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NICU における 10 年間の MRSA 検出率と抗菌薬の使用状況

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Academic year: 2021

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(1)

はじめに

NICU は現代の病院の中では,院内感染のリス クが高い施設に位置づけられている.実際に当施 設からの報告

1)

も含めて MRSA の検出頻度が極め て高い報告

2)3)

やそのための感染対策を論じた報 告

4)〜6)

が多くみられる.当施設で も 1990 年 代 に MRSA 敗血症が多発した時期が有り

7)

,院内感染 対策の徹底により敗血症患者,保菌者数も減少を 認めた.その結果として,抗菌薬使用状況にも大 きな変化が見られたので,10 年間の動向を報告す る.

対象と方法

対象は 1992 年から 2001 年までに,旭川厚生病 院 NICU に入院した新生児 2,000 名であるが,入 院後 1 週間以内に死亡した児 18 名は除外した. こ れらの児について,入院時と入院後定期的に 1 週 間ごとに鼻咽腔および便培養を行い,さらに適宜 行 っ て い る 眼 脂,皮 膚 ス ワ ブ,尿 の 培 養 か ら MRSA を 1 回でも検出した児を MRSA 保菌者と した.

敗血症は臨床症状と検査所見から主治医が感染 症を疑って血液培養を行い,その結果原因菌が検 出された例とした.菌が検出されても,経過から 混入菌と判断した例は除外した.

抗菌薬の使用調査は長期間入院し院内感染の危

NICU における 10 年間の MRSA 検出率と抗菌薬の使用状況

旭川厚生病院小児科

坂 田 宏

(平成 14 年 6 月 17 日受付)

(平成 14 年 10 月 7 日受理)

第76回日本感染症学会総会学術講演会座長推薦論文

1992 年から 2001 年までに,旭川厚生病院 NICU に入院した新生児について,入院時と入院後定期的に 1 週間ごとに鼻咽腔および便培養を行い,さらに適宜行っている眼脂,皮膚スワブ,尿の培養から MRSA を 1 回でも検出した児を MRSA 保菌者として,全 NICU 入院患者に対する比を保菌者率として求めた.

院内感染による MRSA 敗血症は 1993 年から 1996 年の間に 17 例と多数の患者が発生した.MRSA 保菌 者率は 1992 年が 14.9% であり,1994 年が 40.0% に増加したが,2001 年には 7.8% まで減少した.出生 体重別にみると,1992 年には 1,500g 以上が 6.5%,1,000〜1,499g が 45.0%,1,000g 未満が 60.0% であっ た.3 群とも 1994 年が最も高い値で,1,000g 未満群と 1,000〜1,499g 群では 100%,1,500g 以上群では 24.5

%であった.しかし,2001 年にはそれぞれ体重が少ない順で 21.4%,10.5%,6.2% まで減少した.出生 体重 1,500g 未満の児については抗菌薬の使用状況を調査した.抗菌薬の投与期間は 1,000patient-day あ たり 148.4 と 1995 年が最も長かったが,2001 年には 32.6 まで減少した.抗菌薬の薬価の総額も 1995 年には約 305 万円に達していたが,2001 年に約 47 万円まで減少した.

〔感染症誌 77:24〜28,2003〕

別刷請求先:(〒078―8211)旭川市 1 条通 24 丁目

旭川厚生病院小児科 坂田 宏

Key words: MRSA, sepsis, antibiotics, Neonatal Intensive Care Unit, newborn

(2)

険性が高い,出生体重 1,500g 未満の極低出生体重 児について行った.1 年毎の 1,000patient-day あた りの抗菌薬投与日数,投与した抗菌薬の種類と抗 菌薬の薬価の総額を調べた.投与量が製品の最小 単位製剤より少なくとも,その製剤を使用してい る.薬価は 2002 年 1 月の薬価に基づいた.実際に 使 用 し た 抗 菌 薬 は cephem 系 が cefotaxime(C-

TX),flomoxef(FMOX),cefozopran(CZOP),

carbapenem 系が imipenem

!

cilastatin sodium(I- PM

!

CS),meropenem(MEPM),抗 MRSA 薬が vancomycin(VCM),arbekacin(ABK),これ以 外には ampicillin(ABPC)と aztreonam(AZM)

であった.

Fig. 1 Change in septic patients and MRSA carrier rate

( ):all infants admitted to NICU

Fig. 2 Change of MRSA carrier rate in each birth-weight group

( ):infants admitted to NICU

(3)

Fig. 1 に 10 年間における敗血症と MRSA 保菌 者 率 の 変 動 を 示 し た.1993 年 に MRSA 6 例,

MRSA 以外の菌が 9 例と最も多くの敗血症が発 症していた.MRSA による敗血症は 1994 年に 4 例,1995 年に 5 例と多かったが,1996 年に 2 例と 減少した.1998 年の 1 例は他院で MRSA 敗血症 を発症してから当施設に入院になった児であり,

実質的な当施設での院内感染による MRSA 敗血 症は 1996 年が最後であった. 他の原因菌による敗

血症も 1994 年と 1995 年が多かった.

MRSA 保 菌 者 は 1992 年 に は 14.9% で あ っ た が,1994 年には 40.0% まで増加し,1999 年まで 15〜30% で経過した.しかし,2000 年が 9.3%,

2001 年が 7.8% と著しい低下を認めた.

保菌者を出生体重別にみた成績を Fig. 2 に示し た.出生体重が少ないほど保菌者率は高かった.

特 に 1,000g 未 満 の 児 と 1,000〜1,499g の 児 で は 1994 年には 100% と,入院した児がすべて保菌者 になるという状態であった.1995 年以降は 1,000

Fig. 3 Change of antibiotic treatment periods per 1,000 patient-day

Fig. 4 Change of costs in antibiotics groups in very-low-birth-weight infants

(4)

g 未満の児の保菌者率は年々低下し,2001 年には 21.4% であった.1,000〜1,499g の児は年によって 増減はみられたが,2001 年には 10.5% まで減少し た.1,500g 以上の児では保菌者率は低出生体重児 より低いが,同様に 1994 年に最高値 24.5% に達 し,2001 年に 6.2% まで低下した.

Fig. 3 に 1,000patient-day あたりで表した抗菌 薬の使用状況を示した.抗菌薬の投与期間は 1995 年 が 最 も 長 く,1,000patient-day あ た り 148.4 で あったが,2001 年には 32.6 まで減少した.抗菌薬 の内訳をみると抗 MRSA 薬を単独で使用した期 間は 1995 年に最長で 47.8 であったが,2001 年に は 4.1 と 10 分の 1 以下となった.同じく IPM

!

CS と VCM の併用も 1995 年に最長で 28.7 であった が,2001 年には 2.5 とやはり 10 分の 1 以下となっ た.

Fig. 4 に薬価の総計で表した抗菌薬の投与状況 を示した.1995 年が最も高く約 305 万円に達して いたが,2001 年には約 47 万とほぼ 6 分の 1 まで 減少した.

当 施 設 は 1988 年 か ら cephem 耐 性 の

Entero- bacter cloacae

に よ る 敗 血 症 が 相 次 い で い た た め

8)

,敗血症症状が認められた際の第一選択剤に IPM

!

CS を用いることが多かった.そのことが原 因かどうかは明らかではないが,MRSA 敗血症は 1991 年に第 1 例を認め, 1993 年以降は今回の成績 で示したように多数の患者が発生した. ただ, 1993 年から 1995 年は MRSA だけが増加したのではな く,E. cloacae ,Acinetobacter spp.や

Klebsiella spp.

などのグラム陰性桿菌による敗血症も多発し,

MRSA とあわせると 1 年間で 10 名以上の敗血症 が認められていた.さらに入院する低出生体重児 のほとんどすべてが MRSA 保菌者となる状態で あった.

環境の整備や一作業一手洗いなどの励行には充 分配慮していたはずがこのような事態におちいっ たことから,院内感染対策の見直しを行った.ま ず,手洗いの徹底を叫ぶだけでは効果があがらな いことを痛感したので,看護スタッフの中で院内 感染の教育・指導ができる人材の育成をはかっ

た.数名の看護スタッフで小グループをつくり,

院内感染をテーマに研究させることによって知識 を身に付けさせ,そのグループを核として他のス タッフへの指導を行わせた.そして,低出生体重 児の皮膚の清拭方法や各種消毒薬

9)

の手指消毒の 効果

10)

などの研究の成果を実際の対策に取り入れ た.また,一人のスタッフが多数の児を診療・看 護をすると,それだけ交差感染の危険性は高くな るので,一人があつかう児を減らせるように 1995 年から夜勤を 1 名増員した.MRSA による皮膚の 汚染も交差感染の危険性が高いと考え,清拭や沐 浴で皮膚の清潔維持に配慮した.その他,当施設 で行っている対策は公表

11)

しているとおりで,他 の施設

4)〜6)

のように児に接触する時に使い捨て手 袋を使用するとか mupirocin を使用して積極的に 除菌を行うことはしていない.しかし,実際の目 に見える効果としての発現は遅かったものの,

NICU スタッフ自ら感染対策の確立を目指した方 法とその実践の努力が敗血症と MRSA 保菌者の 減少に結びついた.

低出生体重児は感染防御能が未熟な上に,気管 チューブや血管内留置カテーテルの使用も多く,

感染リスクは極めて高い.一旦感染症が成立する

と急激に進行し敗血症や髄膜炎となる例も少なく

ない.数時間の治療の遅れが予後に重大な影響を

及ぼす.そのため,どうしても抗菌薬を過剰に投

与してしまう傾向にある.今回の成績において

1997 年は敗血症が 1 例であったが,抗菌薬の投与

期間などはそれ以前と大きな差はみられなかった

ことでもわかる.つまり,敗血症の発症が多かっ

たので MRSA 保菌者の発症を必要以上に心配し

て,適応をこえた投与をしていたことが推測され

る.また,発症時の臨床所見や一般検査成績から

原因菌を推測することが困難なため,敗血症が多

く発生した時期には IPM

!

CS と抗 MRSA 薬の併

用で治療を開始し,原因菌が判明した時点で単剤

にしていた.しかし,原因菌が判明しない場合に

は症状が改善するまで併用をせざるを得なかっ

た.抗菌薬の長期投与は耐性菌の定着・増殖の原

因であり,1992 年から 1996 年に敗血症が多発し

た一因と思われる.

(5)

2000 年以降には,IPM

!

CS と抗 MRSA 薬の併 用は少なくなり,全体的に抗菌薬は投与期間,薬 価の総額ともに著明に減少した.これは抗菌薬の 薬価としては高額である抗 MRSA 薬の減少にお うところが大と思われた.感染対策にかかった費 用を正確に算定することはできないが,出費とし ては消毒薬の使用が多少増加した程度であり,当 施設における感染対策の対費用効果は大であった と考える.

本論文の要旨は第 76 回日本感染症学会総会(2002 年 4 月,東京)にて報告した.なお,多忙な日常診療の場で院 内感染対策の実施に努力している当院 NICU スタッフに 深謝いたします.

1)松村久美,高橋あずさ,坂田 宏:NICU に入院し た低出生体重児におけるメチシリン耐性黄色ブ ド ウ 球 菌 の 検 出 状 況.環 境 感 染 1999;14:

189―91.

2)長谷川功,羽田 聡,徳田幸子,中島久和,伊藤 陽里,村田美由紀,他:当院 NICU におけるメチ シリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の細菌学的 検討.新生児誌 2000;36:454―60.

3)土井まつ子, 竹村ひとみ, 青木寿予, 岩本義久,

臼倉幸宏,志村浩二,他:NICU 病棟から分離され た MRSA の疫学的解析(第一報).環境 感 染 2000;15:306―11.

4)大城 誠,高橋理栄子,西川 浩,加藤有一,大

橋直樹,早川昌弘,他:新生児集中治療室におけ るメチシリン耐性黄色ブドウ球菌保菌児の減少 手袋着用の効果.日児誌 1998;102:1171―5.

5)中村利彦,岩村 透,五十嵐葉子,川崎浩司,柿 沼亮太,小俣 真,他:メチシリン耐性黄色ブド ウ球菌保菌ハイリスク新生児に対するムピロシ ン鼻腔用軟膏の有用性に関する検討.未熟児新生 児誌 1998;10:231―8.

6)山田雅明,高橋立子,丹野 仁,柿澤秀行,伊藤 健,中江信義:新生児集中治療室でのムピロシン 鼻腔用軟膏塗布によるメチシリン耐性黄色ブド ウ球菌除菌効果の検討.周産期医学 1998;28:

1647―51.

7)坂田 宏,石岡 透,丸山静男,梶野真弓,佐藤 敬,雨宮 聡:極低出生体重児におけるメチシリ ン耐性黄色ブドウ球菌感染症.新生児誌 1995;

31:458―62.

8)坂田 宏,丸山静男:新生児集中治療施設におけ るEnterobacter cloacae敗血症の検討.感染症誌 1997;71:318―22.

9)藤原利恵,村田園美,佐々木知美,石澤 律,石 岡 透,坂田 宏,他:極小未熟児の皮膚の細菌 汚染防止のための清拭方法の検討.臨床小児医学 1995;43:45―7.

10)玉置ゆかり, 田宮光子, 堺かほり, 村吉ちどり,

鎌田敦子,井幡恵美,他:自動手指消毒器に使用 す る 消 毒 剤 の 検 討.周 産 期 医 学 1995;25:

109―11.

11)坂田 宏:MRSA への基本的な対応.科別の対 応.小児科での MRSA への対 応.INFECTION CONTROL 2001;別冊:108―14.

10-yearly Monitoring of Prevalence of MRSA and Antibiotic Usage in a Neonatal Intensive Care Unit

Hiroshi SAKATA

Department of Pediatrics, Asahikawa Kosei Hospital Asahikawa 1―24, Hokkaido, Japan

From 1992 to 2001, we studied the prevalence of infants colonized MRSA and antibiotic usage for very-low-birth-weight infants in a neonatal intensive care unit at Asahikawa Kosei Hospital. We investigated nasopharyngeal swabs and stool samples every week after admission, and occasionally skin swabs, eye discharges and urines. Seventeen infants contracted nosocomial blood stream infec- tion caused by MRSA which occurred between 1993 and 1996. Rate of infants colonized MRSA to all inpatients was 14.9% in 1992, which increased to 40.0% in 1994, and decreased to 7.1% in 2001. In each birth-weight group, rates of≧1,500g, 1,000―1,499g, and<1,000g infants were 6.5%, 45.0% and 60.0% in 1992, 24.5%, 100%, and 100% in 1994, 6.2%, 10.5%, and 21.4% in 2001.

The longest period of antibiotic usage was 148.4 per 1000 patient-day in 1995 and decreased to

32.6 per 1,000 patient-day in 2001. The total value of antibiotics in 1995 was about ¥3,050,000, but in

2001 was about ¥470,000.

Fig. 2 Change of MRSA carrier rate in each birth-weight group
Fig. 4 Change of costs in antibiotics groups in very-low-birth-weight infants

参照

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