January 1968 The Journal of Geobotany Vol. XVI. No. 1
谷口森俊
*鹿児島湾々奥の海藻群落
Moritosi T ANIGUTI : The marine algal communities along the most inner-part of Kagoshima Bay
鹿児島湾のもっとも湾奥の海岸にもヒトエグサ
ーカヤモノリ群集が顕著に分布するかど うかを知りたいと思い,
1967年
3月11日
lと加治木市郊外の黒川仰を, 同じく
3月28日に重 富海岸を調査した。
調査の結果を簡単に述べるならば以下のようである。
加治木市黒川岬
とこは鹿児島湾のもっとも奥部に位置すると乙ろで, 調査は黒川岬
一帯を対象に行っ た。 そのうち適度な岩礁で,比較的海岸線のでつばった所では次の如くであった。すなわ ち潮間帯ではまずヒトエグサが潮位
70cmから
30cmの間に着生して見られる。 そのうち 潮位
60cmから
40cmでは特に顕著である。 ヒラアオノリとシワノカワは潮位
60cm以 下 に着生して見られる。カヤモノリは潮位
50cmより下に着生して見られる。 とれ
’らに混じ てオゴノリ, アナアオサ, カゴメノリ, イトクサが若干あった。つまり潮間帯では上から 下へヒトエグサ帯とカヤモノリ帯が形成されていた。これは当地が明らかにヒトエグサ
ーカヤモノリ群集の分布領域であるととを示すものである。ただとの海岸全体的にはヒトエ グサもカヤモノリもそう多くない。海藻の植生量は少ない。なお前面の海には真珠養殖用 の筏があることをつけ加えておく。
重 富 海 岸
加治木市から重富港の間は砂浜や埋立地等のため潮間帯での顕著な海藻群落の形成は見 られない。しかしその港から南への海岸には広く転礁の浜が続き, そして所々に岩礁もあ り, これらを基質として海藻が豊富に着生している。そのうち重富と白浜のほぼ中間で,
海岸線が少し張り出した地点では次のよつであった。すなわち潮間帯では上から下へヒト エグサ(
5), ヒラアオノリ(4), フクロフノリ(
2), イロロ(+〉, カヤモノリ( 4), ヒラアオノリ (51が認められた。つまり潮間帯では上下にヒトヱグサ帯とカヤモノリ帯が明瞭な帯状分布 を形成していた。やはりヒトヱグサ
ーカヤモノリ群集の分布領域であることが明らかとな
* 三重県立大学水産学部
Faculty of Fisheries, Pretectural University of Mie, Tsu-7-
北 陸 の 植 物 第16巻第1号 昭和43年 1月
Tablel
加治木市黒ノl1岬の海藻群落組成表
一 潮
一 一
海 藻
位 c m
Oー −−一一一一一一一
M b " か 0 郡 α 〃 j 〃 血 沈 ヒ ト エ グ サ 画""o""'"""'"ssaヒラアオノリ Pe"os "gi""zJwgひsz"
銑yjosi少加〃ノ0"ze"""Q
GγααJα減α "籾cOsaシ ワ ノ カ ワ カ ヤ モ ノ リ オ ゴ ノ リ
〔 " " α p オ " s a ア ナ ア オ サ Jみ'"・w/"〃"Scノαfん・""sカゴメノリ
1
Fig.1鹿児島湾略図
l 加 治 木 市 , 2 重 富 , 3 白浜,4鹿児島市
− 8 −
50
1
1 4 2 1 3 2 1 1
1 2 + 2 3 1
+
十
+
100 150
1
||
I
った。ヒラアオノリはヒトエグサ 帯にもカヤモノリ帯にも多いが,
これはこの種群落内に普通の現象
で,筆者は志摩半島,紀伊半島,四国その他各地で広くそれを確認 している。このような重富の植生 は鹿児島市郊外の大崎鼻南側のも の(谷口1959)3)と非常に類似し ている。なお当地前面の海にも真 珠養殖用筏がかなりある。ただヒ トエグサ(青海苔)の養殖は現在 全く行われていないが,アマノリ
の養殖は僅かにやっていることを 付記する。この重富海岸か'ら南つ づきの平松,大崎鼻,竜水,鹿児 島市にかけての海藻群落について は,既に日本生態学会誌9巻1号
(1959)に報告した。
考 察
調査の結果は以上であるが,そ れ ら か ら 次 の よ う な こ と が 言 え る。つまり今回の加治木,重富,
白浜と以前調査した平松,大崎鼻
,竜水,鹿児島の各植生から,結
局鹿児島湾々奥の沿岸には内湾性
January 1968 The Journal of Geobotany Vol. XVI. No. 1
のヒトエグサ
ーカヤモノリ群集が広く分布することが明らかとなった。 この群集はたびた び報告しているどとく外洋水の影響を顕著にうける内湾, 入江つまり波浪の静穏な所をそ の分布領域とする海藻群落である。 その分布範囲は三河湾より九州までで, 日本海沿岸や 南西諸島にはない。
鹿児島湾における本群溶の分布については以前にその見解を発表したとと く(谷口
1959, 1961
),鹿児島湾の水深が極めて深いことと叫, 流入河川が小さいため,外洋から多
量の外洋水が湾奥まで進入するのが大きく関係するものである。 つまり湾奥で波浪が静穏 であると問時IC高献であるのが第一義的である。伊勢湾,大阪湾のごとき低自民域に適応し て見られるアナアオサ
ームカデノリ群集は本湾では全くえられない。
参 考 文 献
1)
田中 剛
1950.桜島・佐多・開聞海域
lこ於ける水産生物相。鹿児島国立公園候補
地学術調査報告. 前編
108-122.2)
←一一一
1964.鹿児島県下の水産植物. 鹿児島の自然
119ー
132.3)
谷口森俊
1959.鹿児島市付近の海藻群落. 日生態誌
9, (1) : 63-64.4)
一一一一
1961.日本の海藻群洛学的研究. 井上書店. 東京.
5)
←一一一一
1966.奄美大島名瀬湾の海藻群落. 北陸の植物.
15, (1-3) : 12-15.6)
一一一
1967.原色日本の海藻植生. 学研・原色現代科学大事典.
3植物.
457-478.
7) 未刊. 海藻生態学.
Summary
The intertidal communities of marine algae along the most innerpart of Kagoshi司 ma bay was studied. As the results of the investigations, Mo同盟stroma nitidum
Scytosiphon lomentria association was found.
And there was recognized the marine algae, such as Enteromorρ加 compressa, Petrosρongium rugosum, Graci/aria verrucosa, Ulva pertusa, Hydroclathrus clath
ratus, etc. in the association.
- 9ー