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平成21年度 東アジア物流の発展動向と課題 報告書

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いる我が国にとって、東アジアの物流事情を調査分析し、直面する課題を探ることは今後の円滑な 物流、経済交流の一層の促進を図るうえで極めて重要といえる。 こうしたことに鑑み、平成 20 年度に本研究所内に「東アジア国際物流研究会」を発足させた。同 年には、東アジアの中核のひとつである「中国」の物流事情について調査研究を行い、その成果と して報告書「中国現代物流の発展動向と課題」を作成・発行した。 第2年度の平成21年度については東アジアのいま一つの核である「ASEAN を中心とした地域」 の最近の物流事情と課題について、物流政策、インフラ、物流企業などの観点から研究するととも に、北東アジア物流において大きな役割を占めている「韓国」の港湾物流政策と港湾の開発動向 を調査した。 平成21年度「東アジア国際物流研究会」の構成は次の通り。 主査 小島 末夫 国士舘大学 21 世紀アジア学部教授 委員 中村 光男 日鐵物流(株)顧問 委員 三浦 良雄 中国港湾物流研究会代表 委員 根岸 宏和 中国物流研究会代表 委員 竹本 正史 山九(株)海外エリア統括部・事業企画担当マネージャー 委員 助川 成也 (独) 日本貿易振興機構海外調査部アジア大洋州課課長代理 オブザーバー 北見 創 (独) 日本貿易振興機構海外調査部アジア大洋州課課員 事務局 小林 東策 (財) 国際貿易投資研究所事務局長 本報告書「東アジア物流の発展動向と課題~ASEAN を中心に~」が関係者の皆様にとって少し でも参考になれば幸いである。 2010 年 3 月 財団法人 国際貿易投資研究所

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本章では「世界の工場」の位置付けを確立しているASEAN を含む東アジアの貿易を概 観した上で、ASEAN の物流政策、FTA による域内統合、東アジア経済圏の実現可能性に ついて注目する。第1 節では世界経済・貿易における東アジアの存在感の拡大、ASEAN 各国の域内貿易依存度の現状をみる。第2 節では ASEAN 域内で進む物流分野統合と協定、 具体的施策を紹介する。第3 節では ASEAN 域内統合の主軸である AFTA(ASEAN 自由 貿易地域)の創設から2010 年の完成(先行加盟国)までを述べ、その履行状況と利用状 況をみる。同節ではASEAN とその対話国による 5 つの ASEAN+1 FTA についても、直 近の状況を振り返る。第4 節では東アジア広域経済圏として設置が検討されているアジア 自由貿易圏構想(EAFTA)と東アジア包括的経済連携構想(CEPEA)を紹介しつつ、本 章のまとめとする。

第 2 章 ASEAN 域内の陸路輸送~東西回廊、南部回廊を中心に

ASEAN 域内の GMS(=Greater Mekong Subregion 大メコン圏)に焦点を絞り、GMS 域内の陸路国際物流について輸送ルートとしての実用化という観点から現状と課題を紹介 する。本章では、第1 節から第 3 節で GMS 陸路国際輸送の全体概要、及び国境通過手続 きに関して、第4 節では南部回廊の現地調査を基にカンボジアの通関手続き・インフラ整 備状況を中心に述べている。

第 3 章 発展変貌する東南アジアの海運港湾概況

2009 年、メコンデルタに大水深ハブポートが生まれた。カイメップ・チーバイ港である。 シンガポール、香港、高雄に依存した南シナ海周辺ASEAN 諸国のコンテナ貨物を、欧米 幹線ルートへ中継するハブポートとして新たな選択肢となる。加えて、2010 年、中国と ASEAN の FTA が発動したことは、域内貨物輸送の急増を予感させる。 インドシナ半島のゲートウエイとして、タイ・レムチャバン港を凌駕する可能性を有す

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第 4 章 ASEAN の航空貨物輸送と航空インフラ整備

ASEAN先行加盟6 カ国が 2010 年 1 月から遂にほぼゼロ関税を実現したのに伴い、 同域内における物流の更なる活性化を誘発して、国際航空貨物輸送の重要性が一段と高ま っていくものと想定される。 そこで本章では、まず東アジア地域、とりわけASEANの航空市場と航空自由化をめ ぐる動きについて詳しく紹介する。次いで、ASEAN主要6 カ国の航空貨物輸送推移並 びに主要航空会社別の貨物取扱実績と財務状況、さらにはASEANの主要空港及び航空 インフラの整備・拡充の現状と課題などに関して明らかにしている。

第 5 章

東アジアにおける日系物流企業の展開

日本の企業は経済成長、グローバル化に合わせて海外展開を図ってきた。商業、製造業 の動きとその物流需要に対応するために、輸送業も長足の進歩・発展を遂げてきた。調達 輸送から消費物流、SCM の段階へと、荷主企業の物流需要は高度化、広域化してきた。 今後、物流業は東アジア展開を支えるうえで、欧米展開にも増してその役割は大きくなっ てきた。東アジアに展開している日本の物流企業の実態を精査し、その将来展望に迫って みたい。

第 6 章

東アジア物流と韓国港湾物流政策

世界における物流の動きの中で東アジアの地位が大きくなっている。中でも、中国貨物 の動向が大きな影響をもたらしている。量的拡大も大きいが、中国港湾における直行率が 大きく伸張している。これはトランシップ貨物を取り扱う港湾の勢力図に大きな影響を与 えている。しかし中国の港湾拡大は、ローカル貨物対応が主体であり、東北アジアの港湾 物流においてハブ港として韓国釜山港のポジションが大きくなってきている。

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第1章 東アジアの通商環境の変化と物流政策 ··· 1

第 1 節 世界経済拡大の牽引役が期待される東アジア ··· 1 第 2 節 ASEAN における物流分野の各協定・行動計画の状況 ··· 7 第 3 節 東アジアで急速に張り巡らされる FTA 網 ··· 17 第 4 節 東アジア経済圏形成構想とその実現可能性 ··· 22

第2章 ASEAN 域内の陸路輸送~東西回廊、南部回廊を中心に··· 25

はじめに ··· 25 第 1 節 距離・所要時間・コスト ··· 28 第 2 節 GMS 陸路国際輸送の概要 ··· 30 第 3 節 国別の国境通過手続きと課題 ··· 32 第 4 節 南部回廊(バンコク~プノンペン~ホーチミン)陸路輸送について ··· 36 おわりに ··· 39

第3章 発展変貌する東南アジアの海運・港湾概況 ··· 40

はじめに ··· 40 第1節 海上荷動き―世界の中の東南アジア ··· 40 第 2 節 東アジアの海運概況 ··· 44 第 3 節 東アジア主要港湾のコンテナ貨物 ··· 49 第 4 節 ASEAN 諸国の主要港湾 ··· 51

第4章 ASEAN の航空貨物輸送と航空インフラ整備··· 79

はじめに ··· 79 第 1 節 東アジア地域の航空需要と航空自由化 ··· 80 第 2 節 ASEAN における航空貨物輸送の展開 ··· 89 第 3 節 ASEAN における航空インフラの整備・拡充 ··· 101 おわりに ··· 109

第 5 章 東アジアにおける日系物流企業の展開 ··· 114

第 1 節 日系物流企業の海外進出 ··· 114 第 2 節 現地での日系物流企業の実情 ··· 121 第 3 節 東アジアにおける日系物流企業が抱える課題と将来展望 ··· 131

第 6 章 東アジア物流と韓国港湾物流政策 ··· 134

はじめに ··· 134

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海外調査部アジア大洋州課 課長代理

助川 成也

北見 創

第1節 世界経済拡大の牽引役が期待される東アジア

1. 世界経済を下支えする東アジア 2007 年夏、米国のサブプライムローン(信用度の低い低所得層向け住宅ローン)の焦げ 付き問題に端を発した金融危機は、2008 年 9 月の「リーマン・ショック」を境に更なる悪 化の道を辿った。アジア各国では1997 年のアジア通貨・経済危機の苦い経験から、金融面 での自由化は限定的だったことから、その影響は限定的であった。しかし、金融危機から 派生した米国や欧州の深刻な景気後退と需要減退を通じてアジア各国でも影響が顕在化し た。 アジア各国はこれまで米国など先進国の旺盛な需要に支えられる形で、製品を製造、輸 出を牽引役に経済成長を果たしきた。アジアの中でも特に ASEAN は、積極的に輸出指向 型外国投資を受け入れるなど、工業化・経済成長の原動力を、外資を中心とした輸出に求 める傾向にあった。 今後しばらくの間は欧米等先進国に市場を求めることは難しく、新たな市場開拓が求め られている。世界が金融危機の後遺症を引きずる中で、内需刺激策により景気後退局面か ら脱し、いち早く経済を回復軌道に乗せたのが中国である。また、巨大な人口を抱えるイ ンドも、旺盛な内需に支えられ、金融危機の影響は軽微であった。今後、中国やインドが 先進国経済が回復するまでの間、世界経済を下支え、けん引することが期待されるが、そ れら市場に隣接する ASEAN は、立地上優位にあるとともに、2010 年には中国との間で ASEAN 中国自由貿易地域(ACFTA)のもとほとんどの関税を撤廃、インドとの間では ASEAN インド自由貿易地域(AIFTA)により 2010 年から関税削減を開始、4 年間で相互 に関税を撤廃する。 ここでは、狭義の東アジアをASEAN10 カ国、日本、中国、韓国の「ASEAN+3」とす

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の拡大を見込んでおり、2014 年には 27.1%に達すると見込んでいる(図 1-1)。 ASEAN+3 に東アジアサミット参加国のインド、豪州、ニュージーランドを加えた 「ASEAN+6」を広義の東アジアとすると、広義の東アジアの世界経済に占めるシェアは、 2008 年で 29.6%とほぼ 3 割、2014 年には世界経済の 34.1%にまで達すると見込まれてい る。 図 1-1 世界経済に占める東アジア経済規模(購買力平価ベース) (年)

出所:IMF「World Economic Outlook」October 2009 から助川成也が作成

東アジアは年々、世界経済に対する位置付けを高めているが、今後の世界経済の拡大の 半分程度は、東アジアのパイの拡大によるものである。IMF が 2009 年 10 月に発表した世 界経済見通しによると、2009 年の世界経済はマイナス成長に陥った特殊要因もあるが、 2010 年における世界経済のパイの拡大において、狭義の東アジアである ASEAN+3 の寄 与率は 40.1%、インド、豪州、NZ を加えた広義の東アジアでの寄与率は 49.9%、世界同 時不況の影響から脱出していると見られる2014 年でも 47.7%に達するなど、今後の世界需 要拡大の約半分は東アジアが創出することが見込まれる。ASEAN など東アジア各国がその 域内需要拡大を自国の産業、企業の生産・輸出の拡大に結び付けるには、デ・ファクトで 進んできた域内統合の制度化を通じた統合深化に加え、域内物流環境の整備、通関円滑化 など物流面での効率化を通じたサービスリンクコストの削減が鍵である。 2. 3 3.0 3.8 3. 9 3.9 3.5 3.5 63. 3.6 3.7 3.8 3.8 83. 3.9 3.9 4.0 4.1 4.1 4.2 4.2 4.3 4.3 11. 1 13. 9 16 .1 16 .4 16 .5 16.3 16.4 16.6 16 .9 17. 3 17. 6 17. 9 18 .2 18. 6 19. 1 19 .5 20. 1 20. 6 21 .2 21. 7 22. 2 22 .8 3. 5 4. 2 4. 6 4.7 4. 7 4.9 5.0 5.0 5.1 5. 2 5. 3 5.4 5. 6 5. 7 5. 9 6. 1 6. 3 6. 4 6. 5 6. 6 6. 8 7. 0 0 5 10 15 20 25 30 35 80 95 97 99 01 03 05 07 10 12 14 印豪NZ +3(日中韓) ASEAN (%)

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出所:IMF「World Economic Outlook」Oct 2009 をもとに助川成也が作成 実際に東アジアの需要拡大で最も恩恵を受けるのは ASEAN である。ASEAN+3 との貿 易緊密度を見る指標として輸出結合度(注1)を 2000 年と 2008 年とで算出した。数値が 1 ポイントを上回り、且つ高ければ高いほど、当該国はASEAN+3 との関係が緊密であり、 かつ同市場の拡大でより恩恵を受ける可能性が高いことを意味する。 ASEAN+3 向け輸出結合度について、全ての国・地域で平均的な緊密度「1」を上回って いる。中でも、高い結合度を示しているのは、フィリピン(2.87)、インドネシア(2.72) をはじめとしたASEAN である。ASEAN 全体の結合度も 2.52 を示している。その一方、 中国の結合度は、2000 年の 1.69 から、平均的な緊密度以上ではあるものの 1.05 にまで減 少している。 これらのことは ASEAN+3 による東アジア経済圏の需要や経済の拡大は、特に ASEAN に統合の恩恵をもたらすことを意味する。域内取引上での関税削減、税関手続きや規格や 制度の調和等シームレスな東アジア経済圏形成によって、ASEAN は更に東アジア需要拡大 の恩恵を受けることが出来よう。 表 1-1 東アジア各国・地域の対 ASEAN+3 向け輸出の輸出結合度 出所: IMF「Direction of Trade」より助川成也が作成 輸出先 ASEAN+3 輸出元 2000年 2008年 A S E A N + 3 2.04 1.74 日 本 1.63 1.79 中 国 1.69 1.05 韓 国 2.06 2.17 A S E A N 2.69 2.52 マ レ ー シ ア 2.76 2.57 タ イ 2.40 2.28 フ ィ リ ピ ン 2.11 2.87 イ ン ド ネ シ ア 3.13 2.72 3.8 5.4 5.1 4.4 4.5 4.4 4.6 5.1 22.1 4.9 4.5 4.7 4.9 5.1 23. 8 25. 3 23.6 20. 9 22. 6 23.4 26. 5 27. 5 35. 2 32.8 32.2 32.1 32.7 6.4 7.0 7.3 6.8 7.6 7.6 7.9 9.7 9.8 9.2 9.3 9.6 9.9 0 10 20 30 40 50 60 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 印豪NZ +3(日中韓) ASEAN (年)

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含めると26.9%と世界貿易の 4 分の 1 以上を占める(図 1-3)。中でも機械機器に焦点をあ てると、更にその存在感は高まる。国際貿易投資研究所の品目別世界貿易マトリクスによ れば、世界の機械機器輸出に占める東アジアの位置付けは高く、機械機器全体で 37.7%、 特に電気機器は53.3%と世界輸出の半分超を占める。 一方、世界輸入ではASEAN プラス 3 で 19.5%、香港・台湾を含めると 23.7%を占める。 「世界の工場」である東アジアは、その生産のため必要な部材や中間財、原材料を生産当 該国のみならず主に東アジア周辺国から調達する構造を構築している。そのため、東アジ アでの域内貿易比率も、欧州並みに高まりつつある。

東アジアではFTA により ASEAN を中心に、ASEAN プラス 3 で貿易関係は強まりつつ あるが、実際は香港と台湾とが果たしている役割は大きい。ASEAN プラス 3 に香港と台湾 とを加えた域内貿易比率推移をみると、90 年時点では 39.5%であったが、97 年にはアジア 通貨危機により東アジアの多くの国々はその影響から国内需要が急激に冷え込んだ。通貨 危機翌98 年の域内輸出比率は 42.7%、輸入では 28.8%にまで下落した。 そのような中、東アジアのアブソーバー役を果たしたのが中国である。ASEAN がアジア 通貨・経済危機の後遺症で苦しむ中、中国は沿海部を中心に「世界の工場」と表現されるま で急速に工業化を果たしていった。「世界の工場」中国に部品を供給することにより、域内 貿易比率は再び上昇基調に転じた。2005 年には、域内貿易比率は過去最高となる 51.1%を 記録した。 東アジアの域内貿易比率は、2007 年夏以降、米国サブプライム問題から始まった米国金 融危機、そして「リーマン・ショック」を契機とした世界同時不況など、特殊要因により 上昇する可能性もあるが、2005 年以降、東アジア域内貿易比率に天井感が出ている。世界 経済を牽引する東アジアの需要獲得には、これまでのデ・ファクトベースの統合をFTA や EPA など制度面での統合を推進すること、点と点との結び付きにしか過ぎない FTA を面化 していくことに加えて、物流インフラ、制度を整備、調和化することで取引コストを極小 化させることなどが考えられる。これらによって、世界経済を下支えしていくことが期待 される東アジアの需要拡大を自らの経済成長の推進力としてより効果的に取り込んでいく ことが可能になる。

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出所:IMF「Direction of Trade」より助川成也が作成 図 1-4 東アジアの域内貿易比率推移 出所:IMF「Direction of Trade」より助川成也が作成 東アジア域内貿易で中国が輸出入双方で存在感を高めている一方、日本は逆にその位置 付けは低下を余儀なくされている。2003 年に 19.8%を占めていた中国の対東アジア輸出は、 年平均22.4%のペースで伸張、2008 年には 25.8%と 4 分の 1 にまで達している。一方、そ の間、日本の輸出は年平均11.8%の伸びにとどまり(東アジア域内貿易は年平均 16.0%で 拡大)、シェアは21.8%から 18.1%へと低下している。 21.1 24.7 17.5 22.9 23.0 22.6 18.6 19.4 21.5 20.7 21.121.6 22.1 22.8 23.1 22.7 23.7 0 5 10 15 20 90 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08(年) 世界輸出に占める比率 世界輸入に占める比率 27.0 35.2 36.5 34.4 28.8 31.3 33.9 34.1 34.6 35.0 35.0 36.1 35.0 34.4 34.0 39.5 48.6 49.5 48.5 42.7 44.4 47.4 47.5 49.1 50.3 50.8 51.1 50.2 49.3 47.8 0 10 20 30 40 50 60 90 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 (%) (年) ASEAN+3 ASEAN+3+香港・台湾

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日本 5.9 - 5.8 3.5 3.0 3.2 0.2 21.8 中国 2.7 6.0 - 2.0 7.8 0.9 0.3 19.8 韓国 1.8 1.8 3.6 0.0 1.5 0.7 0.3 9.6 香港 1.3 1.2 9.7 0.6 - 0.6 0.2 13.6 台湾 1.5 1.2 2.2 0.5 2.9 - 0.1 8.3 インド 0.5 0.2 0.3 0.1 0.3 0.1 - 1.3 東アジア小計 24.0 15.6 24.4 8.4 18.4 7.2 2.0 100.0 東アジア貿易に占めるウエイト(2008年)     輸入→ ↓輸出 ASEAN5 日本 中国 韓国 香港 台湾 インド 東アジ ア小計 ASEAN5 10.0 4.5 4.0 1.7 2.9 1.1 1.5 25.7 日本 4.6 - 6.0 2.9 1.9 2.2 0.4 18.1 中国 4.6 5.6 - 3.6 9.2 1.3 1.5 25.8 韓国 2.0 1.4 4.4 - 1.0 0.6 0.4 9.7 香港 1.0 0.8 8.6 0.3 - 0.4 0.3 11.4 台湾 1.4 0.8 3.0 0.4 1.4 - 0.1 7.2 インド 0.8 0.2 0.5 0.2 0.3 0.1 - 2.1 東アジア小計 24.4 13.2 26.7 9.1 16.8 5.5 4.3 100.0 出所:国際貿易投資研究所「貿易マトリックス」より助川成也が作成 一方、需要サイドからみると、東アジアの需要は、中国とASEAN5 とで東アジア域内輸 入の半分を占めるまでになっている。この通り、東アジア域内貿易は、中国がその中心に 位置付けられつつある。 表1-3 は、2003 年と 2008 年との貿易マトリクスを用い、ウェイトの増減を表したもの である。特筆すべきは、輸出入双方で中国、インドのウェイトが拡大していること、それ に対して日本の輸出ウェイトは対中国およびインド向けを除いて、輸入ウェイトは対イン ドを除き、全て下落を余儀なくされている。ここから、東アジア貿易で中国、インド、特 に中国の存在感が高まり、相対的に日本の存在感は低下している姿が見える。 表 1-3 東アジア域内貿易のシェアの変化(2003 年→2008 年) 貿易ウエイト(2003年→2008年増減)     輸入→ ↓輸出 ASEAN5 日本 中国 韓国 香港 台湾 インド 東アジ ア小計 ASEAN5 - - + + - - + -日本 - - - - -中国 - 韓国 - - - 香港 - - - - - -台湾 - - + - - + -インド - 東アジア小計 - - - 出所:国際貿易投資研究所『貿易マトリックス』より助川成也が作成

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し、次に陸上輸送の越境協定に着目して述べていく。ASEAN 域内の物流・輸送分野では ASEAN 運輸相会合(ATM:ASEAN Transport Minister Meeting)を中心として、同分野 統合に向け取り組んでいる。ATM では、効率的かつ統合された輸送システムが世界市場と のネットワーク構築や競争力強化、対内直接投資増加に資するという考えに基づき、①国 際複合一貫輸送(マルチ・モーダル)リンケージおよび域内コネクティビィティの強化、 ②シームレスな人・モノの移動の促進、③航空・海上輸送サービス自由化の促進、④ロジ スティクス・システムの支援を進めていくことで合意している。

はじめにASEAN 輸送行動計画(ATAP:ASEAN Transport Action Plan)について述 べる。ATAP は、ASEAN が発足した当初から中期計画と共に作成されてきた、輸送分野で の基本的な計画表である。その次に、ASEAN 統合の中心核となる ASEAN 経済共同体 (AEC)の工程表であるブループリントから、AEC における物流分野統合のスケジュール を述べる。そして、サービスとしての物流を検討するため、ASEAN の「サービスに関する 枠組み協定(AFAS:ASEAN Framework Agreement on Services)」から物流サービス自 由化の動きを説明し、最後に具体的な輸送ルートについて ASEAN の国家間輸送ルートと アジア開発銀行の越境輸送協定について述べることとする。 1. ASEAN 経済共同体(AEC)の物流戦略 (1)ATAP(2005-2010) 2010 年現在、ASEAN は ATAP(2005-2010)を実行中である。ATAP(2005-2010)は、 2004 年 11 月に開催された第 10 回 ATM において採択された。これは、ASEAN の第 1 次 中期計画「ハノイ行動計画(1999-2004)」の一部である ATAP(1999-2004)を引き継ぐも のである。 ハノイ行動計画は、ASEAN 第 1 回非公式首脳会議で打ち出され、第 2 回非公式首脳会議 で採択された「ASEAN ビジョン 2020」を実現するための最初の行動計画であり、1998 年 の第6 回 ASEAN 首脳会議で採択された。しかし、ハノイ行動計画の中では AFTA に代表 される物品貿易に重点が置かれ、物流分野の比重は軽い。同計画の一部である ATAP

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を担った。 ATAP(1999-1994)を引き継ぐ形で、ATAP(2005-2010)が 2004 年 11 月に採択され、 表1-4 に示すように政策の方向性が打ち出された。枠組みとしては 2004 年の第 2 次中期計 画「ビエンチャン行動計画」の一部を構成している。ATAP(2005-2010)は準備段階から 具体案の実行段階へ移行する役割を担っており、通関情報処理システム、手続き削減によ る貿易円滑化に重点が置かれている一方で、新たに安全や環境等の項目が追加されている。 具体的な行動計画は政策の方向性に従い、①海上輸送、②陸上輸送、③運輸円滑化、④航 空輸送の4 分野で計 48 計画が挙げられている。 表 1-4 ATAP(2005-2010)の政策方向性 規則 ○貿易や輸送に必要な書類・手続きの簡便化/統一化によるDoor to Doorカーゴ 輸送、クロス・ボーダー輸送の円滑化。 ○統一フォーム、通関情報処理システム、透明性のある陸上運送の確立。 ○国際的な貨物輸送業者と3PL業者、陸上輸送産業の養成。 ○情報通信技術の活用。 陸上 ○陸上輸送ネットワークインフラ、港湾・空港間連結の改善。 ○内陸ターミナル、コンテナ・ステーションに接続されている道路・鉄道・運河を活用し た陸運向け貿易回廊の開発。 海上 ○コンテナ化の定着に向けた海上輸送政策の立案。 ○ASEAN内の港湾における効率化・生産性向上。海上輸送サービスの合理化。 ○複合輸送サービスの増加。 航空 ○「競争力のあるASEAN航空サービス政策(ASEAN統合ロードマップ)」の強化によ るオープン・スカイ計画の推進。 安全 ○地域内のサプライ・チェーン・ネットワークにおける安全性の強化。 環境 ○環境面で持続可能な輸送政策の追求。 ○国際協定・議定書への適合。 ○環境にやさしい輸送技術を活用した成功事例の情報共有。 民間 PPP ○輸送インフラ・物流設備およびサービスの供給、オペレーションへの民間分野の参 入増加、官民連携事業の増加。それを可能にする政策の立案。 域外国 ○中国、インド、日本といった対話国との共同プログラムや活動の増加。 ○有償資金協力の増大。 他機関 ○他機関との連携。 出所:ATAP(2005-2010)より北見創が作成 (2)AEC ブループリント(物流分野)と ASEAN シングル・ウィンドウ ATAP(1999-2004)から ATAP(2005-2010)へと移行し、実行されていく中で、ASEAN 全体では「第2 ASEAN 協和宣言(バリ・コンコードⅡ)」が 2003 年に合意されており、 2020 年までに ASEAN 共同体(AC)として統合されることが明言された。ASEAN 共同体 は、「経済」「政治・安全保障」「社会・文化」という3 つの共同体から構成される。その中

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産地規則、③貿易円滑化、④税関統合、⑤ASEAN シングル・ウィンドウ、⑥基準・技術障 壁といった6 つの分野別措置が掲げられている(表 1-5 参照)。 表 1-5 AEC ブループリントにおける物流円滑化に関連する項目(物品の自由な移動) 出所:石川・清水・助川(2009)「ASEAN 経済共同体 東アジア統合の核となりうるか」JETRO ①非関税障壁の撤廃については、これまで関税の削減・撤廃がある程度進んできたこと もあり、強い取組み姿勢が示されている。スケジュールは2009 年に調印された ASEAN 物 品貿易協定(ATIGA)で具体案が提示されており、フィリピン以外の ASEAN 先行加盟国 は2008~10 年、フィリピンは 2010~12 年、新規加盟国で 2013~15(一部 2018 年)年と、 各国は各年1 月 1 日までに 3 段階で削減する。 項目 主な内容 ◎  2015年までに非関税障壁を完全に撤廃 ・  透明性の強化および監視メカニズムの構築 ・ フィリピンを除く先行加盟国は2010年、フィリピンは2012年、新規加盟国は2015年 (2018年までフレキシビリティーを持たせる)までに、合意されたワークプログラムに 沿って、非関税障壁を撤廃する、など ◎域内貿易、生産ネットワークを促進する方向で原産地規則を実施 ・ 事前教示の導入、規則の修正により、企業のグローバル生産プロセスの変化に 順応したものに改善していく。 ・  電子化などによる原産地証明書の取得手続きの簡素化。 ・  ASEAN各国での原産地規則の運用状況のレビュー、など ◎  シンプルで調和、基準化された貿易、税関手続き ・  ASEAN各国での貿易円滑化の状況を評価 ・  包括的な貿易円滑化ワークプログラムの策定・実施 ・  全てのステークホルダーに対しての透明性の向上 ・  貿易円滑化に関わる地域協力メカニズムの構築 ・  貿易円滑化ワークプログラム実施のためのキャパビル、など ◎ ASEAN税関ビジョン2020の実現、とりわけ税関に関する2005-2010戦略的プラ ンの実施。

・ ASEAN貨物通関手続き(ASEAN Cargo Clearance)、共通税関フォーム(ASEAN

Customs Declaration Document)などの地域モデルの実施。 ・  電子税関(E-Customs)の実現、など ◎  10のナショナル・シングル・ウィンドウを統合。 ・ ASEAN先行加盟国は遅くとも2008年までにナシ ョナル・シングル・ウィンドウを実 現。新規加盟国は2012年までに実現。 ・ WCO(世界税関機構)のデータモデル、国連貿易データダイ レクトリー(UNTDED) などに基づき、データを標準化、など ◎  基準認証に関わるASEAN政策ガイドラインの実施による手続きの調和化 ・  分野ごとの相互認証制度の策定・実施。 ・  WTO、ASEAN政策ガイドラインに沿った運用の透明性向上 ・  検査機関など技術的なインフラ強化、など 非関税障壁の撤廃 原産地規則 貿易円滑化 税関統合 ASEAN シ ン グ ル ・ ウィンドウ 基準・技術障壁

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は基準を満たせなくなるケースもあったため、部分累積や一部品目の関税番号変更基準 (CTC)導入を経て、2008 年 8 月には RVC と CTC の選択制が導入された。 ④税関統合および⑤ASEAN シングル・ウィンドウ(ASW)はソフト面での統合として、 ブループリントの中でも最も重要な統合分野の一つとして掲げられている。シングル・ウ ィンドウとは、輸出入の際に複数の行政機関にまたがる申請や許認可を電子化し、申告フ ォームを提出することによって一括して承認が受けられるシステムである。日本では NACCS がこれにあたる。ASW の設置に関わる協定として「ASEAN シングル・ウィンド ウ設立および実施協定(Agreement to Establish and Implement the ASEAN Single Window)」が、2005 年 12 月にクアラルンプールで開催された AEM で署名されている。 同協定の第1 条で ASW の定義が規定されており、各国のナショナル・シングル・ウィンド ウ(NSW)を統合したシステムで、①データ・情報の一括提出、②データ・情報の一括・ 同時処理、③通関にかかる一元的意思決定を実現可能にするものである。また、2006 年 1 月に発表されたASW 技術ガイドラインによれば、ASW を活用すれば通関手続きを平均 30 分で実現可能になる。ASW の導入計画では、まず各国の NSW を整備し、10 カ国の NSW が揃った段階でASW が稼動するとしている。AEC ブループリントの取り決めでは、ASEAN 先行加盟6 カ国(CLMV 以外)は 2008 年までに、CLMV 諸国は 2012 年までに NSW を 稼動可能にする予定である。2009 年 2 月に発表された「ASEAN ファクトシート ASEAN シングル・ウィンドウ第2 版」によると、ASEAN 先行加盟 6 カ国は NSW の導入に向けて 著しい進展をみせているという。なかでもインドネシアとシンガポールは発表時点で既に NSW が稼動している。 一方、課題になっているのは、①人材の不足、②法制度の未整備、③エンドユーザー (ビジネス界)の関与の低さである。第一にNSW の導入では通関手続きの電子化に精通し た技術者が必要となるが、加盟国間で格差があるなかで、後発加盟国で技術者を探すのは 難しい。第二に、ASEAN においては電子送信された情報の二国間相互承認に関して十分な 法整備が整っておらず、高度な技術的問題に関連する法問題には対処ができない。第三に ASW の導入にあたっては物流業界等のビジネス界の関与が薄く、十分な情報が行き渡って いない。ビジネス界への浸透が大きな課題となっている。

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ービス貿易に関する一般協定(GATS:General Agreement on Trade in Services)」と同様、 サービスを大分類で12 分野、小分類で 155 分野に大別している。AFAS において運送サー ビスは、A:海上運送(6 分野)、B:内陸水路における運送(6 分野)、C:航空運送サービ ス(5 分野)、D:宇宙運送(1 分野)、E:鉄道運送サービス(5 分野)、F:道路運送サー ビス(5 分野)、G:パイプライン輸送(2 分野)、H:全ての形態の運送の補助的なサービ ス(4 分野)、I:その他の運送サービス(1 分野)の合計 35 分野からなっている。A:海上 運送および H:全ての形態の運送の補助的なサービスについては加盟国すべてにおいて何 らかの自由化約束が行われているものの、その他の分野についての約束状況は、以下に示 すように国によって異なる(注2)。 ブルネイ: A、C、D、G カンボジア:A、E、F、G インドネシア:A、B、D、E ラオス:A、B、E、G マレーシア:A、G、H ミャンマー:A、G、H フィリピン:A、D、E、F、G、H シンガポール:A、E、G、H タイ:A、D、E、G、H ベトナム:A、B、D、E、G、H AFAS は自由化の方式にポジティブ方式(自由化分野を特定する)を採用しており、対象 となる分野・条件・制限を個別に明示している。また、2 カ国以上の加盟国が特定分野にお いて自由化を合意した場合、合意した加盟国は先行して自由化をし、その他の加盟国は準 備が整い次第の参加となる「ASEAN マイナス X 方式」を採用している。 AEC ブループリントでは、第 1 モード(越境取引)、第 2 モード(国外消費)について は完全自由化を目指すものの、第3 モード(拠点サービス)。第 4 モード(人の移動につい ては必ずしも完全な自由化を目指すわけではない。第 3 モードには出資規制に関わってく るが、ロジスティクス・サービスの場合、出資比率50%以上は 2010 年まで、同 70%以上 は2013 年までに自由化されることが見込まれている。 (4)物流サービス分野の統合の評価と尺度 物流サービスはビエンチャン行動計画に含まれている 12 の優先統合分野の一つ(注3)。

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て履行しなければならない。 ASEAN 内において進捗状況は国によって差があるため、評価尺度が必要であったが、共 通尺度を確定することは難しい。議定書では「優先分野統合のための枠組み協定からの共 通尺度」と、「物流サービス分野に特化した尺度」の2 つを用いることを規定しており、各 尺度は重複しない。また、これらの尺度で不足があった場合は ASEAN 高級経済事務レベ ル会合(SEOM)で交渉して新たに設定することになる。 2.ASEAN 域内の越境陸上輸送 (1).貨物輸送円滑化についての枠組み協定 次に、ASEAN 域内の国境を越える輸送について述べていく。ASEAN の輸送分野では、 いくつかの輸送形態のなかでも、越境陸上輸送と航空輸送に関する交渉・協定が多いが、 今回は越境陸上輸送に注目する。1999 年 12 月、ASEAN の貨物輸送に関し「貨物輸送円滑 化についての枠組み協定(ASEAN Framework Agreement on the Facilitation of Goods in Transit)」がハノイで署名された。同協定では陸上輸送による越境取引に重点がおかれ、第 25 条では 9 つの議定書を策定するためのワーキング・グループを設置することが決定され た(以下)。

議定書1:トランジット輸送ルートと設備の策定

(Designation of Transit Transport Routes and Facilities) 議定書2:国境郵便制度の策定(Designation of Frontier Posts)

議定書3:輸送車両の種類と台数(Types and Quantity of Road Vehicles) 議定書4:車両の技術的必要事項(Technical Requirements of Vehicles) 議定書5:車両による第三者に対する損害賠償責任保険の加入義務スキーム

(ASEAN Scheme of Compulsory Motor Vehicle Third-Party Liability Insurance) 議定書6:鉄道の国境とインターチェンジ・ステーション

(Railways Border and Interchange Stations)

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中でも関心が高いのが「議定書1:トランジット輸送ルートと設備の策定」である。同議 定書の目的は、国境をまたぐ輸送で使用可能な道路と積み替え拠点を指定し、陸上輸送を 円滑化・活性化することである。ASEAN 内の主要 34 ルートと積み替え拠点は、2007 年 2 月にバンコクで具体案が示された。合計34 ルート(重複あり)にはそれぞれ番号が割り振 られており、インドネシア~マレーシア~ブルネイを繋ぐアジアハイウェイ(AH)150 な ど一部を除いては、全てAH で割り振られた番号と同じである。 加盟国は同議定書で策定された道路を整備するとともに、同議定書第 3 条により積み替 え拠点に駐車場とコンテナ・スペースを確保する必要がある。また、同議定書では議定書4 に記載された行動を起こすよう求められている。「議定書4:車両の技術的必要事項」では、 加盟国は割り当てられた各積み替え拠点に、トランジット輸送のための車両と運転手を配 置する義務を負う。 トランジット輸送で使用される車両は議定書 3 で規定されており、トラックかセミトレ ーラーのいずれかである。種類は通常のボックス型の他、冷凍冷蔵車、タンク、コンテナ の 4 つが指定されている。また、貨物が積載された際は税関からシールで封印されなけれ ばならない。また、車両は議定書 4 で決められた基準を満たすものでなくてはならない。 例えば、トラックの場合は全長12.2m×全幅 2.5m×全高 4.5m までで、最大積載量は 3 ホ イールなら21t まで、4 ホイールなら 25t までに制限されている。セミトレーラーの場合は 16.0m×2.5m×4.5m までで、最大積載量については 3 ホイールで 32t、4 ホイールで 36t、 5 ホイールで 38t までである。 トランジット輸送で義務化されている保険に関しては、議定書 5 に示されている。保険 の適用範囲は、国内・中継地・目的地であり、トランジット輸送ルート内であれば対象と なる。被保険者は、被保険者であることを証明するため、共通のブルーカードを所持する 義務を負っている。

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出所:”Protocol 1 – Designation of Transit Transport Routes and Facilities and its Annex of List of Transit Transport Routes”より北見創が作成

← → 1 574 タイ ポイペット シソポン プノンペン バベット ベトナム 11 764 ラオス トラペンプロン ストゥントゥレン カンポンチャン シアヌークビル 港湾 ← → 2 1,299 港湾 メラク ジャカルタ スラカルタ デンパサール 港湾 150 321 港湾 エンティコン タベドゥ マレーシア 25 2,523 港湾 バンダアチェ メダン パレンバン バカフニ 港湾 ← → 3 251 中国 ボーテン ランナムター タイ 12 682 AH 3 ナテウ ウドムサイ ルアンパバーン ビエンチャン AH11 11 861 AH 12 ビエンチャン バンラオ パクセ ベウンカム カンボジア 15 136 AH11 ベトナム 16 240 タイ ベトナム ← → 2 980 タイ ブキットカユイタム クアラルンプール セナイウタラ タンジュンクーパン 港湾 150 106 インドネシア エンティコン タベドゥ セリアン クチン 港湾 150 861 AH 150 セリアン シブ ビントゥル ミリ AH 150 150 24 AH 150 ブルネイ 150 45 ブルネイ クアラルーラ プニ ブルネイ 150 226 ブルネイ ラブ コタキナバル 港湾 ← → インド ⇒ ⇒ メイッティーラ パヤジー (ヤンゴン) ミャワディ タイ 2 807 AH 1 メイッティーラ ロイレム ケングタング タチレク タイ 3 93 AH 2 中国 14 453 AH 1 中国 ← → 港湾 ラオアグ マニラ マトノグ (海上フェリー) ⇒ ⇒ サンイシドロ タクロバン・シティ リロアン(フェリー) リパタ ⇒ ⇒ スリガオ ダバオ ジェネラルサントス ザンボアンガ 港湾 ← → ミャンマー メーソート ターク バンコク ヒンコン ⇒ ⇒ ナコーンナーヨック クロンルエック カンボジア ミャンマー チエンラーイ バンコク ⇒ ⇒ ナコンパトム パクトー チュムポーン スラータニー ⇒ ⇒ パッタルン サダオ マレーシア 3 115 AH 2 ラオス ヒンコン ⇒ ⇒ コーンケン ノーンカーイ ラオス AH 1 ターク コーンケン ⇒ ⇒ カーラシン ソムデート ラオス AH12 カビンブリ レムチャバン ⇒ ⇒ AH 1, 2 ← → 1 99 カンボジア 港湾 1 197 AH 16 港湾 15 123 ラオス ケオヌア バイボット ビン クアロ AH 1 16 83 ラオス AH 1 17 75 AH 1 港湾 ラオバオ ドンハー ドンナイ ブンタウ フ ィリピ ン ベトナム モクバイ アンスーン(ホーチミン) ドンハー ダナン(ティエンサ) 16 713 ピッサヌローク マクダーハーン 19 491 ナーコンラーチャシーマ バンコク東外環状道路 バンパイン 12 533 AH 1(バンコク) サラブリー ナーコンラーチャシーマ 2 1,923 メーサーイ ハートヤーイ チエンラーイ チエンコン 26 3,073 タイ 1 702 アランヤプラテート 1,665 1 タムー ラワス ミリ スンガイトゥジュ バンラオ モンゴラ チャイントン(ケングタング) ムセ マンダレー マンダレー ラ オス ポティアナック ミャ ン マ ー リンバン ナンパオ サバナケット デンサバン ホイサイ マ レー シ ア カン ボジ ア イン ド ネシ ア

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Intra-state Transport)」が署名された。同協定の目的は序文に示されている 3 項である。 ① ASEAN 加盟国間の物品輸送の円滑化、AFTA 履行支援、地域経済統合の加速。 ② 輸送、貿易、税関における規制・必要手続きの簡素化・同一化。 ③ 国家間輸送に資する、効率的かつ効果的であり、統合・同一化された地域内輸送シ ステムの確立と、それに対する協力 但し、第 4 条で規定されているように同協定は国家間輸送のみに適用され、国内輸送に は適用されない。また、同協定第 5 条により、加盟国は他の加盟国に国家間輸送権を付与 することが求められている。加盟国は、他国の輸送業者が自国内で輸送サービス活動を行 い、荷揚げ・荷下ろしをすることを認めなければならない。また、他国の輸送業者が円滑 に輸送活動を行えるよう、加盟国は施設・設備を提供する努力義務を負う。輸送業者は適 切に国内の法規制を遵守している限り、不必要な遅延や制限を受けない。 同協定が意図するルート・設備は前述の「貨物輸送円滑化についての枠組み協定」でリ ストアップされたルート・積み替え地点であり、「ASEAN 国家間輸送円滑化枠組み協定」 の第6 条で正式に国家間輸送ルートと設備として指定することが合意された。 輸送に使用される車両についての規定・指定も合意されており、車両の基準・制限は「貨 物輸送円滑化についての枠組み協定」の「議定書4:車両の技術的必要事項」に基づく。但 し、国家間積替輸送に使用できる車両は各国500 台に制限されている(第 9 条)。また、陸 上輸送の許可に必要な書類は同一化され、運転免許証は相互承認されることが決定された。 輸送にかかる料金やコストについても単純化・同一化することを求められている。また、 当然のことながら加盟国は輸送車両のタンク内のガソリンやその他消耗品に輸入関税を課 してはならず、預託金も取ることは出来ない。もし当該消耗品が輸入制限品だとしても、 再輸出等の措置で処理する。 概してASEAN 国家間輸送円滑化枠組み協定は具体的な規定や義務が盛り込まれており、 国家間輸送の準備は着々と整っている。一方、ASW ほど高度ではないが法制度の整備や相 互承認等の準備も必要となる。また、各国の車両は限られており、実務で利用出来る輸送

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(3)GMS 越境交通協定(GMS-CBTA) 最後に、大メコン越境交通協定(GMS-CBTA)についてわずかながら触れておく。同協 定はASEAN ではなくアジア開発銀行(ADB)がイニシアティブを持っている。ADB 主導 で行われていた大メコン(GMS)経済協力の 9 分野のうち、交通分野は最も重点をおかれ ている。CBTA はその成果の一つで、1999 年のタイ、ラオス、ベトナムの署名後、2002 年に中国、2003 年にカンボジアが署名している。CBTA はシングル・ウィンドウ(窓口一 本化)とシングル・ストップ(手続き共同化)について定めた協定である。シングル・ウ ィンドウは越境にかかる手続きを同一窓口で処理することであり、シングル・ストップは 出国側と入国側で行われる手続きを共同で行うことによって手続きを一度で済ませること を意味する。 CBTA は適用される区間と国境が明確に決められており、それ以外については CBTA の 対象とはならない。「ASEAN 国家間輸送円滑化枠組み協定」で適用されるルートとは一部 異なり注意が必要である。各ルートは表1-7 に示すとおりである。 越境輸送業務での規定では、輸送業者は母国公認機関が発行する越境輸送業務の免許(非 譲渡性)を取得する必要がある。免許を取得するには、専門的職業能力、財務支払い能力、 信頼性、資本構成について最低条件を満たしてなければならない。また、域内各国は他の 域内諸国が認可した輸送業者を容認しなければならない。同免許をもつ輸送業者は越境輸 送業務を行うこと、他加盟国領土内に駐在員事務所を設立することが認められる。 越境輸送に用いられる車両は「ASEAN 国家間輸送円滑化枠組み協定」での国家間輸送と 異なり、バス、トラック、乗用車といわゆる自動車全般が使用出来る。識別にはナンバー・ プレートと車体後方に記された文字、および認証マークが用いられる。越境した車両・コ ンテナは一時的に輸入されているとみなされ、タンク内のガソリン、その他消耗品と共に 関税を免除される(許可証は必要)。トランジット輸送の場合は、中継国では貨物は無税扱 いだが、中継国内で開封されて密輸されることを防ぐため、車両・コンテナには認証が必 要であり、出発国においてシールで封印されることが求められる。 CBTA は「ASEAN 国家間輸送円滑化枠組み協定」に比べて地域が限定され且つルートが 少ない分、自由度が高い協定といえる。民間物流業者の参入という点ではCBTA の方が現

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表 1-7 CBTA 指定ルート 昆明 河口 ラオカイ ハノイ 昆明 磨憨 ボーテン ナトレ ナトレ ファイサイ チエンコン チエンラーイ ムセ タチレク メーサイ チエンラーイ モーラマイン ミャワディ メーソット ターク コーンケン ムクダハン サバナケット ムワンピン ムワンピン デンサワン ラオバオ ダナン バンコク アランヤプラテート ポイペト プノンペン プノンペン バベット モクバイ ホーチミン バンコク ハットレック チャームイエム プノンペン 昆明 瑞麗 ムセ タチレク ビエンチャン ブーネカム ドンクラロール シアヌークビル ナトゥイ ターナーレーン ノーンカーイ バンコク ビエンチャン ナムパオ カオテェオ ハティン チャンパーサック ワンタオ チョンメック ウボンラーチャターニー ラオス タイ ラオス ベトナム ラオス タイ タイ カンボジア 中国 ミャンマー ラオス カンボジア ラオス ベトナム タイ カンボジア カンボジア ベトナム ミャンマー タイ ミャンマー タイ タイ ラオス 中国 ベトナム 中国 ラオス ラオス タイ 出所:石田正美編(2008)「メコン地域開発研究-動き出す国境経済圏」アジア経済研究所

第3節 東アジアで急速に張り巡らされる FTA 網

1. 東アジア経済統合の核となる ASEAN 自由貿易地域(AFTA)の状況 90 年代前半、高い経済成長・工業化で「東アジアの奇跡」とまで言われた ASEAN は、 世界の成長センターとして注目を浴びた。その一方、日本企業や製品などが ASEAN 各国 市場に参入するには、高関税を払って輸出するか、投資により製造拠点を設けるか、選択 肢はいずれかであった。そのため、投資効率が悪いことを承知で、重複投資を決断した企 業も多い。また、投資の重層化により徐々に裾野産業なども形成されつつあったものの、

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業体制を強化し、ASEAN 諸国の地場産業の競争力を高めること、②市場規模を拡大し、ス ケールメリットを確保、外資を呼び込むこと、③世界的な自由貿易体制への準備、の 3 つ を目指した。

AFTA は 1992 年 1 月 28 日にシンガポールで開催された ASEAN 経済相会議(AEM)で 「AFTA のための CEPT 協定」が署名されたことに始まる。当初、AFTA の目標は、93 年 の発効から5~8 年以内に IL の関税を 20%以下に削減、更に 20%もしくはそれ以下になっ た品目については、2001 年から 7 年間かけて(2008 年)域内関税を 0~5%に引き下げる ことであった。 1997 年にタイを震源とし ASEAN 全土に伝播したアジア通貨・経済危機以降、ASEAN は関税削減を加速化した。当初の目標であった「IL の 0~5%化」を 2003 年迄に、またベ トナムは2006 年迄、ミャンマー・ラオスは 2008 年迄に、それぞれ前倒しで実現すること を決めた。また、AFTA の最終目標を「関税撤廃」に切り替え、先行加盟国は 2010 年、新 規加盟国は2015 年の実施を目指すなど、自由化に向けアクセルを踏み込んだ。 一方で AFTA 利用促進のため、繰り返し制度の改善が行われてきた。中でも重要な改善 は原産地規則である。これまでAFTA の原産地規則は「ASEAN 累積付加価値率(RVC) 40%以上」であった。付加価値基準は例えば、為替レートや原材料費の変動、また特に電 機製品では製品サイクルの短期化に伴う急速な価格下落によって、原産地比率がその時々 の状況によって大きく変動するなど、管理が難しいという欠点がある。 2007 年 8 月に開催された AFTA 評議会で、ASEAN は原産地規則の一般原則を RVC と 「関税番号変更基準(CTC)」との選択性に移行することを決めた。ASEAN 各国は 2008 年8 月に一斉に「選択性」を導入した。ASEAN に広く展開する日系企業は、これまで付加 価値率 40%達成のため、域内調達を推進してきたが、選択性の導入によって、例えば、中 国や台湾など調達コストが最も安価な国・地域からの原材料や中間財の利用も可能になる など、企業にとってより機動的なオペレーションが可能になった。これによって ASEAN 域内のみならず東アジア全体を視野に調達・供給体制が構築できることになり、東アジア 域内貿易を一層促進する効果が期待出来る。

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は0.79%と 1%を割り込んだ。2010 年には一部品目を除き関税を撤廃した結果、限りなく ゼロに近づいているものとみられる。 表 1-8 ASEAN 各国の AFTA-CEPT 関税引き下げ状況(2010 年 1 月時点/暫定) 注 :①適用品目(IL):関税引き下げ対象品目。 ②TEL:一時的除外品目:引き下げの準備が整っていない品目。 ③GEL:一般的除外品目。関税率の削減対象としない品目(防衛、学術的価値のあるもの等)。 ④SL:センシティブ品目。適用品目への移行を弾力的に扱う品目(未加工農産物)。 ⑤高度センシティブ品目:コメ関連品目等。 ・<5%の品目には従価税でなく、従量税を採用している品目も含まれる。

・品目数はASEAN 統一関税コード AHTN2007。但しカンボジアは AHTN2002.

出所:ASEAN 事務局資料からより助川成也が作成。 一方、新規加盟国はベトナムで2006 年、ミャンマーとラオスが 2008 年、カンボジアが 2010 年までに、それぞれ全ての関税削減・撤廃対象品目(IL)の関税を 5%以下にまで削 減することが求められているが、各国はIL の 96~99%を 5%以下に削減、ほぼ目標を達成 した。その結果、新規加盟4 カ国では、IL 品目数に占める関税 5%以下の品目比率は 98.9% に達している。 では、AFTA は果たして利用されているのであろうか。原産地証明書(COO)発給ベー スでFTA 利用輸出額の実績を明らかにしているタイを取り上げ、AFTA の利用度をみる。 2008 年の AFTA を利用した輸出は前年比 36.5%増の 107 億 3,461 万ドルであり、全 COO ILに占め るシェア ブルネイ 8,300 8,223 8,223 100.0% 0 0 0 77 0 インドネシア 8,737 8,632 8,625 99.9% 0 7 0 96 9 マレーシア 12,335 12,239 12,173 99.5% 54 12 0 96 0 フィリピン 8,999 8,953 8,857 98.9% 62 34 0 27 19 シンガポール 8,300 8,300 8,300 100.0% 0 0 0 0 0 タイ 8,300 8,300 8,287 99.8% 13 0 0 0 0 ASEAN-6 54,971 54,647 54,465 99.7% 129 53 0 296 28 カンボジア 10,689 10,537 795 7.5% 9,742 0 0 98 54 ラオス 8,300 8,214 5,891 71.7% 2,009 314 0 86 0 ミャンマー 8,300 8,240 4,992 60.6% 3,248 0 0 49 11 ベトナム 8,243 8,099 4,618 57.0% 3,396 85 0 144 0 CLMV 35,532 35,090 16,296 46.4% 18,395 399 0 377 65 ASEAN10合計 90,503 89,737 70,761 78.9% 18,524 452 0 673 93 一般的除 外品目 (GEL) センシティ ブ/高度セ ンシティブ 品目 関税率0% 0%超5% 以下 5%超 総品目数 適用品目(IL) 一時的除 外品目 (TEL)

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と、AFTA は一定程度は利用されるようになったといえよう。

AFTA 利用率を国別にみると、インドネシア向けで 6 割(60.8%)に達している。これに フィリピン(46.3%)、ベトナム(46.0%)が続くなど、相手国・地域によっては相当程度 認知され、利用されるまでになっている。

3. ついに完成した 5 つの ASEAN プラス 1FTA

この10 年間、ASEAN は対外通商戦略として FTA を採用、東アジアを中心に FTA 網構 築を進めてきた。ASEAN が FTA に傾斜したのは、1999 年末から 2000 年にかけてである。 その流れを作った切っ掛けとなった一つは、多国間自由化交渉WTO の難航である。 多国間自由化交渉が遅々として進まない中、「FTA の空白地帯」である東アジア地域は、 輸出機会の損失回避を狙い、FTA に舵を切った。1993 年に開始された AFTA を除き、東ア ジア域内で最初のFTA 締結の動きは日本とシンガポールとで始まった。この日本の動きに 敏感に反応したのが中国である。2000 年の ASEAN 首脳会議にあわせて開催された ASEAN +3 首脳会議において、中国の朱鎔基首相(当時)が ASEAN 側に対し自由貿易圏構想に向 けた作業部会を設置するよう提案した。翌年11 月にブルネイで開催された ASEAN 首脳会 議で、中国とASEAN とが 10 年以内の FTA 設置に合意した。当時、ASEAN の中で中国 脅威論が叫ばれており、日本など域外国は「締結は到底困難」と見ていた中での合意はそ れら域外国に衝撃を与えた。

中国のASEAN 接近を契機に、ASEAN を巡る FTA 構築の動きが活発化した。具体的に は2002 年 11 月の第 1 回 ASEAN・インド首脳会議において、10 年以内にインド・ASEAN 間の経済連携強化及びFTA 締結の可能性に向けて検討を進めていくことが決まり、翌年に は、「インド・ASEAN 包括的経済協力枠組み協定」を締結している。日本も同年、「日本・ ASEAN 包括的経済連携枠組み」を締結した。更に 2004 年 11 月の ASEAN 首脳会議では、 韓国と豪州・ニュージーランド(CER)とも、2005 年早々に FTA 交渉を開始することで 合意している。日本もほぼ時を同じくし2005 年 4 月から ASEAN との FTA 交渉を開始し た。ここで ASEAN をハブとし、中国、日本、韓国、インド、豪州・ニュージーランドと の5 つの ASEAN+1FTA の構築が目指されることになった。

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表 1-9 5 つの ASEAN+1FTA の交渉から発効まで 相手国 交渉開始 署名 発効 形成時期 中国 2003年 2004年11月 2005年7月 2010年 日本 2005年4月 2008年4月 2008年12月 発効から10年以内 韓国 2005年2月 2005年12月 2007年6月 2010年 インド 2004年3月 2009年8月 2010年1月 2013年末 豪州・NZ 2005年2月 2009年2月 2010年1月 2013~15年(注) 注 :豪・NZ の形成時期は、先行加盟国関税率表の品目別撤廃率 90%以上の年とした。2013 年は マレーシア、フィリピン、2015 年はタイ、インドネシア。 出所:各種資料により助川成也が作成 当初、これらASEAN を巡る 5 つの FTA は 2010 年以降に次々と完成(関税撤廃)を予 定していた。各々枠組み協定などにより、中国とのFTA は 2010 年に、インドは 2011 年、 日本は2012 年に完成を目指すとしていた(注4)。また日本、中国に比べ出遅れた韓国は積極 的な巻き返しに出、中国と同じ2010 年完成を ASEAN 側に迫った。当初、ASEAN 側は先 に枠組みに合意している日本、インドに配慮し、韓国側提案に難色を示した。そのため韓 国とは「2009 年に少なくとも品目全体の 80%の関税を撤廃する」ことで合意した。韓国は 以降の交渉でも早期の完成に固執、最終的に韓国側の要望を容れる形で2010 年に完成させ ることになった。 2010 年は東アジア域内で FTA 網構築を進めてきた ASEAN にとって大きな節目の年と なる。同年、ASEAN と中国、そして韓国との間で一部センシティブ品目を除き関税が撤廃 された。また、インド、豪州・ニュージーランドとのFTA が発効、関税引き下げが開始さ れた。これでASEAN の東アジア域内貿易自由化交渉は一段落した。 この結果、東アジア首脳会議参加国の中で唯一ASEAN が、全ての参加国と FTA を締結、 他の参加国に対する輸出で関税減免の恩恵を一身に受けることが出来る。これは ASEAN にとって、東アジア大の広域経済圏による恩恵を先取り的に受けられることを意味する。 ASEAN は域内統合の深化と ASEAN+1FTA 体制の実現で、外国投資の求心力を維持、向 上を図っている。

(28)

想(EAFTA)、そして日本が提案をした東アジア包括的経済連携構想(CEPEA)である。 前者はASEAN+3 で、後者は ASEAN+6 で構成される。 これまで民間研究者の間で研究が重ねられた二つの広域経済圏構想は、2009 年 8 月に開 催された ASEAN 経済相関連会議で最終報告書が提出された。報告書では、これらの広域 経済圏構想を政府間で研究するよう提言が盛り込まれ、会議で了承された。この提言につ いて、東アジアサミットで首脳が経済相の決定を歓迎、CEPEA、EAFTA とも政府間での 議論に格上げされ、東アジア広域経済圏構想は実現に向け歩を進めた。 これら構想が正式な交渉に移行していくかどうか、鍵を握っているのはASEAN である。 経済規模からみれば、ASEAN は 2008 年でわずか世界経済の 4%、東アジアにおいては、 広義で13.5%、狭義で 17.0%を占めるに過ぎない。しかし経済圏形成には、10 カ国を構成 するASEAN をいかに踏み出させるかが重要である。ASEAN は議長国が東アジアサミット を主催するなど東アジア統合のドライビングシートに座っていると自負、「ASEAN の中心 性(ASEAN Centrality)」の維持・確保を重視している。

ASEAN は東アジアでは最も古くから FTA に取り組んでおり、FTA を投資誘致のための 有効なツールと位置付けている。ASEAN は既に東アジアサミット参加国全てと FTA を実 施している。ASEAN は FTA 推進において「ASEAN の中心性」、または「東アジアのハブ 化」実現に注力しており、ASEAN が大国の間で埋没する可能性がある東アジア広域経済圏 形成に踏み出す理由は見当たらない。同広域経済圏構想は、長期の目標にはなるが、それ を実現に結びつけることは非常に難しい。

東アジアの企業はしばらくの間、ASEAN を中心とした 5 つの ASEAN プラス 1FTA 体 制を前提条件に、事業を展開することに注力することになろう。

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を、示す。 (注2) 第 1~4 モード全てにおける約束状況。 (注3) 2007 年、当初の優先統合 11 分野に追加された。 (注4) ただし、インドは交渉が長期化したことにより、実際の関税撤廃期限は 2013 年末となってい る。一方、日本は10 年間をかけて徐々に自由化を図っていく手法を採った。例えば、タイの場 合、当初目標としていた2012 年の関税撤廃品目の比率は 61.4%にとどまる。 [参考文献] 1. 平川均・石川幸一・小原篤次・小林尚朗編著(2007)「東アジアのグローバル化と地域統合(新・ 東アジア経済論Ⅲ)」ミネルヴァ書房

2. 助川成也(2008)「タイの機械産業と AFTA の影響」著者名『ASEAN の FTA 進展がもたらす 貿易拡大の評価』国際貿易投資研究所。

3. 助川成也(2009a)「ベトナムの機械産業と ASEAN の FTA による影響」著者名(『ASEAN の FTA による域内及び対日貿易への影響』国際貿易投資研究所。 4. 助川成也(2009b)「経済統合の牽引役『AFTA』が生まれ変わる」ジェトロセンサーp9、2009 年10 月号 5. 助川成也(2009c)「AFTA の功罪 -統合の遠心力を求心力に」ジェトロセンサー、2009 年 6 月号 6. 石川幸一・清水一史・助川成也(2009)『ASEAN 経済共同体』ジェトロ 7. 林哲三郎 (2001)、『AFTA~ASEAN 経済統合の実情と展望~』(青木健編著、ジェトロ、2001 年) 8. 若松勇(2006)「競争力のある ASEAN 航空サービス政策」ジェトロ 9. 財務省(2007)「各国通関システムの接続に向けた動き」 10. 石川幸一(2007)「ASEAN 共同体形成の現状と展望」国際貿易投資研究所 11. 石川・清水・助川(2009)「ASEAN 経済共同体 東アジア統合の核となりうるか」ジェトロ

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15. "ASEAN Framework Agreement on the Facilitation of Goods in Transit," http://www.aseansec.org/7377.htm

16. "Protocol 1 - Designation of Transit Transport Routes and Facilities and its Annex of List of Transit Transport Routes,“ http://www.aseansec.org/19734.htm

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第 2 章 ASEAN 域内の陸路輸送~東西回廊、南部回廊を中心に

山九株式会社 海外エリア統括部

事業企画担当マネージャー

竹本 正史

はじめに

本章では、ASEAN 域内の GMS(=Greater Mekong Subregion 大メコン圏)に焦点を 絞り、GMS 域内の陸路国際物流の現状と課題を紹介する。アジア開発銀行(ADB)がイニシ アティブを取り1992 年から開発が進められてきた 5 ヵ国(タイ、ベトナム、カンボジア、 ラオス、ミャンマー)・2 地域(中国・雲南省、広西チワン族自治区)の GMS エリアでは、 東西2 本(距離 1,450km・1,000km)と南北1本(距離 2,000km)の国際幹線道路のイ ンフラ整備が経済協力プログラムとして重点的に推進されて来た。 東西回廊(全長 1,450km、ベトナム・ラオス・タイ・ミャンマーの 4 ヵ国を横断)は 2006 年12 月、タイ/ラオス国境メコン川に第 2 メコン国際架橋が完成したことでほぼ全線が開 通した。開通から丸3 年が経過した現在では複数の日系物流業者が 3 ヵ国にまたがる陸路 国際輸送サービス(タイ~ラオス~ベトナム)を開始している。だが、日系企業のニーズに 適したコストと品質で、安定した輸送サービスを提供するためには通関手続きの簡素化等 に未だ課題が残る。一方で全長約1,000km の南部回廊(タイ~カンボジア~ベトナム南部) の整備も過去5 年で進捗し、タイ⇒カンボジア、ベトナム⇒カンボジアなどの 2 ヵ国間の 輸送は活発化しているが、3 ヵ国の輸送となると国境通過手続き等のソフト面の課題が多 い。残る全長約2,000km の南北回廊(雲南省・昆明~ラオス/ミャンマー経由~タイ・バン コク)は、中国側とタイ側では高速道路を含めた道路整備が既に完了しており、ラオス/タ イ国境のメコン川架橋が完成すればラオスを抜けるルートが開通となる。南北回廊では現 状、日系企業関連の物流ニーズがほとんどないが、ここでも同様に3 ヵ国の異なる制度を 経て陸路輸送される際の手続きの円滑化が課題として浮上すると推測する。 そこで本章では、物流インフラの特にソフト面(国境通過手続き・他国車両の乗入れ等) に重点を置き、商業ルートとしての実用化を念頭に東西回廊、及び南部回廊について現状 と課題を整理した(第 1 節~第 3 節)。また、第 4 節では南部回廊の現地調査を基にカンボ ジアの通関手続き、インフラ整備状況を中心に述べている。

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2 枚:山九(株)撮影

写真2-2 国際架橋 ラオス側ゲートボックス 写真2-1 第2メコン国際架橋

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図 2 -1 輸 送距離(時間)と 輸送コス ト (ト ラ ッ ク / ト レ ーラ ー) * ト ラック = 貨物積載重 量10㌧/10 W heel T ruck  ( 通常の 運転席・貨物荷 台が一体型の貨 物車輌) * ト レ ー ラー = 貨物積載 重量20㌧/18 W heel T ra iler  (海上輸 送用コン テ ナ -、ハ ゙ラ 貨 物の双方が運 べる 運 転席・貨 物荷台が連結 式の貨物車輌) CH IN A MY A N MA R L A O S ビエ ン チ ャ ン 455k m(16時間 ) 710k m(15時間) 250k m(7時間) 270k m(8時間) ヤ ン ゴン ミャ ワ テ ゙ィ ー メ ソ ー ト ム ク タ ゙ハ ン サ ワ ナ ケー ト テ ゙ー ン サ ワ ン ラ オ ハ ゙オ タ ゙ナ ン 港 U S $440/T ruck U S $720/T ruck U S $150/T ruck U S $380/T ruck U S $1,200/T ra iler U S $400/T ra iler U S $600/T ra iler 49 0k m( 10時間) T H AI L A N D C A M B O D IA V IE T N AM U S $290/T ruck U S $600/T ra iler 250k m(5時 間) 436 k m (8時 間) 183k m(4時間) 75k m( 2時間) ハ ゙ン コ ク ア ラ ン ヤプ ラ テー ト ホ ゚イ ヘ ゚ト フ ゚ノ ン ヘ ゚ン ハ ゙ヘ ゙ット モク ハ ゙イ ホ ー チ ミン U S $29 0/T ruck U S $6 50/T ruck U S $300/T ruck U S $150/T ruck U S $36 0/T ra iler U S $9 50/T ra iler U S $450/T ra iler U S $200/T ra iler 出所 :「ASEANの経済連携にお け る 新規加 盟国の課題」JETR O (2006年 3 月)を 一 部 修 正

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第1節 距離・所要時間・コスト

1.東西回廊(10 ㌧貨物トラック輸送コスト比較) (注)東西回廊のミャンマー区間は一般にモーラミャイン~ミャワディー間を指すが、ここ ではヤンゴン~ミャワディー間とする 国名 距離 時間 輸送コスト ミャンマー ヤンゴン~ミャワディー(注) 455km 16時間 US$440  US$0.97/km タイ メソート~ムクダハン 710km 15時間 US$720  US$1.01/km ラオス サワナケート~デーンサワン 250km 7時間 US$200  US$0.80/km ベトナム ラオバオ~ダナン 270km 8時間 US$380  US$1.41/km 区 間 コスト(US$)/km 出所:「ASEAN の経済連携における新規加盟国の課題」JETRO(2006 年 3 月)を一部修正 (1)距離当たりの輸送コストはラオス区間250km が相対的に低い。この要因としては、 メコン第二国際架橋の完成、及びラオス国道 9 号線の整備完了等によるラオス国内 輸送需要の増加が一因としてある。 (2)ベトナム区間の輸送コストが割高であり輸送時間もやや長くなっている。これはラ オス国境付近のベトナム 9 号線山岳道路がネックとなっている。しかし、ベトナム 国内の輸送インフラは段階的に整備が進んでおり、2005 年 6 月にベトナム国道 1 号 線(東西回廊上)の交通の難所であったハイバン峠区間にトンネルが開通したこと、山 岳道路の改修もその後進展したことでラオバオ~ダナンの輸送所要時間は’05 年以 前よりも1~2 時間短縮された。 (3)ミャンマーの国内輸送コストは、輸送コスト部分のみをUS$表示にて他国と比較す ると一見割安のように見えるが、付帯費用としての通関料や貨物積替料が割高であ り、更には輸出入貿易管理が厳しく、輸入ライセンス取得に時には半月以上を要す る等のリードタイムを加味すれば総コストは最も高いという見方が出来る。 山九(株)撮影 写真2-3 「東西回廊 ラオス国道9号線(サワナケート近郊)をベトナム車両が走行」

表 1-7  CBTA 指定ルート  昆明 河口 ラオカイ ハノイ 昆明 磨憨 ボーテン ナトレ ナトレ ファイサイ チエンコン チエンラーイ ムセ タチレク メーサイ チエンラーイ モーラマイン ミャワディ メーソット ターク コーンケン ムクダハン サバナケット ムワンピン ムワンピン デンサワン ラオバオ ダナン バンコク アランヤプラテート ポイペト プノンペン プノンペン バベット モクバイ ホーチミン バンコク ハットレック チャームイエム プノンペン 昆明 瑞麗 ムセ タチレク ビエンチャン
表 1-9  5 つの ASEAN+1FTA の交渉から発効まで  相手国 交渉開始 署名 発効 形成時期 中国 2003年 2004年11月 2005年7月 2010年 日本 2005年4月 2008年4月 2008年12月 発効から10年以内 韓国 2005年2月 2005年12月 2007年6月 2010年 インド 2004年3月 2009年8月 2010年1月 2013年末 豪州・NZ 2005年2月 2009年2月 2010年1月 2013~15年(注) 注  :豪・NZ の形成時期は、先行加盟国
図 3-7-1  Singapore Terminal Layout

参照

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