研究ノート
算数科の学習が自己効力感に与える影響の一考察
―小学校4年「わり算の筆算」の単元を通して―
創価大学教職大学院 教職研究科教職専攻 山 本 泰 寛
要 約
算数科の学習が自己効力感に与える影響を検証するため,自己効力感の向上に影響 を与える情報源を取り入れた指導計画を作成し,実習校で授業実践を行った。その 後,東京家政大学の福井らが作成した児童用一般性セルフ・エフィカシー尺度(安心 感,チャレンジ精神の2因子)を用いて単元前後の自己効力感を測定した。対応のあ る
t
検定を行ったところ,クラス全体では安心感の尺度において有意な差が見られ た。また,男子では2つの因子と合計得点において有意な差が見られた。その後安心 感の得点が大きく向上した児童を抽出し,担任教諭に児童の見取りのインタビューを 行って分析した結果,算数科の学習が,自己効力感の向上に影響を与えたことが示唆 された。は じ め に
バンデューラは,信念についての研究で自己効力感(self-efficacy)という概念を提 唱した1。自己効力感とは,「ある結果を生み出すために必要な行動がどれほどできる か」という見込みのことである。いま,我が国と他国の間では,TPP参加の是非をめ ぐる議論,隣国との歴史認識の軋轢,円高の進行による日本企業への打撃などから示 唆されるように,高度で複雑な問題が山積している。国内に目を向けても,2011年3 月11日に発生した東日本大震災ならびに福島第一原子力発電所の事故により,我々は 答えの見えない多くの困難に直面している。そのような中でも,誤った情報に振り回 されず事実に基づき客観的に判断・行動し,時には失敗をしたり他者から否定をされ たりしようとも,強い自己効力感を持ち,諦めず何度も挑戦していく態度を持つこと が,問題の解決に向けて大切なことであると考える。
キーワード:自己効力感,問題解決学習,算数科,遂行行動の達成
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教職大学院に入学してから,自己効力感を学校教育で育てることができるのか,特 に,算数科でどのような実践ができるのかを日々考察してきた。その結果,子ども達 の問いを生かし,考え方を交流し合う問題解決学習が実践されることで,児童の自己 効力感が高まると考えた。
平成20年に改訂された小学校学習指導要領の中教審答申2では「数学的な思考力・
表現力は,合理的,論理的に考えを進めるとともに,互いの知的なコミュニケーショ ンを図るために重要な役割を果たすものである。このため,数学的な思考力・表現力 を育成するための指導内容や活動を具体的に示すようにする」と書かれている。そし て改訂された学習指導要領3の算数科の目標には「算数的活動を通して,数量や図形 についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,日常の事象について見通しを 持ち筋道をたてて考え,表現する能力を育てるとともに,算数的活動の楽しさや数理 的な処理のよさに気付き,進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる」と書 かれている。このことから,算数科教育においては事実を基にコミュニケーションを 行ったり,問題に遭遇したときに適切な見通しを持って考えたりする子どもを育てる ことが求められるようになったと考える。
しかし,そのような教育は我が国で幅広く行われているとはいえないと考える。田 中は,基礎的・基本的な知識,技能の習得のため,ドリルや100ます計算などのよう な,思考を簡略化して計算の速さを競ったり,思考を簡略化し正解のみを求める学習 ばかりさせたりしている学校が存在する現状に警鐘を鳴らしている4。また,問題解 決学習でも,「問題把握」「自力解決」「練り上げ」「まとめ」という型を意識するあま り,子どもが問題を意識化しないまま教師主導で授業が展開されることで,多くの子 どもが消化不良になることを危惧している5。
問題解決学習のあるべき方向性について,鈴木6は「多少間違えたとしてもどこが 誤りだったのか反省した上で,くじけずに思考を続け,やがて正解にたどり着いた ら,自らの思考過程を必要にして十分な言葉や式,図などで表現できる力こそ,目指 すべきものである。そのような訓練を続ければ,正しい思考と誤った思考の区別をつ ける判断力も同時に身につく」と述べている。また,坪田は「本当に子どもが疑問を 感じたり,問題意識をもったり,追究意欲をもって立ち向かうことによって生まれる 問いや,解決方法が紹介される場を創ることなのであり,先生は,子どもの小さい表 現を拡大したり,数学的な価値のある稚拙な表現を洗練させていくことが仕事なので ある」と述べている7。
また,シャンクが,容易な目標と比較すると,困難な目標が児童の動機づけを高め ることを報告している8ことから,設定する単元は児童にとって一定の困難があるも のが望ましいと考える。そこで,小学生にとって問題解決に困難がともなうと予想さ れるわり算の筆算の単元で授業実践を行った。
本研究は,自己効力感についての文献研究ならびに,自己効力感の向上に影響を与
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える情報源を取り入れて行った実習校での授業実践を分析し,考察したものである。
本稿では,Ⅰで自己効力感の概念と,自己効力感の変容に影響を与える情報源,そし て学業達成場面において自己効力感を育む方法について紹介する。Ⅱでは自己効力感 の変容に影響を与える情報源を取り入れて行った実習校での授業実践について述べ る。Ⅲでは単元前後の分析の方法と結果について述べる。Ⅳでは分析の結果に基づく 考察と課題について述べる。
Ⅰ 自己効力感について
1 概要
バンデューラは,行動変容の先行要因としての予期機能には「効力予期」と,「結 果予期」の2種類があるとしている9。両者の関係を表したのが以下の図1である。
「効力予期」とは,ある場面における行動をどれだけ達成できるかという予期のこ とであり,「結果予期」とは,起こした行動がどれだけの結果を生み出すかという予 期のことである。例えば,「英語を習得する」という結果に対して,「英語を一生懸命 勉強する」という行動を起こす。このときに,「英語を1日5時間は勉強できるだろ う」と,行動がどれだけできるか考えるのが効力予期で,また「英語をたくさん勉強 すれば,英語が習得できるようになるだろう」と,行動をした結果どうなるのかを予 期するのが結果予期である。自分の効力予期を認知したとき,その人には自己効力感 があるという。効力予期と結果予期の高低によっておこりやすい状態を示したのが以 下の表1である。
表1 結果予期と効力予期の高低の組合せによって起こりやすい状態 結果予期
高 低
効力予期 高 積極的に自信を持って適切な行動がで きる
愚痴を言ったり,その状況を何とか変 えたりしようとする
低 劣等感が強くなり,自己否定状態にな る
あきらめて無気力になり,時には抑う つ状態になる
効力予期 結果予期
人 行動 結果
図1 効力予期と結果予期の関係
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効力予期も結果予期も高ければ,積極的に自信を持って適切な行動ができるように なる。効力予期が高く,結果予期が低ければ,行動に対して結果が結び付かないと考 え,愚痴を言ったり,その状況を何とか変えたりしようとする。逆に,効力予期が低 く,結果予期が高ければ,「ちゃんとやればよい結果が得られるのに,自分にはそれ ができないのだ」と考え,劣等感が強くなり,自己否定状態になる。結果予期も効力 予期も低ければ,自分はなにをやってもだめだと考え,あきらめて無気力になり,時 には抑うつ状態になる。
学校教育では,学業達成場面で自己効力感を育むことが,学業の成績と動機づけに 影響を及ぼすことが明らかになっている10。また,社会的スキルの自己効力感が育ま れることで,実際の社会的スキルも向上することも報告されている11。そして,自分 の進路の決断に対する自己効力感が育まれることで,実際の進路選択行動に積極性が 増すようになることも報告されている12,13。また,カウンセリング場面では自己効力 感が向上することで,不安の軽減14,抑うつの改善15,チックの改善16,不登校からの 回復17がもたらされることが報告されている。
2 自己効力感の変容に影響を与えるもの
バンデューラは,自己効力感の変容のための情報源には,1.遂行行動の達成,
2.代理的経験,3.言語的説得,4.情動的喚起の4種類があるとしている18。遂 行行動の達成とは,自分で実際に行い,成功体験をもつことである。代理的経験と は,うまくやっている他者の行動を観察し,「自分にもできるだろう」と感じる事で ある。言語的説得とは,「あまりの出るわり算の筆算の仕方を見つけることができ る」というように,自己強化や,他者からの説得的な暗示を受けることである。最後 に,情動的喚起とは,「今日は気分がいいからうまくやれそうだ」というように,自 分の心理的な反応の変化に応じて自己効力感を喚起することである。
佐伯は,「自分が外界の変化をもたらす原因となり得ることを学ぶには,まず,自 己の可能性に関して,現実的な眼でとらえることを知らなければならない」と論じて いる19。このことから,自己を見つめないまま闇雲で根拠のない見通しを立てるよう では自己効力感が育たないと考える。ゆえに,何をどれだけできるのか,またできな いのかを適切に見極め,明確な自分なりの目標をもつことが肝要である。そして,目 標に向け粘り強く行動することで,自己効力感が育まれ,外界に働きかけ,変化をも たらす主体となっていくことができる。
3 学業達成場面で自己効力感を高める方法
児童生徒の学業達成と自己効力感との関連を明らかにしようという試みの代表的な 研究者に,シャンクがあげられる。シャンクは児童生徒の学業達成場面で,自己効力 感の向上操作を数多く行った。有効であった操作方法について小田がまとめたもの20
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が次の4つの方法である。
(1) 目標の設定
「42ページ計256問の教材を7回のセッション終了までに学習する」というような,
実現に時間がかかる目標を設定するよりも,「1冊あたり6ページの課題を7冊,各 セッションごとに学習する」というような,短期間で達成できる身近で具体的な目標 を設定するほうが,自己効力感が向上しやすいことが報告されている21。目標の質に ついても,容易な目標よりも困難な目標のほうが,児童の動機づけを高めることが報 告されている22。さらに,目標を持った児童に「君ならできる」と言語的説得を与え ることも効果的であるとしている23。
(2) 帰属フィードバック
「君はよく頑張っているね」というような努力に対してのフィードバックは,児童 に成長を実感させるとともに,動機づけを維持し,学習への自己効力感が向上するこ とが報告されている24。また,「君はこの課題が得意なんだね」というような,結果に 対してのフィードバックは更に効果的だとしている25。これらを総合して小田は「少 し努力しただけで,これだけできたのだから,君にはもともとすごい才能(素質,見 込みなど)があるんだ。もう少しやったらきっともっとすごいだろうね。1か月前は このぐらいの力だったけど,この1か月でこれだけの進歩があった。この調子で頑 張っていくと,また1か月後はさらにもっとよくできるようになるだろうね。楽しみ だね」といったようなフィードバックが望ましいとしている26。
(3) モデリング
授業場面における児童のモデリング27は,自己効力感の向上に影響を示すことが明 らかになっている。大人が問題の解き方を大きな声で言語化しながら解く様子を観察 した児童は,そうでない児童に比べて自己効力感が向上することが報告されてい る28。また,問題を困難なく解く優等生よりも,困難を乗り越えながら問題を解いて いく子どもを観察するほうが自己効力感の向上することが報告されている29。
(4) ストラテジーの利用
ストラテジー30の言語化の練習をしたり31,ストラテジー使用のモデリングを行った りすること32は,自己効力感の向上に影響を与えることが報告されている。
Ⅱ 授業実践について
以下,授業実践の対象,期間,単元指導計画,授業のステップについて述べる。
1 対象,期間
本研究の対象は,都内の小学校の第4学年1組の男子11名,女子14名,計25名であ る。期間は,実習研究期間内の平成23年6月13日(月)から27日(月)までの全10時間で
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ある。
2 単元
(1) 単元名 数と計算領域「2けたでわるわり算の筆算」
(2) 単元指導計画
3 実践の方法
1単位時間の授業の主なステップと,獲得できると予想した自己効力感向上の情報 源,自己効力感向上の具体的な方法を表したのが以下の表である。
小単元 時 学習活動
2けたで わるわり 算(1)
1 (何十)÷(何十)で商にあまりが出ない除法の仕方を考える。
2 (何十)÷(何十)で商にあまりが出る除法の仕方を考える。
3 (2位数)÷(2位数)の筆算の仕方を理解する。
除数と被除数をおおよその数とみて仮商を立てる練習をする。
4
仮商が大きすぎた場合の修正の仕方を考える。
除法について成り立つ関係を理解する。
仮商の修正を含む筆算の手順を理解する。
2けたで わるわり 算(2)
5 6
(3位数)÷(2位数)=(1位数)で,商が立つ場合,立て直す場合の筆算 の仕方を考える。
(3位数)÷(2位数)=(2位数)の場合の筆算の仕方を考える。
商の1の位に0がたつ筆算の仕方を考える。
わり算や かけ算の きまり
7
除法では被除数と除数に同じ数を掛けたり割ったりして計算しても商が変 わらない事を理解する。
乗法での被乗数と乗数と積の関係を調べる。
復習 8 既習事項の確認を行う。
評価 9 評価テストを行う。
10 テスト直しを行う。
表3 授業のステップと主な情報源および方法
ステップ 子どもの様子 教師のかかわり 主な情報源 方法
(1)文 章 題 を 提 示 し,問題意識を持 たせ,解決に向け た見通しを話し合 う。
今までの手順では解 け な い 文 章 題 に 対 し,問 題 を 焦 点 化 し,既習事項を使え る か を 話 し 合 っ た り,解き方の見通し を出し合っている。
問題を見て気付いた ことや,今までの問 題と違うところ,お よび使えそうな既習 事項を確認したり,
整理をする。
言語的説得 目標のの設 定
(2)自 力 解 決 を 行 う。
(1)で出し合った考 え方を参考にしなが ら,文章題を1人で 解いている。
行き詰っている児童 に対しては励ました り,筆算のアルゴリ ズムを確認したりす る。
達成体験 言語的説得
帰属フィー ドバック
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Ⅲ 分 析
1 分析の方法
本研究での授業実践で,単元前後において,筆者が作成した算数についてのアン ケート(以下,算数アンケート),および,北海道医療大学の坂野らが作成した一般 性セルフ・エフィカシー尺度33を,東京家政大学の福井らが児童用に標準化した,安 心感とチャレンジ精神の2つの因子で構成された児童用一般性セルフ・エフィカシー 尺度(以下,GSESC-Rと略す)を用いて,算数についての意識調査と自己効力感の 測定を同時に行った。質問項目は表4,5の通りである。
単元後に行った
GSESC-R
の記述に不自然な点が見られる児童が2名(男子1名,女子1名)見られた。そのため,2名を対象から外し,算数アンケートおよび
GSESC -R
の平均値と分散を算出し,単元前後で対応のあるt
検定を行った。また,単元後の 点数が単元前に比べて,GSESC-Rの安心感,チャレンジ精神のどちらかの因子が4 点以上上昇または下降した児童を抽出し,担任教諭(以下,担任と略す)に児童の見(3)友だち同士で比 較検討し合う。
教室を自由に移動し ながら,多くの友達 と ノ ー ト を 見 せ 合 い,解き方を聞き合 うことで,考え方や 解き方の手順を交流 している。交流した 後は自分のノートに 加筆や修正を加えて い る 児 童 も 見 ら れ る。
活動中は基本的に話 さず,児童の活動を 観察する。児童から 質問があれば応答す る。
代理的経験 モデリング
(4)集団で解き方を 発表し合う。
発表した解き方を別 の子どもが補足した り,質問を行ってい る。
児 童 の 発 言 を も と に,筆算の手順を板 書する。
代理的経験 モデリング ス ト ラ テ ジーの使用
(5)類 題 の 提 示,問 題意識の共有,自 力解決を行う。
(1)(2)と同じような 活動を行っている。
(4)で整理した筆算 の手順を確認してか ら学習活動に入る。
達成体験 ス ト ラ テ ジーの使用 目標の設定
(6)2〜3名 の 児 童 を指名し,使う言 葉,手順,論理性 に気をつけて発表 させる。
友達の発表を聞いて 分からない事を質問 したり,補足を説明 したりしている。
児童の発表で良かっ た部分を具体的に取 り 上 げ 賞 賛 し た り,1時間で学んだ ことを確認する。
達成体験
(発表者)
代理的経験
(聴者)
ス ト ラ テ ジーの使用 モデリング
(7)筆算の習得に向 け,練習問題を解 く。
児童同士で教え合い を行っている。
つまずいている児童 に対しては個別に指 導を行う。
達成体験 言語的説得
ス ト ラ テ ジーの使用 帰属フィー ドバック
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取りのインタビューを行った。その後,得られた回答を,名古屋大学の大谷が開発し た
SCAT(Steps for Coding And Theorization)
34を用いて分析した。SCAT
とは,マトリクスの中にセグメント化した質的データ(今回の場合はインタ ビューの回答)を記述し,そのそれぞれに,(1) データの中の着目すべき語句
(2) それを言いかえるためのデータ外の語句
(3) それを説明するためのテクスト外の概念
(4) そこから浮き上がるテーマ・構成概念
の順にコードを付す,(1)から(4)までの4ステップのコーディングと,(4)で付した コードを繋ぎ文章化することでストーリーラインを記述し,そこから理論記述を行う
表5 児童用自己効力感測定尺度(4件法,各因子36点満点)
安心感
・いいえ=4点
・どちらかといえば いいえ=3点
・どちらかといえば はい=2点
・はい=1点
(1)ほかの人と比べて,心配することが多い。
(2)なにかをするとき,うまくいかないのではと心配することが 多い。
(3)小さな失敗について,くよくよ考える方だ。
(4)失敗したことやいやなことを思い出して,暗い気持ちになる ことがよくある。
(5)どうしたらいいかわからなくて,まごまごすることがよくあ る。
(6)なにかをやろうとするとき,色々と考えてしまう。
(7)なにかをやったあと,失敗したと思うことが多い。
(8)思っていたことと違うと,どうしていいかわからなくなる。
(9)ひっこみじあんなほうだ。
チャレンジ精神
・いいえ=1点
・どちらかといえば いいえ=2点
・どちらかといえば はい=3点
・はい=4点
※(14)と(16)は逆転 項目
(10)やりたくないことでも,一生懸命やる。
(11)どんなことでも,どんどん自分から挑戦していく。
(12)計画を立てるときは,きっとできると思っている。
(13)なにかをやろうと決めたらすぐとりかかる。
(14)ものごとを自分からすすんでやるのは,苦手だ。
(15)困ったことでも,なんとか乗り越えられると思う。
(16)目標を立てても,その通りにできない。
(17)友達よりも,ものごとをたくさん覚えることができる。
(18)自分は結構できるんだと思っている。
表4 算数についてのアンケート(4件法,16点満点)
(1)あなたは,算数がとくいですか。
(2)あなたは,算数が好きですか。
(3)あなたは,友だちの考えを聞くのは好きですか。
(4)あなたは,友だちと協力して学習を進めるのは好きですか。
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質的研究の手法である。分析の過程が明示されており,分析後のリフレクションを行 いやすいという利点がある。
2 分析の結果
(1) クラスにおける単元前と単元後の
GSESC-R
の比較 分析結果は以下の表6の通りである。男子は,単元後の安心感,チャレンジ精神,および自己効力感合計の得点が,単元
前に比べ平均値に有意な差が見られた。女子ではいずれの項目でも平均値に有意な差 は見られなかった。クラス全体では自己効力感合計の得点において有意な差が見られ た。2因子別に見ると,安心感における得点の変化が大きいことが示唆される。
(2)
SCAT
を用いた質的データの分析まず,得点の変化が大きかった児童
F,S,を抽出(表7)し,
1.児童が安心感を持って学校生活を送っていると担任が感じるのはどのようなとき か
2.児童にチャレンジ精神があると担任が感じているのはどのようなときか 3.そして,それらは授業実践の前後でどのように変化したか
との内容で,2011年11月3日にインタビューを行った。その際
GSESC-R
では1回目 の記述に不自然な点があり,標本から除外した児童O
についても,担任から多くの 回答を得られたので,児童F,S
とともにSCAT
で分析を行った。以下,表8にSCAT
の理論記述を記す。(1)から(4)のコーディングとストーリーラインについては 付録を参照されたい。表6 1組の GSESC-R の平均値と対応のある t 検定の結果
単元前 単元後 t値
(†:p<.5)
平均 SD 平均 SD
安心感
クラス全体 (n=23) 24.78 6.17 26.22 5.58 2.02 男子 (n=10) 23.10 3.99 25.40 3.41 2.73†
女子 (n=13) 26.08 7.16 26.85 6.72 0.72 チャレン
ジ精神
クラス全体 (n=23) 24.83 5.26 25.70 4.98 1.36 男子 (n=10) 22.60 4.94 25.40 4.84 3.38†
女子 (n=13) 26.54 4.83 25.92 5.08 −0.86 自己効力
感合計
クラス全体 (n=23) 49.61 10.53 51.91 9.45 2.13†
男子 (n=10) 45.70 7.11 50.80 7.25 4.40†
女子 (n=13) 52.62 11.68 52.77 10.77 0.11
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Ⅳ 考察と課題
1 考察
クラス全体では,GSESC-Rの分析において,単元後の自己効力感合計の得点の平 均点が,単元前に比べ有意に上昇したことから,児童の自己効力感が向上したと考え る。また,男子はすべての項目に有意差が見られたことから,男子にはより学習の効 果があったと考える。
次に,SCATで分析した児童
F,S,O
について述べる。Fについては,表8で示し た理論記述において,能動的に学習する様子が一部の場面で見られ,さらに自己管理 ができるようになったことが示されている。Oについても,少人数では能動的に学習 するようになり,また,ノートの記述の質が向上したことが示されている。そして,F,O
の両名が学芸会の演技に一生懸命取り組むようになったことが示されている。以上のことから,F,Oの両名については,算数での学習が児童の自己効力感に影響 を与えたことが示唆される。Sについては,GSESC-Rの得点が上昇しているが,面 倒なことはやろうとしないうえ,生活態度が雑なままである。このことから,GSESC 表7 算数アンケートおよび GSESC-R での,児童 F,S,O の単元前後における得点の変化
児童 性別 算数アンケート GSESC-R
好き(4点満点) 得意(4点満点) 安心感(36点満点) チャレンジ精神
(36点満点)
F 男 1→1(±0) 1→2(+1) 16→21(+5) 19→19(±0)
S 女 3→2(‐1) 2→3(+1) 27→34(+7) 26→28(+2)
O 女 2→2(±0) 3→3(±0) 19(単元後) 21(単元後)
表8 理論記述
児童 理論記述
F
・先行学習をしたり,生活と関わりがある単元では,知的好奇心が喚起され能動的 に学習するようになった。
・相手の説明により理解がなされれば能動的に学習する特性があった。
・自己管理ができるようになり,宿題にも取り組むようになった。
・学芸会の演技に一生懸命取り組むようになった。
S
・何でも買って出るような積極的な態度をとる反面,面倒なことはやろうとしな い。
・宿題に取り組むようになったが,生活態度は雑なままである。
O
・小人数学級だと,発言のチャンスが増え能動的になり算数の能力が向上した。
・失敗を恐れる気持ちがある。
・教師の正のストローク(いたわりの言葉や態度)により安心感が向上している。
・ノートの記述が,乱雑なものから丁寧なものへと質的に向上した。
・学芸会の演技に一生懸命取り組むようになった。
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-R
で測定した自己効力感と,実際の態度に乖離があると考える。2 課題
検定を行った算数アンケートと
GSESC-R
については,平均値に有意な差が見られ た項目はあったものの,母集団が少なかった。さらなる正確な検証を行うべく,より 多くの集団からデータを採取する必要がある。また,男子の数値が有意に上昇したの は,単元前の数値が低かったことも一因であると考える。男子の数値が女子の数値に 近づき,女子の数値が横ばいのままであることから,単元前と単元後では,男女差が 小さくなり,全体的に自己効力感が平均化している。今回の実践では,自己効力感が 低い児童を普通のレベルにまで引き上げられたが,今後は普通のレベルを全体的に引 き上げて行くことが課題である。さらに,実施したインタビューも児童ではなく授業 実践から時間が経過して担任教諭に実施したものであるため,児童の見取りは指導者 からの視点のみであることにも留意せねばならないと考える。このため,対象の児童 や他の教員からもインタビューを行い,より幅広く質的データを集める必要がある。そして,児童
S
のように,高い自己効力感があるにも関わらず,望ましい学習習慣 が確立されていないケースも存在する。このため,児童の自己効力感と実際の態度が 乖離していないかどうか,児童の記述,発言,評価テストなどから検証する必要があ る。注
1 Bandura, A.(本明,野口訳)『自己効力感(セルフ・エフィカシー)の探究』社会的学
習理論の新展開,1985,金子書房
2 中央教育審議会答申『幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導 要領等の改善について』2008
3 文部科学省『小学校学習指導要領』2008
4 田中博史『まずは「聞き取り」+「再現する」活動を小刻みに繰り返すことから(特集 新しい評価で子どもが変わるか)−(算数・数学科で「表現力」をどう評価するか)』現 代教育科学 53(12),2010―12,明治図書出版,pp.74―77
5 田中博史『まず子どもにやさしい授業づくりを始めることから―子どもたちの真の問題 解決を支える教師の役割を考えて―』全国算数授業研究会(編集)算数授業研究シリー ズ
XIII
今,算数があぶない―本当の問題解決の授業を目指して―,2003,東洋館出版 社,pp.148―1576 鈴木将史『新学習指導要領と算数教育』創大教育研究,20,2009,p.22 7 坪田耕三:前掲5『共に学ぶことの価値の再考』p.23
8 Schunk, D. H. : Developing children’s self-efficacy and skills : The role of social comparative in-
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formation and goal setting, Contemporary Educational Psychology,8, 1983,pp. 76―86 9 Bandura, A. : Self-efficacy : Toward a unifying theory of behavioral change, Psychological Re-
view, 84, 1977,pp. 191―215
10 小田美穂子『学業達成への援助』坂野雄二・前田基成(編著)セルフ・エフィカシーの 臨床心理学,2002,北大路書房,pp.188―203
11 戸ヶ崎泰子 前掲10,『社会的スキルの獲得』pp.166―177
12 下村英雄『中学校におけるコンピュータを活用したキャリアガイダンスが進路自己効力 感に与える影響』教育心理学研究,55,2007,pp.276―286
13 浦上昌則:前掲10,第18章『職業指導』pp.204―217
14 鈴木伸一:前掲10, 第6章『不安のマネジメント』pp.60―71 15 坂野雄二:前掲10, 第7章『抑うつ気分の解消』pp.72―81
16 東條光彦・前田基成『チックに対する認知的変容と症状改善―Self-efficacyを指標とし た治療過程の検討』カウンセリング研究,21,1988,pp.46―53
17 前田基成・坂野雄二『投稿今日非の治療過程におけるセルフ・エフィカシーと行動変容 に関する検討』筑波大学臨床心理学論集,3,pp.45―58
18 Bandura, A.:前掲9
19 佐伯胖『学びを問いつづけて』小学館,2003,p.122 20 小田美穂子:前掲10
21 Bandura, A. & Schunk, D. H. : Cutivating competence, self-efficacy, and intrinsic interest through proximal self-motivation, Journal of Personality and Social Psychology, 41, 1981,pp.
586―598
22 Schunk, D. H.:前掲8 23 Schunk, D. H.:前掲8
24 Schunk, D. H. : Ability versus effort attributional feedback : Differential effects on self-efficacy and achievement, Journal of Educational Psychology, 76, 1983,pp. 1159―1169
25 Schunk, D. H.:前掲24 26 小田美穂子:前掲10
27 対象を観察し,同じような動作,行動をとること。
28 Schunk, D. H. : Modeling and attributional effects on children’s achievement : A self-efficacy analysis, Journal of Educational Psychology, 73, 1981,pp. 93―105
29 Schunk, D. H. : Peer models and children’s behavioral change. Review of Educational Research, 57, 1987,pp. 149―174
30 ここでは,目標をよりうまく達成するためのアルゴリズムや操作を指す。
31 Schunk, D. H. : Verbalization and children’s self-regulated learning, Contemporary Educational Psychology, 11, 1986,pp. 347―369
32 Schunk, D. H. & Gunn, T. P. : Modeled importance of task strategies and achievement beliefs :
−140−
Effects on self-efficacy and skill development, Journal of Early Adolescence, 5, 1985,pp. 247―
528
33 坂野雄二『一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試み』行動療法研究,12(1),1986,
pp.73―82
34 大谷尚『4ステップコーディングによる質的データ分析手法SCATの提案‐着手しやす く小規模データにも適用可能な理論化の手続き』名古屋大学大学院教育発達科学研究科 紀要,教育科学,54(2),2009,pp.27―44
−141−
付録 実習校の担任教諭へのインタビューの分析過程
番号
発話者 テクスト
1 聞き手 実習前に比べ,児童が安心感を持って学校生活を送っていると感じたエピソードはありま したか。
2 担任
いくつかあるんだけど,一番気にしてんのは発表するときに間違えてもいいやと思って発 表している事が,安心感を感じていると思う。一生懸命考えたものだったらたとえ間違え たとしても「それはいいんだよ」というのをわかって発表してくれるのが期待している し,そういう風にしたいと思っている。あとは,人に笑われない,何かをしたときに人に 笑われない,そういうクラスづくりが安心感を感じさせられると思う。
3 聞き手 安心感を持って学校に来ることで,児童の自信に変化はありましたか。
4 担任
この子(F)は安心感を持って発表していた時期があったね。だけどそれは単元によるん だね。得意な所っていうか,なんとなく説明を聞いて「あ,わかった!」みたいなのを感 じたときには彼は一生懸命やるんだけど,だけどそうじゃないと,半分聞いてて半分聞い てないみたい。本当は力があるんだけど,聞いてないせいでできなくなることがあるんだ けど,それをうまくこう,わかったときにうまくこう指名して,「あ,合ってたんだ」み たいな気持ちを感じさせるとうまくいくのはわかっているんだけど,そんなことがこの子 はあったね。
5 担任
この子(F)じゃないんだけど,この子と同じ境遇の子(O)がもう一人いたでしょ。そ の子も同じ単元で,もうすごい!それはT先生もびっくりした。「え,できてるじゃな い」って。この子もやっぱり埋もれちゃう,普段は人数が多いときには。でも人数が少な いといろいろチャンスは回ってくる。それがよくて,「たとえ失敗してもいいんだよ」み たいな事を言って,そのときはよかったのかなと思う。
6 聞き手 その単元はなんでしたか?
7 担任
面積だったかな。それは2組でも,「どうしたのかな?」と思うような子でも効果はあっ たのかもね。もともとはできるんだよ,できなくはないんだよ。この辺(F,O)は。で もゆっくりコースじゃなくなるから,人数がどうしても,できるって思ってる子が多くな るから,人数が少なくならない。もともとそんなに「自分が自分が」っていうタイプじゃ ないから。あと,この子(F)は理科で人体のところでは,普段のあれが,テレビを見て 雑学を仕入れている彼にとっては水を得た魚のように…。だから彼(F)なんかはそうい うところでは安心感て言っていいのかわからないけど,活躍できる場面があれば一生懸命 やるね。
8 聞き手 学習前に比べ,児童が物事に積極的にチャレンジしていると感じたことはありましたか。
9 担任
やっぱり何でも,買って出るね。失敗を恐れることを思うよね。この辺は。それが恥ずか しい(O),意外と平気(S)。でも,面倒なことはやらない。やっぱりそういう気持ちっ て大人でもあるだろうけど,失敗したくはいっていうのは。だからこの子たちは強いね。
失敗したらいやだっていう,何かを挑戦したときに。本当はそういうのをうまく消せるよ うにしてあげたほうがいいんだろうけど,うまくいかないね。
10 聞き手 −やっぱり,自信がある分野だと変わってきますか。
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〈1〉テクスト内の注 目すべき語句
〈2〉テクスト中の語 句の言い換え
〈3〉左を説明するよ うなテクスト外の 概念
〈4〉テーマ・構成概 念(前後や全体の 文脈を考慮して)
間 違 え て も い い や と 思って発表している事 何かをしたときに人に 笑われない事
失敗の肯定 友達を嘲笑しない
失敗を恐れないこと 受容
寛容な学級経営
失敗を気にせず自分の 意見を発表する 友達の失敗を包容する 学級づくり
この子(F)は安心 感 を持って発表していた 時期があった…けど単 元によるんだね 説明を聞いて「あ,わ かった!」みたいなの を感じたときには彼は 一 生 懸 命 や る…そ う じゃないと半分聞いて て半分聞いてないみた い
Fの単元に応じた安心 感
理解したときとそうで ない時の学習意欲の大 きな格差
単元による違い 認知のレベルによる学 習意欲の違い
Fは単元ごとに安心感 を 感 じ て い た 時 期 が あった
相手の説明により理解 がなされれば能動的に 学習する
その子(O)も同じ単 元で,もうすごい!
この子は人数が少ない といろいろチャンスが 回ってくる。
「たとえ失敗してもい いんだよ」みたいなこ とを言って
Oは 人 数 が 少 な い と チャンスが回ってくる 失敗の肯定 助言によ る安心感の向上
集団の人数による違い の効果
正のストローク
Oは小集団だとチャン スが増え能動的になる ことで他の教員も驚く ほど算数の能力が向上 した
教師の正のストローク による安心感が向上し た
こ の 子(F)は…雑 学 を 仕 入 れ て い る 彼 に とっては水を得た魚の ように…。
活躍できる場面があれ ば一生懸命やるね
知的好奇心に支えられ た事前学習による自信 の向上
場面を与えられる事に よる内発的動機づけ
自然学習の量と安心感 のレベルの比例 活躍場面の必要性
Fは自己主張が控えめ であるが,知的好奇心 に基づいた事前学習を していれば水を得た魚 のように学習に取り組 む
活躍できる場面があれ ば能動的になる
何でも買って出る。意 外と平気。
失敗を恐れることを思 うよね,この辺は。
面 倒 な こ と は や ら な い。
進んでやる 失敗への恐怖
積極性 行動の躊躇
何でも買って出るよう な積極的な行動を取る 一方,面倒なことはや らない。
失敗への恐怖や羞恥心 から行動を躊躇する
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11 担任
きっとそうだと思う。みんなそうだと思うよ。だから導入ってホントはやっぱりすごく身 近に感じさせるためになんかできることがあればやるといいのかなあと。もっといろいろ 工夫して。あとはこれかな?
12 聞き手 積極的にチャレンジすることで,児童の自信に変化はありましたか。
13 担任 これはだから,この子(O)はここんとろよくなってきてるよ。ノートの書き方も変わっ てきてるし
14 聞き手 どんな風に変わりましたか。
15 担任
どうでもよかった,みたいなのがねちゃんとやろうみたいなのに一時期そういう雰囲気み たいなのが見えたね。それは算数のきっかけもあるみたい。
16 聞き手 そうですか,引き出すとなると難しいですか。
17 担任
でも彼(F)はおじいさん役だけどいい味だしているんだよ。
18 聞き手 やっばり一生懸命取り組んでいるんですか。
19 担任
うん,もともとそうゆうの嫌いじゃないから,ここんとこ宿題も(やるようになった)
「ゲームやめろ」とか言って(笑)いやほんとに一生懸命計算覚えても,ゲームばっかり やっているから何日間かしていると,「おんなじ事(覚えた内容)また忘れた」って言う の。それを言ってから少し,なんかその気に多少なってくれてるみたいで。「やってもい いんだけどやりすぎるのはよくないよ」って言って。この子(S)の雑さは変わらない。
でも,ちょっと忘れ物とかはしないように頑張っているね。
20 聞き手
でも,僕が見ていても彼(F)の成長は目を見張るものがありました。4週間という短い 期間でしたが。
21 担任
そうだね。でもこの子は1歩進んで2歩下がる,ようなところがあるから。それがずっと 一歩一歩一歩一歩でもいいから,なってほしいんだけど…。決して悪い奴じゃないんだけ どね…。でもなんか,ダメだね,うん。
22 聞き手
たとえば,課題,宿題,問題を出すと思うんですけど,やるまえにどのくらいできるのだ ろうか,という予想を立てると思うんですけど,それが高まった子はいましたか。
23 担任
Fくらいじゃないの。中身によるけど。この子,この二人はすぐ反応しないもん。でもF は反応する。だけどこの二人は忘れててもふつうと考える。だからこの二人は乗せるのに 時間はかかるんだよ。他の子はなんかほら前の日にやったやつを復習してできるとのるん だけど,できないから。顔見てると「何聞いてるの」みたいな(笑)そっからかよって
(笑)ていう風になるから,「それでいいんだよ!」って言ってなんとか乗せる。そればっ かりやってらんないけど。それでなくてもゆっくり進めてるんだけど。あとOさんは,
踊り一生懸命やってるよ。全員何かやる,舞台に出る,せりふがあるのがほとんどなんだ けど,5人が踊りだけ,一人が鐘なんだけど,もう,音楽をかけたら(一生懸命やる)。 最初から一生懸命やったのは,イメージ的にはもじもじやると思ったんだけど,違った ね。セリフ付きでもよかったんだけど。だからそういうのは嬉しいよね。
−144−
導入ってほんとはやっ ぱりすごく身近に感じ させるために
身近な導入 生活と密接に関連した 導入の必要性
生活と関連した導入に より,知的好奇心が喚 起され安心感を感じる ことができる
Oは…ノートの書き方 も変わってきてる
どうでもよかった,み たいなのが,ちゃんと やろうみたいなのに 算数のきっかけもある
無気力,チャレンジ精 神
算数
記述の質的な変化 意欲啓発教科としての 算数の可能性の示唆
ノートの記述が,乱雑 なものから丁寧なもの へと質的に向上
Fはおじいさん役だけ どいい味だしているん だよ
演劇の技術向上 演技力の向上 算数科が一般性自己効 力感に影響を及ぼした ことが示唆される
ここんとこ宿題も(や るようになった)
家庭学習に取り組むよ うになった
時間の管理 自己管理 Fは自己管理ができる ようになり,宿題にも 取り組むようになった Sの生活態度は雑なま まであるが,宿題には 取り組むようになった 自己効力間と実際の態 度の間に乖離が見られ る
この子は1歩進んで2 歩下がる
一歩一歩一歩一歩
成長したあと後退する 持続性
単発的な集中力 集中力が持続しない 継続的な学習の取り組 み
Fは反応する
「そ れ で い い ん だ よ」って言って何とか 乗せる
Fの自己効力感の向上 が示唆される
言語的説得
失敗を重ねることに後 ろめたさを感じている
学芸会では担任の予想 と異なり練習に一生懸 命に取り組んでいた
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ストーリーライン(現時点で言える事)
まず,児童の安心感の向上を感じている時は,失敗を気にせず自分の意見を発表する 時に,担任教師は児童の安心感を感じている。そのための手立てとして友達の失敗を包 容する学級づくりに取り組んでいる。そのような姿が学習後の子ども達にあったのか検 証すると,Fは単元ごとに安心感を感じていた時期があった。また,Fには相手の説明 により理解がなされれば能動的に学習する特性がある。さらに,Fは自己主張が控えめ であるが,知的好奇心に基づいた事前学習をしていれば水を得た魚のように学習に取り 組む。このため,生活と関連し,知的好奇心を喚起できる導入の工夫及び教材研究に取 り組む必要がある。次に,Oについては,小集団だとチャンスが増え能動的になること で,他の教員が驚くほど算数の能力が向上している。彼女の場合は,教師が正のスト ロークによる安心感の向上が見られた。次に,児童が何でも買って出るような積極的な 行動をとるときや,投げやりにならず,誠実に取り組むときに,担任教師は児童のチャ レンジ精神を感じている。逆に失敗への恐怖や羞恥心から行動を躊躇する児童からは チャレンジ精神を感じないと述べている。Fは自己管理ができるようになり,宿題にも 取り組むようになっている。Oについては,ノートの記述が乱雑な物から丁寧なものへ と質的に向上している。また,FとOの両名は,学芸会では担任の予想と異なり練習 に一生懸命に取り組んでいた。以上の事から,O,Fの両名については,算数科の学習 が,自己効力感に影響を及ぼしたことが示唆される。一方で,O,Fの両名について,
集中力が持続しないことを感じている。今後は継続的な学習の取り組みに向けて手立て を考えていく必要があるだろう。一方,Sは,面倒なことはやろうとせず,また,生活 態度が雑なままであることから,自己効力感と実際の態度の間に乖離が見られる。
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