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Academic year: 2021

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調査地概要

著者 貝瀬 彩華

雑誌名 静岡市・由比 西部を中心に. ‑ (フィールドワーク 実習報告書 ; 平成30年度) 

ページ 3‑7

発行年 2018‑12

出版者 静岡大学人文社会科学部社会学科文化人類学コース

URL http://hdl.handle.net/10297/00026290

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調査地概要

1 調査概要

静岡大学人文社会科学部社会学科文化人類学コースでは、人類学的なフィールドワーク の手法を実際に学ぶために、毎年現地調査を行っている。2018年度は527日から31 までの5日間、静岡県静岡市清水区由比に滞在した。本コースが由比で調査をするのは3 目で、2015年度には由比の中部を拠点として主要な産業や生活文化について学び、2017 度には北部の入山地区と由比川流域を中心に研究をしてきた。本年度は、これまでに大きく 取り上げられてこなかった寺尾、今宿、倉沢、西山寺を拠点とした。以下、本報告書では今 年度の調査地を由比西部として表記するが、執筆者の中には研究の過程で由比や町屋原に ついても一部取り上げており、これらの地域に関する記述が出てくることを断っておきた い。また、旧由比町にあたる由比全体を「由比」と表記し、由比にある各地区を、例えば「寺 尾地区」のように表記する。

今回、現地調査実施前に、事前に文献やインターネットから由比の地理や歴史、人口統計 などに関する資料を収集した。実習では、教員2名、学生5名の計7名が参加し、由比の 見晴旅館に宿泊し、学生はそれぞれ興味をもった分野について参与観察とインタビュー調 査の他、文献、写真、映像などの資料収集を通じて自らのテーマに沿って研究を進めた。

2 静岡市清水区由比西部の概要

2.1 地理と交通

静岡市清水区由比は静岡市の東部にあたる。面積23.03平方キロメートル、人口8,000 程の地区である。東西交通の要衝でありながらも、西側が薩埵峠に挟まれた交通の難所であ ったため、「東海道の親知らず」として古くから有名である。また、歌川広重の「東海道五 十三次」にも由比は描かれており、薩埵峠から見える富士山は絶景である。

由比の西側は浜石岳から薩埵峠に連なる山稜で清水区興津地区に接している。そして新 潟県糸魚川と駿河湾を結ぶフォッサマグナ地帯にあるため、古来から地すべりが発生しそ れに伴って災害が起きていた。近年由比では災害対策工事が施されているが、倉沢には今で も工事を継続している場所がある。詳しくは、4章を参照いただきたい。

由比の主要な交通として、旧東海道や東海道新幹線、JR東海道線、東名高速道路、国道 1号が東西を横断し、そこから静岡県道76号富士富士宮由比線が南北に走っている。由比

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西部を訪れるには車でこれらの道路を通るか、またはJR由比駅から徒歩で行くことができ る。

2.2 産業

由比といえばサクラエビ漁やシラス漁が有名であるが、由比の漁業はそれだけではない。

西部に暮らす漁業従事者は、西倉沢地区を中心として定置網漁業を営んできた。昭和後期に は、富山県の漁業会社が経営に参入したことで最盛期を迎え、現在では三重県の漁業会社を 親会社として倉沢漁業株式会社が定置網漁業を運営している。約 15 年前から「倉澤の鯵」

というブランドを立ち上げ、由比の定置網漁業の知名度向上と観光客の獲得に力を入れて いる。詳しくは2章を参照されたい。

また、由比では漁業に加えて農業も盛んである。由比は三方に山をめぐらし、南は駿河湾 に面する丘陵地帯で傾斜地が多く、気候温暖で柑橘の栽培に適し、明治初期より柑橘農業が 勃興し、ミカンを農業の主軸として今日に至っている。さらに、西部ではビワの生産も盛ん に行われている。一般に、ビワの生産が盛んな九州地方では「茂木」とよばれる品種が多く 生産されているのに対し、由比では粒が大きく糖度も高い品種である「田中」が生産されて いる。また、収穫時期の短さと近年における収穫量の減少傾向から、一部メディアからは由 比のビワは「幻のビワ」とも呼ばれている。しかし、他の農家と同様、ビワ農業も現在では 高齢化やそれを継ぐ若者の不足に悩まされているという現状がある。

このように、由比の有名な産物であるサクラエビやシラス、ミカンなどのほかにも歴史あ る産業が由比西部には根差している。農業に関しては、3章を参照されたい。

3 人口と学区

旧由比町の人口は 1925(昭和25)年の14,386人をピークに年々減少し、20183 月調べでは、人口は8,164名である。1992(平成4)年には、過疎活性化特別措置法による 地域指定を受けた。しかし、過疎地域活性化計画がすぐに打ち出され、人が町外に流れさら に過疎化するのを防ぐために宅地造成などが行われた。1997(平成9)年には過疎地域指定 から外れたが、2008(平成20)年には静岡市と合併され、旧由比町は現在静岡市清水区由 比となっている。

次に、由比西部の人口に注目してみたい。表1は、由比西部(寺尾、今宿、倉沢、西山寺)

と中心部の由比の20183月時点の人口をまとめたものである。由比西部の人口は1,698 名であり、そのうち65歳以上の高齢者は729名と人口の約四割を占めている。中心部の由 比と比較しても由比西部の高齢化率は高く、特に西端の西倉沢では高齢化率が 48.63 パー セントとなっており、人口の約半数が65歳以上の高齢者である。

続いて、由比の学区についてみていく。由比には現在、由比小学校と由比北小学校の二つ

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がある。もともとは別の名前であったが、1950(昭和25)年に校名は町屋原小学校を由比 西小学校に、北田小学校を由比東小学校に、入山小学校を由比北小学校に変更することにな った。そして、1967(昭和 42)年41日に東西小学校が統合し、由比小学校となった。

よって現在は、由比北小学校に入山と室野の住人が、由比小学校に阿曽や東山寺、北田、由 比、町屋原、西山寺、今宿、寺尾、それに倉沢の児童が通っている。

歴史と行政区の変遷

「由比」という地名の由来には、共働漁労の「ゆいが浜」形態や、人とつながる「結」や 宿場町に関係した「湯井」がもとになっていると言われている。鎌倉時代では由比地区は、

「湯井」とされ、東海道の宿として機能したそうだ。1601 (慶長6)年徳川家康により宿 駅制が定められ、由比宿が東海道16番目の宿となり以後栄えた。現在も古い町並みが残り、

歴史ある寺院も多い。由比には、臨済宗妙心寺派寺院8ヵ寺、日蓮宗寺院4ヵ寺、浄土宗寺 1ヵ寺、真言宗醍醐寺派寺院1ヵ寺、曹洞宗寺院1ヵ寺の計15ヵ寺の寺院があり、その うち 4 ヵ寺が西部に位置している。寺院は古くから地域社会と密接に関わってきた。しか し人びとの生き方が多様化していく中で、その在り方は変化してきている。5章は、由比の 寺院がこうした状況にどう向き合っているかを描いている。

1871(明治4)年には廃藩置県によって静岡藩は静岡県となり、翌年1872(明治5)年

に宿駅制が廃止された。1889(明治22)年には市制・町村制の施行の施行に伴い、由比宿 は、周囲の10ヶ村(北田村、町屋原村、今宿村、寺尾村、東倉沢村、西倉沢村、西山寺村、

阿僧村、東山寺村、入山村)と合併し、由比町が誕生した。同年には第一回町会議員選挙が 行われ、町長の役職と町役場が置かれた。それぞれの村が旧町内の区になったので、翌年に は区長制が始まり役場が置かれることになった。その時から2008(平成20)年の平成の合 併までのおよそ120年、旧由比町は町制を敷いてきた。

平成に入ってからは、「桜えび漁業100周年」「東海道400年祭」を迎え、主要な観光イ ベントである『由比さくらえびまつり』『由比街道まつり』が始まった。

総数 15歳未満 15~64歳 65歳以上 世帯数 65歳以上 世帯数 高齢化率

由比 2,109 241 1,157 711 837 711 837 33.71%

由比今宿 889 48 441 400 364 400 364 44.99%

由比寺尾 429 36 217 176 169 176 169 41.02%

由比東倉澤 65 6 32 27 29 27 29 41.53%

由比西倉澤 146 11 64 71 61 71 61 48.63%

由比西山寺 169 16 86 55 56 55 67 33.13%

由比における町名別人口

出典:静岡市の町名別人口(住民基本台帳の過去データ)より水野作成

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また、2003(平成 15)年 4 月には静岡市が旧清水市と合併して、新静岡市が誕生した。

2006(平成18)年には隣接する旧蒲原町が静岡市と合併し、由比町は飛び地となった。そ

れから、2008(平成20)年の静岡市との合併によって、旧由比町は静岡市清水区由比地区 となり、現在に至る。由比地区では合併をきっかけとして地域活性化事業に取り組む住民が 増えてきており、その具体的な取り組みとしては、由比地区連合自治会による「由比道の駅 建設計画」や、由比朝市の会「そこっと」による「しずおか結市」などが挙げられる。1 では、地域に暮らす人々のこうした取り組みを記述、分析した。

本報告書は、本章も含めて全 6 章と、一部のインタビューを録音して書き起こした口述 記録、コラムから構成されている。それぞれの章が取り扱うテーマは、学生一人ひとりの興 味関心のありかを示すとともに、由比西部の人々が日々向き合っている問題でもあると考 える。また、本報告書が中心的に取り上げる由比西部のみならず、2015年度、2017年度の 調査と合わせて、今年度の報告書が由比全体の実態を明らかにする一端を担うことができ れば幸いである。

図1 静岡県地図

出典:Mapion (20181023日取得、https://www.mapion.co.jp/map/admi22.html)

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2 由比地図

出典:由比町史より長廻作成

参考文献

静岡市

2018 「静岡市の人口・世帯(住民基本台帳の過去データ)」(2018531日取得、

www.city.shizuoka.jp/000_001587.html) 由比町史編さん委員会

1989 『由比町史』静岡県由比町教育委員会。

2008 『由比町史 補遺』 静岡県由比町教育委員会。

図 2  由比地図  出典:由比町史より長廻作成  参考文献 静岡市    2018  「静岡市の人口・世帯(住民基本台帳の過去データ)」 (2018 年 5 月 31 日取得、            www.city.shizuoka.jp/000_001587.html) 。  由比町史編さん委員会  1989  『由比町史』静岡県由比町教育委員会。    2008  『由比町史  補遺』  静岡県由比町教育委員会。

参照

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