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行動分析学からみた言語行動:認知・行動療法にいかす「ことば」の理論と実践

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 73

-行動分析学からみた言語行動:認知・行動療法にいかす「ことば」の理論と実践

○山本 淳一 慶應義塾大学文学部心理学専攻 1 .認知・行動療法における言語行動:認知・行動 療法の成果を上げる上で、「言語」を体系的に理解す ることは重要な意味をもつ。小学校 3 年生(話し手) が「おなかがいたい」と言う場面を想像してみよう。 腹痛の原因が身体にある場合(内的事象)で、その内 受容感覚を手がかりに「おなかいたい」と述べている 場面を考えてみる。その発言をした後に、親(聞き手) が「だいじょうぶ?」と心配してくれたり、友人(聞 き手)が「保健室行く?」と声をかけてくれる。それ をてがかり刺激にして「ううん。だいじょうぶ」と言 い(話し手)、行動がそこで完了する場合、叙述機能 をもつ言語行動と言える。一方、ことばをかけるだけ では不十分で、聞き手が病院や保健室に連れて行っ て、はじめて行動が完了する場合、要求機能をもつ言 語行動と言える。一方、そのような明確な身体状況 (内的事象)がなくても「おなかいたい」と発話する ことがある。たとえば、学校で楽しいことがなく、登 校しぶりが続いた場合に、「おなかいたい」と言うと、 学校(嫌悪刺激)に行かなくてもすんだ、あるいは家 でゲームで遊べたということが繰り返されると、その 言語行動が増えていく。重要な点は、多くの場合、本 人が「『おなかいたい』と言えば学校に行かなくても すむ」と考えているわけではなく、目的的に「意識し て」言っているのではないということである。お腹の わずかな痛みと「おなかいたい」と言う内言が時間的 に近接して存在することが繰り返される(刺激ペアリ ング)と、状況にまつわる諸々の刺激が、漠然とした お腹の痛みや「おなかいたい」という言語行動を生み 出すことになる。逆に、「行きたいと考えれば考える ほど、行くことができなくなる」状態もある。子ども は、「学校に行かなくちゃいけない」と考える(外言、 内言)。そのように考えながらも、学校からの回避や 家での強化によって、「家で行う行動」が増加する。 このことが繰り返されると、自らが発した刺激(刺激 機会)を母数とした「学校に行く行動」の出現確率が、 情報理論が予測する通り、日を追うごとに減少してい く。このような、言語と行動の不一致の循環が繰り返 された上、生活パタンの昼夜逆転や身体の変調を引き 起こすと、本当に「おなかがいたく」なることもある。 このような場合、言語行動を他の行動と同じ水準でと らえ、その機能を明確にし、言語行動と適応行動の個 体内での統合を図っていく。2.行動分析学における言 語行動:言語が、内的事象(仮説構成体)を推測する ための概念装置ならば、行動変容の結果を、後づけし、 解釈するために利用されるだけで、「いま、ここで」 起こっている現実をとらえ、支援に生かすことができ ない。言語は、常に環境と接触している行動であるか らこそ、認知・行動療法で重要な役割を果たす。言語 を行動であるとし、「いま、ここで」「個人が環境と接 触している」リアリティを直接的にとらえようとした のが、Skinner(1957)である。Skinner(1957)が、そ の著書「Verbal Behavior」の中で言っていることは、 「言語獲得がオペラント条件づけで説明できる」とい うことではない。そうではなく、言語行動は、他の行 動と同様、環境条件によって直接影響を受けていると いうことである。「Verbal Behavior」では、環境条件 の影響のあり方を、日常で観察される様々な言語の実 例をひとつひとつていねいに取り上げながら論述して いる。例示の際も、繰り返し「話し手」と「聞き手」 の双方から構成される「社会的相互作用」の図式が現 れる。言語行動の分析は、「話し手」と「聞き手」の 相互作用のあり方を分析することからはじまる。重要 な点は、以下である。1. 話し手の行動は、聞き手の 行動によって影響を受ける(制御されている)。2.  聞き手の行動は、話し手の行動によって影響を受ける (制御されている)。3. 聞き手と話し手の役割は常に 変わる。4. 自分が話し手でかつ自分が聞き手である 場合、「反応強度の強い言語反応トポラフィ(他者へ の社会的機能)」から「反応強度の弱い言語反応トポ ラフィ(自己への思考機能・行動調整機能)」に変わっ ていく。5. 語彙や言語どおしの結びつきは、言語刺 激どおしが「連合」や「関係形成」の過程を経ること で、増えていく。3.トピックス:( 1 )機能としての 言語行動:機能分析:Skinner(1957)の言語の機能類 型である、マンド(mand)、タクト(tact)、イントラ バーバル(intraverbal)、読み書き支援に活用できる 枠組みであるテクスチャル(textual)、ディクテー ション(dictation)などを概説する。発達支援(コ ミュニケーション)、学習支援(読み書き理解)にど のように生かしてきたかを解説する(山本,2009)。特 に、高次の言語機能である以下の 2 点を詳細に検討す る。1.「こころが晴々してきました」などの比喩表現 の機能を持つ「拡張タクト(extended tact)」。2. 「つ らい」という「タクト」と、「私は『つらい』と思っ て い る 」 と い う メ タ 言 語 行 動 で あ る「 オ ー ト ク リ ティック(autoclitic)」。( 2 )相互作用としての言 教育講演 4

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 74 -語 行 動: 相 互 引 き 込 み: 私 た ち(I s h i z u k a & Yamamoto,2016)が行った、発達臨床における「聞き 手」「話し手」「聞き手」「話し手」の役割交替を頻繁 に繰り返す「随伴模倣(contingent imitation)」の 効果を検証した研究を解説する。発話の自発が少ない 自閉スペクトラム症幼児について、子どもが「あー」 と言ったらすかさず「あー、だね」と拡張随伴模倣で 返す。大人の「あー、だね」に対応して、子どもが 「あー、だね」と模倣する。この連鎖を繰り返すこと で、音声反応のみならず、対人的相互作用が上昇した。 ( 3 )個人のシステムとしての言語行動:等価関係と 関係フレーム:刺激間関係が成立するためには、見本 合わせ法(同じものを選択する)、刺激ペアリング法 ( 2 つの刺激を時間的・空間的に接近させて提示する) がある。双方とも、「同じ」という関係を作る上で有 効 に 働 く。 こ の よ う な「 等 価 関 係(equivalence relation)」を概説する。ただし、これは「同じ」概 念の成立に限定されている。そのため、「比較(大き い/小さい)」「階層関係(含む/含まれる)」「因果関係 ( A ならば B / C ならば D )」「代名詞関係(私/あなた)」 などを示す項を、 2 つの刺激間に付け加えることで、 関係性が大きく広がる。このような「関係フレーム (relational frame)」を概説する(トールネケ,2013)。 ( 4 )環境との相互作用システムとしての言語行動: 基礎と臨床:言語による制御が、実際の行動から離れ て強くなると、多くの問題や症状が現れる。マインド フルネスのエキササイズで、腹がふくらんでいる(へ こんでいる)状態(内受容感覚)を手がかりにして、 「ふくらみ」(「ちぢみ」)と言う練習がある。これを呼 吸に合わせて繰り返す。「ふくらみ」と言ってから、 身体を動かすのではない。言語が先行すると、言語に 制御されてしまう。身体の変化が先にあって、それに 注意を向けながら、言語でタクトする。タクトは、 Skinner(1957)の造語で、環境のcontactから来てい る。日常機会を見つけて、自家撞着に陥っている「言 語と言語」との関係から、環境と常にcontactし続け る「環境と言語」へと行動随伴性を変えていくことが 有効なのである。4.公認心理師時代の言語行動論:心 理学は、「『有機的にまとまった個人』と『環境』」と の相互作用を明らかにする学問である。例えば、タク トは外的刺激や内受容刺激への反応であり、社会的強 化によって維持される。音声言語においては、単なる 運動反応としての発声が、社会的な機能性を獲得し、 さらに徐々にその強度を小さくしながら思考という機 能に変化していく。言語が環境との接触から切り離さ れた個人内サイクルとして動き始めると、問題や症状 として現れる。言語行動は、個人の有機的にまとまっ たシステムの中で機能を果たすのと同時に、環境との 相互作用を続ける上で重要な機能をもつ。このような 統合的なヴィジョンの中で、言語行動論が、心理学の 基 礎 と 応 用 を つ な ぐ 鍵 と な る と 考 え る。5.文 献: Ishizuka, Y., Yamamoto, J. (2016) Contingent imitation increases verbal interaction in children with autism spectrum disorders. Autism, 20,1111-1120. Skinner, B.F. (1956) Verbal behavior. Prentice-Hall, Englewood Cliffs, NJ トールネケ, N. (2013)関係フレーム理論を学ぶ:言 語行動理論・ACT入門. 星和書店.山本淳一(2009) 対称性の発達と支援:概念・実験・応用からの包括的 展望. 認知科学, 16, 122-137.

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