『人文コミュニケーション学科論集』 15, pp. 71-81. © 2013 茨城大学人文学部(人文学部紀要)
―『増訂華英通語』『英語箋』と一致する訳語を中心に−
櫻井 豪人
要旨
『英吉利単語篇』系統の単語集の一つである『対訳名物図編』(市川清流 編、慶応三1867年九月序刊)は、『英仏単語篇注解』(同年五月刊)の訳 語に改変を加えて成立したと見られるが、独特な訳語が多く含まれ、どの ようにして当てられたのか不明である訳語が少なくない。本稿は、その中 の一部に『増訂華英通語』(福沢諭吉編、万延元1860年刊)および『英語箋』
(石橋政方編、文久元1861年刊)から抜き出されたと見られる訳語がある ことを示し、『三語便覧』(村上英俊編、嘉永七1854年序刊)を参照した 可能性についても言及する。さらに、『対訳名物図編』が近代中国語の漢 字表記を好んで採用する傾向にあることも指摘する。
1. 本稿の目的
『対訳名物図編』(慶応三 1867 年九月序刊)は『英吉利単語篇』系統の単語集の一つである。
『英吉利単語篇』(慶応二 1866 年刊)は、同年刊行の『法朗西単語篇』とともに、江戸幕府 の洋学研究教育機関である開成所から刊行された単語集であるが、英語のみを掲載し、それ に対応する訳語は記されていない。その訳語集として出版されたのが『英仏単語篇注解』(慶 応三年五月刊)であるが、『対訳名物図編』は同年九月の序を持つので、『英仏単語篇注解』
刊行のすぐ後に出版されたものと見られ、『英吉利単語篇』の訳語を全て載せているものと しては二番目の単語集ということになる。翌慶応四年にはその三番目にあたる桂川甫策編『英 仏単語便覧』が刊行されるが、この三つの単語集が『英吉利単語篇』系統の訳語を全て収録 した「幕末の三本」である。この後、明治四( 1871 )年にはこれらと同系統である『通俗 仏蘭西単語篇』『通俗英吉利単語篇』『英吉利単語篇増訳』『独逸単語編和解』『独逸訳附単語 篇』という五つの単語集が出版される。
『英仏単語篇注解』は、奥付に「開成所校本」とあるので、開成所の公式な訳語集という
位置付けであったと考えられる。また、『英仏単語便覧』の編者である桂川甫策も開成所の
仏蘭西学の教授であったので、『英仏単語篇注解』と同じような位置付けになろう。実際、『英
仏単語篇注解』と『英仏単語便覧』の訳語は、(異なる訳語も稀にあるが)ほとんど同じで ある。
これに対し、『対訳名物図編』の編者・市川清流 1 は開成所の職員でもなく、この時にどの ような身分・立場であったかも不明である。そして、『対訳名物図編』の訳語は『英仏単語 篇注解』の訳語と異なるものが非常に多く、その後に出版された『英吉利単語篇』系統単語 集の訳語集と比べてみても、独特な訳語を多く載せている。(拙稿 2000 参照。)
本稿の目的は、その『対訳名物図編』の独特な訳語の中に、福沢諭吉編『増訂華英通語』
や石橋政方編『英語箋』から取ったと見られる訳語がいくつか見られることを指摘し 2 、村 上英俊編『三語便覧』を参照した可能性についても検討することにある。
2 . 『増訂華英通語』から抜き出されたと見られる訳語
『増訂華英通語』(万延元 1860 年刊)は福沢諭吉の最初の出版物とされる。日本で出版され た英語の単語集としてはかなり早い存在で、これに先行する和英語を含む刊本の単語集は、
外国人の著作を除けば『三語便覧』(嘉永七 1854 年序刊)ぐらいである。原本は清・子卿著『華 英通語』(咸豊五 1855 年刊)で、福沢が片仮名による日本語訳と発音表記を付して出版した。
以下に『対訳名物図編』が『増訂華英通語』から訳語を抜き出したと見られる箇所を挙げ る 3 。(片仮名による発音表記は全て省略し、『英仏単語便覧』の英仏語も省略する。また、『英 吉利単語篇』の冠詞に用いられている同上記号(〃)は、それぞれが指し示す冠詞になおし て引用する。以下同様。)
番号 『英吉利単語篇』
( 1866 )
『英仏単語篇注解』
( 1867.5 )
『対訳名物図編』
( 1867.9 序)
『英仏単語便覧』
( 1868 )
『増訂華英通語』
( 1860 )
『英語箋』
( 1861 ) 25 Sealingwax. 1 ウ封 フウジラフ 蠟 2 オ火 フウジロウ 漆
Sealingwax.
上 1 ウ封 フウジラウ 蠟 61 ウ 字房物類火 漆
C
ママeiling wax.
一 24 オ器財
フウジメニツケルラフ 朱 蝋 sealing-wax.
69 Hail. 2 ウ 霰 アラレ 4 ウ 雹 アラレ Hail.
上 3 ウ 霰 アラレ 1 ウ 天文類 雹 アラレ Hail.
一 2 オ天文 雹 ヒヤウ hail.
126 A strait. 4 オ瀬 セ ド 戸 7 オ海 ウミノセト 腰 strait.
上 5 ウ瀬 セ ド 戸 2 ウ地理類海腰 Strait.
(ナシ)
384 The neck. 10 ウ領 エリ 20 ウ クビスヂ 頸 neck.
上 14 ウ領 エリ 54 ウ身体類 頸 クビスジ Neck.
一 13 オ身体 項 ボンノクボ 窩 neck.
661 The shovel. 17 オ火 ヒ (ママ) 34 オ火 ヒ カ キ 鏟 shovel.
上 24 ウ火 ヒ (ママ) 42 ウ器用類火 ヒ カ キ 鏟 Shovel.
一 29 ウ器財 灰 ハイシヤクシ 杓 shovel.
表 1 :『増訂華英通語』から抜き出されたと見られる訳語
番号 『英吉利単語篇』
( 1866 )
『英仏単語篇注解』
( 1867.5 )
『対訳名物図編』
( 1867.9 序)
『英仏単語便覧』
( 1868 )
『増訂華英通語』
( 1860 )
『英語箋』
( 1861 ) 668 A towel. 17 オ手 テヌグヒ 巾 34 ウ面 テヌグヒ 巾
towel.
上 25 オ手 テヌグヒ 巾 20 オ首飾類面 テヌグイ 巾 Towel.
一 21 オ服飾帨 テヌグヒ 布 towel.
690 A cleaver. 17 ウ庖 ハウチヤウ 丁 35 ウ柴 ナ タ 刀 cleaver.
上 25 ウ庖 ハウチヤウ 丁 39 オ器用類柴 ナ タ 刀 Heavy cleaver.
(ナシ)
694 A basket. 17 ウ笊 ザ ル 籬 36 オ籮 ザル basket.
上 25 ウ笊 ザ ル 籬 43 オ器用類籮 Basket.
(ナシ)
697 A gridiron. 17 ウ焙 アブリコ 子 36 オ鐵 アブリコ 鈀 gridiron.
上 26 オ焙 アブリコ 子 38 ウ器用類鐡 ア ミ 鈀 Gridiron.
(ナシ)
775 Champagne. 19 ウ三 シヤンパン 鞭酒 40 オ三 サンパンシユ 邉酒 Champagne.
下 29 オ三 シヤンパンシユ 鞭 酒 33 ウ酒名類三邉酒
ママ C
hampaigne
(ナシ)
783 Arrack. 19 ウ亞 ア ラ キ 瀝酒 40 ウ
ヤシユバナノセウチウ 啞 酒 Arrack.
下 29 ウ亜 ア ラ キ シ ユ 歴酒 33 ウ酒名類啞 酒 Arrack.
(ナシ)
800 Carrots. 20 オ胡 ニ ン ジ ン 蘿蔔 41 ウ紅 ニ ン ジ ン 蘿蔔 Carrots.
下 30 オ胡 ニ ン ジ ン 蘿蔔 23 オ瓜菜類紅蘿蔔 Carrot.
(ナシ)
820 The cherry. 20 ウ 櫻 サクラ 42 ウ櫻 サクランボ 子 cherry.
下 30 ウ 櫻 サクラ 54 オ菓子類 櫻 サクラノミ 子 Cherry.
(ナシ)
826 The sweet- orange.
20 ウ 柑 ミカン 42 ウ柑 ミ カ ン 果 sweet-orange.
下 31 オ 柑 ミカン 53 ウ菓子類柑 ミ カ ン 菓 Orange.
(ナシ)
882 A turkey. 22 オ百 カ ラ ク ン テ ウ
露國雞 45 ウ 火 カラクンテウ 雞 turkey.
下 33 オ 百 カ ラ ク ン テ ウ
露国雞
35 ウ飛禽類火鷄 Turkey.
一 35 ウ鳥吐 カラクンチヤウ 綬 鷄 turkey-cock.
979 Linen. 24 オ亜 ア サ ヌ ノ 麻布 50 ウ蔴 アサヌノ 布 Linen.
下 36 ウ亜 ア サ ヌ ノ 麻布 29 オ通商貨類蔴 ヌ ノ 布 Linen.
一 21 オ服飾綿 モ メ ン 布 linen.
990 A great-coat. 24 ウ大 オ ホ ウ ハ ギ 上衣 51 オ長 オホウハギ 袍 great-coat.
下 36 ウ大 オ ホ ウ ハ ギ 上衣 44 ウ器用類 長 オホバヲリ 袍 Great coat.
一 20 オ服飾 褂 ウワギ coat.
1016 A watch. 25 オ袂 タモトドケイ 時計 52 オ時 タモトトケイ 辰鏢 watch.
下 37 ウ袂 タモトドケイ 時計 30 ウ通商貨類 時 タモトドケイ
辰鏢 Watch.
一 25 オ器財時 ト ケ イ 規 watch.
1026 An apron. 25 ウ蔽 ヒザカケ 膝 52 ウ帷 ヒザカケ 裙 apron.
下 38 オ蔽 ヒザカケ 膝 18 オ首飾類帷 マヘダレ 裙 Apron.
(ナシ)
1027 The garters. 25 ウ長 ナ ガ タ ビ ヒ モ
足袋紐
(足袋ヲ釣上ル)
52 ウ 襪 ナガタビノヒモ 帶 garters.
下 38 オ 長 ナ ガ タ ビ ヒ モ
足袋紐 (足袋
ヲツリアゲル)
19 オ首飾類 襪 タビノヒモ 帶 Garters.
(ナシ)
1117 The armourer.
27 ウ函 グソクシ 人 57 オ軍 グ ン キ シ 噐師 armourer.
下 41 オ函 グソクシ 人 50 オ工匠類軍 ブ キ カ ジ 噐匠 Armorer.
一 11 オ人倫函 グソクシ 人 armourer.
1122 The bookbinder.
27 ウ製 ホ ン ト ヂ 本師 57 ウ釘 ホ ン ト ヂ 書匠 bookbinder.
下 41 ウ製 ホ ン ト ヂ 本師 50 オ工匠類釘 ホ ン ト ジ ヤ 書匠 Book-binder.
一 10 オ人倫装 ホ ン ト ジ シ 裁匠
book-binder.
表 1の箇所では、『対訳名物図編』の漢字表記が『増訂華英通語』と一致または酷似して いるが、ルビに着目してみるとその大半が『英仏単語篇注解』に一致していることがわかる。
このことからまず、『対訳名物図編』が『英仏単語篇注解』を参照しつつ編纂されているこ とが改めて確認できる。それに対し、 384 番「頸」、 661 番「火鏟」、 690 番「柴刀」、 1271 番
「債主」はルビも含めて『増訂華英通語』に一致し(番号は『英吉利単語篇』の通し番号、
以下同様)、それにより、『対訳名物図編』の編纂には原書の『華英通語』ではなく福沢の『増 訂華英通語』が用いられたことも知られる。
ただ、通し番号の間がかなり開いていることからもわかるように、『増訂華英通語』と一 致する訳語が出現する位置は必ずしも連続・集中していないので、本を見比べているだけで は両者の関係に気付きにくい。しかし、『増訂華英通語』の訳語は特徴的な漢字表記が多い ので、このように漢字表記の一致している語だけを抜き出して表にまとめれば参照関係が あったことを明確に示すことができる。(なお、 1150 番「金匠」は、『英語箋』の「金 匠」
から取られたとも考えられるが、前後の 1148 番と 1176 番が『増訂華英通語』から取られて いることから、便宜上こちらに入れておく。)
表 1からは分かりにくいことであるが、『対訳名物図編』は決して『増訂華英通語』の訳
語を優先させているわけではない。『対訳名物図編』の英語と『増訂華英通語』の英語が一 致する箇所は数多くあるが、その中で漢字表記が一致するところは非常に少ない。これはす なわち、編者が両者を見比べた上で、何らかの意図に基づいて漢字表記やルビを選択・改変 していることにほかならない。
その行為が功を奏した箇所がある。例えば 661 番 The shovel. における『英仏単語篇注解』
番号 『英吉利単語篇』
( 1866 )
『英仏単語篇注解』
( 1867.5 )
『対訳名物図編』
( 1867.9 序)
『英仏単語便覧』
( 1868 )
『増訂華英通語』
( 1860 )
『英語箋』
( 1861 ) 1126 The brick-
maker.
27 ウ煉 カ ワ ラ シ 火石匠 57 ウ磚 カ ワ ラ ヤ キ 瓦匠 brick-maker.
下 41 ウ 煉 カ ワ ラ シ 火石匠
50 オ工匠類 磚 カワラヤキ 瓦 Brick-maker.
一 10 オ人倫瓦 カワラヤ 匠 tiler.
1148 The glazier. 28 オ硝 ビ イ ド ロ シ 子匠 58 ウ鑲 ギヤマンシヤウジシ 玻璃匠 glazier.
下 42 ウ硝 ビ イ ド ロ シ 子匠 50 ウ工匠類
ビイドロシヤウジシ 鑲 玻璃匠 Glazier.
一 10 ウ人倫硝 ギ ヤ マ ン シ 子匠 glass-maker.
1150 The goldsmith.
28 オ黄 キンカザリシ 金匠
( 仏 金銀匠)
59 オ 金 キンカザリシ 匠 goldsmith.
下 42 ウ黄 キンカザリシ 金匠
( 仏 金銀匠)
50 ウ工匠類 金 キンザイクシ 匠 Goldsmith.
一 10 オ人倫 金 キンサイクニン 匠 gold-smith.
1176 The shoemaker.
29 オ沓 ク ツ シ 工 60 オ ク ツ シ 匠 shoemaker.
下 43 ウ沓 ク ツ シ 工 51 オ工匠類 クツヽクリ 匠 Shoe maker.
(ナシ)
1270 The debtor. 31 オ借 カ リ テ 金人 65 オ欠 カリカタ 主 debtor.
下 46 ウ借 カ リ テ 金人 74 オ二字類欠 カリヌシ 主 Debtor.
(ナシ)
1271 The creditor. 31 オ催 カ シ テ 債人 65 オ債 カシカタ 主 creditor.
下 46 ウ催 カ シ テ 債人 74 オ二字類債 カシカタ 主 Creditor.
(ナシ)
の訳語は「火」となっており、明らかに誤りである。『英吉利単語篇』系統単語集の多くが
『英仏単語篇注解』の誤りをそのまま継承して「火」と記す中で、『対訳名物図編』は『増訂 華英通語』の訳語を取って「火鏟」とし、結果的に『英仏単語篇注解』の誤りを訂正している。
ところで、『対訳名物図編』の 1148 番「鑲玻璃匠」は『増訂華英通語』の「鑲玻璃匠」か ら来ていると思われるが、この独特なルビは恐らく、遡れば『三語便覧』に由来するも のである。すなわち、『三語便覧』初 43 オに「硝子障子造工(仏) vitrier. (英) glazier. (蘭)
glazenmaker. 」とあるのを福沢が参照して『増訂華英通語』に取り入れられたものと見
られる。(この訳語については拙稿 2010p.264 で既に考察した。『ドゥーフ・ハルマ』の
「 glazenmaker. 障子ニ硝子ヲハムル人」から村上が作り出した漢字表記およびルビであると
見られる。)『増訂華英通語』と『三語便覧』の関係を論じた先行研究をまだ見ないのでこれ はまた改めて追究されなければならない問題であるが、 1860 年当時の日本に英和対訳単語 集がほとんど無かったことを考えると、福沢が『三語便覧』を参照しながら『増訂華英通語』
を編纂することはごく自然なことであったであろう。
3. 『英語箋』から抜き出されたと見られる訳語
石橋政方編『英語箋』(文久元 1861 年刊)は、『改正増補蛮語箋』(箕作阮甫編、嘉永元 1848 年刊)の蘭語部分を英語に置き換えて成った意義分類体の単語集である。『増訂華英通語』が 中国洋学系単語集であるのに対し、こちらは日本の蘭学系単語集ということになる。訳語の 大半は『改正増補蛮語箋』のそれを引き継いでおり、『改正増補蛮語箋』から削除された見出 し語が多くある一方で、増補された語は少ない。(拙稿 1999 参照。)『対訳名物図編』の中には、
この『英語箋』の中から抜き出されたと見られる語も見られる。先程と同様にその例を挙げる。
表2:『英語箋』から抜き出されたと見られる訳語 番号 『英吉利単語篇』
( 1866 )
『英仏単語篇注解』
( 1867.5 )
『対訳名物図編』
( 1867.9 序)
『英仏単語便覧』
( 1868 )
『増訂華英通語』
( 1860 )
『英語箋』
( 1861 ) 220 The cannon. 6 ウ加 カ ノ ン 農砲 12 オ迦 カノンハウ 砲 上 8 ウ
カーンハウ(ママ) 加 農 砲
(ナシ) 一 31 ウ火器迦 イシビヤ 炮 cannon.
338 A midwife. 9 オ 産 トリアゲバヽ 婆 18 オ収 トリアゲバヽ 生婆 midwife.
上 13 オ 産 トリアゲバヾ 婆 (ナシ) 一 8 ウ人倫収 トリアゲバヽ 生婆 mid-wife.
353 The muscles. 9 ウ赤 ア カ ミ 肉 19 オ筋 スヂ muscles.
上 13 ウ赤 ア カ ミ 肉 (ナシ) 一 14 オ身体筋 スジ muscle.
541 A cold. 14 オ冐 カゼヒキ 寒 28 オ感 カゼヒキ 冐 cold.
上 20 オ冐 カゼヒキ 寒 24 ウ疾病類傷 カ ゼ 風 Catarrh, taken cold, catch cold.
一 15 ウ疾病感 カゼヒキ 冐
cold.
番号 『英吉利単語篇』
( 1866 )
『英仏単語篇注解』
( 1867.5 )
『対訳名物図編』
( 1867.9 序)
『英仏単語便覧』
( 1868 )
『増訂華英通語』
( 1860 )
『英語箋』
( 1861 ) 557 Cramp. 14 ウ痙 ヒキツケ 攣 29 オ 拘 コウレン ヒキツリ 攣
Cramp.
上 21 オ痙 ヒキツケ 攣 (ナシ) 一 16 ウ疾病拘 スジバリ 攣 cramp.
666 The bed. 17 オ寢 ネ ド コ 床 34 ウ卧 フ ト ン 單 bed.
上 24 ウ寢 ネ ド コ 床 64 オ房物類 褥 フトン Matress.
一 24 ウ器財卧 フ ト ン 単 bed.
698 A pail. 17 ウ手 テ オ ケ 桶 36 オ吊 テ オ ケ 桶 pail.
上 26 オ手 テ オ ケ 桶 40 オ器用類水 ヲ ケ 桶 Pail.
一 27 ウ器財吊 ツ ル ベ 桶 pail.
705 The cork. 18 オ 栓 クチギ 36 ウ塞 ク チ ギ 木 cork.
上 26 オ 栓 クチギ (ナシ) 一 27 ウ器財塞 コロツプ 木 cork.
712 A man-cook. 18 オ料 リヤウリニン 理人 36 ウ 庖 リヤウリニン 人 man-cook.
上 26 ウ料 リヤウリニン 理人 (ナシ) 一 9 ウ人倫 庖 リヤウリニン 人 cook.
718 The valet. 18 オ小 コ モ ノ 厮 37 オ奴 コ モ ノ 僕 valet.
上 26 ウ小 コ モ ノ 厮 6 ウ人倫類 奴 メシツカイ 僕 Slave.
一 9 ウ人倫奴 コ モ ノ 僕 valet.
722 A fork. 18 ウ食 ホ ル ク 叉
(三股
マタ又ハ四股ノ)
37 オ肉 ミ ツ マ タ 叉子 fork.
上 26 ウ食 ニクサシ 叉
(三股或ハ四股ノ)
38 ウ器用類刀 ミツマタ 釵 Fork.
一 27 ウ器財肉 ミ ツ マ タ 叉子 fork.
724 A spoon. 18 ウ匕 サジ 37 ウ食 サ ジ 匕 spoon.
上 27 オ匕 サジ 42 ウ器用類匙 サ ジ 羮 Spoon.
一 28 オ器財食 サ ジ 匕 spoon.
726 A cup. 18 ウ 盃 チヨコ 37 ウ 鍾 チヨク cup.
上 27 オ 盃 サカヅキ 39 オ器用類 缶 コツプ Cup.
一 27 ウ器財 鍾 チヨク cup.
815 Garlic. 20 ウ 葫 ニンニク 42 オ大 ニンニク 蒜 Garlic.
下 30 ウ 葫 ニンニク 22 ウ瓜菜類青 ニンニク 蒜 Garlic.
一 41 ウ草大 ニンニク 蒜 garlic.
834 The currant. 21 オリベス
(木イチゴニ似タル 菓ノ名)
43 オ覆 イ チ ゴ 盆子 currant.
下 31 オリベス
(木イチゴニ似タル 菓ノ名)
54 オ菓子類柳 イ チ ゴ 梅 Strawberry.
一 39 ウ草覆 イ チ コ 盆子 straw-berries.
883 A duck. 22 オ 鴨 アヒル 45 ウ家 ア ヒ ル 鴨 duck.
下 33 オ 鴨 アヒル 35 オ飛禽類鴨 カモ Duck.
一 35 オ鳥家 ア ヒ ル 鴨 duck.
921 A parrot. 23 オ鸚 イ ン コ 哥 47 ウ鸚 ア ウ ム 鵡 parrot.
下 34 オ鸚 イ ン コ 哥 34 ウ飛禽類鸚 ア ウ ム 哥 Parrot.
一 35 ウ鳥鸚 ヲ ウ ム 鵡 parrot.
980 Cotton. 24 ウ草 モ メ ン 綿 50 ウ木 モ メ ン 綿 Cotton.
下 36 ウ草 モ メ ン 綿 28 オ器用類棉 ワ タ 花 Cotton.
一 42 ウ木木 モ メ ン 綿 cotton.
988 A hat. 24 ウ帽 バ ウ シ 子 50 ウ氈 ケバウシ 笠 hat.
下 36 ウ帽 バ ウ シ 子 18 オ首飾類髙 ボ ウ シ 帽 Hat.
一 20 ウ服飾氈 ケボーシ 笠 hat.
1018 A ring. 25 オ指 ユ ビ ワ 環 52 オ戒 ユ ビ ワ 指 ring.
下 37 ウ指 ユ ビ ワ 環 (ナシ) 一 20 ウ服飾戒 ユビハメ 指 finger-ring.
1123 The bookseller.
27 ウ書 ホ ン ヤ 肆 57 ウ書 ホ ン ヤ 賈 bookseller.
下 41 ウ書 ホ ン ヤ 肆 (ナシ) 一 10 ウ人倫書 ホ ン ヤ 賈 book-seller.
1228 An astronomer.
30 オ天 テンモンガクシヤ 文學者 62 ウ星 テンモンシヤ 學者 astronomer.
下 45 オ 天 テンモンガクシヤ
文學者
(ナシ) 一 9 ウ人倫星 セイガクシヤ 學者 astronomer.
1289 Brown. 31 ウ褐 トビイロ 色 66 オ花 チ ヤ イ ロ 褐色 Brown.
下 47 ウ褐 トビイロ 色 21 オ顔色類棕 チヤイロ 色 Brown.
一 21 ウ服飾花 チ ヤ イ ロ 褐色
brown.
『英語箋』の使われ方も『増訂華英通語』の使われ方とほぼ同じである。漢字表記が『英 語箋』とほぼ一致するのに対し、ルビは大半が『英仏単語篇注解』と一致し、その一方で
988 番「氈笠」や 1290 番「淺青蓮色」のように『英語箋』と一致するところもある。
この中で、 834 番「覆盆子」の英語は、『英吉利単語篇』が The currant. 、『英語箋』が straw-berries. で一致していない。これは、『英仏単語篇注解』の「リベス (木イチゴニ似タル菓ノ名) 」 の「木イチゴニ似タル」という記述をもとに currant に対して『英語箋』の日本語表記を利 用して「覆盆子」と付けたものと見られる。( 835 番の Strawberries. に対する『英仏単語篇注 解』の訳語は「オランダイチゴ」( 21 オ)となっており、『対訳名物図編』はそれをもとに
「蠻 苺」( 43 オ)と訳している。)しかし、 currant (カラント)とイチゴは全く別の果物であ るので、この措置は誤りである。前節で『英仏単語篇注解』の誤りを訂正している例を示し たが、このように新たな誤りを作り出してしまっている例も存在する。
4. 『三語便覧』を参照した可能性について
村上英俊編『三語便覧』(嘉永七 1854 年序刊)は日・仏・英・蘭対訳の意義分類体単語集 で、日本人が編纂した中で英語を含む刊本の単語集として最も早い本である。
『対訳名物図編』がこの『三語便覧』を参照して編纂されたか否かについては、判断が難 しい。
まず、『三語便覧』とのみ一致する語を以下に掲げる。(紙幅の都合により、『英仏単語便覧』
は表から除いた。また、『三語便覧』の西洋語は英語のみを掲げる。)
表 3を一見すると、『三語便覧』を参照しているようにも感じられるが、よく見ると英語
が異なっていることが多く、特徴的な漢字表記の語も少ない。 744 番「晩飯」も、そこだけ を見ると『三語便覧』から取ったようにも見えるが、その前に並んでいる語を見ると、『対 訳名物図編』が「晨饌 Breakfast. 」「午膳 Dinner. 」( 38 ウ)となっているのに対し、『三語便覧』
番号 『英吉利単語篇』
( 1866 )
『英仏単語篇注解』
( 1867.5 )
『対訳名物図編』
( 1867.9 序)
『英仏単語便覧』
( 1868 )
『増訂華英通語』
( 1860 )
『英語箋』
( 1861 ) 1290 Violet. 31 ウ桔 キキヨウイロ 梗色 66 オ淺 キ ヤ ウ ム ラ サ キ
青蓮色 Violet.
下 47 ウ桔 キキヨウイロ 梗色 21 オ顔色類紫 ムラサキ 色 Reddish gray.
21 ウ顔色類紫 ムラサキ 粉 Purple.
一 22 オ服飾淺 キヤウムラサキ 青 蓮 violet.
1292 Indigo. 31 ウ 青 コンギキヤウ 黛 66 オ燕 コンギキヨウ 尾青 Indigo.
下 47 ウ 青 コンギキヨウ 黛 21 オ顔色類
コンギキヤウ 洋 藍 Indigo.
一 22 オ服飾燕 コンキヽヤウ 尾青
indigo.
は「早飯(英) breakfast. 」「午飯(英) dinner. 」(初 48 オ)となっており、本当に『三語便覧』
か取られたのかどうか疑わしくも感じられる。
なお、最後の 1264 番「顆伴」は、英語の partner のつながりによって、『増訂華英通語』か ら取られているように見える。実際そうなのであろうが、漢字表記の「顆」が『三語便覧』
と一致する。一般的な表記は「夥伴」の方であろうが 4 、これを『対訳名物図編』はわざわ ざ『三語便覧』と同じ表記に変えているように見える。『三語便覧』において「顆伴(英)
表 3 :『三語便覧』から抜き出された可能性のある訳語 番号 『英吉利単語篇』
( 1866 ) 『英仏単語篇注解』 ( 1867.5 ) 『対訳名物図編』 ( 1867.9 序) 『三語便覧』 ( 1854 序) 『増訂華英通語』 ( 1860 ) 『英語箋』 ( 1861 ) 10 The ruler. 1 オ定 ヂヤウギ 䂓 1 ウ界 デ ウ ギ 尺
ruler.
初 59 ウ器用界 デ ウ ギ 尺 ruler.
(ナシ) (ナシ)
12 A letter. 1 オ書 テ ガ ミ 翰 1 ウ文 モ ン ジ 字又手 テ ガ ミ 簡 letter.
初 59 オ器用手 テ ガ ミ 簡 epistle.
61 ウ字房物類 書 テ ガ ミ 信 Letter.
67 ウ単字類字 モジ Letter.
一 24 オ器財書 カキモノ 牘 letter.
一 24 オ器財文 モ ン ジ 字 character.
113 The Baltic. 3 ウ波 バ ル チ ク 羅的海 6 ウ東 トウカイ 海 Baltic.
中 53 ウ地名東海 b ママ
altick sea.
(ナシ) (ナシ)
437 Sneezing. 11 ウ 嚔 クサメ 23 オ噴 ク サ メ 嚔 Sneezing.
終 50 ウ動詞
クシヤミスル 噴 嚏 to n ママ eeze.
24 ウ疾病類打 クシヤミ 噴 Sneeze.
(ナシ)
560 Gangrene. 14 ウ寒 カ ン ダ ツ ソ 脱疽 29 オ脱 キズクサリ 疽 Gangrene.
初 25 オ疾病脱疽 gangrene.
(ナシ) (ナシ)
583 A city. 15 オ城 シ チ ウ 市 30 ウ 都 ハンクワノトチ 會 city.
初 45 オ宮室都 ツ 會 royal city.
初 6 ウ地理
ハンジヤウノトコロ 都 會 chiefest place.
2 ウ地理類
トクワイ。ジヨウカ 城 City.
3 オ地理類 都 ミヤコ Capital.
一 3 オ地理 都 ミヤコ capital.
584 A metropolis. 15 オ首 ミ ヤ コ 府 30 ウ京 ミ ヤ コ 師 metropolis.
初 6 ウ地理京 ミ ヤ コ 師 chiefest city.
3 オ地理類 都 ミヤコ Capital.
一 3 オ地理 都 ミヤコ capital.
744 Supper. 19 オ夜 ヤシヨク 食 38 ウ晩 ユウメシ 飯 Supper.
初 48 オ飲食晩 ユウメシ 飯 supper.
79 ウ二字類晩 ユフメシ 餐 Supper.
一 23 ウ飲食夜 ヤシヨク 食 supper.
1068 A porter. 26 ウ雇 モノモチ 夫 54 ウ擔 ニ モ チ 夫 porter.
初 42 ウ人品擔 ニ モ チ 夫 porter.
74 ウ二字類挑 モンバン 夫 Porter.
(ナシ)
1196 The pruning- knife.
29 ウ草 クサカリガタナ 刈 刀 61 オ薙 ツミコミガマ 草刀 pruning-knife.
初 57 ウ器用 薙 クサカリガマ
草鎌 pruning-knife.
(ナシ) (ナシ)
1264 A partner. 31 オ仲 ナ カ マ 間 64 ウ 顆 トヒヤナカマ 伴 partner.
初 37 オ人品顆 ナ カ マ 伴 mediator.
74 ウ 夥 ナカマ。クミヤイ 伴 Partner.
(ナシ)
mediator. 」は、「人品」部の最初という目立つ位置にあり、これを参照した可能性も考えら れたので、便宜上こちらの分類に加えた。
このように、確実に『三語便覧』から抜き出されたと言える箇所は非常に少ないので確か なことは言えないが、その可能性が皆無ではないことだけを指摘しておく。また、 表 1と 表 2に示した語のうち、以下の語は『三語便覧』にも同じ漢字表記の語が存在するが、本稿で はより参照した可能性が高い資料である『増訂華英通語』または『英語箋』から抜き出さ れた語として処理したことを付け加えておく。(『三語便覧』の仏語・蘭語は省略して引用す る。)
384 『対訳』 20 ウ頸(『増訂華英通語』から) 『三語』初 13 オ 頚 (英) neck.
1150 『対訳』 59 オ金匠(どちらからとも取れる) 『三語』初 37 ウ 金 匠 (英) goldsmith.
353 『対訳』 19 オ筋(『英語箋』から) 『三語』初 16 オ 筋(英) muscle.
541 『対訳』 28 オ感冐(『英語箋』から) 『三語』初 25 オ感冐(英) cold.
557 『対訳』 29 オ 拘 攣 (『英語箋』から) 『三語』初 24 オ拘攣(英) cramp.
712 『対訳』 36 ウ庖人(『英語箋』から) 『三語』初 36 ウ庖人(英) cook younger.
718 『対訳』 37 オ奴僕(『英語箋』から) 『三語』初 31 ウ奴僕(英) d omestiques.
921 『対訳』 47 ウ鸚鵡(『英語箋』から) 『三語』中 30 オ鸚鵡(英) perrot.
1123 『対訳』 57 ウ書賈(『英語箋』から) 『三語』初 41 オ書賈(英) bookseller.
5. 漢字表記の選択の傾向
表 1と 表 2から、『対訳名物図編』が採用している漢字表記には一定の傾向の見られること
が指摘できる。
『増訂華英通語』から取られた箇所も、『英語箋』から取られた箇所も、『対訳名物図編』
における漢字表記の選択の傾向は共通している。すなわち、その漢字表記は、日本人の日常 生活にはあまり馴染みのない表記である近代中国語(白話語を含む)の表記を優先させてい るように見受けられる。例えば、 25 番「フウジロウ」は『英仏単語篇注解』の「封臘」を 変えて「火漆」に、 126 番「セド(ウミノセト)」は「瀬戸」を「海腰」に変更し(以上『増 訂華英通語』から)、 698 番「テオケ」は「手桶」を「吊桶」に、 1018 番「ユビワ」は「指環」
を「戒指」に(以上『英語箋』から)変更するといった具合である。その現象をルビとの関
係から見れば、『英仏単語篇注解』の漢字表記がルビの日本語を素直に漢字に直した語であ
ることが多いのに対し、『対訳名物図編』はその逆に、一般の日本人が知らないような近代
中国語の漢字表記を好んで採用しているように見える。中国書をもとにしている『増訂華英
通語』が近代中国語(ただし広東語)を多く含むことは当然のことであり、『英語箋』が白
話語を含むことは『類聚紅毛語訳』以来の訳語を受け継いでいることによる。それまでの単
語集が白話語あるいはそれに似せたような漢字表記を中心に訳語として掲げていたことから すれば、日本語として素直な漢字表記を中心に用いている『英仏単語篇注解』の訳語の方が むしろ新しいと言えるが、『対訳名物図編』はそれに抗うかのように、近代中国語の漢字表 記を優先させているように見える。このことは、見方を変えれば、これまでの単語集に用い られていた訳語とのつながりを重視しているとも言え、あるいは『英仏単語篇注解』の新し い訳語や漢字表記に反発し、それ以前の単語集に見られる訳語を優先させようとしているよ うにも見える。
6. おわりに
『対訳名物図編』の編者である市川清流は、文久元( 1861 )年十二月から文久三年一月に かけて文久遣欧使節の一員として欧州諸国を巡った経験を持ち、文久三年にその見聞を『尾 蠅欧行漫録』としてまとめたことで知られる人物であるが、その時点で入手できる英和対訳 単語集は『三語便覧』・『増訂華英通語』・『英語箋』程度であったので、渡欧を前にそれらで 英語を学習していたことは想像に難くない。また市川は、のちの明治十一( 1878 )年に唐話 辞書『雅俗漢語訳解』を編纂・刊行するなど、どちらかというと西洋語よりも漢字に明るい 人間であったと思われる 5 。これは想像でしかないが、『三語便覧』や『増訂華英通語』『英 語箋』は市川にとって英語学習の初期に馴れ親しんだ単語集であり、それらの単語集によっ て英語に対する訳語も覚えたのではないだろうか。そこへ『英吉利単語篇』や『英仏単語篇 注解』が現れたのであるが、『英仏単語篇注解』に記されている訳語が自分の慣れ親しんで いた訳語と少なからず異なっていることに違和感を感じたので、自分が使用していた単語集 と対照させ、訳語を整理した上で出版しようとしたのではないかと想像される。
その是非はともかくとしても、『対訳名物図編』の訳語の中に『増訂華英通語』や『英語 箋』から取られたと見られる語のあることが本稿によって確認された。ただ、今回指摘した 語は『対訳名物図編』に存する独特な訳語のうちのほんの一部に過ぎず、未解明の訳語が数 多く残されている。今後は、それらの出自を解明するとともに、『英仏単語篇注解』の訳語 の性格も同様に明らかにされる必要がある。
参考文献
渡辺実 1962 『大阪女子大学蔵日本英学資料解題』大阪女子大学附属図書館
後藤純郎 1976 「市川清流の生涯―「尾蠅欧行漫録」と書籍館の創立―」『研究紀要(日本大学人文科
学研究所)』 18
同 1981 「市川清流の著作について(Ⅰ)(Ⅱ)」『図書館学会年報』 27-2, 3
藁科勝之 1981 『雑字類編 影印・研究・索引』(杉本つとむ監修)ひたく書房 櫻井豪人 1999 「『英語箋』の編纂方法と誤訳」『名古屋大学国語国文学』 84
同 2000 「『英吉利単語篇』系統単語集の影響関係」『名古屋大学人文科学研究』 29
同 2005 『類聚紅毛語訳・改正増補蛮語箋・英語箋』港の人
同 2009 『三語便覧 初版本影印・索引・解説』港の人
竹中龍範 2009 「開成所『英吉利單語篇』と『對譯名物圖編』・『英国單語圖解』」『英学史研究』 42 櫻井豪人 2010 「『三語便覧』の訳語と『ドゥーフ・ハルマ』『雑字類編』―「人品」部を例として―」
田島毓堂編『日本語学最前線』和泉書院
鄭英淑 2012 「『英吉利単語篇』の訳語集の影響関係」『日本近代学研究(韓国日本近代学会)』 38
注
1
『対訳名物図編』の編者について。本自体には冒頭の「附言」に「買山迂夫誌」とあるのみであ るが、後藤純郎 1981 により、この「買山」が市川渡(のちの市川清流)の号であったことが明ら かにされている。これに従い、本稿でも『対訳名物図編』の編者を市川清流としておく。その生 涯は後藤 1976 にまとめられているが、不明な点も多い。
2
『対訳名物図編』に関する研究は、古くは渡辺実 1962 、最近では拙稿 2000 、竹中龍範 2009 、鄭英 淑 2012 があるが、『増訂華英通語』や『英語箋』、『三語便覧』からの影響を指摘した研究をこれま で見ない。
3
本研究において、『英吉利単語篇』『英仏単語篇注解』『対訳名物図編』『英仏単語便覧』は家蔵本、
『増訂華英通語』は慶應義塾複製 1983 、『英語箋』は拙著 2005 、『三語便覧』は拙著 2009 をそれぞ れ使用した。
4
「顆伴」の表記について。一般的には「夥伴」であるが、『三語便覧』に「顆伴」とあるのは、『雑 字類編』にその表記が含まれることによる。(詳細は拙稿 2010p.269 参照。)これは、『ドゥーフ・
ハルマ』の maat にある「仲間」という訳語から『雑字類編』の「ナ」の「人品」部を参照した結果、
「顆伴」という表記が導き出されたのであるが、仮に「ツレ」という言葉から『雑字類編』の「ツ」
の「人品」部を参照した場合は、「夥伴」が導き出されることになる。なお、『雑字類編』は藁科 勝之 1981 によった。
5