愛 知 県 地 震 概 報
平成 30 年(2018 年)10 月
○概況
10 月に愛知県内で震度1以上を観測した地震が4回発生しました。
① 7 日 10 時 14 分 愛知県東部の地震(M5.0、深さ 42km)により、愛知県内で震度3
を観測したほか、長野県根羽村、売木村で最大震度4を観測し、関東地方、中部地
方および近畿地方で震度3~1を観測しました。
② 13 日 13 時 44 分 伊勢湾の地震(M2.6、深さ 14km)により、常滑市、知多市、阿
久比町で震度1を観測しました。
③ 18 日 20 時 04 分 滋賀県北部の地震(M3.4、深さ 38km)により、名古屋市、一宮
市、江南市、小牧市、蟹江町、あま市で震度1を観測したほか、岐阜県揖斐川町
で最大震度2を観測し、岐阜県、福井県、滋賀県で震度1を観測しました。
④ 29 日 00 時 54 分 岐阜県美濃中西部の地震(M3.1、深さ 16km)により、一宮市で震
度2を観測したほか、愛知県および岐阜県で震度1を観測しました。
また、
・3日、5日~17 日、25~26 日に長野県南部、愛知県(領域a)
、9月 18 日~10 月1
日に伊勢湾、三重県(領域b)を震央とする深部低周波地震(微動)を観測しまし
た。
○震央分布図
この資料は速報であり、後日の調査で修正することがあります。 領域a (注)Mはマグニチュード(地震の規模)の略です。 ※深部低周波地震の震央は震源決定精度が高くない ため、地震が発生した領域を破線で表示しています。 領域b ① ② ③ ④○震度1以上を観測した地震の表(愛知県)
震源時(年月日時分) 緯度 経度 深さ マグニチュード 震央地名 各地の震度 ① 2018 年 10 月 07 日 10 時 14 分 35 ゚ 02.2' N 137 ゚ 34.4' E 42km M5.0 愛知県東部 震度 3 : 豊橋市向山,新城市矢部,新城市作手高里松風呂*,新城市東入船*,豊根村下黒川* 田原市赤羽根町*,名古屋北区萩野通*,名古屋中村区大宮町*,名古屋昭和区阿由知通* 名古屋瑞穂区塩入町*,名古屋熱田区一番*,名古屋南区鳴尾*,岡崎市樫山町* 春日井市鳥居松町*,豊田市小坂本町,豊田市大洞町,豊田市小坂町*,豊田市長興寺* 西尾市吉良町*,知立市弘法*,高浜市稗田町*,東郷町春木*,扶桑町高雄* 愛知みよし市三好町* 震度 2 : 豊橋市東松山町*,豊川市諏訪*,豊川市一宮町*,豊川市赤坂町*,豊川市御津町* 豊川市小坂井町*,蒲郡市御幸町*,蒲郡市水竹町*,新城市乗本,新城市長篠*,設楽町津具* 設楽町田口*,東栄町本郷*,田原市石神町,田原市福江町,田原市田原町* 名古屋千種区日和町,名古屋東区筒井*,名古屋西区八筋町*,名古屋中区市役所* 名古屋中区県庁*,名古屋中川区東春田*名古屋港区金城ふ頭*,名古屋港区春田野* 名古屋港区善進本町*,名古屋守山区下志段味*,名古屋守山区西新*,名古屋緑区有松町* 名古屋名東区名東本町*,名古屋天白区島田*,岡崎市若宮町,一宮市千秋,一宮市西五城* 一宮市木曽川町*,一宮市緑*,瀬戸市苗場町*,半田市東洋町*,碧南市松本町* 刈谷市寿町*,豊田市藤岡飯野町*,豊田市足助町*,豊田市稲武町*,豊田市小原町* 豊田市大沼町*,豊田市小渡町*,豊田市駒場町*,豊田市保見町*,安城市和泉町* 安城市横山町*,西尾市一色町,西尾市矢曽根町*,西尾市西幡豆町*,犬山市五郎丸* 常滑市新開町,愛知江南市赤童子町*,小牧市安田町*,稲沢市稲府町*,稲沢市祖父江町* 稲沢市平和町*,東海市加木屋町*,大府市中央町*,知多市緑町*,尾張旭市東大道町* 岩倉市川井町*,豊明市沓掛町*,日進市蟹甲町*,大口町下小口*,大治町馬島* 蟹江町蟹江本町*,飛島村竹之郷*,阿久比町卯坂*,東浦町緒川*,南知多町豊浜 愛知美浜町河和*,武豊町長尾山*,幸田町菱池*,愛西市稲葉町,愛西市石田町* 愛西市諏訪町*,清須市西枇杷島町花咲*,清須市須ケ口*,清須市清洲*,清須市春日振形* 北名古屋市西之保*,弥富市神戸*,弥富市前ヶ須町*,あま市七宝町*,あま市木田* あま市甚目寺*,長久手市岩作城の内* 震度 1 : 田原市古田町*,愛知津島市埋田町*,豊田市坂上町*,豊田市畝部西町*,豊田市百々町* 中部国際空港 ② 2018 年 10 月 13 日 13 時 44 分 34 ゚ 53.1' N 136 ゚ 49.0' E 14km M2.6 伊勢湾 震度 1 : 常滑市新開町,知多市緑町*,阿久比町卯坂* ③ 2018 年 10 月 18 日 20 時 04 分 35 ゚ 27.2' N 136 ゚ 17.6' E 38km M3.4 滋賀県北部 震度 1 : 名古屋中川区東春田*,名古屋港区春田野*,一宮市千秋,一宮市西五城*, 一宮市木曽川町* 一宮市緑*,愛知江南市赤童子町*,小牧市安田町*,蟹江町蟹江本町*,あま市七宝町* ④ 2018 年 10 月 29 日 00 時 54 分 35 ゚ 22.8' N 136 ゚ 49.9' E 16km M3.1 岐阜県美濃中西部 震度 2 : 一宮市緑* 震度 1 : 一宮市千秋,一宮市西五城*,一宮市木曽川町*,犬山市五郎丸*,愛知江南市赤童子町* 左の断面図は、震央分布図中の斜めの四角形 内の震源を、A-B に沿って置いたスクリー ンに投影する形でプロットしたものです。深 さ 25km 程度までの浅い震源の分布域は、陸 側プレートの地殻内の活動によるものです。 A B (注 *印の地点は、地方公共団体または国立研究開発法人防災科学技術研究所の震度観測点です。)○県内で震度1以上を観測した地震
(1)7日 10 時 14 分 愛知県東部の地震(M5.0、深さ 42km 震度分布図① )
この地震により、愛知県内で震度3を観測したほか、長野県根羽村、売木村で最大震度4を観
測し、関東地方、中部地方および近畿地方で震度3~1を観測しました。
この地震の発震機構は、東北東-西南西方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、フィリピン海プ
レート内部で発生しました。
1997 年 10 月以降の活動をみると、今回の地震の震源付近(領域b)は、定常的に地震活動の
見られる領域ですが、M5.0 以上の地震が発生したのは初めてでした。
震度分布図① 静岡県 長野県 山梨県 神奈川県 (下半球等積投影) P 波初動による発震機構 愛知県東部の地震 M5.0 愛知県 三重県 静岡県 長野県 岐阜県 ×:震央 ×:震央 震央分布図 (1997 年 10 月1日~2018 年 10 月 31 日、 深さ 0~60km、M≧1.0) 2018 年 10 月 7 日以降の地震を赤く表示 領域a 今回の地震 拡大図1923 年1月以降の活動をみると、今回の地震の震央周辺(領域c)では、1997 年3月 16 日に
M5.9 の地震(最大震度5強)が発生しました。この地震により、負傷者4人、住家一部破損2
棟などの被害が生じました(被害は「日本被害地震総覧」による)
。
領域a内の断面図(A-B投影) 領域b内の地震活動経過図及び回数積算図 領域b 震央分布図 (1923 年1月1日~2018 年 10 月 31 日、深さ 30~60km、M≧4.0) 領域c内の地震活動経過図 領域c B A 今回の地震(2)13 日 13 時 44 分 伊勢湾の地震(M2.6、深さ 14km 震度分布図② )
この地震により、常滑市新開町、知多市緑町、阿久比町卯坂で震度1を観測しました。
この地震は地殻内で発生しました。
この領域では、2004 年4月1日に深さ 12km、M3.8 の地震が発生し、常滑市で最大震度3を観
測しました。
また、この領域では 2011 年頃(地震活動経過図・回数積算図中の青線)以降、全体的に地震
活動がやや低調となる傾向が継続しています。
(回数積算図の傾きが鈍化している。
)
震度分布図② 領域a内の地震活動経過図及び回数積算図 震央分布図 (1997 年 10 月1日~2018 年 10 月 31 日、深さ 0~30km、M≧0.5) 2018 年 10 月 13 日以降の地震を赤く表示 図中の線は地震調査研究推進本部の長期評価による活断層を示す。 今回の地震 領域a(3)18 日 20 時 04 分 滋賀県北部 の地震(M3.4、深さ 38km 震度分布図③ )
この地震により、愛知県名古屋市、一宮市、江南市、小牧市、蟹江町、あま市で震度1を観測
したほか、岐阜県揖斐川町で最大震度2を観測し、岐阜県、福井県、滋賀県で震度1を観測し
ました。
この地震の発震機構は、東北東ー西南西方向に張力軸を持つ正断層型で、フィリピン海プレー
ト内部で発生しました。
愛知県
岐阜県
福井県
滋賀県
三重県
震度分布図③ (下半球等積投影) P 波初動による発震機構 滋賀県北部の地震 M3.4 震央分布図 (1997 年 10 月1日~2018 年 10 月 31 日、深さ 0~90km、M≧2.0) 2018 年 10 月 18 日以降の地震を赤く表示 領域a 今回の地震(4)29 日 00 時 54 分 岐阜県美濃中西部 の地震(M3.1、深さ 16km 震度分布図④)
この地震により、一宮市で最大震度2を観測したほか、愛知県、岐阜県で震度1を観測しまし
た。
この地震の発震機構は、東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生しました。
この地震の震央付近では、2005 年1月9日に M4.7 の地震が発生し、愛知県西部、岐阜県美濃
東部、岐阜県美濃中西部で最大震度4を観測しました。
領域a内の断面図 領域b内の地震活動経過図 領域b 震度分布図④ (下半球等積投影) P 波初動による発震機構 岐阜県美濃中西部の地震 M3.1 今回の地震 B A※本資料は、国立研究開発法人防災科学技術研究所、北海道大学、弘前大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、高知大 学、九州大学、鹿児島大学、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国土地理院、国立研究開発法人海洋研究開発機構、公益財団 法人地震予知総合研究振興会、青森県、東京都、静岡県及び神奈川県温泉地学研究所、気象庁のデータを用いて作成しています。 また、2016 年熊本地震合同観測グループのオンライン臨時観測点(河原、熊野座)、米国大学間地震学研究連合(IRIS) の観測点 (台北、玉峰、寧安橋、玉里、台東)のデータを用いて作成しています。 ※本資料中で使用している地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の『数値地図 25000(行政界・海岸線)』 を使用している(承認番号:平 29 情使、第 798 号)。 ※地震関係の資料・情報は、名古屋地方気象台のホームページ『https://www.jma-net.go.jp/nagoya/index.html』からも随時ご覧 になれますので、あわせてご利用下さい。 ※この資料に関する問い合わせ先 名古屋地方気象台地震担当 電話 052-751-5124(平日 9-17 時)
○愛知県内における最近1年間の月別・震度別地震回数表
期間 震度1 震度2 震度3 震度4 震度 5弱 震度 5強 震度 6弱 震度 6強 震度7 合計 2017/11 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2017/12 4 0 0 0 0 0 0 0 0 4 2018/01 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2018/02 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2018/03 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2018/04 1 1 1 1 0 0 0 0 0 4 2018/05 1 1 0 0 0 0 0 0 0 2 2018/06 3 2 1 1 0 0 0 0 0 7 2018/07 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2018/08 2 0 1 0 0 0 0 0 0 3 2018/09 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2018/10 2 1 1 0 0 0 0 0 0 4 合計 19 5 4 2 0 0 0 0 0 30 領域a内の地震活動経過図 領域a 震央分布図 (1997 年 10 月1日~2018 年 10 月 31 日、深さ 0~30km、M2.0 以上) 図中の線は地震調査研究推進本部の長期評価による活断層を示す。 今回の地震○地震のタイプ(断層の動き方)と発震機構解
地震は断層の動き方によって、大きく三つの型( )に分けられます。 (横ずれを二つに分ければ四つ) 逆断層 断層面を境にして、上盤が下盤に対して、のし上がる。 右図の例では、この断層は水平方向に圧力、垂直方 向に張力が加わることによって生じる。 正断層 断層面を境にして、上盤(上側の岩盤)が下盤(下側の 岩盤)に対して、ずり下がる。 右図の例では、この断層は水平方向に張力、垂直方 向に圧力が加わることによって生じる。 横ずれ断層 断層面を境にして、水平方向にずれる。 「右横ずれ断層」=断層に向かって相手側のブロック が右に動いた場合 「左横ずれ断層」=断層に向かって相手側のブロック が左に動いた場合 右図の例では、この断層は水平方向に圧力と張力が 加わることによって生じる。 それぞれのタイプにおける、発震機構解の形と働く力 の向きの典型的な例を以下に示します。参考
※発震機構解からは「異なる2つの断層面」を求めることはで きますが、どちらが本当の断層面か知ることはできません。 どちらが断層面なのかを知るためには、余震の分布や地殻変 動等の調査が必要となります。 平成23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震で甚大な津波被害が発生したことを踏まえ、同年 6 月に「津波対策の推進に関する法律」が制定され、その中で国民の間に広く津波対策について の理解と関心を深めるようにするため、11 月 5 日を「津波防災の日」と定めました。 また、同様の趣旨により、2015 年 12 月に国連で「世界津波の日」にも制定されています。 日付の由来は、嘉永7 年(1854 年)11 月 5 日の安政南海地震(M8.4)で和歌山県を津波が襲 った際に、稲むらに火を付けて、暗闇の中で逃げ遅れた人たちを高台に避難させて命を救ったと いう実話にちなんでいます。この実話を元にして作られた物語が「稲むらの火」です。11 月 5 日 津波防災の日
〇用語の解説
「長期的ゆっくりすべり」、
「短期的ゆっくりすべり」、
「深部低周波地震(微動)
」
図の長期的ゆっくりすべりの発生領域は、Kobayashi(2014)*を参考に作成「長期的ゆっくりすべり」は、沈み込むフィリピン海プレートと陸のプレートとの境界のうち、プレート境界の固
着が強いと考えられている領域より深い場所(深さ 20~30 km)が数ヶ月から数年間かけて継続的にゆっ
くりとすべる現象で、数年から十年程度の間隔で繰り返し発生していると考えられています。 これによっ
て生じる地殻変動は、周辺の GNSS 等で観測されます。南海トラフ周辺では、東海地域、紀伊水道、豊後
水道などで観測されています。
「短期的ゆっくりすべり」は、「長期的ゆっくりすべり」が発生する領域より深い場所(深さ約 30~40 km)のプ
レート境界が、数日~1 週間程度かけてゆっくりとすべる現象で、数ヶ月から 1 年程度の間隔で繰り返し発
生しています。これによって生じる地殻変動が、東海地域、紀伊半島、四国地方に設置され たひずみ計
等によって観測されます。また、「短期的ゆっくりすべり」の発生とほぼ同じ時期に、そのすべり領域とほぼ
同じ場所を震央とする「深部低周波地震(微動)」と呼ばれる、通常の地震より長周期の波が卓越する地
震が観測され(P波やS波が明瞭でなく震動が継続するものは「微動」と呼ばれる)、これは「短期的ゆっく
りすべり」に密接に関連する現象とみられています。なお、同じ「短期的ゆっくりすべり」を反映した現象で
も、地殻変動と地震(微動)では観測・解析の手法や検知能力が違うため、観測される期間は完全には一
致しない場合があります。
これらの現象は、これまでの経験から、いず
れも南海トラフ沿いの大規模地震に直ちに結
び付く現象ではないと考えられている。しかし、
プレート境界の固着状況の変化を示す現象と
考えられることから、気象庁では、関係機関の
協力も得ながら注意深く監視している。
図の長期的ゆっくりすべりの発生領域は、Kobayashi(2014)*を参考に作成 想定震源域、深部低周波地震(微動)、長期的ゆっくりすべり、短期的ゆっくりすべりの発生領域*Kobayashi, A. (2014): A long-term slow slip event from 1996 to 1997 in the Kii Channel, Japan, Earth, Planets and Space, 66:9, doi:10.1186/1880-5981-66-9.
参考
短期的ゆっくりすべりは、深 部低周波地震(微動)とほぼ 同じ場所で発生している。