様式8の1の2 別紙2
論文審査の結果の要旨
専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 塩谷 正樹
本論文は「スリットを有する天井放射パネルユニットの制御法及び汎用熱計算法に関する研 究」と題し,天井放射空調システムに用いる天井放射パネルの制御法やパネル熱量と室内環境に 関する汎用的な計算法について提案したものである.
天井放射冷房は,井水を利用できる点などが注目されて,種々の放射パネルが開発され利用 され始めているものの,対流,放射放熱量を分離して推定するための熱性能データが不十分なこ とが多く,また放射空調を行う室に関する汎用的な熱計算法もない.そのため,天井放射パネル の放射効果を積極的に考慮する空調設計法や室内環境の制御法も確立されていないままになって いた.
本研究は,パネル上面に発生した冷気を居住空間側に誘導するスリットをもつ新しいタイプ のパネルユニットについて,熱性能式を誘導し,式の利用に必要な各種物性値を実験により明ら かにして,対流,放射放熱量の推定に必要となる熱性能値を提示し,同時に,放射パネルのある 室内の汎用的な熱計算法も提案している.さらに,放射パネルの放射効果を考慮する室内環境の 制御法の提案とその有効性の検証も行っている.
本研究で得られた成果をまとめると次のようになる.
1) 研究対象の天井放射パネルユニットを単純な管に置換し,放熱性能を熱貫流率のほか,等 価対流熱伝達率,等価放射熱伝達率で表現する考えを示し,パネル部の熱伝導特性をフィ ン効率で表したうえで,パネル放熱性能式を誘導した.さらに,熱性能実験から,パネル 表面の対流,放射熱伝達率,スリットからの対流熱移動率などの特性値を明らかにし,本 パネルによる放射空調を行う室内の熱計算に利用可能なパネルの放熱性能値を提示した.
2) 従来からある対流空調用の汎用的な室内熱計算法に対し,放射パネルの効果を重ね合わせ る考えを導入し,さらに形態係数の簡易化を行うことにより,放射パネルの熱計算を組み 込み可能であることを示した.これにより,任意の室形状と任意のパネルタイプに対して,
パネル放熱量と室内放射環境の計算が可能となる.
3) 提案した計算法によるパネル熱量と室内環境の計算値に関して,実測値と比較検証した結 果,計算値は実測値と概ね一致し,提案した計算法とパネルの熱性能値が妥当であること が確認された.
4) 天井放射パネルの放射効果を考慮する室内環境制御法として,居住空間の平均放射温度を 制御対象とする方法を提案し,実測検証の結果,良好な温熱環境と安定した制御を実現で きることを確認した.さらに,より温熱感に近い指標である作用温度を制御対象とする場 合について,提案した汎用熱計算法を利用する数値解析を行い,パネルへの送水温度と送
水量の操作を組み合わせることが重要であることを示した.
以上のように,本研究は,スリットを有する天井放射パネルについて対流,放射放熱性能を明 らかにするとともに,放射空調を行う室内の汎用熱計算法を提案し,放射パネルの放射効果を考 慮する室内環境制御法の有効性を示したものであり,その学術的意義は高く,実用性にも富むも のと評価される.
本論文については,2014年2月5日に本学アカデミアホールにおいて,審査委員全員および学内 外のこの分野の研究者,実務者等の出席のもとに公聴会が開催され,研究内容に関する発表と質 疑応答が行われた.公聴会の後に審査委員による学位審査委員会が開催され本論文の内容を詳細 に検討した.その結果,本研究により,天井放射パネルの性能と計算法および制御法に関する新 しい知見が得られたことが認められ,本論文は工学的に価値が高く,研究内容の学術レベル,研 究としての独創性・実用性において優れたものと判断した.
よって,本論文は博士(工学)の学位論文に値するものと認める.