有 価 証 券 報 告 書 の 虚 偽 記 載 と 損 害 額 の 算 定
( 二
・ 完
)
潘
阿 憲
目 次 一 は じ めに 二 虚 偽 記載 と 損 害 賠償 三 虚 偽 記載 に よ る 損害 額 の 算 定 方法 1 米 国法 2 不 法行 為 法 の 一 般原 則 に よ る算 定
( 1
)取 得 自 体 損 害ケ ー ス
( 以上
、 都 法 五 一巻 二 号
)
( 2
) 高値 取 得 損 害ケ ー ス 四 終 わ りに
( 以 上
、 本号
) 有
価 証 券 報 告 書 の 虚 偽 記 載 と 損 害 額 の 算 定
( 二
・ 完
)
( 都 法 五 十 二
―
二
) 一 六 五
︵2︶高値取得損害ケース 虚 偽 記 載 に よ る 投 資 者 の 損 害 額 を 算 定 す る 場 合 の 差 額 説 に お け る も う 一 つ の 仮 定 的 財 産 状 態 は
、虚 偽 記 載 が な かっ た と し ても 当 該 有 価証 券 を 取 得 した も の の
、虚 偽 記 載 が なか っ た な らば 有 し て いた で あ ろ う 公正 な
( す なわ ち より 低 い
) 市場 価 格 で 当該 有 価 証 券 を取 得 し て い た と い う 状 態 で あ り
、こ の 場 合 に お け る 投 資 者 の 損 害 額 は
、「 有 価証 券 を 取 得し た 時 の 取得 価 額
」 か ら、
「 虚 偽 記 載 が な か っ た と 仮 定 し た 場 合 の 当 時 の 有 価 証 券 の 価 額
」 を 差 し 引 いた 額 と な る。 す な わ ち、 有 価 証 券 報告 書 の 虚 偽記 載 に よ り 有価 証 券 の 市場 価 格 が 人為 的 に つ り 上げ ら れ た 場合 に おい て は
、 その 高 値 で 取得 し た 投 資 者の 損 害 は
、取 得 時 の 取 得価 額 と 想 定価 格 と の 差額 と し て 算 定さ れ る わ けで あ る
( 73
。)
し か し
、 この 高 値 取 得損 害 ケ ー ス にお け る 損 害額 の 算 定 に 際し て は
、 想定 価 格 を ど のよ う に と らえ る べ き かが 大 きな 問 題 と なり
、 い わ ゆ るマ ー ケ ッ ト・ モ デ ル 等を 使 っ て 推 計す る こ と は可 能 で あ る が
( 74
、)
実 際 は 容易 で は な い。 そ こ で
、 これ ま で の 裁判 例 に お い ては
、 想 定 価 格 の 算 定 方 法 な い し 高 値 取 得 損 害 の 算 定 方 法 と し て は
、( a) 公 表後 の 株 価 を基 準 と す る方 法
、( b
)公 表 前 後 の 下落 額 を 基 準と す る 方 法、
( c
) 公 表前 後 の 下 落 率を 基 準 と する 方 法、
( d
) 民事 訴 訟 法 二 四八 条 の 規 定を 適 用 し て 損害 額 を 認 定す る 方 法
、( e
) 金 商 法二 一 条 の 二 第二 項 を 類 推適 用 して 損 害 額 を認 定 す る 方法 な ど が 用 いら れ て き た
( 75
。)
以 下
、 こ れら の 方 法 につ い て 検 討 して い く
。
( a
) 公 表後 の 株 価 を 基準 と す る 方法 既 に 検 討 した よ う に
、 米国 の 裁 判 例に お い て は、 実 際 の 取 引時 の 市 場 価格 と 不 実 表 示ま た は そ れに 相 当 す る詐 欺 行為 が 公 に され た 時 の 市 場価 格 と の 差額 を も っ て損 害 賠 償 額 とす る 修 正 現実 損 害 賠 償 方式 が 用 い られ て き た
。こ れ は、 不 実 表 示の 事 実 が 公 にさ れ た 時 に、 市 場 は 当 該 証 券 の 真 実 の 価 値 を 反 映 す る と い う 前 提 に 立 ち
、「 訂 正 情 報 を
一 六 六
反映 し た 市 場価 格
」≒
「取 引 時 の あ るべ き 市 場 価格
」 と み る 算定 方 法 で あり
、 一 九 九
〇年 代 の 半 ば頃 ま で に
、米 国 の証 券 民 事 訴訟 に お け る 標準 的 な 損 害額 算 定 方 法と し て 確 立 され た も の であ る7()6
。 こ の よ う な 訂 正 情 報 を 反 映 し た 市 場 価 格 を 証 券 の 真 の 価 値 と し て と ら え る 修 正 現 実 損 害 賠 償 方 式 と い う 考 え 方 は
、 わ が 国 にお け る 有 価証 券 報 告 書 の虚 偽 記 載 によ る 損 害 額 の算 定 に 際 して 参 考 と なる と 考 え ら れる
。 実 際 に、 虚 偽記 載 を 理 由と す る 損 害賠 償 請 求 訴 訟で は
、 原 告株 主 か ら
、 公表 後 の 株 価を 基 準 と して 損 害 額 を 算定 す べ き であ る とす る 主 張 がな さ れ る こと が あ る
。 濳東 京 地 判平 成 一 九
・八
・ 二 八 金 商一 二 八
〇 号一
〇 頁7()7 前記 滷事 件 と同 じ Y1
会 社( 西 武 鉄 道
)が 株 主 の 状況 を 偽る 有 価 証 券報 告 書 の 虚偽 記 載 を 行 った の に 対 し、 個 人 株 主 Xが
、 Y1
会 社や 代 表 取 締 役だ っ た Y2
らに 対 し 損 害賠 償 を求 め た 事 例で あ る
。 Xは
、 想 定 価 格は
、 真 実 Y(1
の 株 式 が 株券 上 場 廃 止基 準 に 該 当 する と い う 事実
) が 公 表さ れ て、 真 実 の 情報 が 完 全 に 株価 に 反 映 され た 場 合 の株 価 で あ り
、本 件 で は
、平 成 一 六 年 一〇 月 一 三 日に 有 価 証 券報 告 書の 虚 偽 記 載の 事 実 が 公 表さ れ た も のの
、 こ の 時点 で は Y1
株 式が ど の よ うな 扱 い と な るか 不 明 で あり
、 真 実 の情 報 が株 価 に 完 全に 反 映 さ れ たと み る こ とは で き ず
、同 年 一 一 月 一六 日 に 東 京証 券 取 引 所 によ っ て 上 場廃 止 が 決 定さ れ たこ と に よ り、 よ う や く 真実 の 情 報 が株 価 に 完 全に 反 映 さ れ たと い え る から
、 同 日 時 点で の Y1
株 式の 終 値 で ある 二 六八 円 が 想 定価 格 で あ り、 こ の 想 定 価格 と 取 得 価格 と の 差 額 が虚 偽 記 載 によ る 損 害 額 であ る と 主 張し た
。 こ れ に 対 し、 裁 判 所 は
、X の 損 害 Yが1
株 式 を 取得 し た 時 点 での 取 得 価 格と 想 定 価 格 との 差 額 で ある こ と を 認め た も の の
、「 X が Y1
の 株 式 を 取 得 し て か ら
、 同 社 に よ る 有 価 証 券 報 告 書 の 虚 偽 記 載 の 公 表 が な さ れ る 直 前 ま で の 間 に、 株 価 の 下落 が あ っ た場 合 に は
、 当該 下 落 部 分 は 損 害 か ら 控 除 さ れ る べ き で あ
」り
、「 な ぜ な ら
、 そ の 間 の 株 価 の変 動 は
、 純粋 に 市 場 原 理に よ っ て 形成 さ れ た もの で あ っ て
、本 件 に お ける 虚 偽 記 載 の影 響 を 受 けて お ら ず
、因 果 有 価 証 券 報 告 書 の 虚 偽 記 載 と 損 害 額 の 算 定
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( 都 法 五 十 二
―
二
) 一 六 七
関係 あ る 損 害に は 含 ま れな い と 解 さ れ る か ら で あ
」 り
、「 さ ら に、 X は
、 本 件 口 頭 弁 論 終 結 時 に お い て も
、な お Y1
の株 式 の 代 わり に 割 り 当て ら れ た S 会社 の 株 式 を所 有 し て い ると こ ろ
、 同終 結 時 に お いて 同 社 の 株価 が 想 定 価格 よ りも 上 昇 し てい る 場 合 に は、 当 該 上 昇部 分 に つ いて は
、 い っ たん 発 生 し た損 害 が 事 後 的に 補 填 さ れた も の と 評価 す るこ と が で きる か ら
、 当 該上 昇 部 分 は損 害 か ら 控除 さ れ る べ きで あ る
」 との 一 般 論 を 述べ た う え で、 本 件 で は、 虚 偽記 載 の 事 実が 公 表 さ れ た平 成 一 六 年一
〇 月 一 三日 の 前 日 で ある 同 月 一 二日 の Y1
の 株式 の 終 値 が 一〇 八 九 円 であ る とこ ろ
、 X の取 得 価 格 であ る 一 一 一 四円 な い し 一一 四 九 円 か ら公 表 日 の 前日 の 終 値 で ある 一
〇 八 九円 ま で の 株価 下 落部 分 に よ る損 害 は 控 除 され る べ き であ り
、 一
〇八 九 円 と 想 定価 格 の 差 額が 因 果 関 係 ある 損 害 で ある が
、 Y1
株式 が 上場 廃 止 さ れた 後 で あ る平 成 一 八 年 一月 こ ろ に おい て も 九 一 九円 で 買 い 取ら れ て い た こと
、 同 株 式の 代 わ り に割 り 当て ら れ た S社 の 株 価 は DC F 法 ま たは 修 正 純 資産 法 に よ れ ば、 平 成 一 八年 九 月 末 時 点で 一 一
〇 二円 か ら 一 九三 九 円で あ る と する 評 価 も あ るこ と な ど から
、 本 件 口頭 弁 論 終 結 時に お け る S社 の 株 価 は
、少 な く と Yも1
株 式 の 平成 一 六年 一
〇 月 一二 日 の 終 値で あ る 一
〇 八九 円 を 上 回 る も の と 推 認 さ れ
、「 本 件 に お い て は
、仮 に 損 害 が 発 生 し て い た とし て
、 本 件口 頭 弁 論 終結 時 に お い てそ の 損 害 は完 全 に 補 填 され た も の とい え る か ら
、Y ら の 行 為と 因 果 関 係あ る 損害 は 認 め られ な い
」 と 判示 し て
、 Xの 請 求 を 棄却 し た
。 潭東 京 地 判平 成 一 九
・ 一〇
・ 一 判 タ一 二 六 三 号三 三 一 頁 前 記 滷事 件と 同 じ 株 主 の状 況 を 偽 る有 価 証 券 報告 書 の虚 偽 記 載 につ い て
、 個 人株 主 X が 同虚 偽 記 載 を行 っ た A 会 社( 西 武 鉄 道) の 代 表 取 締役 だ っ た Yら に 対 し
、平 成 一六 年 法 九 七号 に よ る 改 正前 の 証 取 法二 四 条 の 四、 二 二 条 一 項等 に 基 づ き損 害 賠 償 を 求め た も の であ る
。 X は
、前 記 濳判 決 の 原告 株 主 と 同 様、 上 場 廃 止決 定 日 の 二 六八 円 が 想 定価 格 で あ り、 こ の 想 定 価格 と 取 得 価格 と の 差 額 が虚 偽記 載 に よ る損 害 額 で あ ると 主 張 し た。
一 六 八
こ れ に 対 し、 裁 判 所 は、
「 有 価 証 券報 告 書 に 虚 偽 記 載 が さ れ た 場 合 の 株 主 の 損 害 は
、株 式 の 取 得 価 格 か ら 想 定 価 格( 不 実 開 示が な か っ たと 仮 定 し た 場合 の 株 式 取得 当 時 の 想 定価 格
) を 控除 し た 金 額 であ り
、 X は、 想 定 価 格が 取 得価 格 を 下 回る こ と を 立 証す る 必 要 があ る と こ ろ、
…
… 平 成 一六 年 一 一 月一
〇 日 の 終 値を 想 定 価 格と す る 根 拠は 具 体的 に 明 ら かで は な
」 く
、「 か え っ て
、前 記 認 定 の と お り
、 A 鉄 道 は
、平 成 一 八 年 一 月 こ ろ
、 同 社 を 含 む グ ル ー プ の企 業 再 編 に際 し
、 反 対 株主 か ら の 株式 買 取 請 求 に対 し て
、 一株 あ た り 九一 九 円 で 買 取り に 応 じ てい た こ と
、 Aグ ルー プ の 企 業再 編 に 伴 い A鉄 道 株 式 に割 り 当 て ら れた S 会 社 株式 に つ い ては
、 平 成 一 九年 五 月 一 八日 時 点 で の 単元 未満 株 式 の 買取 価 格 が 一 株当 た り 一 一七 五 円 と 定 めら れ て い たこ と な ど
、A 鉄 道 株 式 の上 場 が 廃 止さ れ た 後 で あっ ても
、X が 主 張 す る想 定 価 格 を大 幅 に 上 回 る金 額 で A 鉄道
( S会 社
)の 株 式 が 売買 さ れ た 事 実が 認 め ら れ」
、ま た、 S社 の 株 価 はD C F 法 ま たは 修 正 純 資産 法 に よ れ ば、 平 成 一 八年 九 月 末 時 点で 一 一
〇 二円 か ら 一 九三 九 円 で あ ると 算定 さ れ た こ とが 認 め ら れ、
「 A 鉄 道 株式 の 取 得 価 格 を 下 回 る 想 定 価 格 は 立 証 さ れ て い な い
」と 判 示 し て
、X の 請 求を 棄 却 し た。 澂東 京 地 判 平成 二
〇
・ 二・ 二 一 判 時二
〇
〇 八 号 一二 八 頁 前 記 滷事 件 と同 じ Y1
会社 が 株 主 の 状況 を 偽 る 有価 証 券報 告 書 の 虚偽 記 載 を 行っ た の に 対 し、 個 人 株 主X が
、 Y1
会 社や 代 表 取 締役 だ っ た Y2
ら に 対 し 損 害賠 償 を 求 めた 事 例で あ る
。 Xは
、 前 記 濳お よ び 潭判 決の 原 告 と 同様
、 虚 偽 記 載の 公 表 後 の底 値 で あ る 平成 一 六 年 一一 月 一 六 日の 終 値一 株 二 六 八円 が 想 定 価 格で あ り
、 取得 価 格 と この 想 定 価 格 との 差 額 が 虚偽 記 載 に よ る損 害 額 で ある と 主 張 した
。 こ れ に 対 し、 裁 判 所 は
、「 X が 本 件各 株 式 を 取 得し た 時 点 か ら 上 場 廃 止 決 定 日 で あ る 平 成 一 六 年 一 一 月 一 六 日 ま で Yの1
株 式 の 株 価 の 下 落 の う ち
、 当 該 虚 偽 記 載 が 公 表 さ れ た 平 成 一 六 年 一
〇 月 一 三 日( 同 日 の 終 値 一 株 一
〇 八 一 円) ま で の 株価 の 下 落 部分 は
、 当 該 虚偽 記 載 と は関 係 の な い
、X の 本 件 各株 式 取 得 後に お け る 経 済情 勢 の 変 動や Y1
有 価 証 券 報 告 書 の 虚 偽 記 載 と 損 害 額 の 算 定
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( 都 法 五 十 二
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二
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