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本講義の内容 役員に対する損害賠償請求事件 虚偽記載による損害賠償請求事件 M&A に関わる株式価格決定申立事件 2

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(1)
(2)

本講義の内容

役員に対する損害賠償請求事件

虚偽記載による損害賠償請求事件

(3)

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本講義の内容

① 取締役って大変

② 嘘を書いたら大変

③ 裁判所も大変

実務家 依頼者として、

事件で学ぶ、実務や専門家の限界と留意点!

3

(4)

少々振り返り

Q: なぜM&Aをするのか?

A

:

買い手:事業成長につながるから

(5)

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5

Q: なぜM&Aをするのか?

A

:

キーワード:コーポレート・ガバナンスコード

ROE

→意義のない内部留保は許されない

少々振り返り

(6)

M&A件数推移

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

(件)

(7)

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M&Aの成功事例

7

ソフトバンクの成功事例

日本テレコム、ボーダフォン、イー・アクセス

約5,000億円の時価総額が

現在約10兆円

(8)

M&Aの失敗事例

P社

S社を計8,000億円超で買収

(9)

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本講義の内容

9

Q: では失敗するとどうなってしまうのか?

A

:

大きく3類型

① 役員に対する損害賠償請求事件

② 虚偽記載による損害賠償請求事件

③ M&Aに関わる株式価格決定申立事件

(10)

取締役って大変

Q: 取締役は会社にとってどういう立場?

(11)

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取締役って大変

11

Q: 会社は誰のもの?

選択肢

① 経営者

② 従業員

③ 株主

④ 顧客

⑤ 社会

(12)

取締役って大変

Q: 会社は誰のもの?

(13)

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取締役って大変

13

Q: 取締役は会社にとってどういう立場?

A

:

株主から経営の委任を受けた人

株主から財産を預かって、

「じゃあ任せたんで増やしといてね」

って言われた人

(14)

取締役の義務

Q: 財産を預かる人に対して

(15)

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取締役の義務

15

善管注意義務

会社法 第330条

株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

民法 第644条

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する

義務を負う。

 忠実義務

会社法 第355条

取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にそ

の職務を行わなければならない。

具体例 競業避止義務・利益相反取引の制限(会社法356条1項1号2号)

(16)

取締役の責任

会社に対する責任

会社法 第423条

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、

株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 第三者に対する責任

会社法 第429条

役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等

は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

会社法 第847条(株主による責任追及等の訴え)

六箇月前から引き続き株式を有する株主は、株式会社に対し、(中略)役員等(中

略)の責任を追及する訴え(中略)の提起を請求することができる。

(17)

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役員に対する損害賠償請求事件

17

・アパマンショップ株主代表訴訟事件

・アートネイチャー株主代表訴訟事件

・シャルレMBO株主代表訴訟事件

(18)
(19)
(20)

アパマンショップ株主代表訴訟事件

東京高等裁判所

アパマンショップHDの取締役らの責任を認め、連帯して、アパマンショップH

Dに対し、株式の評価額1株当たり1万円と取得価額1株当たり5万円の差額である

1億2,640万円の支払いを命じた。

①5万円よりも低い買取価格で買取りが円滑に進むか否かの

検討がなされていない

②費用対効果の検討が十分に行われていない

③アパマンショップマンスリーの一株当たりの価額である1万円の

5倍もの金額を買取価格とする合理的な根拠が見出せない

(21)

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アパマンショップ株主代表訴訟事件

21

 最高裁判所

善管注意義務違反は無いとして、取締役の責任を否定

①株式取得を円滑に行うため必要であったこと

②アパマンショップマンスリーが設立時1株あたり5万円で設立され、

設立後5年しか経過しておらず、かつ、非上場であること

③アパマンショップマンスリーの株主には、アパマンショップHDの事業の遂

行上重要であると考えていた加盟店等が含まれており、友好関係を維持する必

要があったこと

④事業再編の効果によるアパマンショップマンスリーの

企業価値評価向上が期待できること

⑤弁護士の意見も聴取して判断したこと

(22)

経営責任の原則

会社に対する責任

会社法 第423条

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、

株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

取締役の業務執行は不確実な状況で迅速な決断を迫られ

る場合や、時にリスクを取って挑戦すべき場合もある。

判断が結果として間違っていたときに、善管注意義務に

違反したとして損害賠償責任を負わせることにすると、

なにもできなくなってしまう。

(23)

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経営責任の原則

23

(1)経営判断の前提となった事実の認識に

不注意な誤りがないこと

(2)経営判断の過程・内容が著しく不合理でないこと

会社に対する責任

経営判断の原則に従えば、結果的に会社に損害が生じたとしても、

基本的には取締役は損害賠償責任を負わない

 「経営判断の原則」の内容

(24)

アートネイチャー株主代表訴訟事件

 訴えの内容

2004 年3 月、当時非上場会社であった株式会社アートネイチャーの役

員等に対する第三者割当てによる新株発行及び自己株式の処分におけ

る発行価額が「特ニ有利ナル発行価額」に該当するにもかかわらず、

取締役が株主総会において有利発行を必要とする理由の開示を怠った

結果、会社に損害を与えたとして、取締役に対し任務懈怠を理由に公

正価額と発行価額の差額として約22億円の損害賠償を求めた株主代表

訴訟

(25)
(26)

アートネイチャー株主代表訴訟事件

東京地方裁判所、東京高等裁判所

・自己株式処分:1株1,500円が妥当

・新株発行:著しく不公正な発行価額に当たる

裁判所は公正な価額と発行価額との差額にあたる2億円相当の支払いを命じた。

①自己株式処分

→役員らが1株1,500円で買取りに応じてきたこと、

実質的には代表者による買戻しである点などを考慮して1株1,500円が相当。

②新株発行

→2000年5月時点で1株10,000円、2006年3月時点で1株9,000円

③DCF法によれば2004年3月時点の株式価値は、少なくとも1株7,000円

④株価算定において採用されていた配当還元法は、主として少数株主の

株式評価において、安定した配当が継続的に行われる場合に用いられる評価

方法であり、本件においては相当性を欠く。

(27)

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アートネイチャー株主代表訴訟事件

27

最高裁判所

「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないとして、取締役の責任を否定

・裁判所が、事後的に他の評価手法を用いたり、異なる予測値等を採用するなど

して、改めて株価算定を行った上、その算定結果と現実の発行価額とを比較して

「特ニ有利ナル発行価額」に当たるか否かを判断するのは、取締役らの予測可能

性を害することともなり、相当ではない。

・非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応

合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には、その発

行価額は特別の事情のない限り、「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないと解

するのが相当である。

(28)

シャルレMBO株主代表訴訟事件

 事案

・シャルレ(神戸市、大証二部。女性用下着メーカー)

・平成20年9月19日 買付価格800円でのMBOを発表

会社はMBOに賛同する意見を表明

・10月16日以降 大阪証券取引所などに創業家取締役の

利益相反行為について内部通報が相次ぐ。

・10月29日

第三者調査委員会設置

・10月31日

第三者委員会による調査報告書提出

・11月7日

会社による賛同意見の撤回

・12月2日

不賛同意見提出

→MBOは頓挫

→平成22年1月 株主代表訴訟提起 取締役5名に5億円の賠償請求

(29)
(30)

シャルレMBO株主代表訴訟事件

 MBO公表までの経緯

・7月30日

7月22日付利益計画に基づく算定結果報告

・8月14日~ 創業者によるメール指示

創業者側のアドバイザーも関与して事業計画を再作成し

複数の計画で算定するよう指示

算定結果は創業者の満足する水準にならなかった

創業者は、DCF法を採用しないことや類似会社の変更、

受け入れなければ他の算定機関への変更検討などを指示

担当役員は、上記指示を算定機関にも伝達

・8月27日~ 事業計画の見直し 2通りの計画を作成

・9月17日

両計画に基づき算定結果が報告

・9月19日

(31)

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シャルレMBO株主代表訴訟事件

31

 事業計画

平成21年度

平成22年度

平成23年度

平成24年度

7月22日付

利益計画

21億2,000万

25億7,800万

24億2,400万

22億6,200万

8月31日付

利益計画

9億8,700万円

10億3,700万

5億9,100万円

8,900万円

9月13日付

アップケース

13億9,100万

15億3,700万

11億4,800万

6億8,300万円

実績

7億7,600万円

19億9,300万

17億1,500万

8億9,000万円

(32)

シャルレMBO株主代表訴訟事件

 算定結果

DCF法

市場株価法

類似会社

比準法

修正

純資産法

7月算定結果

1,104~1,300円

528~544円

897~1,129円

9月算定結果

681~1,010円

518~535円

976~1,259円

929円

買い手の算定結果

646~908円

498~600円

599~855円

(33)

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シャルレMBO株主代表訴訟事件

33

■ 裁判所の判断

取締役の善管注意義務違反を認定

■ ポイント

① MBOにおける善管注意義務の内容として下記5点を挙げた

・ MBOの実施に係る判断の合理性に関する義務

・ 公正な企業価値の移転を図る義務

・ 企業価値の移転に係る手続の公正を害する行為をしない義務

・ 情報開示義務

・ 他の取締役の監視義務

② 文書提出命令

(34)

MBO等に関連するルール

 MBO指針

2007年9月 経済産業省主導で公表した手続的指針

 企業行動規範(MBO等の開示に係る遵守事項)

2007年8月 各取引所が開示ルールの強化、算定書提出の義務付け

 第三者委員会

2010年6月 各取引所が支配株主との取引に関するルール創設

 開示ルールの強化

2013年7月 各取引所がMBO等の開示強化、算定書の項目を明確化

 事前相談

補完するものとして取引所・財務局への2-3週前の事前相談

(35)

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小括

35

役員に対する損害賠償請求事件から学ぶこと

 経営判断の原則と限界

 利益相反取引の際に守るべきこと

(36)

虚偽記載による損害賠償請求事件

オリンパス事件

 企業価値評価が損失隠しに使われた

 DCF法の悪用

非現実的な事業計画を基に評価

 見せかけの善管注意義務履行

公認会計士協会を巻き込んだ評価プロセス

の見直し

(37)

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オリンパス事件

• 2005年10月頃まで休眠状態

• 売上高合計は、約3億円で赤字

• 2006年3月及び2008年2月に投資実行(734億円)

• 投資金額は、公認会計士の株価算定を参考に決定

37

■ 事案の概要

(38)

オリンパス事件

■ 事案の概要

① 簿外ファンドの連結外しによる含み損・負債の簿外処理

90年代の有価証券投資等の失敗による多額の含み損の計上を先送りするため、

平成10年頃から、海外の複数のファンドに含み損を抱える運用資産等を移転。

② 簿外処理を発覚させないための隠蔽工作

平成19年3月期までの約10年間、外資系金融機関等の外部協力者の協力を得て、

簿外処理が発覚しないように隠蔽工作。

③ 資産性のないのれんを計上したのれんの過大計上

平成20年3月期以降、企業買収に伴う買収資金・アドバイザーへの報酬等として支

出した資金を簿外ファンドに還流して損失を処理。一方、過大な買収資金・報酬等

(39)

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オリンパス事件

2011年9月から12月の株価チャート

約2,500円だった株価が急落、約500円に

(40)

オリンパス事件

 有価証券報告書に虚偽記載をした者の

損害賠償責任

金融商品取引法 第21条の2

虚偽記載等の事実の公表がされた日(以下この項において「公表日」という。)前

一年以内に当該有価証券を取得し、当該公表日において引き続き当該有価証券を所有

する者は、当該公表日前一月間の当該有価証券の市場価額(市場価額がないときは、

処分推定価額。以下この項において同じ。)の平均額から当該公表日後一月間の当該

有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、当該書類の虚偽記載等により生じた損

害の額とすることができる。

(虚偽記載が公表された日以前1ヶ月の市場価格の平均額)-

(公表日後1ヶ月間の当該有価証券の市場価格の平均額)

(41)

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オリンパス事件

41

 第三者委員会の調査報告書(2011年12月6日)92頁、93頁

●●公認会計士事務所は、オリンパスから、価値算定につ

いて、事業計画の数字は動かさないで欲しいという強い依

頼を受けたため、マネジメントへのインタビューを実施せず、

オリンパスから提示された事業計画の数値を、一部の修正

を除いてほぼそのまま価値算定をした。

ベンチャー企業の場合には、将来の不確実性が高いため、

将来の市場規模等の変化について複数のシナリオを用意

し、各シナリオの発生確率を予測し加重した上で企業価値

を算定することも検討する必要がある。

■ 第三者委員会による企業価値評価の問題意識

(42)

オリンパス事件

■ 金融庁の問題意識

「企業価値評価ガイドライン」日本公認会計士協会経営調査会研究報告32号(抄)

Ⅲ.企業価値評価における価値形成要因

3.基礎資料の信頼性及び有用性の検討

(3) 評価対象会社から入手する資料の有用性

評価は、依頼人との一定の契約関係や双方の合意を前提に実施される。そのた

め会社から入手する資料に関して、真実性・正確性・網羅性を検証するための手

続を別途行うことは稀である。

Ⅴ. 取引目的の価値算定業務

5.公認会計士の行う取引目的における価値評価業務の性質及び内容

(2)評価における基礎資料の検討分析の意義

予想された結果と実際の結果が相違することは頻繁に起こり得る。また、このよ

うな相違が重大である可能性もあり、評価対象会社の経営陣が予想した結果が達

成されるかについて公認会計士が到底責任を負えるものではなく、当該将来情報

(43)
(44)

オリンパス事件

■ 金融庁の問題意識

【論点】

◆ 専門家による企業価値評価は、どのような責任を負うか

 ヘッジ文言を記載することで、算定者は責任を一切負わないのか?

 そもそも企業価値評価は、保証業務なのか?合意された手続なのか?

(45)

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オリンパス事件

45

(46)
(47)
(48)

小括

オリンパス事件から学ぶこと

 算定の性質の正しい理解と限界

 セカンドオピニオン

(49)
(50)

価格決定申立て

著名弁護士のブログ

「2008年3月16日 (日) 株式の価格決定の裁判」から抜粋

株式買取請求権の行使に伴う価格決定の申立は、株式の価格をめぐって申立人(株主)と相

手方(会社)が主張と立証を尽くし合う点では訴訟的ですが、「公正ナル価格」がいくらなのかは、

要件事実の立証によって法律的に機械的に決まるようなものではありません。

価格決定の申立の裁判は、「非訟事件」であり、その価格は、裁判所が、その裁量で適当に決

めます(「いい加減に」という意味ではありません)

今回の決定の理由の中でも、一番最初に「価格は、俺が、自由に決めるんだぞ。」という趣旨

のことを難しい言葉で述べられていますが、そう書いてあっても無くても、そもそも、価格決定は、

裁判所が「これだ!」と決めれば、その価格になります。とはいえ、裁判所は、決定に際して、理

由を述べなければならないので「ボクの結婚記念日が3月6日だから、360円にしました。」など

ということはできません。一般的には、申立人と会社が、自分に有利な株価の算定方式を主張し

合い、その算定方式をもとに株価を評価した鑑定書を裁判所に提出します。

そして、裁判所はどの算定方式にするか算定方式に当てはめる前提事実としてどのようなも

のを選択するか等を決めて、最後に、微調整して判断するのです。

裁判所の役割

(51)

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価格決定申立て

51

 鑑定とは?

専門的な知識を持つ者が、科学的、統計学的、感覚的な分析に基づ

いて行う、評価・判断

 しかし・・・

DNA鑑定

袴田事件、足利事件

美術品鑑定 曜変天目茶碗

(52)

価格決定申立て

「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」が示す評価方式

① 収益方式

評価対象会社に期待される利益等を基にして評価する方式である。

概念的には、将来に亘る収益の総額の現在価値を示していると言える。

② 純資産方式

評価対象会社の保有する純資産価額を基にして評価する方式である。

概念的には、評価時点で、事業を新たに開始する際に同じ資産を取得す

るとした場合、又は、会社の資産全部を売却するとした場合に獲得できる

金額を示していると言える。

③ 比準方式

評価対象会社と類似する上場会社(類似会社又は類似業種)の株式の

市場価額や、評価対象会社の株式の過去の取引における価額を参考と

(53)

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価格決定申立て

「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」が示す評価方式

④ 国税庁方式

ア)相続税法上の株価

財産評価基本通達に基づく評価(類似業種比準価額、純資産価額、併用方式)

イ)所得税法及び法人税法上の株価

ⅰ)売買実例のある場合

最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額

ⅱ)公開途上にある株式の場合

金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の

価格等を参酌して通常取引されると認められる価額

ⅲ)売買実例のないもので類似会社の株式の価額のある場合

類似会社の株式の価額に比準して推定した価額

ⅳ)上記ⅰからⅲまでに該当しない場合

株式の発行法人の 1 株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額

ⅴ)上記の方法で評価が困難な場合

原則として一定の条件の下に、財産評価基本通達 178 から189-7 までの「取引相場のない株式の評

価」 によって評価することが認められている。

53

(54)

価格決定申立て

会社法以前の株価鑑定事例(中小企業庁ガイドラインより)

① 譲渡制限株式の売買価格決定申立事件

番号

決定日

対象

株式

評価方式

備考

純資産

収益

還元

配当

還元

その他

1

京都地決

昭62.5.18

11%

40%

(簿価)

20%

20%

20%

(類似業種)

指定買受人は、対象株式の取得

により、22.1%の株式を保有。

2

青森地決

昭62.6.3

16%

100%

(時価)

3

福岡高決

昭63.1.21

3.3%

配当還元価額を類似会社の配当

性向との比較により修正。

4

東京高決

昭63.12.12

30%

70%

(時価)

30%

▲30%

(市場性

欠如)

資産保有目的の色彩の

濃い会社。

5

大阪高決

平1.3.28

0.06%

~0.26%

100%

支配的持株数を有する

大株主が存在しない。

(55)

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価格決定申立て

併用方式(折衷法)の考え方

折衷割合のロジックは?

日本公認会計士協会経営研究調査会研究報告第32号

「企業価値評価ガイドライン」52頁

折衷割合を決定する定まった方法は確立されていない、評価人の判

断に依存することになる。折衷割合は、企業価値等の形成要因との関

係で検討することになる。

55

(56)

価格決定申立て

会社法以前の株価鑑定事例(中小企業庁ガイドラインより)

① 譲渡制限株式の売買価格決定申立事件

番号

決定日

対象

株式

評価方式

備考

純資産

収益

還元

配当

還元

その他

7

東京高決

平2.6.15

0.16%

30%

(時価)

70%

代表者家族の持株比率

は約20%。

8

千葉地決

平3.9.26

10%

50%

(時価)

50%

役員報酬を配当金の変

形とみなしたうえで、配

当還元方式により算定。

9

札幌地決

平16.4.12

6.56%

25%

(時価)

50%

25%

10

東京地決

平20.3.14

4%

100%

(DCF)

営業譲渡の反対株主に

よる株式買取請求

11

東京高決

40%

100%

ベンチャー企業

(57)

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価格決定申立て

会社法以前の株価鑑定事例(中小企業庁ガイドラインより)

② 損害賠償請求事件(株主代表訴訟を含む。)

判決日

発行又

は取得

株式

評価方式

備考

純資産

収益

還元

配当

還元

その他

1

東京地判

平4.9.1

62.5%

(※)

100%

(時価)

▲70%

(市場性

欠如)

不公正な価額による新株発行で損

害を被った既存株主が取締役を被

告として提起した損害賠償請求事件

2

大阪高判

平11.6.17

20%

(※)

33%

(時価)

66%

(類似業種)

違法な新株発行によって損害を被っ

た既存株主が取締役を被告として

提起した損害賠償請求事件

3

大阪地判

平15.3.5

3%

66%

(時価)

33%

違法な自己株式の取得により会社

に生じた損害に関する代表訴訟

57

(58)

価格決定申立て

会社法以前の株価鑑定事例(中小企業庁ガイドラインより)

③ 不公正な価額による新株発行に係る差止仮処分申立事件

決定日

発行

株式

評価方式

備考

純資産

収益

還元

配当

還元

その他

1

東京地決

平6.3.28

16.6%

(※)

100%

(ゴードン

モデル)

不公正な価額による

新株発行であること

を理由とする差止仮

処分申立事件

※割合は、新株発行後の発行済株式総数に対する発行株式数の割合

(59)

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カネボウ事件

59

裁判所の考える株価

カネボウの営業譲渡に反対した株主の株式買取請求について買取価格決定

 DCF法による鑑定評価に基づいた決定が注目される。

非上場株式の評価が問題となった下級審裁判例には、古くは国税庁の『相続税財産評価に関す

る基本通達』の影響を受けた者が多くみられたが、学説による批判を受け、近年は純資産方式、類

似業種比準方式、配当還元方式、収益還元方式等の全部または一部を独自の算式で併用するも

のが中心となっていた。

このような併用方式に理解を示す論者も存在するが、複数の方式を寄せ集めても信頼できる数値

が算出できる者ではないとして、継続企業の株式の価値は、理論的にDCF方式によるべきであると

する見解が有力となってきているように思われる。

継続企業における少数株主の保有株式の価値の算定について、併用方式を採らずにDCF法の

みによるべきであるとする本決定は、このような学説の傾向に合致するものであり、妥当であるとい

えよう。

旬刊商事法務No.1837「カネボウ株式買取価格決定申立事件の検討[上]

後藤元学習院大学准教授

(60)
(61)
(62)

レックスHD事件

公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」

裁判所の考える市場株価方式

期待権の評価額

強制的取得により失われる今後の株価の上昇に対する期待を評価した価額

を考慮するのが相当である。

(63)

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レックスHD事件

■ 高裁判決と論拠

(6ヶ月間の市場株価単純平均を用いる論拠)

①公開買付公表後の市場株価を株式価値算定の基礎とすることは不合理

②業績下方修正後の過剰に下落した市場株価は、

他の期間を通じて市場株価を平均化しその影響を排除すれば足りる

③平成18年8月21日以前の市場株価は当時のターゲット会社の

企業価値を繁栄しており、基礎とできる。

本件公開買付けの公表日からさかのぼって6ヶ月間の市場株価の単純平均を旧

レックス株式の取得日における客観的価値とした。(東京高裁H20.9.12)

63

(64)

レックスHD事件

(プレミアムを20%とした論拠)

近接した時期の例をみてみると、公開買付けの公表前の3ヶ月又は6ヶ月の間

の市場株価の単純平均値に約16.7%~27.4%のプレミアムを加算した価格をもっ

て買付価格としていること。

平成12年~17年までの間に日本企業を対象とした公開買付けの事例のうち市

場価格を上回る買付価格を設定した85例についてプレミアムの平均値を取ると、

公開買付公表日直前の株価の終値の27.05%に達することが認められること。

 高裁判決と論拠

客観的価値に20%を加算した額を取得価格とすべき(東京高裁H20.9.12)

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レックスHD事件

公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」

裁判所の考える市場株価方式

期待権の評価額

強制的取得により失われる今後の株価の上昇に対する期待を評価した価額

を考慮するのが相当である。

しかしながら、期待権を評価するロジックは存在しない。

評価ロジックから

整理すると

公正価格=DCF法等による評価額=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」

②「期待権の評価額」= DCF法等による評価額- ①「客観的価値」

65

(66)

レックスHD事件

レックスHD裁判の背景とされた事項

 独立委員会の不設置

 MBO直前の業績下方修正

 キャッシュ・アウト価格が公開買付価格と異なる可能性がある旨の開示

 株式価値算定書を裁判所に提出しなかった

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その後のMBOを巡る裁判例

 2009年 サンスター高裁

 2010年 サイバード高裁

公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」20%

67

(68)

MBO件数推移

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

日本のMBO市場(非公開化型)

件数

(69)

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その後のMBOを巡る裁判例

 2012年 カルチュア・コンビニエンス・クラブ

 2013年 コージツ

DCF法で判断

69

(70)

ジュピターテレコム事件

非上場化公表後、日経平均が上がってしまったケース

ピンクが会社の株価、青が日経平均

株価チャート 95 100 105 110 115 120 125 130 2013 /4/1 2013 /4/8 2013/ 4/15 2013/ 4/22 2013/ 4/29 2013 /5/6 2013/ 5/13 2013/ 5/20 2013/ 5/27 2013 /6/3 2013/ 6/10 2013/ 6/17 2013/ 6/24 2013 /7/1 2013 /7/8 2013/ 7/15 2013/ 7/22 (% )

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ジュピターテレコム事件

 事案

ジュピターテレコムがJASDAQスタンダードに上場していたところ、

住友商事及びKDDIがJCOM株式の公開買付けを実施した後、全部取得

条項付種類株式の取得価格について、当該取得に反対した株主が会社

法172条1項1号に基づいて裁判所に取得価格の決定の申立てを行った。

71

(72)

ジュピターテレコム事件

 地裁、高裁決定

公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」

①「客観的価値」=

9か月以上も前のものであり、その間に本件株式にも影響

を与えるものと推認されるような事情により市場全体の株

価の動向を示す指標が大きく変動(ジャスダック指数は

74.9%、日経平均株価は60.7%上昇)したのであるから、

本件においては、市場株価そのものをもって本件株式の客

観的価値と認めることは好ましいといえず、同日から本件

取得日までの市場全体の株価の動向を踏まえた補正を行う

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ジュピターテレコム事件

 補正の方法

t

mt

it

R

u

R

=

α

+

β

+

Ri

企業iの株価変動率

Rm

日経平均株価、TOPIXなどの市場を代表する株価指数の変動率

α

定数項

β

回帰係数

U

確率的に変動する誤差項

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ジュピターテレコム事件

 地裁、高裁決定

公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」

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ジュピターテレコム事件

最高裁判所

取引が公正であり、当該取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認

める特段の事情かない場合には、公開買付価格と同額の価格決定をすることが相

当であることを判示

・原則として,公正な手続を通じて形成された取引条件である買付け等の価格を

尊重し,取引の基礎とした事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段

の事情のない限り,当該買付け等の価格をもって取得価格とすべきものであると

解するのが相当

・公正な手続等を通じて買付け等の価格が定められたとは認められない場合には、

裁判所が取得価格を決定することになるが、その算定方法は市場株価分析 によら

ざるを得ないこともあろう。ただし、裁判所が裁量権の行使に当たり、関係当事

者等の経済取引的な判断を尊重してこれに委ねるべきか否かを判断するに当たっ

ては、この方法が株式価格に関する多元的な要因を広く捉えるものとはいい難い

という点も考慮する必要がある。

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セイコーフレッシュフーズ事件

新聞の見出し

「将来の収益性で計算なら…非上場株の減額認めず 最高裁、株主訴え認める M

&A、算定法統一へ」

最高裁決定

・吸収合併等に反対する株主に公正な価格での株式買取請求権が付与された趣旨

が、(中略)反対する株主に会社からの退出の機会を与えるとともに、退出を選

択した株主には企業価値を適切に分配するもの

・非流動性ディスカウントは、非上場会社の株式には市場性がなく、上場株式に

比べて流動性が低いことを理由として減価をするものであるところ、収益還元法

は、当該会社において将来期待される純利益を一定の資本還元率で還元すること

により株式の現在の価格を算定するものであって、同評価手法には、類似会社比

準法等とは異なり、市場における取引価格との比較という要素は含まれていない。

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まとめ

77

価格決定申立事件から学ぶこと

 手続の公正性(ベスト・プラクティスの理解)

 最後はインプットの合理性

・キャッシュフロー

・割引率

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