氏 名 江尻
エ ジ リ綾
ア ヤ美
ミ所 属 システムデザイン研究科 システムデザイン専攻 学 位 の 種 類 博士(学術)
学 位 記 番 号 シス博 第
128号 学位授与の日付 令和
2年
3月
25日
課程・論文の別 学位規則第4条第1項該当
学 位 論 文 題 名 女性の健康を支えるセルフモニタリングツール提供に向けた ストレス緩和手法の検証とサービスデザインの構築
論 文 審 査 委 員 主査 教授 笠松 慶子 委員 教授 串山 久美子 委員 教授 藤原 敬介
委員教授 西内 信之
【論文の内容の要旨】
近年,社会において女性の活躍推進が進む中,月経随伴症状が女性の日常生活や仕事の パフォーマンスに影響を与えることが企業において認知されつつある.経済産業省により 推進されている健康経営の取り組みは企業に広がりつつあり,その中でも女性の健康問題 に関する取り組みが注目されている.女性には生理特性の一つとして月経周期がある.月 経随伴症状の1つに,月経が始まる
3~
10日前に現れる心身の様々な不調を指す月経前症 候群(
PMS:
Premenstrual Syndrome)がある.
PMSによって現れる症状(
PMS症状)
は,症状の種類や現れ方が人によって異なることが明らかになっている.一方,
PMS症状 に関して女性自らが理解していないことも多く,社会においても理解が浸透しているとは いえない.このため,女性が生活や仕事をしやすい環境を実現するためには,
PMS症状へ の正しい理解と症状改善に向けた対処方法を普及させるための啓発活動が必要である.
PMS
症状に関する先行研究では,月経周期に伴い現れる症状や,日常生活や仕事への影 響を示した数多くの研究がなされているが,これらの調査では全体の実態把握に留まるも のが多い.
PMS症状を抱える女性が,症状に対する捉え方や症状改善のために求めている サービスについては明らかにされていない.また,
PMS症状改善にはセルフケアや医療機 関受診による加療などの対処方法があり,その中の
1つとして重要な方法が,症状記録に より自らの症状に対して気づきを得ることである.しかしながら,この対処方法は,広く 一般に知られていないという課題がある.
さらに,
PMS症状改善には,ストレスマネジメントとしてのリラクセーション法も重要
であることが明らかになってきている.しかし,これも一般には広く知られておらず,月
経周期を考慮したリラクセーション法を用いた効果は十分に明らかになっているとはいえ ない.女性の活躍推進が進む中,就労環境や生活の中で,周囲に気兼ねなく実践可能なリ ラクセーション法を用いたセルフケアに対する需要が増すことが想定される.
本研究ではこれらの背景を鑑みて,月経周期に伴う心身の不調を抱える女性が
PMS症状 を理解するためのセルフモニタリングツールの開発に向けたサービスデザインの構築とセ ルフケアに活用できるストレス緩和手法の検証を行うことを目的とする.
本論文は全
6章で構成される.
第
1章では,本研究の背景と研究目的を述べた.女性の健康をサポートするサービス市 場や,企業における健康経営の取り組み動向を調査した上で,月経周期に伴う女性の心身 の症状と,ストレスマネジメントとリラクセーション法に関する関連研究を調査し,人間 中心設計(
HCD:
Human Centered Design)プロセスを活用したサービスデザイン構築に 向けた本研究の位置付けを行った.
第
2章では,月経前の不調を抱える女性を対象にした調査を行った.本章では
PMSに関 する症状が重く,仕事や生活のパフォーマンスに影響がある女性を対象にアンケート調査 とインタビュー調査を実施した.アンケート調査では,症状発症からの期間,頻度,自覚 症状,症状改善のための対策と情報探索頻度等について調査し,就労女性とそれ以外の女 性との比較分析を行った.さらに,このうち情報探索頻度が高い女性にディープインタビ ューを行い,症状改善のために求めるサービス要件を明らかにした. その結果,
PMS症状 が重い女性は, 「自然由来のものや,自然を想起させるもの」を取り入れた「リラクセーシ ョン」を活用したいと考えており,体に良いことと認識して行動することにより「自己肯 定感」を高めることに対する期待をもっていることが示唆されたことから,第
3章,第
4章では,
2つのセルフケア手法の検証を行った.
第
3章では,就労中に場所を変えず,周囲に気兼ねなく利用可能なリラクセーション法 として手首加温法を考案し,その効果を検証した.就労中における一過性ストレス負荷を 想定した文書入力作業を精神負荷作業に選定し,検証を行った結果,手指部の温度上昇と 定性評価結果から,手首温めによる精神負荷作業後のストレス緩和効果が認められた.
第
4章では,就労外での利用を想定したリラクセーション法として,プラネタリウム施 設を活用した方法を設計し,その効果を検証した.特に
PMSにより作業パフォーマンス低 下が認められる女性が受け入れやすい要素として「自然を感じられること」が挙げられた ため,それを考慮した
2種類のプラネタリウムプログラムを用いて検証を行った.その結 果,プログラム構成によらず,月経前の時期の女性は,プログラム鑑賞中の体表温度の速 やかな上昇傾向と,
POMS2(
Profile of Mood States 2nd Edition)の分析結果からリラク セーション効果を得られていることが明らかになった.
第
5章では,第
2章の調査結果をもとに,自らの症状に気づき,適切な対処を行うため
のセルフモニタリングツールのサービスデザインを構築した.コンセプトは, 「月経前の不
調を抱える時期にも気持ちの良い朝を迎えられること」とした.ここでは,無理なく自然
に続けられることと,自己肯定感を高めることを重視した上で,セルフモニタリングによ る症状の把握とセルフケアによる症状の改善をつなげたサービスデザインを構築し,プロ トタイプ開発を行った.さらに,サービスデザインの受容性検証と
PMS症状を抱える女性 や周囲の方を対象とした症状理解,および啓発を目的として,クラウドファンディングを 実施した.その結果,
PMS症状の対処方法としてのセルフモニタリングに対する認知拡大 と,症状を抱える女性が適切なセルフケアへの意欲を持つことが明らかになった.
第
6章では,本論文の結論について述べた.本研究では,女性の健康を支えるセルフモ ニタリングツール提供に向けて,
PMS症状が強く現れている女性をユーザーとして捉え,
HCD