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雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

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Academic year: 2021

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MBE用超高真空STMの開発と半導体ヘテロ成長初期過 程の研究

著者 矢後 栄郎

雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

巻 17

ページ 181‑183

発行年 1996‑03‑29

出版者 静岡大学大学院電子科学研究科

URL http://hdl.handle.net/10297/1225

(2)

氏名・

(本

籍 )   矢       栄    郎 (静 岡県

)

学 位 の 種 類   博    (工 学

)

学 位 記 番 号   工 博 甲 第  HO 

学位授与の日付    平 成 7年 3月 24日 学位授与の要件    学位規則第 4条 第 1項 該当

研究科 ・ 専攻の名称    電子科学研究科   電子材料科学専攻

学位論文題目   MBE用 超高真空SttMの 開発 と半導体ヘテロ成長初期過程の 研究

論 文 審 査 委 員   (委 員長)

教 授   山 口    豪

教 授 渡 邊 健 蔵   教 授 福 田 安 生 教 授   佐々木       助教授   石   川   賢   司

近年、半導体デバ イスの高集積度化 にともない、ナノメー タスケールの加工が要求 されている。 ま た、このような微細構造の製作は、メゾスコピックデバィスや量子効果デバイスの実現 に重要である。

このような微細構造 を再現性良 く製作するには、半導体結晶表面の原子的な尺度での観察手段が欠か せない。

分子線エ ピタキシー (MBE)法 は、結晶成長を原子的尺度で制御で きるために、この ような微細構造 を持つ電子デバイスの作成に適 している。 しか し、 MBE法 で結晶成長面の観察に用い られて きた反射 高速電子線回折 (RHEED)で は、成長表面の電子線回折パ ターンを観察するため、表面原子の周期性、

平坦性 を評価することはで きて も、結晶成長面の個々の原子の配置やヘテロ成長時に生成 される島状 構造などを実空間で観察することはで きない。そこで、 MBEで 成長 した半導体結晶の表面再構成お よ びステ ップ構造、結晶成長表面のモフォロジを原子尺度で観察するために、格子定数 より小 さな実空 間分解能 を有する、走査型 トンネル顕微鏡 (STM)を 製作 した。

観察 しようとしている半導体表面は、大気中では酸化被膜を形成 しやす く、さらに水や二酸化炭素、

一酸化炭素などを吸着する。清浄な半導体表面の原子配置を観察するには、 MBE装 置で試料を作成 し た後、表面 を大気 にさらす ことなく観察することが必要である。そのため、 MBE装 置で結晶成長 した 試料 を超高真空中に保 ったまま分析室 に搬送 して STM観 察で きる装置 を試作 した。 STMは その構造 上、探針が試料に接触する可能性があるので、探針 も超高真空中で交換で きるように した。

‑181‑

(3)

探針 と試料間に電圧を印加 しなが ら数 nm程 度 まで探針 を試料に近付けると トンネル電流が流れる。

この電流値が一定 になるように探針の高 さを制御することにより、試料 と探針間の距離 を一定 に保つ ことがで きる。 このように探針の高 さを制御 しなが ら試料表面を走査することにより、表面の トポグ ラフイが得 られる。この STMに 原子サ イズの分解能 を持たせるために、探針 と試料間の距離お よび探 針の位置 を精密 に設定する必要がある。そのために、

 

トンネル電流検出回路、探針位置制御系の周波 数応答 を考慮 して、安定 にフイー ドバ ック制御する。 これを高精度で行 うために、機械的お よび電気 的なノイズを除去する。

これ らを実現するために、防振系の設計及び計算 によるシュミレーションをおこない、機械的な振 動 ノイズを除去 した。また、他の真空装置からの振動が試料の搬送路 を通 して伝わるのを防 ぐために、

試料搬送後、 STM用 測定室を他の真空装置か ら機械的に切 り離せるようにし、床か ら伝わって来る振 動 を除去するために STMの 納 まった分析室全体 を防振台の上に乗せた。 また、探針の制御回路 に混入 するターボ分子ポンプやロータリーボンプ等か らの誘導 ノイズを除去 した。

MBE法 を用いてヘテロ成長 を行 う場合、格子不整合の大 きな系では、成長初期 において島が成長す ることが知 られている。 MBE法 によって GaP(∞

1)基

板上に格子定数が基板のそれと比べて約 3.7%大 き いGaAsを 成長 させると、その成長初期においては、2単分子層(ML)ま では 2D成 長 をするが、それを越 えると 3D成 長になる。この とき形成 される島の形状 を sTMで 観察 し、島形状 には異方性があることを 明 らかにした。た とえば、 GaAsを loML成 長 した後に形成 される島の大 きさは〔

1可0〕

方向に約

20nm、

HO〕

方向に約 8nmで あつた。この STMに よって、 MBE成 長 した結晶表面の微細構造が観察で きるよう になった。

格子定数の成長膜厚 による変化 を RHEEDの パ ターン間隔から求めると、格子定数は膜厚の増加 とと もに基板の GaPバ ルクの値から GaAsバ ルクの値に近づ くが、このとき格子歪の緩和に異方性が観測 され る。特に、

5〜

15MLの 間では〔

110〕

に沿つた方向の格子定数は、〔百

0〕

方向のそれ と比べて約 0.9%大 き い。この結果は島の幅が小 さい方が格子緩和が大 きいことを示 している。

GAP(001)基 板上にコヒーレン トに形成 された GaAsの 島の歪エネルギーを、Keadngモ デルを用いて計 算 し、島の幅が小 さい方が歪の緩和が大 きくなることを理論的に示 した。 この結果は

RI・

IEEDに よって 測定 された格子歪緩和の島形状依存性 と定性的に一致する。 また、歪エネルギーだけでな く、表面エ ネルギーを考慮すると同 じ高 さのアイラン ドであればエネルギーが最小になるサイズが存在すること を示 した。

‑182‑

(4)

半導体ヘテロ成長に伴 つて形成 される大 きさの揃った半導体島構造によつて量子箱 を構成する方法 が提案 され、光デバイスヘの応用が期待 されている。量子箱構造 を得るためには半導体の量子準位の 離散性が顕著になる 30nm以 下の大 きさでサ イズの揃 った島を形成することが必要である。本論文は、

分子線エビタキシ (MBE)法 によって、 GaAsを GaP(∞

1)表

面上に成長 したとき、その初期過程で形成 さ れる島構造 をこうしたデバイスヘ応用す ることを目的 として研究 を行った ものである。島の形成機構 を明 らかにするために、その原子尺度での解析に必要な走査 トンネル顕微鏡 (STM)装 置の開発を行い、

さらに島の大 きさと格子歪緩和の関係 を明 らかにするために格子歪緩和の計算 を行つている。

MBEttSTMの 開発 においては、超高真空中を試料搬送できること、電気的、機械的ノイズを除去す ることが必要である。そのために、 STM装 置 と MBE装 置を機械的に分離、結合で きる構造を考案 して いる。 さらに、除振装置の伝達関数を計算 と実験から求め、 STMユ ニ ッ トの厳密な除振設計 をしてい る。 また、電気的ノイズを逓減するためにガー ドとシール ドの手法 を有効 に用いる工夫 をしている。

製作 した瀕 M装 置を用いてグラフアイ ト表面の釘

M観

察を行い、電子状態の異なる3種類の原子位置が 識別で きる性能をもつことが示 された。 こうして、ヘテロ成長初期過程 において形成 される島構造 を 観察するのに十分な分解能 を実現 し、反射高速電子線回折 (RHEED)で は評価で きないような結晶成長 面の個 々の原子の配置の観測 を可能 とした。

格子歪緩和の計算では、歪の緩和 と島サイズの関係 を明 らかにするために、歪エネルギーの島サ イ ズ依存性 を求め、以下の二つの結果を得た。

1)格

子歪緩和は島の端の部分で起 こ り、緩和が起 こる範囲は島の幅 とは無関係 に島の高さで決まり、

島の高 さが高いほど歪緩和が起 こる範囲が広 くなる。

2)歪 エネルギーは、島の幅が狭 く、島の高 さが高いほど、緩和 される。

さらに、表面エネルギーをも考慮 に入れ、コヒー レン トに歪んだ状態か ら、島形成によって減少す るエネルギーを求めている。その結果、格子定数の差で決 まる島サ イズが存在する可能性があること を示 した。このことは、大 きさの揃 つた島構造 を形成で きることを示唆 している。これにより、半導 体量子箱構造 を形成 し、光デバイスヘ応用する可能性 を開いた。 さらに、基板の歪が島のエ ッジ部分

に集中 し、ここか ら基板 に転位が入 りやすいことを示 した。

以上述べたように、本論文の研究成果は学術的にもまた実用的にも価値の高い ものであ り、博士

(工

)の

学位 を授与するに十分な内容であると認定する。

参照

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