論文審査の結果の要旨
氏名:向 後 隆 章
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:3次元光干渉断層図法でみた急性冠症候群患者における冠動脈壁内マクロファージ集積分布に ついて:糖尿病合併例と非合併例の比較検討
審査委員:(主 査) 教授 松 本 直 也
(副 査) 教授 阿 部 雅 紀 教授 塩 野 元 美 教授 羽 尾 裕 之
本研究は侵襲的検査法であるOptical coherence tomography (OCT)を用いて冠動脈硬化内に存在するマ クロファージ(MΦ)の集積を映像化するという新しい試みを論文化した。OCT はその空間的解像度の高さ から急性冠症候群(ACS)を発症した冠動脈プラークの観察や将来ACSに移行しやすいプラークの特徴を観 察するのに適している。
糖尿病(DM)患者では将来のACSへの移行が非DM患者に比し高いことが分かっている。しかしDM患 者における冠動脈プラーク脆弱化のメカニズムについては不明な点が多く本研究では OCT で観察される MΦの集積についてその臨床的意義を検討した。
研究対象部位はACS患者で左前下行枝の入口部から20mmの範囲にMΦの集積を認めた40例であり それぞれDM群と非DM群に分類した。MΦの同定はOCTにて縞状の影を引く高輝度線状領域とした。
結果:low shearストレス領域における被膜厚はDM群で有意に薄かった。MΦの総集積体積は両群間で 有意差を認めなかったがlow shear領域におけるMΦ集積体積はDM群で有意に多かった。病変1mm毎 の集積体積と密度はDM群で有意に多く、low share領域ではやはりDM群で有意に多かった。またDM 群ではlow shear、high shear領域におけるMΦ集積密度に差を認めなかった。多変量解析によるlow shear 領域のMΦ偏りにかかわる因子はDMの有無のみであった。
本研究の結果からDM合併ACS例では動脈硬化の病態が非DM例と異なる事が示唆された。DM例で は病変部にびまん性にMΦ が集積し、プラークがよりびまん性に不安定化しやすいことが、高ACS発症 率が繋がる可能性があることを解明した。このことはDM例において必然的に脂質低下療法などによる2 次予防を積極的に行うことを支持するものである。
よって本論文は、博士(医学)の学位を授与されるに値するものと認める。
以 上 平成30年2月28日