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韓国社会科教育課程における経済領域の変遷とその特徴

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Academic year: 2021

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要旨

 本報告では韓国社会科教育課程における経済領域の変遷とその特徴を 4 次産業革命時代の経済教育の現代 的課題と関わって論じた。まず学校の経済教育の内容をどのように構成するかについて,社会的役割モデル (social role model)の経済教育的有用性,社会的役割モデルを中心とした学校の経済教育課程試案を取り上 げた。次にどのような方法で学校の経済教育をするかについて,学生の実際の経済生活を通じた経済教育の 実践モデルとして,社会的実践に基づいた経済教育(social action based economic education)と社会的経 済教育(social economic education)のための提案を行った。最終的に社会的役割モデルの検討が参加機能 と価値教育を核心とする新しい経済教育のための 1 つの代替となり得ることを示した。

キーワード:韓国社会科教育課程,経済領域,4 次産業革命時代,社会的役割モデル(social role model)

Ⅰ.はじめに

 1948 年大韓民国政府樹立後,韓国の小中学校の経 済教育課程は,7 回の正規改訂と 4 回の随時改訂を通 じて,今日に至っている。最近に行われた 2015 年の 改訂は,4 次産業革命など,未来社会への新たな展望 に基づいて,創意融合型人材養成に対する社会的ニー ズを盛り込んでいる。これらの人材像に基づく 2015 改訂教育課程の主要な方向としては,人文社会科学技 術に関する基礎素養涵養のための教育課程,6 つのコ ア・コンピテンシー(自己管理能力,知識情報処理能 力,創造的思考能力,審美的感性能力,コミュニケー ション能力,コミュニティ能力)中心の教育課程,そ してこの教育課程の適正化である。特に,経済教育と 関連しては,高校の統合科目の新設と,これを通じた 統合的な社会問題中心の経済教育が高校で実施される ことになった点が大きな特徴である。  この中で「統合社会」科目の新設の背景は大きく 2 つある。第一に,社会の変化に伴う教育に対する新し い要求を反映したことである。すなわち,グローバル 化の加速,情報社会での動き,新しい科学技術の登場 によって生まれた新たな社会的課題への効果的な対応 が必要になったが,このために「統合社会」科目が必 要なったのである。第二に,創意融合型人材養成のた めの統合教育のニーズを反映し,既存の分科学問の知 識に基づいた教科ベースの学習の限界が明らかになり, これを克服するために,「統合社会」科目の必要性が 提起されたのである。  テーマ中心の統合を指向する「統合社会」科目は, 4 つの観点の統合と 5 つのコア・コンピテンシーを強 調している。つまり,全てのトピックと関連した 4 つ の観点は,時間的視点,空間的視点,社会的観点,倫 理的観点が提示されており,5 大コア・コンピテン シーは批判的思考と創造性,問題解決力と意思決定力, 自尊心と対人関係能力,コミュニティ能力と統合的思 考力などを挙げている。これを具体化するための「統 合社会」の内容体系は 3 つの領域と領域別の 3 つの主 要な概念,合計 9 つの核心的な概念で構成されている。 人間とコミュニティという領域には,人権,市場,正 義などの核心的な概念があり,社会変化の共存領域に は,文化,持続可能な生活,グローバル化などが,人 生の理解と環境領域には,幸福,自然環境,生活空間 などの核心的な概念が含まれている。これらのうち経

基調講演

韓国社会科教育課程における

経済領域の変遷とその特徴

4 次産業革命時代の経済教育の現代的課題

The Journal of Economic Education No.38, September, 2019

Transition of economic domain in Korean social studies curriculum and its characteristics: Contemporary issues of economic education in the fourth industrial revolution

Kim, Kyungmo

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済教育と関連した核心的な概念には,市場と正義,持 続可能な生活とグローバル化などがある。そして,市 場という核心的な概念が人間とコミュニティの領域に 配当されている点も特記するに値する。

Ⅱ.学校の経済教育の内容をどのように構

成するか?

 過去 70 年間,社会科を通じた経済教育の内容と方 法に基づいて,4 つに概念化することができるが,経 済学教育としての経済教育,消極的な経済社会化教育 としての経済教育,そして積極的な経済社会化教育お よび参加と実践としての経済教育などがある。経済学 教育としての経済教育と消極的な経済社会化教育とし ての経済教育は,すでに現場に適用されているもので あり,積極的な経済社会化教育としての経済教育と参 加と実践としての経済教育は,部分的に現場で適用さ れているか,目指すべき経済教育の形態である。  これらの 4 つの形態の経済教育は,学校の経済教育 の主要な目的である経済的市民性の内容をそれぞれ経 済学の基本的な概念と研究方法に熟達した小さな経済 学者から,実際の経済生活に必要な実用的な経済知識 と経済の基本価値を内在化した市民へ,さらに個人的, 社会的レベルでぶつかる経済問題を批判的に理解して 判断することができる市民へ,最終的には実際の経済 生活の中でこれを実践する市民へ,その強調点を異に している。このような強調点は,市民教育としての学 校の経済教育の本質を考慮すると,多少緩和された経 済学の構造の中心の経済教育を前提に,互いに補完的 なものである。そしてこれらをまとめてくれる経済教 育課程の適切な再生は,経済学の概念体系ではなく, 学生の日常の経済生活の経験が反映される実用的な経 済問題でなければならない。それからこれを構成する ことができる教育課程の原理は,問題の中心の性格上, 統合的でありながら,これらを適切に連携することが できるものでなければならない。以下では,そのため の経済教育的提案として,経済教育内容構成原理とし ての社会的役割モデルを,方法として体験と参加中心 の経済教育を提案しようと思う。

1.社会的役割モデル(social role model)の経 済教育的有用性

 社会的役割モデルは 1982 年に既存の学問中心の教 育課程の代替として Superka & Hawke が提案したも のである。このモデルは学校の経済教育が行われる社 会科教育において,社会的参加を強調したモデルであ る。このための内容選定の基準として,人々が生涯を 通じて担当することになる 7 つの社会的役割を提示し たが,それは,市民(citizen),生産者(worker), 消費者(consumer),家族(family member),友人 (friend), 社 会 団 体 の メ ン バ ー(member of social

group)と自我(self)である。これが経済の内容選 定の基準となる場合,直接的に生産者と消費者は勿論, 他の社会的役割を関連付けて,学校の経済教育の内容 を新しく組織してみることができる可能性を持つと判 断される。そして,このような社会的役割が一般的な 環境の拡大法に内在した発達段階の原理に合致した場 合,学生の立場では,より適切で興味深いトピックの 選定が可能であるという長所もある。また,時代の変 化に伴う新たな市民性の概念を合意し,それに伴う社 会的役割を新たに導出することができれば,このモデ ルは経済教育課程の組織のための一つの基礎原理と成 り得るであろう。  7 種類の社会的役割は大きく 2 つの性格に分けるこ とができるようである。経済的側面から見ると,消費 者,生産者は,経済生活を内容的に規定する社会的役 割と見ることができ,自我,家族,友人,社会集団の メンバーと市民は,発達的役割(経済的経験の拡大傾 向を示すことができる)と見ることができる。した がって,社会的役割モデルを中心とした経済教育課程 の組織においては,これらの内容の役割と開発の役割 を 2 つの軸にして,それの共通的な教育課程の要素を 問題あるいは概念に選定してみるのがいいだろう。自 我から市民にまでの経験や環境の拡大を学生の発達段 階と関連させて,学年別もしくは学校級別に分けるこ とができるが,これらの配列の基準は実証的な研究が 裏付けされていない限り,非常に恣意的であるしかな い。 2.社会的役割モデルを中心とした学校の経済 教育課程試案  ここでは上で提案した学校の経済教育課程の設定と 関連した包括的な原則に基づいて,社会的役割モデル を中心とした学校の経済教育課程の試案を提示しよう と思う。前述したように,社会的役割モデルで提示さ れた 7 つの役割は経済生活に関連して,内容的役割と 発達的役割に区別することができると見做し,このよ うな考えをもとに消費者と生産者を内容的役割として, ここで他の 5 つの役割を環境の拡大や経験の拡大法の アイデアに融合させ,自我と社会的役割から次第に家 族,友人,社会組織のメンバーと市民の役割などを拡

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大し,対応させる方式をとってみた。特定の発達的役 割に対応する内容的役割の内容構成は関連する経済問 題を中心にして,ここにこれらの問題に関連付けるこ とができる基本的な経済概念と経済原理を一緒に含ま せた。  上記の提示した案が内容的役割として生産者と消費 者だけを考慮するという限界を克服するために,投資 家と経済政策担当者などを補完することができる。た だし内容的役割,発達的役割の具体的な内容について は,関連の専門家の間で議論が必要になると思われる。 そして,先にでも強調したように,社会的役割モデル に基づく学校の経済教育の内容体系を完成させるため には,個々の社会の平均的な成人が経験する社会的役 割,より具体的には経済的役割についての議論が必要 になると思われる。

Ⅲ.どのような方法で学校の経済教育をす

るか?

 Ⅱでは,我々は試案の形態として社会的役割モデル (social role model)に基づく学校の経済教育の内容を 組織してみた。ここではこれを具現することができる 方法で,学生の実際の経済生活を通じた経済教育の実 践モデルとして,社会的実践に基づいた経済教育(so-cial action based economic education)と社会的経済 教育(social economic education)のための提案をし ようと思う。  実践と体験中心の経済教育は経済の現実と問題点を その題材にして,一般的に意思決定プロセスを授業に 適用して見ることができ,きっかけを提供してくれる。 これと関連し,90 年代以降,いくつかの有用な授業 モデルが提示されている。つまり提起された経済問題 の性質に応じた論争的授業モデル(チョ・ヨンダル 発達 役割 内容 役割 自我 構成員家族 友達 社会集団構成員 □市民 消費者 □ 経済的必要と欲 求 □ 機会費用 ● 消費と欲求の充 足 ■ 全ての選択には 対価がある □ 所得と消費 □ 節約と貯蓄 ● 家族構成員の経 済的役割 ● 国産品愛用と国 家経済 ● 税金の話 1 ● 小遣いの話 ● 財産の運用 □ 我々が使用する 商品とサービス □ 貨幣の機能と流 通 □ 合理的判断と限 界概念(経済的選 択) □ 交換 □ 需要 ●税金の話 2 ● 消費と広告 □経済体制 □ 市場と価格 ● 社会階層と消費 ● 過消費問題 ● 私有財産権の行使 と制限 ■ 自由取引は全ての 人たちをこのように する。 ■ 場合によって,政 府が市場の成果を改 善することができる。 ● 消費者主権と消費 者保護法 ● 資源の不足と環境 問題 ● 消費生活と関連し た私たち社会の争点 (過度な教育熱,展示 消費) ● 消費者倫理 ● 予算の効率的信仰 ■ 一般的に市場が経 済活動を組織する良 い手段である。 ■ 通貨量が過度に増 えれば,物価は上昇 する。 生産者 ● 労働あるいは職 業と自己開発 ● 企業(生産者) の倫理 ● 両親の職業と将 来の希望 ● 家で自分ができ る役割 ● 社会階層と消費 □ 投資 ● アルバイトの話 ● 協同と競争 □ 供給 ● 労使問題 ● 公共財の意味と自 発的な公共財の供給 ■自由取引は全ての 人たちをこのように する。 ■場合によって,政 府が市場の成果を改 善することができる。 ■ 短期的にインフレ ーションと失業の間 にはトレードオフの 関係がある。 □ 生産資源 □ 市場と価格 ● 独寡占問題 ● 環境保護 ● 勤労基準法と人間 らしい生活の権利 ● 生産と関連した私 たちの社会の争点 ● 企業家の革新と倫 理(モラルハザード) ■ 一般的に市場が経 済活動を組織する良 い手段である。 ■ 一国の生産水準は その国の生産能力に 依存している。 表 1 社会的役割モデル中心の学校の経済教育課程試案 注)□ : 基本経済概念 ■ : 経済原理と一般化 ● : 経済問題 出所)筆者作成

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1992 年,チャ・ギョンス 1993)や高級思考力モデル (チャ・ギョンス 1993,キム・ギョンモ 1996),およ び統合テーマの場合には STS 的な授業方式(キム・ ギョンモ,1996),「合理的な利益追求モデル」(チョ・ ヨンダル 1991,1992,1997)などが非常に重要な研究 成果でもある。ところが,積極的な経済社会化を意図 する経済の授業は場合によっては,具体的な韓国社会 の問題を題材にするのに感受性が敏感な中学校の生徒 に,韓国社会の問題を誇張する可能性があり,極端な 場合,体制批判の可能性もあり,非常に実行するのが 難しいのも事実である。しかし,積極的社会化のため の経済教育は,単に韓国社会の良さ(「just world」) だけを浮き彫りにさせることで,学生に韓国社会の現 実と学校で学ぶ内容との間の乖離から来ている「認知 二重構造」を形成,これによる混乱を教育的に防止す ることができる非常に重要な意義を持つ。  要するに,中等学校の経済教育としての経済社会化 は消極的なものであれ,積極的なものであれ,学習の 重点を抽象的な経済学の構造から経済生活と現実の経 済問題の解決へ,そして学習活動の中心を教師から生 徒に移す契機を提供することができる。これにより学 校の経済教育の外縁を拡大して,経済的市民性の向上 という経済教育の目標との関連で適切性を向上させる ことができるという面でも非常に大きな意義を持つ。 実際に学校の経済教育が経済学と経済社会化の内容を バランス良く組織し,これを積極的な経済社会化が可 能な方法で教授学習活動が行われる場合,それだけで 素晴らしい進展を遂げたものと評価できる。しかし, 公教育での適用の過程で積極的な経済社会化のための 経済の授業は多くの制限点に直面することになるのも 厳然たる現実である。それでも学校の経済教育が経済 的市民性育成という教育目標をより有意に達成するた めには,積極的な経済社会化を意図する経済の授業が 可能な多くの状況で実行されなければならない。また, 授業の結果を行動化することができなければならず, このための適切な経験の機会が授業を介して提供され る必要がある。これと関連し再吟味する価値があるの が次に言及する市民実践戦略計画である  このため本研究では,ニューマンの市民実践戦略の 意義と前提,そして方法などを再吟味してみた。その 結果,市民実践戦略は実践の契機と方法を設定するに あたり,学生の年齢と学校級を考慮する必要があるだ ろう。具体的には小学生の場合には,1 次集団を主と した具体的な実践活動を,中学校の生徒の場合には, 研究調査活動やボランティア活動や社会機関での収拾 活動などを提示しているという点である。このような 示唆を経済領域に適用してみると,学校級別に可能な 市民実践戦略の内容と方法は,以下の通りである。つ まり,小学校レベルでは具体的な経済活動としての市 民実践戦略が考案される必要があり,そのためには学 校と家と地域の関連団体との間の協力の下,貯蓄活動 (地域金融機関と学校との連携の下に通帳の開設,貯 金,実績の発表,授賞など),および学生自治活動を 通じた消費節約の活動(消費節約の事例の発表,クラ スで物資節約計画の樹立),資源リサイクル,国産品 愛用方案の策定と実践などを考えることができる。  そして中学校レベルでは,学校内の自治活動を中心 とするが,外での特別活動の一環として地域経済懸案 問題の調査,地域間の経済関連争点の調査と分析,地 域の市民経済団体の活動への参加,学校内での倹約市 場,校内売店(school cafeteria)の自治運営,選挙公 約の中での経済関連公約の比較分析と討論活動,自治 活動の予算策定と執行,決算活動および監査などを考 えることができる。この中で最近の社会的経済活動 (social economic activities)の一つである協同組合 (co-op)的性格の学校売店活動に繋げて,これに関連 規則を制定し,運用に参加してみるのも良いだろう。

Ⅳ.結論

 韓国社会の変化に伴う教育的人間像の変化,そして このような変化に対する教育的対応として行われた 2015 年の改訂教育課程は,経済教育と関連しては, 統合社会科での統合的テーマによる経済教育と課題を 提示した。しかし,これと該当する中学校社会科目で 経済教育と高校の経済科目を通じた経済教育は概して 経済学教育的な性格の経済教育という点で,以前の教 育課程の時期と大きな差がない。むしろ中学校社会科 を通じた経済教育は高校の社会科の統合社会となり, ここで取り扱われたマクロと国際経済に関する内容が 追加されることで,さまざまな困難な点が現れている。  この論文では経済的市民性育成のための経済教育は, より核心的には韓国経済社会の基本的な価値を内在化 し,これを基に積極的な経済活動への参加を促すこと を前提としている。このような過程で,関連の基本の 経済概念の理解は手段的であり得る。経済的価値の内 在化はこれまでの一方的で,手順中心の形式的価値教 育の方法では限界がある。経済的価値は活動と関連し ており,このことは実際の経済的活動とそれに関連す る社会的役割を通じて表示されるという点を前提とす

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れば,新しい代案的な経済教育課程は経済活動と関連 した社会的役割を中心に再編成される必要がある。そ のためにこの論文では,既存の社会的役割モデルで提 示された社会的役割について経済的役割を中心に内容 的役割と発達的役割に分類した。そして,このような 枠組みの中で基本的な経済概念,経済原理と経済問題 を試案的な形で配置してみた。より体系的な内容の構 成のために,より多くの議論と補完作業が必要になる と考えられる。さらにこのように分類された内容の学 校級と学年別の配列という,また別の次元の実証調査 を通じた補完が必要である。それでも本研究は社会的 役割モデルの検討が参加機能と価値教育を核心とする 新しい経済教育のための 1 つの代替となり得ることを 示しており,この点でそれなりの意義を持っていると 判断される。

参照

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