所属専門分野 電子情報工学分野( 松下研究室 )
学籍番号 08674069 氏 名 吉田 信之
論文題目 鉄ヒ素系多結晶超伝導体の臨界電流密度特性
1. はじめに
近年の研究において、超伝導体としては新しい 系統となる鉄を含む化合物が超伝導特性を示すこ とが発見されてきており、 FeAs を含む超伝導体の 中で REFeAsO と AFe
2As
2の組成 (RE: 希土類 , A: ア ルカリ元素) を持つものが発見されている。しか し、粒間の弱結合により電流の流れは不均一とな り、これまでの研究で多結晶REFeAsO の臨界電流 密度J
cは粒間と粒内に分離され、5 K における粒内 のJ
cは 10
10A/m
2のオーダーであり、これに比べて 粒間のJ
cは 10
3倍低くなっていた
1)。工学的応用の ためにも粒間の弱結合の原因を調査し、その改善 が不可欠となっている。本研究では粒間の弱結合 を改善するために作製法やF置換率の違う
SmFeAsO
1-xF
xや、銀を添加したSr
0.6K
0.4Fe
2As
2の 多結晶焼結体バルク試料を用意し、粒間・粒内のJ
cをSQUID 磁力計を用いて評価し、それぞれの要因 が臨界電流密度に与える影響を調査した。また、
内部の結晶構造を調査するため充填率の値を数値 的に求め、その値について考察した。
2. 実験
本研究で評価した試料は 1111 系の SmFeAsO
1- xF
xと122系のSr
0.6K
0.4Fe
2As
2の多結晶バルク試料で ある。
SmFeAsO
1-xF
xはTaシースを用いたPIT(Powder In Tube)法で作製された試料と二段固相反応で作 製された試料を用い、Sr
0.6K
0.4Fe
2As
2は一段固相反 応で作製された試料を用いている。各試料の諸元 を表.1に示す。残留磁化測定の結果から2つのタイ プの遮蔽電流の存在が確認され
2)、粒間の臨界電流
密度J
cglobalと粒内の臨界電流密度J
clocalに分離した。
J
cglobalは残留磁化測定の結果より得られた試料全体
の中心到達磁場と試料のサイズより評価し、J
clocalは結晶粒の中心到達磁場と粒径より評価した。ま た、全体の残留磁気モーメントが粒間・粒内の残 留磁気モーメントの重ね合わせであると考え、残 留磁化測定の結果を用いて充填率Fの値を数値的に 求めた。
3. 結果及び検討
図 1 に残留磁化測定の結果より得られたJ
cglobalと
J
clocalの温度依存性を示す。各試料ともJ
clocalは10
10-10
11A/m
2のオーダーであった。#3, 4ではJ
cglobalを評価することができなかったが、その他の試料 の値は 10
6-10
7A/m
2のオーダーであった。
SmFeAsO
1-xF
xの値を見てみると、作製法の違いに
よりJ
clocalに、F置換率の違いによりJ
cglobalの値に影
響が現れた。PIT法で作製することにより二段固相
反応で作製された試料より高いJ
clocal特性を得られ た。また、F置換率が0.3の場合J
cglobalを評価するこ とができたが、置換率が0.4の場合では評価できな かった。 Sr
0.6K
0.4Fe
2As
2の値を見てみると、銀を添 加していない試料では評価できなかったJ
cglobalが銀 を添加した試料では評価できる値まで向上してい た。しかし、無添加の試料に比べ銀を添加した試
料のJ
clocalの値は低くなっていた。残留磁化測定の
結果を用いて充填率の値を評価したところ、
SmFeAsO
1-xF
xではその値を評価することができな かったが、 Sr
0.6K
0.4Fe
2As
2では銀を添加したことに より充填率の値が向上していた。
表1 : 試料諸元
0 10 20 30 40
106 108 1010
T[K]
Jc[A/m2]
Jclocal
Jc global
#1
#2
#3
#4
#5
#6
図1:
J
cglobalと J
clocalの温度依存性
[ 参考文献 ]
1) E. S. Otabe et: al.: Physica C 469 (2009) 1940-1944
2) A. Yamamoto et: al.: Supercond. Sci. Technol.
21 (2008) 095008
[ 研究業績 ]
(1)電気関係学会九州支部 (2009) (2)応用物理学会 (2008 秋, 2009 春, 秋) (3)低温工学超電導学会 (2008 春, 2009 春, 秋) (4) International Symposium on Superconductivity (2009)
(5)応用物理学会九州支部 (2007 秋, 2009 秋)
(6)低温工学 九州西日本支部研究会(2008)
試料 作製法 Tc