虹
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内閣法第九条に艦く内閣総理大臣の臨時代理については︑今回が始めてでなく︑若干の先例がある︒池田内閣総理
大臣が前回に欧州の訪問旅行に赴いた時にも︑この規定に基き︑国務大臣川島正次郎氏が臨時にその職務を代行して
いる︒更に過去に遡ると︑昭和二六年九月︑吉田内閣総理大臣が対日識和会談に参列するために︑米国に出張不在中
に︑国務大臣益谷秀次氏が臨時代理に指定されている︒並も劇的な例は岸信介氏の場合である︒昭卸一二年一二月に
石橋内閣が成立した後︑石柵内閣総理大臣が病床に倒れ伏し︑その腐気引きこもり中︑国務大臣岸偏介氏が臨時代理
に指定され︑再起を図った石橋氏の回襖がはかばかしくなく︑遂に石橋氏の辞任︑第一次岸内閣成立に至った継緯は
我々の記憶になお新なところである︒
内閣法第九条に韮く内閣総理大臣の臨時代理の問題について従来余り論繊されていない︒しかし︑今後︑この問題
をめぐっての論議が瀕繁にかつ激しく行われる可能性があると考えられる︒
それは︑第一に︑内閣総理大臣の職務の代行が瀕繁に行われる可能性が生ずるからである︒敬務の代行は︑通常に
おいて︑二つの場合に生ずる︒一方において︑石柵氏の場合の如く︑内閣総理大臣の蛎気の場合が考えられる︒妓近
の医薬の進歩は継服の畑進︑平均寿命の延没に著しく寄与していることは明白であるとしても︑執行府の首長として
の劇務はそれだけ疾病への抵抗力を減少させる︒他方において︑交通機関の群しい発述に伴って︑平和促進のための
国際間の遁要問題の解決または友好関係の強化等につき︑出先の大公使と外務大臣の接街でなく︑政椛担当者の直接
的会談が行われるのが英・米・ソ連・独・仏等における妓近の傾向である︒日本においてもこの例外でなく︑現に池
田内閣総理大臣が訪問旅行を行っており︑内閣総理大臣の海外出張の回数が増加すると考えるべきである︒
第二に︑このように臨時代理の問題について︑今後︑論議される機会が多い時に︑臨時代理の権限をめぐって激し
い論議が生ずると予想される︒内閣法第九条は内閣総理大臣の代理について規定するのみで︑臨時代理がいかなる範
囲迄内閣総理大臣の椛限を代行し櫛るか︑すなわち臨時代理の代理椛の限界につきなんら触れていない︒前述の如
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仰内閣総理大臣は内閣の﹁首長︵憲法第六六条︶﹂である︒明治憩法の下において︑国務各大臣は憲法上あく迄
平等であり︑内閣総理大臣はいわば﹁同瞭中の第一順位者︵耳目易旨蔚﹃冨﹃①の︶﹂にすぎなかった︒これに対
し︑新謹法においては︑内閣総理大臣の﹁首長﹂たる地位を葱法自ら定あ︑内閣の内部において内閣総理大臣に指導
柵・統制樅を与えた︵遜法弟六八条︑鋪七二条︑第七四条および第七江条︶︒このように行政術の仙乎たる内閣の首
焚として内閣総理大臣の活助は川政の迎悩の上において亜要な意味を持つ︒特に核兵器の異術な発遮および人工衛星
の飛びかう二○世紀後半において︑内閣総理大臣の活動は瞬時もゆるがせにし得ないものがある︒このような亜大な
職貨を持つ内閣総理大臣に不測の事故が生じ︑またはその欠倣をみる場合︑脚政の運営に支障をきたすことは明白で
ある︒単に国政の運行の停滞のみでなく︑いわば船頭を欠いて荒波にもてあそばれる船の迩命にも似て︑内閣総理大
臣の事故または欠峡は国政の推移に極めて破大な結果をもたらす︒従って内閣総理大臣が側務大臣の中の一名を前も
って職務代行者に指定しておき︑現実にそのような邪態が生じた珊合に︑指定された側務大臘がなんらの行為を要せ
ずに内閣総理大臣の代理としてその職務を代行することにより︑脚政の巡行上の支障または停滞のおそれを予め取り
除くことができる︒これが内閣法第九条の趣旨であることは明白である︒ く︑内閣総理大臣の瀕繁な海外出張と偶発的な疾病のために︑臨時代理による内閣総理大臣の職務の代行がしばしば 生ずると予想される時︑内閣法がその代理樅の限界につき明文をもって規定していないことは︑亜要にして微妙なこ の問題をめぐって生じ得べき激しい論殿を内包しているというべきである︒
本稿においては内閣総理大臣の臨時代理をめぐる問題︑特にその権限の範囲につき︑懸法および内閣法を検討して
考察を進めたいと思う︒
一内閣総理大臣臨時代理の指定の時期
1
側内閣法第九条は︑内閣総理大臣の事故または欠鋏の場合︑﹁その予め指定する﹂国務大臣が︑臨時に︑内閣総
理大臣の職務を行うと定める︒﹁予め指定する﹂とは︑国政の運用上支障をきたさないように内閣総理大臣の事故ま
たは欠鋏が発生する以削に︑前もって指定しておくとの意である︒このように考えると︑指定につき二つの場合が考
えられる︒一方は︑内閣総理大臣に耶故等が発生しそうな状況が生じた時︑これに対処するために︑その発生に先立
って行う応急的な指定である︒他方は︑将来における那故等の発生は人間には予測し得ないことを削提として︑その
ような不測の事故等に倣えるために︑内閣成立の時に予め行う指定である︒
この両者の中︑先づ内閣成立直後の指定に関しては︑内閣総理大臣に不測の順故等の発生があり得ることを思い合
わせると︑内閣成立と同時に指定を行い︑その内閣の総辞職に至る迄の期間中︑内閣総理大臣に偶発的に生じ得る事
故等に予め備えておくことが望ましいことである︒内閣法第九条にいう﹁予め指定する﹂は︑将来における噸故等の
発生に側えて︑内閣成立の時に予め指定すると解するのが内閣法第九条の立法趣旨に合致すると思われる︒特に予め
指定をしておかない場合︑突発的に内閣総理大臣に事故等が発生することがあり得るし︑この観点から考えると︑内
閣成立直後の指定が内閣法第九条にいう﹁予め指定する﹂唯一の場合とも考えられる︒しかし︑内閣成立直後に指定
しても︑若干の期間経過後︑指定された国務大臣に事故が発生した場合︑改めて指定を行う必要がある︒従って内閣
成立直後の指定は内閣法節九条にいう﹁予め指定する﹂一つの場合であり得るが︑唯一の場合でない︒
次に︑内閣法第九条は﹁予め指定する﹂と定めるのみであり︑指定の時期については︑内閣成立直後または内閣成
立後一定期間内︵例えば一○日または一カ月︶に限定していない︒従って内閣成立後︑若干の期間が経過してなお指
定がない場合でも︑この状態を目して内閣法卵九条違反といい神ない︒内閣成立後指定が行われないままに若干の期
間が経過した後︑内閣総理大臣の蛎故等が発生するような状況になった場合︑事故等の発生直伽に応急的な指定を行
っても︑これは内閣法鰯九条にいう﹁予め指定する﹂にあたり︑第九条になんら連反しない︒従って︑内閣成立直後
4
r一一一一一
121
内閣成立直後に指定を受けた場合︑すなわちいわゆる剛総理の場合︑内閣総辞職に至る迄︑期間の制約がなく指定
を受けるに反し︑この応急的指定の場合︑その指定は一定の期間︑例えば内閣総理大臣の外国出張中または病気引き
︵分包︶
こもり中に限定され︑従って︑指定の原因となった事故が消滅する場合︑臨時代理の指定が解か郡ることになる︒ の指定が第九条の立法趣旨に合致するとしても︑同条は応急的指定をも予想していると考えられる︒
⑧実際の運川において︑第一の内閣成立直後の指定および第二の応急的指定がみられる︒
新遼法および内閣法の施行後第三次鳩山内閣に至る約一○年間︑歴代の内閣は殆んどすべて内閣成立直後にこの指
︵・凸︶
定を行った︒このように内閣総理大臣の職務を代行するために内閣総理大臣により予め指定を受けた国務大臣がいわ
ゆる﹁副総理﹂である︒これは俗称であり︑法律上においては︑﹁内閣法の規定により臨時に内閣総理大臣の職務を
行う者として指定された国務大臣︵皇室典範第三○条第五項︶﹂または﹁内閣法第九条の規定によりあらかじめ指定
された国務大臣︵国防会議の柵成等に関する法律第四条︶﹂と称されている︒この指定を受けた脚務大臣は内閣総理
大臣の事故等の蝿合にその職務を代行することを除けば︑この指定により特別の椛限を賦与されるわけでない︒指定
を受けたその地位に附閥して︑個防会鍍の顕員︵脚防会議の櫛成等に関する法律第四条︶および皇室会瀧の予術縦貝
︵皇室典範第三○条第五項︶等になるだけにすぎない︒従って︑副総理なる俗称は︑例えば第五次吉田内閣における
緒方竹虎氏︑鳩山内閣における正光葵氏等の如く︑その政治的経歴または人物等の点において閣内で内閣總理大臣に
次ぐ声望を有し︑次期内閣の首斑と目される国務大臣が指定されたために附せられた名称であると思われる︒
新憲法および内閣法施行後約一○年間︑右のように内閣成立直後に指定が行われたが︑石橋内閣以後現在に至る
︵の凸︶
迄︑.逆に内閣成立直後の指定は稀となり︑応急的指定が行われるようになった︒これは主として他の閣恢に対する政
治的配慰から生じたと思われる︒この応急的指定の場合には︑内閣成立直後の指定の場合と異り︑副総理と呼ばなか
ったことはこれを裏書する︒
1浬
応急的指定の場合に副総理と呼ばれず︑その指定が一定の期間内に限定される点において︑内閣成立直後の指定と
比較して差異がみられるが︑内閣成立直後の指定および応急的指定の両者は共に内閣法第九条に基く指定である︒従
ってその法的性絡において両者の間に差異は存しない︑内閣総理大臣に鞭故等が現実に発生した場合︑その指定を受
けた剛務大臣が内閣総理大臣の職務を行う時のその法的地位についても両者の間になんらの和述は存しない︒
④内閣総理大臣の邪故等の発生につき︑内閣法卵九条に示された立法者の意思は極めて楽観的である︒伺条は内
閣総理大臣の事故群の猪生に先立って鰹時代理が予め指定されることを予想し︑臨時代理が予め指定されることなく
内閣総理大臣に事故等が発生する場合を予想していないUしかし︑現実には応惣的指定を行ういとまがない職急激か
つ突発的に内閣総理大臣に事故等が発生する場合があり得る︒更に︑内閣成立吹後に指定を行った場合においても︑
内閣総理大臣に蛎故等が現実に発生した時︑指定を受けた国務大臣に同時に躯故淳が発生することが考えられる︒従
って︑この二つの仮設が生じた場合︑すなわち第一に︑内閣総理大臣に鞭故等が発生したが︑臨時代理の指定がなか
った場合︑第二に︑予め指定があったが︑内閣総理大臣の事故等の発生と同時に臨時代理にも事故が発生した場合に
ついて検討すべきである︒これについて三つの対応策が考えられる︒
箙一の方法は︑予め指定を受けた国務大臣がいない事態に立ち至った場合︑法律をもってこれを指定することであ
る︒正砿に合致する例でないが︑米国において︑行政梅の担手たる大統餌およびこれに代るべき副大統頒が共に猟劾
による解職の場合︑死亡の蛎合︑︲辞任の珊合および執務不能となった場合︑憩法第二条鯏一項第五節は法徽をもって
大続航の職務を行うべき人を指定すると定めている︒然し︑日本囚憩法の下において︑法祢をもって瞳時代理を指定
することは内閣総理大臣の指名手続につき定める窓法節六七条との例述において疑問がある︒内閣総理大臣が国会の
議決により指名されるに反し︑その事故等の場合の臨時代理の指定につき法律をもってする根拠は存しないし︑一般
に法律の制定は時日を要し︑臨時代理の指定という緊急の邪態に対処し得ない︒
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第二の方法は憩法第六七条所定の手続を準用することである︒然し︑麗法第六七条は臨時代理の指定を予測して規
定されたものでない︒内閣総理大臣の欠峡の場合に鰯六七条の手続により臨時代理を指定し︑改めて側一手続をもっ
て新内閣総理大臣の指名を行うことは手続上繁鎖であるのみでなく︑その理由も根拠も存しない.
第三の方法は︑法律または国会の議決以外に︑なんらかの便法を認めることである︒臨時代理の指定を受けた国務
大臣がいない時︑内閣総理大臣に事故等が発生した右の二つの仮設の巾︑一方の場合においては内閣法鯏九条に韮き
臨時代理を予め指定し︑事故等の発生にⅢもって対処していたことが總められる︒内閣法鯏九条が︑内閣総理大臣に
職務をなし得ない事情が生ずる場合に備えて代行者を置くということに菰点を遥いたと解すれば︑この場合には予め
指定を行ったことに着目して︑なんらかの応急の措慨を認めるべきではないかと考えられる︒残存した閣恢の協議に
より臨時代理を指定する方法はこの一例である︒
﹁予め指定する﹂を拡張解釈した場合︑一方の場合にはこのような便法が認められるとして︑始めから全く指定を
怠っていた時に内閣総理大臣に事故等が発生した他の場合を検討しよう︒内閣法第九条の重点が前述の如く内閣総理
大臣の職務代行者を慨くことにあるとしても︑指定を怠ったという邪実は﹁予め指定する﹂を雌大限に拡張解釈をし
ても右の如き便法を認めるべきか否か疑問である︒右の便法を認めれば内閣法第九条にいう﹁予め指定する﹂が全く
無意味に帰する︒然し︑予め指定を行ったか否かは別として︑この二つの場合︑結果的には覗故等の発生時に指定を
受けた国務大臣がいないという点において同一であるに拘らず︑一方について便法を認め︑他方においてこれを認め
ないことは︑後者の場合に限り国政の巡行に停滞をきたすことになる︒内閣総理大臣またはその臨時代理がいないと
いう緊急蛎態の援用により︑この場合にも便法を認めざるを得ないことになる︒
このように内閣総理大臣に事故等の発生したときに臨時代理がいないという場合︑国政の運行の停淵を防ぐために
は右のような便法を慰めざるを得ない状態になり︑そのためには必要以上な拡張解釈を行い︑または緊急事態を援用
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悪法はこのように他の国務大臣に優越する地位と強力な椛限を内閣総理大臣に与え︑内閣において文字通りワン
マン的存在たることを認めた︒閣内においてこのような地位と権限を認められるのは内閣総理大臣に限られ︑二頭
政治︵島四月ご・ご画﹃g︼篇︶における如く内閣総理大臣と同一の椛限と地位を持つ国務大臣は存し得ない︒日本国憲
法のかかる趣曾からして︑内閣総理大臣の蛎故等の珊合に︑その職務を代行するのは一人に限られる︒職務を代行す せざるを得ない︒このようなことは必ずしも望ましいことでない︒ここに内閣法第九条の規定の不備が認められる︒ このような事態が発生する以朋に︑例えば内閣成立直後に指定を義務づけ︑その際に職務代行の順位を予め指定する ことが望ましい︒結局︑内閣法節九条が右の二つの珊合の発生を予想していないことからして問題が提起されるので あり︑この点に関し同条の不備をただす必要があると思われる︒
⑤最後に︑昭和三○年三月︑第二次蝿山内閣において︑二人の副総理を侭くことが考えられたが︑一内閣に同時
に二人またはそれ以上の副総理︑すなわち被数の副総理を職き得るか否かが問題になり得る︒
日本国懲法の下において︑行政樅の紐閥する内閣は内閣総理大臣と例務大臣により柵成される合孤体である︒内閣
総理大臣は内閣という合議体の一員として他の国務大臣と対等の地位を持つと解釈される︒この点に関しては現行ス
イス憲法下の執政府制︵皇﹃の︒gご号く巾昌ョの具ゞの愚︒貝冨島﹃88凰巴︶に似るgスイス遥法の下の執政府は七
人の執政官で柵成され︑執政官は対等の地位を持ち︑執政官の間に上下の階胤はない︒行政桶の行使につき執政官の
合繊が行われ︑その意見が分れる場合︑多数決で決せられる.
然し︑日本国憲法は︑内閣総理大臣を合議体の一員としつつ︑なお内閣総理大臣を内閣の荷憂とし︵恋法第六六
条︶︑他の国務大臣の任免権︵憲法第六八条︶および訴追同意権︵憲法第七五条︶︑行政冬部の指揮監督権︵憲法第
七二条︶を認める︒このように恵法は米国大統頒の独任制︵◎ョ①︲昌鱈弓﹃三の︶に極めて近い地位と栃限を内閣総理大 七二条︶を訶
臣に認める︒
125
②内閣法第九条は︑内閣総理大臣の臨時代理に指定された国務大臣が現実に内閣総理大臣の職務を行うのは内閣
総理大臣に﹁邪故のあるとき﹂および内閣総理大臣が﹁欠けたとき﹂の二つの場合に限定する︒後者︑すなわち内閣
総理大臣の欠倣の場合には︑憲法第七○条により内閣は総辞職すべきであり︑従って新に内閣総理大臣が任命される
時迄︑臨時代理はいわゆる総辞職内閣においてその職務を行い︑その職務には自ら限界があるというべきである︒
②内閣総理大臣の欠峡は次の如き場合に生じ得る︒第一に︑内閣総理大臣の死亡の場合である︒新懸法の施行
後︑在任中の内閣総理大臣が死亡したという先例はないが︑明治恵法の下においては︑例えば昭和七年の犬養内閣総 る者が二人または二人以上おり︑その間の協議または事務分担等により職務代行が行われることば窓法の趣旨に反す ると思われる︒結局︑臨時代理の指定を受けた剛務大臣が同時に二人またはそれ以上存在することは詐されないと解 すべきである︒
︵1︶例えば第二次吉田内閣において国務大臣林漉次氏が臨理代理の指定を受け︑第一次蝿山内閣において国務大臣誼光葵氏が指
定を受けたのは何れも内閣成立直後である︒
︵2︶例えば今回の池田内閣総理大臣の外国訪問旅行に際し︑この訪問旅行中︑国務大臣河野一郎氏が内閣総理大臣の職務代行に
つき指定を受け︑前回の外国訪問旅行に際し︑国務大臣川島正次郎氏が指定をうけている︒
︵3︶例えば岸国務大臣が応急的指定を受けたとき︑昭和三二年一月三一日︑次のように公示された︒﹁耐務大臣岸信介︑内閣総
理大臣石橋湛山病気引こもり中内閣法第九条の規定により臨時に内閣総理大臣の職務を行う国務大臣に指定する︒L
吉田内閣総理大臣のサンフランシスコ会議参列のための川狼に際し︑昭和二六年九〃二四H次のような公示がなされた︒
﹁国務大臣林謹次︑内閣総理大臣吉田茂︑アメリカ合衆国へ出張不在中︑内閣法第九条により︑臨時に内閣總理大臣の職務
を行う国務大臣に指定する︒L
二内閣総理大臣の欠峡の場合の臨時代理の権限の範囲
f
1泌
国会が休会中のときに内閣総理大臣の欠倣が生じた場合︑内閣は直ちに臨時会を召集すべき義務を負い︑この臨時
会において︑他のすべての案件に先だって新内閣総理大臣の指名が行われる︒
内閣総理大臣の欠峡の場合︑総辞職内閣において臨時代理は右以外のなんらかの敬務を行い得るか否かが問題とな 内閣総理大臣が︑なんらかの事由により︑その任にとどまることが適当でないとして自発的に辞職する場合は内閣
総理大臣の欠鋏に該当するか否かについては︑内閣総辞職との関連において︑学説上︑問題があり︑私は内閣総理大
︵●凸︶
臣の自発的辞職は欠倣に含まれないと解するが︑これを何れに解釈しても本穂は内閣総理大臣の臨時代理の椛限を考
察しているので︑内閣総理大臣の自発的辞職の場合はここで論ずる必要がないと思われる︒
③内閣総理大臣が死亡または資格要件を喪失した場合︑すなわち内閣総理大臣の欠餓が生じた場合︑内閣法節九
条は予め指定された国務大臣が︑臨時に︑内閣総理大臣の職務を代行することを定める︒然し︑・内閣総理大臣の欠鉄
が生じた場合︑前述の如く︑窟法第七○条により︑内閣は総辞職すべきである︒
国会開会中に内閣総理大臣の欠鋏が生じた場合︑内閣は両議院に内閣総理大臣の欠狄と内閣総辞激の旨を通知すべ
きである︵則会法第六四条︶・内閣総辞職と共に︑国会は﹁他のすべての案件に先だって﹂新内閣総理大臣の指潴を
行う︵懲法第六七条第一項︶・この指名に基き新内閣総理大臣の任命︵窓法第六条︶が行われ︑旧内閣の臨時代理お 理大臣の如く在任中に死亡した事例がある︒
第二にゃ内閣総理大臣が︑在任中︑その資絡要件を失った場合である︒例えば︑資格争訟︵憲法第五五条︶または
当選岬訟の結果︑国会議員たる地位を喪失した期合︑談院により除名された場合︵憩法節五八条︶・憲法節六七条は
国会嬢員たることを内閣総理大臣の在任要件とするので︑右の如き場合︑内閣総理大臣となる溢絡を失い︑その地位
行う︵懲法第六七条第一項︶・︾
よび国務大臣はその地位を失う︒ を離れることを余儀なくされる︒
1
る︒憲法第七一条は内閣総理大臣の欠鉄を含め第六九条および第七○条に定める事態が生じた場合︑﹁内閣は︑あら
たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ﹂と定める︒有力な学説は︑﹁その職務﹂とは竃法上内
閣に与えられた職務を意味し︑法律的にはこの職務の範囲について限定はないと主張しつつ︑なおかつ︑然し︑政治
︽困七︶
的な見地からは日常事務の処理に限られるとする︒然し︑憲法第七○条にいう﹁職務﹂とは始めから日徽靭務を意味
一方において︑国家活動は多種多様な行政処分を必要とし︑これは一日たりともゆるがせにし符ない︒迩法節六七
条第一項は内閣総理大臣の指名は他の案件に先立って行うことを定めるが︑岡条節二項により参議院に一○日の停止
的拒否権を与える︒国会が休会の場合︑新内閣成立迄の空位期間はそれだけ延長される︒いわゆる総辞職内閣はこの
新内閣成立までの空位を満し︑国の活動を確保するためにその職務を行うべきである︒従って節七一条のみを検討す
ると︑その職務の範囲は法律的には限定されていないと解することも可能である︒
然し︑他方において︑憲法第六六条第三項により︑内閣は国会に対し迎柵して武任を負う条件において行政縦を行
使する︒すなわち内閣は国会のコントロールの下に活動し︑その批判を受ける地位に脱かれ︑究極において懲法第六
九条の場合における総辞職という法的責任の色彩の濃い政活的責任を負う条件において行政樅を行使する︒逆に川会
の側からいうと︑国会特に衆議院は内閣の行政梅の行使を常にコントロールし︑場合により恋法節六九条の定める内
閣不信任によりその責任を追及し得る︒内閣がなんらかの事由により総辞職する場合︑内閣は慰法の規定するこの蛍
︵3︶
任から解除される︒﹁死者をもう一度殺し得ないし︑総辞職した内閣をもう一度打倒し得ない︒﹂内閣が総辞駁を表
明した時︑憲法第六六条第三項および第六九条は総辞敬内閣に対し適川され得なくなる︒従って︑総辞職内閣は︑遼
法第七一条によりその職務を行い得るとしても︑他方において国会に対する黄任から解除されることにより︑その職
務は一定の範囲に限られ︑すなわち日常轆務の処理に限定される︒懸法第六六条および第六九条との関迎において︑ すると解すべきである︒
1記
この中︑前者の場合には︑参議院の緊急集会を求め︑ここで内閣総理大臣の指名を行うことが考えられる︒然し︑
衆議院解散後の内閣は憲法第七一条により新国会召集の時迄という期限付総辞職の態勢にあり︑この場合には総選準
後に召集される新国会における指名に基き新内閣総理大臣の任命をみる迄︑総辞職内閣が引き縦きその職務を行い︑
臨時代理が欠峡した内閣総理大臣の職務を代行すべきである︒
後者の場合には︑一方において衆議院が存在しないことは衆議院による内閣総理大臣の指名を不可能とし︑他方に
おいて︑前の場合と同様︑内閣は期限付総辞職の態勢にあり︑この状態の下において総辞職することは許されないと 第七一条にいう﹁職務﹂は﹁日常事務﹂としてとらえるべきである︒
その時︑ここでいう日常率務とは何かが問題となる︒ここでいう日常事務とは新内閣成立を待つ余裕がない程切迫
した緊急の邪務で︑国の活動を確保するために必要な事務である︒すなわち新内閣成立の時迄延期することが不可能
な事務︑要するに緊急な事務である︒然し︑この緊急性はここでいう日常事務の必要条件であるが充分条件でない︒
緊急性の外に他の条件が必要である︒前述の如く︑総辞職内閣に対し国会はその責任を追及することが不可能とな
る︒逆に内閣が国会の意思に反する活動をなし︑しかも責任を負わないというのは議会政治の否定である︒従って総
辞職内閣のとり得る処分は内閣の武任を拘束せず︑国会による黄任追及を惹起すべき性質を持たないものに限られ
る︒すなわち政治的意味または政治的価値を欠き国会においてその責任を追及され得ない性質の事務に限られる︒従
って総辞職内閣が憲法第七一条により行う職務とは緊急に必要な処分であるが︑政治的価値を欠き内閣の査任を拘束
倒圭 た場合︑
られる︒ しないものに限られる︒
次に内閣総理大臣の欠欲が︑衆議院解散の時から衆議院議員総選挙を経て新国会の召築に経る迄の期間に生じ
︑または衆議院議員の任期満了の時から総選挙を経て新国会の召集に至る迄の期間において生じた場合が考え
﹃屯
1 . 。 −
1
この二つの場合において︑
すべきであり︑この間にお匹
務の処理に限られる︒ 解すべきである︒この場合にも︑新国会における指名に基き新内閣総理大臣が任命される時迄︑総辞職内閣において 臨時代理が内閣総理大臣の職務を代行すべきである︒
この二つの場合において︑総選彬が行われた後に新内閣総理大臣の指名のために︑総辞職内閣は亜ちに圃会を召架
すべきであり︑この間における内閣の職務は総選挙の施行および国会の召集に関するものの外に︑前述の如き日常事
︵1︶有力な学説によると︑内閣総理大臣の自発的辞職は葱法第七○条の司飲けたとき﹂に該当する︵富沢俊義・日本国窓法・昭
和三○年・第五三七瓦︑消窓四郎・淑法Ⅱ.法神学全災・昭和三二年・節二六六画︶・恋法卵六九条は︑衆醗院による内閣
不信任の場合︑衆議院の解散または総辞職の二者択一を内閣に課し︑第七○条は内閣総理大臣の欠飲の場合または特別国会
召災のとき︑内閣が総辞職すべきことを定める︒卵七一条は︑﹁前二条の珊合には﹄内閣は︑新内閣総理大臣の任命の時迄︑
引き続きその職務を行うことを定める︒内閣総理大臣の自発的辞職は︑ことがらの性質上︑内閣の総辞職を惹起するのであ
るから︑内閣総理大臣の自発的辞職を総辞敏の事由としての﹁故けたとき﹂の一に解して差支えないとする︒
然し︑内閣総理大臣の司飲けたとき﹂という表現は内閣総理大臣がなお職務にとどまり政権を引き続き担当する意思を有
するに拘らず︑自らの死亡または失格という余髄ない事由が生じた場合に限定されると考える︒特に︑国会法節六四条が
﹃内閣総理大臣が欠けたとき︑又は辞表を提出したとき﹂と使い分けをしているのは︑n発的辞職が内閣総理大臣の欠飲の
場合に含まれないとする有力な根拠になる︒憲法は内閣が一立法期を通じて政椛を担当することを前提とし︑その間に節六
九条の場合または第七○条のいわゆる﹁欲けたとき﹂という那態が発生した鳩合︑この場合に節七一条において︑﹁前二条
の場合にはしと必要的・義務的総辞載の場合をとらえて規定したものである︒内閣総理大臣の自発的辞融に基く任意的総辞
職の勘合は瓢法第七一条にいう可前二条の珊合﹂に含まれないが︑条理上︑伽二条の珊合と同嫌の術腿がとられると解すべ
きである︒
︵2︶宮沢俊義日本国懲法︵昭和三○年︶第五四五頁︑佐藻功惣法︵昭和三○年︶節四一三頁︒
︵3︶冨覺陞箸巴旨Fzo圃烏旨爵勺2口83胃雪帰合身昌冒昌︒︾馬鼠zo・李弓.呂駕士.
子
130
⑩内閣法第九条は︑内閣総理大臣の欠鋏の場合にならべて︑内閣総理大臣に事故が生じた場合にも︑予め指定を
受けた国務大臣が内閣総理大臣の職務を臨時に行うことを定める︒内閣総理大臣の事故とは獅定的とみられる性質の
故障であり︑これは鯏一に︑前述の如く内閣総理大臣の外間出張︑第二に︑撫気の場合である︒惣沢教授は︑その外
︵口且︶
に︑例えば︑二・二六事件における岡田内閣総理大臣の場合の如き生死不明をあげている︒
②この中︑内閣総理大臣の外国出張の場合には︑その目的が儀礼的訪問であるとしても︑または国際政治に関す
︿の心︶
る爪要問題解決のための海外出弧であるとしても︑ことがらの性質上︑小故の起点と終点は明白である︒この期間
中︑臨時代理は︑内閣法第九条により︑内閣総理大臣の職務を臨時に代行する︒
③これに反し︑内閣総理大臣の病気による事故の場合︑認定の困雄な問題に逢着する︒
病気による故障の場合︑第一に事故ありと誰が認定するかの問題︑第二にいかなる程度の病状により事故ありと認
定するかの問題︑鯏三に班故がいつ終るかの問題が提起される︒
日本国恵法第七八条において︑穀判官は︑数判により︑心身の故陣のために職務をとることができないと決定され
た場合︑罷免されることを定める︒この場合︑裁判官に職務をとり得ない心身の故障ありと決定するのは裁判所であ
る︵裁判官分限法第三条︶・皇室典範第二ハ条第二項は︑天皇が精神若しくは身体の重患または重大な事故により︑
国那に関する行為をみずからとることができないときは︑皇室会識の識により︑摂政を髄くと定め︑第二○条はその
故障がなくなったときに︑皇室会錨の識により摂政を廃することを定め︑従ってこの場合の故障の認定は里室会瀧に
これに反し︑内閣総理大臣の病気による故障の場合︑憲法および内閣法は誰が事故ありと認定するかを定めていな
い︒結局︑執務に耐え御るか否かは内閣総理大臣の身体において表明される痢状と医師の診断を併せ考える必要があ よりなされる︒ 三内閣総理大臣の事故の場合の臨時代理の権限の範囲
131
ると思われる︒先ず︑通常の場合において︑医師の診断を考慮してその自覚症状により内閣総理大臣が自らこれを認
定すると解すべきであろう︒例えばなんらかの疾病により︑二カ月の療謎と安肺を要すと診断された場合︑内閣総理
大臣はその病状を考えて自ら事故ありと認定を下すことになろう︒然し︑次に︑例外として︑内閣総理大臣の意識が
不明になる狸の極めて亜大な故障が生じ︑内閣総理大臣自ら耶故ありと腿定し神ない場合が予想される︒この場合に
は︑医師の診断と内閣総理大臣の身体において看取される症状を併せ考えて︑何人かが認定を下す以外に方法がない
と思われる︒この時には︑結局︑内閣総理大臣の欠席した閣織で臨時代理の主宰の下に縄定すると解するのが妥当と
思われる︒この場合︑前述の如く︑予め臨時代理の指定を受けた国務大臣がいないとき︑この閣議においてこれを指
定することになると考えられる︒
第二に︑いかなる程度の病状で事故ありと認定するかについて︑一般的に考えると︑内閣総理大臣の外部に現われ
る心身の状態にてらして︑馳務を行うに耐えないことがすべての人に明白である賜合には問題はない︒これに反し︑例
えば︑風邪のために二︑三日の静養を要すると診断された場合︑ことさらに事故ありとする必要があるとは思えない︒
結局︑個々の場合に応じて︑内閣総理大臣の炎明する心身の状態と医師の診断を併せ考えることが必要と思われる︒
第三に︑病気による事故の期間が問題になる︒前述の如く︑内閣総理大臣の海外出張の場合︑帰国の日をもって蛎
故は消滅する︒痛気の場合においても︑一般的には︑恢復した時に邪故は洲減するといい得る︒然し︑病気の場合
は︑海外出張の場合と異り︑微妙な問題が生ずる︒病気は心身の継続的な故障であり︑その時間的継続中に︑病状が
一進一退するものと考えるべきである︒病気が全快するに至る迄︑徐々に恢復するとしても︑毎日︑数学的な比例を
もって恢復するのでない︒或る一日よりも翌日において却って悪くなる場合もあり得る︒或る一時点︑例えば午前中
の倣かな時間において︑内閣総理大臣が職務に耐え得るような状態になり︑それ以外の時において︑その職務に耐え
られない状態になることもあり得る︒極端に考えると︑一分間賊務に耐える状態になり︑次の一分間職務に耐えない
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状態になり︑一日においてこれが反狸することもあり得る︒このように考えると︑病気静養中︑瞬間的に事故にな
り︑次の鍔間には逆になると考えるのは妥当でなく︑病気は︑前述の如く︑ある程度︑時間的継続性があるとみるべ
きである︒昭和三二年一月三一日の公示において︑﹁病気引きこもり中﹂という如く︑継続的な耶故があると解すべ
きであり︑その間に断絶はないと考えるべきである︒病気引きこもり中︑たまたま病状のよいことがあっても︑この
時をもって馴故がないものと解することは正当でない︒このように考えると︑昭和三二年一月三一日の公示により︑
岸国務大臣を臨時代理として指定しながら︑病気引きこもり中の石橋内閣総理大臣が︑二月一○日︑自らの名で小滝
彬氏を刷務大臣防衛庁長官に任命したのはうなづけない︒
④内閣法第九条は内閣総理大臣に前述の如き率故が生ずる場合︑予め指定を受けた国務大臣が︑臨時に︑内閣総
理大臣の職務を代行することを定める︒前述の如く︑内閣総理大臣の欠倣の場合︑臨時代理が内閣総理大臣の職務を
代行する︒この場合には憲法節七○条により内閣は総辞職すべきであり︑恋法鯛七一条により新に内閣総理大臣が任
命される迄︑総辞職内閣は引き続きその職務を行うが︑新内閣総理大臣の指名のために必要な手続以外は︑日常馴務
の処理に限られることは帥述した︒これに反し︑内閣総理大臣の耶故の場合︑内閣は総辞恥する必要はなく︑臨時代
理は︑事故の期間中︑内閣総理大臣の職務を代行する︒この時︑臨時代理は内閣総理大臣の職務権限を全面的に代行
し得るのか︑それとも臨時代理の職務代行椛限には若干の制約が存するのか︑要するに代理樅の限界が問題になる︒
内閣総理大臣の職務権限は次の三つに区分される︒第一の職務椛限は内閣を組織し︑その統一的要素を維持し︑必
要と認める場合︑国務大臣を更迭し︑すなわちその結合の要衆を変更する機能を営むために与えられた地位︑いわば
組閣権者としての職務権限である︒この職務権限に属するものは国務大臣の任免権︵恵法第六八条︶︑国務大臣に対
する訴追同窓梅︵遼法卵七五条︶および自発的辞職を決意しこれを行うことも組閣椛者としての内閣総理大臣に属す
ることは明白である︒
ー−−と−一一口=一 −−−−−−
133
臨時代理の代理権の限界につき問題が生ずるのは第一の職務権限である︒内閣総理大臣の第一の職務権限をめぐり
二つの説が考えられる.この職務椛限は臨時代理の代理板の範囲外にあり︑臨時代理の職務代行権が及ばないとする
晩︑いわば限界舵と︑臨時代理は内閣総理大臣の職務のすべてを代行することができ︑臨時代即はこの第一の職務椛
限を代行し得るとする税︑いわば無限界挽が港えられる︒
有力な学者は限界説を主張する︒第一の職務権限︑特に国務大臣の任免権については︑悪法が﹁内閣の組織権を内
閣総理大臣にまったく一任していることからいって.⁝:内閣総理大臣に専属するものであり︑代理になじまない性絡
を有する︒・・⁝.従って︑内閣法第九条は︑現在内閣総理大臣の臨時代理者の代理樅の限界について別段に定めるとこ
︵3︶
ろはないが︑国務大臣の任命は︑その性絡からして︑その代皿権の外にあると見なくてはならない噂﹂
然し︑一般的にいって内閣法第九条は代理権の限界につき規定しておらず︑従ってそこにおいて臨時代理を慨くこ 務権限である︒ 第二の職務権限は︑内閣の存在を前提として︑合議体たる内閣の首斑としてこれを主宰し代表する機能を営むため に賦与された職務権限である︒憲法は行政権の行使を内閣に帰属せしめ︑内閣は憲法第七三条に列挙された蛎務およ び他の一般行政事務を行い︑第七条に列挙された天皇の国事行為につき助薗と承認を与えることを定める︒内閣総理 大臣はこのような椛能を持つ内閣の首艮として閣錨を主宰し︑行政各部を指押監将し︑内閣を代表して織案を剛会に 提出する︒第三の職務権限は︑内閣の統轄の下にある行政機関たる総理府の長︵国家行政組織法第遮条︶としての職
﹁臨時に︑内閣蝿
はいう迄もない︒ この中︑第二および第三の職務権限については︑臨時代理の職務代行樅が全面的かつ完全におよぶことは明白であ
る︒臨時代理がこれをなし得ないなら︑内閣法第九条が臨時代理を認めた意溌は全く失われる︒内閣法節九条にいう
﹁臨時に︑内閣総理大臣の職務を行う﹂とは︑このような職務椛限を臨時代理が代行し得ると定めたものであること
1鋤
とを定めた時︑内閣総理大臣の職務権限を全面的に代行すると考えるべきであり︑内閣組織権に限り︑その例外とす
るのはうなづけない︒その上︑限界説を詳細に検討するとそこに極めて顕著な矛盾が見出され︑それを固執すること
第一に︑限界説をとる時︑国務大臣の任命栃をめぐり次の如き矛盾が生ずる︒憩法第六八条第一項により︑内閣総
理大臣以外の国務大臣の過半数が国会識貝たるべしとする要件は内閣全体の柵成要件であり︑内閣の成立要件である
と同時に存続要件である︒内閣総理大臣に聯故が生じ︑臨時代理が職務代行中︑辞聴︑除名︵態法第五八条︶︑盗格
争訟︵憲法第五五条︶または当選脈訟による失格により︑国会搬貝たる掴務大臣の数が減少し︑国会織瓜でない国務
大臣が過半数を占めた場合︑国会議員の中から国務大臣を直ちに任命しない限り︑憲法第六八条に違反し︑内閣は存
続し得ない︒限界説は臨時代理に国務大臣の任命権を認めないから︑この場合︑この見解を貫けば︑内閣そのものが
存続し得ない矛盾に逢着し︑この解釈は角を鵠めて牛を殺す如き解釈に陥る︒
この説を放棄せず︑しかもこの矛盾を逃れるためには次の解釈をとることを余雛なくされる︒先ず︑岸国務大臣を
臨時代理として指定した石橋内閣総理大臣が︑その病気引きこもり中︑内閣総理大臣自らの手により小滝氏を圃務大
臣に任命した先例を援用することである︒然し︑国務大臣の過半数が捌会縦旦以外の人になった邪態が生じたとき︑
その事態発生直前に︑例えば内閣総理大臣が全快し︑これにより国務大臣を任命するなら︑その後に再び職務に耐え
られない程に病状が悪化しても問題はない︒然し︑右の事態が発生した時︑内閣総理大臣の病気による意識不明︑外
国旅行中の連絡途絶︑生死不明が比較的長時間にわたる場合︑この間︑内閣総理大臣が新に国務大臣を任命すること
が不可能である︒従って限界説を固執しても︑この場合には︑臨時代理に国務大臣の任命権を認めざるを得なくな はできない︒
る
鯏二に︑国務大臣の罷免権については︑憩法節六八条は内閣の統一性を確保するために︑意見の合致しない剛務大
0『
135
臣を任意に罷免する椛限を内閣総理大臣に賦与した︒内閣総理大臣の事故の期川中︑閣内の不統一により内閣の存続
が危険に瀕しても︑なお罷免樅が内閣総理大臣の一身に専属し︑従って臨時代理が罷免柵を発動し得ないと解釈する
ことは憲法および内閣法第九条の精神に合致するとは思えない︒
第三に︑限界説は︑内閣総理大臣の事故の期間中︑臨時代理の意思により内閣は総辞職し得ないとする︒然し︑閣
内不統一︑その政策の行きづまりまたは多数派の支持を失い少数派内閣になり︑内閣存続の危擬が生じ︑政権の維持
が不可能となってもなお総辞職し得ないというのは当を得た解釈といい得ない︒内閣総理大臣がおる時には︑このよ
うな場合︑内閣総理大臣の自発的意思により内閣が総辞職し得るに反し︑その蛎故の期間中︑臨時代理の意思によっ
てはこれをなし得ないと解釈するなら︑臨時代理の侭かれている期間中︑図会は内閣の武任を追及してこれを総辞職
に追いこむことが不叫能となる.換薔すれば限界魂を貫けば︑内閣総班大臣の小故の期閲中︑叫政が全く停滞するこ
とはあり得ても︑側会に対する内閣の蛍任を定める遼法第六六条第一一項の規定は大部分その迩鎚を失うことになる︒
内閣組織樅に限り臨時代理の代理樅の例外を認める説にはいかほどの限拠があるか疑わしい上に︑葱法の他の条文
との関述において矛臓が生ずる︒内閣法第九条が臨時代理を世くことを定め︑臨時代理の限界につき別段の規定を定
︵○勺︶
めていないので︑臨時代理は内閣組織権をも代行し得ると解するのが正当と思われる︒
内閣総理大臣の第二および第三の職務権限については︑前述の如く︑臨時代理が完全かつ全面的に代行し得ること
は明白である︒然し︑内閣総理大臣の事故の期間中における衆縦院の解散が問題になる︒恋法第六九条は衆議院にお
いて内閣の不信任の決縦案を可決した時︑内閣は解散か総辞職の二者択一にせまられることを定める︒憲法第六六条
は︑内閣は行政樅の行使につき国会に対し述帯して没を負うと規定するが︑内閣総理大臣が蛎故の場合にも︑内閣は
則会に対して辿榊して黄任を負うことに変わりはない︒衆搬院は行政権の行使につき常に内閣をコントロールし︑
その批判を行い︑場合により︑不傭任決鍍案を可決し︑内閣の政治武任を追及する︒内開に対する不信任が表明され
1弱
た場合︑内閣は総辞職または衆議院の解散の二者択一にせまられる︒国会が内閣の責任を追及し得るのは内閣総理大
臣の事故の期間中であると否とを問わない︒従って︑臨時代理の職務代行中に︑衆識院において不信任の決磯案が可
決される場合︑内閣は総辞職か解散かを決すべきである︒同様に︑内閣総理大臣の事故の期間中であると否とを問わ
ず︑慰法第七条に韮き︑内閣は適当と判断する時︑任意に衆砿院を解散し得る︒解散は内閣の助言と承認に基く天皇
の国事行為の一部であり︑これについての助言と承認を行う内閣の意思決定は臨時代理の主宰する閣蝋においてなさ
れ得ると解すべきである︒
従って︑内閣総理大臣の赤
得るものと解すべきである︒
︵1︶宮沢前掲第五三八頁 ︵2︶今回の池田内閣縄理大臣の海外出狼に際し︑昭和三八年九月一三日︑次の如く公不された︒ ﹁国務大臣河野一郎︑内閣総理大臣池田勇人海外出弧不在中︑内閣法第九条の規定により︑臨時に内閣総班大臣の敬務を
行う国務大臣に術定する︒L その帰国に際し︑昭和三八年一○〃六日︑次の如く公示された︒ ﹁国務大臣河野一郎︑内閣総理大臣池田勇人帰朝につき︑内閣法第九条による︑臨時に内閣総理大臣の職務を行う国務大
臣としての指定を解く︒L ︵3︶宮沢俊義前掲第五一二頁︒佐藤教授もこの点につき同意見である︒可内閣の組織椎は内閣総理大臣の一身専属的樅能で
あり︑代理になじまない柵限であると解する︒﹂︵佐謹功︑前掲節四○九頁︶
︵4︶清宮教授は﹁代理をおく以上︑特別の規定のない限り︑総理の馳務のすべてを代理させるのが当然であって︑組轍椛だけに
例外を腿めることにどれだけの根拠があるか疑わしい︒Lとする見解を持つ︵消資前描塑天凹瓜︶ 内閣総理大臣の郡故の場合︑臨時代理の代理樅の限界はなく︑内閣総理大臣のすべての職務椛限を代行し
『 . F 一 ‐
137
内閣法節九条に定める内閣総理大臣の臨時代理をめぐる問題につき考察を加えたが︑この検討を終えていい得るこ
とは内閣法第九条に馨しい不側が認められることである︒統治に側する聯項は若干の原理または大綱のみを定め︑実
際の巡用においてこの原理の範囲内においてある程度弾力性を持つ柔軟な解決策をとることが望ましいとしても︑内
閣法節九条には余りに多くの不備が見られる︒第一に︑臨時代理の指定を﹁予め﹂行うことなく︑内閣総理大臣に事
故等が発生する場合が予測されるが︑このような事態の発生を避けて︑国政の運行の阻害を前もって除去する配慮を
持つことが必要である︒それ以上に国政の推移に重大な結果を及ぼし得るのは臨時代理の代行橘の限界である︒内閣
組織権が臨時代理の職務代行権の限界をなすか否かは重大な点である︒これを何れかに解釈することにより︑政治の
実際の運用において国政が麻蝉状態に陥ることも予想される︒内閣法卵九条の立法趣旨は︑前述の如く︑国政に対す
る支障を避けることにあるから︑臨時代理の職務代行柿の範囲を明文をもって定める必要があると思われる︒この場
合︑前述の如く︑臨時代理の職務代行権に限界がないとすることが憩法に合致するし︑政治の実際の運用の上からも
望ましいと思われる︒
a