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手形山 トンネルの物理探査

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Academic year: 2021

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秋田大学鉱山学部素材資源 システム研究施設報告,第62,23‑29ページ,19973

手形山 トンネルの物理探査

西谷 忠師 *

(平成9222日受理)

G eophysicalprospectingofT ega tayama tunn e l

TadashiNISHITANI(Abstract)

ItisverylmpOrtanttOknow theundergroundstructureof20to30metersbelow thesur face. Howeverthesedepthsaredifficulttoknow,fortheyareintermediatereglOnlngeo‑

physicalprospecting. Severalmethodswereappliedtotheman‑madetunnel(Tegatayama tunnel,AkitaCity)toknow theeffectofhigh resistivity structurein 20to 30meters.

Onlyonepointelectricsurveycannotrevealtheexistenceofatunnel. Itispossibletokn Ow theinfluenceofatunnellfweuseseveralelectricsurveydataobtainedindifferentposi tions. TheVLFmagnetotelluricsurveylSeffectivetorevealthestructureofatunnelata depthof20to30meters. ThemagneticcomponentofVLFsignalisavailabletoknow the

undergroundstructure.

1.は じめに

物理探査で は地下 レー ダーのよ うな地表付近 の構 造物探査か ら,重力 による基盤構造,あ るいは大規 模 な地震探査 による深部数10kmまでの構造 を明 ら か にす る事が可能で ある. しか し,我々の生活 に密 接 に関連す る20mか ら30mの深度 の構造 を知 る事 は意外 に難 しい.なぜ な ら各種探査手法 には得意 な 探査深度があ り,20mか ら30mは浅 い部分 と深 い 部分 の遷移区間 にあた るためである.比較的浅 いか らとい って,必ず しも容易 に構造が把握 で きる訳 で はない. この深度 の構造 を高 い分解能で得 るための

(平成9222日受付,平成9228日受理)

*秋 田大学鉱山学部 資源 ・素材工学科 応用地球科学教室.

InstltutefoApplledEarthSciences,MlnlngEnglneerlng

23

手法 は残念 なが らまだ確立 されて はいない.

本論文で は,20mか ら30mの深度で構造 のわかっ ている部分 を ターゲ ッ トに して何種類かの物理探査 を行 い, どの手法が構造 を把握す るのに有効かを明 らか にす ることを目的 とす る.探査 の対象 と したの は秋 田市北東部 の丘陵地 に位置す る手形山 トンネル である.手形山 トンネルは詳 しい位置,大 きさが正 確 にわか っている,従 って, どの物理探査 の手 法 が 有効かを確かめる事 が可能である.

2.手形山 トンネルの概要

手形山 トンネル周辺 の地形 は標高60m〜70mの河

andMaterlalsProcesslng,MlnlngCollege,AkltaUnlVerSlty

(2)

Fig.1 TegatayamatunnellocatedinAkitaclty. Thelengthoritis276m Threemeasuringlines,5210,5400and5717areshown.

岸段丘の平坦面であ り,手形山配水場 に利用 されて いる.また,標高30m〜40mの段丘平坦面 は高梨台 団地や中台団地 などの住宅地 に広 く利用 されている (秋 田県秋田土木事務所, 1990a).現在工事 中の主 要地方道秋田 ・昭和線 はこの地域 をはば南北 に通過 し,秋 田市手形山か ら手形山配水場を経由 して境 内 川原へ伸 びている.手形山 トンネルはこの道路の途 中,中山台付近 にある.

トンネルの大 きさは,全長276m,幅7.5m,高 さ 4.7mで19953月 に完成 して い る (Fig.1).しか し,まだ道路 は接続 されていない. トンネルの断面 図をFig.2に示す. この図では縦軸のスケールは5 倍 に拡大 してある. トンネルか ら地表 までの距離 は 山頂付近で約28mで あ る. この手形 山 トンネル付 近 には高圧線などの電力線 はな く,人工的な擾乱作 用があまりないと予想 され ることか ら,物理探査 の 場所 としては望 ま しい場所である.

トンネルを掘 る前にボー リング調査が行われ,概 略の地質状況が明 らかにな っている (秋田県秋田土

Fig.2 Cross section orTegatayama tunneL Horizontalscaleisextended5times.

木事務所,1990a).また,地質,地盤調 査 のため弾 性波探査,土質試験が行われている.その結果, ト

ンネル付近では,表層60cm程度 は表土 で,泥岩 の 軟質僕を含む粘性土 で あ る事,深度8m程度 まで は段丘堆積物, そ して深度8mよ り深 い部分 は泥 岩であることがわか っている (秋田県秋 田土木事務 所,1990b).

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手形山 トンネルの物理探査

3.測線

トンネルの位置は地形図上で確認で き,地表 に は 工事の時に設定 された杭が残 っている.現場 と地 形 図 との対応 は地表 に残 っている杭を利用す る,杭 は 20mごとにあ り,道路の進行方向に垂直 に2本,道 路の中心か ら左右 に12.5mの地点 に設定 してある.

それぞれナ ンバーとL‑12.5あるいはR ‑12.5の表 示がある. この2本の杭 を直線で結べば道路の進行 方向 と直角,すなわち, トンネルと直交す る測線 を 設定す ることが可能である.

基準 に した杭 は,No.52,54,57で,測線 はすべ て トンネルと直交す る方向に設定 した.各杭か ら10 m,Om,17m北西側 に移動 して測線 を設定 した.

移動 した距離を杭の番号 に付加 して,測線名をそれ ぞれ5210,5400,5717と名付 ける.

4. 電気探査 4.1垂直探査

測線5400上で電気探査の垂直探査を行なった. 用 いた手法 は等間隔四極法 (ウェンナ一法)で,両 端 の電極か ら電流を流 し,真ん中の二本の電極で電 位 差 を測定す る方法である.測定点 は測線5400上 で, トンネル直上, トンネルの中心 か ら左右 に10m 動 した点,中心か ら東 に20m移動 した点である.測 定時の電極を伸ばす方向は主 として トンネルに平行 の方向 と した. これは理論計算を行な う場合,水平 成層構造を仮定 した一次元モデルを用いることを想 定 していたためである.電極の展開方向による違 い を見 るため, トンネルの中心位置および,東 に20m 移動 した点では,地表面で トンネルに垂直な方向 に

も電極を展開 して測定 を行な った.

Fig.3は トンネルか ら20m離 れ た地点 での垂 直 探査の結果である.測定値の下 には一次元水平成 層 構造を仮定 した場合のモデル構造 を示 してある. こ の地点では電極 を伸ばす方向を トンネルと垂直方向 に設定 して測定 を行 なっている. しか し,電極 を伸 ばす方向にかかわ りな く,測定値 はほとんど同 じで 異 なった傾向は見 られなか った.

4.2一次元モデル計算

25

電気探査の構造解析では地下 に空洞があると思 っ て処理を行 な うこととす る.実用性および計算時間 を考えて,モデル計算 はすべて一次元で水平成層構 造を仮定 した.

まず, トンネル直上での測定値を再現す る一次元 の最適 モデルを求めた. このモデルで は7.6m以深

∩U0oOO0(u・星^ln]lSISG.IuaJCddv

5 10

Spac】ng(∩)

162635 105(rnl 722

Flg.3 Electricsurveyatthepointof20m apart rrom thecenteroftunnel.Solidlineindi Cates the theoretical curve using the modelstructureshownbelow.

(巨TU)^11≧lSISOU‑ua

Jt=ddv

0005

../ t

.̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲.̲n Tl 10

SpaCmg(m)

(a) 615

(b) 615

Difference(・m)

Fig.4 SolidcirclesarethetheoretlCalapparent resistlvltyvaluesusingthemodelstruc‑

tureof(a). SolidlinelndlCateSthebest ritmodel(b)ortheelectricsurveyatthe topofthetunneL Opencirclesshow the differenceofapparentresistivltyObtain‑

edbythemodel(a)and(b).

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で はO.50mで一様 な比抵抗 とな っている (Fig.4). このモデルに高比抵抗 の層 を付加 す る. トンネル部 分 に相当す る20‑30m に1000kE2mの層 を付 け加 え てモデル計算 を行 な う.Fig.4で実線がモデル(b) もの,黒丸 は新 たに1000kOmの層 を付加 した モデ (a)による理論値である.両者 はほぼ一致 してお り その差 は電極間隔 が50mで も20m程度 と極 めて 小 さい.従 って, トンネル直上 の単一測定 デー タか

ら トンネル位置を推定す ることは難 しい.

4.3三層 モデルによる検討

単純 な三層構造 モデルを仮定 して地下 の高比抵抗

Flg.5 Crosssectionofslmpllfledtunnelmodel

oo0005055

(LUU)A)!^llS!SO

(b)

0 20 40 60 80 100 120 140

Spacln9(∩)

20 30

Fig.6 DifferenceofapparentresIStivitybetween themodel(a)and(b).

構造 の検 出を試 み る.Fig.5のよ うに トンネルを垂 直 に横切 る断面 を考 え る. トンネルの天井部が地 表 下20mにある時, 中心 か ら横方 向 に20m移動 した 地点 か ら トンネル まで の距離 は28mとな る. す な わち,中心か ら20m離 れた点 で は見掛 け上地下28m に トンネルが存在す ることにな る. 一 層 目が400El m,二層 目が10kE2m,二層 目が1E2mの層構造 を 考え る.二層 目の深度が20‑30mの場合 と28‑38m にある場合 の予想 され る実測値 の差 を示 した ものが Fig.6である. 電極 間隔 が40‑50m付近 に ピ‑ ク が現 われてお り, トンネルの高比抵抗 の影響 を見 出 す ことがで きる. これ まで見て きたよ うに,一点 だ けの垂直探査 デー タだけで は見えなか った20‑30m 程度 の深度 の高比抵抗構造 は測定点 を変 えたデータ の差を取 ることによって明確 に示す ことが可能であ ることがわか る.

実際 に測定 した垂直探査 デ‑ 夕の引 き算 を実行す る.Flg.7が5400測線上 で トンネル直上およびそ こ か ら20m離 れた場所 で の実測値 の差 で あ る. 図 に は40m付近か らピー クが現 われ てお り,理 論 的 に 導 いた傾向 とほぼ同 じ結果を示す ことがわかる.従 っ て,観測値 には トンネルの影響 が確か に含 まれて お り,離 れた距離での実測値 の差 を とれば トンネル の 効果 を見 る事が可能であることが明 らかであ る.

ここでわか った事 は 一地点 の垂直探査 デー タか ら トンネルの影響 を見っ ける事 は難 しいが,異 な った

∩﹀(Un∪

(∈i5)aOuaJm三一P^lINISlのat]

0 20 40

Spacmg(m)

Fig,7 ApparentresistlVlty dlfrerencebetween themeasuredvalueatthetopofthetun‑

nelandthatobtained20m apartfrom the centerofthetunnel.

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手形山 トンネルの物理探査

距離で測定 したデー タを用 いれば トンネルの影響 を 見 る事が可能 である, とい う点 である.

5.VLF探査 5.1 地磁気地電流法

VLF帯 の電場 ・磁場 を用 い た地 磁 気 地 電 流 法 (MT法)を手形山 トンネル に適 用 した.特 に注 目 す るのは周波数22.2kHzの電場 ・磁場成分であ る.

22.2kHzの信号 は潜水艦通信用 と して使われてお り, 九州 えびの高原か ら大電力で発信 されている.

測定方法 はまず発信局方向を特定 し, この方向 に 電場用電極 を設置す る.電極間隔 は10mとす る.吹 に電場成分 とこれ に直交す る磁場成分 を同時 に観測 す る. こうして観測 された電場成分 と磁場成分か ら 見掛 け比抵抗 と電場 と磁場 の位相差 を得 る事がで き (Cagniard,1953).実際の測定 で は5210,5400, 5717各測線 を1m間隔で探査 を行 な った.

測定値 をそのままプロ ッ トす ると極大 を もつ特徴 的な傾向が得 られ る. また直線的 に測定値が増加 す る大 きな トレン ドが含 まれている. このままで も検 討す る事 は可能 であ るが, トレン ドを除去 してか ら 考察 したほうがわか りやす いと判断 した. トレン ド を除去す る方法 は,全 デー タを直線 で近似 し,各 測 定点か ら近似 した直線 の値 を差 し引 く処理を行なう.

トレン ドを除去 した後 のデー タか らは明確 に トンネ ルの影響 を見 る事が で きる (Fig.8).他 の測線 で も同様 に, トレン ドを除去すれば トンネルの位置 で 比抵抗が高 くな り,位相角が減少す る傾向が見 られ (Fig.9,Fig.10).比 抵抗 が高 く, 位相 角 が減 少す る傾向 は,表層 に比べて深 い部分 に比抵抗 の高 い構造があることを示 している.

トンネルの直上で全て比抵抗が高 く,位相角が低 くな っている訳で はな く, トンネルの位置 とはやや ずれた位置で ピークが現 われている. これ は トンネ ルが湾曲 してい るためであろ う.

これ ら複数 の測線 で ほとん ど処理 を加 え ることな く, トンネルの位置 が明確 にな ることがわか った.

VLF帯 の電場 ・磁場 を用 いた地磁気地電流法は20‑

30m深度 の比抵 抗異 常 を見 つ け出す非 常 に有 効 な 手段 であると言 え るだろう.

(u・V)^l!NtSrSelu(6opVost2Lld

27

60 50 40 30 20 10 0 10

Dstancetm)

Fig.8 VLF‑MT surveyalongthelineof5210.

Largetrendlssubtractedfrom theob‑

servedvalues.

5.2 EM16による探査

先 ほどと同 じくVLF帯 の信号 を用 い る探査 手法 がある.22.2kHzの信号 を用 いる事 は同 じであるが, 磁場成分 だ け用 い る方 法 で あ る. そ の一 つ と して EM16(Geonics社製)を用 いて探査 を行 な った.

EM16で得 られ る測定値 は2つあ る.一 つ は発信 されている22.2kHzと同位相 の同相 (inphase)成 分, もう一 つ は900位相 のず れ た (quadrature) 成分である.同相 および900位相 のずれた成分 の測 定値 にはかな りのノイズが含 まれている. ノイズの 影響 を少 な くす るために移動平均 を とる.その結果 をFig.11に示す.わず かで はあ るが トンネル の位 置 に対応 した変動が見え る.

5.3 WADlによる探査

EM16と同 じ原理 を用 いて い るWADI(ABEAM

(6)

(uJi3)>SatJ 20eyi

(Bap)ost)LJd

50 40 30 20 10 0

Distance(m)

Fig・9 VLF‑MTsurveyalongthelineof5400・

トー一一一一一一

(udVhl^Iのelt](Bep)ost)tJd

40 30 20 10 0 10

Drslance(m)

Fig110 VLF‑MTsurveyalongthelineof5717

(%)aseLldu(%)aJntejptmo

20 40 68

D】stance(∩)

Fig.ll VLFsurveyalongthelineof5400using EM16.

642DCyi ∃≡≡盟

(%)OstEudul OP

(%)BJnleJPtlnO

0 20 40 60 80 100

D】stance(∩)

Fig.12 VLFsurveyalongthelineof5400using WADI.

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手形山 トンネルの物理探査

社製)を用 いて探 査 を行 な った.WADlで も同様 22.2kHzの磁場成分 を用 い,同位相 の成 分,90O 位相 のずれた成分 の測定 を行 な う.先 ほどと同 じよ うに移動平 均 を行 な って トンネルの影 響 を見 る.

Fig.12にその結果 を示す. この場合で もEM16と同 様, トンネルに対応 したわずかの変化が見え る.

以上 の ことか ら,20‑30m深度 の比抵抗異常 を調 べ る場合,磁場成分 だけを用いる探査手法 は,電場 ・ 磁場成分 を同時 に使 う手法 に比べて検 出能力が小 さ いと言 え るだろう.

6.まとめ

手形 山 トンネルを ターゲ ッ トに して,地 下20m か ら30mの構造 を明 らか にす べ くい くつ か の方 法 で探査 を行 な った.測定 および解析 の結果,次 の よ

うな結論 を導 く事がで きた.

まず,1点 だけの電気探査 による垂 直探 査 だ けで は, トンネルの存在 を明確 に示す事 は難 しい. しか し,異 な った位置で測定 を行 ない,測定値 の差 を取 れば トンネルの影響 を見 る事が可能であることが判 明 した.

次 にVLF帯 の信号 を用 いる探査で は,地 磁気 地 電流法 と呼 ばれ る電場 と磁場 を用 いて比抵抗 を求 め

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る方法が極 めてよ く トンネルの特徴 を捕 らえ ること がで きた.磁場成分だ けを用 いる探査で は トンネル の影響 をわずかだ け捕 らえ る事がで きた

以上 の ことか ら深度20‑30mの探 査 で は電場 ・ 磁場 を利用す るVLF帯 の地磁気地電流 法 が最 も有 効 であると言 え るだろう.

この論文 をまとめ るにあた り, ボー リング資料 な どで便宜 を図 っていただいた秋 田土木事務所道路課 道路建設第一担当の高橋悟氏, フィール ド調査 で手 伝 って もらった応用地球物理学研究室 の学生諸君 に 感謝す る.

秋 田県秋 田土木事務所 (1990a):平成2年度K225 Y2地方道改良工事地質調 査業務 委託報 告書,1 50.

秋 田県秋 田土木事務所 (1990b):K225‑Y2地 方道 改良工事地盤調査業務委託報告書,1‑49. Cagniard,L. (1953): Basic theory of the

magnetotelluricmethodofgeophysicalpros pectlng,Geophysics,18,605‑635.

参照

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