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Academic year: 2022

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氏 名 鴻海 俊太郎

授 与 し た 学 位 博士

専攻分野の名称 薬学

学位記授与番号 博甲第 3859 号

学位授与の日付 平成21年3月25日

学位授与の要件 博士の学位論文提出者

(学位規則第5条第8項該当)

学位論文の題目 アルファ7型ニコチン性アセチルコリン受容体を標的とする抗精神 病薬に関する神経薬理学的研究

論 文 審 査 委 員 教授 川崎 博己 教授 龜井 千晃 准教授 北村 佳久

学位論文内容の要旨

統合失調症の症状は、これまで主に陽性症状と陰性症状の二つに大別されて考えられてきたが、これらに分類されな いものとして、情報処理障害や認知障害が挙げられる。これらの障害に対しては、既存の抗精神病薬の効果は低く、統 合失調症の薬物治療の課題となっている。本研究では、新規作用メカニズムを有する抗精神病薬の創製につながる知見 を得ることを目標として、行動薬理学的ならびに免疫組織化学的検討を行った。

第 1 章では、ドパミン神経に対して安定化作用を有する aripiprazole を採り上げ、PPI 障害モデルを用いて、その情 報処理障害改善作用について検討した。また、陽性症状に対する改善作用の評価として、apomorphine により誘発される 常同行動に対する作用と比較検討した。Aripiprazole は apomorphine により惹起される PPI 障害および常同行動を用量 依存的に改善し、DOI による PPI 障害も有意に改善したが、PCP により惹起される PPI に対しては改善作用を示さな かった。従って、aripiprazole の抗精神病作用にはドパミンのみならず、セロトニン神経系の関与が示唆された。第 2 章 では、神経細胞の早期活動マーカーである c-fos 蛋白を指標とした免疫組織化学的な手法を用いてaripiprazole の作用部 位の解明を試みた。その結果、内側前頭前野、線条体、腹側淡蒼球では、c-fos 蛋白の有意な発現誘導は見られなかった が、側坐核において c-fos 蛋白の発現誘導が有意に増加した。この結果は、従来の定型抗精神病薬の作用と類似する結 果であった。

近年tropisetron が、α7 型ニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR) の部分アゴニストであることが明らかとなった。

そこで、第 3 章では、tropisetron の抗精神病薬としての可能性を探るため、行動薬理学的検討を行った。その結果、

tropisetron は apomorphine による PPI 障害を改善し、その改善作用は MLA により拮抗された。しかしながら、

apomorphine による常同行動に対して、tropisetron は有意な抑制作用は示さなかった。また、PCPにより惹起される PPI

障害に対しても改善作用を示さなかった。これらの結果から、tropisetron はドパミン神経系が関与する情報処理障害に 対して、α7 nAChR を介して特異的に改善作用を示す可能性が示唆された。第 4 章では、tropisetron の作用部位とドパ ミン神経系の関連について明らかにする目的で、c-fos 蛋白の発現変化を指標とした免疫組織化学的検討を行った。

Tropisetron の単独投与は、c-fos 蛋白発現に影響しなかったが、apomorphine 単独投与群と比較してtropisetron を前投与 した群では、腹側被蓋野において c-fos 蛋白発現細胞数の有意な減少が見られた。これらの結果から、tropisetron の作 用部位が腹側被蓋野もしくは、腹側被蓋野に投射しているニューロンである可能性が示唆された。第 5 章では、

tropisetron が作用を及ぼしているニューロンの部位や性質について、さらに明らかにすべく、c-fos 蛋白と α7 nAChR の

二重染色の確立を試みた。c-fos 蛋白に対する免疫組織化学染色と蛍光色素標識 α-BgTX とを用いた二重染色により、

黒質において共発現が確認された。

以上の結果より、tropisetron は aripiprazole と同様に、統合失調症のドパミン神経系の異常に伴う情報処理障害に対し て改善作用を有していることが示唆された。Tropisetron の c-fos 発現に対する検討により明らかになった作用部位は、

既存の抗精神病薬とは異なっており、これは、tropisetron、引いては α7 nAChR が新規の有望な統合失調症治療薬の標的 となり得る可能性を示すものである。

(2)

論文審査結果の要旨

本研究では、新規作用機序を有する抗精神病薬の創製につながる知見を得ることを目標 として、行動薬理学的ならびに免疫組織化学的検討を検討した。まず、ドパミン受容体部 分作動薬 aripiprazole について、PPI 障害モデルを用いて、その情報処理障害改善作用と 陽性症状に対する改善作用の評価として、 apomorphine により誘発される常同行動に対す る作用と比較検討した。その結果、 aripiprazole は apomorphine により惹起される PPI 障 害および常同行動を用量依存的に改善し、他の精神症状誘発薬 PCP により惹起される PPI に対しては改善しなかった。次に、神経細胞の早期活動マーカーである c-fos 蛋白を 指標とした免疫組織化学的な手法を用いて aripiprazole の作用部位の解明を試みた。その 結果、内側前頭前野、線条体、腹側淡蒼球では、c-fos 蛋白の有意な発現誘導は見られな かったが、側坐核において c-fos 蛋白の発現誘導が有意に増加した。この結果は、従来の 定型抗精神病薬の作用と類似する結果を示している。抗嘔吐薬 tropisetron が、α

7

型ニコ チン性アセチルコリン受容体 (nAChR) の部分アゴニストであることが明らかとなった。

そこで tropisetron の抗精神病薬としての可能性を探るため、行動薬理学的検討を行った。

その結果、tropisetron は apomorphine による PPI 障害を改善し、その改善作用はα

7

nAChR 受容体拮抗薬 MLA により拮抗された。しかしながら、 apomorphine による常同行

動に対して、tropisetron は有意な抑制作用は示さなかった。また、PCP により惹起される

PPI 障害に対しても改善作用を示さなかった。これらの結果から、tropisetron はドパミン

神経系が関与する情報処理障害に対して、α

7

nAChR を介して特異的に改善作用を示す可

能性を示唆している。次に、tropisetron の作用部位とドパミン神経系の関連について明ら

かにする目的で、c-fos 蛋白の発現変化を指標とした免疫組織化学的検討を行った。その

結果、tropisetron の作用部位が腹側被蓋野もしくは、腹側被蓋野に投射しているニューロ

ンである可能性を示唆している。最後に、tropisetron が作用を及ぼしている神経の部位や

性質について、c-fos 蛋白と α

7

nAChR の二重染色により、黒質において共発現が確認さ

れた。以上の結果より、tropisetron は aripiprazole と同様に、統合失調症のドパミン神経

系の異常に伴う情報処理障害に対して改善作用を有していることを明らかにしている。本

論文は、既存の抗精神病薬とは異なった機序を有する新規の有望な統合失調症治療薬の標

的となり得る可能性を示した有意義な研究であり、博士の学位に相当すると判断した。

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