消費税増税後の本県経済の現状と地域間の景気回復の格差について
金融緩和や財政政策、規制緩和を柱とした成長戦略など、いわゆるアベノミクスが実施さ れる中、平成 26 年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた。 増税直後、民間シンクタンク等からは増税による落ち込みはすぐ回復するとの予測が大勢 を占めたが、7-9 月期の実質経済成長率は前期比でマイナスとなり、直近の 10-12 月期で3 四半期ぶりにプラス成長になったものの、力強さに欠ける状況にある。また、地方と都市部 との回復速度に温度差があるとも言われている。 そこで、個人消費を中心に消費税増税後の本県や全国の足取りを確認するとともに、隣接 県や東京都等(以下、「近隣県等」という)との景気回復の格差について考察する。 < ポイント > 1 本県の景気は平成 26 年4月に急落。内需の落ち込みが要因 26 年4月に景気動向指数は上昇基調から一転し、急落。大型小売店販売などが主因にな っていることから、消費税増税が内需に与えた影響は、大きかったことがうかがえる。 2 消費税増税により物価は大幅上昇。新潟市の消費支出は前年減が続く 消費税増税により新潟市消費者物価指数は大幅に上昇したが、足元の上昇ペースは鈍 化。消費税増税以降、新潟市の消費支出は前年減が続いている。全国では、世帯主の年収 が 200~300 万円未満の世帯で他の階級に比べて節約志向が強く表れている。 3 消費税増税以降、本県の景況感及び経常利益は、非製造業が全国より弱い 短観業況判断DIと経常利益は、製造業より非製造業の方が悪化しており、全国との回 復速度にも差がみられる。非製造業は、増税や円安による原材料高なども一因とみられる。 4 名目賃金は、消費税増税以降も増加するも、実質賃金は弱い動きが続く 消費税増税以降、本県の名目賃金は増加している。実質賃金は、26 年第Ⅳ四半期にプラ スに転じたものの、前年の大幅減との比較などもあり、総じて弱い動きとなっている。 5 住宅着工は都市部より地方の回復が鈍い傾向。本県は消費関連指標で前年減続く 新設住宅着工戸数は都市部より地方の方が増税後の落ち込みが大きく、回復が鈍い。本 県は消費関連指標を中心に前年減が続くなど、全国より回復への足取りが重く、こうした 動きを反映する形で短観業況判断DI、短観経常利益の非製造業で温度差が生じている。 1 景気全般の動き (平成 26 年4月の消費税増税後、県内景気は大幅に減退) 景気に敏感な生産や消費、雇用などの幅広い分野の指標を統合し、景気の動きを量的変化 で表した景気動向指数(一致指数)をみると、本県、全国ともに平成 26 年3月までの上昇基 調から一転して、消費税増税が実施された4月以降、大幅に下降している。(図1-1) 景気動向指数の前月差の項目別寄与度をみると、4月に前月差で大幅に下降した要因は生 産関連や大型小売店販売額が主因となっている。内需の代表的な指標である大型小売店販売 額が下降の主因になっていることから、消費税増税が内需に与えた影響は、大きかったこと がうかがえる(図1-2)。以下、消費増税後の内需の動きを把握するため、特徴的な動き2 -をしている個人消費や企業に関する指標を取り上げ、それぞれの動向を概観する。 2 消費関連の動き (1)消費者物価指数 (消費増税により大幅上昇するも、年央以降、上昇ペースは鈍化) 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)(以下、「コア指数」という。)の前年同期比をみると、 新潟市は消費税増税後の平成 26 年第Ⅱ四半期に大幅に上昇しており、全国を若干上回って推移 している。日本銀行によると、全国コア指数の消費税増税による押し上げ分は、完全に転嫁され た5月以降、前年同月比で2%程度と試算されている。(図2-1) 新潟市コア指数の前年同期比の費目別寄与度をみると、26 年第Ⅰ四半期はエネルギー費目の上 昇が全体を押し上げたが、第Ⅱ四半期はこれに加え、増税や円高是正などもあって生鮮食品を除 く食料や教養娯楽なども押し上げに働いた。第Ⅳ四半期は、これまで物価上昇に寄与していたエ ネルギー費目が原油安などにより縮小し、全体の物価上昇ペースは鈍化している。(表2-1) (2)家計消費支出 (増税後、本県は概ね全国を下回って推移。全国では 60 歳以上の世帯が堅調に消費) 消費支出(実質)の前年同期比をみると、新潟市は平成 26 年第Ⅰ四半期に増税前の駆け込み 需要などにより大幅に増加したが、第Ⅱ四半期と第Ⅳ四半期は全国を下回っている。 167.8 152.2 114.6 111.1 100 104 108 112 116 120 124 110 120 130 140 150 160 170 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 24 25 26 図1-1 景気動向指数(一致指数)の推移 注:本県と全国の採用指標が異なるため、水準は比較はできない 資料:内閣府「景気動向指数」、」統計課「新潟県景気動向指数」 月 年 平 成 H22=100 ※網掛部分は消費税増税月 -20 -15 -10-5 0 5 10 15 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 26 その他 大型小売店販売額 雇用関連 建築着工床面積 生産関連 前月差 図1-2 景気動向指数の項目別寄与度 注:生産関連は鉱工業指数生産指数、出荷指数、投資財生産指数を 表し、雇用関連は、単位労働コスト、有効求人倍率を表す。 資料:統計課「景気動向指数」 ポイント 注:生産関連は鉱工業指数生産指数、出荷指数、投資財生産指数を 表し、雇用関連は、単位労働コスト、有効求人倍率を表す 資料:統計課「景気動向指数」 月 平成 単位:%、%ポイント Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 1.0 3.5 3.5 2.7 1生鮮食品を除く 食料 0.16 1.03 1.11 1.04 2 住居 -0.05 -0.05 -0.02 -0.03 3 光熱・水道 0.61 0.89 0.70 0.36 4家具・家事用品 0.09 0.14 0.13 0.07 5 被服及び履物 0.06 0.05 0.09 0.13 6 保健医療 -0.05 0.01 0.00 0.00 7 交通・通信 0.19 0.56 0.43 0.27 8 教育 -0.00 0.07 0.04 0.04 9 教養娯楽 -0.19 0.39 0.54 0.54 10 諸雑費 0.15 0.25 0.24 0.12 0.44 0.51 0.43 -0.11 0.75 1.15 0.87 0.29 平成26年 対前年同期比 資料:統計課「新潟市消費者物価指数」 表2-1 新潟市消費者物価指数 (生鮮食品除く総合)の費目別寄与度 生鮮食品 エネルギー 1.7 2.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 1 3 5 7 9 11 26 <3%増税分> % 平成 月 年 増税前 3%増税分 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ 25 26 27 <対前年同期比> % 平成 期 年 H22=100 新潟市 全国 図2-1 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合) 注:右図の3%増税分は日本銀行試算 資料:総務省「消費者物価指数」 統計課「新潟市消費者物価指数」
新潟市の消費支出(名目)の前年同期比を項目別寄与度に分解すると、26 年第Ⅰ四半期に大幅 に増加した交通・通信(自動車購入、ガソリンなどを含む)は、第Ⅱ四半期に大幅に減少したが、 それ以外でも、家具・家事用品、食料など多くの項目でマイナスとなり、消費支出は大幅に落ち 込んだ。とりわけ食料は日常的に購入する品にも関わらずマイナス幅が拡大するなど消費者の節 約志向が続き、回復の弱さが目立っている。(図2-2) また、全国における世帯主の年間収入階級別消費支出の前年同期比を増税前(25 年第Ⅲ四半期 から 26 年第Ⅰ四半期)と増税後(26 年第Ⅱ四半期から第Ⅳ四半期)に分けてみると、いずれの 階級も増税前に増加し、年間収入 500~1,000 万円未満を除く階級で増税後に減少している。と りわけ 200 万円以上 300 万円未満は、他の階級に比べて増減幅が顕著なことから、この段階では 特に増税の影響が大きかったことが推察される。(図2-3) また、世帯主の消費支出(月々の振れ幅が大きい住居等を除いたベース)を年齢階級別に みると、増税前は 29 歳以下を除く全ての年齢階級において前年比で増加している。29 歳以 下は増税後の落ち込みが最も大きいが、50~59 歳までは年齢階級が上になるにしたがって減 少幅は縮小している。60~69 歳は増税前の前年増が最大でありながら、増税後も唯一前年増 を維持しており、堅調に消費を続けていることがうかがえる。(図2-4) 増税後の前年減が大きい 29 歳以下と 30~39 歳、比較的消費が堅調な 60~69 歳について着 目し、前年同期比の項目別寄与度をみると、30~39 歳と 60~69 歳では増税前に身の回り品 などを含むその他の消費支出や食料などがプラスに寄与している。29 歳以下は増税後にその 他の消費支出などがマイナスに寄与している。増税後は、60~69 歳だけが前年同期比でプラ スとなっており、家具・家事用品を除き増加している。(表2-2) -1.2 1.6 2.9 0.7 3.8 2.5 -2.8 -2.0 -1.0 -0.3 1.2 -0.5 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 ~ 29歳 30 ~ 39 40 ~ 49 50 ~ 59 60 ~ 69 70歳 ~ 増税前(25Ⅲ~26Ⅰ) 増税後(26Ⅱ~Ⅳ) 図2-4 世帯主の年齢階級別消費支出(全国) %/対前年同期比 注:住居、自動車等関係費、贈与金、仕送金を除く -20.0 -15.0 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ 24 25 26 % <対前年同期比(実質)> 平成 期年 新潟市 全国 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 26 <新潟市(名目)・寄与度> %、%ポイント 平成 期 年 対前年同期比 家具・家事用品 交通・通信 教養娯楽 食料 その他 図2-2 消費支出 2.8 4.7 1.3 0.6 5.6 -1.4 -7.0 -1.3 0.8 -1.1 -8.0 -4.0 0.0 4.0 8.0 2 00 万 円 未 満 20 0~ 3 00 万 円 未 満 30 0~ 5 00 万 円 未 満 5 00 ~ 1, 0 00 万 円 未 満 1, 0 00 万 円 以 上 %/ 対前年同期比 図2-3 世帯主の年間収入階級消費支出(全国) 注:年間収入別消費支出は、年収階級をまとめるため、年間収入階 級別消費支出と世帯数分布を用いて算出 資料:総務省「家計調査」 増税後(26Ⅱ-Ⅳ) 増税前(25Ⅲ-26Ⅰ) 単位:%、%ポイント 増税前 増税後 増税前 増税後 増税前 増税後 対前年同期比 -1.2 -2.8 2.9 -1.0 3.8 1.2 食料 -0.25 -0.32 0.17 0.12 0.44 0.26 光熱・水道 0.18 0.04 0.08 -0.02 0.20 0.07 家具・家事用品 0.16 0.02 0.07 0.01 0.29 -0.11 教養娯楽 -0.26 0.03 0.17 -0.03 0.09 0.01 その他の消費支出 -0.71 -2.59 1.06 -1.98 2.61 0.87 その他(上記以外) -0.27 0.05 1.39 0.90 0.17 0.06 注1:増税前は25Ⅲ~26Ⅰ、増税後は26Ⅱ~Ⅳを表す 注2:住居、自動車等関係費、贈与金、仕送金を除く 表2-2 年齢階級別消費支出の 項目別寄与度 ~29歳 30~39歳 60~69歳
4 --30 -20 -10 0 10 20 3 月 9 月 3 月 9 月 3 月 9 月 H24 H25 H26 <製造業> %ポイント 本県-全国 本県 全国 調 査 -30 -20 -10 0 10 20 3 月 9月 3月 9月 3月 9月 H24 H25 H26 <非製造業> %ポイント 調 査 資料:日本銀行、日本銀行新潟支店「企業短期経済観測調査」 図3-1 産業別業況判断DI 3 企業関連の動き (増税以降の本県の景況感は、非製造業、中小企業で全国以上に弱さがみられる) 企業の景況感を表す業況判断DI(「良い」の回答割合から「悪い」の回答割合を引いた値) を産業別にみると、本県製造業は直近の 12 月調査で全国との差が拡大したが、「良い」超と なっている。非製造業は 12 月調査で全国との差は縮小したが、「悪い」超となっており、「良 い」超を維持している全国とは対照的となっており、製造業に比べて回復が鈍い。(図3-1) また、企業の経常利益(平成 26 年度計画)の前年度比を産業別にみると、本県製造業は 12 月調査に前年度比で増益となり、全国との差も縮小した。一方、非製造業は 12 月調査で 減益幅が拡大しており、全国との差が拡大した。非製造業は製造業に比べて収益面での改善 が遅れており、消費支出が減少していることも一因と考えられる。(図3-2) また、足元で進行する円安の動きは、産業・企業規模の違いによって収益に影響を与える。 製造業と非製造業について、売上高に占める輸出比率と売上原価に占める輸入比率をみる と、製造業は企業規模が大きいほど、売上原価に占める輸入比率より売上高に占める輸出比 率の方が高いため、円安のメリットを享受しやすい。 一方、非製造業は企業規模に関わらず、売上原価に占める輸入比率の方が上回るため、円 安のメリットを享受しにくい。ただし、非製造業の中でも、従業者規模が小さいほど、売上 高に占める輸出比率と売上原価に占める輸入比率の差は概ね拡大することから、規模の小さ い企業ほど円安がデメリットになりやすい可能性が考えられる。(図3-3) 4.5 3.2 3.4 2.9 5.6 6.5 6.0 5.8 4.8 8.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 業種全体 50人~99人 100~299人 300~999人 1000人以上 % <非製造業> 従業者規模 18.5 3.5 6.3 8.8 24.1 9.3 5.0 6.9 10.1 9.7 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 業種全体 50人~99人 100~299人 300~999人 1000人以上 輸出/売上高 輸入/売上原価 % <製造業> 従業者規模 「輸出/売上高」 > 「輸入/売上原価」 ⇒円安メリットを享受しやすい 資料:経産省「平成24年企業活動基本調査(確報)」 図3-3 企業の収益構造(全国) -15 -10 -5 0 5 3月 9月 12月 H26 本県 <製造業> % 全国 本県-全国 調 査 -15 -10 -5 0 5 10 3月 9月 12月 H26 <非製造業> % 調 査 図3-2 産業別経常利益 資料:日本銀行、日本銀行新潟支店「企業短期経済観測調査」
常用雇用者規模別に法人構成比(法人ではない団体を含まない)をみると、本県製造業は 比較的規模の小さい 50~99 人と 100~299 人の法人の割合が全国を上回っている。非製造業 は 49 人以下と 50~99 人の法人の割合が全国を上回っている。 都市部を代表する東京都は、製造業、非製造業ともに 300 人以上の各階級でそれぞれ全国 を上回っていることから、大企業が多いことがうかがえる。 産業構造等の違いもあり、一概に言えないが、本県は、製造業、非製造業ともに比較的規 模の小さい 50 人以上 99 人以下などの法人の割合が全国や東京都を上回っていることから、 円安などにより収益が悪化しやすい一面があると考えられる。(図3-1) 以上、非製造業の経常利益が足元で弱含んでいるのは、前述の内需低迷に加え、円安に伴 う原材料高も一因と考えられる。 4 所得環境 (名目賃金は増税以降も増加するも、実質賃金は弱い動きが続く) 5人規模以上の事業所の現金給与総額(以下、「賃金」という。)の前年同期比をみると、 本県の名目賃金は、平成 26 年第Ⅰ四半期にプラスに転じて以降、増加幅を拡大して推移して いる。本県の実質賃金は、26 年第Ⅳ四半期にプラスに転じたものの、物価上昇ペースの鈍化 や前年の大幅減との比較もあり、総じて弱い動きとなっている。(図4-1) 次に本県の名目賃金の前年同期比を給与別寄与度に分解してみると、増税以降、所定内給 与や特別給与を主因に名目賃金の増加が続いている。26 年第Ⅲ四半期以降は所定内給与の増 加が寄与していることから、企業の業績改善などが賃金に反映されている可能性がある。 労働者別では、各期で一般労働者の増加がプラスに寄与しており、26 年第Ⅲ四半期以降は これに加えてパートタイム比率が低下することにより名目賃金が増加している。以上から、 名目ベースの所得環境は改善に向かっていると考えられる。(図4-2) 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ 24 25 26 % 期 年 平成 <全国> 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ 24 25 26 % 期 年 平成 名目賃金 実質賃金 <本県> 資料:厚生労働省「毎月勤労統計調査」 統計課「毎月勤労統計調査 地方調査月報」 図4-1現金給与総額の対前年同期比 (5人規模以上の事業所) 単位:% 全国 本県 東京都 全国 本県 東京都 全国 本県 東京都 49人以下 70.0 70.5 63.3 59.7 55.3 58.4 70.9 72.3 64.1 50人~99人 13.1 13.8 13.2 17.0 19.5 15.1 12.6 12.8 12.8 100~299人 11.1 11.6 12.8 15.3 19.6 14.2 10.8 10.7 12.6 300~999人 4.3 3.4 6.8 5.8 4.7 7.6 4.2 3.5 6.7 1,000人以上 1.5 0.7 3.8 2.3 1.0 4.7 1.5 0.7 3.7 表3-1 企業常用雇用者規模別の法人構成比 全産業 製造業 非製造業 注:網掛部分は、全国平均を上回る箇所 資料:総務省「平成24年経済センサス-活動調査」 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 26 %、%ポイント パートタイム 労働者 パートタイム比率 前年同期比 一般労働者 平成 期 年 <労働者別> -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 26 %、%ポイント 特別 給与 超過 労働 給与 前年同期比 所定内給与 平成 期 年 <給与別> 図4-2 現金給与総額(名目)の寄与度 資料:統計課「毎月勤労統計調査」
6 -世帯間の所得階層のばらつきをみるため、世帯主の年間所得(平成 24 年調査)について、 300 万円未満の割合と 1,000 万円以上の割合(高所得層)を各都道府県と比較すると、本県 は 300 万円未満の割合は 20.7%となっており、1,000 万円以上の割合(11.2%)より 10%ポ イント程度多いが、全国平均(300 万円未満:1000 万円以上=22.4%:12.6%)や、隣接他 県等と比べても、特段、どちらの階層に偏って分布しているわけではない。(図4-3) 平均年収は本県は、全国、近隣県等の中では低位に位置している。東京都は飛び抜けて平 均年収が高いが、神奈川県や愛知県、大阪府など都市部も比較的高い。(図4-4) 消費税は低所得者ほど負担が大きい逆進性を持っていることから、東京都など都市部より 相対的に所得水準の低い地方は、マイナスの影響が大きいと考えられる。 5 地域別の動向 (住宅着工は都市部より地方の回復が鈍い傾向。本県は消費関連指標で前年減続く) 本章では、増税前後の消費や企業に関する経済指標を近隣県等の動向と併せてみてみる。 まず、新潟市や大都市等との増税前後の消費支出を比較すると、一部例外もあるが、大都 市より中都市などの方が増税前(平成 25 年7月~26 年3月)の消費支出の前年同期の増加 幅が大きくなっており、それに応じて増税後(26 年4月~12 月)の減少幅も大きくなってい る。これらの中には、駆け込み需要とそれに伴う反動減の影響も含まれていると考えられる。 新潟市は家計調査では大都市に分類されるものの、同時期の増減幅は他の都市区分より大 きくなっており、増税の影響の大きさがうかがえる。(図5-1) 2.7 2.0 4.1 0.7 3.8 6.5 -0.7 -1.4 -1.5 2.2 -2.2 -1.9 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 全国 大都市 中都市 小都市A 小都市B 新潟市 % 図5-1 地域別消費支出の対前年同期比 注:大都市は政令指定都市及び東京都区部、中都市は人口15万人以 上で大都市以外の市、小都市Aは人口5万人以上15万人未満の市、 小都市Bは人口5万人未満の市を表す 資料:総務省「家計調査」 増税後(26Ⅱ-Ⅳ/25Ⅱ-Ⅳ) 増税前(25Ⅲ-26Ⅰ/24Ⅲ-25Ⅰ) 2.5 2.7 2.9 3.1 3.3 3.5 3.7 3.9 4.1 0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5 増 税 後 / 2 6 年 Ⅱ~ Ⅳ( 対 前 年 同 期 比) 増税前/25年Ⅲ~26年Ⅰ(対前年同期比) 図5-2 地域別の消費者物価指数 (生鮮食品を除く総合) 新潟市 全国 長野市 福島市 山形市 富山市 東京都区部 単位:%/前年同期比 前橋市 資料:総務省「消費者物価指数」 大都市 中都市 小都市B H22=100 小都市A y = -0.4841x + 22.577 R² = 0.773 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 22.0 15.0 25.0 35.0 45.0 年 間 所 得 一 千 万 円 以 上 の 割 合 年間所得300万円以未満の割合 東京都 富山県 福島県 本県 山形県 図4-3 世帯主の年間所得300万円 未満と1,000万円以上の割合 群馬県 長野県 資料:厚生労働省「平成24年就業構造基本調査」 全国 神奈川県 % 300 350 400 450 500 550 600 650 東 京 神 奈 川 愛 知 大 阪 三 重 全 国 京 都 静 岡 滋 賀 茨 城 千 葉 栃 木 埼 玉 兵 庫 奈 良 広 島 山 梨 群 馬 富 山 石 川 岡 山 福 岡 岐 阜 長 野 宮 城 山 口 香 川 福 井 和 歌 山 徳 島 福 島 新 潟 愛 媛 大 分 北 海 道 島 根 熊 本 鳥 取 鹿 児 島 高 知 長 崎 佐 賀 山 形 宮 崎 秋 田 岩 手 青 森 沖 縄 図4-4 平均年収(平成26年・10人規模以上事業所) 注:平均年収=きまって支給する給与×12か月+特別給与 資料:厚生労働省「平成26年賃金構造基本調査」
消費者物価指数(消費者実感に近い帰属家賃を除く総合)を比較すると、新潟市を含む多 くの地方は、増税後の物価上昇率が3%以上と全国や大都市を上回っている。都市部より地 方の方が消費税増税による負担感が大きく、結果的に実質所得の目減りへとつながり、節約 志向の一因になっているとも考えられる。(図5-2) 次に、増税後の動きを各種経済指標(表5)からみてみる。(前年同期比は4月~12 月比) ・実質賃金は、都市部も含めて、いずれの地域も増税などの物価上昇により、前年同期比 で減少している。こうした動きは消費マインドの低下を招き、個人消費における前年減 の主因になっていると推察される。 ・食料品や衣料品等の売り上げを示す大型小売店販売額は、ほとんどの県で前年同期比で プラスとなっていることから、増税の駆け込みに伴う反動減が終息していることがうか がわれる。本県は、増税前の駆け込み需要が近隣県等に比べて大きく、天候要因や実質 所得の減少などもあって前年比減が長期化していると考えられる。 ・新規乗用車登録届出台数や新設住宅着工戸数は、各県で前年同期比の減少が続いている。 乗用車や住宅は高額品であり、東京都や大阪府などの都市部より持家比率や自動車保有 率の高い地方の方が増税前の増加幅が大きく、その分、落ち込みも顕著になっていると 考えられる。 ・日銀短観業況判断DI(26 年 12 月調査-26 年3月調査)をみると、非製造業はほとん どの県で悪化しており、本県も製造業が+6に対し、非製造業が▲18 となっており、「良 い」超で改善する製造業と明暗が分かれている。 経常利益(26 年度計画)も、本県を含む多くの近隣県等が景況感にほぼ連動する形で、 非製造業も減益となっており、製造業とは対照的になっている。比較的堅調な製造業に 対し、非製造業は増税により低迷する内需の影響を受けている可能性もある。 以上、新設住宅着工戸数は、都市部より地方の方が増税後の落ち込みが大きくなっており、 単位:%、%ポイント(短観業況判断DI) 実質賃金 大型小売店販売額 新規乗用車登録届出台数 新設住宅着工戸数 対前年同期比 対前年同期比 対前年同期比 対前年同期比 製造業 非製造業 製造業 非製造業 26Ⅱ~Ⅳ 26Ⅱ~Ⅳ 26Ⅱ~Ⅳ 26Ⅱ~Ⅳ -1.9 0.3 -4.2 -4.2 4 -10 0.3 -0.8 本県 -2.4 -1.4 -6.7 -18.4 6 -18 0.7 -9.4 山形県 -0.9 2.3 -11.0 -26.6 -19 -13 39.8 -21.9 福島県 -2.8 3.1 -8.3 -18.5 8 -2 2.1倍 -15.0 群馬県 -4.4 0.2 - -18.8 2 -9 -13.6 -8.3 富山県 -4.6 0.7 -8.2 -12.1 -13 9 22.6 -4.3 長野県 -2.2 2.2 -3.6 -12.5 -12 -13 10.7 -3.0 東京都 -2.1 -1.1 - -5.0 - - - -大阪府 -1.1 0.5 - -6.0 -2 -6 12.5 -6.9 愛知県 -0.7 0.9 -4.3 -14.4 -9 -12 -4.4 17.7 全国 表5 増税後の各種経済指標 注1:「-」はデータなし 注2:実質賃金は事業所規模30人以上 注3:愛知県の乗用車は、12月分が未公表のため、4月~11月のベースで算出 注4:日本銀行各支店(愛知県は東海3県、大阪府は近畿地区)、各都県HP等から当課作成 地 方 都 市 部 都府県名 26年12月調査-26年3月調査 対前年度比(12月調査(計画値)) 短観経常利益 短観業況判断DI
8 -回復速度に温度差がみられる。 また、全国と比較すると、本県は消費関連指標を中心に前年減が続くなど回復への足取り が重く、こうした動きを反映する形で短観業況判断DI、短観経常利益の非製造業で温度差 が生じている。 6 おわりに 本県は、26 年時点では、消費関連指標などで、増税前後の増加と減少がみられた。その背 景には、増税後の物価上昇に伴う実質賃金の目減りなどが一因となっていると考えられる。 一方で、本稿では取り上げなかったが、足元では労働者の人手不足などが発生しており、 こうした動きもあって名目ベースの所得環境も改善している面もある。 今後は、物価上昇の影響が一巡することなどもあり、本県経済は緩やかに回復していくと 考えられる。増税後の落ち込みから脱するためには、企業収益の回復や賃金の底上げなどに より、「収入増→消費増→生産増→収益増→収入増」等の好循環が形成される必要があると考 える。