不活性ガスを含む泡消火法に関する研究
(課題番号
11650230)平成
11年度 平成
12年度科学研究費補助金) (基盤研究(
C) (2))研究成果報告
平成
13年
3月
研究代表者 伊 藤 昭 彦
(弘前大学理工学部)
数 段
Fire Fighting by Water Bubble Loaded with Inert Gases
(PROJECT NUMBER: 11650230)
1999
・
2000 Grant‑in‑Aid for Scientific Research (C) (2) Research Results ReportMarch
,
2001Akihiko ITO
Department of Intelligent Machines and System Engineering Hirosaki University
目次
1 .はじめに
研究組織 研究経費 研究発表
1 i q d q d q d
2.
実験装置および方法 5
3.
実験結果および考察
3. 1
消火時間への液流量の影響
3. 2消火時間へのガス流量の影響
3. 3消火過程の機構
5 5 5 m
4.
まとめ
18参考文献
19F
1 . はじめに
ハロン系消火剤(おもにハロン
13 0 1)は低毒性 低汚損性等の護れた性 をもっ消火剤であり,博物館 美術館 デパ…ト 駐車場にいたる公共性の 高い建物やコンビュータ室,通信機器室,航空機,船舶などの消火設備として 幅広く利用されてきた.しかし,オゾン層保護のためのウィーン条約に基づく,
オゾン層を破壊する物質に関するモントリオ…ル議定書において,ハロン系消 火剤はオゾン層破壊物質に指定され,
1992年の第
4回モントリオール議定書締 結国際会議において
1994年
4月
1日以携のハロンの生産を国際的に禁止するこ とが定められた,ハロン以外のガス消火剤として二酸化炭素や窒素などの不活 性ガスによる消火法
1)があるが,消炎濃度がハロン消火剤に比べて著しく高 く,消火設備の作動時に窒息事故が起こるなど,人命安全の見地から問題が生 じている.このため ハロン治火剤に代わる新消火法を確立し,その設備開発 が忽務になっている
2).研究代表者らのこれまでのプーん火災の空気流入機講
の調査
3) '"'‑'5)によると 火炎基部からの空気流入が火炎の付着や安定性に
需要な役割を果たしている.したがって,火炎基部からの空気流入を絶つこと が消火に極めて有効と推測される.
現在行われている消火方法は大きく分けて 1 )散水沼火(スプリンクラー,
ミスト消火も合む).
2)ガス消火
3)抱消火に分類されるが,本研究では
2)と
3)を組み合わせた新しい消火方法を提案する.すなわち,図
1のモデルに 示すように,水性のバブル内に不活性ガスを閉じ込めてこれを火炎基部に集中 させることで効率的に消火し,かつ不活性ガスの濃度を下げて安全性の高い消 火を実現させようとするもので、ある.以上の状況を踏まえ,本研究の目的を次 の二項に置く.
1 ).平成立年度 不活性ガスを合む起泡性水性フィルム消火装置を制作し,
不活性ガスの種類,ガス流量,水流量をいろいろ変化させて消火実験を行い,
最適な消炎条件を明確にする.
2)
.平成
12年度 消火過程を高速度ビヂオカメラで観察し,気泡の崩壊と不
活性ガスの火炎への流入過程を調べ,消炎機構を明確にする.
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研究綴織
研究代表者 伊 藤 昭 彦 〈弘前大学理工学部教授〉
研究経費
平 成 11年度 平 成
12年度
1
,
800千円
1
,
100千円 計
2,
900千円
研究発表
学術誌等
(1) A. Ito
,
A. Narumi,
T. Konishi,
G. Tashtosh,
K. Saito,
C.J. Cremers,
The Measurement of Transient Two‑Dimensional Profiles of Velocity and Fuel Concentration over Liquids, ミ 1 '
ransactionof AS主 主
E,
Journal ofheat transfer,
Vol. 121,
No. 2,
(1999),
pp.413‑419.(2) G. Tashtosh
,
K. Saito,
C. J. Cremers,
T. Konishi,
A. Ito,
Measurement of Three‑Dimensional Flow ( Gas and L同uid)structure Generated by a Spreading Flame over n
・
Butanol,Proceedings of the Fifth International Symposium on Fire Safety Science, 1999.( 3 ) 伊藤昭彦,島崎真一,大波多幸司,
小型プール火災の火炎基部構造と空気流入機構,日本火災学会論文集,
第
50巻,第
1号 ,
(2 0 0 0),
pp. 13・
22. (4)伊藤昭彦,凶雄一,島崎真一
小型プール火災の間欠火炎講造と空気流入機構,日本火災学会論文集,
第
50巻,第
1号 ,
(2 0 0 0),
pp. 23‑30.(5) T. Konishi
,
A. Ito,
K. Saito,
Transient Infrared Temperature Measurement of Liquid‑Fuel Surface: Impilication to Studies on Flame Spread over Propanol
,
Applied Optics,
Vo1.39,
No.29,
(2000),
pp.4278‑4283.(6) T. Konishi
,
G. Tashtosh,
A. Ito,
A. Narumi,
K. Saito,
The Effect of Cold Temperature Valley on Pulsating Flame Spread over Propanol
,
Proceedings of 28th International Symposium on Combustion,
(2000).(7) A. Ito
,
T. Konishi,
K. Saito,
Scale Effects to Flame Structure in Medium ‑Size Pool Fires
,
Proceedings of the Third International Symposium on Scale Modeling,
(2000),
pp.28・
29.口頭発表
( 1 ) 伊藤昭彦,堀本登,
不活性ガスを含む泡消火に関する研究,日本火災学会研究発表会概要集,
(2 0 0 0), pp. 188
・
191 .
( 2 ) 小西忠司,伊藤昭彦,阿部透,長野智和,高松康哉,本田貴寛,
液体燃料表面上を伝ばする火炎先端近傍の三次元渦構造,第
38回燃焼シ ンポジウム講演論文集,
(2 0 0 0),
pp.67・
68.( 3 ) 小西忠司,伊藤昭彦,是永優一,原真二,橋本直樹,馬崎裕士,
ホログラフィおよび赤外線画像解析による二次元温度・濃度分布の同時測 定,第
38回燃焼シンポジウム講演論文集,
(2 0 0 0),
pp.379‑380..出版物
環 境 圏 の 新 し い 燃 焼 工 学 監 修 本 田 尚 士 フジテクノシステム,
pp.121‑‑‑124.
2.
験装置および方法
消火実験用の燃焼室および不活性ガスを含む気泡発生装置の概略を図 2に示 す.燃焼室は幅
10 0 c m,奥行き
10 0 c m,高さ
15 0 c mの耐火壁で作 られており,側面の一面が透明なアクリル板で内部の様子が観察できるように している.気泡の生成は界面活性剤を含む水(市販の合成界面活性剤 3 % 水溶 液)と消火ガスを混合させ,泡ヘッドより噴射させた.消火ガスは,窒素,二 酸化炭素,イナージェンガス
(52~
5 4 % N 2,
8~
9 % CO 2,
4 0~
4 4 % Ar)および比較のための空気の
4種類とした.消火ガスの流量はデジタルフロ ーメータで測定した.液流量はあらかじめポンフ出力に対する液流量を測定し,
この流量校正曲線より所定の流量に設定した.消火実験は直径
20 cm容器の 液体燃料プール火災を対象にし,燃焼室を開放した状態
(open状態)と閉鎖し た状態
(closed状態)の両方について行った.バブルは直接火炎に照射せずに,
図
3に示すように落下位置を容器より約
15 cm離して行った.実験はプール 火災がほぼ定常になった後 バブルを噴射し消火するまでの時間とその様子を 高速度ビデオカメラで測定した.本実験では比較のために
closed状態での二 酸化炭素のみによる消火実験も行った.
3.
実験結果および考察
3. 1
消火時間への液流量の影響
図
4はガス流量を
60l /
min一定として 液流量を変化させた場合の消火時間 と液流量との関係を,燃焼室開放と閉鎖の状態を比較して示している.いずれ のガスにおいても液流量が増加するほど消火時間は減少するがある液流量
(3.5l /
min)以上になると消火時間は液流量にほとんど依存しなくなる.燃焼室開放 状態と閉鎖状態との相違は,液流量が小さく消火までに要する時間が長い場合 に現れる.これは,燃焼時間が長い場合に限って室外からの酸素の流入の影響 が現れるためと考えられる.消火時間の最も短い二酸化炭素を含む泡消火では 両者の差はほとんどない.
3. 2
消火時間へのガス流量の影響
燃焼室閉鎖状態で,液流量を
3.751/min一定とした場合の消火時間とガスの
実験装置概略図
図
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100cm
界面活性弗 j 濃度
3.5%図3 燃焼容器と泡の落下位置
85cm
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消火時間とガス体積流量との関係 図 5
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ガス体積流量
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体積流量との関係を図 5に示す.なお,燃焼室解法状態の結果は閉鎖状態のそ れとほとんど差違は見られないので,以下では閉鎖状態のみの結果を示す.消 火ガスの体積流量が増加するほど消火時間は減少するが,ある流量以上で一定 値に近づく.ガス流量が
1001/minで消火時間が増加に転じているが,この原因 はガスの噴出速度が大となり気泡が有効に生成されずに一部はガスの状態で噴 出したことによると推測される.
図
6と
7は,消火までに要した総ガス量と総液量をガスの体積流量を横軸に とって示している.図 6より ガスの体積流量が小さい方が消火までに要した 総ガス量は少ない.一方,総液量は消火時間の短いほど少なくてすむので,ガ スの体積流量が大きい方が有利である.これらのことを考え合わせると消火に 最適な液流量とガス流量の組み合わせが存在する.本実験では,
r夜流量約
4l/min
,ガス流量約
80Uminの条件が最適といえる.二酸化炭素を消火ガスと した場合,この条件での消火に要した水は
0.41,ガス量は約 71であり,消火 時間は約
6秒である.これを燃焼室の容積から換算した消炎濃度は約
1. 7%と なる.表
1は燃焼室閉鎖状態での二酸化炭素のみによる
10回の消火実験の結果 を示したもので,平均の消火時間は
101秒,消火までのガス量は 1471,これ に対する平均の消炎濃度は
23. 9%となる.二酸化炭素のみのガス消火と泡 消火を比較すると,泡消火による二酸化炭素の相対的な消炎濃度はガスのみの 場合の約
1/15と大幅に下げることが可能となる.
3. 3
消火過程の機構
本実験で、行った
4種類の消火ガスのうち,最も消火効果の高い二酸化炭素をふくむ泡消火の様子を空気のそれと比較して図 8と図 9に示す.図中の時間は泡
を噴出した後の時間経過を表す.二酸化炭素の場合泡が火炎に近づく (0.8~ 1. 6
sec)と泡が火炎基部に直接ふれていないにもかかわらず 火炎は容器の中心に 向かつて後退し,泡が液面を覆う以前に消火する.これは,泡が火炎に接近し てはじけると,内部の二酸化炭素が火炎基部から流入したことによると推察さ れる.
ガスが火炎面に流入するときの速度はこれまでに調査したプール火災の火炎基 部の流れ場からおよそ O. 3 ‑ ‑ ‑O. 5
m / sと推定される 5 ).
泡内部のガスが空気では,泡が火炎面に接近しているにもかかわらず火炎はな
かなか後退せず,泡が液面全体を覆った後に消火する.
図 6 総液量とガス体積流量との関係
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ガス体積流量
(1/min)図
7総ガス量とガス体積流量との関係 X
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1 二酸化炭素によるガス消火と泡消火の比較 二酸化炭素によるガス消火
RUN消火時間
(sec)ガス総量 (1) 濃度(% )
1 75 112 18.2 2 138 207 33.7 3 75 112 18.2 4 124 151 24.5 5 93 139 22.6 6 83 124 20.1 7 100 150 24.4 8 132 198 32.2 9 100 150 24.4 10 90 130 21.1 101(sec) 147 ( 1)二酸化炭素を含む泡消火 │平均値
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4.
まとめ
不活性ガスを含む泡消火の実験を行い,以下の知見を得た.
1 ) ガス研晶一定の条件での消火時間同衡定量の増加とともに減少するカミある流量以 上で一定になる
o‑2)
j 夜流量一定の条件で、の消火時間はガ、ス研晶の増加とともに減少するが、あるガス流 量以上で一定となる。
3)
上記の
1)と
2) か ら 、 消 火 時 間 が 最 小 と な る 最 適 な 水 流 量 と ガ ス 流 量 が存在する。
4 ) 気泡内の不活性ガスとしては二酸化炭素が最も消火時間が短く、消火の効 率が高い。
5 ) 本実験での二酸化炭素のみでの消炎濃度が約 24%であるのに対して、泡消火によ る二酸化炭素の消炎溺支は 2‑‑‑5%に被かする。
ω 献す火炎に近づくと崩壊して,内部の羽舌性ガスがおよそ O . 3 ‑ ‑ ‑ 0 . 5 m /
sの 速度で火炎面に流入する.利舌性ガスのが
Fレ入により火炎附あ旦し消火に至る.
以上のことから、羽舌性ガスを含む泡消火法は羽舌性ガスのみの消火に比べ消炎濃度を大
幅に下げることが可能で、人体への安全性州]上することカミ磁忍された。材汗究で得られた
成果を基本にして,平成
13年度からガ、スフォーム消火装置の製品開発が民間企業との共同
砂院として開始することになった.
参考文献
( 1 ) 飼ほか 5 名,ガス系消火剤放出実験における平行濃度その 1) ~その 3
日本火災学会研究発表会概要集,
246 ‑259 (1 9 9 5)(2)
自治省消防庁消防研究所 ハロン代替物質の消火性能評価に関する研究委 員 会 報 告 (
1 9 9 5)(3) Venkatesh
,
S.,
Ito,
A.,
Saito,
K.. and Wickman,
1. S.,
26th Symposium (Inter ‑
national) onCombustion,
1437・
1443(1996)(4) Ito