ころがり2円筒接触における油膜負荷能力
著者 豊島 俊雄, 川淵 泰郎, 熊谷 栄一郎
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 7
号 1.2
ページ 38‑44
発行年 1959‑01
URL http://hdl.handle.net/10098/5288
ころがり 2 円筒接触における油膜負荷能力
*
帯 * ーを持*豊 島 敏 雄 ・ 河 淵 泰 郎 ・ 熊 谷 栄 一 郎
Load Capacity of Oil Film between Two Rollers
Toshio TESHIMA
,
Yasuo K A W ABUCHI and Eiichiro KUMAGAIHaving been discontented with the Gatcombe's mathematical aproximation on the load capacity of oi1 film at the contact surface of two rollers, Hersey obtained an exact solution by the graphical method of the load capacity of the above
,
assuming for brevity of ca1culation, the viscocity of oi1 vs. pressure relation to be expressed a parabolic equation. However,
the variation of the viscociy of oi1 is mostly expressed an exponential function of pr白sure.Hence,
we obtained an exact solution of load capacity of oil fi1m after Hersey. The theoretical values were then ccmpared with the experimental ones, which were found to be considerably less than the theoretical values. In order to improve th己loadcapacity of the oi1 fi1m it was found necessary to keep the two shafts of the roIlers in perfect parallelism and take the rigidity of supporting the rollers as great as possible.緒 号日
ころがり 2円筒接触における油膜負荷能力は歯車の潤滑などを対称として古くから研究されて いる。 1938年W.Peppler (1)は油の粘度を一定として解析しており, 1945年E.K. Gatcombe (引
は油の粘度を圧力の指数関数として理論解を得た。その後 M.D. Hersey ¥31らは Gatcombeの 理論解における数学的近似計算に満足せず,粘度を圧力の2次式として図式的に厳密解を得て1950 年に発表した。しかし油の粘度変化は圧力の指数関数として表わす場合が多く,実際の資料も多い
ようであるoそこで我々は粘度を指数関数と仮定した場合の油膜負荷能力の図式解を求め,さらに 簡単な実験装置を作久実験的に油膜負荷能力を測定した結果と比較検討したo
2 .
基 礎 式 お よ び 図 式 解 ころがり 2円筒接触における油膜圧力の方程式は1 dp 一 一 U
T z
戸d ;
= 11 2rhoho
(K1 cos4S ‑ cos:lS) …....・H ・......・H ・‑…(1 ) 上式においてμは油の粘性係数, pは抽膜圧力, hoは油膜最小厚さI Klは積分常数であり,x =下/云亙;;‑tan S 1 1 1
一・「一一一 士±咽晶一・ ‑一一一ーー・ 圃司・‑ ‑一一一一‑
r rl ra ' U = U1十U 2
特 福 井 大 学 講 師 柑学生,現在神戸工業K K 柑苦学生,現在東芝K K
ころがり 2円筒接触における油膜負荷能力
であるo (第1図参照)。油の粘性係数μはゲーす圧pに対して次の式で変化するものとするo
μ
=
μo elllp・ … …. . . . . ・
H・ . . . . ・
H・ ‑ … ・ ・
(2) ここで μ。は大気圧における油の粘性係数, αは圧力指数で油 の種類によって決る常数であるo(2) 式を (1)式に代入して積分 し, Sommerfeld's condition (x=O p=O, x=∞ p=O)の もとに積分常数を求めると39
( .
,
4μ
。
UX(2rh日)1Ii
p = ‑ z i n L1 ー αhnll (が +\2;h~J~ 1I
j …・
(3) 『χ.... >‑~デ;;
I....I....L
T =
一三竺
rV2rho H = a
自 立 ‑ v 証瓦
hOll
とおくと, (3)式は
p = ‑ 1 l n 11‑4H‑3‑7 α l.... ~AA (l+T:!):!)
. (4)
第 1図
. (5)
. (6)
となるo これは油の粘度変化を (2)式のごとく仮定した場合の油膜圧力分布を示す式であるO さら にこれより油膜圧力の最大になる位置を求めると, (6)式を徴分して dp/dT= 0とおいて T = 1/Y3を得るO これを (6)式に代入して油膜最大圧力 P四を求めると
1 . (̲ 3y可 y
pm
ーす
1nL
1 ‑ -4 二~ H J… . . . . . . . . . ・
H・ . . . . . . . . . … ・
(7) 上式よりわかるように最大油膜圧力P岬は H= 4/3‑ v 3 . .
O. 7698で無限大になるoHの無限大 換言すると h=
0 ((5)式参照)で無限大になるのではなく, 2円筒間にある大きさの隙聞をもっ て無限大の負荷能力を有することになるo次に (6) 式をXで積分して油膜負荷能力すなわち全圧力 F苅を求めると,
一 J α
( 0̲ ~
1n しr 1 ‑
4H (l+Tr ,.,TTT'~'\~
lI誼)i
J=f‑771n
〔
1 ‑ 4 H J w〕
dT(‑V布 ) F帽=笥主(J
/H)ただし J 4 L ( 1J =
( " ∞ ー
In「
1 ‑ 4HIH 十T温)品l '
JdTー (8)
ー (9)
従って (9)式を積分すれば (8)式より油膜負荷能力は計算できるD しかし (9)式の積分は直接数式 的には困難であり,図式積分する必要があるo いま
f四 ( . . 4HT i J
=
l L ( 1, ‑
1n1 1
一一一一一一十TlI)lI ) IdT=
r∞ー r-[~H''.f .1-~[~HT 12‑1{4H!. .. ,13ー…… i
dT : l ( 1 + ? ) 2 j 2 1 ( 1十T:!)温J 3 l (1 + Tll) II J )従って
H=O
のときはf国 4T
J/H
= 4(1+1γ ,
一一一一一‑dT=
2HがO以外の値のときは被積分関数‑ln(1‑4HTj(1+T:.I)2)の曲線をTを横軸として作図し,
横軸と曲線の 聞の面積をプ ラニメータで
fS
15 10
(}lol
()D5
10 I0 0・25 7
0 H= 0・125
第 2 図
検事由 T
縦 軸 ーム[1‑
( 1 :
刊す}10
10 0'625 10 057
口町 0.375
10
岬 0'73
R U 0・7 0・66
五 一 一 一 ~ 0'768'7
←ープ。 Q.刊5
ゐ 0.76 0'75
るO 図式積分した結果は第1表のごとくであるo
第 1 表
3 .
実 験 装 置 お よ び 方 法測定して
J
の 値を求める白 被積分関数を 図示すると第 2図のごとく であるo この 図はまた (6) 式からわかるように油膜圧 力分布の形を 示すものでも あるoHが大 きくなるほど 油膜圧力は全 体的に大きく なるがp 圧力 分布の形も非 常にとがりピ ークが高くな
ころがり 2円筒聞に荷重を支えるに充分の油膜負荷能力があるときは2円筒は互いに金属接触 を起きず 2円簡は油膜
で電気的に絶縁される白 本実験では荷重およびロ ーラの回転速度と油膜電 気抵抗の関係より油膜負 荷能力を考察した凸
第3図は試験機本体
を示す。図において①は 第 3 図
ころがり2円筒接触における油膜負荷能力 41
試験用ローラであり,それぞれ玉軸受6200絡により支えられ,プーソ②により互いに逆方向に同じ 速度で回転される。たのローラはピン③を111111として動かれるので,スプリング④をネジ⑤で押すこ とにより 2つのローラ聞に接触圧)Jを負荷できる。@はベークライ ト板で右側のローラを周囲と 電気的に絶縁するためのものであるo
第 5図
4 .
第 4 区│
第4図は装置の側面 写真であるo制lは①のビ ニーノレ管より 2つのロー ラの接触点に重力で注ぐ。
2つのローラ聞の電気抵 抗はベークライト板②に 取付けた黒鉛プラνをロ ーラの軸端に取付けた円 板に押当てて電気回路を 作り, ミリアンメータに より電流を測定して算出 した。このとき黒鉛プラ
νと円阪の接触抵抗に対 する円収回転速度の影響 が問題になるo これを検 定するため③の黒鉛プラ
νと②に取付けた同一円収に接触しているブラνの 聞の電気抵抗を実験寸l結えず別のミリアンメータに よって測定したo後述の実験結果はプラνの接触抵 抗を業百│いた純粋のローラ聞の油膜電気抵抗を示す
ものであるo
第5図はローラのす法を示すロローラ表面は研磨 仕上され,組さは0.5μ程度であるo 使用した油は 60番スピンドノレ油, 90番タービン油, 120番マνン 油および20番モビーノレ油であるo
実 験 結 果 お よ び 考 察
第6図, 第7図,第8図および第9図はそれぞれ潤滑剤として60番スピンドノレ油 90番タービ ン油, 120番マνン油および20番モピーノレ油を使用した場合の油膜負荷能力を示す。図rtの油膜電 気抵抗は2つのローラ聞に発生する圧力油映の厚さに対応するものである口すなわち油膜電気抵抗
∞はローラ表面粗さに対して充分厚く圧力油膜が発生し,それに対応した荷重では2つのローラは 金属接触を起さないこと,また油膜電気抵抗が大きくなるほど金属接触の機会が多く,換言すると 圧力油膜は薄くなり破断して,それに対応した荷重に耐え得ないことを示すものであるo
図からわかるように回転速度が高くなるほど,また60番スピンドノレ油から90番タービン油,
120番マνン油, 20番モピーノレ油と粘度が高くなるほと祉1)度負荷能力は大きくなっているo これら の事実は(8)式をまつまでもなく当然、予怨されることであるo ただ第8図,第9図において油膜電 気抵抗∞の線が横軸に平行で,油膜負荷能力が回転速度の変化によって変化しないこ とを示してい るD 本実験装置ではローラの支持が特にスプソング側において強固でないので振動を起し易く, こ
15
述 受用油 60‑i語スピンド・I¥'~由
腰 ID
員
再
角E5
力
00
ハ 凶d
u H
1000 2000 '3000 4000 50CC‑‑60CC 7000 ロ ー ラ 自 転 孟 度 rpm
第 6 図
20
力
7
﹁ ︑
J V A H M
油 膜 負 荷 佳
5 。。
1000 2000 3000 4000 5000 ロ ー ラ 回 転 埠 理 rpm
第 7 図
6000
2S
︑m M 5 0 5 i f
恥阻liS畦
E 1 L 吋 ヒ じ
﹂
J ' o d
︑L m
巾
E F 4
ム 月
7 b n
。
1000 2000 3000 4000 5000 6000 ‑‑‑W;OO ロ ー ラ 団 事 長 埠 度 rpm第 8図
7000
の振動は回転速度が高くなるほど 大きくなる傾向があった。この振 動による油膜の破断され易さが回 転速度の増加による負荷能力を減 殺するために上記のごとき実験結 果となったものであろうo?由の粘 度が高い場合には油膜に緩衝作用 があるためか,振動は回転速度が 高い場合にもあまり大きくならず 静かに運転された。このため第8 図,第9図においては油膜電気抵 抗∞の場合の負荷能力も回転速度 とともに増加しているo しかし一 般的にいってある程度の金属接触 を許せば回転速度が大きくなると 負荷能力もかなり大きくなるが,
完全油膜潤滑状態では回転速度が 大きくなっても負荷能力はあまり 大きくならないものと思われるo
第10図はタ←ピン油に対して (8)式より計算した油膜負荷能力 であり,第7図の実験結果と対応 する理論曲線を示している凸これ らを比較すると負荷能力に非常に 大きい差があることがわかるo ロ ーラ表面粗さは約0.5μであるこ とから,油膜厚さが1μ以上であ れば金属接触を起さず油膜潤滑状 態にある筈であり,従って第10図 中の油膜厚さ3.25μは当然表面粗 さに対して充分大きい値である。
この油膜厚さ3.25μの曲線と第8 図油膜電気抵抗∞の線と比較する
と,回転速度が低いところでは比 較的近い値を示しているが,回転 速度が大きくなるにしたがって非 常に大きい負荷能力の差が見られ るo また理論的には回転速度が大 きくなるほど負荷能力は増加する が,さらにその増加率も大きくな るo実験結果では回転速度の増加 とともに負荷能力の増加率が減少
r﹁ J V
ハNV
内 ノ 色 町 /
﹄
通 曙 負
荷 /5 月E 力10
C﹁︾
Ft44J
UA
F h d n u
?
﹄ 内 /
‑
油 膜 貫
山川
ω 5 荷 能 力
hd
ころがり 2円筒接触における油膜負荷能力 43
30
Qo b n
nu nu nu
司J
5 o
nd
つ '
﹄ 油 膿 負
。 。 荷
な実験結果と理論曲線との差については次のような理由が 匂 考えられるD 理論計算ではローラの軸方向の油の流れすな 5 わち sideleakageは考慮していないが,実際には当然こ
れが予想され負荷能力はそれだけ減少するo ローラの巾を 広くすると負荷能力はそれに比例した増加をする筈である が,実験結果は殆んど変らなかったo ローラ軸を互いに平 行するのが困難で,ローラの edgeが相手のローラ表面に
O
30
F︑
J n H U
2っι
油 膜 員 荷
15
能
5 U
•
/000 2000 3000 4000 5000 6000 口 「 ラ 団 再 認 度 rpm
第 9 図
301
2 3 x 10‑6 4‑ 3由粕度~S/cm2
第 11 図
初 可
O
ローラ回転速度 5000rpm
15 能 2000 3000 4000 5000
口 ー ラ 回 転 重 度 rpm 6000
力10
O 2 3 x /0‑6 4 油 結 度 匂s/cm2
第 四 図 1000
第 四 図
しているo これは両者の大きく異なる点である。このよ5
当り易いことが原因していると思われるo このことはローラを研磨仕上後O番のヂシドベーパで磨 き,ローラの端面がある程度だれた方が大きい負荷能力が得られることから肯定されるであろうo
これは歯車などのならし運転の場合と似た現象である。理論計算では温度は一定として計算してい るが,実際には摩擦熱のため回転速度が増加するにつれて温度は上昇し, 5000rpnではローラ表面 は約500Cの温度上昇が起っている。従って高速では拍の粘度は低下し,理論計算値は低下するo 第9図,第8図,第7図,第6図の順に回転速度に対する負荷能力の増加率の減少の度が大きい。
これは上記のことと関連しており,抽の粘度が高いほど温度上昇による粘度の減少率が大きいため である。また実験中は前述のごとく小さい振動を生じ,ローラ聞の油膜が安定でなく破断され易い ことも,負荷能力の増加率が低くなる理由の一つであるo
第11図は粘度と負荷能力の関係を示す実験結果であり,第12図はこれに対応する理論曲線であ る。この場合にも実験結果は理論計算値より負荷能力が非常に小さくなっているo第11図において 油膜電気抵抗∞の曲線は完全潤滑状態の負荷能力を示すもので,座標原点に向5曲線であり,その 他はある程度金属接触が起っている場合の負荷能力を示し,座標原点に向う曲糠ではない。粘度。
における負荷能力はその場合の金属接触による負荷能力であれその値を差引いたものがそれぞれ その場合の圧力油膜による負荷能力と考えられる。
5 .
結以上のような理論式,計算結果および実験結果を得たが,結論として次のようなことがいえる と思ラo
( 1 ) 理論式よりは油膜のある厚さにおいて負荷能力が無限大になること。従って今後の研 究として油膜圧力によるローラの変形を考慮した理論式を導く必要があることo
(2) 実験結果は理論計算値よりかなり負荷能力が小さいことo油膜負荷能力を増大さすた めには両ローラ聞の平行度およびローラ支持の剛性を高める必要があることo
附記 ;本論文は学生の卒業論文の一部をとりまとめたものである。
文 献
(1) Wi1helm Peppler, VDI.Forschungsheft 391, Bd. 9 ( 2) E. K. Gatcombe, Trans. of the A. S. M. E.. April 1945
( 3) M. D. Hersey & D. B. Lowdenslager, Trans. of the A. S. M. E. Oct. 1950 (受理年月日 昭和33年12月10日〕