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後進諸国と比較生産費説

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Academic year: 2021

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(1)

後進諸国と比較生産費説

中  島

1

 低開発諸国が経済発展を望み,その方向に前進しつ〜ある場合,資源は直接的な最終消 費財の生産から間接的な資本財の生産へ転用されていることを意味し,その結果将来時点 において生産能力が増加すろが,その程度は資本財産業での現時点での生産性と生み出さ れた資本財自体の生産性に依存する。この投資の生産性を高めるのに貿易が果たす役割は 大きい。自給自足経済ではその限られた資源から生産しうる資本財の種類はほんの僅かで あろうし,費用が高くつくか,不満足な種類のものかも知れない。また市場の小規模から

くる基本的な不経済がある。Hicksはこの点を強調し,貿易およびそれから結果する特等 によって克服しうるとしている。すなわち,「その国が最もよく適しているものに生産を 集申することによって,それ自身の規模によってではなく,かかる商品に対する世界市場 によって限定される産出量をその国は達成すること炉できる。その小さな規模にもかかわ らず,その国は,その輸出産業において,このような産業が到達しうる大規模の利益の全部

      (1)

を達成しうるのである。」これは原理的によく知られ一般に認められているが,彼はさらに

「国際貿易にとっては,それが資本財と原料との交換,資本財と他の資本財との交換,原料       (2)

と他の原料との交換から成るという形式に固定しつつある傾向が存在するように思われる。」

と云う。そして世界の国々は主として資本財を輸出する国と原料と食糧以外は何も輸出し ない国とにご分される。だが後者に属すると思われる低開発諸国は工業製品輸出国に変換

しなければ経済的幽閉から完全に脱却することはほとんど不可能であろう。何故なら大規 模の繹済を殊のほか享受し易い財の生産がまず不可能だからである。先進国間貿易も先進        (3)

国対後進国の貿易においても最終消費財貿易利益が主たる利益源ではあり得ないだろう。

 以上の観点から従来の比較生産費説において中間財の導入,付随的に多数国多数財ケー スでの比較生産費説が再検討される必要がある。また中間財貿易の導入は貿易前の生産費 構造を以って最終的な貿易構造を推論し得ないという困難がある。また多数国多数財の場 合には2国間の比較のみでは最も有効な国際特化のパターンを決定し得ないという困難も

ある。

 以下皿においてJonesの後者の主張の精密化を,皿:において天野助教授の前者の議論に 関する彼の主張をレビューしてみよう。

 (1)大石泰彦訳,J.R.ヒックス世界経済論,岩波,昭39年, P.225.

 (2)同書P.226.

 (3) Enke, S., Some Gains from Trade in Producer Goods, Q.」.of E., Nov,196〜,P.635.

(2)

 Jonesモデルの基本的仮定は(i)生産要素は労働のみとし,国際間の移動なく,各国内 で供給量は一定で完全雇用とし,(ii)不変生産費(一次同次)の技術の2つである。

 world efficiency frontierを決定するためには最適完全特化を選ぶ問題がある。換言 すれば,world efficiency locus上の任意の点が最適完全硝化点の凸一次結合で表わされ ねばならない。完全特化のパターンをassignmentとい〜,どの財も一一つのassignment において他のassignmentと同じi数の国が指定されるなら,そのときに限りassignment が同じclassにあるという。両国が同じ相対コストの集合をもつという可能性を除けば,

各classの中に一意的な最適なassignmentがある。ここで最適(optimal)とは,その classにおいて任意の他のassignmentへ労働をふり向けても,少くとも他の一三の生産 量を減少させることなしにいかなる財の世界生産量を増すことが不可能な状態を云う。

 彼が得た結論は,説明の便宜上n国n財ケースを取上げているが,各国に異なる財を指 定する最適の方法は,中間財貿易の有無にか〜わらず,assignmentに含まれる労働係数 の積を最小にすることである。ただし,各国は中間財の投入必要量に対して同一の技術行 列をもつと仮定している。       ・

 証明は先ず中小財貿易がない場合とある場合に分けてなされる。classは各国が皆異な る財に特化するものとする。前者から始める。.各国がすべて異なる財に特化したときの最 適なassignmentをi−i assignmentとする。最適でないassignmentをi−j assignm・

・ntとする. G=}‡㌃n一1)および(1=nj−1)・世界生産がi−」assignm・ntにより行われ ているとする。問題は各国が労働をj財生産からi財生産へswitchした場合の結果を検 討することにある。

       ユ

i国醐る曲h㎞9−tyはベクトルAl−1:i A:で表わされる・ただしA:

は列べクトルでi番目の行が1で他は0である。またA}も同様でj番目の行が1で他は       

0であるような列べクトルである。a・i・a・1はi・」・1単位をそれぞれ生産穿るときのi       国における労働コストを示す。j財1単位の生産減はa・」単位の労働が解放されることに       なり,これをi財の生産に向ければ専単位の財の生産が増す.(j財の磁位の生

      aOi       aOl

産減はi財1単位の生産増)。siはSwitching activityの水準とする。 switch した結 果は

      △Y=Bs       (1)

こ〜でsはSiを成分とする列べクトルであり, Bは次式で示される行列である。

(3)

B臨

1

      n        

0  0………0 一→

      ag1 al

ol @l

a1

02

0・∴……0

   a2

0 一』 1………0

   ・♂,

0

0

0

       an−1

0  0……一 〇瓦一工 1

       an−1         0n

(2)

 i−iassignmentがoptilnalならば,△Y>0をもたらす忌>0が存在する。 Haw・

kins−Simon条件を満足するから, Bの首座小行列式はすべて正。またnより小さい次元 の首座小行列式はすべて1。

      i

     lBi司一π a・1 >o      (3)

      i       aOl

        重

したがって馳}a・1<1逆もまた真。この結果はそのclassのすべてのassignment        aOj

       ユ       コ

について・na・iがτ7 a。1(i)よりも小であるときは,およびそのときに限りi−iassign−

mentが最適であることを示す。 j(i)はこのclassの任意の他のassignmentである。

かくて前述の結論が得られる。

 中間財貿易が存在する場合に移る。aklはすべての国においてj財1単位を生産するに 必要なk財の投入量(alFo,すべての1に対して)を表わし, Plはj財の世界価格, wi はi国の賃金率をそれぞれ表わすものとする。i−i aSSignmentを最適とする。そのとき

(4)式の競争利潤条件を満たす正の価格と賃金の集合があるはずである。

      P・一、異、p・a・・+w・恥l f・・all勾

      (4)

      b」≦、野」P・a・1+w量砺l f・・all㍉」≠i

(4)

      Σ

(4)式においてhi=

       Pkaki>oとおく。

         k≒i

      w 一P・≒h・ f・・a11ち          aOi

       (5)

      w ≧Pl一典l f・・allい≒i

         aOj

wiはすべての国で正,かつすべてのiに対してPi−hi>oと仮定すれば,

       

       言;≡書}≧lli間ちj≒i (6)

       

(6)式の積を求めると,左辺は1,右辺}まF奪 が得られる。j(i)は前述の通り.以       aOl(i)

上から中間財貿易が存在しても同一結果を得る。ただこの最適なassignmentがすべて feasibleでないということに注意する必要がある。この結果はまたn×mの非対称ケース        にも適用されるた。だ中間財構造が各国で異なるとき,akjをも含むような形に変更を蒙

る。すなわち,貿易のパターンは労働コストの差と中間財生産技術の差の両者により影響

される。

 この minimum product criterion の意味するところは,ある国がある財に比較優位 を持つとき,その財に関して他の如何なる国に対してもbilaterallyに比較優位をもつ必 要はなく,むしろそのような比較によっては表面化しない間接的塗比較優位にある。

 n×nケース,各国はそれぞれ異なる財に特化するとし,i−i assignmentが最適と するとき,その他のassignment〔1(i)〕に対して

        ユ

      ▽.等く1       (7)・

        aOl(i)

が得られた結果式であったが,その式}こおいて2国j,kがswitchしてi‡j, kのすべ ての国が従前通りとするとき,

       j     k

      恥1<弩       (8)

      aOk     aOk

が得られる。このことは」国がj財にbilateralにみて比較優位を持つことを意味する。

次いでm国がswitchすると,

(5)

       1      ㎜      k

      a・j   a・j   a・m

       j  <    m  ●    k       (9)

      aOk     aom    aOk

となり,左辺はk財単位で表示されたj国のj財生産における機会費用であり,それが

(8)式からみてk国のそれより小,(9)式からさらにkとmの両国のそれよりも小であること を示している。一般にすべての国について

       j      S     「      k

      a・」  a・」  a・m  a・・

       1〈 ・… ・ ・ k ,        (10)

      aok     aos     aor     aok

が得られる。右辺は1国を除く自余の世界がk財を減らし,j財を生産したときの機会費 用であり,直接的にk国がk財を減じ,j財を増産するのではなく,間接的にk国がk財

を減産し,r財を増産し, r国がr財減産, m財増産,次いでm国がm財減,……最後に       (1>

s国がs縮減,」財増を行っていることである。

      皿

     (2)

 天野モデルは特に2国3財1要素ケースを取上げ,貿易前のコスト構造が貿易後の最終 パターンを説明するものでなく,そして古典派の比較生産費原理は限界的な変化にのみ適 用されるべきだと主張する。

 2国(1,皿),3財(1,2,3)各国の生産資源(労働)一定,完全利用により3財 を生産,完全競争,投入係数一定の仮定から

      pA識w      (1)

ただしP軍(pj), Plは第j財の価格, w=(wl), wjは第j産業の要素報酬率,『A=〔ail、,

ailは第j産業へ労働一単位を配分することによって生産される(負ならば,必要とされ る)第i財の単位数である。(aii>o,ail≦o for i≒j)行列AはHawkins−Simon条件を

満たす。

 3個のWlの間に差を生じたら,他から大なる方へ労働が移動する。これから特化の方 向を見出す。      一

      P(・(・)一・(j))ミ・縦ってw・ミWl    (2)

ただし・( )はAの第i列・次に第3財をnum6・ai・eにとり…一号i…一÷と

すると,

 (1)Jones, R・W., Comparative Advantage and the Theory of Tariffs:AMulti・Country,

  Multi・Commodity Model, R. of E. S., June 1961, PP.161−175を参照。

 (2)天野明弘, lntermediate Goods and the Theory of Comparative Advantage:ATwo・

  Country, Three・Commodity Case, (未公表論文, Weltwirtschaftliches・Archiv。に掲載

  の予定)を参照。

(6)

(…一・・1)・・+(…一病i)・・+(…一・・妾・に従ってW・姜W」

を得る。a23−a2、>oと仮定(暗にa3ra32>o,

壁恥,嵩〔(a1、一a12)r、+(a3、一a)〕に従って鴨魍

・曳。門門、〔(alra13)巧+(鞠・一・・3)〕

a12−a13<oと仮定)1して

〃W・

W・

峠一。,,主。,。〔(a1ゾa13)h+(・…a33)〕〃嵯W・

(3)

(3a)

(3b)

(3c)

7

(2)

(1,2)

     Q〜圏,!

〔2,3、  /

        C1)

(3)     (1β)

0

1図

Q皿

Qエ  S

 (2)1

(1,3)H

(1,2)1

(3>ロ

r

これら3つの式から1図が描かれる。図におい て各直線はそこに示された2つの財を生産しう ることを表わし,3直線で区分された3つの部 分はそこに示された1つの財が生産される。

Q点は各産業での賃金がすべて等しく,したが って3財共に生産される。

相手国をも合せて描けば皿図を得る。QI, Q瓦 は各国の貿易前の均衡点。貿易前の比較生産費 構造は

   P・亘>P・亙>P・豆    P21

      P31         PII

      (1)

で与えられる。したがって,工国は2財,五国 は3財にそれぞれ比較優位をもつ。貿易開始後 は3財をすべて需要するという需要条件によ

り,

      .rl

O

      皿図

QISQ夏上のどこかに均衡点が定まる。図から 明らかなように,そのどこに決っても,1国が 2財に,豆国が3財に特化し,1財が生産され る国が変わるだけである。 (S点では両国で1 財の生産可能)。 したがって矛盾はない。矛盾 が生ずる一例としてあげられ℃いるのは,皿図

(・)・毒〉・晃・・至〉・1・(碧)夏〉(÷

r2

s Q*QI Q且

〔2>1

(L3)H

(2,3)1

(1)n

0

)王備たすよう姻示されている・

皿図

rr

(7)

の如きケースである。貿易前の比較生産費構造は以前と同じ。貿易後の均衡点がSQI上 にくれば,玉:国が1財を生産することになり矛盾する。(1国は3財までも生産)。そこで 矛盾を生じた原因の吟味が行われる。国際商品価格比率をQ豆とするとき,最:終均衡点が 例えばQ*であれば1国が第2財を生産して大きな入超を意味する。そこでQ五からSへ向

う(第2財の相対価格の下落,すなわち1国の交易条件悪化)。Sでは1国が第3財を国内生 産できるから輸入と代替するが入超は消えず,さらにS→Q*へ向う(第3財の相対価格下 落)と今度は第3財の輸出が可能となり,Q苦に達したとき,1国の交易条件がさらに悪化

していることになる。

 以上の分析から貿易前の生産費構造を以って最終的な世界の特化のパターンを推論し得 ないことが明らかとなった。限界的な意味でこそ従来の比較生産費説が生かされるという 解釈が推されている。比較生産費説とはmore(not most)efficientな特化の方向を教

えるものと考えられねばならないということであろう。

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