通 釈。(株)。 た と い 駿 馬 を 釜 竈 の よ う な 狭 い 所 に 繋 ぎ、 ま た 大 鵬 を 藩 籠 の よ う な 狭 い 所 に と じ こ め て、 其 の 速 疾 で な い こ と を 責 め て も、 そ れ ら は 大 空 に 放 た れ る と 一 瞬 に し て 高 く 遠 き に 至 る こ と が 出 来 る の で あ る。 轡。 今 こ こ に い る だ け で 大 功 を 求 め よ う と す る の は、 ち ょ う ど 駿 馬 の 足 を 繋 い で 千 里 を 走 る こ と を 求 め、 軽 快 な 猿 の 勢 い を お り に 閉 じ 込 め て お い て、 そ の す ば や い 働 き を 望 む よ う な も の で す。(株) の ﹁ 繋 麟 足 於 釜 竈 ﹂、(選) の ﹁ 絆 良 騨 之 足 ﹂ が 同 意 で、 先 天 的 才 能 の あ る も の を 悪 条 件 に し て 閉 じ 込 め、 そ の 俊 敏 で な い こ と を 批 判 し 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
-13-密 教 文 化 て も、 そ れ は 求 め る 方 が 無 理 だ、 の 意。 ( 36 ) < 例 38 >(性) 髪 侵 レ 肌 甲 削 レ 膚。 (選) 割 レ 髪 宜 レ 及 レ 膚。 前 刀 レ 爪 宜 レ 侵 レ 肌。 通 釈。(性)。 髪 は 肌 に 及 ぶ ま で 切 り つ け、 爪 は 膚 を 侵 す ま で 深 く 前 刀 り 込 む。(選)。 髪 を 切 る に 膚 に ま で 切 り つ け、 爪 を 切 っ て は 肌 ま で 傷 つ け る。(性) ・(選) 共 共に、 身 心 の 清 浄 無 垢 で 誠 意 を 示 す 旨 を 明 し て い る。 ( 37 ) < 例 39 >(性) 口 密 無 レ 非。 量 唯 嗣 宗 之 不 レ 言。 (選) 院 嗣 宗。 口 不 レ 論 二 人 過 一 吾 毎 師 レ 之。 而 未 レ 能 レ 及。 通 釈。(性)。 ( 智 泉 は ) 他 人 の 過 失 を 喋 る こ と は な か っ た。 そ れ は、 か の 嗣 宗 そ の 人 よ り 以 上 に 非 理 の 言 を 謹 ん で い た か ら で あ る。(選)。 院 嗣 宗 は、 口 に 人 の 過 ち を 喋 る こ と は し な か っ た。 私 は 常 に 彼 を 師 と し て い ま し た が、 な か な か 師 の よ う に は い か な か っ た。(性) は、 幽 の 今 の 文 意 を そ の ま ま 用 い て い る。 (38 ) < 例 40 >(性) 空 海 聞。 良 工 用 レ 材 不 レ 屈 二 其 木 一而 構 レ 厘。 聖 君 使 レ 人 不 レ 奪 二 其 性 一 而 得 レ 所。 (選) 足 下 見 下 直 木 不 二 以 爲 ワ輪。 曲 者 不 中 以 爲 吾 樋。 蓋 不 レ 欲 三 以 柾 二 其 天 才 一 令 レ 得 二 其 所 一 也。 通 釈。 (性)。 私 ( 空 海 ) は 次 の よ う に 聞 い て い る。 良 工 が 材 木 を 用 う る に は、 そ の 木 の 曲 直 に 従 っ て 使 用 し て 大 屋 を 建 て る。 そ の よ う に 聖 君 は、 人 を 用 う る に あ た っ て は、 個 性 を 適 応 し た 役 職 に 当 ら し て 国 家 を 発 展 さ せ る も の で あ る。(選)。 あ た る き な た は、 直 木 は 車 輪 に は 用 い な い し、 曲 木 は 垂 木 に し な い こ と を 知 っ て い る で し ょ う。 そ れ は 生 ま れ な が ら の 本 性 を、 人 工 的 に 曲 げ た り せ ず、 個 性 に 適 応 し た と こ ろ に 落 ち つ か せ よ う と す る か ら で あ る。(性) は、(選) の 今 の 文 意 を そ の ま ま に 用 い て い る。 (39 ) < 例 41 >(性) 虎 攣 爲 レ 犬。 錐 レ 未 レ 成 レ 功 夫 比 二 之 鰍 芹 一 (選) 野 人 有 下 快 二 爽 背 一 而 美 二 芹 子 一者 劫 欲 レ 献 二 之 至 尊 一 錐 レ 有 二 旺 匠 之 意 一 亦 已 疏 矣。 願 足 下 勿 レ 似 レ 之。 通 釈。(性)。 ( 私 は 飛 白 の 書 を 書 く が、 そ れ は ) 虎 を 画 い て 犬 に 類 す も の で、 立 派 な も の で は な く か え っ て 恥 を 招 く が、 か の ﹁ 献 芹 ﹂ の 愚 を 致 さ ん と す る も の で あ る。(選)。 田 舎 の 人 せ り で、 背 中 を 太 陽 に あ ぶ る こ と を 好 み、 芹 を う ま い と 思 う 者 が い て、 こ れ を 天 子 に 献 上 し よ う と し た。 天 子 に 対 す る 僅 か な 思 い や り の 性 で あ る と し て も、 世 の 中 の 道 理 に 疎 い 者 と い わ ね ば な ら な い。(性) の ﹁ 鰍 芹 ﹂ は、(選) の 今 の 文 に よ っ て い る。
( 40 ) < 例 42 >(性) 我 皇 爲 レ 世 出 能 堕。 (選) 將 軍 勇 冠 三 二 軍 一。 才 爲 レ 世 出。 通 釈。(性)。 今 上 陛 下 は、 世 道 の 動 き に 応 じ て、 よ く 世 の 道 理 を 御 観 察 し て 世 を 治 め ら れ て い る。(選)。 将 軍 の 武 勇 は 三 軍 を お お う も の が あ り、 そ の 才 能 は 世 道 の 動 き に 応 じ て 傑 出 す る。(性) ・ 鱈 共 共 に ﹁ 爲 世 出 ﹂ の 語 が 見 え、(性) は ﹁ 我 皇 ﹂ に(選) 尽 ﹁将 軍 ﹂ に そ の 意 味 を か け、 両 者 が 英 明 で あ る こ と を 言 っ て い る。 (41 ) < 例 43 >(性) 如 二 鴻 鷹 之 有 ワ 序 利 二 濟 璽 生 幻 (選) 今 功 臣 名 将。 鷹 行 有 レ 序。 侃 レ 紫 懐 レ 黄。 讃 二 帷 握 之 謀 一 通 釈。(性)。 鴻 鷹 の 如 く 序 列 正 し く。 秩 序 整 然 と し て 心 を 併 せ て 一 切 の 衆 生 を 利 済 す べ き で あ る。(性)。 今 や 功 臣 ・名 将 は、 鷹 行 の 序 列 正 し き が 如 く 宮 廷 に 集 ま り、 作 戦 計 画 を 致 し ま す。(性) ・(選) 共 共 に、 ﹁ 鷹 行 有 序 ﹂ の 文 意 を 同 じ く す る。(性) は 大 師 が 高 雄 山 寺 の 弟 子 等 に 教 化 を 告 諭 し た 文 中 に、(性) は 丘 希 範 が 陳 伯 之 に 与 え た 文 中 に 見 え る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 激 ﹂ の 文 体 に お い て は 三 例 見 え る。 ( 42 ) < 例 44 >(性) 監 國 之 讐 彌, 新。 紹 構 之 功 不 レ 墜。 (選) 聞 魏 周 榮 虞 仲 翔 各, 紹 堂 構 一 能 負 二 析 薪 一 通 釈。(性)。 監 国 の 誉 れ い よ い よ 盛 ん で あ り、 父 の 遺 業 を 受 け 継 ぎ、 そ の 功 績 を ま す ま す 発 揮 し て い る。(選)。 聞 く と こ ろ に よ る と、 魏 周 栄 や 虞 仲 翔 は、 そ れ ぞ れ 父 の 徳 業 を 継 承 し、 そ の 遺 業 を 失 墜 し な か っ た 人 物 で あ っ た、 と。(性) の ﹁ 紹 構 之 功 ﹂ は、(性) の ﹁ 紹 堂 構 能 負 析 薪 ﹂ の 意 味 を ふ ま え て い る。 ( 43 ) < 例 45 >(性) 哀 哉 悲 哉。 雨 絶 二 雲 端 一 一 見 腕 韓。 (選) 雨 絶 二 於 天 幻有 レ 斧 無 レ 何。 何 以 自 濟。 相 随 顯 没。 不 二 亦 哀 一乎。 通 釈。(性)。 哀 れ な る か な 悲 し い か な。 雨 は 地 上 に 降 る と 再 び 雲 に 帰 る こ と が な い (新 王 魏 じ て 再 び 帰 る こ と が な い )。 御 夫 人 に お か せ ら れ て も 悲 嘆 愉 え よ う が な い の で あ る。(選)。 雨 は お の 地 上 に 降 る と 再 び 雲 に 帰 る こ と が な い。 ま た 斧 が あ っ て も 柄 が な い。 こ の よ う な 境 遇 で は ど う し て 身 を 立 て る こ と が で き よ う。 た だ 相 共 共 に 滅 び て い く の み で あ る。 悲 し い こ と で は な い か。 (性)。 魍 共 共 に、 人 生 の 悲 嘆 を ﹁ 雨 絶 雲 端 ﹂ ﹁ 雨 絶 於 天 ﹂ と 同 じ 文 意 の 表 現 で 言 っ て い る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 設 論 ﹂ の 文 体 に お い て は 四 例 見 え る。 ( 44) < 例 46 >(性) 蹄 者 忽 飛 二 青 雲 之 上 一 舗 者 乍 入 二 大 日 之 輿 一 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
密 教 文 化 (選) 抗 レ 之 則 在 二 青 雲 之 上 一 抑 レ 之 則 在 二 深 淵 之 下 一 通 釈。(性)。 ( 仏 に 帰 依 し 信 仰 す る 者 は ) た だ ち に 青 雲 の 上 (仏 果 ) に 到 り、 ( 経 を 信 奉 し 読 諦 す る 者 は ) 乍 ち に 大 日 の 境 界 に 入 る に 到 る。(性)。 ( 天 の 道 に 従 う 者 は ) 高 く 上 げ れ ば 青 雲 の 上 に あ り、 低 く 抑 え れ ば 深 淵 の 下 に あ る ( つ ま り 万 物 は そ れ ぞ れ に ふ さ わ し い 場 所 を 得 て い る の で あ る の 意 )。(性) ・ (選) 共 共 に、 ﹁ 青 雲 之 上 ﹂ の 句 を 同 じ く し、 主 張 す る 意 味 が に か よ っ て い る。 (45) < 例 47 >(性) 轍 抽 二 拙 詞 一井 書 二 絹 素 上 一 詞 翰 倶 弱 深 恐 二 玄 之 猶 白 一 (選) 人 有 嘲 レ 雄 以 二 玄 之 筒 白 幻 通 釈。(性)。 そ こ で 拙 な い 詞 を 作 り、 併 せ て こ れ を 白 絹 の 上 に 書 し た の で あ る。 そ の 詞 の 勢 い も 筆 の 勢 い も 倶 に 弱 く、 未 だ そ の 奥 義 を 極 め て い な い と 人 か ら 嘲 り を 受 け る で あ ろ う と、 深 く 恐 れ る 次 第 で あ る。(性)。 ( 私 は ﹁ 太 玄 ﹂ の 原 稿 を 書 い て い た ) あ る 人 が 私 を あ ざ 笑 っ て、 太 玄 な ど と い う が 未 だ そ の 道 に は 達 し な い 未 熟 な も の で あ ろ う、 と い っ た。(性) の ﹁ 恐 玄 之 猶 白 ﹂ の 句 は、(選) の 今 の 意 を そ の ま ま に 用 い て い る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 序 ﹂ の 文 体 に お い て は 六 例 見 え る。 ( 46 ) < 例 48 >(性) 於 焉 結 縄 磨 而 三 墳 燦 燗。 刻 木 膜 以 五 典 奮 興。 (選) 伏 犠 神 農 黄 帝 之 書 謂 二 之 三 墳 一 言 二 大 道 一也。 少 昊 顯 項 高 辛 唐 虞 之 書。 謂 二 之 五 典 一言 二 常 道 一也。 通 釈。(性)。 こ こ に お い て 結 縄 ( 太 古 の 政 治 ) は 廃 れ て 伏 犠。 神 農 ・ 黄 帝 の 書 契 は 燦 燗 と か が や き、 ま た 五 典 盛 ん に 起 る に い た っ て 刻 木 の 契 書 は 亡 ん だ。(選)。 伏 犠 ・ 神 農 ・ 黄 帝 の 書 を し よ う こ う せ ん ぎ よ く ﹁ 三 墳 ﹂ と い う。 大 道 を 意 味 す る も の で あ る。 少 昊 ・ 顯 項 ・ こ う し ん 高 辛。 唐 ・ 虞 の 書 を ﹁ 五 典 ﹂ と い う。 常 道 を 意 味 す る も の で あ る。(性) ・(性) 共 共 に、 三 墳 ・ 五 典 の 書 の 起 り を 示 し て い る。 ( 47 ) < 例 49 >(性) 風 聞 無 レ 情 杷 梓 猶 有 二 父 子 之 禮 一 (選) 孝 友 之 性 量 伊 橋 梓。 通 釈。(性)。 風 聞 す る に、 た ま し い の な い 橋 梓 で さ え な お 父 子 の 礼 が あ る。(選)。 孝 友 の 性 質 は、 橋 木 ・ 梓 木 を 見 て 得 ら れ た も の で は な い ( 天 性 の も の で あ る )。(性) ・(選) 共 共に、 ﹁ 橋 梓 ﹂ の 語 を 同 じ く し て い る。 ( 48) ﹃ 文 選 ﹄ < 頽 ﹂ の 文 体 に お い て は 一 例 見 え る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 論 ﹂ の 文 体 に お い て は 九 例 見 え る。 (49) < 例 50 >(性) 籍 篠 服 レ 思 食 不 レ 甘 レ 味。 (選) 寡 人 誠 矯 嘉 レ 之。 膿 不 レ 安 レ 席。 食 不 レ 甘 レ 味。
通 釈。(性)。 ね て も さ め て も ( 祈 願 の こ と が ) 思 い 思 わ れ て、 食 物 の 味 も 分 か ら な い ほ ど で あ っ た。(選)。 私 は 実 に 心 か ら こ れ を 喜 ん で、 お ち つ い て 座 っ て い る こ と も せ ず、 食 物 の 味 も 分 か ら な い ほ ど ( あ な た の 論 議 を 聞 く こ と を 心 待 ち に し て い た )。(性) ・(選) 共 に、 ﹁ 食 不 甘 味 ﹂ の 句 が 見 え る の で 揚 げ た が 文 章 の 意 味 は 同 じ で な い。 (50) < 例 51 >(性) 西 嫡 摸 母 支 離 罷。 誰 能 保 二 得 萬 年 春 一。 (選) 毛 嫡 西 施 善 殿 者 不 レ 能 レ 蔽 二 其 好 一 摸 婦 倭 偲 善 讐 者 不 レ 能 レ 掩 二 其 醜 一 通 釈。(性)。 西 施 ・ 毛 嫡 の よ う な 美 人 も、 摸 母 の よ う な 醜 婦 も、 支 離 疏 の よ う な 醜 男 も 皆 こ れ 死 ん で し ま っ た。 誰 一 人 と し て ( 無 常 を 免 れ ) 万 年 の 生 命 を 保 ち 得 る こ と は で き な い の で あ る。(性)。 毛 嫡 や 西 施 の よ う な 美 女 は、 ど ん な に 悪 口 の 上 手 な も の で も、 そ の 美 し さ を 否 定 す る こ と は で き な い。 ま た い き 摸 娚 や 倭 偲 の よ う な 醜 女 は、 ど ん な に ほ め る こ と が 上 手 な も の で も、 そ の 醜 さ を 否 定 す る こ と は で き な い。(性)。(選) 共 共に、 美 女 ・ 醜 女 の 語 彙 は 同 じ で あ る が、 文 意 は 異 な る。 す な わ ち、(性) は 無 常 を 明 す 意 味 で 使 用 し、(性) は だ か ら 優 れ た 道 さ え 持 っ て お れ ば 紹 介 な ど 必 要 で な い、 の 意 で 用 い て い る。 (51) < 例 52 V(性)(1) 公 抱 二 大 厘 之 材 一出 鎭 二 材 狼 之 境 一 (2) 大 厘 翠 材 之 所 二 支 持 幻 元 首 股 肱 之 所 二 扶 保 殉 (選) 大 厘 之 材。 非 二 一 丘 之 木 一 太 平 之 功。 非 二 一 人 之 略 一 也。 通 釈。(性)(1)。 公 ( 苓 守 公 ) は、 大 建 築 を 造 る 材 木 に も た と え ら れ る 才 智 を 持 っ て、 辺 境 の 国 へ 趣 き 檸 猛 な 者 ら を 鎮 撫 す る 大 役 に 就 か れ た の で あ る。(2)。 大 家 は 一 木 で は 造 れ な い、 衆 材 の 支 持 に よ り て 出 き る も の で あ る。 ま た 一 国 は 君 は 元 首、 臣 は 股 肱 が 一 心 同 体 と な っ て 興 隆 す る も の で あ る。(選)。 大 建 築 物 を 造 る 材 木 は、 一 丘 の 木 だ け で は 足 り な い。 同 じ く 太 平 を 招 来 し た 功 績 は、 た だ 一 人 の 考 え に よ る も の で は な い。(性) (1)(2) 共 共 に、(性) の ﹁ 大 厘 之 材 ﹂ の 文 意 を よ く ふ ま え た 表 現 で あ る。 (52) < 例 53 >(性) 爲 レ 人 引 レ 容 避 二 棲 観 一 爲 レ 物 減 レ 喰 日 夕 憂。 (選) 減 二 膳 食 一卑 二 宮 観 一 通 釈。(性)。 ( 旱 天 は ) 万 民 が 犯 し た 罪 業 が 原 因 で あ る に も と が か か わ ら ず、 そ の 各 を 引 き 受 け ら れ て 宮 殿 よ り 出 て 雨 を 祈 ら れ、 ま た 万 物 が 旱 天 の た め に 餓 死 す る の を 眺 め ら れ て は、 朝 夕 の 飲 食 を 減 ら し て 憂 慮 さ れ る。 鱒。 食 事 を 減 ら し て、 高 壮 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
密 教 文 化 な 建 物 は 作 ら な い。(選) の 意 は、 そ の よ う な 天 子 の 徳 恩 は 飛 ぶ 鳥 に ま で 及 ん だ、 と の 意 味。(性) ・(選) 共 に、 天 子 の 徳 恩 に つ い て 言 っ て い る。 (53) < 例 54 >(性) 山 河 氣 五 百 賢。 允 武 允 文 得 レ 自 レ 天。 九 流 三 略 肚 裏 呑。 (選) 張 良 受 二 黄 石 之 符 一 踊 二 三 略 之 説 一 以 遊 二 於 翠 雄 一 通 釈。(性)。 ( 零 守 公 は ) 才 智 山 の 如 く 高 く、 大 河 の 如 く 深 い 稀 な 賢 人 で あ り、 ま た 文 武 に 天 性 を 具 え て い る。 更 に 九 流 三 略 の 如 き 諸 事 諸 芸 を 腹 の 内 に 納 め て い る 人 物 で あ る。(性)。 お つ げ 張 良 は 黄 石 公 か ら 符 を 受 け、 ﹁ 三 略 ﹂ の 説 を 読 諦 し て、 諸 侯 に 遊 説 に 出 か け た。(選) で 言 う 兵 書 ﹁ 三 略 ﹂ の 言 説 は、 漢 の 高 祖 に う け 入 れ ら れ る が、(性) で は、 こ の 説 を 琴 守 公 も 得 て い た と し て い る。 (54) < 例 55 >(性) 金 石 薫 藩 物 之 封 也。 賢 聖 愚 頑 何 能 相 離。 (選) 薫 藩 不 レ 同 レ 器。 臭 鷺 不 レ 接 レ 翼。 通 釈。(性)。 金 と 石、 香 草 と 臭 草 と は 物 の 対 応 で あ る。 ま た 賢 に 対 し て 愚、 聖 に 対 し て 頑 と い っ た 者 が 出 て 来 る の は 自 然 の 理 で い た し か た な い。(選)。 香 草 と 臭 草 と は 同 じ 器 に は 収 め ら れ ず、 悪 鳥 と 神 鳥 と は 翼 を 触 れ 合 わ す こ と は な い。(性) ・(選) 共 共 に、 ﹁薫 藩 ﹂ の 語 が 見 ら れ、 文 章 表 現 が 同 じ で あ る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 連 珠 ﹂ の 文 体 に お い て は } 例 見 え る。 (55) < 例 56 >(性) 日 薄 星 廻 期 辰 遙 至。 (選) 臣 聞。 日 薄 星 廻 弩 天 所 以 紀 レ 物。 通 釈。(性)。 日 が 高 く 懸 か り 星 が 巡 っ て、 早 く も 一 周 忌 と な っ た。(選)。 私 は 聞 い て い る。 ﹁ 目 が 高 く 懸 か り 星 が 巡 る の は、 天 が 万 物 の 秩 序 を 正 す た め で あ る ﹂ と。(性) ・(選) 共 共 に、 ﹁ 日 薄 星 廻 ﹂ の 句 が 見 え 文 意 同 じ で あ る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 蔵 ﹂ の 文 中 に お い て は 二 例 見 え る。 (56) < 例 57 >(性)(1) 一 塵 構 レ 嶽。 (2) 聚 レ 塵 爲 レ 山。 (選) 崇 猶 二 塵 積 一 通 釈。(性)(1)。 塵 も 段 々 と 積 れ ば 高 嶽 と な る。(2)。 塵 も 積 り 集 れ ば 大 山 と な る。(性)。 物 事 が 盛 ん に な る に は、 塵 の 積 る よ う に 時 間 が か か る も の だ。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 銘 ﹂ の 文 体 に お い て は 一 例 見 え る。 (57) < 例 58 >(性) 誰 顧 誠 二 剛 強 一 (選) 柔 弱 生 之 徒。 老 子 誠 二 剛 強 一 通 釈。 (性)。 自 己 の 口 を つ つ し ん で、 意 地 張 り は 常 に 誠 心 せ
ね ば な ら な い。(選)。 柔 弱 は 生 き て い る あ か し と い え る。 老 子 は、 意 地 張 り を 戒 め ら れ た。 ﹁ 剛 強 ﹂ は ﹁ 剛 彊 ﹂ に 同 じ。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 諌 ﹂ の 文 体 に お い て は 二 例 見 え る。 (58) < 例 59 >(性) 伏 惟 故 左 僕 射 贈 開 府 儀 同 三 司 藤 原 朝 臣。 累 代 台 鼎 文 武 佐 レ 時。 (選) 伊 君 顯 考。 変 レ 葉 佐 レ 時。 通 釈。(性)。 伏 し て 惟 る に 故 の 左 僕 射 贈 開 府 儀 同 三 司 藤 原 朝 臣 冬 嗣 は、 先 祖 代 々 か ら 三 公 の 重 臣 に 列 な り、 文 官 ・ 武 官 に 任 ぜ ら れ て 時 の 政 治 を 助 け て 来 た。(選)。 あ な た の 亡 父 は、 父 祖 の 跡 を 継 い で 時 の 政 治 を 助 け て 来 た。(性) ・(選) 共 に、 代 々 時 の 政 治 を 助 け て き た 意、 で 一 致 す る。 (59) < 例 60 >(性) 量 謂 星 精 返 二 知 命 一白 城 喪 二 鄭 産 一鳴 呼 哀 哉 哀 哉。 (選) 曾 未 二 知 命 一 中 年 限 卒。 鳴 呼 哀 哉。 通 釈。(性)。 ど う し て や、 思 い も 設 け ぬ こ と で あ っ た。 冬 嗣 卿 が 五 十 才 に な っ た ば か り と 言 う 時 に、 白 城 に お い て 世 を 去 ろ う と は。(選)。 ま だ 五 十 才 に な る か な ら な い ら ち に、 人 生 の 中 ば で 世 を 去 っ た。 悲 し い こ と で あ る。(性)・(選) 共 に、 文 意 同 じ。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁ 哀 ﹂ の 文 体 に お い て は 二 例 見 え る。 (60) < 例 61 >(性) 世 上 目 月 短。 泉 裏 年 歳 長。 (選) 逝 日 長 分 生 年 淺。 通 釈。(性)。 死 後 の 年 歳 の 長 い の に 較 べ れ ば、 現 世 の 人 の 命 は 誠 に 短 い と い え る。(選)。 あ の 世 で 過 ご す 日 は 長 く、 こ の 世 で 生 き て い る 年 は 浅 い。(性)・(選) 共 共 に 同 じ 意 味 で あ る。 (61) < 例 62 >(性) 寂 箕 希 二 人 跡 一 薫 散 遠 二 聚 落 幻 (選) 硯 二 天 日 一分 蒼 荘。 面 二 邑 里 一分 瀟 散。 通 釈。(性)。 境 地 寂 箕 と し て 人 跡 ま れ で あ り、 人 影 も な い 村 里 を 遠 ざ か る。(性)。 大 空 を 視 れ ば た だ あ お あ お と し て 広 が り、 村 里 を の ぞ め ば 人 形 は な く さ び し い。(性)・(性) 共 に、 寂 箋 と し た 心 情 を 述 べ て い る。 ﹃ 文 選 ﹄ ﹁碑 文 ﹂ の 文 体 に お い て は 五 例 見 え る。 (62) < 例 63 >(性) 行 藏 任 二 鐘 谷 一 (選) 夫 幽 谷 無 レ 私。 有 レ 至 斯 響。 洪 鐘 虚 受。 無 二 來 不 ワ 鷹。 通 釈。(性)。 進 ん で 物 事 を 行 な う こ と (行 )、 退 い て 物 事 を 蔵 し て し ま う こ と (藏 ) ( つ ま り 仏 が 他 の も の に 対 応 す る の は ) 鐘 を 撞 け ば 必 ず 響 あ る 如 く、 ま た 幽 谷 に 叫 べ ば 必 ず 響 が あ る よ う な も の で あ る。(選)。 さ て 幽 谷 は 無 私 で あ る が た め に、 呼 び 声 が そ の ま ま に 響 き 合 う。 つ り 鐘 は 虚 無 な る が た め に、 撞 つ 強 さ に 応 じ て 音 を 立 て る。(性) ・ 鱒 共 共 に、 ﹁ 鐘 谷 ﹂ の た と え 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
-19-密 教 文 化 を も っ て 仏 の 度 量 の 大 き さ を 明 し て い る。 (63) < 例 64 >(性) 弟 子 等 嘗 レ 藥 無 レ 感 毒 蓼 訴 レ 蒼。 幡 仰 二 蒼 天 一而 自 訴。 通 釈。(性)。 弟 子 等 は 薬 を す す め て 看 病 し た が 効 験 な く 逝 去 し た。 悲 哀 こ の 上 な く 天 を 仰 い で 悲 し ま ざ る を 得 な い。(選)。 天 を 仰 い で 訴 え 悲 し む。(性) ・(選) 共 に、 悲 哀 の 相 を 明 し て い る。 四 以 上、 < 例 17 > か ら < 例 64 > に お い て、 ﹃ 性 霊 集 ﹄ ・ ﹃ 文 選 ﹄ 収 録 の 各 文 章 で 関 連 し て い る 語 彙 の 用 例 を 検 討 し た。 各 関 連 語 句 は、 ﹃ 文 選 ﹄ の 文 体 順 次 で 整 理 し、 用 例 の 内 容 は そ (64) の つ ど 明 示 し た。 本 論 文 で 見 出 し 得 た、 ﹃ 性 霊 集 ﹄ に み ら れ る ﹃ 文 選 ﹄ の 影 響 を 要 約 す れ ぼ、 概 ね 次 の 如 く な ろ う。 ﹃ 性 霊 集 ﹄ に み ら れ る ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 各 引 用 例 は、 特 に 片 寄 っ た と こ ろ は な く、 両 書 共 共 に 全 体 的 に 散 見 で き る。 (囲 表 参 照 )。 ﹃ 性 霊 集 ﹄ を 中 心 に 見 れ ば、 ( 表 17 ) ( 表 18 ) の 文 は、 ﹃ 文 選 ﹄ か ら の 引 用 も 多 く、 文 意 も 的 確 に 収 ま っ て い る。 特 に ( 表 17 ) は、 ﹃ 文 選 ﹄ を 意 識 し た と こ ろ が 最 も 強 く 感 じ ら れ る 文 章 で あ る。 ( 本 論 文 八 頁 参 照 ) ﹃ 文 選 ﹄ を 中 心 と し、 そ の 文 体 の 上 よ り 見 れ ば、 ﹁ 騒 ﹂ よ り ﹁ 碑 文 ﹂ ま で の 一 七 の 文 体 を 選 び 出 す こ と が で き る。 こ れ ら の 文 体 と 大 師 の 文 章 の 関 係 は、 と り わ け て 際 立 っ た 特 徴 は な い。 つ ま り 大 師 の 文 章 か ら は、 ﹃ 文 選 ﹄ の ﹁ 文 体 ﹂ を 意 識 し て 取 り 扱 っ て い る と い っ た 傾 向 は 見 出 せ な い。 例 え ば ﹁ 七 ﹂ の 文 体 は、 七 つ の 事 を 説 い て 君 を い さ め る こ と を そ の 内 容 と す る が、 大 師 の 文 中 に は こ の 意 味 で ﹁ 七 ﹂ か ら の 引 用 例 は な い。 ﹁ 七 ﹂ か ら の 引 用 例 は < 例 18 > < 例 19 > で 明 ら か な 如 く、 天 皇 の 徳 が 広 大 で あ る と の 意 味 で 用 い て い る。 た だ、 ﹃ 文 選 ﹄ 所 収 の 個 々 の 文 章 に つ い て は、 一 概 に 同 等 に は 扱 え な い。 中 で も 引 用 の 頻 度 数 ま た は そ の 内 容 か ら 考 慮 し て、 重 視 す べ き 文 章 が あ る。 次 の も の が あ げ ら れ る。 ﹁ 書 ﹂ の 文 体 中、 次 の 文 章 は 重 視 す べ き で あ る。 ﹁ 答 蘇 武 書 ﹂。 こ の 書 は、 飼 奴 に 左 遷 さ れ て い た 蘇 武 (前 り り よ う 一 四 〇 1 前 六 〇 ) が 旬 奴 か ら 漢 王 朝 に 帰 っ た の ち、 李 陵 か ら 書 簡 が 届 い た。 蘇 武 は そ れ に 対 す る 返 書 を 送 っ た。 李 陵 は 重 ね て 前 書 で 述 べ つ く せ な か っ た 意 を こ の 書 に 託 し た の で あ る。 ﹃ 性 霊 集 ﹄ で は、 < 例 30 V ( 表 2 ) 贈 野 陸 州 歌。 < 例 31 > ( 表
5 ) 沙 門 勝 道 上 補 陀 洛 山 碑。 < 例 32 > ( 表 33 ) 答 叡 山 澄 法 師 求 理 趣 繹 経 書。 < 例 7 > ( 表 17 ) 爲 大 使 與 福 州 観 察 使 書 に 見 ら れ る。 こ れ ら の 引 用 箇 所 を み る と、 大 師 が ﹁ 答 蘇 武 書 ﹂ を よ く 読 破 し て い た こ と が 理 解 で き る の で あ る。 ﹁ 報 任 少 卿 書 ﹂。 こ の 書 は、 司 馬 遷 が 友 人 の 任 安 え 返 書 と し て 書 い た も の で あ る。 内 容 は、 主 と し て 自 分 と 李 陵 の 関 係 を 述 べ て い る。 李 陵 の 人 柄、 李 陵 が 飼 奴 と 奮 戦 し 敗 戦 し た こ と、 そ の 李 陵 を 弁 護 し た こ と で 天 子 の 怒 り に 触 れ 宮 刑 に 処 せ ら れ た こ と 等 で あ る。 ﹃ 性 霊 集 ﹄ で は、 次 の 四 例 に 引 用 し て い る。 < 例 13 > ( 表 18 ) 請 越 州 節 度 使 内 外 文 書 啓。 こ こ で は、 大 唐 長 安 へ の 旅 は、 万 難 を 制 し 命 を 賭 し て の 旅 で あ る、 の 意。 ﹁報 任 少 卿 書 ﹂ で は、 李 陵 が 死 ぬ 覚 悟 を し て、 我 が 身 の こ と を も 顧 み な い で、 皇 室 の 難 に 赴 い た の 意。 つ ま り 大 師 は、 今 の 文 意 を 熟 慮 し て 自 ら の 文 中 に 引 用 し た と い え る の で あ る。 < 例 14 > ( 表 18 )。 こ こ で は、 ﹁ 戴 盆 ﹂ の 語 を 同 じ く し て い る。 ﹁ 戴 盆 ﹂ と は、 一 事 に 専 心 し て 他 を 省 み な い 喩 で あ る。 つ ま り 大 師 は、 識 見 が 狭 い た め 学 問 に 専 心 し て い る の 意 で あ る。 < 例 33 > ( 表 22 ) 右 將 軍 於 華 山 宅 設 左 僕 射 大 鮮 齋 願 文。 こ こ で は、 ﹁ 接 物 ﹂ の 語 を 同 じ く し て い る。 物 に 接 す る に 順 あ り と い う 意 味 で、 賢 才 を 進 用 す る 義 で 一 致 し て い る。 < 例 34 > ( 表 19 ) 爲 橘 學 生 與 本 國 使 啓。 こ こ で は、 両 文 共 共 に、 自 分 の 死 を 虫 け ら の 死 と 異 な る も の で は な い、 と し て い る。 以 上 の 例 で 明 ら か な 如 く、 大 師 は ﹁ 報 任 少 卿 書 ﹂ の 文 意 を 的 確 に 踏 ま え て 引 用 し て い る と い え る の で あ る。 や は り こ の 書 を 熟 読 し て い た と い わ ね ば な ら な い。 け い こ う ﹁ 與 山 巨 源 絶 交 書 ﹂。 こ の 書 は、 竹 林 の 七 賢 人 の 一 人 奮 康 さ ん と う が、 同 じ 仲 間 の 山 涛 が 自 分 の 代 わ り に 毬 康 を 役 職 に 推 薦 し よ う と し た。 そ れ に 対 し、 交 際 を 絶 つ 旨 を 通 達 し た 書 で あ る。 < 例 39 > ( 表 26 ) 爲 亡 弟 子 智 泉 達 嘲 文。 玩 嗣 宗 は、 口 に 人 の 過 ち を 喋 ら な い。 そ の よ う に ( 智 泉 も ) 他 人 の 過 失 を 喋 ら な い、 の 意。 今 の ﹁ 絶 交 書 ﹂ に あ る 玩 嗣 宗 の 文 意 を 用 い て い る。 < 例 40 > ( 表 15 ) 辮 少 僧 都 表。 こ こ で は、 両 文 共 共 に、 直 木 ・ 曲 木 は そ れ ぞ れ 用 途 に 応 じ て 使 用 せ よ。 そ れ と 同 じ く、 人 間 も 生 ま れ な が ら の 素 質 を、 人 工 的 に 曲 げ な い で、 個 性 の 適 応 に 応 じ て 用 い る べ き で あ る、 の 意。 < 例 41 > ( 表10) 劉 希 夷 集 書 上 表。 こ こ で は、 ﹁ 鰍 芹 ﹂ の 語 を 同 じ く す る。 ﹃ 性 霊 集 ﹄。 私 が 書 い た 飛 白 体 は、 あ た か も 虎 を 画 い て 犬 に 類 す る 程 度 で あ る。 こ の 書 を 天 子 に 献 上 し よ う と し て い る の は、 か の ﹁ 献 弘 法 大 師 と ﹃ 文 選 ﹄
-21-密
教
文