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(1)論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2022

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(1)論文審査の結果の要旨. 報告番号. 博(水・環)甲. 学位審査委員. 第14号. 氏. 名. 緒 方. 主査. 長. 富. 副査. 橘. 副査. 小 田. 副査. 原. 英 博. 潔 勝. 康. 達 也 研. 治. 論文審査の結果の要旨 緒方英博氏は2012年4月に長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科博士後期課程に 社会人学生として入学し、現在に至っている。同氏は、水産・環境科学総合研究科に入 学以降、環境海洋資源学を専攻して所定の単位を修得するとともに、魚肉軟化現象の機 構解明に関する研究に従事し、その成果を2015年12月に学位論文「魚肉軟化に関与する 中性システインプロテアーゼに関する研究」として完成させ、参考論文として印刷公表 論文2編(うち査読付き論文2編)、学位の基礎となる論文3編(うち査読付き論文3編)、 その他の論文1編(うち査読付き1編)を付して、博士(水産学)の学位を申請した。長崎 大学大学院水産・環境科学総合研究科教授会は、2015年12月16日開催の定例教授会にお いて論文内容等を検討し、本論文を受理しても差し支えないものと認め、上記の審査委 員を選定した。委員は主査を中心に論文内容について慎重に審議し、公開論文発表会を 実施するとともに最終試験を行い、論文審査および最終試験の結果を2016年2月17日開 催の水産・環境科学総合研究科教授会に報告した。 本研究は、魚肉軟化現象を解明する一環として、死後早期に筋肉タンパク質分解に関 与すると考えられる中性域で働く内在性システインプロテアーゼに着目し、酵素の精製 および性状解析に取り組んだものである。 第1章では、魚肉軟化の主な原因である内在性プロテアーゼによる筋肉タンパク質分 解等のこれまでの知見を紹介し、次いで本研究の目的と意義、並びに本研究の概要につ いて述べている。 第 2 章では、刺身として食する機会が多く、日本でポピュラーな水産養殖魚であるマ ダイを用いて、生理的条件下での保存中の筋肉タンパク質分解に関する検討を行った。 すなわち、生きたマダイのキュヴィエ氏管よりプロテアーゼインヒビターを注入し、種 々の内在性プロテアーゼ活性を阻害させ、筋原線維タンパク質の分解に対する内在性プ ロテアーゼの影響を調べた。その結果、保存期間中、プロテアーゼ活性が保持されてい たことを確認するとともに、ミオシン重鎖、β-コネクチン、トロポニン I、トロポミオ シンのような大部分の筋原線維タンパク質の分解にはセリンプロテアーゼおよびメタロ プロテアーゼが関与すること、α-アクチニンの分解についてはシステインプロテアーゼ が主に関与することを確認した。 氷蔵中のマダイ筋肉軟化の初発はα-アクチニンの水.

(2) 解であることから、内在性システインプロテアーゼに焦点を絞った。 第 3 章では、マダイ筋肉中のシステインプロテアーゼの検索を行った。すなわち、マ ダイ筋肉粗抽出液の Z-Phe-Arg-MCA(カテプシン B、L および S の基質)および Z-Arg-Arg-MCA(カテプシン B の基質)水解活性に及ぼす E-64(システインプロテアー ゼインヒビター)並びに CA-074(カテプシン B に特異的なインヒビター)の影響を調 べた。その結果、Z-Phe-Arg-MCA 水解活性は E-64 により 68.7%、CA-074 により 60.5% が阻害され、Z-Arg-Arg-MCA 水解活性は E-64 により 81.8%、CA-074 により 74.6%が阻 害されたことから、マダイ筋肉中のシステインプロテアーゼは主にカテプシン B である ことが判明した。また、本酵素の最適 pH および最適温度は、Z-Phe-Arg-MCA に対して 5.5 および 50ºC であり、Z-Arg-Arg-MCA に対して 6.0 および 40ºC であったが、中性域お よび低温度帯でも酵素活性を保持していた。なお、マダイ筋肉からのカテプシン B の精 製を試みたものの単離精製には至らなかった。そこで赤身魚で筋肉 pH が低く鮮度低下 の早いマサバに注目するとともに、白血球由来カテプシン群の魚肉軟化への関与を考慮 して、脾臓より中性域で働くシステインプロテアーゼの精製および性状解析を行った。 第 4 章では、マサバ脾臓より中性域で働くシステインプロテアーゼを精製し、その性 状解析を行った。精製酵素の SDS-PAGE(還元条件下)では、35 kDa および 27 kDa のタ ンパク質バンドが得られ、各々の N 末端アミノ酸配列分析から、他生物種由来カテプシ ン B の一本鎖構造の N 末端、および二本鎖構造の重鎖の N 末端に相当する配列と高い 相同性が認められた。本酵素は基質特異性並びに各種プロテアーゼインヒビターの影響 より、既知のカテプシン B と類似の性状を示した。一方で、その最適 pH は Z-Phe-Arg-MCA および Z-Arg-Arg-MCA に対してそれぞれ 7.0 および 7.7 と中性域であった。したがって 本酵素は、酸性域で働く既知のカテプシン B とは異なる、中性域で働く新しいタイプの カテプシン B 様酵素であることが判明した。加えて、本酵素は中性域において比較的短 時間でミオシン重鎖およびアクチンを水解することがわかった。 以上の結果より、脾臓中の白血球に存在する本酵素が、血液を介して筋肉へ移行し、 魚肉軟化現象に関与する可能性を示唆した。 第 5 章では、上記結果を総括するとともに、総合的な考察を行った。 以上のように、本論文では魚類に中性域で働くカテプシン B 様酵素が存在し、死後早 期の魚肉軟化に深く関与することを明らかにした。学位審査委員会は、これらの知見が 水圏生化学の分野において極めて有益な成果であるとともに、水産科学の分野の進歩発 展に貢献するところが大であると評価し、博士(水産学)の学位に値するものとして合格 と判定した。.

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