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コントロール欲求の個人差がカスタマイズ商品に対する支払意思額に及ぼす影響

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DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.38.8

コントロール欲求の個人差がカスタマイズ商品に対する

支払意思額に及ぼす影響

1

井 関 紗 代

a, b,

*・北 神 慎 司

a a名古屋大学大学院情報学研究科 b日本学術振興会

Effect of individual differences in desire for control on willingness

to pay for a customizable product

Sayo Iseki

a, b,

* and Shinji Kitagami

a

aGraduate School of Informatics, Nagoya University bJapan Society for the Promotion of Science

People are innately motivated to exert control over their environment and to feel competent through gaining a sense of control. However, there are individual differences behind this motivation (desire for control). The present study investigated whether individual differences in desire for control could influence their willingness to pay for a customizable product as a result of increased perceived control over it. The results showed that individuals with a high desire for control were willing to pay more for a customizable product as compared to those with a lower desire for control. Furthermore, this effect was caused by increased perceived control over it. From the marketing perspec-tive, the present findings suggest that it may be an effective strategy to target customizable products towards con-sumers with a high desire for control.

Keywords: customizability, desire for control, perceived control, willingness to pay

序 論

私たちは,周りの環境と相互作用しながら,コント ロール欲求を満たそうと生得的に動機づけられている (Leotti, Iyenger, & Ochsner, 2010; White, 1959)。ここでい うコントロール欲求とは,自分に関連する人,物や状況 などを自分の思い通りにコントロールすることで,自分 の望むような結果を導きたいという欲求のことである (e.g., Leotti et al., 2010)。それでは,なぜ私たちは,その ような欲求を持っているのだろうか。その理由として, 環境との相互作用を通して,コントロール感(perceived control)を得ることで,自分のことを有能だと感じるこ とができるという点が挙げられる(White, 1959)。加え て,コントロールすること自体が,私たちにとって,報 酬になっているという点も挙げられる(Leotti et al., 2010)。報酬と関連する脳領域である線条体は,ただ報 酬をもらう場合よりも,コントロールして(選択して) 報酬をもらう場合の方が,同じ内容の報酬であっても, より賦活することが示されている (Tricomi, Delgado, & Fiez, 2004)。

そして,このコントロール欲求の強さには個人差があ るとされる。Burger & Cooper (1979)は,個人のコント ロール欲求の強さの程度を測定する尺度として,コント ロール欲求尺度(DFC: desire for control)を作成した。 これまでに,この尺度を用い,コントロール欲求の強さ と他の行動との関連について,多くの研究が行われてき たが(e.g., Burger, 1985; Burger & Schnerring, 1982),近年, 消費者行動にも影響を及ぼすことが明らかになってきて いる。例えば,Faraji-Rad, Melumad, & Johar (2017) では, コントロール欲求がもともと高い人は,低い人に比べ て,新商品を買いたがらないことが示されている。なぜ Copyright 2019. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. * Corresponding author. Department of Psychology,

Graduate School of Informatics, Nagoya University, B4-1(780) Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya, Aichi 464–8601, Japan. E-mail: iseki.sayo@e.mbox.nagoya-u.ac.jp

1 本研究はJSPS科研費JP18J13082の助成を受けた。 J-STAGE First published online: October 4, 2019

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なら,新商品に合わせて,自分の行動様式を変更する必 要があり,コントロールできない状況下に置かれるから である。しかし,新商品にコントロール感を促進するよ うなキャッチコピーが付帯していれば,そのような購買 意図の低下は生じなくなることも確認されている(Faraji-Rad et al., 2017)。具体的には,新商品のスムージーに対 し,「これであなたの味覚を満たしてください」という キャッチコピーが付いていると,行動の主体は自分にあ る,という認知が促進され,状況をコントロールできて いるという感覚が得られるのである。したがって,味も わからず,それに対する自分の態度や行動も予測しづら いために,コントロール感の減衰が生じやすい新商品の スムージーであっても,コントロール欲求の高い人の購 買意図は低下しないのである(Faraji-Rad et al., 2017)。 また,映画や書籍などには,電子書籍などのデジタル媒 体と本などの物理的媒体があるが,Atasoy & Morewedge (2017)では,コントロール欲求のもともと高い人は, 低い人に比べて,物理的媒体により高い所有感(psycho-logical ownership)を抱き,その結果,その商品に支払っ てもよい金額(支払意思額; willingness to pay: WTP)が 高くなることが明らかになっている。これは,物理的媒 体に対して,コントロール感が得られやすいことに起因 している(Atasoy & Morewedge, 2017)。また,ここでい う所有感とは,事物に対して抱く「自分の物である」と いう感覚のことである(Pierce, Kostova, & Dirks, 2003)。 実際には所有していない状況,すなわち,商品を購入す る前であっても所有感は生じるため,近年,マーケティ ングにおいて,注目されている購買の予測因子の一つで ある。 それでは,コントロール欲求の高い人において,コン トロール感が生じやすく,支払意思額が高くなるような 商品とは,どのようなものであろうか。本研究では,近 年,急速に市場を拡大しているカスタマイズ商品に着目 した。カスタマイズすることで,コントロール感が高ま ると考えられるが, Faraji-Rad et al. (2017)や Atasoy & Morewedge (2017)と同様に,コントロール欲求の個人 差がカスタマイズ商品に対するコントロール感や支払意 思額にも影響を及ぼすことが予測される。したがって, 本研究では,「コントロール欲求がもともと高い人は, カスタマイズ商品に対して支払意思額が高くなるのか」 という点に加え,「カスタマイズ商品に対するコント ロール感が高まった結果として,支払意思額が高まるの か」という点について検討することを目的とした。支払 意思額が高い人は,低い人に比べて,その商品を購入す る可能性も高いと想定されるため,支払意思額を購買の 予測因子として本研究では用いることとした。 予 備 実 験

序 論 に お い て,Faraji-Rad et al. (2017) や Atasoy & Morewedge (2017)を参考とし,カスタマイズ商品は, コントロール欲求の高い人において,コントロール感が 生じやすい商品であることを想定した。しかし,これま でにそのことを実証した研究はない。したがって,ま ず,予備実験では,「コントロール欲求がもともと高い 人は,カスタマイズ商品に対してコントロール感が促進 される」という点を示すことを第一の目的とする。加え て,本実験で使用する刺激を用い,第一の目的を達成す ることで,刺激が本研究に適したものであるという点を 示すことを第二の目的とする。 方 法 実験参加者と実験計画 実験は,商品の種類(カスタ マイズ条件,統制条件)の1要因参加者間計画とし,大 学生277名に対して,授業の一環として集団で実施され た。得られたデータのうち欠損値のあった2名のデータ を除外したため,18歳から28歳までの275名のデータ (男性 119名,女性156名; 平均年齢18.46歳,SD=0.97) が分析の対象となった。 刺激 腕時計のカラー画像であった。株式会社Knot (http://knot-designs.com)から使用の許諾を得た画像を 刺激として用いた。具体的には,カスタマイズ条件で は,腕時計の文字盤4種類とストラップ6種類の画像が 呈示された。統制条件では,それらのパーツを組み合わ せて作られた全 24種類の腕時計の画像が呈示された。 したがって,どちらの条件においても,存在する腕時計 のバリエーションは24種類であった。 質問項目 腕時計に対するコントロール感を評定する ために,Peck, Barger, & Webb (2013)の質問項目を和訳 したもの(井関・北神,2018)が用いられた。具体的に は,「①この腕時計を評価している間,実際にこの腕時 計を自分の思うように扱うことができるように感じた」 「②この腕時計について評価している間,まるでこの腕 時計を取り扱うことができているかのように感じた」と いう2項目であった。そのほかに,フィラー項目として デザインの良さ,魅力,親しみやすさ,所有感,購買意 図や支払意思額などの質問項目も含められたが,予備実 験の目的から逸脱するため,これらについては論じない こととする。また,コントロール欲求の個人差を測定す るために,Burger & Cooper (1979)のコントロール欲求 尺度を和訳した20項目(安藤,1994)が用いられた。

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手続き 実験参加者には,実験冊子が配布され,カス タマイズ条件(135名; 男性57名,女性78名; 平均年齢 18.41 歳,SD=0.79),または統制条件(140 名; 男性 62 名,女性 78名; 平均年齢18.51歳,SD=1.13)のどちら かにランダムに割り当てられた。カスタマイズ条件の実 験参加者は,腕時計を自分好みにカスタマイズするた め,文字盤から1種類,ストラップから1種類それぞれ 選択し,自分がカスタマイズした腕時計について評価す るよう求められた。一方,統制条件の実験参加者は,自 分好みの腕時計を1つ選択し,自分が選んだ腕時計につ いて評価するよう求められた。その際,どちらの条件の 実験参加者も,オンラインショッピングで買い物をして いるところを想像しながら,評価するよう教示された。 次に,腕時計に対するコントロール感(2項目)につい て,それぞれ「1: まったく当てはまらない」から「9: 非 常に当てはまる」という9件法で評価するよう求められ た。その後,コントール欲求尺度に7件法で回答するよ う求められた。実験参加者は,実験者の指示に従って, ページをめくるよう教示された。 なお,実験参加者には,実験開始の前に,データは研 究目的のためだけに使用され,個人情報は保護されるこ とや,回答は任意であることについて,口頭および質問 紙の表紙に記載することで説明し,これらの事項に同意 する場合のみ,実験に参加するよう依頼した。また,実 験者の所属する大学における研究倫理委員会の承認を得 たうえで,実験は実施された。 結果と考察 結果を分析するにあたり,コントロール感(2項目) の評定値を平均し,コントロール感得点(α=.83)を算 出した。また,コントロール欲求得点についても評定値 を平均して算出した(α=.73)。 コントロール感を目的変数とし,説明変数として,第 1ステップで商品の種類のダミー変数(カスタマイズ条 件=1,統制条件=0)とコントロール欲求得点を,第2 ステップでそれらの交互作用項を投入した階層的重回帰 分析(Aiken & West, 1991)を行った(各変数は中心化)。

その結果,第1ステップで,モデルは有意であり(F(2, 272)=5.86, p=.003, R2=.04), 商 品 の 種 類 の 主 効 果 (β=.14, t(272)=2.37, p=.02)とコントロール欲求の主 効果(β=.15, t(272)=2.49, p=.01)はそれぞれ有意で あった。さらに,第2ステップで,交互作用項を含んだ モデルが,有意傾向であったため(F(3, 271)=5.10, p =.002, R2=.05; ΔR2=.01, ΔF (1, 271)=3.47, p=.06; β=.11, t(271)=1.86, p=.06),単純傾斜検定を行った。その結 果,Figure 1に示す通り,カスタマイズ条件では,コン トロール欲求の有意な正の効果が認められたが(β=.25, t(271)=3.10, p=.002),統制条件では認められなかった (β=.03, t(271)=0.31, p=.76)。また,コントロール欲求 (平均+1SD)では,カスタマイズ条件の有意な正の効 果が認められたが(β=.25, t(271)=3.00, p=.003),コン トロール欲求(平均−1SD)では,認められなかった(β =.03, t(271)=0.36, p=.72)。したがって,コントロール 欲求の高い人は,低い人に比べて,カスタマイズ商品に 対してコントロール感が高まりやすいことが示された。 つまり,カスタマイズ商品は,コントロール欲求の高い 人において,コントロール感が生じやすい商品であると いう本研究の想定は,妥当であることが明らかになっ た。加えて,予備実験で用いた刺激は,本研究の目的で ある「コントロール欲求が高い人は,カスタマイズ商品 に対して支払意思額が高くなるのか」という点を検討す る上で,適していることも確認された。 本 実 験 予備実験では,「カスタマイズ商品は,コントロール 欲求の高い人において,コントロール感が生じやすい商 品である」という本研究の想定が妥当であるという点を 示すことを第一の目的としていた。したがって,ノイズ の混入をなるべく避けるため,実験者が直接教示をする 集団実験の手続きを採用した。しかし,コントロール欲 求という個人差特性を扱っている本研究を生態学的妥当 性の高いものとするためには,幅広い年齢層の幅広い属 性を持つ母集団から実験参加者を募り,実際の購買行動 Figure 1. The interaction of product type with desire

for control on perceived control. −1SD represents 1SD below the mean. +1SD represents 1SD above the mean.

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に近い手続きで実験を実施する必要がある。したがっ て,本実験では,一般サンプルを対象とし,オンライン ショッピングの現実的な状況に近づけるため,オンライ ン実験の手続きを採用することとする。 方 法 実験参加者と実験計画 実験は,商品の種類(カスタ マイズ条件,統制条件)の1要因参加者間計画とし,ク ラウドワークス(https://crowdworks.co.jp)にて募集され た20 歳から 75 歳までの一般サンプル 293 名(男性 141 名,女性 152名; 平均年齢39.05歳,SD=10.98)のデー タが分析対象となった。極端な単純反応を示すデータ (e.g., 同じ数字を選択し続ける)は存在せず,回答に不 備や欠損もなかったため,除外されたデータはなかっ た。 刺激 予備実験と同一の刺激を使用したが,オンライ ンで実施されたため,画像を拡大できたり,パーツや腕 時計をクリックして選択できたりするなど,よりオンラ インショッピングの現実的な状況に近づけるようにし た。 質問項目 支払意思額を測定するため,「この腕時計 を手に入れるために,あなたはいくら払いますか。」と いう質問に,金額(単位: 円)で回答してもらった。ま た,コントロール感や所有感が高まった結果として,支 払意思額が高まることが予測されたため(Atasoy & Morewedge, 2017; Faraji-Rad et al., 2017),コントロール感 (予 備 実 験 と 同 様) お よ び 所 有 感(Pierce, Kostova, &

Dirks, 2001; 井関・北神,2018)についても測定した。具 体的に,所有感の質問項目は,「①この腕時計を実際に 所有しているわけではないが,自分の物であるかのよう な感覚がある。」「②個人的に,この腕時計の持ち主であ るかのような感じがする。」「③まるで,この腕時計を所 有しているかのように感じる。」の3項目であった。そ の他にフィラー項目として,デザインの良さ,魅力,親 しみやすさなどの質問項目も含められた。 手続き 予備実験との相違点は,以下の 2点であっ た。 第 一 に, 実 験 冊 子 を 用 い る 代 わ り に,Qualtrics (http://www.qualtrics.com)を用い,オンライン上で実施 されたことであった。これに伴い,実験参加者が刺激を 見ることのできる時間の制約はなくなり,すべて自分の ペースで回答することが可能であった。実際のオンライ ンショッピングでは,そういった制約は存在しないた め,予備実験から手続きを変更した。第二に,実験参加 者には実験参加の謝礼として130円が支払われたことで あった。そのほかの手続きは予備実験と同様であり,実 験参加者は,カスタマイズ条件(149名; 男性73名,女 性 76名; 平均年齢39.77歳,SD=10.04),または統制条 件(144 名; 男性 68 名,女性 76 名; 平均年齢 38.31 歳, SD=11.85)のどちらかにランダムに割り当てられた。 なお,実験参加者には,実験開始の前に,データは研 究目的のためだけに使用され,個人が特定されることは ない点や,途中で回答を中止できる点について,文章で 説明し,これらの事項に同意する場合のみ,実験に参加 するよう依頼した。また,実験者の所属する大学におけ る研究倫理委員会の承認を得た上で実験は実施された。 結果と考察 結果を分析するにあたり,コントロール感(2項目) と所有感(3項目)の評定値を平均し,それぞれ,コン トロール感得点(α=.80)と所有感得点(α=.92)を算 出した。また,コントロール欲求得点について,評定値 を平均して算出した(α=.81)。 商品の種類とコントロール欲求の交互作用 支払意思 額を目的変数とし,説明変数として,商品の種類のダ ミー変数(カスタマイズ条件=1,統制条件=0)とコン トロール欲求得点,それらの交互作用項を投入したロバ スト回帰分析を行った(各変数は中心化)。外れ値の影 響を低減するため,ロバスト推定(M推定法)を採用し た。その結果,モデルは有意であった(F(3, 289)=3.29, p=.03, R2=.02)。商品の種類の主効果(β=−.03, t(289) =−0.57, p=.57)は有意ではなかったが,コントロール 欲求の主効果(β=.10, t(289)=2.29, p=.02)と交互作用 (β=.10, t(289)=2.18, p=.03)がそれぞれ有意であった。 交互作用が有意であったため,単純傾斜検定を行った。

Figure 2. The interaction of product type with desire for control on willingness to pay. −1SD represents 1SD below the mean. +1SD represents 1SD above the mean.

(5)

その結果,Figure 2に示す通り,カスタマイズ条件では, コントロール欲求の有意な正の効果が認められたが (β=.11, t(289)=2.94, p=.004),統制条件では認められ なかった(β=.003, t(289)=0.09, p=.93)。また,コント ロール欲求(平均−1SD)では,カスタマイズ条件の有 意な負の効果が認められたが(β=−.07, t(289)=−1.95, p=.05),コントロール欲求(平均+1SD)では認められ な か っ た(β=.04, t(289)=1.16, p=.25)。したがって, カスタマイズ商品に対して,コントロール欲求の高い人 は,低い人に比べて,支払意思額が高くなることが明ら かになった。しかし,コントロール欲求の高い人は,通 常商品(統制条件)に比べて,カスタマイズ商品(カス タマイズ条件)に対して,支払意思額が高くなることま では示されなかった。一方,コントロール欲求の低い人 は,カスタマイズ商品に比べて,通常商品に対して,支 払意思額が高くなることが確認されたため,コントロー ル欲求の個人差がカスタマイズ商品に対する支払意思額 に影響を及ぼすことが明らかになった。 コントロール感の促進が支払意思額に及ぼす影響 上 述の通り,カスタマイズ商品に対して,コントロール欲 求の高い人は,低い人に比べて,支払意思額が高くなる ことが明らかになった。次に,「カスタマイズ商品に対 するコントロール感が高まり,その結果として,支払意 思額も高くなるのか」,また,「その効果は,コントロー ル欲求が調整しているのか」という点について,検討を 行った。具体的には,支払意思額を目的変数とし,説明 変数として,コントロール欲求得点とコントロール感, それらの交互作用項を投入したロバスト回帰分析を,カ スタマイズ条件と統制条件のそれぞれで行った(各変数 は中心化)。その結果,カスタマイズ条件において,モ デルは有意であった(F(3, 145)=9.15, p<.001, R2=.08)。 コ ン ト ロ ー ル欲 求 の 主 効 果(β=.12, t(145)=2.11, p=.04),コントロール感の主効果(β=.18, t(145)=3.31, p=.001)および交互作用(β=.13, t(145)=2.40, p=.02) のすべてが有意であった。交互作用が有意であったた め,単純傾斜検定を行った。その結果,Figure 3に示す 通り,コントロール欲求(平均+1SD)では,コント ロール感の有意な正の効果が認められたが(β=.16, t(145)=4.19, p<.001),コントロール欲求(平均−1SD) では,認められなかった(β=.03, t(145)=0.61, p=.54)。 一方,統制条件でも,モデルは有意であった(F(3, 140) =3.99, p=.01, R2=.06)。しかし,Figure 4 に示す通り, コントロール感の主効果(β=.22, t(140)=3.20, p=.002) のみが有意であり,コントロール欲求の主効果(β= − .04, t(140)=−0.56, p=.58)および交互作用(β=.07, t(140)=0.97, p=.33)は有意ではなかった。これらのこ とから,カスタマイズ商品に対するコントロール感が高 まると支払意思額も高くなる,という効果はコントロー ル欲求が調整していることが明らかになった。すなわ ち,カスタマイズ商品では,コントロール欲求がもとも と高い人は,商品に対するコントロール感が促進されれ ばされるほど,支払意思額が高くなる一方で,コント ロール欲求がもともと低い人は,コントロール感が促進 されてもされなくても,支払意思額に差は生じないこと が明らかになった。加えて,通常商品では,コントロー ル感が促進されると,支払意思額が高くなるという効果 は示されたが,そこにもともとのコントロール欲求の違 いによる調整効果は確認されなかった。 また,一般サンプルを対象とした本実験では,大学生 を対象とした予備実験に比べ,平均年齢が高くなったた Figure 3. The interaction of desire for control with

per-ceived control on willingness to pay in the customiz-able condition. −1SD represents 1SD below the mean. +1SD represents 1SD above the mean.

Figure 4. No interaction of desire for control with per-ceived control on willingness to pay in the control con-dition. −1SD represents 1SD below the mean. +1SD represents 1SD above the mean.

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め,年齢に伴うコントロール感の減衰が生じ,それが結 果に影響を及ぼす可能性が示唆された(e.g., Lachman, 2006)。しかし,本実験において,年齢に伴うコント ロール感の減衰は確認されなかった(β=.002, t(291)= −0.74, p=.46)。 所有感の促進が支払意思額に及ぼす影響 コントロー ル感と同様に,カスタマイズ商品に対する所有感が高ま ると支払意思額も高くなる,という効果をコントロール 欲求が調整していることが予測されたが(Atasoy & Morewedge, 2017),カスタマイズ条件において,そのよ うな交互作用は確認されなかった(β=.09, t(145)=1.58, p=.12)。その要因として,以下のことが挙げられる。 カスタマイズするという行為は,自分の好みやセンスを 商品に反映させるプロセスであるため,自己と商品との つながりが強くなる行為であると考えられる。したがっ て,所有感を測定する際に,本研究で使用した所有感の 尺度(3項目; Pierce et al., 2001)に,物と自己とのつな がりの程度を測定する尺度(6項目; possession-self link; Ferraro, Escalas, & Bettman, 2011)を加えた9項目で構成 される,Walasek, Matthews, & Rakow (2015)の所有感尺 度を使用した方が,本研究の刺激において適切であり, 精度が高かった可能性がある。今後,刺激や文脈に応じ て,最も適した所有感尺度を使用するためには,まず, Walasek et al. (2015)の日本語版尺度の作成および信頼 性や妥当性の検討が求められる。 総 合 考 察 本研究では,コントロール欲求の高い人は,低い人に 比べ,カスタマイズ商品に対して,支払意思額が高くな ることが明らかになった。そして,この「コントロール 欲求の高い人は,カスタマイズ商品に対する支払意思額 が高くなる効果」は,商品に対するコントロール感が促 進されると生じることが示された。加えて,コントロー ル欲求の低い人は,カスタマイズ商品よりも,通常商品 に対して,支払意思額が高くなる一方で,コントロール 欲求の高い人は,そういった差がなくなることも示され た。これらのことから,コントロール欲求が高い人は, コントロール感を得ようと強く動機づけられているため (Atasoy & Morewedge, 2017),自分好みにカスタマイズす ることでコントロール感が促進されると,商品の価値も 高まるが,コントロール欲求の低い人は,そういった動 機づけが低いため,カスタマイズしても,商品の価値は 高まらず,選択肢の中から,自分好みの商品を選ぶ方 が,支払意思額が高くなるということが示唆される。 このように,コントロール欲求の高低により,カスタ マイズ商品への支払意思額が異なることを明らかにした 本研究は,カスタマイズ商品市場のセグメンテーション において,十分な示唆を与える。すなわち,マーケター に対し,カスタマイズ商品は,コントロール欲求の高い 消費者に訴求することが効果的であるという提案をする ともに,コントロール欲求の低い消費者のニーズは満た さないという指摘が可能となると考えられる。

しかし,Hornsey, Greenaway, Harris, & Bain (2018)で は,6大陸に渡る27か国において,どの国よりも日本人 のコントロール欲求が低いということが示されている。 したがって,本研究は,世界的に見た場合,コントロー ル欲求の低い母集団での結果とも言える。実際に, Hornsey et al. (2018)での日本人のコントロール欲求の 平均は 4.49 (SD=0.86)であり,本研究(本実験)での 平均はそれを下回る4.38 (SD=0.66)であった。本研究 では,コントロール欲求の高い人において,通常商品と カスタマイズ商品の間に支払意思額の差は確認されな かったが,コントロール欲求の高い人が集まる国々で は,通常商品よりもカスタマイズ商品に対して支払意思 額が高くなることも十分に考えられる。 加えて,本研究では,特性レベルにおけるコントロー ル欲求の影響を検討したが,コントロール感が得られな い状況に置かれるとコントロール欲求が高まる,といっ た状態レベルでのコントロール欲求もまた,消費者行動 に影響を及ぼすことが明らかになっている(e.g., Cu-tright & Samper, 2014)。したがって,一時的にコント ロール欲求が高まっている消費者も,カスタマイズ商品 に対する支払意思額が高まるのかについて,明らかにす ることも今後の課題と言える。

引用文献

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Figure 2. The interaction of product type with desire  for control on willingness to pay
Figure 4. No interaction of desire for control with per- per-ceived control on willingness to pay in the control  con-dition

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敷地と火山の 距離から,溶 岩流が発電所 に影響を及ぼ す可能性はな

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