太平洋艦隊強襲
南海蒼空戦記4
Nobuyoshi Yokoyama横山信義
立 ち 読 み 専 用
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目 次 第 一 章
二
つ
の
戦
線
9 第 二 章欧
州
の
防
壁
41 第 三 章動
き
出
し
た
脅
威
81 第 四 章硫
黄
島
の
堅
陣
117 第 五 章暗
夜
の
咆
ほう哮
こう 161 第 六 章最
初
の
遭
遇
233160°E 150°E 140°E 20°N 10°N 10°S 0° サイパン島 テニアン島 グアム島 トラック環礁 ウルシー環礁 マ リ ア ナ 諸島 小笠原諸島 ビスマルク諸島 ソロモン諸島 ニューブリテン島 ニューアイルランド島 アドミラルティ諸島 ブーゲンビル島 ガダルカナル島 ニューギニア島 父島 母島 硫黄島 エニウェトク環礁
130°E 120°E 110°E パ ラ オ 諸島 スル諸島
フ
ィ
リ
ピ
ン
南シナ海
台湾 海南島 沖縄 ボルネオ島 ジャワ島 チモール島 フロレス島 ジャワ海 セレベス島 セレベス海 ミンダナオ島 スル海 バシー海峡 ルソン島 サマール島 サン・ベルナルディノ海峡 レイテ島 スリガオ海峡 シブヤン海 ミンダナオ海 ミンドロ島 パナイ島 パワラン島 マニラ バタンガス スラバヤ バベルダオブ島 ペリリュー島 タゥイタゥイ島南西太平洋要図
バ タ ー ン 半島 マ ニ ラ 湾 サン・ベルナルディノ海峡 カタンドゥアネス島 コレヒドール島 リ ン ガ エ ン 湾
ルソン島
ミンダナオ島 サ マ ー ル 島 ミ ン ド ロ 島 パ ナ イ 島 ネ グ ロ ス 島 レ イ テ 島 シ ブ ヤ ン 島 マ ス バ テ 島 ス ル ア ン 島 ホ モ ン ホ ン 島 デ ィ ナ ガ ト 島 レイテ湾 ミン ダ ナ オ 海 シブ ヤ ン 海太 平 洋
ビサ ヤン海 ミ ン ド ロ 海 峡 セ ブ 島 ボホール島 ボホール島 マ ニ ラ キ ャ ビ テ バタンガス ク ラ ー ク フ ィ ー ル ド 飛行場 ニー ル ソ ン 飛行場 ニ コ ル ス 飛行場 ドラグ タクロバン カ ル バ ヨ グ 0 100 0 100 200 300 km 浬フィリピン要図
南海蒼空戦記4
第
一
章
二
つ
の
戦
線
10
1
飛 行 甲 板 を 曙 しょ 光 こう が 、 照 ら し 出 し た 。 ﹁ 発 艦 始 め ﹂ の 号 令 が か か る や 、 佐 さ 瀬 せ 宏 ひろし 中 尉 は エ ン ジ ン ・ ス ロ ッ ト ル を 開 い た 。 暖 機 運 転 の 軽 や か な 音 が 、 猛 たけ 々 だけ し い 爆 音 に 変 わ り 、 艦 上 哨 しょう 戒 かい 機 き ﹁ 暁 ぎょう 雲 う ん ﹂ が す る す る と 動 き 出 し た 。 右 う 舷 げ ん 前 部 に 設 け ら れ て い る 小 振 り な 艦 橋 が 、 目 の 前 に 迫 る 。 そ れ が 死 角 に 消 え た と き に は 、 暁 雲 は 二 枚 の 主 翼 一 杯 に 風 を は ら み 、 飛 行 甲 板 の 前 縁 を 蹴 け っ て い る 。 前 大 戦 時 の 機 体 と 見 み 紛 まが う よ う な 複 葉 機 だ が 、 発 艦 に 要 す る 距 離 が 短 い と い う 長 所 を 持 つ 。 全 長 が 一 七 〇 メ ー ト ル に 満 た な い 小 型 空 母 で の 運 用 に 、 適 し た 機 体 だ 。 ﹁ 二 番 機 発 艦 。 三 番 機 、 続 い て 発 艦 ﹂ 佐 瀬 と ペ ア を 組 む 田 た 沼 ぬ ま 栄 さかえ 一 等 飛 行 兵 曹 が 、 偵 察 員 席 か ら 報 告 を 送 る 。 佐 瀬 機 を 含 め 、 合 計 六 機 の 暁 雲 が 発 艦 し た 。 約 二 時 間 に 亘 わ た る 、 対 潜 哨 戒 の 始 ま り だ 。 そ の 間 、 暁 雲 六 機 の 搭 乗 員 一 二 名 は 、 海 面 下 に 潜 ひそ む 厄 やっ 介 かい な 敵︱
東 シ ナ 海 や 南 シ ナ 海 へ の 侵 入 を 図 はか る 敵 潜 水 艦 の 捜 索 と 発 見 に 、 全 力 を 上 げ ね ば な ら な い 。 場 所 は 、 台 たい 湾 わん と フ ィ リ ピ ン ・ ル ソ ン 島 を 分 わ か つ ル ソ ン 海 峡 の 南 側︱
バ ブ ヤ ン 諸 島 と ル ソ ン 島 の 間 の バ ブ ヤ ン 海 峡 だ 。 昨 年 八 月 、 第 一 四 軍 が フ ィ リ ピ ン 東 部 の サ マ ー ル 、 レ イ テ 、 ミ ン ダ ナ オ の 三 島 を 占 領 し た 後 、 日 本 軍 は 主 だ っ た 海 峡 を 機 き 雷 らい に よ っ て 封 ふう 鎖 さ し 、 東 シ ナ 海 、 南 シ ナ 海 の 内 ない 海 かい 化 か を 図 っ た 。 日 本 本 土 と 蘭 ら ん 印 い ん を 結 ぶ 南 方 航 路 は 、 石 油 、 鉄 てっ 鉱 こう 石 せき 、 ボ ー キ サ イ ト 、 生 なま ゴ ム 等 、 戦 争 遂 行 に 不 可 欠 の 資 源 を 運 ぶ た め の 生 命 線 だ 。 そ の 生 命 線 を 守 る た め に は 、 東 シ ナ 海 、 南 シ ナ 海 へ の 敵 潜 水 艦 の 侵 入 を 防 ぐ こ と が 不 可 欠 と な る 。11 第一章 二つの戦線 だ が 、 ル ソ ン 海 峡 は 幅 が 広 い こ と に 加 え て 水 深 が 深 く 、 機 雷 封 鎖 は 不 可 能 だ 。 米 軍 の 潜 水 艦 は 必 然 的 に 、 ル ソ ン 海 峡 を 経 へ て 、 東 シ ナ 海 、 南 シ ナ 海 へ の 侵 入 を 試 み る 。 別 け て も 、 ル ソ ン 島 に 近 い バ ブ ヤ ン 海 峡 を 抜 け よ う と す る 艦 が 多 い 。 こ の た め 、 フ ィ リ ピ ン 周 辺 の 航 路 護 衛 を 担 当 す る 比 フィ 律 リ 賓 ピン 方 面 艦 隊 は 、 ル ソ ン 海 峡 を 最 重 要 の 警 備 区 域 と 定 め 、 麾 き 下 か に あ る 第 五 一 か ら 第 五 八 ま で の 八 個 航 空 戦 隊 全 て を 、 こ の 海 域 に お け る 潜 水 艦 狩 り に 充 あ て て い た 。 こ の 日
︱
昭 和 一 九 年 三 月 二 日 、 バ ブ ヤ ン 海 峡 の 哨 戒 に 当 た っ て い る の は 、 第 五 二 航 空 戦 隊 。 小 型 空 母 ﹁ 翔 しょう 燕 え ん ﹂ に 、 戦 時 急 造 型 の 駆 く 逐 ちく 艦 か ん 四 隻 、 海 かい 防 ぼう 艦 か ん 六 隻 を 配 し た 部 隊 だ 。 ﹁ 翔 燕 ﹂ の 元 の 名 は ﹁ ス ワ ニ ー ﹂。 昨 年 七 月 の 第 二 次 ル ソ ン 島 沖 海 戦 の 折 お り 、 ル ソ ン 島 バ タ ン ガ ス の 沖 で 、 米 軍 の 輸 送 船 一 〇 〇 隻 と 共 に 鹵 ろ 獲 かく さ れ た サ ン ガ モ ン 級 護 衛 空 母 の 一 隻 だ 。 捕 ほ 虜 りょ と な っ た 同 艦 乗 員 の 供 述 に よ れ ば 、 給 油 艦 を 改 造 し て 小 型 空 母 に 仕 し 立 た て た も の だ と い う 。 全 長 一 六 八 ・ 六 メ ー ト ル 、 最 大 幅 三 四 ・ 八 メ ー ト ル 、 基 準 排 水 量 一 万 一 四 〇 〇 ト ン と 、 長 さ が 短 い 割 に 横 幅 が 大 き い 。 最 高 速 度 が 一 八 ・ 三 ノ ッ ト と 遅 い た め 、 艦 隊 用 空 母 と し て は 使 用 で き ず 、 艦 上 機 の 運 用 も 難 し い 。 海 軍 は 一 時 、 輸 送 艦 と し て の 活 用 を 考 え た が 、 複 葉 機 の 暁 雲 で あ れ ば 運 用 可 能 な こ と が 判 明 し た た め 、 同 級 四 隻 の 兵 装 を 換 装 し た 上 で 軍 籍 に 編 入 し 、 対 潜 哨 戒 の 任 に 当 た ら せ る と 決 定 し た の だ 。 米 国 が 、 ド イ ツ 海 軍 の U ボ ー ト や 日 本 海 軍 の 伊 い 号 ごう 、 呂 ろ 号 ごう 潜 水 艦 か ら 輸 送 船 を 守 る た め に 建 造 し た 護 衛 空 母 は 、 今 度 は 米 国 の 潜 水 艦 を 狩 る た め の 艦 へ と 変 身 を 遂 と げ た の だ っ た 。 ﹁ 佐 瀬 一 番 よ り 全 機 へ 。 始 め る ぞ ﹂ 佐 瀬 は 無 線 電 話 機 の マ イ ク を 通 じ 、 五 機 の 暁 雲 に12 指 示 を 送 っ た 。 発 艦 を 終 え た 六 機 が 、 二 機 ず つ 三 隊 に 分 か れ た 。 一 隊 は 正 面 、 他 の 二 隊 は 左 右 だ 。 佐 瀬 は 、 稲 いな 田 だ 倫 り ん 太 た 郎 ろう 上 等 飛 行 兵 曹 が 機 長 を 務 め る 二 番 機 と 共 に 、 部 隊 の 右 方 を 受 け 持 つ 。 五 二 航 戦 の 針 路 は 九 〇 度 。 南 シ ナ 海 か ら 、 太 平 洋 へ と 向 か っ て い る 。 バ ブ ヤ ン 海 峡 の 西 側 に 侵 入 を 図 ろ う と す る 敵 潜 水 艦 を 、 押 し 戻 そ う と す る よ う な 針 路 だ 。 六 機 の 暁 雲 は 、 高 度 を 五 〇 〇 メ ー ト ル 前 後 に 保 ち 、 時 速 一 八 〇 キ ロ ほ ど の 低 速 で 、 ジ グ ザ ク 状 に 飛 ぶ 。 母 艦 か ら 二 万 メ ー ト ル ほ ど 離 れ た と こ ろ で 反 転 し 、 再 び ジ グ ザ グ 状 に 飛 び な が ら 戻 る 。 こ の 繰 り 返 し だ 。 操 縦 員 の 佐 瀬 は 、 計 器 が 示 す 数 字 に 注 意 を 払 い つ つ 、 海 面 に 目 を 凝 こ ら す 。 後 席 に 座 る 田 沼 一 飛 曹 は 、 小 さ な 影 で も 見 み 逃 のが す ま い と 、 絶 え ず 海 面 を 見 つ め て い る 。 敵 潜 水 艦 が 浮 上 航 行 し て い る と は 考 え ら れ な い が 、 潜 望 鏡 で 海 上 を 見 張 っ て い る 可 能 性 は あ る 。 潜 望 鏡 深 度 は 最 大 で 一 五 メ ー ト ル 程 度 で あ る か ら 、 視 力 に 優 れ る 搭 乗 員 で あ れ ば 、 海 面 下 に 潜 む 影 の 発 見 が 可 能 だ 。 敵 機 に 襲 わ れ る 心 配 は な い が 、 決 し て 楽 な 任 務 で は な い 。 何 も な い 海 面 を 舐 な め る よ う に 飛 び な が ら 、 ひ た す ら 見 張 る だ け の 、 単 調 な 任 務 だ 。 一 〇 分 も す れ ば 、 眠 気 を も よ お し て く る 。 そ れ で い て 、 片 時 も 目 を 逸 そ ら す こ と は 許 さ れ な い 。 敵 潜 を 見 逃 す よ う な こ と が あ れ ば 、 味 方 の 被 害 と い う 形 に な っ て 返 っ て 来 る 。 僅 わ ず か な 隙 すき が 、 何 千 ト ン か の 輸 送 船 と そ の 乗 員 、 積 み 荷 の 喪 失 に 繋 つな が り 、 兵 器 生 産 の 遅 れ を 招 く の だ 。 日 本 の 生 命 線 を 保 持 し 、 継 けい 戦 せ ん 能 力 を 維 持 で き る か ど う か が 、 こ の 任 務 に か か っ て い る 。 ど れ ほ ど 地 じ 味 み で 、 退 屈 で あ っ て も 、 や り 遂 げ ね ば
日本海軍 小型空母 海燕
「海 燕」型 小 型 空 母 は、昭 和18年 7 月19日、第 一、第 二 航 空 艦 隊が米輸送船団を襲撃 、 その大半を拿捕した際 、 日本軍に降伏 したサンガモン級護衛空母を改修したものである 。 もとはタン カーを改造した空母であり 、 艦隊行動に随伴するだけの速力は 持たなかったが 、 対潜哨戒を主な任務とする小艦隊の旗艦とし て、日本軍の貴重な戦力となった。 大きな船体と 、 それに伴う広大な飛行甲板をもつ本艦は 、 複 葉の対潜哨戒機 「 暁雲 」 であれば常用 20 機を運用できた 。 さら には護衛として同行する駆逐艦の燃料 、 弾薬のほか 、 乗員の食 料なども余裕をもって積載が可能だった。 もと米軍の艦だけあっ て艦内設備にも余裕があり、乗員には人気の艦となっている。 全長 168.6m 最大幅 34.8m 基準排水量 11,400トン 主機 蒸気タービン 2基/2軸 出力 23,900馬力 速力 18.0ノット 兵装 12.7cm 40口径 連装高角砲 4基 8門 25mm 三連装機銃 10基 30丁 搭載機数 20機 同型艦 「翔燕」 「瑞燕」 「雄燕」 乗員数 1,080名14 な ら な か っ た 。 六 機 の 暁 雲 は 、 二 機 ず つ の 編 隊 を 組 ん だ ま ま 、 ジ グ ザ グ 飛 行 を 繰 り 返 す 。 五 二 航 戦 は 、 駆 逐 艦 四 隻 が 傘 かさ 型 の 陣 形 を 作 っ て 前 衛 を 務 め 、 そ の 後 方 に ﹁ 翔 燕 ﹂ と 海 防 艦 六 隻 の 輪 り ん 型 けい 陣 じん が 展 開 す る 。 敵 潜 を 捜 索 す る と 共 に 、 虎 とら の 子 こ の 空 母 を 守 る 陣 形 だ 。 敵 か ら 鹵 獲 し た 艦 、 そ れ も 給 油 艦 改 装 の 低 速 空 母 と は い え 、 今 は 艦 首 に 菊 の 御 ご 紋 も ん 章 しょう を 付 け 、 旭 きょく 日 じ つ 旗 き を 掲 げ た 帝 国 海 軍 の 軍 艦 な の だ 。 各 艦 の 艦 底 部 付 近 に あ る 聴 音 室 で は 、 水 すい 測 そく 員 い ん が 全 神 経 を 耳 に 集 中 し 、 敵 潜 の 推 進 機 音 を 聞 き 逃 す ま い と 努 め て い る に 違 い な か っ た 。 哨 戒 開 始 後 、 一 時 間 二 〇 分 が 過 ぎ た と き 、 ﹁ 佐 瀬 二 番 よ り 一 番 。 敵 潜 ら し き も の 、 右 正 せい 横 おう ! ﹂ 二 番 機 の 稲 田 機 長 の 叫 び 声 が 、 無 線 電 話 機 の レ シ ー バ ー に 飛 び 込 ん だ 。 ﹁ 見 つ け た か ! ﹂ 佐 瀬 は 、 操 そう 縦 じ ゅう 桿 か ん を 右 に 倒 し た 。 単 調 に 同 じ 動 作 を 繰 り 返 し て い た 機 体 が 、 右 に 大 き く 傾 き 、 小 さ な 弧 こ を 描 い て 旋 回 し た 。 旋 回 半 径 は 、 非 常 に 小 さ い 。 あ た か も 、 独 こ 楽 ま が 回 る か の よ う だ 。 ﹁ 機 長 、 あ れ で す ! 右 前 方 ! ﹂ 今 度 は 田 沼 の 声 が 、 レ シ ー バ ー に 飛 び 込 ん だ 。 佐 瀬 は 、 右 前 方 を 見 や っ た 。 機 体 の 前 方 に は 、 真 っ 青 な 海 面 が ど こ ま で も 広 が っ て い る 。 そ の 中 に 一 箇 所 、 僅 か に 色 が 異 な る 場 所 が あ る 。 青 地 の 布 に 、 黒 い 染 し み を 付 け た か の よ う だ 。 影 を 見 つ め て い ら れ る 時 間 は 長 く な い 。 低 速 の 暁 雲 と い え ど も 、 飛 行 速 度 は 時 速 一 八 〇 キ ロ に 達 す る 。 数 秒 後 に は 影 を 追 い 越 し 、 前 方 に 飛 び 出 し て し ま う 。 佐 瀬 は 、 今 一 度 右 旋 回 を か け る 。 暁 雲 が 傾 き 、 水 面 下 の 影 が 再 び 視 界 に 入 る 。
15 第一章 二つの戦線 稲 田 上 飛 曹 の 二 番 機 と 共 に 、 し ば し 影 の 周 囲 を 旋 回 す る 。 敵 潜 水 艦 は 、 頭 上 を 飛 び 回 る 危 険 な 敵 に 気 づ い て い な い よ う だ 。 五 二 航 戦 の 様 子 を う か が っ て い る の か も し れ な い 。 敵 潜 の 乗 員 に と っ て は 、 五 二 航 戦 の 小 型 空 母 や 駆 逐 艦 も ま た 、 自 分 た ち が 仕 し 留 と め る べ き 獲 え 物 もの に 見 え て い る こ と だ ろ う 。 そ の 思 い 上 が り を 正 し て や ら ね ば な ら な い 。 ﹁ 田 沼 、 現 在 位 置 は ? ﹂ ﹁ 母 艦 よ り の 方 位 一 三 〇 度 、 一 ヒト 一 ヒト 〇 マル ︵ 一 万 一 〇 〇 〇 メ ー ト ル ︶ ﹂ 佐 瀬 の 問 い に 、 田 沼 は 即 答 し た 。 ﹁ カ モ メ 、 カ モ メ 。 マ グ ロ 発 見 。 一 三 〇 度 、 一 ヒト 一 ヒト 〇 マル 。 今 よ り 攻 撃 す る ﹂ 佐 瀬 は 、﹁ 翔 燕 ﹂ の 通 信 室 に 詰 つ め て い る 飛 行 長 新 あら 井 い 典 のり 夫 お 中 佐 に 報 告 を 送 っ た 。 一 いっ 旦 た ん 、 敵 潜 と 距 離 を 置 き 、 水 平 爆 撃 の 態 たい 勢 せい を 取 る 。 胴 体 下 と 両 翼 の 下 に 懸 け ん 吊 ちょう し て い る 合 計 四 発 の 六 番 二 号 爆 弾
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対 潜 用 の 六 〇 キ ロ 爆 弾 を 叩 たた き 込 こ む の だ 。 水 面 下 の 影 が 、 み る み る 迫 っ て 来 る 。 田 沼 か ら の 、 変 針 の 指 示 は な い 。 機 首 は ま っ す ぐ 、 敵 潜 を 向 い て い る 。 ﹁ 絶 対 当 た る な 。 確 実 だ ﹂ ほ く そ 笑 み な が ら 佐 瀬 が 爆 弾 の 投 下 レ バ ー に 手 を か け た と き 、 海 面 が 泡 立 ち 、 敵 潜 の 影 が 消 え た 。 ﹁ い か ん ! ﹂ 佐 瀬 は 狼 ろう 狽 ばい の 声 を 上 げ た 。 敵 に 悟 さと ら れ た ! 敵 潜 は 日 本 機 に 発 見 さ れ た こ と に 気 づ き 、 急 速 潜 航 を か け た の だ 。 エ ン ジ ン ・ ス ロ ッ ト ル を 開 き 、 こ の 直 前 ま で 敵 潜 の 影 が 見 え て い た 海 面 に 突 進 す る 。 ﹁ て っ ! ﹂ 叫 び 声 と 共 に 、 爆 弾 の 投 下 レ バ ー を 引 く 。16 胴 体 下 と 両 翼 の 下 、 合 計 四 発 の 六 番 二 号 爆 弾 が 切 り 離 さ れ 、 暁 雲 は 合 計 二 四 〇 キ ロ の 重 量 物 を 切 り 離 し た 反 動 で 飛 び 上 が る 。 ﹁ 二 番 機 投 弾 ! ﹂ 田 沼 が 、 僚 機 の 動 き を 報 告 す る 。 後 続 す る 稲 田 機 が 、 佐 瀬 機 に 倣 なら い 、 四 発 の 対 潜 爆 弾 を 海 面 に 叩 き 込 ん だ の だ 。 若 じゃ っ 干 か ん の 間 を 置 い て 、 炸 さく 裂 れつ 音 が 後 方 か ら 伝 わ る 。 佐 瀬 は 右 旋 回 を か け 、 反 転 す る 。 た っ た 今 、 二 機 合 計 八 発 の 爆 弾 を 叩 き 込 ん だ 海 面 が 、 視 界 に 入 っ て 来 る 。 水 中 爆 発 の 名 な 残 ごり だ ろ う 、 海 面 が 泡 立 っ て い る が 、 波 の う ね り が そ れ を 呑 み 込 み つ つ あ る 。 佐 瀬 は 稲 田 機 を 従 え 、 し ば し そ の 場 を 旋 回 し た 。 機 体 を 操 り な が ら 、 海 面 に 目 を 凝 ら し た 。 撃 沈 に 成 功 し た の で あ れ ば 、 真 ま っ 先 さき に 重 油 が 浮 か び 上 が っ て 来 る は ず だ と 期 待 し た の だ 。 一 分 、 二 分 と 時 間 が 経 過 す る 。 海 面 に 変 化 は な い 。 重 油 に よ っ て 海 面 が 黒 く 染 ま る こ と も 、 救 命 胴 衣 や 日 用 品 等 が 浮 か び 上 が っ て 来 る こ と も な い 。 ﹁ 失 敗 か ! ﹂ 佐 瀬 は 舌 打 ち し た 。 敵 潜 に 気 づ か れ て い な い と 考 え た の は 、 甘 か っ た 。 不 用 意 に 、 潜 望 鏡 の 視 界 内 に 機 体 を 飛 び 込 ま せ て し ま っ た の か も し れ な い 。 佐 瀬 機 と 稲 田 機 は 、 敵 潜 の 撃 沈 に 失 敗 し 、 深 み に 逃 げ ら れ て し ま っ た の だ 。 ﹁ 機 長 、 駆 逐 艦 で す ! ﹂ 田 沼 が 、 弾 ん だ 声 で 報 告 を 上 げ た 。 駆 逐 艦 四 隻 の う ち 、 二 隻 が 隊 列 を 離 れ 、 こ ち ら に 向 か っ て 来 る 様 子 が 目 に 入 っ た 。 日 米 開 戦 の 直 後 か ら 大 量 建 造 が 始 ま っ た 、 松 まつ 型 駆 逐 艦 だ 。 全 長 一 〇 〇 メ ー ト ル 、 最 大 幅 九 ・ 四 メ ー ト ル 、 基 準 排 水 量 一 二 六 二 ト ン と 、 艦 隊 型 駆 逐 艦 の 半 分 程 度
17 第一章 二つの戦線 の 重 量 し か 持 た な い 。 艦 の 形 状 は 、 特 とく 型 、 陽 かげろう 炎 型 、 秋 あき 月 づき 型 と い っ た 艦 に 比 べ る と 雑 然 と し て お り 、 上 部 構 造 物 を 無 む 秩 ちつ 序 じ ょ に 並 べ た よ う な 印 象 を 受 け る 。 だ が 、 対 空 火 力 や 対 潜 兵 装 は 充 実 し て お り 、 船 団 護 衛 や 潜 水 艦 狩 り の 任 務 は 充 分 こ な せ る 。 そ の 松 型 が 、 暁 雲 が 撃 う ち 漏 も ら し た 敵 潜 を 仕 留 め る べ く 、 急 行 し て 来 た の だ 。 白 しら 波 なみ を 蹴 け 立 た て な が ら 突 進 し て 来 た 二 隻 が 、 速 力 を 落 と す 。 先 に 、 二 機 の 暁 雲 が 投 弾 し た 海 面 を 中 心 に 、 探 知 を 開 始 し た の だ 。 ﹁ 佐 瀬 一 番 、 二 番 、 帰 艦 せ よ 。 少 し 早 い が 、 次 の 機 と 交 替 だ ﹂ レ シ ー バ ー に 、 新 井 飛 行 長 の 声 が 入 っ た 。 対 潜 爆 弾 を 使 い 果 た し た 暁 雲 は 、 仮 に 敵 潜 を 発 見 し て も 攻 撃 で き な い 。 一 旦 母 艦 に 戻 り 、 待 機 せ よ と の こ と で あ ろ う 。 ﹁ 佐 瀬 一 番 、 帰 還 し ま す ﹂ ﹁ 佐 瀬 二 番 、 続 け 。 帰 艦 す る ﹂ 佐 瀬 は 新 井 に 返 答 し 、 次 い で 稲 田 に 命 令 を 送 っ た 。 後 は 任 せ た
︱
そ の 意 を 込 め て 、 二 隻 の 駆 逐 艦 に バ ン ク し て 見 せ 、﹁ 翔 燕 ﹂ に 機 首 を 向 け た 。 エ ン ジ ン ・ ス ロ ッ ト ル を 絞 り つ つ 、 艦 尾 か ら 飛 行 甲 板 上 に 滑 り 込 ん だ 。 機 体 が 完 全 に 停 止 し 、 エ ン ジ ン を 切 っ た と き 、 艦 の 右 舷 後 方 か ら 炸 裂 音 が 聞 こ え て 来 た 。 佐 瀬 は 、 田 沼 や 稲 田 と 顔 を 見 合 わ せ 、 頷 うなず き 合 あ っ た 。 二 隻 の 松 型 駆 逐 艦 が 、 爆 雷 攻 撃 を 開 始 し た の だ 。 バ ブ ヤ ン 海 峡 に お け る 第 五 二 航 空 戦 隊 と 米 潜 水 艦 の 戦 い を 、 ル ソ ン 島 の 北 東 岸 付 近 に 位 置 す る パ ラ ウ イ 島 か ら 見 つ め る 目 が あ っ た 。 戦 闘 が 終 了 し 、 五 二 航 戦 が 水 平 線 の 向 こ う 側 に 消 え る と 、 一 通 の 報 告 電 が マ ニ ラ に 飛 ん だ 。18 ﹁﹃ バ バ ブ ヤ ン ズ ・ ド ッ グ ブ ヤ ン の 番 犬 ﹄ に 見 つ か っ た か ﹂ 報 告 を 受 け た ア メ リ カ 合 衆 国 海 軍 ア ジ ア 艦 隊 の 司 令 官 代 行 を 務 め る カ ー ル ・ カ ー ル ソ ン 少 将 は 、 唸 うな り 声 を 上 げ た 。 ﹁ バ ブ ヤ ン ズ ・ ド ッ グ ﹂ と は 、 日 本 海 軍 の 対 潜 部 隊 に 対 す る ア ジ ア 艦 隊 の 呼 称 だ 。 敵 の 対 潜 部 隊 に は 、 他 に ﹁ バ バ シ ー ズ ・ キ ー パ ー シ ー の 門 衛 ﹂﹁ バ バ リ ン タ ン ズ ・ ウ ォ ッ チ ャ ー リ ン タ ン の 見 張 り ﹂ と い う 呼 称 が あ る 。 ﹁ 味 方 の 潜 水 艦 は 逃 れ ら れ た の か ? ﹂ ﹁ 陸 地 か ら の 観 察 だ け で は 、 は っ き り し た こ と は 分 か り ま せ ん が 、 敵 の 対 潜 部 隊 が 引 き 上 げ た と こ ろ を 見 ま す と 、 沈 め ら れ た 可 能 性 が 大 で す ﹂ ア ジ ア 艦 隊 の 参 謀 長 代 行 を 務 め る フ ィ リ ッ プ ・ ラ ン サ ム 大 佐 が 、 沈 ん だ 声 で 答 え た 。 ﹁ 我 々 の 目 の 前 で 、 好 き に や っ て く れ る ! ﹂ 忌 いま 々 いま し さ を 抑 おさ え 切 れ ず 、 カ ー ル ソ ン は 吐 き 捨 て る よ う に 呟 つぶや い た 。 サ マ ー ル 、 レ イ テ 、 ミ ン ダ ナ オ の 三 島 が 日 本 軍 に 占 領 さ れ て 以 来 、 ル ソ ン 島 の 合 衆 国 軍 は 、 孤 立 状 態 に あ る 。 航 空 機 は 、 第 1 4 A F 一 四 航 空 軍 の 所 属 機 で あ れ 、 海 軍 機 で あ れ 、 全 て 喪 失 し 、 連 絡 機 を 飛 ば す こ と も で き な い 。 ア ジ ア 艦 隊 も 壊 滅 し 、 主 だ っ た 艦 艇 は 、 マ ニ ラ 湾 や バ タ ン ガ ス 港 で 無 む 惨 ざ ん な 姿 を さ ら し て い る 。 米 日 開 戦 時 の ア ジ ア 艦 隊 司 令 官 ト ー マ ス ・ ハ ー ト 大 将 は 、 昨 年 四 月 の ラ オ ア グ 沖 海 戦 ︵ 第 一 次 ル ソ ン 島 沖 海 戦 の 米 側 公 称 ︶ の 際 、 旗 艦 ﹁ ボ ル テ ィ モ ア ﹂ の 艦 上 で 壮 そう 烈 れつ な 戦 死 を 遂 げ た た め 、 最 先 任 と な っ た カ ー ル ソ ン が 司 令 官 代 行 と し て 、 ア ジ ア 艦 隊 の 指 揮 を 執 と っ て い る 。 ア ジ ア 艦 隊 が ほ と ん ど の 艦 艇 を 失 い 、 ル ソ ン か ら の 脱 出 も ま ま な ら な い 状 況 下 で は 、 名 ば か り の 指 揮 官 に 過 ぎ ず 、 司 令 部 も マ ニ ラ 市 内 の ホ テ ル を 間 ま 借 が り し て い る 状 態 だ 。 マ リ ア ナ 諸 島 に 展 開 す る 第 2 0 A F 二 〇 航 空 軍 も 、 ハ ワ イ
19 第一章 二つの戦線 の 太 平 洋 艦 隊 も 、 小 お 笠 がさ 原 わ ら 諸 島 の 日 本 軍 航 空 部 隊 や 日 本 海 軍 の 主 力 艦 隊 と 対 抗 す る だ け で 精 一 杯 で あ り 、 ル ソ ン 島 を 救 援 す る 力 は 持 た な い 。 こ の よ う な 状 態 で は 、 ル ソ ン 海 峡 を 塞 ふさ ぐ 日 本 軍 の 対 潜 部 隊 に 手 を 出 す な ど 、 思 い も 寄 ら な い 。 せ い ぜ い 、 陸 地 か ら 観 察 し た 敵 艦 の 動 き や 、 傍 ぼう 受 じ ゅ し た 敵 の 通 信 に つ い て 、 ハ ワ イ の 太 平 洋 艦 隊 司 令 部 に 報 告 を 送 る 程 度 だ 。 14A F が 台 湾 南 部 の 制 空 権 を 奪 取 し 、 同 地 の 日 本 軍 を 追 い 詰 め た こ と な ど 、 今 と な っ て は 遠 い 昔 の 出 来 事 の よ う に 思 え る 。 ア ジ ア 艦 隊 の 指 揮 を 預 か る 身 と し て は 悔 くや し い 限 り だ が 、 今 は や り き れ な い 思 い を 抱 き つ つ 、 切 せっ 歯 し 扼 やく 腕 わん す る 以 外 に な い の が 現 状 だ っ た 。 ﹁ 報 告 に よ れ ば 、 バ ブ ヤ ン ズ ・ ド ッ グ の 空 母 は 平 甲 板 型 で は な く 、 艦 橋 ら し き 上 部 構 造 物 が 認 め ら れ た 、 と の こ と で す ﹂ カ ー ル ソ ン の 下 で 情 報 参 謀 を 務 め る テ ィ ミ ー ・ ウ ッ ズ マ ン 少 佐 が 言 っ た 。 ﹁ ジ ャ ッ プ の 護 A C V 衛 空 母 が 、 ア イ ラ ン ド 型 の 艦 橋 を 持 つ と は 初 はつ 耳 みみ だ な 。 未 知 の 新 型 艦 か な ? ﹂ ラ ン サ ム 参 謀 長 代 行 が 首 を 捻 ひね っ た 。 日 本 海 軍 の 軽 空 母 は 、 機 動 部 隊 用 の 祥 ショウホウ ・ タイプ 鳳 型 で あ れ 、 船 団 護 衛 用 の 白 ハクヨウ ・ タイプ 鷹 型 で あ れ 、 ア イ ラ ン ド 型 の 艦 橋 を 持 た な い の が 特 徴 だ 。 こ れ ら の 艦 の 艦 橋 は 、 飛 行 甲 板 前 縁 の 直 ちょっ 下 か に 位 置 し て い る 。 だ が 、 パ ラ ウ イ 島 の 沿 岸 監 視 部 隊 が 見 た 空 母 は 、 前 部 に 小 こ 振 ぶ り な 艦 橋 を 持 つ と い う 。 日 本 海 軍 は 、 ハ ク ヨ ウ ・ タ イ プ に 続 く 新 型 の 護 衛 空 母 を 就 しゅう 役 えき さ せ た の か 、 と ラ ン サ ム は 思 っ た よ う だ が
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。 ﹁ 彼 ら が 見 た 艦 は 、 サ ン ガ モ ン 級 で あ る 可 能 性 大 だい で す 。 バ タ ン ガ ス の 沖 で S 12船 団 と 共 に 拿 だ 捕 ほ さ れ た 、 我 が 軍 の 空 母 で す ﹂ ﹁ サ ン ガ モ ン 級 だ と ? ﹂20 ウ ッ ズ マ ン の 言 葉 を 聞 い て 、 カ ー ル ソ ン は 大 声 で 聞 き 返 し た 。 フ ィ リ ピ ン ・ ル ソ ン 島 の 友 軍 に 送 ら れ た 最 後 の 輸 送 船 団 S 12が 、 一 隻 残 ら ず 日 本 海 軍 に 拿 捕 さ れ た こ と は 、﹁ バ タ ン ガ ス の 屈 くつ 辱 じ ょく ﹂ と し て 、 ア ジ ア 艦 隊 将 兵 の 記 憶 に 刻 ま れ て い る 。 バ タ ン ガ ス ま で た ど り 着 い た 船 団 が 、 荷 に 揚 あ げ の 最 中 に 日 本 艦 隊 に 襲 撃 さ れ 、 全 艦 が ル ソ ン か ら 連 れ 去 ら れ た と き の 絶 望 感 は 、 ど れ ほ ど 時 間 が 経 と う と も 、 決 し て 忘 れ る も の で は な い 。 こ の と き 、 船 団 に 随 ずい 伴 は ん し て い た 四 隻 の サ ン ガ モ ン 級 が 、 輸 送 船 と 共 に 日 本 軍 に 拿 捕 さ れ た こ と は 、 ア ジ ア 艦 隊 も 把 は 握 あく し て い る 。 そ の サ ン ガ モ ン 級 が 、 日 本 海 軍 に 編 入 さ れ 、 使 用 さ れ て い る と い う 噂 う わ さ は 、 マ ニ ラ の 司 令 部 に も 聞 こ え て 来 た が 、 あ く ま で 噂 で あ り 、 写 真 等 で 確 認 さ れ た こ と は な か っ た 。 ウ ッ ズ マ ン が 言 っ た 通 り な ら 、 パ ラ ウ イ 島 の 監 視 部 隊 は 、 噂 が 真 実 で あ っ た と 確 認 し た こ と に な る 。 ﹁ 確 か か ね ? ﹂ ﹁ 陸 地 か ら 遠 望 し た だ け で す か ら 、 確 実 と は 言 え ま せ ん が 、 日 本 海 軍 の 護 衛 空 母 で あ れ ば 平 甲 板 型 に な る は ず で す 。 艦 橋 が 確 認 さ れ た 以 上 、 サ ン ガ モ ン 級 の 可 能 性 が 濃 厚 で す ﹂ ﹁ も し 、 そ の 通 り な ら ⋮ ⋮ ! ﹂ カ ー ル ソ ン は 、 激 し い 敵 てき 愾 がい 心 し ん と 憎 悪 を 覚 え た 。 鹵 獲 し た 兵 器 を 自 軍 に 編 入 し 、 使 用 す る と い う ケ ー ス は 、 珍 し い も の で は な い 。 独 立 戦 争 で は 、 武 器 や 弾 薬 が 乏 とぼ し い ア メ リ カ 軍 に と り 、 イ ギ リ ス 軍 か ら 奪 っ た 兵 器 は 貴 重 な 存 在 だ っ た し 、 南 北 戦 争 で は 、 北 軍 と 南 軍 双 方 が 、 鹵 獲 し た 小 銃 や 大 砲 を 、 そ の ま ま 自 軍 で 使 用 し た 。 今 度 の 大 戦 で も 、 ヨ ー ロ ッ パ ・ ロ シ ア を 制 圧 し た ナ チ ス ・ ド イ ツ 軍 が 、 接 収 し た ソ 連 の 戦 車 や 火 砲 、 航 空 機 を 自 軍 に 編 入 し 、 イ タ リ ア の 地 上 戦 闘 で 使 用 し た り 、 西 ヨ ー ロ ッ パ 沿 岸 の 防 御 陣 地 に 配 置 し た り
★ ご 覧 い た だ い た 立 ち 読 み 用 書 籍 は P D F 形 式 で 、 作 成 さ れ て い ま す 。 こ の 続 き は 書 店 に て お 求 め の 上 、 お 楽 し み く だ さ い 。