• 検索結果がありません。

博物館のタカアシガニ : 外国の博物館・展示5例

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博物館のタカアシガニ : 外国の博物館・展示5例"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 物 館 の タ カ ア シ ガ ー

外国の博物館・展示 5 例

安 原 健 允

タ カ ア シ ガ ニ Macrocheira kaempferi Temminck 1836は,全節足動物中世界最大の甲殻類である . タカアシガニは,生きている 化石 として有名で, わが国の特産種として ,Japanese giant crab また は,giant spider crab と呼ばれている.

分布は,岩手県の沖合から,九州西岸までの太 平洋岸に生息し,瀬戸内海や日本海からの採取の 報告はない. 近年台湾の東方沖の海域から雄が1 個体漁獲された (H. Jung-F u et aL 1990)ことから, 分布域が広がったが,分布域は狭いとされている. しかし,化石として 記 録 されているタカアシガ ニ属は,北アメリカのワシントン 州の太平洋岸か

ら,Macrocheira tegrandiとして (Rathbun : 1926), またわが国の山形県銀山温泉からギンザンタカア シガニ Macrocheira ginzanensis 長野県からチヨタ カアシガニ M a crocheira yabeiが報告( 今泉: 1965) されているので,古い時代には ,北太平洋やわが 国の周辺に広く生息していたことがうかがえる . わが国では ,多くの水族館で生きたタカアシカ ニを観覧水槽に入れて飼育展示しているので, 一 般的に見ることが出来ることから,感覚的には特 に珍しいというカニではないと思われる. しかし, タカアシガニは,世界最大のカニとして欧米の博 物館では ,展示品の中で貴重種として乾燥標本, または,剥製標本が展示され参観者の目をヲ │いて いる. 現在駿河湾で漁獲されている個体の大きさは, 左 右 の 鉛脚 を広げると ,大きいものでも 3 . 5 m 位 であるが,ギネスブックによれば5 . 7 9 m の個体も 記され,か つては 4 m を越す個体を戸田港所属の

Takenobu Y AS UHARA: T he giant spider crab (takaashigani) is exhibited in the five fore叩1

m useam 底曳網漁船が漁獲している. タカアシガニをヨーロッパに広く紹介したのは 1690年( 元禄 3 年) から 1692年 まで長崎に滞在し, 1691年の参府旅行の際に東海道筋の蒲原あたりの 道ばたで漁師? が商 っていた魚介類の中から鉛脚 の 1 本を得て,これを日本誌に発表したケン ペ ル が始めである. このときは学名が Maja kae刑pferi

とされた . 後に, 1823年に来日し 1830年まで,い わゆる“シーボルト事件" によって国外追放にな るまでの

7

年余り,長崎に滞在し精力的に日本の 事情を調べ,滞在中に集めた多くの標本資料をオ ランダに持ち帰 ったシーボル トも, 参府旅行の際 に同じく東海道筋の由比あたりの魚屋 からタカア シガニを得ており,他に相模湾等で手に入れた十 数個体のタカアシガニをオランダへ送 っている. シーボルトは, 日本や近隣諸国から得た多くの標 本をまとめ, Fauna japonica r 日本動物記」を出 版 し た が , 甲 殻 類 を 整 理 分 類 し て ま と め た de Haan によ って,Macrocheira kaem p feri de H aan と された . し か し 最 近 命 名 者 名 が T em m i nck に改 められている. 筆者は,タカアシガニの研究調査を続けて幾つ かの報告 を行 ったが,昨年の夏 7 月14 日から 8 月 13日までの 1 ヶ月間,勤務校からヨーロ ッパに出 張する機会が与えられたので,6カ国11者11市を巡 り多くの博物館,水族館や動物園などを見学する ことが出来た. その中で,ウィーン自然、史博物館, ザルツブルグ自然科学博物館,モナコ海洋博物館, 大英自然史博物館で,タカアシガニが展示されて いたので,この展示の概要を報告したい. また, か つて訪れたメルボルン国立博物館でもタカアシ ガニが展示されていたのでその様子も付け加え た.

(2)

緒に入れて置かれていた (図 1 ) . そして,ケー スの中には以下のような独文と和文の角平説文( 図

l の中央下) が入 れ られていた.

図1 の左下の説明文 Japanische Riesenkrabbe K aem t feria ka'叫

Tf

e門 de H aa n

Bucht von Tokio Mannchen u. W eibchen 日本の大きな カニ

K aem p feria ka'mpferi de H aan

東京湾で獲れた 雄と雌

図1 中央下,人物写真の真ん中に続いて下部に以

下の説明文がある.

Diese Riesenkrabben aus der Bucht von Tokio sol. len ein Geschenk des Kaisers M eiji von ]apan an Kai ser Franz Josef gewesen sein

東 京 湾 で 取 れ た こ れ ら の 蟹 は , 明 治 天 皇 (1868-1912) よりオーストリア ・ハンガリー皇帝 のフランツ ・ヨーゼフ一世に贈呈された物だと言 い伝えられています. 図1 ウィーン N . M のタカアシガニの展示 D E R G R O S S T E K R E BS DIE JA P A N IS CH E R I E S E N K R A B B E Macrocheira初empferi 最も大きなカニ 日本の 巨大なカニ M acγvcheiγ也 知emtfeγt

G R OSSE: bi s 3m Span n weite; Panzerl ange bis 35cm

N A H R U N G : M uscheln, Krebse, W u r mer, Stachelhauter

V E R B R E I T UNG: Pazifikkuste der japanischen Inseln H onshu, Shikoku und K yusy u

大きさ :ス パン( 左右のハ サミ脚ま での) は3 m まで,甲羅の長さは35cm まで

食性: 二枚貝,カ ニ,ゴカイなどの虫 , ウニなど の林皮動物

分布 : 日本の本州,四国,九州、│の島々の太平洋岸

1m Sommer halt sie sich au f tiefen Sand. und Schlickgrunden bis in 300m Tiefe auf 1m W in . . ter hingegen dringt sie ins F lachwasser vor. Dabei verfangt sich die Krabbe oft in den Net. zen der Fischer und wird zu Speisezwecken genutzt. 夏季には ,} まが砂や泥士の水深3 0 0 m くらいの 深いとこ ろに生息している . 冬季になると,夏とは違い ,深いところから , 浅い ところにくるので,しばしば網で捕 らえられ, そして,料理に使われる.

(3)

図2 - 1 ザルツブルグ N . M のタカア シガニの展示 図2 - 2 同上標本の説明文 図4 大英N . M のタカア シガニの展示 図 3ー 1 モナコ O . Mのタカア シガニの展示 図3 - 2 向上標本の説明文 図 5 メルボルン M . Victoria のタカアシガニの展示 N. M ・自然史博物館の略 O . M 海洋博物館の略 M . : 博物館の略

(4)

前もヘイケガニという. とな っており , タカアシ ガニが人の肉を食うとも書かれて居る . いずれに M acrocheira K aem 俳riD.

H.

しでも ,世界的に有名な博物館の展示品の説明記 日本の大きなカニ 事がこのようになっていたことに驚きを禁じ得な 日本 か った. タカアシガニの解説 ・説明文は以下のものであ . る. Macrochei:γa K ae悦pfeγiD.H. 水深2 0 0 m ドフライン教授 寄贈 -1004 r ( ) 内の平家蟹は筆者による」 Crabe geant du ]apon 4 ) 大英 自然史博物館

environs de Sagam inada (m er du ]apon) T h e Natural History M u s e u m

大 英 自 然 史 博 物 館 で は , 入 り 口 正 面

l

階に N o m m e vulgairem ent H eike G ani , crabe de H eike. A R T H RO P OD A の展示部門があり,その中に甲 1

1

dem eure habituellem ent au fond de la mer entre 殻類の旋示コーナー C R U S T A C E A N S (図 4 右) des rochers et se nourrit de petits an im aux. Aime が設けられ,この中に最大のカニ,最小のカニ , surtout la chair hum aine et celle des poissons. 蟹の生態などが標本などで理解できるように展示 Son nom vulgaire provient de ce qu'il est trouvを されている . タカアシガニは,入り口正面中央に

en quantite dans la m er de D ann oura, au lieu ou 大きな四角いパネルに大型の雄 1 個体( 図 4 左) se livra un grand com bat naval entre les seigneurs カ" T he greatest Som e crustaceans are huge the de G uendji et de H eike, La flotte de ces derniers biggest living arthropods と記されて展示され, fut ensevelie en cet endroit. 標本の下には以下のような説明文がある.

Don de ]n ' Ch. G iraud N o.1551

Macrocheira Kaempferi D.H. Spider crabs can reach 3 metres, cla w to cla w, so

日本の大きなカニ they are very heavy. They can still get aboll t, be・

相模灘の周辺, (日本のj

毎)

cause water sllpports their weight. 一般にヘイケガニ( 平家蟹) と呼ばれている. このカニは ,通常は深い海の岩場に生息し,小さ な動物を食物 にしているが,特に ,人の肉や魚、を 好んで食べる. 俗にいわれているその名前 (平家蟹) の由来は, 源氏と平家の支配者の間で船団による大きな戦争 ( スパイダークラブは ,ハサ ミの先から先まで

3

メートルにもなる . だから , とても重い. このカ ニが動き回ることが出来るのは,水が体重を支え てくれるからである)

5

) メルボル ン国立博物館M u s e u m of V ictoria 筆者がオーストラリアのメルボルン国立博物館

(5)

を1994年 3 月 5 日に訪問した時,この博物館では 特別企画として化石生物展を行っていた. この展 示品の中に図(5 )の様に,大型の雄2個体と中型 の雄

1

個体,それに雌

1

個体の

4

個体が一つの展 示額に組んであった . ラ ベルには ,学名他が以下 る. 本報に記載したいずれの博物館でも,大型個 体の標本を展示しているので,その他の多くの博 物館でも当然、タカアシガニの標本を所有している ことは考えられる. 今後機会があれば,それらの 博物館を訪ねたいと思っている . もし,これ らの のように記されていた . 情報をお持ちの方がいらっしゃったら何分のご教 授をお願い出来れば幸 いである. なお ,本報中の Order Decapoda Sub Order Brachyura C I uss 展示解説文の邦文は拙訳によるものである. 誤訳 Crustacea M A C R O C H E I R A K A M P F E R I Y O K O H A M A, J A P AN J A P A N E S E G I A N T S P I D E R C R A B ただ 学 名 が M A C R O CH E I RA K A M P F E R I となっ ており ,種 小 名 が K A E M P F E R I では無く

E

が抜 けていたのは単なるスペルミスであろう. 以上の他,ライデンにある博物館のシーボルト コレクションにタ カアシガニの稚 ガニから成体ま での大きさの各個体が展示 されていることを熊本 大学の山口 隆男先生から 伺 っていたので,ぜひ見 学したいと思いライデンまで足を運んだが,この 時期は日蘭修好400年と 言 うことで,記念行事の 準備のため全館改修工事が行われていたため ,残 念ながら見学をすることが出来なか った. ライデ ンの博物館のシボルトコレクションやタカアシガ ニについては 山口( 1985) に詳しく説明されてい る. また, 他 にパリーの自然、史博物館にも立ち寄 ったが,ここも残念ながら閉館していて中を見る ことが出来なかった . ま たの機会に改めて訪れた いと思 っている. 以上,ヨーロッパの 4 館とメルボルン国立博物 館を 加 えて5つの博物館について ,それぞれの館 のタカアシガニの展示状況を記したが, Robert D. B arnes, Inverteb rate Zoology (1980) 727p. に ニューヨーク自然史博物館の 4 メートルを越すほ どのタカアシガニ の個体の 写真が掲載されてい も有ろうかとも思われる. その節は筆者の責任で ある . ご寛容をお願いしたい. わが国における博物館の展示状況については, 別の機会にゆずることにしたい. 本稿をまとめるに当たり,ヨーロッパへの出張 の機会を与えられた ,本学に対して謝意を表する. 文 献

De H aan Wilhelm 1839: Fauna Japonica IV. Crustacea Huang Jung.fu, H . P. Yu and M. T akeda 1990: Occurence

of the giant spider crub Macrocheira 初 仰ltferi

(T E肘IMINCK,1836) (Crustacea: Decapoda: Majidae) in Taiwan. Bull. Inst. 200., Academia Sinica. 29 (3), 207-212 今泉ブJ三,1965 : 日本中新世のタカ アシガニについて 甲殻類の研究 2 : 27-36. K A E M P F E R E N B E R B E R U T 1972・HISTORY O F JA P A N 日本語版 (1982) 改訂 ・増 補 日 本 誌 今 井 正 編 訳 霞ヶ関出版

R A T H B U N Mary J. (1926): The fossil stolk.eyed crus. tacea of the Pacific slope of North A merica. United States. National Museum Bull . Sumithonian lnstitution 138. 146-148

Robert D. Barnes 1980: In vertebrare zoology 727. Saun. ders College

斉藤信訳, 1983 : シーボルト 参府旅行中の日記178 思、文閣

IHI

仮.

シーボルト若 ・斉藤 信訳, 1967: 江戸参府紀行177, 350 東 洋 文 庫 平 凡 社

Y A M A G U C H I Takao 1987: von Siebold and Natural His. tory of Japan. 1 Kumamoto Univ

安原健允 ・山田 士郎 ・勝 呂 博 ・ 室 伏 誠 ・ 出 口 吉 昭 . F. 1. K A M E M O T O, 1985: 駿河湾のタカアシガニ について 日大生活学科研報 8. 45-80. 安原健允, 1988: タカアシガニとシーボルト 砧通信 17, 37-39. 日大商学部. ( 日本大学)

図 1 中央下,人物写真の真ん中に続いて下部に以 下の説明文がある.
図 2 ‑ 1 ザルツブルグ N . M のタカア シガニの展示 図 2 ‑ 2 同上標本の説明文 図 4 大英 N . M のタカア シガニの展示 図 3 ー 1 モナコ O

参照

関連したドキュメント

以上の結果について、キーワード全体の関連 を図に示したのが図8および図9である。図8

 The World Cultural Heritage "Maya Site of Copan" is located at the town of Copan Ruinas, Honduras, Central America. A digital museum was established here in 2015

[r]

[r]

(2001) Elemental distribution: Overview.. In, Encyclopedia of Ocean

図 21 のように 3 種類の立体異性体が存在する。まずジアステレオマー(幾何異 性体)である cis 体と trans 体があるが、上下の cis

熱が異品である場合(?)それの働きがあるから展体性にとっては遅充の破壊があることに基づいて妥当とさ  

鉄)、文久永宝四文銭(銅)、寛永通宝一文銭(銅・鉄)といった多様な銭貨、各藩の藩札が入 り乱れ、『明治貨政考要』にいう「宝貨錯乱」の状態にあった