災害時に使う情報システムのデザイン
地域・防災情報システム学講座 総合防災システム分野
防災研究所 巨大災害センター
畑山 満則
2016年6月1日前回講義の資料
http://goo.gl/t9uCAo
罹災証明発行業務は何故複雑なのか?
入口と出口の違い 固定資産税の減免は条例で規定されている場合が多い 災害対応は法令根拠がなく市町村の裁量で行われるものがある 官民合意により最終判定が決まる 応急危険度判定・罹災度判定の違い 申請と判定の順番が違う→被災者の混乱のもと 被災者生活再建支援法(総務課)から始まり, 税の減免措置(税務課)で終わることが多い 行政と被災者の信頼関係と復興計画 災害ユートピアと呼ばれる時期とその後の時期 判定する建物はどれ? 支援事業により対象が変わる判定から証明書を根拠とする支援事業全体を見て対応
支援事業は様々なセクションで行われる 縦割りの壁にとらわれてしまうと被災者の作業が増えていく 被災者からの不服の申し立てにより判定結果が変わることもあるたとえば,「標準化」という考え方 情報システムの進化で 対応することが可能
要求仕様の難しさ
情報システム開発では今や当たり前のこと ただ,情報工学研究者の視点にはあまり入っていない まして,システム開発の経験のない人にはわからない フィールド・イノベーションとは( FUJITSU ) http://jp.fujitsu.com/about/corporate/philosophy/businesspolicy/fieldinnovation/about/ この段階までいかないと ベストエフォートに終わってしまう問題点は何か?
ユーザは実現したいことを正確には表現できない 実現できていないことをできるようにすることだけがユーザの要求ではない今後考えなければならない課題
(1)新しい技術,使い慣れない技術の持つリスク
(2)偶然なのか?必然なのか?
(3)情報格差問題
(4)取り扱える情報,取り扱えない情報の存在
:
(2)偶然か?必然か?
今後考えなければならない課題
「たまたまできた」から
「できるべくしてできた」に
変えるのは簡単ではない
結果としてうまくできたことはたたえるべきだが,次もそのま
まうまくいくとは限らない.
なぜうまくいったのか,次もうまくいくのか,次はどうしたらい
いのかについての検証が必要となる.
Twitterが役立った事例は,次の災害でも起きるのか?
http://www.asahi.com/national/update/0318/TKY201203180086.html(現在は削除) http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110314/263638/(詳細記事) 被災施設 園長 園長家族 (ロンドン) Twitter 猪瀬副知事 (東京) 携帯電話 投稿 閲覧 ヘリで救出 東京消防庁デマについて
読売新聞2012年9月4日東京版
情報は時間によって価値が
変わることを認識しておくこと
東日本大震災時における
新しい枠組みでの情報活用
• Google person finder(安否情報)
Google Person Finder
http://google.org/personfinder/japan安否確認
安否確認は何故必要か?
自分が生き残れたら次に思うことは家族や友人が生き残れたかどうか
→家族の危険な行為を自重させる効果
加えて,災害救助の現場では,捜索範囲の絞りこみ情報が必要
(救助の一つの目安は72時間)
行方不明者が特定できれば絞り込みも可能
安否確認
誰が行うのか?
法律では決まっていない 災害救助法 武力攻撃事態等における国民の 保護のための措置に関する法律 (国民保護法) • 避難所などの収容施設や仮設住宅の供与 • 炊出しなどによる給食 • 給水車などによる給水 • 被服、寝具その他生活必需品の支給又は貸与 • 医療及び助産(救護班の出動など) • 罹災者の救出 • 罹災住宅の応急修理 • 罹災者の生業に必要な金品の給与・貸与 • 学用品の給与 • 埋葬 • 死体の捜索及び処理 • 災害によって住居又はその周辺に運ばれた土石、竹木等で、日常生活に著 しい障害を及ぼしているもの{障害物(豪雪災害時の雪も含む)}の除去どんなふうに安否確認するのか?
個別に行う
安否確認リストを作成し,共有する
安否確認システム
• 安否放送
(NHK)• 災害伝言ダイヤル
(NTT西日本,NTT東日本)• 災害用伝言版サービス
(NTTドコモ,KDDI,Softbank,イー・モバイル,WILLCOM)• IAA System
(IAA Alliance ,2007年3月をもってサービス終了) Google Person Finder, J-anpiなどにつながっている• 行政や企業での安否確認システム→職員の安否を確認するシステム
https://picasaweb.google.com/tohoku.anpi 現在,写真は削除,お礼の文書の表示
情報システムが発達すれば問題は解決するのか?
技術だけではだめ 災害時に使い方を編み出し,仕分けや電子化の手伝いをする体制ができて初めて機能するシステム設計,システム運用,バックサポート体制の確立,
利用者への周知など技術を使う人間の力が重要
足りないものをみつけそれを構築する体制を整えたグループの存在 Google ,Twitter, Youtube, mixi, Facebookの知名度も重要出典:村上圭子「東日本大震災・安否情報システムの展開とその課題~今後の議論に向けて~」 NHK放送文化研究所年報 2012年 第56集
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/title/year/2012/pdf/005-08.pdf
継続的な利用に向けた取り組み
継続的な利用に向けた取り組み
(1)~(4)はネット上で確認できます.(5),(6)は図書です.
(1)パーソンファインダー、東日本大震災での進化
http://www.google.org/crisisresponse/kiroku311/chapter_06.html http://www.google.org/crisisresponse/kiroku311/chapter_07.html http://www.google.org/crisisresponse/kiroku311/chapter_08.html
(2) Google Person Finder 最初の一週間-非常時におけるサービス開発の一記録および考察- 賀沢秀人(グーグル株式会社),情報処理学会デジタルプラクティス,Vol.2,No3,pp.152-158 https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=75225&item_no=1&page_id=13&block_id=8 無償で公開されていますが,利用登録(無料)が必要です (3)「1+1は2を超える」、だから共有を――Googleが災害対応で学んだ3つのこと http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1203/07/news058.html (4)村上圭子「東日本大震災・安否情報システムの展開とその課題~今後の議論に向けて~」 NHK放送文化研究所年報 2012年 第56集 http://www.nhk.or.jp/bunken/research/title/year/2012/pdf/005-08.pdf (5)IT時代の震災と核被害,インプレスジャパン http://www.impressjapan.jp/books/3114 序章(グーグルの72時間)は,途中まで立ち読みできます (6)Googleの72時間 東日本大震災と情報、インターネット,角川書店 http://www.kadokawa.co.jp/product/321301000083/
災害時の通行可能箇所マップ
阪神・淡路大震災時 通れない道路マップ (奈良大学調査) 東日本大震災 通過実績マップ (ITSジャパン提供)技術の進歩により迅速に多くの人に情報提供が可能となった
東日本大震災時の通行実績・通行止め情報
ITS Japan資料
(1)偶然か?必然か?
東日本大震災でのIT支援活動の成功事例は,インターネットを利用している点,多くの個人 のボランティアの地道な支援があって成功している点から,ベストエフォート型のシステムであ ったといえる.しかしながら,安否確認など命にかかわる作業を行政が行うことになる場合,す べての人を対象に確実に稼働することが求められる.そのためには,企業や個人がボランティ アベースで行うことに期待するわけにはいかない場合がある.今回の成功システムを事前から 整備する場合には,ベストエフォート型からギャランティ型への移行が必要となる場合があり, そのためにはコストがかかることを考えておかなければならない.今後考えなければならない課題
Google Person Finder(ネパール版) 台風12号時の通行実績・道路規制情報