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特定領域研究「分子シャペロンによる細胞機能制御」領域ニュース

5

1999 No.

分子シャペロン研究の今をお届けする最新情報紙

発行日 : 1999年9月

CHAPERONE

NEWSLETTER

C O N T E N T S



3年目の特定領域研究に向けて

永田 和宏

(京都大学再生医科学研究所)

成9年度スタートの特定領域研究「分子シャペロンによる細胞機能制御」も3年目に入りました。折り返し点を過ぎ たことになります。過去2年はできるだけ研究の継続性を重視 したいということで,計画研究,公募研究とも大きな班員の交 代はありませんでしたが,3年目を迎えるにあたり,かなり大幅 な見直しが行われました。本年の合同班会議は12月に京都で行 う予定でありますが(3ページ参照),顔触れがかなり変ってい ることと思います。新鮮な気分で班会議が開かれ,新しい班員 の研究発表が聞けるものと楽しみにしております。 本年の班会議の翌日,12月18日(土),同じ京都の平安会館に おいて,臨床ストレス蛋白質研究会との共催になる合同シンポ ジウム「ストレス蛋白質と病態」を開催いたします(3ページ 参照)。分子シャペロンの基礎,すなわち作用機構や細胞内のさ まざまな場での機能制御に関しても,まだまだ研究すべき点は 多く残されていますが,一方で分子シャペロンの多様性を考え ると,それらが関係した病気,病態への視点が重要なものであ ることは言うまでもありません。シンポジウムのテーマは第1 部が「ストレス蛋白質と病態」,第2部が「小胞体分子シャペロ ンと品質管理機構」となっていますが,いずれも応用的側面に 配慮したプログラムとなりました。今後の分子シャペロン/ス トレス蛋白質研究の展開を考えるとき,このような応用的側面 へのアプローチも重要になるものと思われ,是非多くの班員の 方々が参加くださるようお願いいたします。 引き続き,翌19日(日)には,同じ場所で「臨床ストレス蛋白



3年目の特定領域研究に向けて

……… 1 シャペロンの散歩道

男の

〈遊び〉

永田和宏 ……… 2   ……… 3  

「分子生物学会シンポジウム」

今井 純

「Keystone Symposium on

Protein Folding…」

田中智之/木俣行雄

「European Research

Conferences on Chaperones」

龍田高志

「Freiburg Symposium on

Folding and Translocation」

遠藤斗志也 ……… 4 

シャペロンからみた真核生物の起

源と初期進化

橋本哲男 ……… 14 

一分子蛍光イメージング

船津高志 ……… 18 

フライブルグ大学

Bernd Bukau 研究室

友安俊文 ……… 21     ……… 23  ……… 24  ……… 25

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質研究会」の大会が開催されます(4ページ参照)。こちらへも できるだけ興味を持っていただいて参加いただければありがた く思います。本年は,本特定領域の総括班員でもある矢原一郎 先生の特別講演があります。 本特定領域研究は,研究費の配分といった実際的な作業以上 に,分子シャペロン/ストレス蛋白質の日本における研究をど のように発展させるか,またそのためにどのように研究者相互 の情報交換を活発化し,互いに刺激しあってアクティブな領域 を形成するかを大きな任務としております。そのためにも,従 来別々のフィールドで仕事をしてきた,基礎と臨床・応用のそ れぞれの研究者が一同に会して研究成果について議論すること の意味は大きいと考えております。そのような意味からも,今 後も本特定領域研究班と臨床ストレス蛋白質研究会とは緊密な 連絡をとりつつ,互いに切磋しあうことが必要ではないでしょ うか。皆さまのご協力をお願いいたします。 先にお届けしました成果報告書をご覧いただいても,また Cold Spring Harbor, Keystone, Eouropean Science Foundation Symposium などの定期的に開かれる国際集会への参加状況,招 待講演の数などを見ても,わが国の研究者,特に本特定領域研 究の班員の,この分野全体への contribution は大きなものがあり ます。先の重点領域研究「ストレス応答の分子機構」から,本 特定領域研究へ継続されてきたグループ研究のひとつの成果で もあろうと考えられます。今後2年間にさらに大きな成果をあ げて,次なる機会へとわが国におけるこの研究グループの成果 を引き継いでいきたいものと考えております。

男の

〈遊び〉

永田 和宏

迷信と言えども,それが否定されるまでは単なる迷信と片づ けてしまってはならないという意味のことを言ったのはたし か寺田寅彦だったと思う。もともと迷信などは,否定も肯定も できないところに成立するものであるから,多くの場合はやっ かいなことになる。 人魂(ひとだま)は実在するのか。どうやら最近はプラズマ による物理現象であると説明されるようだが,そんな説が現れ る十数年も前に,私の友人を含む数人が,木曾の御嶽に「人魂 捕獲作戦」を展開したときの話。分子生物学を専門とする数人 のグループが人魂の実在を証明すべく,探検隊を組織したので ある。水木しげるや西丸震哉といった〈その道〉の専門家にも 面会して意見を求め,行くなら木曾の御嶽しかないと,お墨付 きをもらった。 ところが,〈文献〉を当たれば当たるほど,人魂を見たとい う記録はあっても,それを実際にとらえたという記録はない。 ここからが科学者としての腕と知恵の見せどころ。なにで人魂 を捕獲しようか。捕虫網くらいしかないんじゃないかと意見が 一致したが,有機体(?)である人魂が,はたしてナイロン メッシュのような無機物に引っ掛かるだろうかと深刻な疑問 を呈する慎重派もいる。それじゃあ,有機物でコーティングす ればどうだろうという名案(?)が出て,それなら yeast extaract がいいだろうと誰かが言った。酵母液に捕虫網を浸し,勇躍, 真夏の御嶽に向かったという。 結果は推して知るべし。ナントカ原にテントを張ったまでは 良かったが,深夜,いざ出陣となると,現代の科学者たちもた じたじとなり,お前先に行けよとか,むやみに鼻歌を歌い始め る者とか,それでもなんとか一晩歩き続けて,あらぬ方へフ ラッシュを何本も焚いて帰ってきたのだそうだ。もちろん人魂 にはかすりもしなかった。 〈出張〉には仲間の研究所員のカンパもあったので,研究所 で報告会をやったという。それぞれの〈隊員〉が,秀逸な〈方 法〉に,結果と考察などを加えて,なかなかの報告を終わった のち,突如テープがまわりだした。実は〈記録係〉が「探検」 の一部始終を記録していたのだそうで,せっかくの報告者たち は一挙に立場がなくなったということであった。ついでにこの 「木曾御嶽山人魂捕獲作戦」は立派に報告書となって,国立国 会図書館に保存されているそうである。 何年か前の新聞に「現代遊びリサーチ」という記事があって, おもしろく読んだ。室内飛行機に取り憑かれた男たちの話。遊 びと言っても,なにしろ全長90センチの飛行機を,1グラムの 重量を持つように作ろうというのだから半端ではない。 胴体はバルサ材を0.3ミリの厚さに削り,直径7ミリの筒に 巻いて作るという。翼やプロペラも0.5ミリ角のバルサ材で骨 組みを作り,それにマイクロフィルムを張る。これがまたすご い。接着剤の原料を水に一滴落とし,薄く広がったところを木 枠にすくいとり,半年かけて乾かすのだそうだ。このマイクロ





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特定領域研究

「分子シャペロン」

合同班会議のお知らせ

年度,合同班会議を下記のように予定しております。別に改めてお知らせいたしますが,今から予定を空けておいて ください。班員は全員参加をお願いいたします。止むを得ない 場合には,代理の方の参加をお願いします。 日 時:12月16日(木) 13:00∼21:00 12月17日(金) 9:00∼17:00 場 所:京都ガーデンパレス(葵の間) 京都御所蛤御門前(烏 丸通り下長者町,地下鉄烏丸線丸太町下車,徒歩8分) 電 話:075−411−0111  FAX:075−411−0112 宿 泊:京都ガーデンパレスにお泊まりいただきます。現在100 名分を京都ガーデンパレスに予約しております。宿泊 費は朝食付きで9,000円(シングル),同8,500円(ツイ ン)となる予定です(若干上下する可能性があります)。 シングルルームが30室程しかとれませんので,アン ケートをお送りする際,シングル希望の方はその旨お 知らせ下さい。 世話人:永田和宏(京都大学再生医科学研究所) なお,引き続いて12月18日(土)特定領域研究・臨床ストレス 蛋白質研究会・合同シンポジウム「ストレス蛋白質と病態」が 開催され,19日(日)臨床ストレス蛋白質研究会の大会も行われ ます。こちらへの参加もお願いいたします。

臨床ストレス蛋白質研究会・

特定領域研究合同班会議共催

公開シンポジウム

「ストレス蛋白質と病態」

日 時:平成11年12月18日(土) 9:00∼17:00 場 所:平安会館・京都御所西側(烏丸通上長者町) 電 話:075−432−6181  FAX:075−431−7949 第1部「ストレス蛋白質と病態」 フィルムは,厚さが0.3ミクロン,厚さの極限値だという。妙 に感心したのは,その接着法である。唾やアルコールで張るこ とができるが,日本酒を使うとその糖分が残って重くなるから 駄目。もっぱらウイスキーでくっつけるなどと聞くと,そんな こだわり方がすっかりうれしくなってしまう。 こうしてできた飛行機は,一円玉より少し軽く,一万円札よ りほんの少し重い。ゴムの動力で,ゆっくりゆっくり20分から 30分も飛び続けるのだそうだ。窓という窓を閉め切った体育館 で,冷房も暖房もいっさい切って,ドアにさえ目張りをして競 技を行うのだというから,まったくご苦労なことではある。 この欄で笑ったのは,ハエ飛行機。バルサとマイクロフィル ムで重さ0.1グラムの飛行機を作り,ハエに引かせて飛ばせる のだという。ハエをポリ袋に入れ,ドライアイスに湯をかける とハエは15秒くらい目をまわす。その間に手早く接着剤で背中 に糸をくっつけて出来上がり。生まれて翌日くらいの若いハエ がもっとも馬力(?)があるというのも楽しい。 こんな悠長な遊びに本気になっている男たちがいる。しかし, 悠長なと見るのは外側からの感想。当人たちには,とてもそん ななまはんかなものではないのだろう。実際,子供も猫もいっ さい近づけない部屋に籠り(人が歩くだけでも,風圧で飛んで いってしまうのだという),家族サービスも人付き合いもみん な犠牲にしての〈遊び〉ではある。 こんな他愛もない遊びに熱中し,とことん凝ってしまうのは 決まって男たちだ。たとえば,土蜂の巣を見つけるために,土 蜂に綿くずなどを結びつけ,蜂が飛び立った途端,いっせいに 走り出すのはすべてがいい歳をしたオッサンたちである。足の 速さなら女性でも速いのはいるだろうに,そして持久力だって 今や女性の方が優れているといわれているのに,女性が蜂を 追っかけて走っているのは見たことがない。 どうも男たちには,こんなばかばかしい遊びに熱中する性癖 があるらしい。女性にないとは言わないが,日本の閉鎖的な封 建制の名残を差し引いても,女性がばかばかしいことにうつつ を抜かす例は,あまり多くないように見受けられる。なぜだろ うと考えてみるが,それはこの場の主題ではないだろう。 最近は,ゆっくりと研究を楽しむという余裕がなくなってき た。私自身もそう思うし,同じ悩みを聞く機会は多い。競争と いう厳しい現実があるかぎり,そしてシーケンスでもクローニ ングでも時間の単位でできてしまうスピード化とともに,研究 の効率化という側面が突出してきている。私自身も学生たちに は,時間との競争のことを何度も言わざるを得ない。しかし, いっぽうで,もう少し研究自体を楽しめるような余裕をどこか で見つけられないかと焦るように思うことも事実なのである。 捕虫網にイーストエキストラクトを塗ったり,半年もかけて厚 さの極限のマイクロフィルムを張ったりして楽しむような余 裕。そんなばかばかしい発想を面白がってみる余裕。早くやれ だの,効率的に,結果を見つめて,などなど,日常学生を叱咤 している言葉とは真っ向から矛盾する,そんな思いをどこに確 保したらいいのか,なお凡人の悩みは尽きないというべきであ る。しかし,そんな余裕への視線をどこかで意識していないと, 生物学というロマンは,若い研究者を魅することはなくなるの かもしれないとも恐れるわけである。

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9:00∼12:00 1樋口京一(信州大学加齢研) 「アミロイド蛋白質の構造変換と分子シャペロン」 2大石正道(北里大学理学部) 「甲状腺機能不全症ラットにおける持続的小胞体ストレス」 3西宗義武(大阪大学微研) 「カルメジンノックアウトと不妊」 4佐藤昇志(札幌医科大学医学部) 「がん抗原,がん免疫制御因子としての HSP70」 5姫野国祐(徳島大学医学部) 「HSP90とマラリア原虫の病原性」 第2部「小胞体分子シャペロンと品質管理機構」 14:00∼17:00 1和田郁夫(札幌医科大学医学部) 「小胞体分子シャペロンと新生糖蛋白質の構造形成機構」 2青江知彦(千葉大学医学部) 「小胞体ーゴルジ間輸送を介した品質管理」 3永井尚子(京都大学再生医科学研究所) 「HSP47ノックアウトマウスとコラーゲン異常」 4徳永文稔(姫路工業大学理学部) 「血液凝固因子の分泌異常と品質管理」 5小亀浩市(国立循環器病センター研究所) 「高ホモシステイン血症と小胞体ストレス応答」 第3部 懇親会 会費3,000円(豪華な食べ物,飲み物が出ます)

第4回臨床ストレス蛋白質

研究会演題募集要項

第4回目の臨床ストレス蛋白質研究会集会では一般演題(口 演,ポスター)を募集しています。また, 今回は本特定領域研究との共催で公開シンポジウム「ストレ ス蛋白質と病態」を前日12月18日(土)に開催する関係で,懇親 会は12月18日(土)18時から平安会館で行います。 会 長:永田和宏(京都大学再生医科学研究所) 日 時:平成11年12月19日(日) 9:00∼17:00 場 所:京都市 平安会館 発表形式:一般演題/特別講演 参加費:無料 但し年会費3,000円が必要です/懇親会参加費: 3,000円 特別講演:HSP90分子シャペロン機能 矢原一郎(東京都臨床医 学総合研究所副所長,臨床ストレス蛋白質研究会代表 世話人) 一般演題締め切り:平成11年10月15日(金)必着 演題申込先:〒162−8666 東京都新宿区河田町8−1 東京女子医科大学内科2 臨床ストレス蛋白質研究会事務局 野村 馨 宛 電 話:03−3353−8111 ex 39223  FAX:03−5269−7327 送付していただく書類: [抄録]B5版用紙に上下左右2㎝ の余白を設け,その 内側に12ポイント以上の印字で演題名(1−2行目), 所属(3行目),氏名(4行目)(発表者に下線),本文 (6行目以下)を記入。そのまま抄録集に掲載となりま す。3部お送り下さい。そのうち1部には連絡責任者 の氏名,住所,電話/ FAX 番号をご記入ください。

本特定領域研究の

ホームページについて

本特定領域研究はオフィシャル・ホームページを開設してい ます。アドレスは以下の通りです。

http://biochem. chem. nagoya-u. ac. jp/chaperone/index. html

このサイトには,本特定領域研究の活動記録,代表からのメッ セージ,班会議のお知らせなどのほか,ワークショップ,関連 シンポジウム,国際学会などの最新情報,わが国のシャペロン 研究者の名簿,関係サイトへのリンク集など,有用な情報が満 載されています。アップデートも頻繁に行っておりますので, ぜひブラウザのブックマークに登録しておいて下さい。  

分子生物学会年会のワークショッ

「分子シャぺロン」

に参加して

今井 純

(東京都立臨床医学総合研究所)

年1会議センターで開催された。その2日目に分子シャペロン2月16日∼19日に分子生物学会年会がパシフィコ横浜 のワークショップが京都大学の永田和宏先生のお世話で行われ た。以下その発表を順を追って紹介したい。

青江(千葉大,Brigham & Woman's Hospital,USA,以下敬称 略)は小胞体(ER)分子シャペロンによる ER −ゴルジ体間の 細胞内膜輸送の制御について報告した。ER に局在している分子 シャペロンの多くは C 末端に KDEL という ER 局在配列を持って いる。この配列を持つ蛋白質は,ER からゴルジ体に輸送される と,ゴルジ体上に存在する KDELreceptor (KDELr)を活性化し, 再び ER に逆輸送され ER 局在を保っている。この逆輸送は低分 子量 GTPase の一つである ARF1と,コート蛋白の COP1によっ て行なわれる。ARF1は GDP 型から GTP 型に変換されると cytosol にある COP1と結合して,COP1でコートされた輸送小胞を生じ る。GTP 型の ARF1が GTP を加水分解して GDP 型に変換される

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と,COP1は膜から解離し,cytosol へと移行する。その結果,輸 送小胞の膜への融合が生じる。この ARF1の GTP 加水分解反応を 促進する ARF1 GAP を過剰発現すると,ゴルジ体が ER へ融合 し,secretion の停止が生じる。このゴルジ体の ER への fusion は, C 端側を欠き膜と結合する能力を失った ARF1 GAP を過剰発現 してもみられないので,ARF1 GAP の膜上への局在が必須であ ると考えられる。このゴルジ体の ER への fusion は KDELr を過 剰 発 現 し て も 観 察 さ れ る。こ れ は 過 剰 発 現 さ れ た KDELr が ARF1 GAP を膜上に recruit したために生じていることが,免疫沈 降や免疫電顕によって確認された。次に KDELr を活性化するた めに,KDEL のタグを付けた lysozyme を過剰発現すると,KDELr と ARF1 GAP の結合は促進され,ゴルジ体の ER への fusion が 観察された。以上の結果は ER 局在のシャペロンがゴルジ体に輸 送されると,KDELr を介して ARF1 GAP を活性化し,ゴルジ体 − ER 間の輸送を制御していることを示している。KDEL 配列を 持つ分子がゴルジ体に輸送されると ARF1 GAP が活性化される ため,COP1輸送小胞の形成に必要な ARF1は不活性化される。 このため,ゴルジ体から ER への逆輸送が必要とされる分子がゴ ルジ体に蓄積した結果,ゴルジ体− ER 間の輸送が活性化される のでは無く,むしろ不活性化されるという,一見,矛盾した結 果に見える。しかし ER −ゴルジ体間の輸送の場合,Sar1 GAP である Sec23が COP2輸送小胞の形成を促進していることが知ら れているので,ゴルジ体− ER 間の輸送においても ARF1 GAP が Sec23と同様に COP1輸送小胞の形成を正に制御していると考 えると,ゴルジ体に蓄積された KDEL を持つ蛋白質が KDEL receptor を介して ARF1 GAP を活性化し,その結果 COP1輸送小 胞の形成が促進されるという解釈が可能になり,これらの現象 を矛盾無く説明することができる。ARF1 GAP が COP1小胞の形 成にどのような作用を持つかは今後の楽しみであろう。 永田(京大)は,コラーゲン特異的なシャペロン HSP47につ いて報告した。HSP47はコラーゲンに特異的に結合するだけでな く,その発現も常にコラーゲンと相関しており,コラーゲン特 異的なシャペロンであると考えられている。プロモーター解析 の結果,この特異性の高い発現には,転写開始点の上流の SP1結 合サイトが重要であることが明らかとなった。しかし,この上 流部分は HSP47の発現の特異性には必須であったが,転写活性は 十分ではなかった。そこでさらに解析を進めた結果,最初のイ ントロンに強いエンハンサー活性があることが明らかとなった。 SP1結合サイトと最初のイントロンによる発現調節はコラーゲ ンⅡ,にも見られ,HSP47とコラーゲンは発現調節機構におい

ても一致していた。この HSP47の knock out mouse を作成すると,

ホモ欠損マウスは10.5日以降は胎生致死であった。このホモ欠

損マウスには成熟したコラーゲンは認められず,また血管内皮 細胞など間葉系の細胞に apoptosis による細胞死が認められた。 knock out mouse において,apoptosis を引き起こしているものが, misfold したコラーゲンによる ER ストレスなのか,それとも細胞 外マトリックスにコラーゲンが存在しないことを認識しての何 らかの情報伝達によるものかは,興味を引かれる問題である。 最後に HSP47によるコラーゲンの認識を,合成モデルペプチドを 用いて解析した結果が示された。コラーゲンのモデルペプチド である(Pro-Pro-Gly(PPG))Xnというペプチドと HSP47の結合 を解析すると,HSP47は PPG が7回以上繰り返される構造を認識 し,結合することが明らかとなった。この結合には,3アミノ酸

毎に Gly が現われること,Gly の次に Pro が有ることが重要であ

り,HSP47はコラーゲンの特定の配列ではなく,コラーゲンの立 体構造そのものを認識している可能性が示唆された。コラーゲ ンは成熟すると PPG リピートの2番目のプロリンに-OH 基がつ き,ヒドロキシプロリンとなることが知られている。そこで (PPG)X8の2番目の Pro を4-hydroxyproline(P-4-H)に置換し た誘導体を用いて,HSP47の認識機構を調べた。その結果8回繰 返しのうちの1つを P-4-H に置換しただけで,HSP47のモデルペ プチドへの結合は低下し,4つ以上の置換によって結合は見ら れなくなった。このことから HSP47は premature なコラーゲンと 結合し,その maturation とともに解離していくものと考えられる。 ではコラーゲンの成熟過程に,他のシャペロンは関与している のだろうか? HSP47がコラーゲンの立体構造そのものを認識し ているならば,コラーゲンに良く似た立体構造をとる蛋白質は 基質とはならないのか?など興味深い発表であった。 遠藤(名大)は出芽酵母の DnaJ ホモログ JEM1について報告 し た。JEM1は 酵 母 の ER に 局 在 す る 三 つ の DnaJ ホ モ ロ グ (JEM, SEC63, SCJ1)の一つである。遠藤らはまず生化学的な 実験から,Jem1が Bip のパートナーであるということを示した。 Bip は KAR2という名前が示すように,核融合(karyogamy)に 欠損を持つ酵母の変異株から単離された。従って,そのパート ナーである JEM1の破壊株がやはり核融合が不能になるという 表現型を示すことは想像に難くない事である。しかし Bip の他の パートナーである Sec63複合体も,やはり核融合に関与している ので,この二つの DnaJ ホモログが機能的にどのように住み分け ているのかというのは興味深い問題であった。これに対して遠 藤は鮮明な電顕写真をもとに,Sec63複合体が核膜外膜の融合に, Jem1が核膜内膜の融合にとそのトポロジーを反映した住み分け を行なっていると,明解な回答を示した。JEM,SCJ1はその どちらか一方を破壊しても,通常の細胞増殖に支障はないが, Δjem, Δscj1の二重破壊株は高温感受性を示す。このことは, Jem1が細胞増殖においても重要な役割を果たしていることを示 唆している。そこでこの二重破壊株を解析したところ,ER 内腔 の蛋白質の分解が抑制されていることが示された。ER において misfold した蛋白質は Sec61複合体によって ER 膜を逆方向に輸送 され,proteasome によって分解されることが知られている。Jem1 は misfold し た 蛋 白 質 の凝集体形成を防ぐこ とにより,ER からの逆 輸送を促進するのであ ろ う か?ま た Jem1の 二つの役割,核融合と 増 殖 は Jem1の 同 じ 機 能によるものなのか? その切り替えを行って いるのはどんなシグナ ルなのか?基質は何な のか?と興味の尽きな い発表であった。 加 藤(愛 知 県 コ ロ ニー)は,αB クリスタ リンのリン酸化につい て 報 告 し た。αB ク リ 会場となったヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル

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スタリンは各種ストレスによって3カ所のセリン残基(19S, 45S, 59S)がリン酸化される。これら3カ所のリン酸化を特異的 に認識する抗体を作成し,細胞の免疫染色を行った。すると45S のリン酸化型(P45S)を認識する抗体(a-P45S)はストレスの 有無に関わらず分裂期の細胞を良く認識した。分裂期の細胞で は19S のリン酸化も同時に昂進していたが,59S のリン酸化はむ しろ減退しており,この三つのセリンのリン酸化が異なるキ ナーゼによって支配されていることが強く示唆された。そこで αB クリスタリンの N 端側72AA の合成ペプチドを基質として, それぞれのセリンをリン酸化しているキナーゼを特定した。そ の結果,45S は MAP kinase が,59S は MAPKAP kinase がそれぞ

れリン酸化していることが明らかとなった。また,a-P59S を用 いた解析から,59S のリン酸化は分裂時には減少するものの,全 αB クリスタリンの10%程度は59S がリン酸化されており,P59S 型は中心体に特異的に存在していた。一方,残りの P45S の方は 分裂溝に局在していることから,αB クリスタリンは異なるセ リンにリン酸化を受けることで局在を変えている事になる。ま た,同じ sHSP に属する HSP27は,リン酸化を受けると重合状態 が変化して,シャペロン機能を変えている可能性があることが 示されているので,αB クリスタリンではリン酸化が局在と機能 の双方を換えている可能性が指摘された。αB クリスタリンはこ のように,同時併行で中心体と分裂溝という何れも,細胞分裂 において重要な機能を果たす器官に局在し,機能しているもの と考えられる。ここで使用されたような特異性の高い抗体を用 いることで,多機能蛋白の複数の機能を同時に解析しているの は画期的なことだと思われた。 杉山(横浜市大)は sHSP 群で構成される筋特異的なストレス 耐性系について報告した。演者らのグループは,筋ジストロ フィーの原因遺伝子のひとつである,筋強直性ジストロフィー キナーゼの結合蛋白として筋特異的 sHSP,MKBP を同定したこ とから,sHSP 群の蛋白質の筋肉組織における役割の解析を行っ て い る。現 在 ま で 知 ら れ て い る5種 類 の sHSP(HSP27, αB-crystallin, p20, MKBP, HSPL27)の発現をそれぞれの sHSP を認識 する抗体を用いて調べたところ,この5種類の sHSP を全て,し かも高く発現していたのは,心筋細胞と骨格筋細胞のみであっ た。心筋,骨格筋は,運動によって熱,代謝物等のストレスに 曝される機会が多いので,他の組織に比べると何等かのストレ ス耐性系が発達しているものと考えられる。筋肉組織で特異的 に高発現しているこれらの5種類の sHSP がこの筋肉組織のス トレス耐性系において重要な役割を担っているのではないかと 考えられた。筋組織のカラム溶出物をそれぞれの sHSP に特異的 な抗体を用いて調べたところ,HSP27/αB-crystallin/p20は500kD と50kD の complex に,MKBP/HSPL27は100kD の complex にそれ ぞれ特異的に含まれていた。この結合の選択の特異性は免疫沈 降や yeast の two-hybrid によっても確認された。DMPK には MKBP のみが結合し,MKBP/HSPL27複合体と,HSP27/αB-crystallin/p20 複合体の機能的な住み分けを強く示唆する結果となった。また, αB-crystallin は筋肉原基の段階ですでに発現が見られ,筋芽細胞 の分化の開始と共に発現量が増大していた。このことはαB-crystallin が筋肉の形成にも重要な役割を果たしていることを示 唆しているものと考えられる。このようにお互いに良く似た一 群の蛋白質が,どのようにパートナー蛋白や基質を識別し,機 能的な役割分担を行っているかは極めて興味深い問題である。

木 戸(徳 大)は シ ャ ペ ロ ン 型 nucleotide diphosphate kinase (NDPK)が20S の proteasome にも存在することを示した。シャ

ペロン型 NDPK は,Hsp70など分子シャペロンに属する蛋白質か

ら見いだされた。これらの蛋白質は反応系に ADP が存在しない ときには ATPase として機能するが,ADP 濃度の増加と共に

NDPK 活性に置き換わっていくという酵素活性を示す。今回報告

された proteasome は20S core complex と19 S の regulatory complex からなる。このうち19S の regulatory complex は基質を unfold し て core complex に渡す reverse chaperon として働き,AAA-type の ATPase を サ ブ ユ ニ ッ ト と し て 持 っ て い る。ま た regulatory complex は in vitro でのシャペロン活性が有ることが知られてい るので,シャペロン型 NDPK 活性が proteasome にも存在すると いわれると,当然19S の regulatory complex の事と考えていた。 ところが,活性が検出されたのは ATPase を持たない,20S の core complex の方で,さらに驚くべきは NDPK として同定されたのは Pup1β2サブユニットであった。このサブユニットはプロテアー ゼの活性は持つものの,ATP 結合能は知られておらず,既存の ATP 結合モチーフさえ持っていない。この NDPK 活性の生理的 な意味に関して木戸らは,core complex 内の活性中心への基質の 接近や,core complex 自体の assembly にシャペロンとしての活性 を発揮するのではないかと推論していた。いずれにせよ,今回 発見された Pup1のように既存の ATP 結合モチーフを持たない NDPK は他にも存在するのか,また存在するとすればどのような グループの蛋白に存在していて,どのような機能的特徴を持つ のかなど興味の尽きない話であった。 今井(CREST,臨床研)は Hsp90の新たな基質としてカルシ ニューリンを報告した。出芽酵母 S. cerevisiae にその Hsp90ホモ ログ Hsc82を過剰発現させる株を作成,解析した。Hsc82の過剰 発現株は各種のストレスに対して耐性を示すものと予想された が,アミノ酸アナログ,heat shock,高濃度 NaCl といったストレ スに対してはむしろ感受性になるという表現型を示した。一方, 高 Ca2+イオン環境下では野生型株よりも強い耐性を示した。この Hsc82の過剰発現株の表現型は出芽酵母のカルシニューリン破 壊株の表現型とよく一致していた。そこで Hsc82の過剰発現株と カルシニューリンの遺伝学的関連を解析した結果,これらのス トレス感受性はカルシニューリンの触媒サブユニット単独の高 発現によって抑圧されることが明らかとなった。Hsc82の過剰発 現株がカルシニューリン破壊株と同じ表現型をとるのは,過剰 量の Hsc82がカルシニューリンの触媒サブユニットと結合し,隔 離した結果であることが,免疫沈降によって確認された。この Hsp90−カルシニューリンの触媒サブユニットの結合はカルシ ニューリンが活性化されると解離するので,カルシニューリン の触媒サブユニットは Hsp90の新たな基質である可能性が示唆 された。カルシニューリンの活性は,Hsp90が生理的レベル以下 のときには Hsp90によって量依存性に制御されていた。また Hsp90の活性が低いときには,触媒サブユニットは分解を受け, 量が著しく減少していたので,カルシニューリンの触媒サブユ ニットは Hsp90の新たな基質であると結論された。カルシニュー リンは Hsp90の基質としては最初のフォスファターゼで,また酵 母の Hsp90の変異株から遺伝学的手法を用いて,同定された最初 の基質となる。 発表の内容は分子シャペロンの機能の多様性を反映して多岐 にわたり,様々な現象を学習する良い機会であった。反面,討

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論の時間が限定されていたためかもう少し論議を尽くしたい話

題が多かったのは残念であった。私自身の発表に複数の方々か ら有意義なコメントを頂けたのは満足なことであった。

9 Keystone シンポジウム

Protein Folding,

Degradation and

Molecular Chaperones

Protein Folding,

Modification and

Transport in the Early Secretory

Pathway 感想記

田中 智之

(京都大学大学院薬学研究科) 99年4月10日 か ら16日までコロラ ド州カッパーマウ ン テ ン に お い て, Keystone シ ン ポ ジ ウムとして表題に あ る 二 つ の セ ッ ションが開かれた。 開催地はスキーゲ レンデのすぐそば で,標高はおよそ2700m,開催期間中も2日ほど雪の日があった。 高地ということで,初日は永田先生をはじめ高山病様の症状に 悩まされた方もいらっしゃったようである。昼間にもうけられ た空き時間を利用してスキー場にも幾度か足を運んだが,国内 ではお目にかかれない広大なスペースと,スキーヤーの平均滑 降速度の速さには驚かされた。質問者のなかには,スキー用の 吊りズボンをはいて真っ赤に日焼けした顔で(しかも当日のス キー場のコンディションについても話したりしながら)発表者 と熱い討論を交わす研究者もいて,海外の学会に初めて参加し た私には印象深かった。 私の現在の研究テーマはヒスタミン生合成に関するもので, 合成酵素の細胞内局在性について検討をするうちに分子シャペ ロンや,タンパク分解に関する分野に足を踏み入れたところで ある。そういうわけで初日のレジストレーションでは,流石に 聡明そうな美しい女性が受付事務をやっているなあと思ってい ると,それはオーガナイザーの一人である L. M. Hendershot(以 下敬称略)であり(次の日のセッションで知った),なおかつ私 は「このアンケートにある CSSI とは何のことですか?」と直接 尋ねたり,今思い返すだけでも恥ずかしい門外漢ぶりを発揮し てしまった。私には比較するものとしては国内の学会参加の経 験しかないが,シンポジウムの雰囲気は熱気があり,質問者と 発表者のやりとりも総じて非常に興味深いものであった。発表 されたデータも未発表のものや,検討中の結果なども紹介され, 比較的まとまったデータが登場しがちな国内の学会,シンポジ ウムとはかなり様相が異なっている。また最も感銘を受けた点 は,今得ている知見を構成しなおして提示される仮説の大胆な ところである。質問者とのやりとりを聞いていても,その仮説 をもとにより適切なモデルへと近づいていこうという意志が強 く感じられた。国内では,少ない知見をもとに大きな仮説をた てて議論することは(特に若手研究者がそれを行うときは尚更 であるが)嫌われる傾向があるように思える。 シンポジウムは二つの会場で並行して行われ,両方のテーマ に関心がある場合,演題を選んで往復することもあった。テー マをあげると,分子シャペロンとタンパクのフォールディング, ユビキチン化,プロテアソームによる分解,小胞体へのターゲ ティング,局在化機構,ゴルジ輸送,タンパクのクオリティー コントロール,小胞体内での修飾機構など多岐にわたるが,ど れもが互いに有機的につながっている分野であり,これらの最 新の成果を同時に得ることができるメリットは相当なものであ る。初日の基調講演に加えて5日間のスケジュールの中から, 私が特に関心を持って参加したものについて若干の紹介をした い。なにぶんこの分野のことを勉強しはじめて日が浅いので, 自分の研究テーマと近い内容が中心になる点はご容赦願いたい。 初日の基調講演は W. P. Baumeister による Joint session で,20S proteasome subunit をはじめとした self-compartmentalizing protease のグループが類似した立体構造をもつことが様々なテクニック を用いて示された。翌日(11日)は Entry into the secretory pathway のセッションに参加した。私が研究テーマとしている L-histidine decarboxylase は肥満細胞においてサイトゾルで翻訳された後,C 末側 domain を介して小胞体へと移行し,lumen 側へ translocate した後プロセシングを受ける。そのためここは私がもっとも関 心を持っている分野だったが,最も時差ぼけがひどい時間帯で もあり苦労した。T. Rapoport は Sec-complex を介した翻訳後小胞 体移行の機構について,特に Sec63p の小胞体内腔側に存在する J domain と BiP との相互作用の詳細な解析を報告した。Rapoport の仮説は molecular ratchet としての BiP を想定しており,その調 節因子として Sec63p の J domain を重要視している。両者の相互

作用の解析に表面プラズモン共鳴を利用して Kdを求めるなど,

新しい試みも紹介された。BiP は Sec61p complex によって形成さ れる translocon の lumen 側の蓋であったり,ratchet などいろいろ な機能が提唱されており,その調節機構には関心が持たれる。 次 の A. E. Johnson は 蛍 光 プ ロ ー ブ を 利 用 し て 膜 タ ン パ ク が translocon から形質膜へと移動する過程を解析し,移動が Sec61a と TRAM の界面で起こることを示唆した。R. Gilmore は trypsin

処理によって Sec61a の機能ドメインを検索し,SRP 依存的なポ

リペプチドの小胞体移行に関わるループ領域を決定した。 12日 は Glycosylation and calcium as modulators of ER folding の セッションに参加した。G. Kleibich および A. Helenius はそれぞれ calnexin/calreticulin cycle に関する報告を行い,Kleibich は UDP-Glc:glycoprotein glucosyltransferase(GT)がこのサイクルにおけ る misfolded protein のセンサーとして機能すること,また基質タ ンパクの疎水性領域を認識する GT の構造について述べた。また この日は,translocon に関するワークショップ(The translocon: A two way channel)があり,ポスター発表の中の数演題に関して 討論が行われた。translocon は SRP −依存的あるいは非依存的な 経路の小胞体への translocation 全般に関わるコンポーネントであ り,この Sec61p complex とその他の因子がどのように調節され協 同するかは非常に関心の高いテーマである。

また後半では,proteasome や ubiquitin conjugation に関するセッ ションが開かれたが,そこでも小胞体タンパクがこれらの経路 によって分解される retrograde translocation が一つのトピックに スキー風景(田中)

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なっていた。Sec61p に関する実験系は酵母を用いたものがかな りのウェイトをしめ,哺乳類細胞においても基本的なメカニズ ムは同様である部分も多いと予想される。しかしながら哺乳類 細胞における Sec complex の詳細はまだ未解明の点が多く,個人 的には意欲がかき立てられた。13日は Hendershot によって,イ ムノグロブリンの四量体形成において light chain が heavy chain

に結合した BiP を追い出し,フォールディングが進行する過程が 報告された。C. V. Nicchitta は抗原提示細胞にペプチド− GRP94 の複合体が取り込まれ,MHC class I 分子によって抗原提示され るというユニークな機構を提唱した。14日の J. Hohfeld の報告で は,Bag-1はヌクレオチド交換反応を促進するだけではなく, Hsc70と結合した基質タンパクの proteasome への提示にも関わる ことが示された。Bag-1の anti-apoptoc な活性についてさらに理解 する新たな手がかりにもなると考えられる。 私の所属する研究室からの参加は一人だったことが幸いした のか,期間中は国内の学会よりもむしろ多くの研究者と話をす る機会を得た。朝食の席で,あるイタリア人の研究者が,欧米 の研究は熱くてすぐにできる「バーガーサイエンス」で,日本 人の研究は仕込みが丁寧な「寿司サイエンス」で,これからは 二つの良いところを合わせていくべきだという持論を展開して くれた。初めて参加した海外の学会で,私もいろいろと考える ところは多かったが,如何せん語学の壁のためにその研究者に 自分の考えを十分伝えられなかったのが残念だった。とは言え いろいろな意味で 刺激を受け,私自 身のポスター発表 でも多くの方から 有益な助言をいた だくことができた 有意義なシンポジ ウム参加であった。

キーストンシンポジウム

"Protein Folding,

Modification and

Transport in the Early Secretory

Pathway" に参加して

木俣 行雄

(奈良先端科学技術大学院大学遺伝子センター)

キーストンシンポジウム“Protein Folding, Modification and Transport in the Early Secretory Pathway”は,Linda M. Hendershot と Randal J. Kaufman をオーガナイザーとして,4月10日から16日 ま で,ロ ッ キ ー 山 中 の リ ゾ ー ト 地 で あ る コ ロ ラ ド 州 Copper Mountain で開催されました。日本のシャペロン特定研究班から は,班代表の永田先生(speaker)をはじめ,三原先生(九大), 森先生(HSP 研京大),大塚先生(愛知ガンセンター),小椋先 生(熊大),河野(奈良先端大)等が参加しました。冬はスキー 場として,夏は避暑地として有名らしいこの地には,まだまだ 雪が残っており,スキーヤー達で賑わっていました。さらに, 会期の後半にはかなりの量の降雪があり,日本では桜も散りか けている季節だと い う こ と と の ギャップを強く感 じました。最終日 を除いて,講演は 午前中(午前8時 から)4名,夜(午 後8時 か ら)3名 という構成になっ ており,ポスター セッションも計4日間毎日午後4時から2時間設けられました。 日本で見ていたプログラムの内容はそれだけだったので,午後 は4時までずっとスキーが出来ると期待していました。しかし, 残念ながら(?)興味深いワークショップが連日午後に開催され, 結局,ロッキー山脈でスキーをするという夢は果たせませんで した。このシンポジウムは,もう一つのシンポジウム“Protein Folding, Degradation and Molecular Chaperones”と同時に開催さ れました。一部の講演やポスターセッションは合同で行われた のですが,半数以上の講演は別室で行われたため聞くことが出 来ず,残念に思っています。なお,これら二つのシンポジウム で,講演計60題,ポスター計163題という規模でした。 会場となった Copper Mountain リゾートは標高3000m 以上の所 に位置し,夜間はかなり冷え込みました(池の氷は未だに全く 溶けていませんでした)。そのため,日本の気候に慣れた私の体 は,初日から高山病と風邪と睡眠不足(夜間の飛行機での移動 のため)という三重の苦しみを背負うことになってしまいまし た。この体調不良からは少しづつ回復してきましたが,気圧の ためだと思われる若干の頭痛と息苦しさからは最後まで解放さ れませんでした。日頃の運動不足が悔やまれます。よって,講 演中にも頭が全く働いていない時があり,また,あまりにも流 暢な英語は聞き取りが出来ず,このレポートが不完全なものに なってしまったことをお許し下さい。 4月11日午前は,小胞体膜での順行性の trasnslocation に関し, 4人が講演しました。Tom Rapoport は,trasnslocation に関わる酵 母 Sec 蛋白質複合体を再構成し,post-translational な trasnslocation を in vitro で再現する実験系での研究結果を示しました。それに より,post-translational な trasnslocation の driving force として BiP の“Brownian ratchet”モデルが支持されました。そのモデルでは, 新生蛋白質が Sec61p の形成する孔を通過する途中に,その近傍 に存在する Sec63p の作用により,小胞体内腔側で直ちに BiP が 結合し,新生蛋白質が細胞質に戻るのを阻害します(これに関 しての詳しい話は Cell 97, 553−564(1999)に載りましたので, それを読んで下さい)。なお,このモデルでは BiP の結合にあま り基質特異性を考えない方が都合良く,その点でも興味が持た れます(Mol. Cell 2, 593−603(1998))。

4月11日夜は,in vitro での蛋白質 folding の詳細な解析につい て,3人が講演しました。Donald M. Engelman は,膜蛋白質の安 定な folding のためには,第1段階として膜貫通ドメインがα-helix として膜に組み込まれると共に,第2段階としてその膜貫 通α-helix 同士が安定な結合を作ることが重要だという概念に基 づき,種々のデータを提示しました。 4月12日午前は,calnexin/calreticulin について,4人が講演しま した。Ari Helenius の講演は,calnexin/calreticulin サイクルに関す ポスターの前で(田中)

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るものでした。glucosidase Ⅱにより glucose が除去された糖蛋白

質 は,unfolded な ら ば UDP-Glc:glycoprotein glucosyltransferase により再 mono-glucosyl 化され,calnexin-calreticulin の基質として ER に 残 留 し ま す。一 方,folding が 完 了 し た 糖 蛋 白 質 は, glucosidase II により glucose が除去されると,分泌経路に乗りま す。そして,UDP-Glc:glycoprotein glucosyltransferase が蛋白質 の folding 状態のセンサーである根拠として,この酵素が native form な,もしくは完全に変性した RNaseB ではなく,部分的に folding された RNaseB のみを良い基質とすることを示しました。 4月12日夜は,disulfide bond 形成に関わる因子について,3人 が講演しました。Stephan High は,PDI 様蛋白質 ERp57が特異的 に新生糖蛋白質に作用することを示しました。そして,彼は ERp57が calnexin/calreticulin サイクルの中で働く因子であると結 論しました。

4月13日午前は,小胞体での蛋白質の folding と残留に関わる

種々のシャペロンについて,4人が講演しました。John J. M.

Bergeron は,前述の UDP-Glc:glycoprotein glucosyltransferase に ついての知見を紹介した後,calnexin のリン酸化について述べま した。calnexin の細胞質側にはリン酸を受けるセリン残基が並ん でいる領域があり,そのリン酸化により calnexin はリボゾームと 結合することを示しました。calnexin とリボゾームとの結合によ り,translocate されてくる新生糖蛋白質を calnexin が捕まえやす くなると考えられます。また,Douglas M. Cyr は,J ドメインを 持つ細胞質 Hdj-2が実は小胞体膜上に局在し,新生膜蛋白質の folding を Hsc70と共同して細胞質側から進めることを示しまし た。 4月13日夜は,若干のスケジュールの変更はありましたが,ER 蛋 白 質 の 分 解 に つ い て の 話 が 中 心 で し た。Jeffrey Brodsky や Dieter H. Wolf は,ER からの逆行性の translocation を経た細胞質 での蛋白質分解において,その基質が可溶性蛋白質である場合 と膜蛋白質である場合とで,最終的に proteasome にまで運ばれる メカニズムに相違があることを示唆しました。すなわち,可溶 性蛋白質の場合には BiP を,一方,膜蛋白質の場合には細胞質

Hsp70群を必要とすることが多いということです。また,この分

野に関しては,Scheckman 研のポスドク,Mingyue Zhou のワー クショップとポスターでの発表も興味深いものでした。そこで は,順 行 性 の ER translocation は 正 常 で あ る が 逆 行 性 の translocation だけが異常な sec61温度感受性変異株の分離と解析 が報告されました。彼の話によると,4つのミスセンス変異アレ ルが得られ,そのうち三つはルーメン側に,一つは膜貫通ドメ インに変異部位がマップされたそうです。これらの sec61変異の 解析により,逆行性 translocation に関与する装置がより明らかに なると期待されます。 4月14日午前は,unfold した蛋白質に対する細胞の応答につい

て,4人が講演しました。Randal J. Kaufman や David Ron の話を 聞き,酵母で知られている Ire1p の自己リン酸化以上に,哺乳類 細胞では,ER ストレスに対する応答において,リン酸化が重要 な役割を果たしているという印象を受けました。例えば,Ron は, ER ストレスに応答した翻訳開始因子 eIF-2のリン酸化に関わる 因子 PERK の存在を示しました。また,彼は,ER ストレスに応 答して apoptosis を引き起こす因子である CHOP も,その活性化 に は リ ン 酸 化 が 必 要 で あ る こ と を 示 し ま し た。Kaufman は, knock-in の技術を用い,リン酸化を受けない eIF-2変異体を発現 する哺乳類 細胞や個体 を 作 成 し, その解析結 果を報告し ました。興 味深いこと に,eIF-2の リン酸化が 転写レベル での BiP や CHOP の誘導に必要であることが示唆されました。 私にとっては初めての海外でのミーティングでしたが,雪の 残る美しいロッキーの山々を見ながら,分子シャペロンや初期 分泌過程に関する最新の研究成果に数多く触れることが出来, 有意義であったと思っています。連日,朝8時から夜10時まで と長時間のスケジュールでしたが,日本でのミーティングに比 べて食事時間や休憩時間が長く設けられています。その時間に 海外の著名な研究者がプライベートで話しているのに何回か立 ち会うことが出来,彼らの考え方に僅かながらも生で触れるこ とが出来た気がしたことを幸せに思っています。

Research conference on

BIOLOGY OF MOLECULAR

CHAPERONES 体験記

龍田 高志

(熊本大学医学部) そ れ は, カンファレ ンス三日目 の昼のこと。 午前のセッ ションが早 めに終わり, 参加者たち は三々五々 食堂の前の ロビーに集 まり,昼食の準備が整うのを待っていた。私は,イタリアでは 時間通りに準備が整うことを期待してはいけないと知っていた ので,腹を空かしながらも気長に構えていた。すると,すぐ前 に昨日の夜に到着された永田先生がいらっしゃることに気づい たので,自己紹介がてらにご挨拶させていただいた。簡単なや りとりの後,永田先生は私に「君は,このカンファレンス真面 目に聴いてる?」と唐突に聞かれた。変な質問だなと思いつつも, いいえと答えるわけにもいかず,「はい,一応はきちんと聴こう としています,」と答え,(しかし,英語の聞き取りは自分には かなり難しくて,なかなか理解できません)と続けようとしたが, 先生は間髪入れずに「じゃあ,シャペロンニュースレターのレ レストランにて(左から土師,永田,森,吉田,河野,木俣) コーヒーブレーク(左から?,Kuhn,Hartl,大塚)

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ポート,お願いで きないかな?元々 は小椋さんに頼も うと思っていたん だ け ど,ね。」…。 えらいこっちゃと 思いつつも自分に は「い い ん で す か?僕なんかが書 い て?」と 反 論 す るのが精一杯であった。こういうことも勉強の一つか…。 ということで,若輩ながらイタリアにおいて5月22日から27

日 に か け て 開 催 さ れ た ESF 主 催 の「Research Conference on BIOLOGY OF MOLECULAR CHAPERONES」についてご報告さ せていただきます。しかし,自分には先生諸氏の如くには的確 にレポートし得ないので,お叱りを覚悟の上で,一大学院生と して海外のカンファレンスに参加して感じたこと,知り得たこ とを率直に書かせていただくことにします。 ESF のシャペロンに関するカンファレンスは隔年で開催され ているとのことである。今回の参加者総数は約130人で,講演者 を除けばその大部分がヨーロピアンであった。日本からは班員 の先生方を含めて7名(大塚,小椋,小林,龍田,永田,南, 矢原/五十音順・敬称略)が参加した。 会場はナポリから更に電車で二時間ほど南へ下った Sapri とい う町の近く(?)のリゾートホテル(Hotel Villa del Mare)であっ た。ホテルは海岸沿いの斜面に層をなして建っているため,各 層に段段畑状にテラスがあり,そこから望む地中海はまさに絶 景の一言である。少し目を移せば,岩がちの海岸から続く急な 斜面を縫うように列車が走り,古い鉄橋を越えた所でトンネル へと消えて行く。正直申し上げて,テラスで本でも読みつつ ボーッと過ごせたらなあと思ってしまったほどの恵まれた環境 であった(矢原先生は結構のんびりされたようで,「退屈が一番 のぜいたく」とご機嫌であったそうだ)。ホテル下層に岩を削っ て造ったような大きな部屋があり,ここが発表会場となってい た。壁の一方はむき出しの岩盤となっていて,そのためか部屋 の空気は常にひんやりとして心地よかった。日本においてこの 手の会合は,設備は整っているが無機質な部屋で行なわれるこ とが多いので,このような趣のある部屋で行なわれること自体 が新鮮に感じられた。一方,岩壁のせいか無線マイクの調子が 悪く,また,スライドの光量不足で図が非常に見づらいなど, こちらも海外特有とも言える設備の悪さも同時に味わった。 さて,口演は二日目朝より和やかな雰囲気の中開始された(こ の和やかさはオーガナイザーの Saibil のお人柄に依るところが 大きいと思う)。その内容について,テーマごとにいくつかピッ クアップしながら紹介させていただく。

Freiburg 大の Bukau とその共同研究者たちは,E. coli をモデル として,特にタンパク合成途中の folding におけるシャペロンの 役割についての解析結果を発表した。彼らは,リボソームに結 合する trigger factor(TF)の欠失と DnaK の欠失が合成致死とな ること,そして TF 欠失株において細胞内 DnaK レベルを下げる と,新生ポリペプチドの凝集が起こることなどから,TF はシャ ペロンであり,新生ポリペプチドの folding において DnaK シャ ペロンシステムと互いに補完し合う機能を持つことを示した。 また,DnaK と GroEL に結合する新生タンパク質の二次元電気泳 動解析から,DnaK は大きめのタンパク質(>80KDa)に,GroEL は小さめのタンパク質(<50kDa)にそれぞれ結合しやすいこと を示した。実は次の日に,これらすべてとほぼ同じ内容の発表 が Max-Planck 研の Hartl によってなされ,その結果が符を合わせ たように一致していることには驚いた。後で聞いた話では両者 にこのテーマにおいて collaboration はなく,完全に compete して いるらしい。それはともかく,最近になって(少なくとも E. coli では)新生蛋白質の大多数は DnaK や GroEL 非依存に成熟しう ることが示され,また今回 TF がメンバーに加わったことで,蛋 白質合成途上におけるシャペロンの作用モデルは大きく変化し つつあるなという印象を受けた。 Morimoto(Northwestern 大)が発表した,細胞内のタンパク質 凝集を目で観察できる線虫を用いたシステムは印象的であった。 彼らは polyglutamine repeat が挿入され細胞内で凝集しやすく なっている蛋白質と GFP の融合蛋白質(Unc54::Q82-GFP)など の「凝集モデル蛋白質」と同時に Hsp70や Hsp104などのシャペ ロンを線虫の筋肉細胞に発現させた。GFP 融合モデル蛋白質が凝 集すれば,細胞内に蛍光のスポットが観察される。その結果, Hsp104の発現によりスポットが見られなくなること,及び Hsp70 が蛍光スポットと co-localize することが示された。 他に HSP70関係では,Hhfeld(Max-Planck 研)が HSC70/HSP70 の 調 節 因 子 と し て 知 ら れ る BAG-1が ユ ビ キ チ ン 化 さ れ proteasome と 相 互 作 用 す る こ と を 示 し,BAG-1が folding と degradation の橋渡し役をするというモデルを提唱した。また HSP40については,Craig(Wisconsin 大)による基質特異性が G/F ドメインによって決定されるという報告や,Ohtsuka(愛知 がんセンター)による Hsp40の熱ショック応答の抑制に関する報 告がなされた。 小胞体シャペロンを中心としたセッションでは,Manchester 大 の Bulleid が procollagen の folding における prolyl 4-hydroxylase の 重要性を強調する発表を行った。彼らは小胞体内で合成途上の procollagen に 結 合 す る 蛋 白 質 を 検 索 し た 結 果,prolyl 4-hydroxylase が主に結合してくることを示し,prolyl 4-hydroxylase が procollagen の不完全な folding 状態を認識,結合することが, その正しい folding に重要であると結論した。これに対し京大の Nagata は別の日の口演で,collagen のモデルとなる(gly-pro-pro)

n ペプチドと Hsp47の相互作用を解析した結果,n >7の場合に

は Hsp47の結合が見られることを明快に示した。また,3番目の

Pro の水酸化がこのモデルペプチドと HSP47の結合を阻害する

ことも発表した。Bulleid らは prolyl 4-hydroxylase と procollagen 会場となった Hotel Villa del Mare

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の結合は proline の水酸化の程度よりむしろ folding 状態によって

決まると言っており,その対比が興味深かった。

GroEL 関係については,まず Yale 大の Horwich が GroEL/ES の反応サイクルのすばらしいモデルを提示した。cis リングと trans リングが互いにそれぞれの基質や GroES への affinity に影響 しあい,結果として「代わりばんこ」に基質が cavity に入り folding されて行くという。実は彼の英語にまったくついていけなかっ たのだが,このモデルだけは絵を見せられただけで納得してし まった。また,7個の GroEL を共有結合によりつなげて一つの ドーナツ型分子にしてしまっても活性があり,そのうちの三つ までは活性中心をつぶしたものに置換しても活性が保たれると いう結果も同時に報告された。

その他では Fisher(Kansas Medical Center),Radford(Leeds 大) によるモデル基質を用いた解析や Saibil(Birkbeck College)らに よる cryo 電顕による解析が発表された。また,CCT については Willison(Institute for Cancer Research)による酵母 CCT と b-actin の相互作用の解析や Martin(Brown 大)による CCT に特徴的な 構造を欠失させた変異型蛋白質の解析が発表された。

蛋白質輸送・膜透過関連では,膜透過輸送における HSP70の

機能についての二つの対照的な発表が興味深かった。Harvard の Rapoport らは高度に精製された Sec 複合体と Bip,そしてモデル 基質として in vitro で合成した prepro α factor(ppαF)を用いて 小胞体における posttraslational protein transport について解析し, Sec 複合体と Bip のみで transport 活性があり,Bip と基質の結合 が阻害される条件では基質の「back sliding」が起こること,そし て Bip を ppaF に対する部位特異的抗体によって代替しうること を示した。これらの結果はいわゆる「Brownian ratchet モデル」 を支持するものであり,Bip の基質への結合と受動的な基質の運 動のみで輸送が行なわれうることを示している。一方,Freiburg 大の Pfanner はミトコンドリアへの輸送について mtHsp70の変異 株を用いた解析について発表した。彼らは ssc-2変異株の高温 感受性を相補する分子内サプレッサーを解析した結果,モデル 基質 b2-DHFR の unfolding および膜透過能は,mtHsp70の基質と の結合力とは相関せず,mtHsp70の Tim44との結合能に相関する ことを示した。この結果は,基質の輸送には「Brownian ratchet モデル」 では説明できない能動的な力が必要であることを示唆 するものである。これら二つの結果は,前者は比較的 loose な基 質,後者は tight な基質を使っていること,また小胞体とミトコ ンドリアの違いなどがあるため,実際矛盾しているわけではな い。加えて,Rapoport の前に発表した Neupert 研の Brunner も, この問題に触れて“hand by hand model”という Brownian ratchet モデルに近いと思われるモデルを提唱しており,これは Pfanner の結果と対立すると思われるが,実は良く聞き取れなかったの で詳しいことはわからない(ごめんなさい)。個人的には,ratchet 的作用によって輸送が起こりうることは確かだろうが,果たし て実際,細胞内でそれだけで輸送される分子があるのだろうか と思ったのだが。

その他,アミロイド関係では Scripps Research Institute の Kelly による変異型 transthyretin のアミロイド形成についての解析や, California 大の Weissman による Sup35p への glutamine repeat 挿入 によるアミロイド形成についての解析が発表された。また,ATP 依存型プロテアーゼについては Langer(Mnchen 大)によるミ トコンドリア内膜 AAA プロテアーゼの基質結合についての研究,

Ogura(熊本大)による FtsH によるσ32の分解における DnaK の

役割についての解析,また Gdansk 大の Zylicz による ClpAP/XP

の基質選択についての研究などが報告された。HSP90に関しては

何故か非常に演題が少なく,Minami(大分医大)による,PA28

が Hsp90/70/40システムによる luciferase の refolding に必要である と い う 発 表 が 最 も 印 象 的 だ っ た。HSP104/ClpB に つ い て は, DnaK/DnaJ/GrpE と ClpB により,aggregate した luciferase を活性 のある状態に戻すことができるという Goloubinoff(Freiburg 大) の発表は面白かった。この反応は非常に時間がかかる(時間単 位!)が catalytic なものである。彼らは DnaK がアクセスできる ように ClpB が aggregate 内部の疎水性の部分を外に出すという モデルを提唱していた。 全体的には,GroEL を筆頭にシャペロン分子の構造解析が進み, 分子の物理化学的な性質が明らかになってきている一方,基質 との相互作用については,広い基質受け入れ能力というシャペ ロン独特の性質のおかげでなかなか一般的な性質がつかみきれ ないという印象がある。普通の酵素なら,一つの基質との相互 作用を解析すれば終わりなのに対し,シャペロンではモデル基 質が違えば違う結果が得られることが多い。今後は数多くのモ デル基質とシャペロンの相互作用の解析を地道に積み上げてい くしかないのだろうか? さて,サイエンスについてはこれくらいにして,会場の雰囲 気などについて。晴れた日には気温が30℃ ぐらいまで上がり, ヨーロッパの人たちは皆,昼休みにホテル下のビーチで泳いで いた。準備万端であり,彼らが初めからそのつもりで来ていた のは明白である。これに限らず,カンファレンス全体を通して, 南イタリアの空気とともにリラックスムードが漂っていた。し かし,ひとたび議論が白熱すると皆ディスカッションに没頭し, また,深夜とも言える時間帯のポスター発表会場でも人が絶え ることがなかった。このあたりの「切り替え」の上手さや底知 れぬパワーには感服するばかりであった。もちろん体力的なも のもあるだろうが,おそらく,すべてにおいて楽しもうという 姿勢が重要なのであろう。これは自分も見習うべきだと感じた。 イタリアということもあり,食事にはかなり期待してきてい たのだが,おおむねその期待に応えてくれるものであった。最 終日の夜は少し豪華なディナーだったが,特にその primo(第一 の皿)で出たリゾットは絶品で,私などはお代わりまでもらって, その後動けなくなるぐらい満腹になってしまった(ペース配分 を考えていなかった)。ディナーの席ではオックスフォードでポ スドクをされている小林さんに,イギリスでの研究生活につい てのいろんな話を聞かせて頂いたりして,とても有意義であっ た。 ディナーの後に は,ホテルのフロ ントにいた兄ちゃ んがエレキギター とシンセサイザー を 操 っ て ス タ ン ダードナンバーを 演奏し,それにあ わせて自然とダン スパーティーが始 まっていた。Hartl マラテアの街

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