‑43‑
芳香族エステルの転位によるジケトンの合成 ( 1 1 1 )
伊 藤 俊 彦 ・ 伊 勢 健 太 郎 事 ・ 畠 山 洋 子
佐 々 木誠 * ・ 半 田 芳 夫 *
Re s e a r c h i n t h e Prep a r a t i o n o f A r o m a t i c D i k e t o n e b y T r a n s f o r m a t i o n o f E s t e r ( 1 1 1 )
Toshihiko ITO , Kentaro I S E , Yoko HATAKEYAMA Makoto SASAKI and Y o s h i o HANDA
( 1 9 9 7
年1 1
月1 8
日受理)We d e t e r m i n e d t h e c a t a l y t i c e f f e c t s o f phase t r a n s f e r c a t a l y s t s on t h e s y n t h e s y s o f Aromatic D i k e t o n e by B a k e r ‑ Venkataraman Transformation o f Aromatic E s t e r . We o b t a i n e d i n t e r e s t i n g r e s u l t s i n s u i t a b l e c a t a l y s t and r e a c t i o n c o n d i t i o n o f t r a n s f o r m a t i o n . S t e r i c h i n d r a n c e o f n i t r o group i n o ‑ p o s i t i o n i s l a r g e r t h a n m e t h y l group o f o ‑ p o s i t i o n . But t r a n s f o r ‑ mation o f s u b s t i t u t e d b e n z o y l group was promoted by n i t r o group o f o ‑ p o s i t i o n .
1
. 緒 言前報1)には
2 ‑ ( 4 ' ‑
メチルベンゾイルオキシ)アセト フェノンの転位反応について検討した結果を報告し た。その中でX
キームl
に示したように,2 ‑
メチル ベンゾイルエステル[ 1
]から2 ー
ヒドロキシー2 ' ー
メチ ルジベンゾイルメタン[2J
への転位反応が非常に困 難であり,詳細な反応条件の検討を要ーすることが明 らかになった。その理由のl
っとして2
位のメチル 基の立体障害が考えられた。したがって本年度はこ のような反応性の問題点を解決するため,2
位の置換 基としてメチル基のほかにニトロ基を取り上げ,化合物[
1]
から[2
]への転位反応条件の検討を行った。
COCHJ + CIOC‑ 。 ‑ p
R=CHJ • N02QZ も
Q COCH2C
っ か
PTC ̲
本秋田高専卒業生
̲ q ; .
小田2)によれば[
2
]の構造を持った化合物には紫外 線吸収作用が期待きれており,また,[2]
から導かれ る[3 ]
には医.薬品中間体としての利用が王
寺えられる。
スキーム1
に示した化合物の合成は,[1]
から[2 ]
への転位反応を除いて比較的高収率である。転
位反応、は古くからBaker ‑ Venkataraman
反応とし て知られているが,高い反応率で転位を起こさせる 条件は見出されていないヘ近年,不均一系で相間移 動触媒を用いて転位を起こさせる検討が行われてい るが,詳細な報告はされていない。我々は高い反応 率で化合物[1 ]
を[ 2
]へ転位させるため,適切な相 間移動触媒の探索といろいろな反応条件について検 討を4
子った。一 合 c ; ! b
Q C O
叩 「 。
伊 間
以 ー
Scheme 1
‑ 4 4 ‑
械・半国労夫 伊藤俊彦・伊勢健太郎・白LlI洋子・・佐々木
PTC
の種類と2 ‑
メチルジケトン体の反応率PTC
収量( g )
合4f車(%) 反応率 (%)表
2
2.結果および考察1 6 . 6 4 4 . 6 4 4 . 7 4 9 . 8 4 5 . 0
<5
叫<5
<5
<5 4 8 . 9 2 6 . 1
2 9 . 6 2 3 . 6 3 3 . 8 2 3 . 2
1 2 . 5
1.6 2
3 . 8 3 4 . 8 0 3 . 7 5 4 . 9 4
9 . 9 6 A
B C D E F G H I J
相聞移動触媒の種類と反応率の関係2 ‑ ( 2
ーメチルベンゾイルオキシ)アセトフェノン( 2
‑メチルエステル体と略称、)および
2‑(2 ‑
ニトロベン ゾイルオキシ)アセトフェノン( 2 ‑
ニトロエステル体 と略称)を相問移動触媒( PTC
と略称)とアルカリ の存在下に転位させて,2 ‑
ヒドロキシー2 ' ‑
メチルジ ベンゾイルメタン( 2 ‑
メチルジケトン体と略称、)およ び?とドロキシー 2 '
ーニトロジベンゾイルメタン( 2 ‑
ニトロジケトン体と略称)を商い反応率で得るため,最初に適切な
PTC
の探索を行った。探索実験に使 用したP T C
の構造と略記号は表1
の通りである。2 . 1
ジケトン体の生成は少量であった
a )
PTC
の種類と2 ‑
ニトロジケトン体の反応率 表3
PTC
の事情造と記号 表1
反応率(%) 含有率(%)
収量
( g ) PTC
8 . 4 8 4 . 4 7 9 . 8 3 8 . 6 6 7 . 0 6 2 . 2
<
58)く
5
<5 8 7 . 2 3 3 . 2
4 3 . 6 3 4 . 0 2 2 . 6 4 0 . 7 3 4 . 8 0 . 7 2
5 . 5 2 6 . 6 9 4 . 8 8 4 . 6 9 5 . 1 0 A
B C D E F G H I J
炭 素 数 叫
A B C D E F G H I J
‑EPOPO戸
O Q d Q
以 内
LauτEdAU
rE 1&
'E A‑
‑
11
ム 内
L内
4 9 u a q
式 CeH s N ( CH 3 ) 3 Br
( C . H g )N Br ( C.Hg ) .P Br ( CHg ) N HSO . Ce H s CH
2N ( C.Hg ) s Br C H sP ( C
6H s ) 3 Br C . H g P ( C
6Hs ) 3 B r
( C , H s ) . PB r C e H s CH
2P ( C
6H s ) 3 C
1( C ,
OH
2IL NBr
構造
.月
,
J﹃runヨロ
2 7 . 9 8 . 9 2
かった。したがって今後のいろいろな反応条件検討 に使用する
PTC
としてC
,O
およびJ
の3
つを選 択することにした。 表3
の結果によればB
,C
およ びJ
のP T C
で転位が高い反応率で進むことがわか った。したがってこれからのいろいろな反応条件検 討にはこの3
つのPTC
を比較検討することにした。G
,H
およびI
のPTC
はほとんど効果がなかった。表
2
と閉じ結果 a)
2 . 2
触媒量と反応率の関係2 ‑
メチルエステル体 お よ び2 ‑
ニトロエステル体の 転位反応に適切な触媒として,それぞれ3
種類のPTC
を選択した。つぎにPTC
の量を変えて触媒:w:と反応率の関係について実験した。実験条件は触媒 量を
0
,2 . 5
,5 . 0
,1 0
,20
および3 0r n m o l
に変化さ せた以外は,2 . 1
項と同じである。最初にC
,O
およ びJ
のP TC
を使用した2 ‑
メチルエステル体の結果 を表4
,5
および6
に示した。3
つの表の結果から触媒C
では,触媒を増やすと a)
本研究のすべての実験は
10mmol
スケールで行 ったので,2
ーメチルジケトン体の理論収量は2 . 5 4g
,2 ‑
ニトロジケトン体の理論収量は2.85 g
である。基本となる実験条件はベンゼン
4 0 ml
および飽和 炭酸カリウム水溶液30ml
を使用し,スキームl
の2
‑メチルエステル体[
1
]あるいは2 ‑
ニト ロエステル 体[1 ] 1 0 mmol , PTC10 mmol
を加えて60 ・ C
で6 0 min
反応させた。反応終了後,生成物を高速液体クロマトグラフィーで定量分析して,
2 ‑
メチルジケト ン体あるいは2
ーニトロジケトン体を高い反応率てイ尋 るために適切なPTC
を探索した。2‑
メチルエステ ル体の転位実験結果を表2
に2 ‑
ニトロエステル体の 結果を表3
に示した。表
2
の結果から,0
とJ
のPTC
で比較的反応率 が高<,ついでB
,C
およびE
ではほぼ同じ約4 5%
であった。この
3
つのPTC
ではB
とE
は反応後の 処理でエマルジョンを形成して料製が非常に困難であった。
F
,G
,H
およびI
はほとんど触媒効果がなPTC
の総炭紫数‑ 45‑
芳香族エステルの転位によるジケトンの合成
( I I I )
表4 PTC ‑ C
の量と2
ーメチルジケトン体の反応率PTC ( m m o l )
収量( g )
含有率 (%)反応率 (%)。 。 。
2 . 5 3 . 0 4 1 8 . 1 2
1.7 5 . 0 4 . 0 7 2
1.8 3 4 . 9 1 0 . 0 4 . 8 0 2 3 . 6 4 4 . 7 2 0 . 0 5 . 8 8 2
1.0 4 8 . 5
表
5 pγC ‑ D
の量と2 ‑
メチルジケトン体の反応率P T C ( m m o l )
収量( g )
含有率 (%)反応率 (%)。 。 。
2 . 5 2 . 7 9 2 6 . 4 2 9 . 2 5 . 0 3
.41 3 8 . 2 5 0 . 8 1 0 . 0 3 . 7 5 3 3 . 8 4 9 . 8 2 0 . 0 2 . 7 5 3 6 . 6 3 9 . 7
表
6 PTC‑J
の量と2
ーメチルジケトン体の反応率PTC ( m m o l )
収量( g )
含有率 (%)反応率 (%)。 。 。
2 . 5 3 . 9 3 1 8 . 9 2 9 . 2 5 . 0 6 . 0 9 2 3 . 1 5 5 . 4 1 0 . 0 9 . 9 6 1 2 . 5 4 8 . 9
反応率は次第に高くなったが,原料エステル体の倍 に相当する
2 0 mmol
使用したときに48.5%
で,1 0 mmol
と大きな差がないことから触媒の効果が大きいとは必ずしもいえない。
P T C
としてD
を使用 した場合もあまり大きな反応率向上はなく,5
およ び1 0 mmol
で約50%
であった。表 6の結果からわかるように,触媒
J
の効果が比較的 高 <
5 mmol
使用で反応率は約55%
になった。つ いでP T C ‑ ]
であった。なお,PTC‑]
の2 0 mmol
は データのばらつきが大きかったのて吉宗していない。つぎに,
B
,C
およびJ
のPTC
による2 ‑
ニトロエ ステル体の結果を表7
,8
および9
に示した。表の結果からわかるように
3
触媒とも触媒の増加 とともに反応率は上昇し,1 0 mmol
の使用て最も反 応率が高くなっていることがわかる。1 0 mmol
以上 では反応率が大きく低下しているが,これはPTC
量を増やした場合も溶媒のベンゼンや飽和炭酸カリ ウム水溶液の置を一定にしているため,かく排が困 難になるなど物理的要因も関与しているものと考え られる。
1 0 mmol
でかなり高い反応率が得られたこ表
7 PTC ‑ 8
の量と2 ‑
ニトロジケトン体の反応率P T C ( m m o l )
収量( g )
含有率(%)反応率 (%)。 。 。
2 . 5 <5
5 . 0 2 . 8 0 2 3 . 9 2 3 . 5 1 0 . 0 5 . 5 2 4 3 . 6 8 4 . 4 2 0 . 0 5 . 0 8 2 7 . 7 4 9 . 2 3 0 . 0 5 . 1 2 9 . 4 6 1 7 . 0
表
8 PTC ‑ C
の量と2 ‑
ニトロジケトン体の反応率PTC ( m m o [ )
収量( g )
含有率 (%)反応率(%)。 。 。
2 . 5 <5 5 . 0 2 . 8 8 1 8 . 0 1 8 . 2 1 0 . 0 6 . 6 9 3 4 . 0 7 9 . 8 2 0 . 0 5 . 6 7 3
1.8 6 3 . 3 3 0 . 0 6 . 2 9 2 7 . 5 6 0 . 7
表
9 PTC‑J
の量と2 ‑
ニトロジケトン体の反応率PTC ( m m o l )
収量( g )
含有率 (%)反応率 (%)。 。 。
2 . 5 3 . 0 3 8 . 6 9 . 1 5 . 0 5 . 6 7 2 0 . 2 4 0 . 1 1 0 . 0 8 . 9 2 2 8 . 4 8 7 . 2 2 0 . 0 1 6 . 0 1 5 . 3 8 5 . 8
とから,これ以上触媒量を増やすことはあまり意味 がないと考え,溶媒量を増やすなどの条件検討は行 わないことにした。
P T C
を使用しなかった場合,転位反応はほとんど 進まなかったことから,エステル体からジケトン体 への転位にはPTC
は必須であることがわかった。2 . 3
炭酸カリウム水溶液の温度と反応率の関係PTC
の探索実験およぴPTC
の量と反応率の関 係を検討した実験では.炭酸カリウム水港液は飽和 濃度(約50%)
を使用してきた。前報1)でも述べたよ うに一般的には炭酸カリウム水溶液は濃い濃度で反 応率は高い傾向を示している。しかし2 ‑
メチルエ ステル体および2 ‑
ニトロエステル体では詳細は不明 なので検討することにした。2 . 1
項に記載した実験条 件の中で,炭酸カリウム水溶液濃度だけを0
,1 5
,30%
および飽和濃度(約50% )
に変化させてそれぞ れ30ml
使用し,反応率との関係を調べた。最初は2
‑メチルエステル体について
PTC
のD
とJ
を使用した結果を表
1 0
と1 1
に示した。E占 pa sz sa
省唱師TtZ43
‑46‑
に固定して実施したが,転位反応、に適切な温度を見 つけるため,さらに反応を解析する目的で,ベンゼ、
ン溶媒で20,4
0
,6 0
,r e f i u x
およびトルエン溶媒でr e
自ux
について実験した。PTC ‑ Cは 2 0 mmol , D
とJ
は1 0mmol
使用した。他の反応条件は2. 1
項と同 じである。最初に2 ‑
メチルエステル体の結果を表13
,1 4
および15
に示した。PTC ‑C
は950Cのデータはないが, 3
つの触媒と もこれまで固定してきた60・ C
よりも,ベンゼン洛液 の還流温度740C
で反応、率が高いことがわかった。中 でも触媒J
で反応率は最も高<60 . 4%
になった。表6
の結果を考慮してPTC
の量を2 0 mmol
に増やせ ば反応率をきらに高められる可能性がある。つぎに
2 ‑
ニトロエステル体の転位温度を検討した 誠・半出芳夫伊藤俊彦・伊勢健太郎・畠山洋子・・佐々木 炭酸カリウム濃度と反応率
( P T C :0 )
叫表
1 0
反応率(%)
0 2 0 . 6 2 8 . 0 4 9 . 8
含有率(%)0 2 6 . 0 3 0 . 9 3 3 . 8 2 ‑
メチルエステル体の実験収量 (g)
2 . 0 1 2 . 3 1 3 . 7 5
濃度(%)ハU F D h U A U
︑
iq J ζ d
a)
炭酸カリウム濃度と反応率
( P T C :J ) a )
表
1 1
収量 (g) 反応率(%)
0 3 7 . 1 4 3 . 3 4 8 . 9
含有率(%)0 1 0 . 5 1 2 . 8 1 2 . 5
濃度(%)nURdAUAU
可l ゐ 内 屯 u ' hIV
8 . 9 8 8 . 6 3
9 . 9 6
表1 3
反応温度と反応率( P T C :C ) a )
反応率(%)
1 0 . 3 2 9 . 3 4 4 . 7 5
1.8
含有率(%)5 . 1 1 7 . 6 2 3 . 6 2 4 . 7
収量 (g)5 . 1 1 4 . 2 2 4 . 8 0 5 . 3 3
温度( O C )
2 0 4 0 6 0 7 4
同2 ‑
メチルエステル体の実験ベンゼンと飽和炭酸カリウム水溶液の共沸温度 a)
b )
反応温度と反応率
( P T C :0 )
叫表
1 4
反応率(%)
4 2 . 1 5
1.3 4 9 . 8 5 7 . 5 4 9 . 6
含有率(%)3 0 . 8 3 2 . 1 3 3 . 8 3 6 . 4 3 4 . 6
収量 (g)3 . 4 8 4 . 0 6 3 . 7 5 4 . 0 2 3 . 6 4
温度( . C )
2 0 4 0
・
6 0
7 4
b)9 5
C)2
つの表からわかるよっに炭酸カリウムを加えな い実験では転位反応が起こらないことから,トメチ ノレエステル体の2 ‑
メチルジケトン体への転位にはア ルカりが必須条件であることが確認された。濃度は これまでの実験と同じように飽和濃度(約50%)で 最も転位反応率が高かった。なお,PTC
の量を1 0 mmol
で 実 験 し た た め 表6
の 反 応 率 よ り は 低 い 結 果となっている。つぎに
2 ‑
ニトロエステル体の転位反応、と炭酸カリ ウム濃度との関係について実験したが,昨年の実験 および2 ‑
メチルエステル体と閉じような結果になる ことが予想されたのでP TCとし
てCのみについて
実施した。結果を表12
に示した。2 ‑
メチルエステル休の実験酸カリウム濃度と反応率
( P T C :C ) a )
表1
2
2
国メチルエステル体の実験ベンゼンと飽和炭酸カリウム水溶液の共沸温度 トルエンと飽和炭酸カリウム水溶液の共沸温度 )
) )
刃MLUP﹄
反応率(%) 含有率(%)
収 量 (g) 機度(%)
0 1 7 . 3 5
1.8 7 9 . 8 0
1 1 . 8 5
1.8 3 4 . 。
4 . 2 0 5 . 3 1 6 . 6 9 0
1 5
反応温度と反応率
(PTC : J )
叫表
1 5 3 0
5 0
反応、率(%)
2 0
4 0 6 0 7 4
b)9 5
C)1 0 . 3 3 9 . 2 4 8 . 9 6 0 . 4 5 4 . 4
含有率(%)4 . 0 1 0 . 7 1 2 . 5 1 6 . 0 1 3 . 5
収量 (g)9 . 9 2 9 . 3 3 9 . 9 6 9 . 6 2 1 0 . 2 3
温度( . C )
2 ‑
ニトロエステル体の実験アルカリの濃度が高くなると転位反応率は急激に 上昇し,飽和濃度(約50%)では約50%になること がわかった。また,
2 ‑
ニトロエステル体の転位にも アルカリは必須であることがわかった。a)
2 ‑
メチルエステル体の実験ベンゼンと飽和炭酸カリウム水溶液の共沸温度 トルエンと飽和炭酸カリウム水溶液の共沸温度 )
) )
a b c 2 . 4 反応温度と反応率の関係
2.1
項から2.3
項までの実験は全て反応温度を60・ c
‑ 47 ‑ 'jj香族エステJレの転位によるジケトンの合成(
1 l
I)表1 6
反応温度と反応率( PTC : C )
叫温度 ("C)
収量 ( g )
含有準(%)反応率(%)2 0 。 。
4 0 5 . 1 9 1 6 . 2 2 9 . 4 6 0 6 . 6 9 3 4 . 0 7 9 . 8 7 4
b】5 . . 6 2 3 0 . 0 5 9 . 0 9 5
C)4 . 8 9 2 2 . 5 3 8 . 5
a ) 2
ーニトロエステル体の実験b )
ベンゼンと飽和炭酸カリウム水溶液の共沸温度 c )
トノレエンと飽和炭酸カリウム水溶液の共沸混度表1 7
反応温度と反応率(PTC : 、 J )
8)温度 (.C) 収量
( g )
含有率 (%)反応率 (%)2 0 1 0 . 4 1 6 . 5 2 3 . 5 4 0 9 . 2 0 2 1 . 5 7 0 . 8 6 0 8 . 9 2 2 7 . 9 8 7 . 2 7 4
b)9 . 5 3 1 8 . 1 6 0 . 5 9 5
C)8 . 4 9 1 8 . 8 5 6 . 3
a)
2 ‑
ニトロエステル休の実験b )
ベンゼンと飽和炭酸カリウム水溶液の共沸温度 c) トルエンと飽和炭酸カリウム水溶液の共沸温度結果を表1
6
と17
に示した。なお.PTC ‑ B はエマルジ
ョンを形成して後処理が困難なため中止した。表
1 6 と1 7 の結果からわかるよ
うに2‑
ニトロエステ
ル体の転位反応温度は.2
つの触媒とも2 ‑ メチルエ
ステル体の転位温度よりも低い60・ C が適切である
ことがわかった。温度が高くなると反応率が大きく 低下していることから,生成したジケトン体が分解していることが考えられる。
2 . 5 反応時間と反応率の関係
これまでの実験によって適切な
PTC の選択 . P TC
の位の検討,炭酸カリウムの濃度の検討および反応温 度の検討を進めてきた。反応時間はこれまで6
0 min
に 固定してきたが,適切な反応時間見出すため実験を行 った。時間は1 5 . 3 0 . 6 0 . 9 0
および12 0 min に設定した。
最初にトメチルエステル体について.
PTC‑C は 20mmoi. D と J は 1 0mmol
を使用して実験を行っ た。他の条件は2 . 1 項と閉
じである。結果を表18 . 1 9 . 20
に示した。3
つの表の結果によれば,触媒C
では60m i n . D
と
J
で は デ ー タ に ば ら つ き が あ る が90mi n で最も
高い反応曜となった。つぎに
2 ‑
ニトロエステル体について反応時間と反
表1 8
反応時間と反応率( PT C: C )
剖時間
( m i n )
収 量(
g)
含有率(%)反応率(%)1 5 5 . 3 4 2 0 . 0 4 1 . 9 3 0 5 . 5 0 1 9 . 5 4 2 . 1 6 0 4 . 8 0 2 3 . 6 4 4 . 7 9 0 5 . 2 9 1 8 . 4 3 8 . 4 1 2 0 5 . 6 3 1 6 . 1 3 5 . 6
a)2 ・
メチルエステル体の実験表1 9
反応時間と反応率( PγC: 0) 8 )
時間
(m i n )
収量 (g)
含為・車(%) 反応率(%)1 5 3 . 9 5 3 3 . 4 5 2 . 0 3 0 3 . 7 9 3 5 . 7 5 3 . 3 6 0 3 . 7 5 3 3 . 8 4 9 . 8 9 0 3 . 9 8 3 5 . 8 5 6 . 1 1 2 0 3 . 8 7 3 3 . 6 5
1.1
a)2 ‑
メチルエステル休の実験表2 0
反応時間と反応率(PTC : J) a l
時間
( min ) 収量 ( g )
含有率(%)反応率(%)1 5 8 . 4 1 1 3 . 4 4 4 . 3 3 0 8 . 5 1 1 3 . 9 4 6 . 4 6 0 9 . 9 6 1 2 . 5 4 8 . 9 9 0 9 . 3 1 1 4 . 9 5 4 . 5 1 2 0 9 . 9 8 1 2 . 2 4 7 . 8
a)2 ‑
メチルエステル体の実験表2 1
反応時間と反応率(PTC : C)
則時間
( min ) 収量 (
g)
含有事(%)反応率(%)1 5 5 . 7 6 2 0 . 5 4
1.4 3 0 6 . 2 2 2 3 . 9 5 2 . 1 6 0 6 . 6 9 3 4 . 0 7 9 . 8 9 0 5 . 3 9 1 5 . 5 2 9 . 3 1 2 0 4 . 1 7 1 4 . 3 2 0 . 8
a)2 ‑
ニトロエステル体の実験表2 2
反応時間と反応率(PTC : J ) 8 )
時間
( min ) 収量 (
g)
含有率(%)反応率 (%)1 5 9 . 0 9 1 7 . 5 5 5 . 8
3 0 9 . 2 1 1 8 . 7 6 0 . 4
6 0 8 . 9 2 2 7 . 9 8 7 . 2
9 0 8 . 5 0 1 5 . 3 4 5 . 5
1 2 0 1 0 . 1 7 8 . 1 0 2 8 . 6
a)2 ‑
ニトロエステル体の実験‑ 48ー
伊藤俊彦・伊勢健太郎・白山洋子・・佐々木 議・半田芳夫
応率の関係を検討した。時間は
2 ー
メチルエステル体 と同じように設定し,PTC
はC
とJ
を10mmol使 用した。他の条件は2 . 1
唄と同じである。結果を表2 1
と
2 2
に示した。表
2 1
および2 2
からわかるように触媒C
,J
とも6 0 min
の反応で転位反応率は最も高くなることがわ かった。さらに反応時間を長くすると反応率は急激
に低下し,生成したジケトン体の分解が考えられた。3 .ま と め
3 . 1 2 ‑
メチルエステル体の転位反応スキーム
l
に示したように2 ー
メチルエステル体[ 1
]から2 ー
メチルジケトン体[2
]への転位反応につ いて,反応、率を高めるためいろいろな反応条件につ いて検討を加えた。その結果をまとめるとつぎの通りである
。
( 1 ) 1 0
種類の相間移動触媒の中から転位反応に適切 な触媒を探索し,( C 4 H
g). P B r
(触媒C )
,( C 4 H
g)4 NHSO.
(触媒D )
およひ・( C
10H
21)4NBr
(触媒J)の3
化合物に絞り込んだ。( 2 ) 3
種類の触媒について触媒量と反応率,炭酸カ リウム濃度と反応率,反応温度と反応皐および反応 時間と反応率の関係について,転位反応、率を最も高くする条件の検討を行った
。
( 3 )
本研究で得られた転位反応率が最も高い条件は つぎの通りである。( a ) 2 ‑
メチルエステル体いJ: 1 0
mmol( b )
相関移動触媒( C
IOH
21)4NBr
,1 0
mmol( c )
炭 酸 カ リ ウ ム 水 溶 液 温 度 : 約50% (
飽和)
,3 0
mL( d )
ベンゼン:40mL( e )
反応温度:7 4 ・
C(
共沸温度) (f)反応時間:60min
( 4 )
上記の反応条件で得られた2 ‑
メチルジケトン体[ 2
]への最も高い反応率は表6
に示した60.4%
であった 。
しかし,今後の課題としてテトラデシルアンモニウム触媒20
mmoLによる還流温度( 7 4
0C)による実 験および反応時間90min
の実験が未検討なのでさ らに実験を続けてω
.4%以上の反応率を目指したい。3 . 2 2 ‑
ニトロエステル体の転位反応スキーム
1
に示したように2 ‑
ニトロエステル体[ 1
]から2 ‑
ニトロジケトン体[2
]への転位反応につ いて.反応率を高めるためいろいろな反応条件につ いて検討を加えた。その結操をまとめるとつぎの通りである。
( 1 ) 1 0
種類の相関移動触媒の中から転位反応に適切 な触媒を探索し,( C 4 H
9)4NBr
(触媒B )
,( C 4 H 9 ) . PBr
(触媒C )
,および( C
1oH
21).NBr
(触媒J)の3
化合物に絞り込んだ。( 2 ) 3
種類の触媒について触媒最と反応率,炭酸カ リウム濃度と反応率,反応温度と反応率および反応 時間と反応率の関係について,転位反応率を最も高くする条件の検討を行
った。
(3) 本研究で得られた転位反応車が最も高い条件は つぎの通りである。
( a ) 2 ‑
ニトロエステル体[1 J : 1 0
mmol( b )
相間移動触媒( C
1oH
21)4NBr
,1 0
mmol( c )
炭 酸 カ リ ウ ム 水 港 液 濃 度 : 約50% (
飽和)
,3 0
ml( d )
ベンゼン:4 0
ml( e )
反応温度:6 0 ・ c
( f )
反応時間:60min
( 4 )
上記の反応条件で得られた2‑
ニトロジケトン体[ 2 J
への最も高い反応車は87.2%
であった。3.3 総合考察
2 ‑
メチルエステル体[1
]の転位反応については,昨年度の卒業研究りで
4 ‑
メチルエステル体との比較 研究において,転位が進みにくいことを見出してい る。
その原因として2
位のメチル基の立体障害が予 想された。したがって今年度は2 ‑
メチルエステル体 の転位反応率向上を目標に,2 ‑
ニトロエステル体[
1
]との比較研究とともに実施した。( 1 )
反応条件をいろいろな角度から検討したが,2 ‑
メチルエステル体[
1
]の転位反応率は60.4%
までし か上げることはできなかった。昨年度の 4 ‑
メチルエステJl‑体の転位反応率が
89.3%
であったことから.2
位のメチル基の立体障害が原因の1
っと考えられる。( 2 )
これに対して比較検討した2‑
ニトロエステル体[ 1
]の転位反応率は87.2%
と非常に高<.ほぽ目的 に近い結果が得られたと考えられる。( 3 ) 2
位のメチル基とニトロ基の影響について立体 障害の面から考察すると,ニトロ基のかさ高きが7 . 3 6
であるのに対して,メチル基は5 . 6 5
4)であり,ど ちらかと言えばニトロ基の方が立体障害が大きいこ とが予想きれる。これらのことを考慮すると反応率 の違いは立体障害だけからは説明できないことは明らかである。
( 4 )
スキーム2
に示したように,メチル基とニトロ 基の働きについて考えると,メチル基はベンゼン環‑ 4 9
ー芳容族エステルの車王位によるジケトンの合成(1lI)
合 c m 一 合 c m ‑ Q 7 c m c ‑ o
寸 〉 コ ー
'0‑.OC‑Q
。 似合C仇=一一合
C叫 ~QCOC~C~
0‑.OC
つ
との超共役によって環に電子を送り込む働きを持っ ているのに対して,ニトロ基はその屯子吸引効果に よってベンゼン環との共鳴構造で環の
π
電 子 を 吸5 1
いると考えられる。本転位反応では.2 ‑
メチルベ ンゾイルカチオンあるいは2 ー
ニトロベンゾイルカチ オンが転位をすると考えられることから,ニトロ基の 電子吸引効果によって2 ‑
ニトロベンゾイカチオンが2 ‑
メチルベンゾイルカチオンよりも生成しやすく,転 位しやすいことが考えられる。このことからニト.ロ基 のかさ高さによる立体障害の影響よりも,電子吸引効 果が転位反応に大きく寄与したものと推定している。4 .
実 験4 . 1 2 ‑ ( 2 ‑
メチルベンゾイルオキシ)アセトフヱノ ン[1J
の合成幻F.Cramer
ら方法に準じて合成しエタノールから再 結晶して使用した。mp51.5 ‑53.C(
文 献 値54‑55.C)
4 . 2 2 ‑ ( 2
ーニトロベンゾイルオキシ)アセトフヱノ ン[1 J
の合成F . Cramer
ら方法に準じて合成しエタノールから 再 結 晶 し て 使 用 し た。mp12
1.6‑123.2 . C
(文 献 値1 2 3 ‑125 ・ C 5 ) )
4 . 3 2 ‑
ヒドロキシー2 '
ーメチルジベンゾイルメタン[2J
の合成2 ‑
メチルエステル体[1 ] 2 . 5 4 g
,PTC
のテトラデ シルアンモニウムブロマイド6 . 58g
,飽和炭酸カリ ウム水溶液3 0 ml
およびベンゼン4 0 mL
を6 0
分 加 熱 還流した。反応終了後,分液ロートでベンゼン相を 分離し水洗して乾燥した。減圧下にベンゼンを留去 し得られた生成物をカラムクロマトグラフで精製 し,メタノールから再結晶して目的物[2
]を得た。mp96.5‑97.0 . C
(文献値mp96.0‑97.0 ・ C 3 ) )
,本化 合 物 は 別 法 の ピ リ ジ ン 溶 媒 と 粉 末 水 酸 化 カ リ ウ ム 法6)でも合成して同一化合物であることを確認した。4 . 4 2‑
ヒドロキシー2 '
ーニトロジベンゾイルメタン[2J
の合成2 ‑
ニトロエステル体[1 J 2 . 8 5 g
,PTC
のテトラデ シルアンモニウムブロマイド6 . 58g
,飽和炭酸カリ ウム水溶液30ml
およびベンゼン40ml
を6 0 ・ C
で6 0
分反応させた。反応終了後,分液ロー トでベンゼン 相を分離し水洗して乾燥した。減圧下にベンゼンを留 去し,得られた生成物をカラムクロマトグラフて精製 した後メタノールから再結晶して目的物[ 2 ]
を得た。mp16
1.8‑163 . 4
(文献値mp1 6 2 .0‑163 . 0 ・ C 5 ) )
,本 化合物は別法のピリジン溶媒と粉末水酸化カ 1)ウム 法的でも合成して同一化合物であることを確認した。4 . 5
高速液体クロマトグラフ(HPLC)
法によるジ ケトン体[2 J
含有率の測定と反応率の算出HPLC
の測定条件は次の通りである装置:日立
L ‑ 6 0 0 0
型ポンプ,
UV
検出器,I n t e g r a t o r
溶媒:ヘキサン/クロロホルム=1.5:
1.0
2.0mL/min
カラム:
GL
サイエンス社製I n e r t s i lSIL 4 . 6 mmx250 m m
内部標準物質:2
‑
クロロ‑
5‑
ニトロー
N‑
プチ ルベンズアミド精製したジケトン体と内部標準物質の重量比と面 積比から検量線を作成し,反応物中のジケトン体含有 率を定量して,つぎの式によって反応率を算出した。
一 反 応 生 成 物(g)
X
含 有 率 反応率(%)一 理論収量(g)X100
参考文献1) 伊藤,秋田工業高等専門学校研究紀要,第