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正常歩行における下腿座標系上の円弧状圧中心軌跡

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(1)理学療法学 第 43 巻第 6 号 445 ∼ 452 頁(2016 下 座標系を利用した歩行時の足圧中心の軌跡 年). 445. 研究論文(原著). 正常歩行における下. 座標系上の円弧状圧中心軌跡*. 秋 山 徹 雄 1)# 関 屋   曻 2) 中 村 大 介 2) 加茂野有徳 2). 要旨 【目的】正常歩行における足圧中心位置を下. 座標系上で表現すると円弧に近い軌跡となることが知られ. ている。本研究は,軌跡の個人内と個人間のばらつき,用いる下. 座標系による違い,円弧が最適曲線か. 否か,および速度依存性を明らかにすることを目的とした。【方法】健常成人 10 名の歩行で床反力計測と 三次元動作解析を行い,足圧中心を 2 種類の下. 座標系に変換した。変換データを用いて曲線近似を行い,. 寄与率を求めた。 【結果】一部の被験者の極端な速度の歩行を除けば,高い寄与率を示し,個人内,個人 間のばらつきはきわめて小さかった。速度条件間および,座標系間の寄与率には差がなかった。近似様式 間では寄与率の平均値間に有意差があったが,その差はきわめて小さかった。【結論】本研究で足圧中心 軌跡は比較的一貫した円弧形状を示した。しかし,速い条件で一部の被験者にばらつきが生じたことから, 円弧型機能的足底形状は高速度範囲で一部制約がある可能性が示された。 キーワード 下. 座標系,足圧中心軌跡,円弧型機能的足底形状,ばらつき. ロッカー・アンクルロッカー・フォアフットロッカーの. はじめに. 3 つのロッカー機能を提唱し,Mcgeer(1990)は. 2). 受.  人の二足歩行は上肢・体幹・下肢を利用した全身運動. 動歩行ロボットの研究の中で,足圧中心の前進は下肢長. であるが,そのうちの特に下肢,つまり股関節・膝・足. の 30%に等しい半径をもつ回転車輪に類似するとした。. 部の運動が中心である。そのため下肢機能に障害が発生. これらの研究を踏まえ,Hansen(2000)ら. したときに歩行動作は顕著に阻害される。下肢機能障害. 運動に則した足部形状が義足・装具の設計上有用である. の代償として義足・装具が用いられることがあるが,そ. ことを示した。Hansen(2000,2004A)ら. の中で多くの場合,足部機能が関与する。これは末梢部. 行の足圧中心位置を絶対空間における歩行路上の点とし. 位が神経学的障害を受けやすいということ以外に,歩行. て捉えるのではなく,下肢に設定された局所座標系上の. 中に足部が床面に対する最初の応答を行う部位であるこ. 点として描く方法を取り入れた。足圧中心軌跡は,足底. とも考えられる。床面に対する足部の応答が行えないと. 接地から足尖離地まで絶対座標上では床面上を移動する. 緩衝・重心移動・バランス制御・加減速制御の阻害や足. に過ぎないが,下肢に設定した座標から見ると足圧中心. 部の引っかかり等の様々な問題が歩行時に生じる。その. 軌跡が円弧状となることを確認した。Hansen らはこの. ため,義足・装具による足部機能の代償を生体力学に. 円弧形状を Roll over-shapes(以下,ROS)と呼び,歩. 沿った形で行うことは重要である。. 行速度を変化させても ROS に有意な変化が起こらない.  Perry(1992)は *. 1). 足関節と足部の機能としてヒール. Circular Trajectories of Center of Pressure Measured using a Leg Coordinate System in Human Walking 1)横浜なみきリハビリテーション病院 (〒 236‒0005 神奈川県横浜市金沢区並木 2‒8‒1) Tetsuo Akiyama, PT, MSc: Yokohama Namiki Rehabilitation Hospital 2)昭和大学 Noboru Sekiya, PT, PhD, Daisuke Nakamura, PT, PhD, Arinori Kamono, PT, MEng: Showa University # E-mail: [email protected] (受付日 2016 年 4 月 27 日/受理日 2016 年 7 月 28 日) [J-STAGE での早期公開日 2016 年 9 月 27 日]. 3). は転がり. 3)4). は,歩. 4) こと (2004 A),踵の補高をした際にも ROS の円弧半 5) ,小児の歩行(3 径に有意な変化がないこと (2004 B) 6) ∼ 17 歳)においても認められること (2010),体幹部. に錘を負荷しても ROS に有意な変化が起こらないこ 7) 8)9) と (2005)を示した。Adamczyk(2006,2009)ら. はキネマティクスだけではなく歩行中のエネルギー消費 の観点から,足関節を固定した円弧状足底短下肢装具 (AFO)を用いた研究を行い,円弧形状の足部をもつモ デルは足部がないモデルに比べて,矢状面上立脚期に起.

(2) 446. 理学療法学 第 43 巻第 6 号. こる前足への身体質量中心移行コストに優位性があるこ. 方向の縦列に配置した 2 枚の床反力計への足配置は右→. と 示 し た。 特 に 健 常 者 の ROS の 半 径( 下 肢 長 の 約. 左の順に行った。ただし V133 については床反力計への. 30%)に近づくほど酸素消費量が減少することを示し. 足配置のために 53.2°斜め方向に歩行した。各歩行の目. た。また松永(2015)ら. 10). は,エネルギー消費最小が. 標速度(歩幅(m)×歩行率(steps/min) )は健常成人 11). を参考にして,V33. 健常者の ROS 半径よりもやや大きい半径で得られるこ. 男性の歩行(Sekiya ら 1996). とを示唆した。これら一連の研究は,義肢や足関節固定. が 32.5 m/min(0.5 × 65) ,V54 が 54 m/min(0.6 ×. 装具において,足底形状を円弧様にすることで足関節機. 90) ,V77 が 77 m/min(0.7 × 110) ,V106 が 106.25 m/. 能を代償し,効率的な歩行を実現できる可能性や歩行評. min(0.85 × 125) ,V133 が 133 m/min(0.95 × 140)と. 価の指標となる可能性を示唆している。. した。.  このように,Hansen が提唱した Roll over-shapes を.  計測には床反力計(900 mm × 600 mm 2 枚,Kistler. はじめとして歩行中の立脚期を円弧状足部の転がり運動. 社製)と三次元動作解析装置(VICON MX システム,. としてモデル化することの有用性が示されているが,こ. VICON 社,赤外線カメラ 7 台)を用い,それぞれ標点. れまでの研究では以下のような問題点がある。(1)正常. 計測と足圧中心計測を行った。サンプリング周波数は. 歩行における最終的な足底形状を示しているが,時間経. 100 Hz とした。三次元動作解析装置の赤外線反射マー. 過を示していない。 (2)Hansen らの研究では円弧状を. カー(直径 15 mm)を以下の部位に両面テープとサー. 理想的な足底形状としているが,他の曲線との比較がさ. ジカルテープで張りつけた。. れていない。(3)個人内および個人間のばらつきについ. 1.頭頂  2.両耳珠点  3.両側肩峰  . て十分には調べられていない。 (4)絶対座標から局所座. 4.両側肘関節中心  5.両側手関節中心. 標系に変換する際,絶対座標系 Y-Z 平面(Y は進行方向,. 6.両側第 3 中手指節関節  7.胸骨柄  . Z は垂直方向,X は左右方向)への斜影が用いられてい. 8.胸骨柄後面の胸椎棘突起  9.両側上前腸骨棘. るが,3 次元局所座標系での検討が行われてはない。 (5). 10.両側大転子  11.大. 歩行速度依存性が明らかではない。そこで本研究では,. 12.両側膝関節裂隙外側  13.両側膝関節裂隙内側. 正常歩行の足圧中心軌跡について①個人内および個人間. 14.両側脛骨前面  15.両側足関節外果  . のバラつき②身体座標系への変換様式による違い③円弧. 16.両側足関節内果  17.両側第 1MP 関節. 以外の近似方法による違い,および④歩行速度依存性を. 18.両側第 5MP 関節  19.右上後腸骨棘. 明らかにすることを目的とした。これらのことを明らか.  数回の歩行練習により各速度条件に十分慣れたと被験. にすることにより,Roll over-shapes を用いた歩行評価. 者および研究者が判断した後計測を開始した。各速度条. や義肢装具のデザインの可能性と限界を明らかにできる. 件の測定順序は反復測定デザインにおける循環法. 可能性がある。. より決定した。. 対象および方法 1.対象  神経学的および整形外科的疾患の既往のない健常成人 男性 10 名とした。被験者の年齢,身長,体重の平均値. 前面中央  . 12). に. 2)身体座標系への座標変換  本研究では 2 種の局所座標系(下. 座標系)の定義を. 用いて比較検討した。 (1)3 次元下. 座標系.  図 1 に 3 次元下. 座標系の定義を示す。原点を足関節. (標準偏差)はそれぞれ 28.6(4.6)歳,167.5(3.5)cm,. 中心(足関節外果と足関節内果の中点;一側のマーカー. 62.4(6.3)kg であった。対象者には本研究の目的・方. 15 と 16 の中点)として設定した。足関節中心から膝関. 法について口頭および書面にて説明し,文書でイン. 節中心(膝関節裂隙内外側の中点;一側のマーカー 12. フォームドコンセントを得た。本研究は昭和大学倫理委. と 13 の中点)に向かうベクトルを u1 とし,足関節中. 員会の承認(承認番号 224 号)を得て実施した。. 心から足関節内果に向かうベクトルを u2 とした。u2 と u1 の外積(u2 × u1,u1 と u2 面に直角なベクトル)を. 2.方法. u3 とした。u3 と u1 の外積(u3 × u1,u1 と u3 面に直. 1)実験手続. 角なベクトル)を u4 とし,u1,u3,u4 をそれぞれ z 軸,.  被験者はスパッツを着用し,裸足にて 8 m の直線歩行. y 軸,x 軸とした。. 路を 5 つの目標速度(非常に遅い(V33) ,遅い(V54) ,. (2)全体座標系への斜影による局所座標系(斜影下. 座. 標系). 普通(V77) ,速い(V106) ,非常に速い(V133) )で歩 行した。各々の速度について 12 試行(計 60 試行)の歩.  膝関節裂隙外側マーカー,足関節外果マーカーおよび. 行を計測した。その際,歩行率をメトロノームで,歩幅. 足圧中心の Y-Z 平面への斜影を求めることにより斜影. を床面に張りつけた幅 1 cm のテープで規定した。進行. 下. 座標系を定義した。原点を足関節外果マーカーの斜.

(3) 下. 座標系を利用した歩行時の足圧中心の軌跡. 447. データが双峰性の場合には 1 つ目の z 座標のピーク値ま でを採用している。5 つの歩行速度条件(V33,V54, V77,V106,V133)毎にそれぞれ 12 試行の全データを 統合して曲線近似を行った。曲線近似は 2 つの局所座標 系(3 次元下. 座標系,斜影下. 座標系)について行い,. それぞれに対して円弧による近似と 3 次関数による近似 の寄与率を求めた。. 図 1 3 次元下 座標系の定義 原点:足関節中心(足関節外果と足関節内果の中点) u1(z 軸) :足関節中心から膝関節中心に向かうベクトル u2:足関節中心から足関節内果に向かうベクトル u3(y 軸):u2 と u1 の外積 u4(x 軸):u3 と u1 の外積. 1.各歩行条件における歩行速度  各速度条件における歩行速度は V33 が 33.0 ± 2.0 m/ min,V54 が 55.2 ± 2.3 m/min,V77 が 77.0 ± 3.3 m/ min,V106 が 100.3 ± 5.5 m/min,V133 が 128.8 ± 7.4 m/ min で あ っ た。 隣 接 す る 速 度 条 件 ① V33 と V54, ② V54 と V77, ③ V77 と V106, ④ V106 と V133 の 4 つ の組み合わせに対して対応のある t 検定による平均値の 差の検定の結果,すべての組合せで有意差が認められた (① tdf=9 = 38.4,p < 0.0005,② tdf=9 = 41.4,p < 0.0005, ③ tdf=9 = 23.3,p < 0.0005,④ tdf=9 = 20.2,p < 0.0005)。 以上より指示通りに課題が実施されたと判断した。ただ し歩行速度条件 V133 において被験者 1 と被験者 8 の各 1 試行で床反力計から足部のはみだしが確認されたため 11 試行のデータを用いた。. 図 2 被験者 1 名の典型的 ROS(V77 条件). 2.2 種の下. 座標系上の足圧中心軌跡と曲線近似.  図 3 に近似範囲以外のデータを削除した足圧中心デー 影,足関節外果マーカーの斜影から膝関節裂隙外側マー. タの y-z 平面の散布図と 2 種の近似曲線例を示した(被. カーの斜影に向かうベクトルを z 軸,z 軸と直角で Y-Z. 験者 6,3 次元下. 平面上にあるベクトルを y 軸とし,座標変換により斜. 線が 3 次関数による近似をそれぞれ示す。散布図の左端. 影下. は計測肢の踵接地を,y 座標の+方向(図では右向き). 座標系に変換された圧中心位置(yi' ,zi')を求. 座標系)。実線が円弧による近似,破. めた。. はつま先方向への足圧中心の移行を示している。速度が. 3)解析方法. 速くなると歩行開始点(踵接地)が図の左方に移行する.  本研究では 2 つの局所座標系上の 2 次元足圧中心プロッ. ことがすべての被験者で見受けられた。速度が V133 ま. トについて,円および 3 次元関数による曲線近似を行い,. で速くなると足圧中心軌跡は近似範囲の後半(足関節の. 最適曲線を決定した。主効果と交互作用の検定には反復. 前方)で直線に近い傾向を示した。. 測定分散分析を,2 群間の比較には対応のある t 検定を,.  図 4 に座標系毎の寄与率平均値と標準偏差を示す。今. 分散の差の検定には LEVENE 検定を用いた。三次元座. 回求められた寄与率は全体的に高い寄与率を示し,速度. 標計算は三次元動作解析ソフト Body Builder(ver.3.6.1,. 条件間で寄与率の平均値を比較すると V54,V77,V106. VICON) を, 曲 線 近 似 は 数 学 ソ フ ト Mathmatica9. 条件に比べて V33 でやや低く,V133 でさらに低い傾向. (Wolfram Research) を, 統 計 処 理 は SPSS(ver.15.0,. を示した。円弧近似の寄与率に関する 3 要因「速度(5. IBM)を用いて行った。. 水準)×座標系(2 水準)×曲線近似様式(2 水準) 」の分 散分析(3 要因とも反復測定)の結果,曲線近似様式の. 結   果. 。それ以外 主効果が認められた(F1/9 = 9.2,p = 0.014) 座標系上の足圧中心データの. では主効果も交互作用も認められなかった(主効果:速. うち右立脚期の y-z 座標を用いた。図 2 に,被験者 6 の. 度 F1.6/14.6 = 1.5,p = 0.248, 座 標 系 F1/9 = 0.01,p =. V77 条件の 1 試行の結果を典型例として示す。y-z 座標. 0.937,交互作用:速度×座標系 F1.8/16.5 = 0.6,p = 0.545,. データのうち後半部分は不規則な足圧中心軌跡を示すこ. 速度×曲線近似様式 F1.2/10.8 = 4.5,p = 0.052,座標系×. とがわかっているため,z 座標のピーク値までのデータ. 曲線近似様式 F1/9 = 2.6,p = 0.144,速度×座標系×曲. を近似範囲として曲線近似を行った。ただし y-z 座標. 線近似様式 F4/36 = 1.5,p = 0.233,ただし速度,速度×.  測定により得られた下.

(4) 448. 理学療法学 第 43 巻第 6 号. 図 3 下 軸座標系上の足圧中心軌跡 1 被験者(被験者 6)の各歩行速度における足圧中心軌跡(12 試行の重ね書き) .実線は円弧による近似,破 線は 3 次曲線による近似を示す.直線の鎖線は円近似の中心位置(前後方向のみ)を示す.. 図 4 各座標系を用いたときの曲線近似の寄与率 3 次元下 座標系と斜影下 座標系における各速度条件の寄与率の平均値と標準偏差 を示す.黒は円弧による近似,白は 3 次関数による近似を示している..

(5) 下. 座標系を利用した歩行時の足圧中心の軌跡. 449. 座標系,速度×曲線近似様式は球面性の仮定が棄却され. 。 標系・3 次曲線近似;W4/45 = 1.79,p = 0.147). たため Greenhouse-Geisser の修正法を用いた) 。3 次関.  すべての近似曲線で全体的に高い寄与率を示したが,. 数による曲線近似のほうが有意に高い寄与率を示した. 被験者 8 の V33 条件(3 次元下. が,V133 条件を除くと寄与率の差は小さかった。図 4. は 0.696,被験者 2 の V133 の条件(3 次元下. では V33 条件と V133 条件が,他の条件と比べて大きな. 円弧近似)では 0.407 と低い寄与率であった。被験者 2. ば ら つ き を 示 し て い る。LEVENE 検 定 の 結 果,V54,. のみ,図 5 に示すように足圧中心軌跡が中程で進行方向. V77,V106 の 3 条件間で比較したときは有意差が認めら. と逆転する特異的なパターンを示した試行が 4 つあり,. れなかったが(① 3 次元下. 座標系,円弧近似)で 座標系,. 座標系・円弧近似;W2/27. 近似曲線と散布図の一致度が低かった。この特異的な試. = 0.27,p = 0.766,② 3 次元下 座標系・3 次曲線近似;. 行では被験者が立脚後期に膝を過伸展させていることが. W2/27 = 0.30,p = 0.746,③斜影下. 座標系・円弧近似. 確認された。このように速度によって一定の傾向で寄与. W2/27 = 0.78,p = 0.467,④斜影下. 座標系・3 次曲線. 率が変化することはなかったが,極端な速度では個人差. ,全 5 速度条件間で比較 近似;W2/27 = 1.77,p = 0.190). が増大した。. すると,斜影下. 座標系の 3 次曲線近似による寄与率以.  使用した座標系による顕著な違いが認められなかった. 外で有意差が認められ,他の条件に比べて V33 と V133. ため,以降は下肢運動をもっとも適切に表していると思. で大きなばらつきを示した(① 3 次元下. われる 3 次元下. 座標系・円弧. 近似;W4/45 = 3.12,p = 0.024,② 3 次元下 座標系・3 次曲線近似;W4/45 = 2.87,p = 0.034,③斜影下 系・円弧近似;W4/45 = 2.67,p = 0.044,④斜影下. 座標系の結果を用いて検討することと. した。. 座標 座. 3.立脚期時間に対する近似範囲の割合  図 6 に立脚期時間に対する近似範囲の円弧時間割合 (%)を示す。立脚時間に対する近似範囲の時間割合は 速度の増大とともに小さくなる傾向を示しており,近似 範囲に関する 1 要因分散分析(反復測定)の結果,速度 。しか の主効果が認められた(F4/45 = 43.3,p < 0.001) し V33,V54 の 2 水準による分散分析の結果では主効果 。 が認められなかった(F1/9 = 0.622,p = 0.451) 4.各速度条件と 2 つの局所座標系における近似円の半. 図 5 特異的な足圧中心軌跡を示した一例 被験者 2 の V133 条件の 2 試行(典型的パターンと特異的パ ターン).実線(A)はほかの被験者と同様の典型的な足圧中 心軌跡を示した試行.破線(B)は特異的な足圧中心軌跡を 示した試行.被験者 2 では B のタイプの足圧中心軌跡を示し た試行が 12 試行中の 4 試行に生じた.. 径と中心位置  表 1 に近似円中心の前後位置と円の半径の平均(標準 偏差)を示す。円中心の前後位置と円の半径について, それぞれ速度を要因とする 1 要因の反復測定分散分析を 行った。円の前後位置に関しては速度の主効果が認めら. 図 6 各速度条件において立脚期に円弧形状を示した時間割合(%) 足圧中心軌跡を曲線近似するとき,円弧の終点の決定基準として z 座標ピーク値を用 いた.立脚開始から z 座標ピーク発生時点までの時間を立脚時間に対するパーセント で示した(ただし被験者 1 と被験者 8 の V133 条件は 11 試行のデータの平均を示す). エラーバーは標準偏差を示す..

(6) 450. 理学療法学 第 43 巻第 6 号. 表 1 円弧近似における近似円の中心位置と半径 平均(SD). V33. る。特に V133 条件で特異な足圧中心軌跡を示した被験 者の近似様式間の差が大きかった。他の速度条件では寄. 前後位置(mm). 半径(mm). 与率の差がかなり小さかったことを考慮すると,この一. ‒ 11.1(13.6). 291.9(71.9). 部の被験者のばらつきがこの差の要因となっている可能. V54. 1.4(7.4). 251.3(27.0). 性がある。今後の課題として難易度の高い条件での低寄. V77. 2.0(8.8). 266.3(38.6). 与率の発生率の検討や低寄与率を示す要因の調査が必要. V106. ‒ 7.3(14.6). 316.0(69.2). かもしれない。. V133. ‒ 8.5(19.2). 349.6(73.3).  極端に速い速度を除けば,近似方法による違いは非常. 速度条件ごとの全被験者の平均を示し, ( )内に標準偏差 を示す.近似円の中心位置(前後位置)は足関節を原点とし て前方を(+)で示した.. に小さく,高い寄与率を示したことから,円弧足底モデ ル. 2)4). の妥当性を支持する結果となった。そのため以. 下の検討は円弧近似を中心に行うこととした。 れなかった(F1.8/16.6 = 2.1,p = 0.161,球面性の仮定が. 3.ROS の個人内,個人間のばらつき. 棄 却 さ れ た た め Greenhouse-Geisser の 修 正 法 を 用 い.  すべての速度条件において各被験者の円弧近似の寄与. た)。半径に関しては速度の主効果が認められ(F4/45 =. 率はかなり高い値を示した。特に V54,V77,V106 の 3. 6.2,p = 0.001) ,速度が極端に速いか遅い場合に半径が. 条件では個人内でばらつきが少なく,速度による影響も. 大きくなる 2 次関数的傾向を示した。. 少ない。しかし V33 条件と V133 条件では一部の被験者 で極端に低い寄与率を示し,個人内のばらつきが少ない. 考   察. 多くの被験者とばらつきが大きい少数の被験者が存在.  本研究では足関節を原点とする下. 座標系上での足圧. した。. 中心位置を求め,立脚期の足圧中心軌跡の近似曲線とそ.  寄与率の平均値の差には速度による違いは認められ. の寄与率を求めた。これらの結果について,用いる身体. ず,V54,V77,V106 の 3 条件ではばらつきにも差がな. 座標系による違い,近似方法による違い,ばらつきおよ. かった。しかし 5 速度条件間では,速度条件間にばらつ. び速度依存性を検討した。. きの差(個人差)があることが認められ,V33 条件と V133 条件でばらつきが大きかった。特に V133 条件で. 1.下  下. 座標系の変換様式による ROS の相違. は特異的な足圧中心軌跡を示した被験者の寄与率の低値. 座標系として採用した 2 つの座標系(3 次元下. 座標系,斜影下. がばらつき増大の原因と考えられた。極端に速い速度で. 座標)を用いて比較したところ座標系. は一部の被験者で寄与率の低下が生じるようであるが,. 間に違いは認められなかった。この 2 つの座標系の特徴. 全体的には一貫した傾向を示していた。このことは歩行. として,斜影下. 時の足部応答の速度に対する幅広い適応性を示すととも. 座標系は Y-Z 平面への斜影であるた. め,垂直方向と水平方向の動きのみを反映しているが,. に,ROS を用いた計測が歩行評価の基準となりえるこ. 3 次元下. とを示している。. 座標系は下肢の 3 次元運動を完全に反映して. いる。  今回は健常者の歩行であり,横断面上の運動が小さく. 4.ROS の速度依存性. 矢状面上の運動が主となったため,用いた座標系による.  今までの歩行研究の中で,様々なパラメータについ. 違いが生じなかったものと思われる。健常成人の歩行で. て,最適歩行速度が示され(エネルギー消費(Zarrugh,. は,計測の簡便な斜影下. 1974; Rose ら,1990; Holt, 1991). 座標系で十分であると考えら. れる。しかし,つま先開き角が大きい小児の歩行. 13). 脳卒中等の疾患で足部位置にばらつきが大きい場合. 15‒17). ,注意の需要(黒. 18). や. 19) 澤,1994) ,歩幅の変動性(Sekiya ら,1997) ,ステッ. 14). 20) プ時間の変動性(Maruyama ら,1992) )その速度は. には,2 つの座標系の隔たりが大きくなることが予想さ. 好みの速度付近にあった。今回の ROS の一貫性を寄与. れる。. 率を用いて調べた結果では,走行に近い極端に速い速度 で,一部の被験者の試行で低い寄与率を示すことがあっ. 2.曲線近似方法による ROS の違い. たが,全体的に見れば幅広い歩行速度で一貫性が示さ.  円弧近似と 3 次関数による近似を行い,2 つの近似方. れ,特定の速度における最適性は認められなかった。但. 法間の寄与率の差が示されたが,V133 条件以外では寄. し,足底半径は,普通からやや遅い速度範囲で最少を示. 与率の差は比較的小さかった。V133 条件では,近似円. し,それよりも速くても遅くても半径は増大した。この. の半径が比較的大きくなり,直線に近い曲線近似を示. 理由は明らかではないが,低速度での増大は,姿勢の安. し,3 次関数による近似の寄与率が高かったと考えられ. 定性の要求に対応している可能性があり,高速歩行にお.

(7) 下. 座標系を利用した歩行時の足圧中心の軌跡. いてはより大きいストライドを得るためには半径の増大 が効果的であると思われる。半径の変化はあるものの幅 広い速度にわたって平地歩行の立脚期が円弧状足底に よって逆さ振り子様に行われていることを示唆してい る。また円弧近似範囲(%)は,低速から普通速度まで の差は少ないが,高速歩行になると明らかに低下する傾 向を示した。高速歩行条件における一部の被験者の寄与 率低下と考え合わせると,円弧足底モデルの適用には速 度に制約があると考えられる。 結   論  先行研究の中で,正常歩行における身体座標系上(下 座標系上)の圧中心軌跡が円弧状になることが質的 データで示されてきた。本研究では同一被験者の多数試 行計測により,その形態の特徴と一貫性を定量的に示し た。その結果,高速歩行になると一部の被験者で圧中心 軌跡が円弧状から逸脱する傾向と,円弧形状を示す時間 割合が小さくなる傾向が示されたが,幅広い速度範囲に わたって一貫性の高い円弧形状が示された。これらの結 果は,Roll over-shapes を用いた歩行評価のためのひとつ の基準となる可能性がある。また幅広い歩行速度範囲で 円弧形状足底歩行モデルが成立することを示すが,高速 歩行においては,このモデルが高い精度では適用されな いことを示唆しており,義足装具デザインにとってはひ とつの限界を示すものと思われる。このような現象が生 じる理由を明らかにすることが課題として残されている。  本研究は昭和大学大学院保健医療研究科の平成 26 年 度修士論文の一部である。 文  献 1)Perry J: Gait Analysis. Slack. Thorofare, NJ, 1992, pp. 33‒47. 2)McGeer T: Passivedynamic walking. Int J Robot Res. 1990; 9: 62‒82. 3)Hansen AH, Childress DS, et al.: Prosthetic foot roll-over shapes with implications for alignment of trans-tibial prostheses. Prosthet Orthot Int. 2000; 24: 205‒215.. 451. 4)Hansen AH, Childress DS, et al.: Roll-over shapes of human locomotor system: effect of walking speed. Clin Biomech. 2004; 19: 407‒414. 5)Hansen AH, Childress DS: Effect of shoe heel height on biologic rollover characteristic during walking. J Rehabil Res Dev. 2004; 41: 547‒554. 6)Hansen AH, Meier MR: Roll-over shapes of the ankle-foot and knee-ankle-foot systems of able-bodied children. Clin Biomech. 2010; 25: 407‒414. 7)Hansen AH, Childress DS: Effect of adding weight to the torso on roll-over characteristic of walking. J Rehabil Res Dev. 2005; 42: 381‒390. 8)Adamczyk PG, Kuo AD: Redirection of velocity during the step-to-step transition of human walking. J Exp Biol. 2009; 212: 2668‒2678. 9)Adamczyk PG, Collins SH, et al.: The advantage of a rolling foot in human walking. J Exp Biol. 2006; 209: 3953‒ 3963. 10)松永勇紀,中村大介,他:足関節固定短下肢装具歩行にお けるエネルギー効率から見た最適足底形状.理学療法学. 2015; 42: 401‒407. 11)Sekiya N, Nagasaki H, et al.: The invariant relationship between step length and step rate during free walking. J Hum Mov Stud. 1996; 30: 241‒257. 12)窪田俊夫,大橋正洋:脳卒中歩行障害,歩行障害の診断・ 評価入門.医歯薬出版,東京,1997,pp. 28‒30. 13)Haywood K, Getchell N: Life Span Motor Development (3rd ed). Human Kinetics, 2001, p. 122. 14)関屋 曻:真に役立つ研究デザインと統計処理.三輪書 店,東京,2010,pp. 109‒153. 15)Zarrugh MY, Todd FN, et al.: Optimization of energy expenditure during level walking. Eur J Appl Physiol Occup Physiol. 1974; 33: 293‒306. 16)Rose J, Gamble JG, et al.: Energy expenditure index of walking for normal children and for children with cerebral palsy. Dev Med Child Neurol. 1990; 32: 333‒340. 17)Holt KG, Hamill J, et al.: Predicting the minimal energy costs of human walking. Med Sci Sports Exerc. 1991; 23: 491‒498. 18)黒澤和生:プローブ反応時間からみた移動能率に関する研 究.杏林医会誌.1994; 25(4): 243‒252. 19)Sekiya N, Nagasaki H, et al.: Optimal walking in terms of variability in step length. J Orthop Sports Phys Ther. 1997; 26: 266‒272. 20)Maruyama H, Nagasaki H: Temporal variability in the phase durations during treadmill walking. Hum Mov Sci. 1992; 11: 335‒348..

(8) 452. 理学療法学 第 43 巻第 6 号. 〈Abstract〉. Circular Trajectories of Center of Pressure Measured using a Leg Coordinate System in Human Walking. Tetsuo AKIYAMA, PT, MSc Yokohama Namiki Rehabilitation Hospital Noboru SEKIYA, PT, PhD, Daisuke NAKAMURA, PT, PhD, Arinori KAMONO, PT, MEng Showa University. Purpose: In recent studies, the potential utility of prosthesis/orthosis with a functional sole shape and gait evaluation through the sole shape has been suggested by the coordinate transformation of center of pressure (COP) trajectories from laboratory-based coordinate systems into body-based coordinate systems. However details of the functional plantar shape during normal walking are yet to be completely elucidated. The present study aimed to clarify intra- and inter-subject variation, differences due to conventions of the local coordinate system and applied methods of curve-fitting, and the speed dependency of sole shapes. Method: Subjects walked along an 8-m walkway at five different speeds. Center of foot pressure and three-dimensional kinematics were measured. The measured data were transformed into two types of body-based coordinate systems, and two types of curve-fitting were then performed. Results and conclusions: Intra- and inter-subject COP trajectory variation was extremely small. At extreme speeds, particularly at the fastest, the trajectory variationincreased in a few subjects. Coordinate transformation type was not found to affect trajectory consistency, whereas cubic curve approximation was slightly better than circular approximation. The relationship between major events during the walking cycle and COP trajectory was found to be speed dependent. Thus, the circular shape of COP trajectory obtained using the leg coordinate system indicates the potential utility of this shape for gait evaluation and orthosis/prosthesis with a fixed ankle joint, expect for use during fast walking. Key Words: Leg coordinate system, Circular trajectories of center of pressure, Functional and circular sole shape, Variation.

(9)

図 3 下腿軸座標系上の足圧中心軌跡 1 被験者(被験者 6)の各歩行速度における足圧中心軌跡(12 試行の重ね書き).実線は円弧による近似,破 線は 3 次曲線による近似を示す.直線の鎖線は円近似の中心位置(前後方向のみ)を示す. 図 4 各座標系を用いたときの曲線近似の寄与率 3 次元下腿座標系と斜影下腿座標系における各速度条件の寄与率の平均値と標準偏差 を示す.黒は円弧による近似,白は 3 次関数による近似を示している.

参照

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