日本における確率論の濫觴(₂)
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資 料
日本における確率論の濫觴(₂)
―陸軍士官学校編『公算学』1888年の復刻とその書誌学的考証―
上 藤 一 郎
経済研究14巻₃号
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注₆)この単語の使用をみても明らかなように,この著作は明らかにフランス語による確率論・誤差 論のテキストを参照している。これは,設立当初,陸軍士官学校がフランス式の陸軍制度・教育 を採用していたことと関係している。この点については,改めて「解題」で詳しく検討する。
₇)係数は,精度定数(Präzisionskonstante)と呼ばれるもので,数理統計学で定義される標準偏 差をσとすると
1
2σ
の関係式が成り立つ。8)これはF. W. Besselによる確率誤差(Wahrscheinliche Fehler)に関する数値である。Besselが 最初に確率誤差の概念を用いたのは,Bessel, F. W., “Ueber den Ort des Polarsterns.”, Astronomisches Jahrbuch für 1818, 1815, S.233-240であるが,ここでは詳しく確率誤差を定義していない。しか し「オルバース彗星の軌道に関する考察」と題する論文でBesselは,「この名称を,より小さい 誤差とより大きい誤差(の確率)が等しくなるような数の限界であると理解する。各々ある広さ の限界内に陥る観測値は,その限界の外に陥る観測値よりはるかに確からしい」と述べ,誤差 分布(正規分布)における正負各々の確率を二部する点であることを定義している。 Bessel, F. W., “Untersuchungen über die Bahn des Olbersschen Kometen.”, Abhandlungen der Berliner Akademie der Wissenschaft, 1816, S.142. なお現代的表記法では,確率変数XがX〜N(μ,σ2) の場合,平均の確率誤差は0.6745σ,X〜N(0,1)の場合
0.6745 σ
となる。文中の数値0.476936は,hr=0.476936を意味しており,観測値が十分大きいときは,
0.47636 0.6745σが成り立つ。
このことは次のC. F. Gaussの文献に示されている。Gauss, C. F., ”Bestimmung der Genauigkeit der Beobachtungen.”, Zeitschrift für Astronomie und verwandte Wissenschaften, Bd.1, 1816, S.187-197.
₉)最大縦線を指す。